JP4638663B2 - シリカマスターバッチ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
またシリカとして、有機ケイ素で処理した特定の形態(平均四量体構造物)の相溶化シリカを用いたシリカウエットマスターバッチが提案されている(特許文献2参照)。
また本発明のシリカマスターバッチは、特定量のカーボンブラックを含有することで、本来シリカと相溶性(なじみ)の悪い油成分を、シリカマスターバッチ中に於いて均一且つ多量に含有させることができるので、シリカマスターバッチを粉末状ではなくベール状に成型できるのでゴム製品製造における混練、加工性が向上し、工業上極めて有利である。
・ゴム成分
本発明に用いられるゴム成分は特に制限はなく、従来公知の任意のゴムを使用することが出来るが、特に乳化重合ゴムが好ましい。例えば天然ゴム;スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム等の乳化重合ジエン系ゴムが挙げられる。中でも例えば、本発明のシリカマスターバッチをタイヤ用に用いる際には、耐摩耗性や耐ウエットスキット性、転がり抵抗性、等の観点から、SBRが好ましい。このSBRにはアミノ基などの極性基を導入した変成SBRも好適に用いられる。ゴム成分の分子量(重量平均分子量)についても特に制限はなく、従来からシリカマスターバッチに用いられているゴム成分と同等で有ればよく、具体的には1×104〜1×107、中でも1×105〜1×106、特に4×105〜7×106であることが好ましい。
本発明に用いられる油成分は特に制限はなく、従来公知の任意の油成分を使用することが出来る。具体的には例えばクルツ法組成分析でカルシウム(Ca)分が20重量%程度以上のいわゆるアロマオイルや、アロマオイルよりCa分の少ないナフテンオイル、パラフィンオイル等が挙げられ、これらを単独で、又は任意の割合で併用してもよい。中でも、本発明のシリカマスターバッチを用いたゴム製品における力学的特性改善の観点から、アロマオイルを用いることが、更には安全性面の観点からは発癌性の疑いの少ないDMSO抽出分3%以下の低PCA(poly−cyclic aromatic hydrocarbon)アロマオイルを用いることが好ましい。
本発明のシリカマスターバッチにおいて用いるシリカは、その表面に疎水基を有するシリカを用いる。本発明のシリカマスターバッチにおける該シリカの含有量は任意であり、シリカマスターバッチの用途に応じて適宜選択して決定すればよいが、一般的には、ゴム成分100重量部に対して30〜120重量部、中でも50〜90重量部含有することが好ましい。含有量が少なすぎるとシリカマスターバッチの特徴が薄れ、そのために別添加の粉体シリカ添加量が増えてシリカ良分散メリットが減少し、逆に多すぎてもシリカマスターバッチ自身のムーニー粘度が高くなり混練加工性が悪化する場合がある。
中でもCTAB比表面積が100〜210m2/g、更にはCTAB比表面積が110〜180m2/gであることが、耐摩耗性等の力学的特性が良好であるため好ましい。
本発明のシリカマスターバッチにおいては、ゴム成分100重量部に対して、カーボンブラックを特定量含有することを最大の特徴とする。カーボンブラックの含有量が少なすぎるとカーボンブラックの添加効果による油成分の含有量を増加しづらく、逆に多すぎてもシリカウエットマスターバッチとしての特徴及びゴム製品とした際の配合自由度が制限されるだけでなく、シリカマスターバッチ中のシリカの分散性が低下する場合がある。よって本発明のシリカマスターバッチにおけるカーボンブラックの含有量は、ゴム成分100重量部に対して0.1〜10重量部、中でも0.5〜10重量部、更には1〜7重量部、特に2〜5重量部とすることが好ましい。
本発明のシリカマスターバッチは、先述のゴム成分、表面に疎水基を有するシリカ、油成分、及びカーボンブラックを従来公知のシリカマスターバッチの製造方法によって混合して製造すればよく、その方法は特に制限はない。本発明のシリカマスターバッチは、中でもシリカ分散の良好な湿式法、即ち水や有機溶媒中にシリカを分散させて製造するシリカウエットマスターバッチ法等による製造方法、いわゆるシリカウエットマスターバッチとすることが好ましい。この際、ウエットマスターバッチに用いる液媒体は任意だが、一般的には水やトルエン、シクロヘキサン等の有機溶媒が挙げられる。中でも水を用いることが好ましい。以下、本発明のシリカマスターバッチの製造方法として、シリカウエットマスターバッチを例にして説明する。
シリカウエットマスターバッチの製造に際しては、これらを混合し、凝固剤等を添加してシリカウエットマスターバッチを得る。凝固剤としては硫酸、塩酸、硝酸等のルイス酸、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム等の金属塩等が挙げられ、中でも硫酸マグネシウム等の多価金属塩が好ましい。
ウエットマスターバッチの調製
<実施例1>
ゴム成分、シリカ、シランカップリング剤、オイル、及びカーボンブラックの重量比が、100、100、8、80、4であるシリカマスターバッチを以下の手順[1]〜[5]により製造した。
[1].3リットル容器に800gのビス(エトキシシリルプロピル)ジスルファン(日本ユニカー社製:商品名A1589)と400gのエタノールを入れた後、800gの水と160gの1%硫酸水溶液を加えて撹拌して、シランカップリング剤溶液を得た。
[2].20リットルの容器に400gのカーボンブラックN234M(三菱化学社製)と5.3kgの水を入れ、20分間撹拌して、カーボンブラック分散液を得た。
[3].100リットル容器に10kgの粉状シリカ(日本シリカ社製:ニップシールAQ)と88kgの水を入れ、更に[1]で得られたシランカップリング剤溶液を加えて撹拌しながら60℃に昇温した後に、[2]で得られたカーボンブラック分散液を加えた。
[4].別の20リットル容器にアロマオイル8kgを入れ、6%濃度の脂肪酸石鹸水溶液2.7kgを加えた後、撹拌してO/W型オイルエマルジョンを調製した。
[5].別の100リットル容器にゴム成分濃度22%のSBRラテックス45.5kgを入れ、これに[3]で得られたカーボンブラック分散液と[4]で得られたエマルジョンとを加えた後、撹拌しながら硫酸マグネシウムを加えてpHを4.5とし、凝固を完了させた。凝固物を脱水、乾燥して、塊(クラム)状のシリカウエットマスターバッチを得た。尚、容器内壁には油成分等の付着は見受けられなかった。
ゴム成分、シリカ、シランカップリング剤、オイル、及びカーボンブラックの重量比を、100、80、6.4、60、2とした以外は、実施例1と同様にしてシリカウエットマスターバッチを製造し、分析した。尚、シリカウエットマスターバッチを凝固させた容器の内壁には油成分等の付着は見受けられなかった。シリカウエットマスターバッチ中には、原料として用いたシリカと油成分が、ほぼ全量含有されており、これらはシリカウエットマスターバッチ中に於いて均一に分散していた。また塊(クラム)状のシリカウエットマスターバッチを油圧圧縮プレス機にて成型加工したところ、ベール状のシリカウエットマスターバッチが得られた。
ゴム成分、シリカ、シランカップリング剤、オイル、及びカーボンブラックの重量比を、100、80、6.4、30、2とした以外は、実施例1と同様にしてシリカウエットマスターバッチを製造し、分析した。尚、シリカウエットマスターバッチを凝固させた容器の内壁には油成分等の付着は見受けられなかった。シリカウエットマスターバッチ中には、原料として用いたシリカと油成分が、ほぼ全量含有されており、これらはシリカウエットマスターバッチ中に於いて均一に分散していた。また塊(クラム)状のシリカウエットマスターバッチを油圧圧縮プレス機にて成型加工したところ、ベール状のシリカウエットマスターバッチが得られた。
ゴム成分、シリカ、シランカップリング剤、オイル、及びカーボンブラックの重量比を、100、50、4、30、2とした以外は、実施例1と同様にしてシリカウエットマスターバッチを製造し、分析した。尚、シリカウエットマスターバッチを凝固させた容器の内壁には油成分等の付着は見受けられなかった。シリカウエットマスターバッチ中には、原料として用いたシリカと油成分が、ほぼ全量含有されており、これらはシリカウエットマスターバッチ中に於いて均一に分散していた。また塊(クラム)状のシリカウエットマスターバッチを油圧圧縮プレス機にて成型加工したところ、ベール状のシリカウエットマスターバッチが得られた。
シリカウエットマスターバッチを凝固させた容器の内壁には油成分等の付着は見受けられなかったが、得られたシリカウエットマスターバッチ中のシリカは、原料として使用したシリカの10重量%程度にとどまり、原料シリカの殆どは凝固した際の水相に存在していた。
カーボンブラックを用いずに、つまり[2]のカーボンブラック分散液を使用しない以外は、実施例2と同様にしてシリカウエットマスターバッチを製造し、分析した。
しかし、シリカウエットマスターバッチを凝固させた容器内壁には油成分が多量に付着しており、シリカウエットマスターバッチ中に油成分が定量的には取り込まれなかった。またこの塊状シリカウエットマスターバッチは脆く、手で簡単に崩れてしまうので、油圧圧縮プレス機によるベール状への加工は出来なかった。
ゴム成分100重量部に対するカーボンブラックの重量部を15重量部とした以外は、実施例2と同様にしてシリカウエットマスターバッチを製造し、分析した。得られたシリカウエットマスターバッチ中でのシリカの分散は不均一であり、局所的にはシリカウエットマスターバッチ中のゴム成分100重量部に対するシリカの含有率が70重量%の箇所や、ゴム成分100重量部に対するシリカの含有率が120重量%の箇所があった。後者のシリカ含有率の多い箇所は非常に脆く、シリカウエットマスターバッチとして使用不可なものであった。
実施例2で得られたシリカウエットマスターバッチを用いて、ゴム成分、シリカ、シランカップリング剤、油成分、カーボンブラック、ステアリン酸、酸化亜鉛、硫黄、加硫促進剤の重量比が、100、80、6.4、30、2、2、3、2、3.5となるように表2記載の配合剤を用い、これらをバンバリーミキサーで混練した後、170℃、20分間の加硫を行って、ゴム製品テストピースを作製した。このテストピースについて、表2に記載の方法に準拠して、シリカ分散度、引張り強さ、及び伸びを測定した。結果を表2に示す。
ゴム成分、シリカ、シランカップリング剤、油成分、カーボンブラック、ステアリン酸、酸化亜鉛、硫黄、加硫促進剤の重量比が、実施例5と同様となるように、表2記載の組成の原料をバンバリーミキサーで混練した後、170℃、20分間の加硫を行って、テストピースを作製し、実施例5と同様にゴム製品テストピースの諸特性を測定した。結果を表2に示す。
表2から明らかなとおり、本発明のシリカウエットマスターバッチを用いて得られた実施例5のゴム製品テストピースは、比較例4でのそれと比べて、シリカ分散が良好であり、優れた引張強さと伸びを示した。
また本発明のシリカマスターバッチは、油成分を均一且つ多量に含有させることができるので、油成分が少ないがために固くて加工しづらいベールではなく、加工しやすい(固くない)ベール状に成型でき、ゴム製品製造における混練、成型加工性が向上し、工業状極めて有利となる。
Claims (6)
- ゴム成分、表面に疎水基を有するシリカ、及びO/W型乳化物である油成分を含むシリカマスターバッチであって、更にカーボンブラックをゴム成分100重量部に対して0.1〜10重量部含有することを特徴とするシリカマスターバッチ。
- シリカ表面の疎水基がオリゴスルファン基を含むことを特徴とする請求項1に記載のシリカマスターバッチ。
- ゴム成分がスチレン−ブタジエン共重合体を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のシリカマスターバッチ。
- カーボンブラックの窒素吸着比表面積が50〜200m2/gであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のシリカマスターバッチ。
- ウェットマスターバッチであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のシリカマスターバッチ。
- シリカとシランカップリング剤とを反応させて得られた表面に疎水基を有するシリカを、ゴム成分、O/W型乳化物である油成分、及びカーボンブラックと混合することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のシリカマスターバッチの製造方法。
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