JP4610166B2 - 遊技盤用化粧板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、パチンコ等のピンボール遊技機及び他の遊技機に用いられ、遊技盤の盤面に貼着使用される遊技盤用化粧板に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のパチンコ遊技盤を例とする化粧板のほとんどは、セルロイドあるいは通称キャブロイドと呼ばれるセルロースアセテートブチレート(CAB)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂による透明な表面材の裏面に、オフセット、グラビア、シルク印刷等の手段で意匠模様を印刷した後、さらに裏面全面に通常白色のバックコート印刷を施し、ウレタン系、酢酸ビニル系等のエマルジョン接着剤を塗布使用して、紙基材を裏打ち材料として貼着した化粧板であり、その後、これらの化粧板は木製のベニヤ合板等の遊技盤基板に酢酸ビニル系のエマルジョン接着剤などを使用して紙基材面が貼着される。
【0003】
一方、パチンコ遊技盤はもっとも市場に普及した遊技機でもあり、遊技客獲得のため年間を通じて何度ものモデルチェンジが行われ新機種を投入する。新機種の発売当初は、他の遊技場との顧客獲得競争から新規採用の発注が短期間に集中するため、遊技機メーカーでは、市場での話題性などから予測した数字を頼りに大量の生産を開始せざるを得ず、また、受注ピークを経過後は、リピートによる少量の受注に対しての生産にも対応をしなければならない。
【0004】
ここで、遊技盤用化粧板を製造する工程の第1は表面材への印刷加工であり、第2として紙基材等の裏打材接着加工の順であるため、まずは該表面材への印刷加工が先行して行われることになる。印刷工程では、インキの調色、色合わせ調整に時間を要し、少ロットの生産では採算が合わないため、販売予測した不確定な数字と、少量のリピート分をさらに考慮して、印刷部材を余剰に生産せざるを得ず、絶えず印刷部材のリスク負担を伴うものであった。
【0005】
特に従来の化粧板では、CAB樹脂など高価なプラスチックの透明表面材に印刷され、また、印刷自体も高度な技術が要求される上、さらに、インキの乾燥が遅く多色印刷時の印刷効率も悪く、これらの点から必然的に印刷コストが上昇する。その結果、これら印刷加工済みの表面材が、長期在庫もしくは生産予測の誤算によるデッドストック化等のリスク負担によって、化粧板の製造コストを低減できない要因となっていた。
【0006】
そのため、実公昭62−908号、特公平3−80423号、特開2003−38743号公報等の提案がされており、これらは、裏打材としての紙基材の表面に印刷加工を行い、後に透明なプラスチック表面材を貼着する遊技盤用の化粧板を提案するものであり、上質紙、コート紙、あるいは合成紙等の安価で印刷適正に優れた印刷紙を使用して印刷を行うため、さらには、白色紙に印刷を施すため従来の白色全面バックコート印刷が省略できるなどの点で、印刷コストが低減されるばかりか、印刷加工済みの印刷紙の長期在庫あるいはデッドストック化によるリスク負担を軽減できる提案であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの提案にも拘わらず、現実的に未だ実用化されていないのが現状である。これは、従来の化粧板であれば表面材裏面に対する印刷を適正に管理さえすれば、裏面のバックコートにより隠されるため、裏打材との接着に係わる態様について、適宜な接着剤を使用して一切問題とならなかった。しかし、上記提案では、印刷紙の表面に意匠模様が印刷され、これを透明な表面材を通して視認することになるため、接着部材に係わる色、透明性、気泡、かすれ等の外観上の問題のほか、表面材と印刷紙との接着性が悪いという問題、さらには化粧板自体のカール(反り)が発生する等の形状の問題、等々の問題を全て同時に解決できず、未だ実用化することができなかった。
【0008】
特に、近年の化粧板の意匠デザインは、より目新しくより差別化を明確にするため、多色化、あるいはパール調、メタリック調などの箔体を印刷インクに混入して、より意匠化、機能化したインクが使用されたり、あるいは、多色のオフセット印刷後、さらにシルク印刷を重ねるなど、複数の印刷を併用して模様化したり、トッピング的に複合多岐な印刷を施すものが多くなり、結果として、デザインによる印刷塗膜の厚さにむらを生じ、すなわち印刷部分の厚いところ薄いところの較差が段々大きくなる傾向がある。ちなみに、印刷塗膜の厚さは、通常オフセット印刷では1〜10μm程度とされ、シルク印刷では10〜100μm程度の印刷塗膜となり、デザインによりこれらの厚さむらが凹凸となって印刷紙表面に存在することになる。そしてまた、特殊なインクの使用により印刷塗膜との接着性を低下させる問題も発生していた。
【0009】
一方、上記提案によるものは、表面材もしくは印刷紙に酢酸ビニルなどの液状の接着剤、あるいはアクリル系、EVA系の高温液状のホットメルト接着剤を塗布して使用し、その後熱圧着手段により一体化して化粧板とするものである。しかしながら、これら例の化粧板では、液状の接着剤を塗布使用するがため、必然的に、形成される接着剤層の厚さが限られ、均一に塗布可能な接着層としては、通常1〜50μm程度の厚さでしか形成できず、厚く均一に塗布形成することは流動性が多大である液状の接着剤では、非常に困難なものであり、同時に接着性にも問題を生じるものであった。
【0010】
そのため、この様な接着剤を塗布して形成するものでは接着層の厚さが不足し、デザインによる印刷塗膜の厚さむらによる凹凸等を吸収することができず、接着後の製品には、印刷表面と表面材の間に気泡が介在したり、塗工むらなどのかすれ模様等が視認され、これらは外観品質の低下の問題あるいは接着性の低下の問題が生じる。さらに、従来から使用されるCAB樹脂などの表面材は、熱可塑性樹脂のため製膜時の熱歪みによる内部応力が大きく、紙基材との接着時の熱圧着による熱変形が大きくなり、成形後の化粧板自体の反り(カール)が発生しやすく、後の遊技盤基板への接着加工が円滑に行えないという問題も生じ、これら提案の化粧板では未だ多くの問題を解決し得ず、これらを一挙に解決する遊技盤用化粧板の開発が強く望まれていた。
【0011】
本発明の目的は、上記従来の遊技盤用化粧板がもつ問題点を解消し、透明な表面材および意匠模様が設けられた裏打材との印刷面との接着性に優れ、表面材の表面から見ても気泡等の介在なく透明性が良好で意匠模様の色再現性に優れるなどの意匠品質が優秀で、反り等の形状安定性に優れ、しかも、製造工程が簡便で取扱い容易に製造でき、且つ生産性に優れ、製造コストが低減できる遊技盤用化粧板を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、透明な表面材と、印刷塗膜などの意匠模様による厚さむらを有する裏打材とを加熱加圧により一体化する際の不具合が、主に接着部材の特性に起因することに気付き、これらの解決のため更なる研究と工夫を加えた結果、特に、接着部材をエチレン酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物によるフィルム状接着部材とすることで、透明性と接着性に優れた任意で均一な厚さの接着部材が形成できるため、印刷塗膜の厚さむらに充填することを可能とし、また、該フィルム状接着部材の表面に凹凸模様を形成することで成形時に介在する気泡の排気を可能とし、さらに、表面材を溶液製膜法によるTAC樹脂フィルムとすることで熱変形カールを防止し、そして、これらの部材を低圧力で加熱加圧することができ、表面平滑な所望とする遊技盤用化粧板が生産性良く得られることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成に至ったものである。
【0013】
すなわち、本発明の第1の発明では、少なくとも透明な表面材と意匠模様が設けられ、この意匠模様による厚さむらを有する裏打材との間に、この厚さむらに充填することが可能な透明なフィルム状接着部材が配置され加熱加圧により一体化されて該意匠模様が該表面材及び該フィルム状接着部材の2種の透明体を通して視認される化粧板であって、透明な該表面材は、全光線透過率が85%以上の特性を有する溶液製膜法により成形されたトリアセチルセルロース系樹脂フィルムであり、該透明なフィルム状接着部材はエチレン酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物であり、その分子鎖中には少なくともアセトキシ基及び水酸基の極性基を有する多元共重合体樹脂よりなり、該フィルム状接着部材は、当該エチレン酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物を70%乃至95%含有して全光線透過率が85%以上の特性を有していることを特徴とする遊技盤用化粧板を提供するものである。
【0017】
また、本発明の第2の発明では、第1の発明において、表面材及び/又は裏打材を、フィルム状接着部材の押出し製膜時に、熱圧ラミネートする構成となっていることを特徴とする遊技盤用化粧板を提供する。
【0018】
そして、本発明の第3の発明では、第1、第2の発明であって、フィルム状接着部材の表面には、加熱加圧時にエアーを排気できるだけの微細な凹凸模様が形成され、表面材、フィルム状接着部材及び裏打材の全体を加熱加圧して一体化する際に、凹凸模様は、溶融消滅する構成となっていることを特徴とする遊技盤用化粧板を提供する。
【0019】
さらに、本発明の第4の発明では、第3の発明において、フィルム状接着部材の表面に形成される微細な凹凸模様は、表面粗さにおいて十点平均粗さRzが20〜100μmの凹凸であることを特徴とする遊技盤用化粧板を提供するものである。
【0020】
そして、本発明の第8の発明では、第1〜6いずれかの発明において、透明なフィルム状接着部材は、融点70〜80℃、メルトフローレイト5〜15g/10分の範囲にあるエチレン酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物である遊技盤用化粧板を提供する。
【0021】
また、本発明の第9の発明では、少なくとも透明な表面材と意匠模様が設けられた裏打材との間に、透明なフィルム状接着部材を配置して一体化する化粧板の製造方法において、該フィルム状接着部材の表面には介在するエアーを排気するための微細な凹凸模様が形成されており、これら全体を加熱加圧して一体化することを特徴とする遊技盤用化粧板の製造方法を提供するものである。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明は、少なくとも透明な表面材と、意匠模様が設けられた裏打材との間に、透明なフィルム状接着部材を配置して、加熱加圧により一体化する遊技盤用化粧板である。本発明では接着部材をフィルム状とするため、接着部材を任意の厚さで均一に形成することが容易で、加熱加圧時に溶融して、印刷塗膜などによる意匠模様の厚さむらに対して完全に充填するだけの適切な接着層が確保でき、気泡かすれなどの接着部材の厚さ不足に係わる不具合が解消でき、さらに、接着性と透明性に優れ、また、フィルム状接着部材であるため取り扱いが容易で、生産性が高く、従来なし得なかった高品質の化粧板を実現可能とするものである。以下、本発明の実施態様について詳細に説明する。
【0023】
本発明での透明な表面材は、裏打材上の意匠模様を遜色なく視認できる透明な合成樹脂によるフィルム(またはシート)であれば従来公知の透明な材料が使用可能で、特に限定されないが、遊技盤の最外層を形成し、金属製の小球が直に接触通過するに耐え得る表面硬度が必要で、容易に摩耗あるいは白化などの起きにくい材料が好ましく、鉛筆硬度で少なくともHB以上の表面硬度であることが好ましい。これらを満足する材料としては、例えば、ジアセチルセルロース系、トリアセチルセルロース(TAC)系、ポリエチレンテレフタレート(PET)系、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)系、ポリスチレン(PS)系、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)系、ポリカーボネート(PC)系、ポリアミド(PA)系、セルロース・アセテート・ブチレート(CAB)系、セルロイド系等の透明樹脂が好ましく適用でき、さらに、上記樹脂を2軸延伸したフィルムは、透明性、表面硬度、耐熱性等が向上し、これらも好ましく適用できる。
【0024】
本発明では、裏打材に設けられた意匠模様を、フィルム状接着部材および当該表面材の2種の透明体を通して視認することになるため、表面材の裏面に直接印刷を施す従来の化粧板と比較して十分な意匠性を発揮するには、とりわけ透明性が重要な課題となる。そのため、フィルム状接着部材の透明性をも考慮して、本発明の表面材では、特に、全光線透過率が85%以上の光学的特性(JISK7105による)を有することが好ましい。表面材の全光線透過率が85%未満では、該2種の透明体を透してみた視認性が従来の化粧板のものと比較して劣るものとなるからである。また、ヘーズ特性としては1.5%以下の光学的特性を有することが好ましい。これ以上のものでは、特に黒色の意匠デザインに対しての鮮明度が劣るものとなるからである。とりわけ、上記のトリアセチルセルロース系樹脂は、光線透過率とヘーズ特性に優れ、また表面硬度も高く、本発明の表面材として好ましく適用できるものである。
【0025】
さらに、特に好ましくは、溶液製膜法により成形されたトリアセチルセルロース系樹脂のフィルムであることが好ましい。通常の透明樹脂は加熱溶融してフィルム状に製膜成形されるため、内部に熱成形時の熱歪み応力を内在したまま製膜される。そのため、剛性を有するこれらの表面材を使用して加熱加圧成形を行うと、内在する熱歪みが顕在化して化粧板自体に反り(カール)を発生させることになり、当該化粧板を使用する際の後工程での遊技盤基板との接着に困難を生じる。
【0026】
これと比較して、溶液製膜法による表面材は、樹脂原料を一旦可溶剤に溶かし液状とした上、ベルトコンベアー上に精密塗工した後、溶剤成分を乾燥揮発させることにより製膜を行うものであり、樹脂が加熱溶融されずに製膜されるため熱歪みが内在せず、光学特性にも優れ、また加熱成形後の寸法安定性に優れている。そのため、溶液製膜法によるTAC系樹脂の表面材を使用して加熱による一体化を行ってもカールなどの熱変形が僅少であり、形状品質の高い化粧板を得ることができる。
【0027】
また、表面材を溶液製膜法によるTAC系樹脂のフィルムとする場合には、厚さ25〜200μmとするのが好ましい。これより薄いものでは最外層の表面材としての機能が損なわれ、また、この厚さより厚いものでは溶液製膜法による製法では、厚さ精度及び光学特性が保持できなくなるためである。さらに好ましくは50〜150μmであることが好ましい。そして、溶液製膜法によるTAC系樹脂は可塑剤を含み脆弱性を改善したものも好ましく使用できる。さらに、防曇加工(ケン化処理)したTAC系樹脂フィルムを使用することでもよい。
【0028】
次に、本発明の遊技盤用化粧板での意匠模様は、裏打材として使用される紙基材等の表面に意匠模様を設けることが好ましい。意匠模様の付与手段は、従来の化粧板に適用される公知の印刷方法が適用でき、例えば、オフセット印刷、グラビア印刷、シルク印刷等によるものであり、公知の印刷インクを使用した絵柄模様の印刷でよく、あるいはこれらの印刷方法を併用して絵柄模様を印刷してもよく、さらには、意匠性をより高めるため公知のパール、メタリック、ホログラム調の光輝性部材をインクに混入した印刷、あるいはホットスタンプ印刷など、公知の加飾印刷をさらに施したり、あるいはこれらの光輝性部材でトッピングするなど、印刷紙表面に厚さむら、盛上がりなどの段差が生じるような任意の積極的な意匠手段を講じることが可能であり、表面材の裏面に印刷する従来化粧板では成し得ない、さらに好ましい意匠性を付与することができる。
【0029】
また、裏打材としては、意匠模様を設けることが可能で遊技盤基板に貼着可能なものであれば特に制限されないが、印刷適正を考慮すれば紙基材を使用することが好ましく、一般の絵柄印刷に使用される印刷適性に優れた公知の印刷用紙を使用することが好ましい。例えば、アート紙、コート紙、上質紙、合成紙等の紙基材が使用できる。さらに好ましくは、絵柄が印刷される面側が印刷適性に優れ、印刷面とは反対側の面は後に遊技盤基板に貼着されるため、光沢の少ない、液状の接着剤が比較的浸透しやすい粗面であることがさらに好ましい。
【0030】
また、紙基材の中でも合成紙としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)等の樹脂を使用し、無機充填材の配合、白色顔料のコーティング、薬品処理による白色化等の手段がなされ、あるいは樹脂の発砲、延伸等の手段との組み合わせにより紙化させた合成紙が上市されており、これらの合成紙はその表面にインキ受容層が形成されており、印刷適性に優れるほか、紙と比較して層間強度が高いため、遊技盤基板に貼着後の穴開け切削加工等での化粧板の浮き上がりが防止できるため、好ましく適用できる。
【0031】
これらの印刷紙の厚さは、50〜200μm程度が好ましく使用できるが、薄いものは印刷機械に対する適性が悪く印刷能率を低下させ、また、後の遊技盤基板との接着剤の浸透により隠ぺい性を損なうものとなり、また、厚いものでは後の切削加工で層間剥離しやすく、印刷機械に対する適性も悪くなる。そのため、さらに好ましくは、70〜150μmが好ましく適用できる。
【0032】
その他の紙基材としては、メラミン、ポリエステル等の樹脂含浸された化粧紙などの紙基材も層間剥離強度に優れ好ましい。さらに、表面に金色、銀色、パール色、ホログラム調などの光輝性の意匠を呈した紙基材も好ましく適用できる。その他の裏打材の例として、各種のプラスチックフィルム、アルミ蒸着フィルム、ホログラムフィルムなども意匠性を高めるため好ましく適用できる。そして、これらと各種の印刷手段の組み合わせにより、さらなる意匠性を付与でき、より好ましいものとなる。
【0033】
次に、本発明のフィルム状接着部材は、透明な表面材と意匠模様が設けられた裏打材との間に配置され、単に接着剤として機能するのみならず、裏打材上に形成される印刷塗膜などによる厚さむらを吸収し平坦化する機能が必要であり、加熱加圧による一体化の際に、軟化溶融して印刷塗膜などの厚さむらによる凹凸面に充填して平坦化させ、且つ、適正な接着層を保持しつつ表面材との接着性を確保して、従来提案の液状の接着剤による不具合を解消することを目的とし、取り扱い性と生産性に優れるものとして、特に透明性と接着性を兼ね備えた熱可塑性樹脂によるフィルム状の接着部材とすることが好ましい。
【0034】
以上の観点から、本発明でのフィルム状接着部材は、特に50〜250μmの厚さであることが好ましい。印刷塗膜の厚さは、通常オフセット印刷では1〜10μm、シルク印刷で10〜100μm程度の印刷塗膜となり、意匠デザインにより、このような塗膜による厚さむらが形成されることになるため、接着部材の厚さが50μm以下では、これらの厚さむらに十分充填されず、未充填部の気泡もしくはかすれ等の模様などが生じやすくなり、あるいは、適正な接着層が保持されず接着性能に不具合を生じる恐れがある。また、250μm以上では、透明性が低下したり、表面材の表面の平滑平坦性を維持できなくなる恐れがあるためである。
【0035】
また、フィルム状接着部材が前記の如くの厚さに形成され、印刷塗膜の厚さむらを十分充填可能であっても、当該フィルム状接着部材の表面が鏡面状を呈していると、加圧の際に表面材の接着面もしくは印刷紙上の印刷塗膜面で空気を咬み込んだまま密着現象を起こし、内部に滞留した空気が逃げ場を失って化粧板内部に気泡を介在することになる。そのための方策として、これらの部材を2本の加圧ロールに挟み、転動しながら内部に閉じこめられた気泡を押し出すためのエアー抜き作業が必要となり、生産性を低下させる。
【0036】
あるいはまた、これらのエアー抜き作業を行わないでこのまま加熱したとしても、かなりの高圧力(例として10MPa程度以上)を作用させねば、内在するエアー(空気)を完全に排除することはできない。しかしながら、一体化の加圧力を高圧力とすればするほど、熱可塑性樹脂である当該フィルム状接着部材が溶融して必要以上に外周からはみ出し、化粧板の厚さむらを生じるのみならず、内部応力が増大し、化粧板に大きな反り(カール)を生じ、形状上の不具合に繋がる。
【0037】
そのため、本発明のフィルム状接着部材の表面には、加圧時にエアーが通過できるだけの微細な凹凸模様が形成されていることが好ましい。そして該微細な凹凸模様は、この様なロール加圧によるエアー抜き作業を必要とせず、また、上記形状上の不具合を生じることなく成形できる圧力(例えば0.01〜2Mpa)においても、介在するエアーが通過できるだけの微細な凹凸模様であるため、加圧により介在するエアーのほとんどが排気され、さらに凹凸模様間のエアーは、加熱とともに凹凸が軟化変形しつつさらにエアーを排気するメカニズムにより、最終的には部材間に内在するエアーを排除し、且つ、凹凸模様は溶融消滅して被着体の表面にならい、気泡、かすれ等の発生を未然に防止する。
【0038】
そして、これらの微細な凹凸模様は、表面粗さにおいて十点平均粗さRzが20〜100μmの凹凸であれば、表面材と印刷紙との間のエアーを、必要以上の加圧力なくして、効率よく通過させ、排気、脱気することができるので、気泡の介在がなく、形状の安定性に優れる化粧板が得られより好ましいものとなる。表面粗さがこれより小さいと排気が十分でなく、またこれより大きいと凹凸模様間のエアーが残存する恐れがあるためである。
【0039】
また凹凸形状に関しては、平滑面と接触したときに確実にエアーが通過できるだけの通り道が形成できるような形状であれば特に制限されるものではない。例えば、円錐状、角錐状、台形状、海島状形状、あるいはスジ状、砂目状、梨地状、革シボ状、曇りガラス状、マット状等の凹凸模様、さらには、これらの形状の連続模様、間欠模様、そしてこれらを適宜に組み合わせた凹凸模様、等々であり、鏡面状以外の模様であって、JISB0651(1982年)に規定された触針式表面粗さ測定器により測定した表面粗さが、上記数値の凹凸であれば好ましく適用できる。
【0040】
次に、本発明のフィルム状接着部材は、透明な表面材と印刷紙等との間に介在され、表面材の表面から印刷意匠等を視認するため、特に透明性と接着性に優れる熱可塑性の樹脂フィルムで、エチレン酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物であり、その分子鎖中に少なくともアセトキシ基及び水酸基の極性基を有する多元共重合体の樹脂であって、押出し製膜が可能な樹脂によるものであることが好ましい。ちなみに、一般に加熱塗布使用される例えばEVA系のホットメルト接着剤は、EVA樹脂に粘着付与剤及びワックス等を配合し、軟化点を下げ、また流動性(一般にメルトフローレイト(MFR)100〜400g/10分程度)と濡れ性を向上して密着による接着性を付与するものであり、通常150〜200℃の高温の塗布接着により使用されるもので、本発明のような反応極性基を有し、接着性と透明性に優れ、低温での接着が可能なものではなく、且つ、塗工可能な溶融温度と粘度特性から勘案してみても、押出し製膜が可能なものではない。
【0041】
本発明では、エチレン酢酸ビニル共重合体を加水分解および重合反応により、完全にはケン化せずに、部分ケン化することにより、分子内にアセトキシ基、水酸基、カルボキシル基、エステル基などの極性基を有した多元共重合体とする樹脂であり、本来透明性に優れるEVA樹脂を部分ケン化することにより、透明性を改良維持しつつ、少なくともアセトキシ基、水酸基による反応性の極性基を持たせることによって、被着部材に対しての化学的な結合により接着性が高まり、各種の透明表面材および印刷インク塗膜などとの接着性にも優れ、本発明における表面材と印刷面における良好な接着性を得ることができる。またこの樹脂は、溶融粘度が高く押出し製膜が可能な樹脂であるため、シート状に形成することができ、従来のホットメルト接着剤などに比べ、取扱が容易であるのみならず、十分な厚みを得ることができるので、印刷面における凹凸をよく吸収することができる。
【0042】
また、本発明の「エチレン酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物」とは、該部分ケン化エチレン酢酸ビニル共重合体のみではなく、他の透明樹脂や改質剤等の混合物等であってもよい。例として、上記の部分ケン化エチレン酢酸ビニル共重合体70〜95%及び改質剤5〜30%の混合物による樹脂フィルムは、押出成形による製膜性に優れ(例として、融点70〜80℃、MFR5〜15g/10分、JISK6730)、また、透明性にも優れ(例として全光線透過率85〜89%)、且つ、表面材及び印刷塗膜などとの接着性に優れ、そして適度な加熱流動性を有し、加熱加圧による印刷塗膜の厚さむらに対応でき、さらに融点が低く低温接着が可能であるため、印刷インク等の加熱による変色、退色を防止でき、好ましく適用できる。
【0043】
さらに本発明では、上記のフィルム状接着部材としては、特にその全光線透過率が85%以上であることが好ましい。これは、透明性に優れた表面材と当該フィルム状接着部材との2種の透明体を透して、印刷紙等の裏打材に設けられた意匠模様を見るため、表面材裏面に印刷した従来の化粧板と比較して劣るものとなるからである。また、ヘーズ特性としては1.5%以下の光学的特性を有することが好ましい。これ以上のものでは、特に黒色の意匠デザインに対しての鮮明度が劣るものとなるからである。
【0044】
これらの熱可塑性樹脂によるフィルム状接着部材は、従来公知の押出成形(エクストゥルーダー)によるフィルム製膜が好ましく適用でき、公知の押出フィルム成形、押出ロール成形、押出ベルト成形、押出カレンダー成形、押出インフレーション成形などの押出製膜が好ましく適用できる。これらの方法は、原料樹脂を加熱したシリンダーバレル中をスクリュウーで混練しながら押出し、製膜用のTダイを経由した溶融フィルムをロール上、あるいはベルト上で冷却して製膜することが行われる。そのため押出成形では樹脂の流動性(メルトフローレイト(MFR))が高すぎると、粘性を失いスクリュウが空回りして押出し吐出できないが、本発明のフィルム状接着部材の樹脂はMFR値が適正であり押出製膜を可能とする。
【0045】
また、当該フィルム状の接着部材表面に凹凸模様を付与する手段は、本押出製膜と同時に形成することが好ましい。具体的には、樹脂の押出成形の製膜溶融時に、所望の凹凸模様を彫刻、エッチング、サンドブラスト等により形成した成型用ベルト、金属ロール、またはゴムロール、さらに無機粒子混入ゴムロール等に挟みながら冷却することで、製膜と同時に凹凸模様の付与を行うことができ、且つ所望の厚さで均一なフィルム状接着部材を生産性よく得ることが可能となる。また、製膜の容易性および凹凸模様のロール転写の容易性からみれば、当該フィルム状接着部材の厚さは100〜200μmの厚さで成形することが好ましい。さらに、凹凸模様の形成は、該フィルムの両面に形成することが好ましいが、片面に形成するものであってもよく、さらに表裏面での凹凸模様を異なるものとすることでもよい。
【0046】
さらに、本発明のフィルム状接着部材の製膜中の溶融時に、透明な表面材あるいは意匠模様が設けられた裏打材を熱圧ラミネートすることも好ましく、後の一体化の際の部材点数を削減することができ、生産性に寄与することができる。あるいはまた、透明な表面材と裏打材の両方を、当該フィルム状接着部材の押出製膜時に、その両面から熱圧ラミネートすることも可能であり、好ましい態様となる。
【0047】
そして、本発明の遊技盤用化粧板では、少なくとも透明な表面材と意匠模様が設けられた裏打材との間に、当該フィルム状接着部材を配置して一体化されることを基本とするが、さらに他の部材を同時に積層一体化することでもよく、例えば、印刷紙等の裏打材のさらに下層に当該フィルム状接着部材と同一あるいは他の樹脂フィルム部材を介して、さらに別の目的のための部材を一体化した化粧板とすることも好ましい。一例としては、導電性の紙基材(導電紙)を当該印刷紙のさらに下層に、任意の樹脂フィルムを介在して、同時に加熱加圧一体化してもよく、化粧板表面に帯電する静電気を低減することができる。あるいは単に厚さ調整の目的、あるいは隠ぺい性付与の目的等により、他の部材を当該裏打材の下層に一体化するなど、目的機能に応じた任意の構成とすることもでき、好ましい態様となる。
【0048】
さらに、本発明の遊技盤用化粧板では、透明な表面材もしくは透明なフィルム状接着部材に印刷などによる意匠模様を部分的に設けたり、あるいは表面材もしくはフィルム状接着部材の表裏いずれかの面に公知の昇華印刷を施したりして、これらと意匠模様を設けた裏打材と一体化することも好ましい。あるいはまた、表面材またはフィルム状接着部材のどちらか一方あるいは双方に、透明性を有する着色を施すことも好ましく、あるいはまた、表面材またはフィルム状接着部材のどちらか一方あるいは双方に、パール箔、金属箔、ホログラム箔、等のメタリック調の粒子、箔片、切片、又は薄片等の光輝性の材料を混入または付着させ、これらと裏打材と一体化することも好ましい。そしてまた、これらの手法を適宜組み合わせて用いることも好ましく、さらなる意匠性の向上を図る化粧板とすることもでき、好ましい態様となる。
【0049】
次に、本発明の遊技盤用化粧板の製造方法は、少なくとも透明な表面材と意匠模様が設けられた裏打材との間に透明なフィルム状接着部材を配置して一体化する化粧板の製造方法であり、当該フィルム状接着部材の表面には介在するエアーを排気するための微細な凹凸模様が形成されており、これら全体を加熱加圧して一体化する遊技盤用化粧板の製造法である。
【0050】
そのため、これらの部材を加熱加圧により一体化する際に、フィルム状接着部材の表面に形成された微細な凹凸模様が、透明な表面材と裏打材との間に介在するエアーを効率よく排気するため、化粧板内部のエアーの介在を阻止することができ、表面材と裏打材との接着性に優れ、且つ、裏打材に設けられた意匠模様が表面材から見たときの色再現性に優れるものとなる。
【0051】
さらに、これら部材の全体を、加熱と同時に加圧するため、印刷紙等に設けられた意匠模様の厚さむらあるいは凹凸等に対しても、フィルム状接着部材の充填を促進し、且つ、これらの厚さむらに影響されずに化粧板表面を平滑に成形することができ、厚さの均一性に優れ、反り、カールなどのない形状安定性に優れた化粧板を得ることができる。さらにまた、一枚のみならず任意の枚数単位で成形することでもよく、あるいは、これらの単位を複数重ねて同時に加熱加圧成形することでもよく、いずれの場合も、表面の平滑性が維持できるため、生産性が高まり好ましい態様となる。
【0052】
本発明での加熱加圧の条件としては、加熱温度として80〜140℃の温度が好ましく適用でき、加熱温度が高すぎると、各部材の熱歪みが増大して化粧板の反りの発生に繋がり、また印刷意匠模様等に変色などの問題が発生する。一方、加熱温度が低すぎると、一体化の接着性能が不十分となり、各部材の接着強度を低下させる恐れがある。加熱時間の短縮と印刷意匠模様の変色を考慮すれば、さらに好ましくは100〜120℃の温度である。また、加圧力としては、0.01〜2MPaの面圧力での成形が好ましい。圧力が高すぎると、各部材の内部応力が増大して化粧板の反りの発生に繋がり、また、圧力が低すぎると、圧力不足により表面の平滑性が損なわれたり、各部材の接着力を低下させる。さらに好ましくは、0.1〜1MPaの面圧力が好ましい。
【0053】
さらに、加熱加圧の時間については、加熱温度、加圧力、使用する部材の種類、厚さ、枚数等により、各部材への熱伝導を考慮して、適宜に決定される事項であり特に制限されないが、好ましくは10〜180分程度の時間である。これは、本発明のフィルム状接着部材では一旦溶融した後、分子構造上有する極性基が各部材と化学的に結合するための時間が必要となり、低温であれば長時間を要し、また高温であれば短時間で終了可能な特性により、高度の接着性能を得ることができるものである。一方、一般のホットメルト接着剤では、高温で溶融させ、粘着性が最大の時に短時間に接着させるもので、この点が本発明のフィルム状接着部材と大きく異なる特性である。
【0054】
そして、本発明での加熱加圧の成形手段については、少なくとも加熱と同時に均一な加圧ができる構造の装置であれば、特定しない。例として、熱プレス成形、多段式熱プレス成形、高周波加熱プレス成形、超音波加熱プレス成形、加熱ロール加圧成形、等の加熱加圧成形手段が好ましく適用できる。中でも熱プレス成形が好ましく、さらには多段式の熱プレス成形が好ましく適用できる。
【0055】
【実施例】
以下、本発明について、図面を用いた実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0056】
図1において、それぞれ460×530mmの大きさに調整された、最外表面を構成する透明な表面材1と、透明なフィルム状接着部材2と、オフセット印刷による絵柄模様4とシルク印刷による加飾模様5とによる意匠模様が設けられた裏打材3とを重ね合わせ、熱プレス装置(図示せず)の加熱盤6の間に狭持して、加熱110℃、加圧0.5MPaの条件にて30分間の加熱加圧を行った後、室温まで冷却して解圧後、図2に示す如くに一体化された、本発明の遊技盤用化粧板10を得た。
【0057】
本実施例では、透明な表面材1としては、厚さ125μmの溶液製膜法により成形されたトリアセチルセルロース樹脂による表面材を使用し、その全光線透過率は92%であり、また、ヘーズは0.6%の特性を有するものであった。
【0058】
また、透明なフィルム状接着部材2としては、エチレン酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物であり、その分子鎖中にアセトキシ基及び水酸基の極性基をもった多元共重合体樹脂であって、融点75℃、MFR9.1の流動特性を持ち、押出フィルム成形により製膜した厚さ150μmのフィルムを使用した。また、その全光線透過率は89%であり、ヘーズ0.6%であった。さらに押出製膜に際しては、片面を梨地マット加工を施した金属ロールとし、他方を砂入りのシリコンゴムロールにて挟み製膜した。その結果、図3に示す如く、透明なフィルム状接着部材2の表面には微細な凹凸模様21が形成され、触針式表面粗さ測定器により測定したところ、それぞれの表面粗さがRz54μm、およびRz65μm(基準長さ8mm)であった。
【0059】
そして、意匠模様が設けられた裏打材3としては、印刷紙として厚さ100μmのアート紙を使用し、意匠絵柄として4色オフセット印刷による絵柄模様4を印刷した後、さらに、部分的に光輝性のデザインで加飾するため、メジウムにホログラム箔を混入したインクによるシルク印刷での加飾模様5を設けた。また、印刷塗膜の厚さを測定したところ、絵柄模様4の印刷厚さは2〜5μmであり、また、加飾模様5の印刷厚さは50〜70μmであった。
【0060】
(比較例1)
比較例1(図示せず)としては、実施例における透明なフィルム状接着部材2の表面の凹凸模様を削除した鏡面状で実施例と同一の材料によるフィルム状接着部材を使用し、その他については実施例と同一の部材を使用し、また、同一の方法で一体化した。
凹凸模様の削除は、実施例での当該フィルム状接着部材の押出製膜時の成形ロールをそれぞれ鏡面のロールを使用して製膜したものである。
【0061】
(比較例2)
比較例2(図示せず)として、実施例における透明なフィルム状接着部材2に換えて、透明性に優れるEVA樹脂により、比較例1と同一の押出製膜により得られた表面の凹凸模様を削除した樹脂フィルムを使用し、その他については実施例と同一の部材を使用した。
また、プレス成形の前に、重ねられた部材を転動した2本の加圧ロール間を通しエアー抜きを行った後、実施例と同一の方法で一体化した。
使用したEVA樹脂は、VAコンテント26%で透明性に優れ、融点76℃、MFR4.3の流動特性を持つ、厚さ150μmの樹脂フィルムであり、全光線透過率85%、ヘーズ14%であった。
【0062】
以上のようにして得られた化粧板を比較観察したところ、実施例、比較例1、比較例2のいずれも、形状上の反りが僅少で形状安定性に優れ良好であった。これらは、いずれも表面材の残存応力が少ない溶液製膜法によるTAC樹脂フィルムを使用しており、また、加圧力も適正で内部応力が低減されて成形されたためと考えられる。
【0063】
また、エアー抜き対策を実施しない比較例1のものは、透明性が異なった概略直径2〜5mmの気泡状の斑点模様が一面に見られ、気泡の介在が確認された。また、エアー抜き対策が施された、実施例、比較例2のいずれも、気泡の介在が見られず良好であった。これは、透明なフィルム状接着部材2に設けられた微細な凹凸模様が、加圧ロール等によるエアー抜き対策と同様の効果が得られたものと考えられる。
【0064】
次に、実施例と比較例2の意匠性を比較すると、いずれの場合も、厚さ2〜5μmの絵柄模様4と、厚さ50〜70μmの加飾模様5による印刷塗膜の厚さむらに対して、両者とも150μm厚さの透明な樹脂フィルムが完全に充填され、充填不足による気泡あるいはかすれ模様などの不具合はなかった。さらに、表面から見たときの印刷模様については、実施例のものでは透明性がクリアーで、印刷紙の意匠模様の色再現性に優れるものであったが、比較例2では、透明性に優れるが、クリヤー感に劣り、ヘーズ特性の差と考えられる。
【0065】
さらに、実施例と比較例2のものについては、加熱60℃、湿度90%の恒温恒湿試験機にて連続100時間の環境試験を行った。
その結果、単なるEVA樹脂によるフィルムを使用した比較例2のものについては、透明な表面材の大半の部分で自然剥離を生じ、樹脂フィルムと印刷塗膜部分とは部分的な浮きが見られ、まさに容易に剥離するものであり、比較例2の樹脂フィルムの接着力は非常に低いものであった。
また、本発明の部分ケン化EVA樹脂によるフィルム(シート)を使用した実施例のものでは、100時間経過後も何らの異常も見られず、また、ナイフでの剥離を試みたが剥離することができず、接着力はまさに十分なものであった。
【0066】
【発明の効果】
本発明では、透明性に優れる部分ケン化EVA樹脂をシート状の接着剤として用いることにより、透明性を改良維持しつつ、反応性の極性基の存在によって表面材および印刷インク塗膜などとの接着性にも優れ、本発明における表面材と裏打ち材との良好な接着性を得ることができる。またこの接着剤は溶融粘度が高く押出し製膜が可能な樹脂であるため、シート状に形成することができ、従来のホットメルト接着剤などに比べ、取扱が容易であるのみならず、十分な厚みを得ることができるので、印刷面における凹凸をよく吸収することができる。このため、気泡の介在がなく、視認性が優れ、表面の平滑性に優れ、カールなどの反り変形のない遊技盤用化粧板を得ることができる。またフィルム状接着部材の表面に形成された微細な凹凸模様が、透明な表面材と裏打材との間に介在するエアーを効率よく排気するため、化粧板内部のエアーの介在を阻止することができ、表面材と裏打材との接着性に優れ、且つ、裏打材に設けられた意匠模様が表面材から見たときの色再現性に優れるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例において、本発明の遊技盤用化粧板を製造する方法を説明する断面図である。
【図2】図2は、実施例において、加熱加圧による一体化後の断面図である。
【図3】図3は、実施例において、透明なフィルム状接着部材を説明する部分拡大断面図である。
【符号の説明】
1 透明な表面材
2 透明なフィルム状接着部材
3 意匠模様が設けられた裏打材
4 絵柄模様
5 加飾模様
6 加熱盤
10 遊技盤用化粧板
21 微細な凹凸模様
Claims (4)
- 少なくとも透明な表面材と意匠模様が設けられ、この意匠模様による厚さむらを有する裏打材との間に、この厚さむらに充填することが可能な透明なフィルム状接着部材が配置され加熱加圧により一体化されて該意匠模様が該表面材及び該フィルム状接着部材の2種の透明体を通して視認される化粧板であって、透明な該表面材は、全光線透過率が85%以上の特性を有する溶液製膜法により成形されたトリアセチルセルロース系樹脂フィルムであり、
該透明なフィルム状接着部材はエチレン酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物であり、その分子鎖中には少なくともアセトキシ基及び水酸基の極性基を有する多元共重合体樹脂よりなり、
該フィルム状接着部材は、当該エチレン酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物を70%乃至95%含有して全光線透過率が85%以上の特性を有していることを特徴とする遊技盤用化粧板。 - 前記表面材及び/又は前記裏打材を、前記フィルム状接着部材の押出し製膜時に、熱圧ラミネートする構成となっていることを特徴とする請求項1に記載の遊技盤用化粧板。
- 前記フィルム状接着部材の表面には、前記加熱加圧時にエアーを排気できるだけの微細な凹凸模様が形成され、
前記表面材、前記フィルム状接着部材及び前記裏打材の全体を加熱加圧して一体化する際に、前記凹凸模様は、溶融消滅する構成となっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の遊技盤用化粧板。 - 前記フィルム状接着部材の表面に形成される微細な凹凸模様は、表面粗さにおいて十点平均粗さRzが20〜100μmの凹凸であることを特徴とする請求項3に記載の遊技盤用化粧板。
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