JP4611507B2 - 結晶シリコン製造装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコン融液を冷却して一方向に徐々に凝固させる結晶シリコン製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
多結晶シリコン太陽電池は、今日最も多く製造されている太陽電池である。多結晶シリコン太陽電池の発電素子(ソーラー・セル)の最も重要な性能は、エネルギー変換効率である。このエネルギー変換効率は、基板が有する結晶粒界および結晶粒内の結晶の配向性に大きく左右される。これらは、ソーラー・セル内のキャリアの寿命の短縮や移動度の低下の原因となって、エネルギー変換効率を低下させるためである。そのため、エネルギー変換効率を向上させるためには、多結晶シリコンの製造において、その結晶粒界をできるだけ少なくする、言い換えると、結晶粒径をできるだけ大きな結晶粒に成長させること、そして、その結晶粒内の配向性を向上させることが重要である。
【0003】
多結晶シリコンを製造する方法で代表的なものに、一方向凝固法がある。この方法では、ルツボを配置したチャンバー内にアルゴンガス等の不活性ガスを充満させておき、ルツボに収容した原料の固体シリコンをルツボの上下に配置した加熱手段により加熱してシリコン融液とし、次いで、ルツボの下方の加熱手段の作動を停止するとともに、該ルツボの底部に不活性ガスを吹き付けるようにしながら流通させ、シリコン融液内にルツボの底部から上部方向へ正の温度勾配を付与して、シリコン融液を底部から徐々に冷却・凝固させることにより、結晶を上方へと成長させていく。この方法によれば、太陽電池用ウェハとして十分な数ミリ以上の結晶粒径を有する多結晶シリコンインゴットが得られることが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の一方向凝固法において、固体のシリコンを加熱手段により加熱してシリコン融液を生成するが、そのシリコン融液を生成するのに長時間かかるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、固体シリコンの溶融時間の短縮化を図ることができる結晶シリコン製造装置を提供するのを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明においては、以下の手段を採用した。
本発明では、チャンバー内に、シリコン融液を収容するルツボと、そのルツボを載置する載置台と、ルツボおよび載置台を包囲する包囲炉と、ルツボ内に収容した固体シリコンを加熱してシリコン融液を生成する加熱部とを備え、前記ルツボ内のシリコン融液を底部から上方へと一方向凝固させる結晶シリコン製造装置において、前記加熱部は、前記包囲炉内で前記ルツボの上方位置に配置された上加熱部を有し、少なくとも前記包囲炉の天板部の内面全面に、前記包囲炉内の熱反射率を高める熱反射膜が設けられていることを特徴とする。
【0007】
このように包囲炉の内面に熱反射膜が設けられていると、固体シリコンの加熱溶融時、該熱反射膜により包囲炉内の熱の反射率を高め、包囲炉内を、固体シリコンの溶融する温度に可及的迅速に上昇させることができるので、シリコン融液をそれだけ短時間で生成できることにより、固体シリコンの溶融する時間を確実に短縮化することができる。
【0008】
そして、前記熱反射膜としては包囲炉において上半分の内面に設けられており、前記包囲炉の下半分の内面に設けられていないことが望ましく、シリコン融液を下部から冷却するとき、その冷却作用を阻害するおそれもない。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
結晶シリコン製造装置1は、図1及び図2に示すように、チャンバー2内に、シリコン融液3を収容するルツボ4と、そのルツボ4を載置する載置台5と、ルツボ4および載置台5を包囲する包囲炉6と、包囲炉6内でルツボ4の上方位置および下方位置に各々配置され、固体シリコン3aを加熱してシリコン融液3を生成する上加熱部7a,下加熱部7bとが設けられている。
【0010】
チャンバー2を構成する壁の内部には中空部2aが形成され、そこに冷却水を流すことによって、個体シリコン3aの溶融後のチャンバー2およびその内部の冷却を効率的に行えるようになっている。載置台5は断熱材5aを介しルツボ4を載置している。
【0011】
包囲炉6は、図2に示すように、複数の断熱材により天板部61と底板部62とそれらの周囲を囲む側板部63とを有して形成され、例えば正面から見て図1に示す如き円筒状で、かつ側面から見て図2に示すように四角の形状をなしている。また、包囲炉6の下部には支持部が相対向して設けられ、この支持部上にチルプレート8を介し載置台5を支持している。包囲炉6の天板部61には、この天板部61を貫通して流入ノズル20が配管されている。流入ノズル20は不活性ガスであるアルゴンガスを包囲炉6内に流入させるものであり、チャンバー2の外部に設置され、昇降機構20aの駆動により、シリコン融液3に対する距離を変更できるようになっている。
【0012】
上加熱部7aおよび下加熱部7bは、ルツボ4の長さ方向に沿って複数配設されたヒータで構成されている。また、下加熱部7bは、チルプレート8より下方位置にあって、かつ包囲炉6の支持部の間に配設されている。
【0013】
そして、包囲炉6には載置台5の下方位置に下開口9が形成され、その下開口9を開閉する下部開閉機構10を有している。この下部開閉機構10は、下開口9を開閉するシャッター11と、このシャッター11を包囲炉6の底板部62の底面に沿い互いに離間する方向に開動作させるアクチュエータ12とを具備し、固体シリコン3aの加熱時、アクチュエータ12の駆動によりシャッター11が下開口9を閉じた状態にしておき、シリコン融液3の冷却時、アクチュエータ12の駆動を解除し、シャッター11を開くようにしている。このシャッター11も断熱機能を果たせるようカーボンで形成されている。
【0014】
包囲炉6のシャッター11の下方位置に吸熱板13が設けられている。吸熱板13は、包囲炉6内の輻射熱を吸熱するためのものであって、チャンバー2の下部において下開口9およびシャッター11と対向する位置に取付けられ、カーボンで形成されている。
また、吸熱板13は、チャンバー2内を流通する冷却水用の冷却水路14を形成している。即ち、吸熱板13はチャンバー2の底面と適宜の空間をもって配置されており、冷却水路14は、チャンバー2内の中空部2a及びチャンバー2の底面と吸熱板13との間の空間によりチャンバー2内全体を包囲するように形成されている。
なお、チャンバー2の底部にはチャンバー2及び吸熱板13を貫通する冷却ノズル21が設けられている。冷却ノズル21は、シリコン融液3の冷却時、アルゴンガスをチルプレート8に向けて吹き付けるように包囲炉6内に下方から流入する。
【0015】
さらに、包囲炉6には、図2に示すように、側板部63の上部に上開口15が設けられ、この上開口15を開閉する上部開閉機構16をも有している。この上部開閉機構16は、側板部63の外面にヒンジを介し開閉可能に取付けられた開閉扉17と、この開閉扉17にピポット継手19を介し連結されたアクチュエータ18とを具備している。そして、固体シリコン3aの加熱時には、開閉扉17が図2に示す実線の如く側板部63の上開口15を閉じた状態にしておき、シリコン融液3の冷却時、アクチュエータ18の駆動により、開閉扉17を鎖線に示す如く開くようにしている。
【0016】
またさらに、包囲炉6およびチャンバー2の上部には排気ポート22が配管されている。この排気ポート22は、シリコン融液3の冷却時、下方から包囲炉6内にアルゴンガスが流入したとき、そのガスAが包囲炉6内に滞留するのを防ぐよう、包囲炉6およびチャンバー2内のガスAを吸引するためのものであって、図1,図3に示すように、包囲炉6の側板部63を貫通して配管された四本の包囲炉用ポート部と、チャンバー2内の前記上開口15に臨む位置に配管された二本のチャンバー用ポート部とからなっている。
本例の包囲炉用ポート部は、包囲炉6の周囲に沿い適宜の角度でそれぞれ同一方向に傾斜して配管され、またチャンバー用ポート部も包囲炉用ポート部に準じた角度で傾斜して配管されている。
【0017】
一方、包囲炉6の内面には熱反射膜51が設けられている。熱反射膜51は、包囲炉6内の熱の反射率を高める一方、輻射率を下げるためのものであって、表面が金属面状の光沢をなしており、本例では、日本カーボン株式会社製の「カーボンコーティング FGL−203」が採用されている。
この熱反射膜51は、シリコン融液3の冷却時、包囲炉6の下部から上方へ冷却する必要があることから、少なくとも包囲炉6の天板部61の内面全面に設けられる他、側板部63の上半分の内面にも設けられ、しかも冷却効率を低下させないよう、側板部63の下半分の内面や底板部62に設けないことが望ましい。
なお、図1において、23は観察用のビューポート、24は温度センサー、25は上,下加熱部7a,7bの配線類を通すポートである。
【0018】
上記構成の結晶シリコン製造装置1を用いて、結晶シリコンを製造する場合には、まず、ルツボ4内に原料のチップ状の固体シリコン3aを収容する。このとき、下部開閉機構10のシャッター11が図1に示す如く下開口9を閉じると共に、上部開閉機構16の開閉扉17が包囲炉6の上開口15を閉じておく。
次いで、包囲炉6内に流入ポート20からアルゴンガスを流入し、所定圧のガス雰囲気に保ち、その状態で上加熱部7a,下加熱部7bを作動して包囲炉6内を昇温させ、溶融温度に達した時点でルツボ4内の固体シリコン3aが溶融することにより、シリコン融液3が生成される。因みに、シリコンの溶解温度は1480℃である。
【0019】
上記加熱溶融時、包囲炉6の内面に熱反射膜51が設けられていると、該熱反射膜51により包囲炉6内の熱の反射率を高めると共に、輻射率を下げることができ、包囲炉6内を、固体シリコン3aの溶融する温度に可及的迅速に上昇させ、シリコン融液3をそれだけ短時間で生成できることにより、固体シリコン3aの溶融する時間を確実に短縮化することができる。
【0020】
そして、シリコン融液3が生成されると、このシリコン融液3を冷却することにより、シリコンが凝固して結晶化されることとなる。
上記冷却に際し、ルツボ4内のシリコン融液3を下部から上方へ一方向に凝固させるため、上加熱部7aを作動状態のままとして下加熱部7bの作動を停止した後、下部開閉機構10によりシャッター11を開くと、包囲炉6内の熱が下開口9から吸熱板13に吸熱される。これにより、包囲炉6内はシリコンの溶融温度から1000℃程度まで降下する。
【0021】
この場合、熱反射膜51は、包囲炉6の天板部61の内面全面に設けられると共に、側板部63の上半分の内面にも設けられ、側板部63の下半分の内面や底板部62に設けられていないので、シリコン融液3を下部から冷却するとき、その冷却作用を阻害することがなく、冷却効率が低下するおそれもない。
【0022】
また上記冷却時、チャンバー2の中空部2aには冷却水が流通していることにより、包囲炉6内の熱が吸熱板13からチャンバー2,チャンバー2内の冷却水に伝わる。
この場合、冷却ポート21によりアルゴンガスが下方から流入し、チルプレート8側を冷却しながら上昇する一方、包囲炉内のアルゴンガスが包囲炉用ポート部から排気されることにより、包囲炉6内の熱をアルゴンガスとともに排出する。
【0023】
そうして包囲炉6内の下部が1000℃以下に降下すると、ルツボ4内のシリコン融液3が凝固し始める。このシリコン融液3が凝固し始めると、上加熱部7aの作動も停止することにより、ルツボ4内のシリコン融液3が下部から上部にかけて徐々に凝固する。
さらに、上部開閉機構16の開閉扉17を開き、包囲炉6内の熱を上開口15からもチャンバー2と包囲炉6との間の空間に放散させることにより、包囲炉6内の全体がアルゴンガスの吸熱によって冷却される。この場合、包囲炉6内のガスが上開口15からチャンバー2内に流入するが、チャンバー2内の空間を経由してチャンバー用ポート部から排気される。
【0024】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、包囲炉の内面に熱反射膜が設けられ、固体シリコンの加熱溶融時、熱反射膜により包囲炉内の熱の反射率を高め、包囲炉内を、固体シリコンの溶融する温度に可及的迅速に上昇させることができるように構成したので、シリコン融液を短時間で生成できることにより、固体シリコンの溶融時間を確実に短縮化することができ、ひいては結晶シリコンインゴットの製造時間を速める効果がある。
【0025】
また本発明によれば、前記熱反射膜として、包囲炉において少なくとも上半分の内面に設けられることが望ましく、シリコン融液を下部から冷却するとき、その冷却作用を阻害することがなく、冷却効率が低下するおそれもない効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による結晶シリコン製造装置の一実施形態を示す正断面図である。
【図2】 図1の結晶シリコン製造装置の側断面図である。
【図3】 包囲炉の壁の一部を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
1 結晶シリコン製造装置
2 チャンバー
3 シリコン融液
4 ルツボ
5 載置台
6 包囲炉
7a 上加熱部
7b 下加熱部
10 下部開閉機構
11 シャッター
12 アクチュエータ
13 吸熱板
51 熱反射板
Claims (2)
- チャンバー内に、シリコン融液を収容するルツボと、そのルツボを載置する載置台と、ルツボおよび載置台を包囲する包囲炉と、ルツボ内に収容した固体シリコンを加熱してシリコン融液を生成する加熱部とを備え、前記ルツボ内のシリコン融液を底部から上方へと一方向凝固させる結晶シリコン製造装置において、
前記加熱部は、前記包囲炉内で前記ルツボの上方位置に配置された上加熱部を有し、
少なくとも前記包囲炉の天板部の内面全面に、前記包囲炉内の熱反射率を高める熱反射膜が設けられていることを特徴とする結晶シリコン製造装置。 - 前記熱反射膜は、包囲炉において上半分の内面に設けられており、前記包囲炉の下半分の内面に設けられていないことを特徴とする請求項1記載の結晶シリコン製造装置。
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