実施形態で例示するタイヤ空気圧警報装置は、リセット機能を有しておりタイヤ内温度が高い領域では警報閾値と警報解除閾値とのタイヤ圧差を大きく設定する。これにより、タイヤ空気圧警報装置は、タイヤ内温度の上昇に伴って警報解除閾値が推奨タイヤ圧よりも大きくなることを防止する。
また、実施形態で例示するタイヤ空気圧警報装置は、走行時のタイヤ内温度の上昇を考慮した基準タイヤ空気圧を有しており、基準タイヤ空気圧からのタイヤ内圧の低下を検出して警報を発する。基準タイヤ空気圧はタイヤ温度に対して所定の関係で予め定められているので、基準タイヤ空気圧はいわばタイヤ温度により補正された基準圧であるともいえる。
そこで、以下図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態のタイヤ温度(T)とタイヤ内圧(P)との関係を説明する概念図である。タイヤ空気圧警報装置は、図1に示すように予め定められた基準タイヤ空気圧100を温度との関係で有している。基準タイヤ空気圧100は、典型的には車両とタイヤとの関係で定められた推奨タイヤ空気圧である。
例えば、タイヤ温度がTrである場合に、ユーザが基準タイヤ空気圧100として推奨されたタイヤ内圧Prに調整したとする。しかし、走行時の発熱や車両環境温度等によって、その後のタイヤ温度は常にTrであるわけではなく変動する。タイヤ温度の変動により、タイヤの空気充填や空気抜け等がない場合においても、タイヤ内圧は図1に基準タイヤ空気圧100として示したように変動する。
また、警報開始閾値は、図1に警報開始タイヤ空気圧閾値グラフ120に示すように、タイヤ温度(T)との関係において定められる。図1に示す例においては、警報開始タイヤ空気圧閾値グラフ120は、任意の温度において基準タイヤ空気圧100の75%のタイヤ空気圧であるものとして記載している。
また、警報解除閾値は、図1に警報解除タイヤ空気圧閾値グラフ110として示すように、タイヤ温度(T)との関係において定められる。図1に示す例においては、警報解除タイヤ空気圧閾値グラフ110は、所定温度(Tr:典型的には25℃基準温度である)より低い場合において、基準タイヤ空気圧100の90%のタイヤ空気圧であるものとして記載している。上述のように、警報開始閾値と警報解除閾値とは、基準タイヤ空気圧100に対する所定の割合で設定する。
ここで、図2に示す従来のタイヤ温度(T)とタイヤ内圧(P)との関係について説明する。図2は、従来のタイヤ温度(T)とタイヤ内圧(P)との関係を説明する概念図である。
図2から明らかなように、警報開始閾値は、警報開始タイヤ空気圧閾値グラフ120(2)に示すように、タイヤ温度(T)との関係において定められる。図2においては、警報開始タイヤ空気圧閾値グラフ120(2)は、任意の温度において基準タイヤ空気圧100の75%のタイヤ空気圧であるものとして記載している。
また、警報解除閾値は、図2に警報解除タイヤ空気圧閾値グラフ110(2)として示すように、タイヤ温度(T)との関係において定められる。図2に示す例においては、警報解除タイヤ空気圧閾値グラフ110(2)は、任意の温度において、基準タイヤ空気圧100の90%のタイヤ空気圧であるものとして記載している。
図2において、タイヤ温度(T)が所定温度Trより低いT1である場合には、警報開始閾値と警報解除閾値との差はΔH1である。また、図2において、タイヤ温度(T)が所定温度Trより高いT2である場合には、警報開始閾値と警報解除閾値との差はΔH2(2)である。
ここで、従来、タイヤ温度(T)が所定温度Trより高いか否かに拘わらず、警報開始閾値は、常に基準タイヤ空気圧100の75%のタイヤ空気圧である。また、タイヤ温度(T)が所定温度Trより高いか否かに拘わらず、警報解除閾値は、常に基準タイヤ空気圧100の90%のタイヤ空気圧である。
このため、警報開始閾値と警報解除閾値との差ΔH1とΔH2とは、タイヤ温度(T)に拘わらず同一となる。このため、タイヤ温度(T)が所定温度Trより高いT2である場合には、タイヤ内圧(P)は、P2(2)となり、所定温度Trの場合の基準圧Prに相当に近い値となる。また、さらにタイヤ温度(T)が上昇すれば、タイヤ内圧(P)は、警報解除タイヤ空気圧閾値グラフ110(2)に則って上昇するので、所定温度Trの場合の基準圧Prを超える場合が生じ得る。
すなわちこの場合には、所定温度Trの場合の基準圧Prを超えるタイヤ内圧(P)であるにも拘わらず、タイヤ空気圧低下の警報解除が為されず、タイヤ空気圧低下を告知する警報が発し続けられることなる。このような状況は、運転者等に、正確なタイヤ状態を告知して認識させる意味においてあまり好ましいものとはいえない。
そこで、タイヤ空気圧警報装置は、タイヤ温度(T)が所定温度Trより高い場合には、図1に示すように警報解除タイヤ空気圧閾値グラフ110の傾きを緩やかにして、所定温度Trの場合の基準圧Prを超えないようにする。所定温度Trは、予め25℃の基準温度としてもよいし、例えばリセットポイント130として運転者等によるタイヤ空気圧(P)の設定調整が為された場合、あるいはリセットされた場合等の、タイヤ温度(T)としてもよい。
図1に示すように、警報解除タイヤ空気圧閾値グラフ110は、典型的には下記式(1)の関係を有する。
また、式(1)及び式(2)の関係においては、Pα<Pβであるものとする。しかし、警報解除タイヤ空気圧閾値グラフ110は、式(1)及び式(2)の関係に限定されることはなく、上述の技術思想の範囲内で任意の関係を有することとできる。
タイヤ空気圧警報装置は、ヒステリシスΔH1及びΔH2を有することにより、気温の変動等によりタイヤ温度(T)が変動した場合でも、警報ランプ等の点灯と消灯とを短期間のうちにサイクリックに繰り返すことを防止できる。
また、タイヤ温度(T)が走行等により上昇している場合には、車両周囲環境の気温変動等の影響を受けにくいものと考えられる。従って、タイヤ温度(T)が走行等により上昇している場合には、ヒステリシスをΔH1からΔH2へと小さくしても、気温変動等による警報ランプの消灯と点灯とを短期間のうちに繰り返す状況は生じ難いものとなる。なお、図1に示すようにヒステリシスΔH2は、タイヤ温度(T)の上昇に対応して次第に小さくすることが好ましい。
また、車両が停止状態から走行を始めた場合には、タイヤ内温度が上昇する。そしてタイヤ内温度の上昇に対応して、タイヤ空気圧が上昇する。また、タイヤ内等に装着された送信機は、タイヤ空気圧センサーとタイヤ温度センサーとの検出値を送信する機能を有する。
ここで、タイヤ空気圧センサーは、リアルタイムでタイヤ空気圧を検出するものと考えられる。一方、タイヤ温度センサーは、タイヤ内温度がタイヤ温度センサーに伝達されるのに時間を要することから、タイヤ温度センサーは、過渡状態においては、タイヤ温度センサーの検出値から推定されたタイヤ空気圧と現実のタイヤ空気圧との間に相違が生じることが想定される。
そこで、タイヤ内温度の上昇カーブを予め実験的にシミュレーションし、温度センサーの温度上昇カーブを測定し、車速と周囲環境温度とに対して、温度センサーの温度上昇カーブのマップを構成しておくことが考えられる。タイヤ内温度は、一般的に車速と周囲の環境温度とによって、過渡的な温度上昇率のカーブが定まるものと考えられる。
従って、現実の走行時には、上述のシミュレーションが再現されるので、温度センサーの検出値から得られる温度によって補正されたタイヤ空気圧と現実のタイヤ空気圧との相違がある場合には、その時の車速と周囲環境温度(外気温)とから、上述のマップによるずれと同等か否かを判定できる。また、上述のマップによるずれと同等であれば、そのずれを補正してもよい。これにより、より正確なタイヤ状態を認識可能となる。
なお、タイヤの空気圧とタイヤの温度とを検出する検知システム等は、既に周知の技術事項であると思われるが、以下に例示して説明することとする。ここで、検知システムは上述のタイヤ空気圧警報装置に対応する。
図3は、タイヤの空気圧と温度とを検知する検知システム300の構成を例示する説明概念図である。図3において、送信制御部350は、A/D変換部351と、送信データ生成部353と、識別情報記憶部354と、書込/読出制御部352と、シリアル通信部355と、シリアルデータの入出力手段356とを備える。
入出力手段356は、タイヤ状態検知部370の外装に配置され、タイヤ状態検知部370へ外部からアクセスが可能に構成される。入出力手段356は、例えば、タイヤ状態検知部370を不図示の空気圧検出システムに組み込む前に、またはタイヤの交換時等に、識別情報記憶部354にタイヤID等を書き込む場合に用いられる。
A/D変換部351は、空気圧検出部310と温度検出部320とが、タイヤの空気圧及びタイヤ内の温度を検出して出力したアナログの空気圧データ信号及び温度データ信号を、デジタル信号に変換する。
また、送信データ生成部353は、予め設定した所定の時間ごとにA/D変換部351を作動させて、A/D変換部351が出力した空気圧データ及び温度データを一時記憶する。送信データ生成部353は、先に取得した空気圧データ及び温度データと、その次に取得した空気圧データ及び温度データと、の各々の差を比較演算し、比較演算した差が予め設定された許容値を超えたときに、送信データを生成することとしてもよい。
送信データには、上述した比較演算した低い値の方の空気圧データ及び高い値の方の温度データと、この差を生じたタイヤを特定するタイヤID(タイヤ識別情報ともいう)と、車両ID等とを含んでもよい。
送信データ生成部353は、識別情報記憶部354を参照してタイヤID等を取得することによって送信データを生成する。また、送信データ生成部353は、生成した送信データを無線送信部340に出力する。
識別情報記憶部354は、例えば不揮発性メモリ等の記憶媒体で構成され、対象となるタイヤ位置を識別するためのタイヤIDと、車両IDとを記憶してもよい。また、書込/読出制御部352は、入出力手段356から車両IDのデータ信号及びタイヤIDのデータ信号を含めた書込要求信号が入力されると、識別情報記憶部354に車両ID及びタイヤIDを書き込む。
また、書込/読出制御部352は、変調/復調部330が出力した車両IDのデータ信号及びタイヤIDのデータ信号を含めた書込要求信号を受信すると、識別情報記憶部354に車両ID及びタイヤIDを書き込む。
また、書込/読出制御部352は、入出力手段356から読出要求信号が入力されると、A/D変換部351から出力された空気圧データ信号及び温度データ信号を、シリアル通信部355を介して入出力手段356から出力させてもよい。
また、書込/読出制御部352は、変調/復調部330から読出要求信号が入力されると、A/D変換部351から出力される空気圧データ信号及び温度データ信号を、変調/復調部330に出力してもよい。
無線送信部340は、送信データ生成部353が供給する送信データを、所定の搬送周波数の搬送波を所定の変調方式で変調して、データ信号を生成する。そして、生成したデータ信号を、送信アンテナ360から無線送信する。
不図示の非接触受電部は、タイヤ状態検知部370に電力を供給する。また、非接触受電部は、受信側コイルと、整流部と、定電圧部と、変調/復調部330とを備えることとできる。
変調/復調部330は、識別情報記憶部354に車両IDやタイヤIDを書き込み処理する場合、あるいは空気圧検出部310及び温度検出部320並びにA/D変換部351が正常に動作しているか否かを確認する場合等に、不図示の非接触給電部の送信側コイルが発信する書込要求信号や読出要求信号を復調してもよい。
変調/復調部330は、読出要求信号を書込/読出制御部352に送信する。また、取得した空気圧データ信号及び温度データ信号を変調し、変調した空気圧データ信号及び温度データ信号を、不図示の受信側コイルを介して非接触給電部の送信側コイルに送信してもよい。
検知システム300は、ホイールに取り付けられたタイヤ状態検知部370の送信データ生成部353が、予め設定した所定の時間ごとにA/D変換部351を作動させることによって、空気圧検出部310及び温度検出部320が検出した空気圧データ信号及び温度データ信号をA/D変換部351にデジタル化させる。
また、検知システム300は、デジタル信号化された空気圧データ及び温度データを一時記憶する。送信データ生成部353は、所定の時間ごとにA/D変換部351から得られる空気圧データ及び温度データについて、以前に取得した空気圧データ及び温度データと、その後に取得した空気圧データ及び温度データとの差をそれぞれ比較演算する。
さらに、送信データ生成部353は、比較演算結果の差が予め設定された許容値を超えたときに、識別情報記憶部354に格納されている車両ID及びタイヤIDを参照することによって、前記した送信データを生成するとともに、この送信データ信号を無線送信部340に出力する。
実施形態で説明したタイヤ空気圧警報装置とタイヤ空気圧警報装置の制御方法とは、上述の説明に限定されることはなく、自明な範囲で適宜構成を変更し、その動作および処理を変更して用いることとできる。
100・・基準タイヤ空気圧、110・・警報解除タイヤ空気圧閾値グラフ、120・・警報開始タイヤ空気圧閾値グラフ、130・・リセットポイント、300・・検知システム、310・・空気圧検出部、320・・温度検出部、330・・変調/復調部、340・・無線送信部、350・・送信制御部。