JP4641111B2 - 圧電デバイス素子の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本出願は、テレビなど民生品や、コンピュータなどのクロックや、光通信やギガビットインサーネットなど高速、大容量通信などの周波数発生源に利用される圧電デバイスや、物質を感知したり、圧力や加速度などを感知するセンサーや、レンズ形状を設けた圧電体を動作し光路などを変化させる光学素子に利用される圧電デバイス素子に関するものであり、特に高周波の薄い板厚の水晶振動子の副振動などの不要振動を極力主振動へ影響しないようにする圧電デバイス素子とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
水晶振動子は、通信機器にとり基準周波数を供給する重要な部品である。近年高速、大容量通信用機器の登場により各機器の高周波化が進み、同時に共振周波数を直接高くし、ジッタなどノイズを軽減する水晶振動子をより多く供給することが問われている(ELECTRONIC DESIGN March6 2000 p112)。PLL回路によるてい倍より振動子の基本波周波数を高くするほうがノイズを少なくできるが、ATカットなどの水晶振動子の共振周波数を高くするには、圧電基板が主振動を励振する薄板部の板厚を薄くするほど高くなる。従来の水晶振動子の高周波化を進めるにあたり、共振周波数が100MHz以上にもなる水晶板の板厚は約17μmになるなど薄板化し、加速度や衝撃など外的衝撃の影響を無視できなくなる。この対策として薄板部の外周に薄板部より板厚の厚い枠部を配する断面で見て凹形の水晶片を利用する、凹形水晶振動子が考案されている。初期の丸形をはじめ、四角形のものなど1970年代から内外で発表されている(米国特許公報 第3,694,677号)。また、凹形水晶振動子の振動モードなども中澤らにより研究されてきた(信学技報 US76−16、7 昭和51年)。さらに、Q値を向上するために方形状凹形水晶振動子として本明細書でいう凹形水晶振動子の表面にコンベックス形状を形成し、周波数温度特性について研究している(電気学会論文誌 昭和57−2 p59)。
【0003】
しかし、凹形水晶振動子は凹部の底に電極を配するために、同面積の平板形水晶振動子と比較して、電極の面積を大きくするのが困難な事から、電気的特性の設計余地の大きい平板の水晶片を利用する、平板形水晶振動子が見なおされ始めた。平板形とは、短冊形でフラット形の水晶片を使用する水晶振動子であり、一方の主面と他方の主面が平行で、伴にほぼ平坦である板をいう。現在一般的に表面実装型水晶振動子または水晶発振器には搭載されている。特に電圧制御水晶発振器などのために容量比などを小さくし、周波数の可変幅を大きくするためには電極の面積は重要な設計パラメータとなる。周波数の可変幅に影響する容量比はC0/C1であり、(k×PI×Aq)/(32×e^2×Ae^2)であらわされ、電極面積を大きくするほど小さくなる。kは誘電率、eは圧電気定数、Aqは振動子面積、Aeは電極面積である。また、加圧センサーなどの圧電デバイスでは電極を大きくした方が電荷を拾いやすく、つまり感度を得るために電極を大きくしたり、電極を各種形状にするために、大きな面積を必要とする。
【0004】
また、凹形水晶振動子は凹形状を作成し、凹形状で底の板厚などを制御する必要があることから、大量生産することが一般的に困難であり従来の水晶振動子製造で利用されてきた平板の圧電体片を取り扱うほうが、従来設備の流用なども容易である。また、研削など研磨加工技術の技術力向上により薄い平板に仕上げたり、薄い板厚の圧電体片をハンドリングする技術、封止器に固定する技術などが各種要素技術の進展により向上されはじめた。最近では、これら薄い平板の水晶片をバンプで実装したり、SMDパッケージに実装して表面実装型水晶振動子とするものも考案されている。薄い板厚を有する水晶振動子は、外的衝撃の影響を受けることや、低周波の振動より敏感に電極表面の重量変化を感じることからセンサーとして使用することも考えられている。
【0005】
本明細書で、圧電体片とは、結晶軸に対してある決められた幾何学的形状・寸法および角度に切断した結晶片をいう。さらに圧電体片に2つ以上の電極を配して電荷をかけ振動を得る素子を圧電デバイス素子とよび、圧電デバイス素子を保持器に封入して圧電デバイスとして使用する。ATカットやSCカットは電極は少なくとも表裏主面、つまり表側主面と裏側主面に配する。圧電デバイスは圧電デバイス素子を保持器に入れて密封したもので、振動子や発振器やセンサーや光学素子などであり、圧電体の結晶には水晶の他にランガサイトやニオブ酸リチウムなどの圧電性を示す単結晶があげられる。水晶の場合には、圧電体片とは水晶片であり、圧電デバイス素子とは水晶片と水晶片に配された電極で構成された素子であり、圧電デバイスとは、水晶振動子、水晶発振器または水晶を利用したセンサー部品や光学素子などをいう。
【0006】
ATカットの水晶振動子の場合、図11で示すとおり、利用したい主振動は厚み滑り振動(r)だが、屈曲振動(u)、伸長振動(v)または輪郭すべり振動(w)などの高次の副振動が存在し、さらにこれら圧電体片の輪郭寸法をパラメータとする副振動だけでなく、厚みねじれ振動モード(s)や、インハーモニックモード(t)などの基本振動または高次の副振動も発生する。905は電荷のプラス、906は電荷のマイナスを示し、矢印は変位方向を示す。副振動は、主振動の共振周波数の近傍に存在すると影響を与え、例えば電極を加工して周波数調整する時に調整精度を悪くしたり、容量により共振周波数を可変するのに主振動と結合したり、温度を変化させると主振動と影響しあい主振動が不連続に周波数が変動する周波数ジャンプなどをおこし、圧電デバイスの特性を非常に不安定にする。このため、副振動を減衰させたり、主要振動の共振周波数から離して結合を少なくするのに、べべリング加工やコンベックス加工が一般的になされている。べべリング加工とは、圧電体片の輪郭を段にしたり面取りする加工である。コンベックス加工とは、素板形状をレンズ形状にし、片側凸または両側凸にするものであり、本明細書ではコンベックス形状という。水晶片をコンベックス形状にすると、輪郭からの反射によって生じる多種のモードを減衰し、温度特性が改善されると同時に、厚み滑り振動の振動エネルギーをレンズ形状の中央付近に集中し、高いQ値が得られる(岡野庄太郎著 「水晶周波数制御デバイス」 p67)。特に30MHz以下の水晶振動子で問題になる輪郭からの反射によって生じる屈曲振動、縦振動または輪郭滑り振動などの副振動対策には効果があることが知られ、コンベックスの直径や、高さ寸法や曲率半径、さらに輪郭寸法についても十分検討されてきた。しかし、コンベックス加工は、専用の研磨機械で圧電体片を個別に手間をかけ専用の装置を使用して作成するため、大量の加工は困難で、一般的な特殊な用途や、高安定を目指すSCカット水晶振動子など高価な圧電デバイスに対して設けられていた。
【0007】
長浦らは、凹形水晶振動子を両面研磨加工することにより、凹形状の厚い部分と薄い部分の研磨圧力の違いにより、コンベックスを形成する画期的な加工方法を考案している。これにより、主振動への副振動の影響を軽減またはなくすことに成功し、従来より周波数の高い、ATカットの凹形水晶振動子などにおいて主振動より高い周波数側に存在する副振動対策にもコンベックス形状が有効な事を示している(特開2001−044526号公報 「圧電素子及びその加工方法」)。しかし、この加工方法は凹形状の圧電体片を両面より研磨加工することで、圧電体片の板厚の厚い部分と薄い部分の研磨圧力差を生じ、コンベックス形状を得るため、平板の圧電体片にコンベックス形状を形成することは、困難である。つまり、加工前の圧電体片が凹形状を有することが必要である。また、薄板部の1方向にのみ薄板部より板厚の厚い縁部を形成した圧電体片の場合は、薄板部に研磨圧力が一様にかからないためにコンベックス形状を変形なく、精度良く形成するのが困難である。
【0008】
主に電圧制御水晶発振器(VCXO)用、またはセンサー用の水晶振動子などのように、主に設計範囲を広げる理由で電極を大きくしたい場合は、凹形ではなく、平板の水晶片を利用するのが有用である。しかし、水晶片に配する電極面積を大きくすると主振動の周辺に存在する副振動が増大する傾向にある。これは、電極面積を大きくすると水晶片上に偏在する電荷を拾いやすくなり、厚みねじれ振動(s)やインハーモニック振動(t)などの副振動が強くなり主振動はこの影響を受けやすくなる。このため、平板の圧電体片を利用する圧電デバイスでは主振動への副振動の影響が凹形水晶振動子より深刻になる。また、屈曲振動(u)、伸長振動(v)または輪郭滑り振動(w)の高次の副振動対策も必要である。また、コンベックス形状にすると逆に容量比を大きくする傾向にあることから、極力なだらかにコンベックス形状を調整する必要もある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、圧電デバイス素子において、高い周波数帯においてもコンベックス形状は副振動対策に有用な形状であるが、電極を大きとれる平板や一方向にのみ縁部を有する圧電体片への加工が困難であり、コンベックス加工を大量におこなうのは困難であり、さらにコンベックス形状を調整するのも困難である。特に、平板のウエハーなどをエッチングプロセエスなどを利用して大量に圧電体片を製造するのに、バッチ処理でコンベックス形状を作成する製造方法は製造コストを削減し、安価な圧電デバイスを提供するのに重要な課題である。
【0010】
本発明は前記問題点を鑑みてなされたもので、副振動対策がなされ主振動が安定して発振し、特性の安定性に優れたコンベックス形状を有する圧電体デバイス素子の製造方法を提供することを目的とする。また、本出願は、コンベックス形状を同時に大量にバッジ処理し、安価に前記のような圧電デバイス素子の製造方法を提供することを目的としる。
【0011】
【課題を解決するための手段】
一方の主面にコンベックス形状を有する圧電体片と、前記圧電体片に配する電極と、からなる圧電デバイス素子において、前記コンベックス形状は、一部にへこみ部を有する固定用板に、他方の主面が前記へこみ部をふさぐように平板の圧電体片を設置し、一方の主面を片面研磨することで、一方の主面に設ける。
【0012】
【発明の実施の形態】
(実施例1) 図1は本発明の構成を示す図である。大容量高速度通信用機器において、より高周波数で発振し、ノイズ発生の少ない圧電デバイスを必要とするが、周波数発生源に利用されるATカット水晶振動子などは高周波化するには板厚を薄くする必要がある。30μm以下まで板厚を薄くする。電圧制御水晶発振器で使用する場合など、容量比などを小さくし、周波数の可変幅を大きくするためには、電極の面積は重要な設計パラメータとなる。また、加圧センサーなどの圧電デバイスでは電極を大きくした方が電荷を拾いやすく、感度を得るために電極を大きくしたり、電極を各種形状にするために、大きな面積を必要とする。しかし、電極面積を大きくすると圧電デバイス素子上に偏在する電荷を拾いやすくなり、主振動より高い周波数だが近くに存在する厚みねじれ振動やインハーモニック振動など副振動が強くなり、主振動は副振動の影響を受けやすくなる。コンベックス形状は副振動対策に有用な形状であるが、電極を大き設計するのが容易な平板の圧電体片への形成が困難であり、また、コンベックス加工は大量に同時加工するのが困難である。このため、本発明は前記問題点を顧みてなされたもので、特性の安定性に優れた圧電デバイス素子を提供することを目的とする。 また、本出願は、バッチ処理でコンベックス形状を作成し、特性の安定した圧電デバイス素子の製造方法を提供することを他の目的とする。
【0013】
図1は、一方の主面である表側主面2にコンベックス形状4を有する長方形の圧電体片1と、表側主面2に配される表側電極101と、他方の主面である裏側主面3に配される裏側電極102と、から構成される圧電デバイス素子であり、保持器504に封入されて水晶振動子、つまり本明細書でいう圧電デバイスとして使用する。本例では主振動に厚み滑り振動を利用する共振周波数100MHzのATカットの水晶振動子を示す。通常は水晶片を電極と共に保持し、保持器に封入した物を水晶振動子という(水晶デバイスの解説と応用 日本水晶デバイス工業会技術委員会編1996年10月)。圧電体片に利用する結晶には他にランガサイトやニオブ酸リチウムなどの圧電性を示す単結晶があげられ、特に水晶は現在一般的に周波数発生源として利用されている。ランガサイトは水晶と同様に安定した周波数発生源として期待されている。図右の矢印は水晶片1の幾何学的な方位を示す結晶軸を示す。本例はATカットの水晶片1であり、Y軸に垂直なYカット水晶片をX軸回りに回転した位置で切断してえられるため、正規の結晶軸方向から回転しているためにZ’とY’と表示している。また、矢印の方向を+としている。
【0014】
図2は圧電デバイス素子を水晶片1のZ’軸のプラス側より見た図である。図3は平板のウエハー5に同時に複数のコンベックス形状を片面研磨により設ける製造方法をしめす断面図である。図4は一方の主面に複数のコンベックス形状4を同時に形成したウエハー5の断面図である。図5は図4で示したウエハー5の表側主面2を見た図である。図6は図4で示したウエハー5を個々の水晶片1に分離する位置を示す図である。図7は一方の主面がコンベックス形状である水晶片1と、水晶片1に配する電極と、からなる圧電デバイス素子を有する水晶振動子を製造するプロセスの概要である。図8はコンベックス形状4を加工するのに利用するへこみ部7を有する固定用板6の例である。図9は固定用板6にウエハー5を設置する方法の例である。図1と図2を中心に図3、図4、図5、図6、図7、図8、図9により説明する。
【0015】
図1と図2の符号1は水晶片であり、ATカットでz’方向が約0.5mm、x方向寸法201が約0.4mmの輪郭寸法で形成したものである。輪郭寸法は輪郭寸法により周波数が決定される屈曲振動や伸長振動や輪郭滑り振動などの高次の副振動を避けたり、支持の影響を主振動がなるべく受けない値で決定する。板厚は約17μmであり、本例での板厚とは、平板領域での表側主面2と裏側主面3の距離である。コンベックス形状を有する水晶片1での板厚とは、図2でいう中心軸204での厚みをいうこともあるが、本例では、平板の領域での表側主面2と裏側主面3の距離をいい、表側主面2とコンベックス形状と中心軸204の交点との距離をコンベックス形状の高さ寸法203とする。ATカットの他にZカット、SCカットなどがある。Zカットは音さ形振動子で屈曲振動などに使用され光学用フィルターなど光学素子としても使用する。SCカットは高安定の水晶振動子として使用する。本発明により平板の水晶片1にコンベックス形状を設け、特にSCカットは特性が高安定の周波数発生源として利用され、コンベックス形状を設けるのは一般的になされている。水晶片1は長方形であるが、形状は正方形でも、円形でも、楕円形でも、3角形でもよい。円形は製造容易で一般的に使用されている形であり、3角形は水晶などの3回対称軸を利用し輪郭が形成しやすく、安定した寸法精度を得られる。
【0016】
2は表側主面であり、主面とは圧電体片またはウエハー5で最も面積の広い面を言い、ATカットの切断面と平行な面であり、図2で示すところのy’軸に垂直な一方の面である表側主面2さらに他方の面である裏側主面3に相当する。 本例では一方の主面とは表側主面2であり、他方の主面とは裏側主面3に相当する。また表とは図1でいう正面であり、裏とは逆側に位置するy’軸に垂直な面である。一方と他方は、本来どちらでもかまわない。表側主面3には、図2のようにレンズ形状または低いドーム状のコンベックス形状4を設けてある。図1のように正面から見ると円であり、図2でいうコンベックス形状の直径寸法202は約0.36mmであり、高さ寸法203は約0.00005mmである。高さ寸法203は水晶片1の断面をSEMにより測定し、レンズ状になっているのは干渉計によるニュートンリングが円上になることで確認できる。図2、図4、図7ではわかりやすくするためにコンベックス形状4の高さ寸法203を強調して示している。図3、図7、図8、図9ではわかりやすくするためにウエハー5の板厚を厚く示している。また、図1、図5、図6ではわかりやすくするためにコンベックス形状4と平板部の境界を線ではっきりと示している。
【0017】
コンベックス形状4は水晶片1の輪郭までいっぱいに形成してもよいが共振周波数、輪郭寸法、電極寸法、副振動の主振動への影響、支持からの影響または電気的特性への影響により寸法を調整する必要がある。電気的特性とは圧電デバイスの等価直列抵抗R1、等価直列容量C1、等価直列インダクタンスL1、並列容量C0またはこれらをパラメータとする値のことである。コンベックス形状4の寸法は、直径寸法202と曲率半径などで表される。曲率半径が大きいほど、コンベックス形状4はなだらかになり本例の高さ寸法203は小さくなる。コンベックス形状4の曲率半径を小さくすると、直径寸法202は小さくなるとともに高さ寸法203は大きくなり、電気的特性にも影響し、例えば一般的に容量比(C0/C1)は大きくなる。このため、VCXO用では、コンベックス形状4で副振動対策を行なうが、極力、コンベックス形状4の曲率半径を大きくして、直径寸法202が大きく、高さ寸法203の小さいなだらかな形状となるように形成し、容量比を抑える。コンベックス形状4の直径寸法202または高さ寸法203など曲率半径はへこみ部7の寸法、へこみ部7内の圧力、固定用板6の材質、前記固定用板の形状、またはウエハー5の固定用板6への設置手段を変えて調整する。へこみ部7の寸法は直径寸法202を調整する。へこみ部7の圧力は真空系やポンプに接続することでおこない、特に高さ寸法203を調節するのが容易である。固定用板6の材質と形状または設置手段は、ウエハー5のしなり具合を調整し曲率半径にも影響を及ぼしウエハーの破損防止にも重要である。はこれらにより、圧電体片またはウエハーの結晶材質により適当な条件を選択して加工をおこなう。
【0018】
コンベックス形状4は、図3のようにウエハー5を片面研磨する事で設ける。ウエハー5の片方の主面を破砕し研磨加工する。通常の片面研磨や本明細書では切り出したウエハー5を、任意の板厚に均一に加工する片面研磨加工と分けるため、加工の文字をはずし片面研磨とている。片面研磨はプラネタリウム式またはエキセントリック式の方法で研磨機の上下盤の間にキャリアを介して水晶片を載置し、自転、公転させて砥粒による転がり、または滑りで水晶面を破砕し研磨する。砥粒を含む研磨剤の選択、研磨機、研磨盤の管理で板面の平面度、平行度、表面の粗さなど均一性がウエハー5はランバートという結晶板をバンドソーやワイヤーソーなど物理的な衝撃により加工する物理的加工によりATカットで切り出した平板で、各種研磨剤により段階的に両面研磨加工、または片面研磨加工したり、化学的加工などで任意の板厚に均一に加工する。ウエハー5を、一部にへこみ部7を有する固定用板6に設置する。ウエハー5は裏側主面3がへこみ部7をふさぐようにし、固定剤302により固定する。固定用板6は強度の強い固定パット301に貼る。研磨用パット303を回転して片面研磨する。研磨中は研削剤砥粒304と潤滑剤を随時注入し、表側主面2を研磨し、ウエハー5の表側主面2は薄くなり、板厚を約17μmまで研磨する。砥粒は平均粒径5μm以下や光学研磨つまりポリッシング用の砥粒を使用する。本例では従来の光学研磨装置を使用して、研磨した。従来の片面研磨中はウエハー5にはへこみ部5付近の研磨圧力が少ない領域と、固定用板6と研磨用パット303と挟まれる付近の研磨圧力の高い領域が同時に生じ、研磨量、つまり板厚に差を生じる。研磨終了後に、図4のように表側主面2の研磨圧力の少ない領域は研磨量が少なく、コンベックス形状4となる。複数のへこみ部7を固定用板6に備える事で、ウエハー5の表側主面2に複数個のコンベックス形状4を形成する。本例では1インチのウエハー5に25個のコンベックス形状4を設ける。ウエハー5の板厚が30μm以上では強度が強く、十分な研磨圧力の差が得られないため、最終的なコンベックス形状を形成する片面研磨完了時のウエハー5または圧電体片1の板厚は30μm以下がよい。また、片面研磨では、固定用板6とウエハー5を貼りつけ、固定用板6の貼り付け面と逆側を削り、同時に設置してあるウエハー5または圧電体の貼りつけ面と逆側の面を研磨し、両面研磨でおこなえば、ウエハー5を片面研磨することが可能である。
【0019】
固定用板6は、各種形状が考えられるが、片面研磨中、平板のウエハー5に研磨圧力の差を生むへこみ部7を有することが必要である。固定用板6の材料としては金属、有機物またはセラミックなどが考えれられるが、本例ではステンレスを利用した。ステンレスや有機物やセラミックは錆などを発生しにくく、有機物はレジストなどを利用すると、寸法精度にすぐれたへこみ部7を形成できる。図8はウエハー5の板厚方向の断面より見た固定用板6の形状である。(h)は固定用板6に凹形状を作りへこみ部7を形成する。(i)は1枚目の板801に穴の開いた2枚目の板806を重ねてへこみ部7を形成する。(h)は凹形状に固定用板6を加工する必要があり凹の角でへたりなどの加工誤差を生じるが、穴を加工した板806と平板の板801を重ねることで容易に寸法精度を得られる。板801と板806は同じ材料でもよいが、板806をレジストなど有機膜で代用しウエハー5上に形成してさらに寸法精度を向上したへこみ部を形成したり、両面テープを利用し、ウエハー5の固定と保護と、さらにへこみ部7の形成を兼ねてもよい。板801が研磨機の固定パット301とすると、(h)と同じく穴の開いた固定用板6を利用するのと同じ構成となる。
【0020】
(k)はOリングのようなゴムを使用したり、球状の材料を利用してウエハー5と接する面を丸形状803にして傷をつきずらくする。(m)は布やゴムのようなシート804をウエハー5の保護のために固定用板6との間にはさんだ場合である。シート804がへこみ部7をふさいでいるが、ウエハー5に比較して柔らかく、ウエハー5への研磨圧力に差ができればよい。シート804は固定剤901を兼ねてもよい。(n)は固定用板6がウエハー5と接する角を面取り805してあり、ウエハー5を傷つくない様にしてあるとともに、へこみ部7でウエハー5がしなりへへこみ部の角付近のウエハー5に研磨圧力が集中し割れるのを防ぎ、圧力を分散しやすい構造にする。固定用板6はへこみ部7で研磨圧力差が生じやすいように断面で見てV字に切れこみをいれるなど部分的に加工しておくなど工夫をしても良い。
【0021】
ウエハー5の固定用板6への設置手段は図9の様な手段がある。(0)は固定剤901を利用しての設置であり、固定剤901はテープや接着剤や油状の有機物、摩擦を利用して固定するシート状の有機物などである。本例では、(0)の設置手段を使用し、固定剤901には紫外線硬化剤を使用した。固定用板6は固定用パット301に接着剤で固定した。固定用パット301が上を向いている場合は、固定用板6をはめ込む方法で固定してもよい。(p)はウエハー5よりも厚みの薄いステンレスなど金属製のスペンサー902で位置を固定する方法であるが、ズレて裏側主面3に傷をつけやすいが固定が必要なく作業が容易である。さらに、研磨圧力の差を(o)より大きくしやすい。また、902を接着剤とすると、(p)のようにウエハー5の輪郭周辺で固定しても良い。(q)はへこみ部7内部を真空にしてウエハー5を吸着して固定する方法で作業が容易である。また、真空度など圧力で研磨圧力を調整し、コンベックス形状、特に高さ203を調整するのにも利用する。固定剤901で固定している場合は圧力をかけてコンベックス形状の高さ寸法203を低くしてもよい。
【0022】
101は表側電極であり、102は裏側電極である。振動は水晶片1の中央付近に配す表側電極101の円形領域と、対向して裏側主面3に配する表側電極102との間でおこる。電極とは圧電体片1に電荷を与えたり、圧電体片1に存在する電荷を受け取ったりし、電荷の交換を圧電体片外の発振回路または動作回路と行なうために圧電体片1に配する電導性の膜をいう。振動領域で保持器502に固定する支持では主振動に大きな影響を及ぼすために、主面の平板領域に保持器502と導通を取るための引き出し領域を形成しこれも電極の一部とするが、引き出し領域での圧電体片1との電荷の交換は考慮していない。引き出し領域に接着剤やバンプやワイヤなどを接続し導通をとる。電極は、主に、Au、Ag、Al 、Ni、Cr、またはこれらの合金や、これらを積層したものである。 Auは耐腐食性にすぐれ長期間安定した特性を持続する。AlはAuより軽量で板厚が17μmなどと非常に薄い場合に重力による余分な変形を与えないだけでなく、周波数調整の速度を遅くし、調整を容易にする。本例ではCrを50Å、Auを500Åの2層構造にしCrをAuと水晶の緩衝材的役割で利用する。本例では表側電極101は、蒸着マスクに穴をあけパターンを形成しているが、全面に金属膜をつけフォトリソ技術で電極パターンを作成しても良い。裏側電極102は裏側主面3から表側主面2に輪郭の側面をまわし込んで配してもよく、保持器502への固定方法と導通の取り方で決定する。本例では裏側電極102を表側電極101より面積を小さくして設ける。これは、面積の小さい電極に電気的特性が影響されるため、本来は平坦であるために寸法精度良く形成可能な裏側電極102の面積を小さく、フォトリソ技術などを利用して形成する。表側電極101にフォトリソ技術を利用し、裏側電極102に蒸着マスクを利用してパターンを形成しても、両電極同じ方法でパターンを形成しても良い。電極は水晶片1の板厚の微調整が終了してから配する。
【0023】
図7は圧電デバイスの製造方法の一例を示している。本例の圧電デバイスは水晶片1と表側電極101と裏側電極102と蓋であるリッド07を含む保持器702で構成されている。(a)は、物理的加工によるウエハー形成工程であり、ランバートという結晶板をバンドソーやワイヤソーなど物理的な衝撃により加工する物理的加工で、ATカットの切り出し角度で板状に板厚0.8mm程度で切断する。0.5〜2mmくらいがコストを考えても現実的である。(b)は、ウエハー5を任意の板厚に均一に加工する研磨工程で、切断後の(a)のウエハー5を各種類の砥粒を利用し両面研磨し、化学的加工をするなどして均一で任意の板厚のウエハー5にする。数十nmまで主面の荒さを均一にするために両面を光学研磨する。このとき、ふっ酸やふっ化アンモニウムの水溶液を利用したウエットエッチング、またはRIE(Reactive Ion Etching)でCF4やC2F6などガスを利用したドライエッチングなどの化学的な反応により水晶主面を溶かしてゆく化学的加工などで板厚を薄くしてもよい。研磨後に研磨による破砕層をなくすために化学的加工をしても良い。本例では、バンドソーによる物理的加工でATカットで切り出した後の板厚0.8mmのウエハー5を、#1500の両面研磨、そして#3000の両面研磨、そして光学研磨、そしてふっ酸水溶液による表主面2と裏主面3の化学的加工、そしてRIEによる表主面2の化学的加工をおこない、17μm程度まで薄く均一に加工した。この段階での板厚は10〜100μmがコスト的にも妥当である。ウエットエッチングは一般的にフォーク形の輪郭を形成したり、ATカットの水晶片の板厚調整など水晶の加工では一般的に使用されており、RIEはシリコンやSiO2などの半導体や、マイクロマシンや、光導波路のの加工に使用され、SAWデバイスなどの水晶の板厚調整にも使用されている。例えば両面研磨から化学的加工、両面研磨から化学的加工、さらに両面研磨を行ってもよく、これらの加工方法を組み合わせて任意の板厚に均一に加工すればよい。
【0024】
(c)は、図3と同じ図であり、ウエハー5にへこみ部7を有する固定用板6を設置し、これを固定した固定パット301と研磨用パット303をプラネタリー方式で回転することで片面研磨する、コンベックス工程を示す。ウエハー5をへこみ部7を有する固定用板6に設置し、表側主面2を片面研磨することで、コンベックス形状を表側主面2に設けるコンベックス加工工程である。本例では固定剤901に紫外線硬化剤を使用し、ウエハー5を固定用板6に設置した。(d)は(C)で加工した複数個のコンベックス形状4を表側主面2に有するウエハー5に保護膜701を成膜し、特定のパターンの溝702を形成した図であり、保護膜保護膜形成工程をおこなう。保護膜701は水晶片1の輪郭寸法とほぼ同じ寸法でパターンを形成しており、隣接する水晶片の保護膜のパターンとは溝703で分離している。溝703の位置は図6の水晶片輪郭パターン601と重なり、幅は約50μmで形成した。溝703の部分で水晶片1を分離することになる。水晶片1で分割した余り領域602が生じるが、ウエハー5のハンドリングをこの部分でおこなうと水晶片1に傷などの不良を生じない。保護膜701は主にAuやPtやCrやNi、またはこれらの合金、またはレジストなどの有機物であり、これらをスパッタや蒸着で積層した膜である。パターンのある部分では、水晶片1を加工させないRIEに使用するエッチングガスへの耐久性が必要である。溝709は、保護膜701を裏面主面3全体に成膜し、フォトリソ技術を利用し水晶片輪郭パターン601で露光し、保護膜701が溶解する液に侵すことで形成する。マトリックス状にほぼ同じ形状の水晶片1を並べ、1枚の1インチウエハー5から25個程度同時に作くる。マトリックス状にすると、枠503や溶液に溶解する部分が少なくなり水晶片1以外の部分が少なくなりコスト的にも有効だが、音さ形水晶振動子のようにウエハー5に枠を作り、枠に複数の圧電体片1を接続するようなすパターンで溝702を形成しても良い。また、水晶片1の板厚微調整は保護膜701形成前に行なっても良い。
【0025】
(e)は、(d)で形成した溝702に沿って輪郭溝709を加工し、保護膜701を剥離し、板厚の微調整を行ない、さらに電極を配した図である。輪郭形成工程と、保護膜剥離工程と、板厚微調整工程と、裏側電極形成工程と、表側電極形成工程をおこなう。輪郭形成工程は、裏側主面3にRIEなど化学的加工により(d)の溝702の水晶表面を化学的加工し、輪郭溝709を形成する。レザー、カッター、衝撃または破砕などで溝709に沿って物理的加工したり、ウエットエッチングや、RIE(reactive ion etching)などのガスによるドライエッチングにより輪郭溝709に沿って水晶表面を溶かして、化学的加工により、水晶片1を分離する。ウエットエッチングによる水晶片1の輪郭の形成方法は従来時計に利用されるフォーク形水晶振動子において一般的に利用されてきた製造方法だが、薄く脆い高周波の水晶振動子の作成にもバッチ処理が有効であるが、ウエハー5をエッチング液に侵すならば、表側主面2にも保護膜が必要である。輪郭溝709は水晶片1をマトリックス状に作るため、電極の成膜が終わるまでバッチ処理するのに途中で加工を中断し、後に分離するのが容易な程度に加工しておく。ウエハー5の枠で水晶片1を接続している場合は完全に貫通穴にしても良い。輪郭形成工程後、保護膜剥離工程で保護膜701を化学的に溶解し剥離する。
【0026】
板厚微調整工程は、保護膜剥離後、目的の共振周波数で発振させる必要から、(e)の裏側電極形成前、または(e)の表側電極形成前に、適当な板厚に微調整する。これは電極による周波数調整幅は、数百〜数千Å程度と有限である電極の厚み分しか調整できないため、電極を成膜する前に水晶片1の板厚を、電極による周波数調整の限界範囲以内にまで調整しておく必要があるためである。本例では、裏側主面3を界面活性剤など添加剤含有のフッ酸水溶液などエッチング液により周波数に換算して105.3MHz±300ppmに相当する板厚で調整する。調整量は微量であり板厚で測定するのは困難なのでネットワークアナライザーで水晶片1の周波数を測定し、目標に調整する。板厚の微調整の手段としては、RIEなどドライエッチングの手法を利用し、同様に、裏側主面3全体、または表側主面2全体を一様に化学的にドライエッチングし、薄くして、所望の板厚を得る手段があり、マスクなどで調整する水晶片1を選択して個別に調整してもよい。効率良く、かつ主面表面の平坦度を保つため、これらの板厚調整方法を複合して利用してもよい。圧電体片1を分離し、少なくとも片方の主面に電極が存在しない状態で板厚の微調整を行なっても良い。この場合は、同じ程度調整する水晶片1を複数個で同時にRIEなどで加工するのが現実的である。(d)の保護膜701の成膜前に板厚の微調整を行なっても良いが、本例ではエッチング液が隣の水晶片へ移動しないよう、輪郭溝709を利用するために輪郭形成工程を先に行なった。保護膜701の成膜前に板厚の微調整を行なった場合は、保護膜701を輪郭形成工程後にフォトリソ技術でパターンを形成し裏側電極102として流用しても良い。本例では、板厚微調整工程の後、表側電極101は電極のパターンで穴をあけた蒸着マスクをウエハー5とスパッタ源の前におき、スパッタで形成する。裏側電極102は寸法精度を得るために、表側電極形成時に全面に成膜した金属膜をフォトリソ技術を利用してパターン形成する。
【0027】
(f)は、輪郭溝709で分離した電極を配した水晶片1を保持器702に固定した図であり、分離工程、固定工程、周波数調整工程をおこなう。分離工程では、ウエハー5に図6のようにマトリックス状に存在する水晶片1を輪郭溝709で個々に分離する。水晶片1の分離手段として、物理的加工、または化学的加工などがある。物理的加工はレーザーなどを使用する光学加工で作業が容易であり、その他にカッターやワイヤーソーやサンドブラストなどの物理的加工は実績ある切断方法である。物理的加工には破砕加工として輪郭溝709で折る方法も簡易的である。化学的加工はウエットエッチングによる分離は液中で水晶片1がばらばらになり回収困難なのに比べ、RIEなどドライエッチングによる分離は水晶片1は散乱せず回収が容易となる。
【0028】
固定工程は、保持器702への水晶片1の固定は固定剤703により固定するが、導電性のものを利用し固定と表側輪郭101と端子704との導通を兼ねている。本例では、コンベックス形状を有する表側主面2を保持器702側に向けて固定する。これは後の周波数調整工程で平坦な裏側電極102を均一に削ったほうが均一に精度良く削れることからこのように固定する。裏側主面3を保持器702側に向けて固定してもかまわない。電極の裏側電極102はワイヤボンディリングによるワイヤ705を利用して端子506まで導通をとる。水晶片固定剤703は導電性バンプ、非導電性バンプ、導電性接着剤、さらに非導電性接着剤などがある。導通とは、直流電流が流れるよう接続していることを言う。周波数調整工程は、保持器702へ水晶片1を固定しリッド707により密閉する前に電極を加工することで行なう。本例では保持器702に固定後に、裏側電極102の表面をArイオンのイオンガンを利用したエッチング方式により削る。調整量は共振周波数を端子704と、端子706をネットワークアナライザーなど周波数測定装置に接続して、周波数を測定しつつ調整し、本例では100.0MHzの±2ppmに調整する。周波数調整における電極の加工手段は、電極を削るエッチング方式と、電極に重量をつける加重方式がある。エッチング方式はイオンガンやレーザーやスパッタや研磨などでおこなわれ、電極を削ることで主振動の共振周波数は高くなる。加重方式では、スパッタや蒸着や塗布などにより電極表面に積層し、裏側電極102を積層することで主振動の共振周波数は低くなる。一般的にはAuやAlなどを積層する。
【0029】
(g)は保持器702に蓋をし封止する工程である。封入は本例ではリッド707を保持器702に載せ真空中で加熱し、金とスズの合金が融解することで密閉する。保持器702は圧電デバイス素子を外気から遮断しつつ圧電デバイス素子を回路上で利用するために使用する。セラミックや、圧電体や、金属などの材料からなる。セラミックは表面実装型の圧電デバイスで一般的に利用され、圧電体は圧電体片と同じ材料を利用することで温度変化による共振周波数の変化などを防ぐ。金属は外壁を薄くしやすくセラミックより小型なパッケージを作りやすい。本例では、セラミックのSMD型の保持器702であり平板とロ形板を積層構造にして凹構造を形成し、凹構造内に圧電デバイス素子を収める2層積層形である。保持器702の内側と外側の端子704、706をそれぞれ導通とるためにビアホールという導通線を配している。
【0030】
その他に、平板とロ形板の間にもう1枚はさんで段を形成し、ここで厚電デバイス素子を固定する3層積層形や、平板だけの1層形もある。3層積層形は圧電デバイス素子の下に空間ができるためにそこに発振回路を含むICチップを設置して圧電デバイス素子と接続し、圧電体が水晶の場合、水晶発振器や、さらに電圧による周波数可変機能を付加して電圧制御型水晶発振器または周波数変動による加速度検知などのセンサーにしてもよい。水晶発振器や電圧制御型水晶発振器は本発明の圧電デバイス素子の安定度が増す特徴を生かし、信頼性ある小型な表面実装型圧電デバイスである。この場合、パッケージの外側にある端子704、706の他に電源電圧入力端子や、出力端子や、アース端子及び周波数制御入力端子などを備えてICチップと接続する必要がある。リッド707は平板形や、ドーム形などがあるが、コストや製造方法により選択すればよい。蓋をすることを封止するといい、封止方法は抵抗溶接封止、ガラス封止、ハンダ封止及びAu−Su封止などがある。封止方法により封止剤も決める。密封であることから、保持器内部708は真空に保たれたり、窒素など不活性な気体の雰囲気で保たれて電極などの劣化を防ぐ。
【0031】
(実施例2) 図10は裏側主面3の一部に凹形状を作成し、凹形状の底である薄板部903に表側電極101と裏側電極102を対向させて配して主振動を得る、主振動の共振周波数が200MHzの圧電デバイス素子である。図10を中心に、図3、図4、図6、図7、図8、図9により説明する。表側主面2にコンベックス形状を有す。薄板部903は板厚が約9μmであり、薄板部903の周辺の縁部904は板厚が30μm程度である。ATカットでは周波数定数=薄板部の厚さ×主振動周波数で示され、利用する共振周波数により薄板部903の板厚は30μm以下で変更する。製造方法は図7の(a)〜(c)までほぼ同じであり、物理的加工でATカットで切り出した平板のウエハーを、両面研磨加工、片面研磨加工または化学的加工のうち、少なくともいずれか一つをおこなって任意の板厚に均一に加工した後、図3のように一部にへこみ部7を有する固定用板6に裏側主面3を向けて設置し、表側主面2を片面研磨する。片面研磨中、へこみ部7周辺に存在したウエハー5には、図4のようにコンベックス形状が形成する。へこみ部7を複数個固定用板6に用意することで、ウエハー5に複数個のコンベックス形状4を同時に形成する。図10にしめす水晶片1の凹形状は、図7の(d)で、裏側主面3に有する保護膜701の溝702のパターンを示す図6の水晶片輪郭線601を変更するだけで、コンベックス形状を有する凹形水晶振動子を作成可能である。固定用板6とへこみ部7の形状は図8で示すような構成があり、固定用板6のウエハー5との固定手段は図9のような手段がある。
【0032】
図7の(d)のように、裏側主面3に保護膜701を成膜し、図6の水晶片輪郭線601に合わせて溝702を形成するが、同時にコンベックス形状4の中心に合わせて凹形状を作る目的で寸法0.3mmの主面を見て4角形状の溝702をパターンとして形成する。輪郭形成工程で0.3mmのパターンで保護膜701に覆われていない水晶が化学的に加工されて凹形状となる。表側主面2にも全面に保護膜を形成する。(e)のように、フッ酸を含むエッチング液に侵すことで裏側輪郭3に侵す異方性エッチングで輪郭溝709を形成する。同時に、凹形状パターンの水晶が溶かして、薄板部903を形成する。薄板部903周辺は板厚の厚い強度の高い縁部904を兼ねて、外力に対して主振動が影響を受けずらくしたり、製造上のハンドリングを良くする。本例では縁部904の厚さは50μmから150μmで作製した。
【0033】
本例で縁部904は軸方向でいう薄板部の4方向に存在するが、3方向でも、2方向でも、1方向でもよく、3方向と1方向に縁部がある圧電デバイス素子は薄板部903だけで構成される圧電デバイス素子よりも強度的に強く、さらに4方向に縁部904のあるものよりも電極を大きく設計する場合に使用する。本例ではコンベックス形状4を形成後に凹形状を形成するので、3方向と1方向に縁部904を有する水晶振動子でも容易にコンベックス形状を設けられる。片側のみで保持器に固定する場合は熱ひずみも緩和するのに有効な形状である。図10の圧電デバイス素子は保持器へ封入して圧電デバイスである水晶振動子として使用する。
【0034】
薄板部の両主面である薄板部表側主面801に表側電極101を、さらに薄板部裏側主面803に裏側電極102を対向して配していることで主振動を得る。主振動とは本例では厚み滑り振動であり、特に厚み滑り振動の基本波振動であるが、オーバートーンを利用してもよく、従来の平板形の水晶振動子よりさらに高い周波数を実現可能となる。また、周波数発生源で利用する場合にはコンベックス形状4を有することで、主振動の振動エネルギーを集中しQ値をあげ、コンベックス形状4の曲率半径を小さくすることで容量比を小さくし、周波数変動の少ない非常に周波数安定度の優れた水晶振動子を得ることが可能となる。
【0035】
(実施例3) 図12は水晶片1に圧電現象により加わるゆがみによりコンベックス形状4が変形することで光線908の集光909の焦点位置が変化する光学部品である。伸長振動や屈曲振動や輪郭滑り振動や表面波振動などの超音波を水晶片1中に一定方向に進行させ、光の屈折率の周期的変動を生じさせ、水晶片1を通る光の進行方向を変化させ周波数をシフトして音響光学素子として利用してもよい。また、コンベックス形状4やそれに対向する裏側主面3に積層金属膜を形成しIRカットフィルターなどを配したり、副屈折板など光学用部品として使用しても良い。音さ形の水晶片1はZカットで切り出されたウエハー5を加工して作成した。製造方法は図7の(a)〜(c)までほぼ同じであり、(d)の保護膜701のパターンを変更することで、コンベックス形状4を表側主面2に有する音さ形水晶振動子を作成可能である。
【0036】
図7の(d)のように、裏側主面3に保護膜701を成膜し、音さ形の輪郭に合わせて溝702をパターン化する。表側主面2にも全面に保護膜を形成し、裏側主面3と同様のパターンで溝を形成する。この後、溝を両側の主面に形成したウエハー5をフッ酸を含むエッチング液に侵すことで異方性エッチングで輪郭溝709を形成する。本例では輪郭は貫通し、水晶片1は図12のような音さ形の輪郭となる。ウエハー5に水晶片1の一部分だけ接続し、圧電デバイス素子が分離するのを防ぎ、バッチ処理を可能とする。輪郭形成後に、表側主面2と裏側主面3とさらに、輪郭の側面にも電極を形成し、図12のような2種類の電極を形成する。101の電極と、102の電極に+または−の電流を交互に入力すると矢印907のように屈曲振動する。2本の棒が離れる場合と、近づく場合にコンベックス形状4の領域にもひずみが生じ、水晶片1中の屈折率も変化し、平行光線908の集光909による焦点位置も変化する。
【0037】
圧電デバイス素子とは、結晶軸に対してある決められた幾何学的形状・寸法および角度に切断した圧電体片に電極を配して電荷をかけ振動を得る素子である。圧電デバイス素子を保持器に封入して圧電デバイスとして使用する。主に圧電体片に水晶やランガサイトやニオブ酸リチウムを利用した振動子や発振器やセンサーや光学素子などである。水晶においては主にATカット、Zカット、またはSCカットなどの水晶片1である。主面からみた圧電体片の輪郭は、4角形、3角形、円形、フォーク形、または凹形状を有する形などがある。コンベックス形状は平板の圧電体片または平板のウエハーをへこみ部を有する固定用板に設置し、設置面と逆の主面を片面研磨することで、片面研磨した側に設ける。ウエハーに複数個のコンベックス形状を同時に形成した場合は、水晶体片1の輪郭はコンベックス形状を設けてから、物理的加工または化学的加工により形成する。ウエハーは物理的加工により任意の切りだし角度で切り出された平板であり、両面研磨加工、片面研磨加工または化学的加工のうち少なくとも一つをおこなって任意の板厚に均一に加工する。両面研磨加工を複数の研磨剤砥粒で数段階に分けておこない、化学的加工、さらに再度両面研磨または片面研磨をおこなうなど、組み合わせたり、繰り返しておこなってもよい。電極の形成は板厚の調整を行なってから成膜する。電極はAu、Ag、Al、Cr、またはNiやそれらの合金で形成され、層状になっていてもよく、これを加工して周波数を精密に調整する。また、VCXO用では、コンベックス形状で副振動対策を行なうが、極力、コンベックス形状の曲率半径を大きくして、容量比を抑える。このような場合、コンベックス形状の直径寸法または高さ寸法など曲率半径は、へこみ部の寸法、へこみ部7内の圧力、固定用板の材質と形状、またはウエハーの固定用板への設置手段を変えて調整することが可能である。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、平板の圧電体、ウエハーまたは一方向に縁部を有する圧電体片にコンベックス形状を設けることで、電極面積を大きく設計するなど設計範囲が広がる。さらに、一方の主面にコンベックス形状を設けることで、副振動を減衰または主振動の共振周波数より離し、振動が安定して発振する。また、主振動の振動エネルギーが集中しQ値が向上する。ウエハーに複数のコンベックス形状を同時に形成することにより、バッチ処理でコンベックス形状を有する圧電デバイス素子を製造するため、従来の手間のかかる従来の加工方法と比較して安価に提供する。また、固定用板の構成を各種用意することで、圧電体片またはウエハーを傷つけにくくしたり、ひずみのかかり方を変えたりして安定にコンベックス形状を設ける。コンベックス形状の直径寸法または高さ寸法など曲率半径を調整する手段を有することで、コンベックス形状の曲率半径を大きくして、直径寸法が大きく、高さ寸法の小さいなだらかな形状となるように形成し、容量比を抑えて副振動対策をしつつ、周波数可変幅を任意に大きくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧電デバイス素子の構成図である。
【図2】本発明の圧電デバイス素子の構成図である。
【図3】本発明のコンベックス形状の加工方法例である。
【図4】本発明のウエハーの断面図である。
【図5】本発明のウエハーの主面を見た図である。
【図6】本例の圧電デバイス素子の分離前の配置図である。
【図7】本例の比較例を示す圧電デバイス素子の断面図である。
【図8】本発明の固定用板の構成図である。
【図9】本発明の固定用板の設置手段例である。
【図10】本発明の圧電デバイス素子の構成図である。
【図11】本発明の圧電デバイスの主振動と副振動の概念図である。
【図12】本発明の圧電デバイスの構成図である。
【符号の説明】
1 水晶片
2 表側主面
3 裏側主面
4 コンベックス形状
5 ウエハー
6 固定用板
7 へこみ部
101 表側電極
102 裏側電極
201 x方向輪郭寸法
202 直径寸法
203 高さ寸法
707 リッド
708 保持器
Claims (4)
- 一方の主面にコンベックス形状を有する圧電体片と、前記圧電体片に配する電極とからなる圧電デバイス素子の製造方法において、前記コンベックス形状は、一部にへこみ部を有する固定用板に、他方の主面が前記固定用部材のへこみ部をふさぐように平板の圧電体片を設置し、一方の主面を片面研磨することで一方の主面に形成することを特徴とする圧電デバイス素子の製造方法。
- 一方の主面にコンベックス形状を有する圧電体片と、前記圧電体片に配する電極とからなる圧電デバイス素子の製造方法において、前記圧電体片は、均一で任意の板厚であるウエハーの他方の主面を、一部に複数のへこみ部を有する固定用板に設置し、一方の主面を片面研磨し、一方の主面に複数個のコンベックス形状を形成するコンベックス加工工程と、コンベックス加工工程により同時に形成した複数個のコンベックス形状を有するウエハーを、特定の寸法で分離して輪郭を形成する輪郭形成工程とからなることを特徴とする圧電デバイス素子の製造方法。
- 一方の主面にコンベックス形状を有する圧電体片と、前記圧電体片に配する電極とからなる圧電デバイス素子の製造方法において、物理的加工で切り出した単結晶のウエハーを形成するウエハー作成工程と、前記ウエハー作成工程で作成したウエハーの両面を、ほぼ均一の板厚にする研磨工程と、エッチングにより板厚を均一で任意の板厚にする化学的加工工程と、均一で任意の板厚のウエハーの他方の主面を、一部に複数のへこみ部を有する固定用板に設置し、一方の主面を片面研磨し、一方の主面に複数個のコンベックス形状を同時に形成するコンベックス加工工程と、主面に電極を配する電極形成工程と、複数個のコンベックス形状を有するウエハーに圧電体片の輪郭を形成する輪郭形成工程とからなることを特徴とする圧電デバイス素子の製造方法。
- 前記へこみ部は、前記主面に垂直な方向から見た形状が、ほぼ円形であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の圧電デバイス素子の製造方法。
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