以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき説明する。
(駆動装置としての実施形態の説明)
図1は、本発明の実施形態にかかる駆動装置1の構成を示すブロック図である。この駆動装置1は、固定体11、該固定体11に揺動可能に支持される可動体12、形状記憶合金アクチュエータ13、バイアスバネ14、駆動手段15、駆動制御手段16及び衝撃検知手段17を備えて構成されている。
固定体11は、底板111と、互いに対向する第1側板113及び第2側板114とを備え、不動体として各種機器の筐体や本体ボディ等に固着される。前記底板111には、可動体12の移動方向(図中の矢印x方向)に延びる長孔状のガイドスリット112が設けられており、後述する可動体12のガイド部121が前記ガイドスリット112に沿ってガイドされるようになっている。
可動体12は、形状記憶合金アクチュエータ13からの駆動力若しくはバイアスバネ14からのバイアス力が与えられることで、図中の矢印x方向へ移動される被駆動部材である。この可動体12の下面には棒状のガイド部121が突設されており、かかるガイド部121が前記ガイドスリット112に嵌入されている。このガイド部121には、底板111の上面と当接する第1フランジ部122と、底板111の下面と当接する第2フランジ部123とが備えられており、これら第1、第2フランジ部122、123と底板111とが係合することで、可動体12が固定体11に支持されている。
形状記憶合金アクチュエータ13は、例えばNi−Ti合金等の形状記憶合金(SMA)ワイヤからなる線アクチュエータである。形状記憶合金アクチュエータ13の両端にはそれぞれ第1固定部131、第2固定部132が固着されており、前記第1固定部131が固定体11の第1側板113に固定され、第2固定部132が可動体12の第1側辺124に固定されている。この形状記憶合金アクチュエータ13は、低温で弾性係数が低い状態(マルテンサイト相)において所定の張力を与えられることで伸長し、この伸長状態において熱が与えられると相変態して弾性係数が高い状態(オーステナイト相;母相)に移行し、伸長状態から元の長さに戻る(形状回復する)という性質を有している。
本実施形態では、形状記憶合金アクチュエータ13を通電加熱することで、上述の相変態を行わせる構成が採用されている。すなわち、形状記憶合金アクチュエータ13は所定の抵抗値を有する導体であることから、当該形状記憶合金アクチュエータ13自身に通電することでジュール熱を発生させ、該ジュール熱に基づく自己発熱によりマルテンサイト相からオーステナイト相へ変態させる構成とされている。
バイアスバネ14は、前記形状記憶合金アクチュエータ13に所定の張力を与える収縮バネである。このバイアスバネ14の両端には、それぞれ第1固定部141、第2固定部142が固着されており、前記第1固定部141が固定体11の第2側板114に固定され、第2固定部132が可動体12の第1側辺124と対向する第2側辺125に固定されている。当該バイアスバネ14としては、マルテンサイト相にある形状記憶合金アクチュエータ13に適宜な伸長力を与えつつ拮抗する一方で、オーステナイト相では形状記憶合金アクチュエータ13の形状回復力により引き伸ばされるようなバネ力(収縮力)を有するものが選択される。
駆動手段15は、電圧供給回路等からなるドライバであり、形状記憶合金アクチュエータ13に駆動電圧を印加して通電加熱し駆動力を発生させるものである。この駆動手段15と形状記憶合金アクチュエータ13とはリード線151により電気的に接続されており、駆動手段15にて発生された駆動電圧がリード線151を介して形状記憶合金アクチュエータ13へ印加されるようになっている。
駆動制御手段16は、マイクロコンピュータ等からなり、駆動手段15から形状記憶合金アクチュエータ13に与えられる駆動電圧を制御するものである。すなわち、駆動制御手段16は、可動体12の移動目標値に応じて形状記憶合金アクチュエータ13を駆動させる制御信号を生成し、該制御信号を駆動手段15に与え、前記移動目標値に応じた駆動電圧を発生させる。この他、駆動制御手段16は、当該駆動装置1に外部衝撃が与えられた場合、或いは外部衝撃が与えられる可能性が高い場合に、駆動手段15から形状記憶合金アクチュエータ13への駆動電圧の供給を停止させる制御も行う(この点は後記で詳述する)。
図2は、駆動制御手段16による可動体12の移動制御状況を示す説明図である。図2(a)は、駆動手段15から形状記憶合金アクチュエータ13へ駆動電圧が与えられていない状態(通電OFF)を示している。この場合、形状記憶合金アクチュエータ13は通電加熱されていないことからマルテンサイト相に変態しており、弾性係数が低く易変形性である。従って、バイアスバネ14の収縮力が可動体12を介して形状記憶合金アクチュエータ13に作用することで、形状記憶合金アクチュエータ13は伸長され、結果として可動体12は図中矢印x1の方向へ移動されることとなる。
一方、図2(b)は、駆動手段15から形状記憶合金アクチュエータ13へ所定の駆動電圧が与えられている状態(通電ON)を示している。この場合、形状記憶合金アクチュエータ13は通電加熱され、オーステナイト相に逆変態して弾性係数が高くなり、伸長状態から元の長さの記憶形状に復帰する。すなわち、形状記憶合金アクチュエータ13は、バイアスバネ14の収縮力に打ち勝って形状回復することから、結果として可動体12は図中矢印x2の方向へ移動されることとなる。
衝撃検知手段17は、固定体11乃至は可動体12に与えられる外部衝撃を検知乃至は予測して所定の検知信号を発生するものである。衝撃検知手段17としては、外部衝撃を検知するものとして構成する場合は、例えば角速度センサ、速度センサ、加速度センサ、方位センサ、衝撃センサ等を用いることができる。
例えば、当該駆動装置1がユーザにハンドリングされている場合において床面に落下する状態を想定すると、前記角速度センサ、速度センサ、加速度センサを用いる場合は、落下衝撃が駆動装置1に加わったことによる急激な速度変化が検知されたときに「衝撃有り」と判定することができる。また、前記方位センサを用いる場合は、床面との衝突に伴う急激な方位変化が検知されたときに、衝撃センサを用いる場合は、所定の閾値を超える衝撃が検知されたときにそれぞれ「衝撃有り」と判定することができる。なお、この外部衝撃検知タイプの衝撃検知手段17は、駆動装置1の構造上、衝撃波がダイレクトにタイムラグなく形状記憶合金アクチュエータ13へ伝達されてしまう機構となっている場合は、形状記憶合金アクチュエータ13の保護が間に合わない場合があるので、次の外部衝撃予測タイプの衝撃検知手段17を用いることが望ましい。
衝撃検知手段17を、外部衝撃を予測するものとして構成する場合も、角速度センサ、速度センサ、加速度センサ、方位センサ等を用いることができる。上記と同様に当該駆動装置1がユーザにハンドリングされている場合において床面に落下する状態を想定すると、前記角速度センサ及び速度センサを用いる場合は、通常のハンドリングでは検知され得ない高い出力値が検知されたとき、現在落下中であって落下に伴う衝撃がその後に予測されるものとして「衝撃有り」との判定をすることができる。また、加速度センサを用いる場合は、物体の落下加速度に近似した加速度が検知されたときに、方位センサを用いる場合は、落下に伴う錐揉み状の方位変動等が検知されたときに、近似に落下衝撃の発生が予測されるものとして「衝撃有り」との判定をすることができる。
次に、駆動制御手段16による形状記憶合金アクチュエータ13の保護機能について説明する。図3は、駆動制御手段16の機能構成を示すブロック図である。マイクロコンピュータ等からなる駆動制御手段16は、機能的に、通電制御部161、SMA動作制御部162、衝撃判定部163及び通電再開判定部164を備えて構成されている。
通電制御部161は、SMA動作制御部162から与えられる可動体12の移動目標値に応じて形状記憶合金アクチュエータ13を駆動させる制御信号を生成する。また、衝撃判定部163の判定結果に応じて、形状記憶合金アクチュエータ13への通電を停止させる制御信号、或いは形状記憶合金アクチュエータ13の通電加熱温度が、マルテンサイト変態終了温度以下となるように駆動電圧を低減させる制御信号を生成する。さらに、通電再開判定部164の判定結果に応じて、形状記憶合金アクチュエータ13への通電を再開させる制御信号を生成する。これらの制御信号は電圧供給回路(駆動手段15)に与えられ、該制御信号に応じた駆動電圧が駆動手段15から形状記憶合金アクチュエータ13へ供給される。
SMA動作制御部162は、可動体12の移動目標値に関する動作制御信号を生成して通電制御部161に出力する。前記動作制御信号は、例えばユーザのマニュアル操作による可動体12の移動位置信号、所定の移動ルーチンに従った動作信号、或いは可動体12の姿勢を位置センサ等でモニタしつつ所定の移動位置へ追従させるサーボ制御信号等である。
衝撃判定部163は、例えば角速度センサ(衝撃検知手段17)が検知した外部衝撃が、所定レベル以上の外部衝撃に相当するものである場合に、「衝撃有り」との判定信号を生成し、通電制御部161へ出力する。かかる判定信号を受けると通電制御部161は、上述のように形状記憶合金アクチュエータ13への通電停止、或いは駆動電圧を低減する制御を行う。このように、外部衝撃に応じて形状記憶合金アクチュエータ13への通電停止等を行うのは、オーステナイト相に変態している形状記憶合金アクチュエータ13に衝撃波に起因する大きな応力が加わることで、形状回復不能な変形(伸び変形や圧縮変形)が発生してしまうことを抑止するためである。
図4は、形状記憶合金の温度(相状態)と弾性係数との関係を示すグラフである。形状記憶合金は、マルテンサイト変態終了温度以下の低温状態では弾性係数が低く、この温度領域では金属原子の結合を切り離すことなく変形することができる。すなわち、形状記憶合金アクチュエータ13への通電がOFFとされている場合若しくは通電加熱温度がマルテンサイト変態終了温度以下である場合(図2(a)の状態)は、形状記憶合金アクチュエータ13は易変形性であり、また塑性変形させたとしても逆変態終了温度以上に加熱してオーステナイト相に戻すことで形状回復させることができる。従って、マルテンサイト相の領域で外部衝撃が加わり形状記憶合金アクチュエータ13が変形したとしても、その後に通電加熱してオーステナイト相に戻せば、元の状態に形状回復させることができる。
一方、形状記憶合金が逆変態温度以上に加熱され、オーステナイト相に逆変態している高温状態では弾性係数が高くなり、容易に変形しない状態となる。この状態で形状記憶合金に大きな外力が作用すると、金属原子の結合が切り離されて変形することとなり、かかる変形が生じてしまうと元の形状に回復できなくなる。すなわち、形状記憶合金アクチュエータ13が逆変態終了温度以上に通電加熱されている場合(図2(b)の状態)において外部衝撃が与えられてしまうと、原子結合が切断されるような変形が生じてしまい、形状回復できないケースが生じ得る。このような変形が生じると、形状記憶合金アクチュエータ13は、例えば原点復帰位置にずれが生じることから、アクチュエータとしての機能が低下してしまうことになる。
以上の点に鑑みて、本実施形態では、衝撃検知手段17により検知された外部衝撃に相当する検知信号が、所定レベル以上の外部衝撃に相当するものであるかを衝撃判定部163にて判定させ、所定レベル以上である場合は、形状記憶合金アクチュエータ13がマルテンサイト変態終了温度以下の温度となるように通電制御部161において、通電OFF或いは駆動電圧低減の制御信号を生成させるものである。
ここで衝撃検知手段17が角速度センサである場合、上述の外部衝撃に相当する検知信号とは、外部衝撃検知タイプとして運用するケースでは、前記角速度センサの出力電圧について所定の閾値を設定し、該閾値を超過する出力電圧に対応するような検知信号をいう。また、外部衝撃予測タイプとして運用する場合は、所定の前兆現象に呼応した出力電圧に対応するような検知信号をいう。
外部衝撃を予測する方法の具体例について、図5に基づいて説明する。図5は、角速度センサ(衝撃検知手段17)の出力電圧の時間変化と駆動装置1の状態とを関連付けたタイムチャートである。ここでも、駆動装置1がユーザにハンドリングされている場合において床面に落下するケースを想定している。通常のハンドリングが行われている時刻t0〜t1の間、角速度センサの出力電圧は低いレベルにある。そして、手を滑らせる等して時刻t1で駆動装置1の落下が開始すると、通常のハンドリングでは起きないような大きな振れ力が駆動装置1に加わることから出力電圧は高いレベルになり、時刻t2で最大の出力電圧Vmaxに至るようになる。このような高出力状態は、駆動装置1が床面に衝突する時刻t3まで続く。その後、駆動装置1の揺動が落ち着くに連れて、角速度センサの出力電圧は低いレベルになる(時刻t4)。
ここで、角速度センサの出力電圧が振り切れる(Vmax)ような高出力状態が所定時間継続するような事象は、通常のハンドリングでは先ず生じることはない。そこで、衝撃判定部163において、例えば出力電圧がVmaxに至った時刻t2から時間カウントを開始させ、Vmaxの状態が所定時間Pだけ継続した場合、近時に衝撃の発生が予想されるものとして、「衝撃有り」との判定信号を生成するよう構成することができる。この場合、所定時間Pが経過した時刻tmに、「衝撃有り」との判定信号が生成され、これを受けて通電制御部161は、通電OFF或いは駆動電圧低減の制御を行う。
図3に戻って、通電再開判定部164は、衝撃判定部163の判定結果により通電制御部161において、通電OFF或いは駆動電圧低減の制御が行われた後、実質的に衝撃の終了を意味するような所定のパラメータの変動若しくは所定の制御信号の入力に基づいて、形状記憶合金アクチュエータ13をマルテンサイト変態終了温度以上に通電加熱することの可否を判定する。通電再開判定部164は、通電を再開することが可能と判定した場合、「通電再開可」を表す判定信号を生成し、通電制御部161に出力する。通電制御部161は、該判定信号を受けて、形状記憶合金アクチュエータ13に対する通常の動作モードにおける駆動電圧制御を再開する。
通電再開判定部164は、衝撃検知手段17として使用しているセンサ等の特性、運用に応じて、適宜なパラメータを通電再開のための判定要素とすることができる。例えば、衝撃検知手段17として角速度センサを用い図5に示したような出力電圧が得られた場合ならば、出力電圧レベルが高レベルから低レベルに変化した時点(例えば時刻t4の時点)を検知して「通電再開可」を表す判定信号を生成するように構成することができる。
この他、衝撃検知手段17の検知信号に依存せず、衝撃検知(予測)に伴い通電OFF或いは駆動電圧低減を行った時刻(時刻tm)から所定時間が経過したか否かを判定要素とすることができる。また、形状記憶合金アクチュエータ13の応力値(通電抵抗を測定することで知見可能)の変化を判定要素としても良い。或いは、ユーザからの操作信号の入力、若しくはこれに類する外部からの制御信号の入力に基づき「通電再開可」を表す判定信号を生成するようにしても良い。
続いて、以上の通り構成された駆動装置1の外部衝撃対応動作について、図6に示すフローチャートに基づいて説明する。ここでは、衝撃検知手段17として角速度センサを用い、外部衝撃予測タイプとして運用する場合についてのフローを示している。駆動装置1の動作が開始されると、駆動手段15から形状記憶合金(SMA)アクチュエータ13への通電が開始(若しくは通電スタンバイ状態)される(ステップS1)。以降、SMA動作制御部162から与えられる動作制御信号に応じて、通電制御部161は、可動体12を所定の位置へ移動させるために、形状記憶合金アクチュエータ13に対する通電制御を行う。
他方、所定のサンプリング周期で、衝撃検知手段17(角速度センサ)から駆動装置1の振れに応じた検知信号が衝撃判定部163に取得される(ステップS2)。衝撃判定部163において、取得された検知信号に基づき、衝撃予測値を求める演算が行われる(ステップS3)。例えば図5に示す例の場合は、出力電圧=Vmaxが最初に検知された時刻からの継続時間を求める演算が行われる。
そして、この演算値と判定基準値(図5の例では所定時間P)との比較が行われ(ステップS4)、演算値が判定基準値を下回っている場合は(ステップS4でNO)、衝撃判定部163は衝撃予測結果として「衝撃なし」と判定し、その判定信号を通電制御部161へ出力する(ステップS5)。その後、駆動装置1の駆動停止指示が駆動制御手段16に入力されたか否かが確認され(ステップS6)、駆動停止指示が無い場合は(ステップS6でNO)、ステップS2へ戻って処理が繰り返される。一方、駆動停止指示が有った場合は(ステップS6でYES)、駆動手段15から形状記憶合金アクチュエータ13への通電がOFFとされ(ステップS7)、処理が終了する。
これに対し、演算値が判定基準値を上回っている場合は(ステップS4でYES)、衝撃判定部163は衝撃予測結果として「衝撃有り」と判定し、その判定信号を通電制御部161へ出力する(ステップS8)。この場合、通電制御部161は、近々に衝撃波が当該駆動装置1に与えられると予測されることから、形状記憶合金アクチュエータ13への通電を停止させ(ステップS9)、形状記憶合金アクチュエータ13がオーステナイト相の状態において強い外力が作用することを予防する。勿論、形状記憶合金アクチュエータ13の通電加熱温度が、マルテンサイト変態終了温度以下となるように駆動電圧を低減させるようにしても良い。なお、既に形状記憶合金アクチュエータ13の通電加熱温度がマルテンサイト変態終了温度以下である場合は、ステップS9をスキップしても良い。
これに続き、所定のサンプリング周期で、衝撃検知手段17から検知信号が通電再開判定部164に取得され(ステップS10)、その検知信号に基づいて、衝撃が終了したか否か、すなわち形状記憶合金アクチュエータ13への通電を再開できる状態であるか否かが判定される(ステップS11)。通電再開判定部164にて、衝撃が終了していないと判定された場合(ステップS11でNO)、ステップS10に戻って衝撃終了の確認ループが繰り返される。
一方、通電再開判定部164にて、衝撃が終了したと判定された場合(ステップS11でYES)、引き続いて駆動装置1の駆動停止指示が駆動制御手段16に入力されたか否かが確認され(ステップS12)、駆動停止指示が無い場合は(ステップS12でNO)、ステップS1へ戻り、駆動手段15から形状記憶合金アクチュエータ13への通電が開始(再開)される。これに対し、駆動停止指示が有った場合は(ステップS12でYES)、そのまま処理が終了される。
以上の通り構成された駆動装置1によれば、形状記憶合金アクチュエータ13がオーステナイト相である状態で外部衝撃力が加わってしまうことが可及的に抑止されることから、形状記憶合金アクチュエータ13を用いた駆動装置1の耐衝撃性を向上させることができる。
(撮像装置としての実施形態の説明)
図7は、本発明に係る駆動装置が好適に適用されるカメラ付携帯電話機200(撮像装置)の外観構成図である。ここでは、本発明に係る駆動装置が、カメラ付携帯電話機200に内蔵される、撮像光学系を構成する撮影レンズユニット(可動体)に対し手振れ補正機能を付与するために組み込まれる場合を例示している。なお、上記カメラ付携帯電話機200以外に、本発明に係る駆動機構は撮影レンズユニット内蔵型のデジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistant)などの撮像装置にも好適に適用することができる。
図7(a)はカメラ付携帯電話機200の正面(操作面)を表す斜視図であり、図7(b)は背面を表す斜視図である。このカメラ付携帯電話機200は、図7(a)に示すように、第1の筐体210と第2の筐体220とがヒンジ230によって連結された折り畳み可能な構造であって、第1の筐体210の正面には受話器としての役目を担うスピーカ211と、各種情報の表示部としてのLCD(Liquid Crystal Display)212とが設けられ、一方第2の筐体220の正面にはキー入力部221とマイクロホン222とが設けられている。
また、図7(b)に示すように、第1の筐体210の背面には、撮像光学系を構成する撮影レンズユニット30に対する振れ補正機構40(駆動装置)を備えた撮像部C(カメラ部)が、レンズが露出される態様で内蔵されており、さらに該カメラ付携帯電話機200に与えられる振動(撮像時に生じる手振れ振動等)を検出するための、ピッチ方向ジャイロ213とヨー方向ジャイロ214とが内蔵されている。一方、第2の筐体220の背面にはアンテナ223が設けられている。
前記キー入力部221には、携帯電話機能を動作させる各種ダイヤルボタンのほか、画像撮影モードの起動および静止画と動画撮影の切り替えを行うモード設定ボタン、撮影レンズユニット30に内装されている光学系の変倍(ズーミング)動作を制御する変倍ボタン(固定焦点型の光学系の場合は存在しない)、撮影動作を実行させるシャッタボタンなどが含まれている。
図8は、上記撮影レンズユニット30の内部構造を概略的に示すと共に、カメラ付携帯電話機200の大略的な電気的構成を示すブロック図である。このカメラ付携帯電話機200は、撮像動作を行う機能部として、撮像素子33が一体的に組み付けられた撮影レンズユニット30、タイミングジェネレータ(TG)51、アナログフロントエンド(AFE)52、画像処理部53、画像メモリ54、全体制御部55、露出制御駆動部56、フォーカス駆動部57、表示部58及び画像記録部59を備えて構成されている。
撮影レンズユニット30は、被写体の光学像を取り入れ、該撮影レンズユニット30の底部に配置されている撮像素子33へ導く撮像光学系を構成するものである。この撮影レンズユニット30のアウターボディ301の内部には、被写体の光学像を形成するレンズ群302と、撮像光学系の光路を遮光若しくは通光するシャッタ303とが内蔵され、またアウターボディ301の底部位置には、前記レンズ群302によって形成された光学像を電気的な信号に変換する撮像素子33が配置されている。
上記レンズ群302の適所には絞り304が配置されており、またレンズ群302には焦点調節を行うためのフォーカスレンズ305が含まれている。すなわち、前記絞り304の開口面積設定度合い及び前記シャッタ303の開閉動作制御等により撮像素子33の露出制御が行われ、フォーカスレンズ305の光軸方向への移動により焦点調節が行われるものである。かかる撮影レンズユニット30は、上記ピッチ方向ジャイロ213とヨー方向ジャイロ214により検出された振動に応じ、手振れ補正のために形状記憶合金アクチュエータにより揺動駆動される。この点については後記で詳述する。
撮像素子33は、前記レンズ群302により結像された被写体の光学像の光量に応じて、R、G、B各成分の画像信号に光電変換して出力するものである。例えば撮像素子33としては、CCD(Charge Coupled Device)が2次元状に配置されたエリアセンサの各CCDの表面に、R(赤)、G(緑)、B(青)のカラーフィルタが市松模様状に貼り付けられた、いわゆるベイヤー方式と呼ばれる単板式カラーエリアセンサで構成されたものを用いることができる。このようなCCDイメージセンサの他、CMOSイメージセンサ、VMISイメージセンサ等も用いることができる。
タイミングジェネレータ51は、撮像素子33による撮影動作(露光に基づく電荷蓄積や蓄積電荷の読出し等)を制御するものである。タイミングジェネレータ51は、全体制御部55から出力される基準クロックに基づいて所定のタイミングパルス(垂直転送パルス、水平転送パルス、電荷掃き出しパルス等)を生成して撮像素子33に出力し、撮像素子33の撮像動作を制御する。また、所定のタイミングパルスを生成してアナログフロントエンド52に出力することにより、A/D変換動作等を制御する。
アナログフロントエンド52は、撮像素子33から出力される画像信号(CCDエリアセンサの各画素で受光されたアナログ信号群)に所定の信号処理を施し、デジタル信号に変換して画像処理部53へ出力するものである。このアナログフロントエンド52には、アナログ画像信号電圧に含まれるリセット雑音を低減する相関二重サンプリング回路、アナログ画像信号のレベルを補正するオートゲインコントロール回路、黒レベルを示す電位固定化するクランプ回路、アナログのR,G,Bの画像信号を例えば14ビットのデジタル信号に変換するA/D変換回路等が備えられている。
画像処理部53は、アナログフロントエンド52から出力される画像データに所定の信号処理を行って画像ファイルを作成するもので、黒レベル補正回路、ホワイトバランス制御回路、色補完回路及びガンマ補正回路等を備えて構成されている。なお、画像処理部53へ取り込まれた画像データは、撮像素子33の読み出しに同期して画像メモリ54に一旦書き込まれ、以後この画像メモリ54に書き込まれた画像データにアクセスして、画像処理部23の各ブロックにおいて処理が行なわれる。
画像メモリ54は、撮影モード時には、画像処理部53から出力される画像データを一時的に記憶するとともに、この画像データに対し全体制御部55により所定の処理を行うための作業領域として用いられるメモリである。また、再生モード時には、画像記録部59から読み出した画像データを一時的に記憶する。
全体制御部55は、CPU(中央演算処理装置)等からなり、カメラ付携帯電話機200の各部を集中制御する他、撮影動作の制御も行うものである。すなわち全体制御部55は、撮影動作のためのタイミングジェネレータ51の制御、絞り304、フォーカスレンズ305、並びにシャッタ303の駆動制御、画像信号の出力制御などを行う。
また、全体制御部55には、機能的に振れ補正制御部60が備えられている(勿論、振れ補正制御部60が別のマイクロコンピュータで構成されていても良い)。この振れ補正制御部60は、カメラ付携帯電話機200による撮像動作時に振れ補正モードが実行される場合において、前記ピッチ方向ジャイロ213及びヨー方向ジャイロ214からの振れ検出信号に基づいて振れ方向及び振れ量を算出し、算出された方向及び振れ量に基づき振れ補正制御信号を生成して形状記憶合金アクチュエータを駆動させ、撮影レンズユニット30を手振れ等が打ち消される方向に揺動駆動させるものである。該振れ補正制御部60の詳細構成については、図11に基づき後記で詳述する。
露出制御駆動部56は、絞り駆動部561とシャッタ駆動部562とからなる。絞り駆動部561は、全体制御部55から与えられる絞り制御信号に応じ、絞り304を駆動し、所定の開口量に絞りを設定する。シャッタ駆動部562は、同様に全体制御部55から与えられるシャッタ開閉制御信号に応じ、シャッタ303が所定時間開放されるようシャッタ303を開閉駆動する。フォーカス駆動部57は、全体制御部55から与えられる合焦制御信号に応じ、フォーカスレンズ305を焦点位置に移動させるものである。
表示部58は、図7(a)に示したLCD212に相当するもので、撮像された画像や、撮像前のライブビュー画像などを表示することが可能とされている。画像記録部59は、メモリカード等からなり、画像処理部53で画像処理された画像データを保存するものである。
図9は、図8においては図示省略している撮影レンズユニット30に対する振れ補正機構40に関連する構成を簡略的に示すブロック図である。この振れ補正機構40は、撮像素子33が搭載された撮影レンズユニット30、形状記憶合金ワイヤからなる第1形状記憶合金アクチュエータ(第1SMAアクチュエータ31)及び第2形状記憶合金アクチュエータ(第2SMAアクチュエータ32)、前述の振れ補正制御部60、第1SMAアクチュエータ31及び第2SMAアクチュエータ32に駆動電圧を与えて通電加熱する電圧供給回路67、撮影レンズユニット30の揺動姿勢を検知する位置センサ68等を備えて構成され、第1SMAアクチュエータ31及び第2SMAアクチュエータ32の伸縮動作により撮影レンズユニット30を、その回転支持部30B(例えばジンバル機構により撮影レンズユニット30が第1の筐体210に支持される支持部)の軸周りを回転中心として回動させるものである。
第1SMAアクチュエータ31及び第2SMAアクチュエータ32の一端側は固定体である第1の筐体210に固定され、他端側は可動体である撮影レンズユニット30の外周部に固定されている。具体的には、第1SMAアクチュエータ31の一端側には、通電端子を兼ねる第1固定部材311が固着されており、該第1固定部材311が第1の筐体210の適宜な箇所に取り付けられている。また、第1SMAアクチュエータ31の他端側には、同様に通電端子を兼ねる第2固定部材312が固着されており、該第2固定部材312が撮影レンズユニット30外周の適宜な箇所に取り付けられている。第2SMAアクチュエータ32も同様に通電端子を兼ねて、一端側に第3固定部材321が、他端側に第4固定部材322がそれぞれ固着されている。そして、第3固定部材321が第1の筐体210の適宜な箇所に、第4固定部材322が撮影レンズユニット30外周の適宜な箇所にそれぞれ取り付けられている。
電圧供給回路67と第1SMAアクチュエータ31及び第2SMAアクチュエータ32とは電気的に接続され、所定の駆動電圧が供給されるようになっている。すなわち、電圧供給回路67と第1SMAアクチュエータ31の第1固定部材311とは、第1リード線671で接続され、また第2固定部材312と電圧供給回路67とは第2リード線672で接続されており、第1SMAアクチュエータ31を通電抵抗体とする一つの通電ループが形成されている。同様に、電圧供給回路67と第2SMAアクチュエータ32の第3固定部材321とは、第3リード線673で接続され、また第4固定部材322と電圧供給回路67とは第4リード線674で接続されており、第2SMAアクチュエータ32を通電抵抗体とするもう一つの通電ループが形成されている。
第1SMAアクチュエータ31及び第2SMAアクチュエータ32は、所定の張力が与えられ拮抗した状態で、固定体としての第1の筐体210と可動体としての撮影レンズユニット30との間に架け渡されている。これにより、例えば第1SMAアクチュエータ31のみに電圧供給回路67から駆動電圧を与えて通電加熱すると、第1SMAアクチュエータ31がオーステナイト相に変態して収縮する一方で、第2SMAアクチュエータ32は通電加熱されずマルテンサイト相を維持しており易変形性で伸長可能であることから、回転支持部30Bの軸周りを回転中心として撮影レンズユニット30が回動される(図中の矢印F1の方向)。また、第2SMAアクチュエータ32のみを通電加熱すると、第2SMAアクチュエータ32が収縮する一方で、第1SMAアクチュエータ31は伸長することから、回転支持部30Bの軸周りに撮影レンズユニット30が逆方向に回動されるようになる(図中の矢印F2の方向)。
位置センサ68は、ホール素子等を用いた磁気的位置検出素子、フォトインタラプタ等の光学的位置検出素子等からなり、撮影レンズユニット30の回動姿勢を検出し、その位置検出信号を振れ補正制御部60へ出力する。
振れ補正制御部60は、後記で図11に基づき詳述するが、ピッチ方向ジャイロ213及びヨー方向ジャイロ214からの振れ検出信号に基づいて振れ方向及び振れ量を算出し、算出された方向及び振れ量と、前記位置センサ68から与えられる位置検出信号とに基づき振れ補正制御信号を生成して第1SMAアクチュエータ31及び第2SMAアクチュエータ32を適宜通電加熱し、撮影レンズユニット30を手振れ等が打ち消される方向に回転支持部30Bの軸周りに揺動駆動させる。
さらに、振れ補正制御部60はSMA保護回路66を備え、該SMA保護回路66は、ピッチ方向ジャイロ213及びヨー方向ジャイロ214の検知信号に基づき、衝撃が検知乃至は予測される場合に、第1SMAアクチュエータ31及び第2SMAアクチュエータ32への通電を停止させる制御を行う。
なお、図9では簡略化して示しているが、実際は回転支持部30Bの軸周り(ジンバル第1軸)の回動方向と直交する方向に撮影レンズユニット30を回動支持する支持部と、この支持部の軸周り(ジンバル第2軸)に撮影レンズユニット30を回動させる形状記憶合金アクチュエータが装備される。これにより、振れ補正制御部60は撮影レンズユニット30をピッチ方向及びヨー方向に振れ補正駆動させることが可能とされている。
図10は、振れ補正機構の他の実施形態を簡略的に示すブロック図である。図10に示す振れ補正機構40Aは、構成部材は図9の振れ補正機構40と同様であるが、第1SMAアクチュエータ31及び第2SMAアクチュエータ32の配置、並びに撮影レンズユニット30の揺動態様において相違する。以下、これら相違点を中心に説明する。
まず、アクチュエータの配置に関し、図9に示した振れ補正機構40では、第1SMAアクチュエータ31及び第2SMAアクチュエータ32が撮影レンズユニット30の光軸と平行な方向に配置されている(アクチュエータの伸縮方向と光軸とが平行)が、図10に示す振れ補正機構40Aでは、撮影レンズユニット30の光軸と垂直な方向に配置されている(アクチュエータの伸縮方向と光軸とが直交)。
これに伴い、撮影レンズユニット30は、図中矢印F3、F4に示すように水平移動(スライド移動)されるようになる。すなわち、第1SMAアクチュエータ31のみが通電加熱されることで、第1SMAアクチュエータ31が収縮すると共に第2SMAアクチュエータ32が伸長し、これにより撮影レンズユニット30は図中矢印F3の方向へ水平移動される。一方、第2SMAアクチュエータ32のみが通電加熱されることで、第2SMAアクチュエータ32が収縮すると共に第1SMAアクチュエータ31が伸長し、これにより撮影レンズユニット30は図中矢印F4の方向へ水平移動されるものである。
次に、振れ補正制御部60の詳細構成について説明する。図11は、振れ補正制御部60を含む振れ補正機構部の電気的構成を示すブロック図である。この振れ補正機構部は、シャッタボタン(キー入力部221)、カメラ付携帯電話機200に与えられる振動を検出する前述のピッチ方向ジャイロ213及びヨー方向ジャイロ214、各種の回路基板ブロックからなる上述の振れ補正制御部60、揺動駆動される前述の撮影レンズユニット30、該撮影レンズユニット30に揺動力を与える第1SMAアクチュエータ31(例えばピッチ方向アクチュエータ)及び第2SMAアクチュエータ32(例えばヨー方向アクチュエータ)、電圧供給回路67及び位置センサ68を備えている。また、前記振れ補正制御部60は、振れ検出回路61、振れ量検出回路62、係数変換回路63、振れ補正制御回路64、シーケンスコントロール回路65、及びSMA保護回路66を備えて構成されている。
ピッチ方向ジャイロ213は、カメラ付携帯電話機200のピッチ方向の振れを検出するジャイロセンサであり、ヨー方向ジャイロ214は、カメラ付携帯電話機200のヨー方向の振れを検出するジャイロセンサである。ここで用いられるジャイロセンサは、測定対象物(本実施形態ではカメラ付携帯電話機200)が振れによって回転した場合における振れの角速度を検出するものである。また、ピッチ方向ジャイロ213及びヨー方向ジャイロ214は、上述のような振れ角検出手段としての機能と共に、当該カメラ付携帯電話機200に与えられる外部衝撃を検知する衝撃検知手段としての機能を兼ねるものである。
ピッチ方向ジャイロ213が検出したピッチ振れ角速度信号及びヨー方向ジャイロ214が検出したヨー振れ角速度信号は、振れ補正制御部60の振れ検出回路61に入力される。振れ検出回路61は、検出された各角速度信号からノイズ及びドリフトを低減するためのフィルタ回路(ローパスフィルタ及びハイパスフィルタ)及び各角速度信号を増幅するための増幅回路などを備えて構成される。
振れ検出回路61から出力される各角速度信号は、振れ量検出回路62に入力される。振れ量検出回路62は、検出された各角速度信号を所定の時間間隔で取り込み、カメラ付携帯電話機200のX軸方向の振れ量をdetx、Y軸方向の振れ量をdetyとして係数変換回路63に出力する。また、係数変換回路63は、振れ量検出回路62から出力される各方向の振れ量(detx,dety)を、各方向の移動量(px,py)、つまり第1SMAアクチュエータ31及び第2SMAアクチュエータ32により、撮影レンズユニット30を移動させるべき移動量に変換する。
係数変換回路63から出力された各方向の移動量(px、py)を示す信号は、振れ補正制御回路64に入力される。振れ補正制御回路64は、撮影レンズユニット30の位置を検出する位置センサ68からの位置情報、第1SMAアクチュエータ31及び第2SMAアクチュエータ32の通電動作特性等を考慮して、各方向の移動量(px、py)を示す信号を実際の駆動信号(drvx、drvy)に変換する。振れ補正制御回路44にて生成された、撮影レンズユニット30の補正移動量信号となる各方向の駆動信号(drvx、drvy)は、第1SMAアクチュエータ31及び第2SMAアクチュエータ32へ実際に駆動電圧を与えるドライバである電圧供給回路67に出力される。
以上の振れ量検出回路62、係数変換回路63及び振れ補正制御回路64の動作は、シーケンスコントロール回路65によって制御される。すなわち、シーケンスコントロール回路65は、シャッタボタン221が押下されると、振れ量検出回路62を制御することによって、前述した各方向の振れ量(detx,dety)に関するデータ信号を取り込ませる。次に、シーケンスコントロール回路65は、係数変換回路63を制御することによって、各方向の振れ量を各方向の移動量(px、py)に変換させる。そして、振れ補正制御回路64を制御することにより、各方向の移動量に基づいて撮影レンズユニット30の補正移動量を演算させる。このような動作が、撮影レンズユニット30の手振れ補正のために、シャッタボタン221が押されて露光が終了するまでの期間中、一定の時間間隔で繰り返し行われるものである。
一方、SMA保護回路66は、ピッチ方向ジャイロ213及び/又はヨー方向ジャイロ214により外部衝撃が検知乃至は予測された場合に、電圧供給回路67から第1SMAアクチュエータ31及び第2SMAアクチュエータ32への駆動電圧の供給を停止させ、外部衝撃が終了した後に前記駆動電圧の供給を再開させるべく機能するもので、衝撃判定部661と、通電再開判定部662とを備えている。この衝撃判定部661及び通電再開判定部662は、先に図3に基づき説明した衝撃判定部163及び通電再開判定部164と機能的には同じである。
衝撃判定部661は、前記振れ検出回路61を介して入力されるピッチ方向ジャイロ213及び/又はヨー方向ジャイロ214が検知した角速度信号に基づいて、当該カメラ付携帯電話機200に与えられる外部衝撃を検知乃至は予測して所定の判定信号を発生する。すなわち、所定レベル以上の外部衝撃に相当する角速度信号が検知乃至は予測された場合に、「衝撃有り」との判定信号を生成し、振れ補正制御回路64へ出力する。
かかる判定信号を受けると振れ補正制御回路64は、第1SMAアクチュエータ31及び第2SMAアクチュエータ32への通電停止(或いは駆動電圧を低減)する制御を行う。これにより、通電加熱されてオーステナイト相に変態している第1SMAアクチュエータ31及び/又は第2SMAアクチュエータ32に、衝撃波に起因する大きな応力が加わることで形状回復不能な変形が発生してしまうことが抑止される。
通電再開判定部662は、衝撃判定部661の判定結果により振れ補正制御回路64において、通電OFF或いは駆動電圧低減の制御が行われた後、ピッチ方向ジャイロ213及び/又はヨー方向ジャイロ214が検知した角速度信号から、第1SMAアクチュエータ31及び第2SMAアクチュエータ32をマルテンサイト変態終了温度以上に通電加熱することの可否を判定する。すなわち、通電再開判定部662は、外部衝撃が終了したことを意味するような角速度信号を検知され、通電を再開することが可能と判定した場合、「通電再開可」を表す判定信号を生成し、振れ補正制御回路64に出力する。振れ補正制御回路64は、該判定信号を受けて、第1SMAアクチュエータ31及び第2SMAアクチュエータ32に対する通常の動作モードにおける駆動電圧制御を再開する。
続いて、以上の通り構成されたカメラ付携帯電話機200の外部衝撃対応動作について、図12に示すフローチャートに基づいて説明する。ここでは、ピッチ方向ジャイロ213及びヨー方向ジャイロ214が検知した角速度信号を用いて外部衝撃を予測する場合についてのフローを示している。
カメラ付携帯電話機200の電源が投入され、画像撮影モードに移行されると、第1SMAアクチュエータ31及び第2SMAアクチュエータ32による撮影レンズユニット30の振れ補正を実行させる振れ補正スイッチがON(例えばシャッタボタン221の半押し状態)であるか否かを確認するループが実行される(ステップS21)。振れ補正スイッチがONとされている場合(ステップS21でYES)、電圧供給回路67が起動され、該電圧供給回路67から第1SMAアクチュエータ31及び第2SMAアクチュエータ32への通電スタンバイ状態とされる(ステップS22)。
次に、所定のサンプリング周期で、振れ検出回路61を介してピッチ方向ジャイロ213及びヨー方向ジャイロ214が検出した角速度信号がSMA保護回路66に取得される(ステップS23)。続いて、SMA保護回路66の衝撃判定部661において、取得された角速度信号に基づき、衝撃予測値を求める演算が行われる(ステップS24)。ここでの演算は、先に図5に基づいて説明した例を援用することができる。
そして、この演算値と判定基準値との比較が行われ(ステップS25)、演算値が判定基準値を下回っている場合は(ステップS25でNO)、衝撃判定部661は衝撃予測結果として「衝撃なし」と判定し、その判定信号を振れ補正制御回路64へ出力する(ステップS26)。
この場合、第1SMAアクチュエータ31及び第2SMAアクチュエータ32が適宜通電加熱され、撮影レンズユニット30の振れ補正駆動が実行される。すなわち、ピッチ方向ジャイロ213及びヨー方向ジャイロ214が検出した角速度信号に基づき、振れ量検出回路62でピッチ方向及びヨー方向の振れ量が算出され(ステップS27)、係数変換回路63で撮影レンズユニット30を各方向に移動させるべき量が演算により求められる(ステップS28)。そして、振れ補正制御回路64にて前記各方向の移動量に応じて、第1SMAアクチュエータ31及び第2SMAアクチュエータ32を駆動させる制御信号が生成され、該制御信号に応じた駆動電圧が電圧供給回路67から第1SMAアクチュエータ31及び第2SMAアクチュエータ32へ供給される(ステップS29)。これにより撮影レンズユニット30は、カメラ付携帯電話機200に与えられた振れを打ち消す方向に振れ補正駆動されることとなる。
その後、振れ補正スイッチのOFF(若しくは画像撮影モードの停止)指示が振れ補正制御部60に入力されたか否かが確認され(ステップS30)、スイッチOFF指示が無い場合は(ステップS30でNO)、ステップS23へ戻って処理が繰り返される。一方、スイッチOFF指示が有った場合は(ステップS30でYES)、電圧供給回路67から第1SMAアクチュエータ31及び第2SMAアクチュエータ32への通電がOFFとされ(ステップS31)、処理が終了する。
これに対し、上記のステップS25において演算値が判定基準値を上回っている場合は(ステップS25でYES)、衝撃判定部661は衝撃予測結果として「衝撃有り」と判定し、その判定信号を振れ補正制御回路64へ出力する(ステップS32)。この場合、振れ補正制御回路64は、近々に衝撃波が当該カメラ付携帯電話機200に与えられると予測されることから、第1SMAアクチュエータ31及び第2SMAアクチュエータ32への通電を停止させ(ステップS33)、第1SMAアクチュエータ31及び第2SMAアクチュエータ32がオーステナイト相の状態において強い外力が作用することを予防する。勿論、第1SMAアクチュエータ31及び第2SMAアクチュエータ32の通電加熱温度が、マルテンサイト変態終了温度以下となるように駆動電圧を低減させるようにしても良い。なお、既に第1SMAアクチュエータ31及び第2SMAアクチュエータ32の通電加熱温度がマルテンサイト変態終了温度以下である場合は、ステップS33をスキップしても良い。
これに続き、所定のサンプリング周期で、ピッチ方向ジャイロ213及びヨー方向ジャイロ214から角速度信号が通電再開判定部662に取得され(ステップS34)、その角速度信号に基づいて、衝撃が終了したか否か、すなわち第1SMAアクチュエータ31及び第2SMAアクチュエータ32への通電を再開できる状態であるか否かが判定される(ステップS35)。通電再開判定部662にて、衝撃が終了していないと判定された場合(ステップS35でNO)、ステップS34に戻って衝撃終了の確認ループが繰り返される。
一方、通電再開判定部662にて、衝撃が終了したと判定された場合(ステップS35でYES)、引き続いて振れ補正スイッチのOFF指示が振れ補正制御部60に入力されたか否かが確認され(ステップS36)、スイッチOFF指示が無い場合は(ステップS36でNO)、ステップS22へ戻り、電圧供給回路67から第1SMAアクチュエータ31及び第2SMAアクチュエータ32への通電が再開(スタンバイ)される。これに対し、駆動停止指示が有った場合は(ステップS36でYES)、そのまま処理が終了される。
以上の通り構成されたカメラ付携帯電話機200によれば、第1SMAアクチュエータ31及び第2SMAアクチュエータ32がオーステナイト相である状態で外部衝撃力が加わってしまうことが可及的に抑止されることから、第1SMAアクチュエータ31及び第2SMAアクチュエータ32を用いた撮影レンズユニット30の振れ補正機構が搭載されたカメラ付携帯電話機200の耐衝撃性を向上させることができる。
以上、本発明にかかる駆動装置及び撮像装置の実施形態につき説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば次の(1)〜(7)のような変形実施形態を採用することも可能である。
(1)図9、図10に示した振れ補正機構40、40Aでは、2本のSMAアクチュエータを使用する場合を例示したが、第1SMAアクチュエータ31及び第2SMAアクチュエータ32のいずれか一方を、撮影レンズユニット30の移動動作をアシストするバイアスバネに置換するようにしても良い。
図13は、図9に示す振れ補正機構40において、第2SMAアクチュエータ32を、縮み方向にチャージされたコイルバネ34(付勢手段)に置換した振れ補正機構40Bを示すブロック図である。前記コイルバネ34は、その一端側が第5固定部材341により固定体である第1の筐体210に取り付けられ、他端側が第6固定部材642により可動体である撮影レンズユニット30の外周部に取り付けられている。かかるコイルバネ34は、第1SMAアクチュエータ31に所定の張力を与えるもので、第1SMAアクチュエータ31が通電加熱されずマルテンサイト相にあるときは、第1SMAアクチュエータ31に適宜な伸長力を与えつつ拮抗する一方で、通電加熱されたオーステナイト相では第1SMAアクチュエータ31の形状回復力により引き伸ばされるような収縮バネ力を有している。
このような構成を備えることで、第1SMAアクチュエータ31に電圧供給回路67から駆動電圧が与えられて通電加熱されると、第1SMAアクチュエータ31が形状回復して収縮すると共に、その収縮力でコイルバネ34が伸長され、これにより撮影レンズユニット30が回転支持部30Bの軸周りに、図中矢印F1の方向へ回動される。一方、第1SMAアクチュエータ31への通電が停止されると、コイルバネ34の復元力により、撮影レンズユニット30は逆に図中矢印F2の方向へ回動されるようになる。
また図14は、図10に示す振れ補正機構40Aにおいて、第2SMAアクチュエータ32を、縮み方向にチャージされたコイルバネ34に置換した振れ補正機構40Cを示すブロック図である。この場合も、第1SMAアクチュエータ31が通電加熱されると、第1SMAアクチュエータ31が形状回復して収縮すると共に、その収縮力でコイルバネ34が伸長され、これにより撮影レンズユニット30が図中矢印F3の方向へ水平移動される。一方、第1SMAアクチュエータ31への通電が停止されると、コイルバネ34の復元力により、撮影レンズユニット30は逆に図中矢印F4の方向へ水平移動されるようになる。そして、図13、図14に示した振れ補正機構40B、40Cいずれにおいても、外部衝撃が検知乃至は予測された場合に、SMA保護回路66により、第1SMAアクチュエータ31への通電が停止乃至は駆動電圧が低減され、第1SMAアクチュエータ31が外部衝撃から保護されるものである。
(2)図9に示した振れ補正機構40(或いは図13に示した振れ補正機構40B)では、可動体30が、その本体中心部付近に設けられた回転支持部30Bを回転中心として回動される場合を例示したが、前記回転中心を、可動体30を支持する回転ヒンジとした構成とすることもできる。
図15は、回転ヒンジ30Cによる可動体30の支持状態を示す斜視図である。この支持機構では、図略の固定体(第1の筐体210)と可動体30とは、中間支持部材35を介して連結されおり、この中間支持部材35には、可動体30を図15に示すZ軸周りに回動可能に支持する線状支持部からなる回転ヒンジ30Cが備えられている。中間支持部材35及び回転ヒンジ30Cは弾性材料からなり、回転ヒンジ30Cの部分が薄肉化されていることで、回転ヒンジ30Cの延在方向に沿った前記Z軸周りの回動が可能とされている。なお、中間支持部材35は図略の固定体に固着される。
図16は、上記のような回転ヒンジ30Cが採用された振れ補正機構40Dの構成を示すブロック図である。この振れ補正機構40Dでは、図9の場合とは異なり、第1SMAアクチュエータ31と第2SMAアクチュエータ32とが互いに直交する方向に配置されている。なお、回転支持部30Bが回転ヒンジ30Cに置換される点と、第1、第2SMAアクチュエータ31、32の配置関係が異なる点とを除けば、図9に示した振れ補正機構40と同様な構成である。
かかる構成において、電圧供給回路67から第1SMAアクチュエータ31へ駆動電圧が与えられ、第1SMAアクチュエータ31が形状回復動作を行うと、可動体30は回転ヒンジ30Cを回転中心として、図中矢印F5の方向に回動される。一方、電圧供給回路67から第1SMAアクチュエータ31へ駆動電圧が与えられ、第2SMAアクチュエータ32が形状回復動作を行うと、図中矢印F6の方向に回動されるものである。
(3)図11に示した振れ補正制御部60では、位置センサ68により撮影レンズユニット30の位置を検出しつつ振れ補正制御を行うクローズ制御について例示したが、位置センサ68を用いないオープン制御を行うようにしても良い。或いは、撮影レンズユニット30にジャイロを搭載するようにし、前記ジャイロの出力値がゼロとなるように撮影レンズユニット30を振れ補正駆動するようにしても良い。
(4)上記実施形態では、ジャイロセンサ(ピッチ方向ジャイロ213及びヨー方向ジャイロ214)にてカメラ付携帯電話機200の振れを検出する例を示したが、加速度センサや、撮像素子33で取得された画像データに基づき振れを検出するようにしても良い。また、カメラ付携帯電話機200の振れ検出と外部衝撃の検出とを、同一のジャイロセンサに担わせる例を示したが、振れ検出と外部衝撃の検出とを各々別個のセンサで行うようにしても良い。
(5)外部衝撃が加わるか否かの判定を行う他の例として、シャッタボタン221(レリーズスイッチ)の押下状態を判定要素とするものを例示することができる。例えばシャッタボタン221を連続押下することでカメラ付携帯電話機200において動画撮影が可能とされている場合、前記シャッタボタン221の連続押下状態が解除されたとき、ユーザが手を滑らせカメラ付携帯電話機200に滑落衝撃が与えられる可能性が高まったものとして、SMAアクチュエータへの通電を停止させるように構成することができる。
(6)上記実施形態では、形状記憶合金アクチュエータとして、形状記憶合金ワイヤからなる線アクチュエータを用いる場合について例示したが、ワイヤの態様に限らず、帯状のものやコイル状のものを用いるようにしても良い。
(7)上記実施形態では、カメラ付携帯電話機200に搭載される撮影レンズユニット30を可動体とし、その振れ補正機構に本発明にかかる駆動装置が適用される例を示したが、図8に示す絞り駆動部561やフォーカス駆動部57の駆動源として(つまりフォーカスレンズ305を可動体として)、当該駆動装置を用いるようにしても良い。或いは、図10、図14に示した振れ補正機構40A、40Cにて、撮像素子33を2次元方向に振れ補正駆動させるようにしても良い。また、撮像装置に限らず、各種の産業機器、家電機器等の駆動部にも、本発明にかかる駆動装置を適用することが可能である。