JP4608044B2 - 新規なアリールアミン含有ビニルポリマーおよびそれを用いた有機エレクトロルミネッセント素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なアリールアミン含有ビニルポリマーおよびそれを用いた平面光源や表示素子に利用される有機エレクトロルミネッセント素子(有機EL素子)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
発光層が有機薄膜から構成される有機EL素子は低電圧駆動の大面積表示素子を実現するものとして注目されている。素子の高効率化にはキャリア輸送性の異なる有機層を積層する素子構造が有効であり、正孔輸送層に低分子芳香族アミン、電子輸送性発光層にアルミキレート錯体を用いた素子が報告されている〔C.W.Tang,Appl.Phys.Lett.,51,p.913(1987)〕。この素子では10V以下の印加電圧で1000cd/m2の実用化に十分な高輝度を得ている。
【0003】
しかし、一般に使用されている低分子芳香族アミンの正孔輸送層では材料のガラス転移温度が60℃〜100℃程度と低く、再結晶化や凝集による素子構造の破壊や、高い環境温度での保存における素子劣化が問題になっている。そのため、初期特性がよい素子でも長時間の使用には向かず、駆動素子寿命が数千時間程度と既存の無機系の発光素子たとえば発光ダイオードに比べると短い欠点を有している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者らは高いガラス転移点をもつアリールアミン含有ビニルポリマーを開発し、これを従来の低分子芳香族アミンの代りに使用することにより、再結晶化や凝集による素子構造の破壊や高い環境温度での保存における素子の劣化を防止した新規な有機EL素子を提供する点にある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明者らは、結晶化や凝集を起こしにくく膜安定性の高い高分子材料に着目し、正孔輸送性のアリールアミン誘導体を高分子化することを検討した。その結果得られた新規高分子材料は低分子モデル化合物よりはるかに高いガラス転移温度(140℃以上)を示し、膜の保存安定性が優れているうえ、有機EL素子における正孔輸送層として良好に機能し、高い発光効率、発光輝度を示すとともに素子の安定性の向上に大いに有効であることを見いだし本発明を完成するにいたった。
【0006】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)
【化6】
(式中、R1は水素またはアルキル基、R2とR3は、水素、メチル基およびエチル基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり、Ar1とAr2は、アルキル基を有していてもよいアリール基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基)
の構造を有するアリールアミン含有ビニルモノマーを生成し、
【0007】
このアリールアミン含有ビニルモノマーを重合して一般式(2)で示されるアリールアミン含有ビニルポリマーを生成するにおいて、
【化7】
(式中、R1は水素またはアルキル基、R2とR3は、水素、メチル基およびエチル基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり、Ar1とAr2は、アルキル基を有していてもよいアリール基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基)
一般式(1)のアリールアミン含有ビニルモノマーが上記一般式(2)で示される数平均分子量1,000〜1,000,000のアリールアミン含有ビニルポリマーを基本骨格とするものであり、
【0008】
アリールアミン含有ビニルポリマーの基本骨格として、下記の一般式(3)(4)(5)を有するものである。
一般式(3)
【化8】
(式中、R1、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10およびR11は水素およびアルキル基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり、R2とR3は、水素、メチル基およびエチル基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり、Ar3、Ar4およびAr5は、アルキル基を有していてもよいアリール基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基である)
で示される繰り返し単位を含有するアリールアミン含有ビニルポリマー。
又は、上記一般式(3)のAr4とAr5が結合しているNと一体になる下記の複素環基を形成するもの。
一般式(4)
【化9】
(前記式中、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18およびR19は、水素およびアルキル基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基)で示される繰り返し単位を含有するアリールアミン含有ビニルポリマー。
又は、下記の一般式(5)で示されるもの。
一般式(5)
【化10】
(式中、R1、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26およびR27は、水素およびアルキル基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり、R2とR3は、水素、メチル基およびエチル基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり、Ar3、Ar4およびAr5は、アルキル基を有していてもよいアリール基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基である)
で示される繰り返し単位を含有するアリールアミン含有ビニルポリマー。
【0009】
本発明の第二は、請求項1に記載のアリールアミン含有ビニルポリマーのいずれかを用いたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセント素子に関する。
【0010】
本発明の第三は、請求項1に記載のアリールアミン含有ビニルポリマーが正孔輸送層として使用されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセント素子に関する。
【0011】
本発明に用いるビニルモノマーは、スチレンのようなアリール系ビニルモノマーの通常の重合開始剤を用い、通常の方法により重合して、請求項1のポリマーとすることができる。必要に応じて他のビニルモノマーと共重合することもできる。
【0012】
本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記高分子材料を含有する有機層を備えていれば、素子構造は特に限定されず、有機層一層からなる単層型でも二層以上の多層型であってもよい。要するに前記高分子材料を備えた種々の素子構造に適用できる。
【0013】
本発明で用いられる高分子層を含む素子を構成する各層の膜厚については、特に限定されない。高分子層は高分子を適当な溶媒に溶解した溶液からの塗布法のほかにもインクジェット法、ラングミュア−ブロジェット法によっても形成できる。他の有機層は真空蒸着法などの気相成長法や溶液塗布法によって形成することができる。
【0014】
有機エレクトロルミネッセント素子では大きな仕事関数を有する陽極すなわち正孔注入電極から正孔が有機層へ注入され、小さな仕事関数を有する陰極電極から電子が有機層へ注入される。正孔輸送層と電子輸送性発光層からなる二層型素子の場合、注入された正孔は正孔輸送層を通り発光層との界面付近で、発光層に注入されてきた電子と再結合し発光層中で励起子を生ずる。この結果、発光層より発光が生じる。
【0015】
このとき、高い発光効率、輝度を得るには、各層の電荷の輸送特性の向上ばかりでなく電極からの電荷の注入効率を上げることが重要である。また、通電によるジュール熱による有機層の再結晶化、凝集の促進、すなわち素子劣化を防ぐためにもガラス転移点の高い材料を選択する必要がある。
【0016】
本発明においては、正孔輸送層に高い正孔輸送特性を有する新規高分子を用いることにより、電極との密着性を高め電荷の注入特性を上げるものである。また、高いガラス転移点を有する高分子を使用するため、結晶化や凝集による素子劣化が抑制され、良好な特性を有する有機エレクトロルミネッセント素子を得ることができる。
【0017】
本発明のアリールアミン含有ビニルポリマーは、繰り返し単位構造中−C(R2,R3)−の個所を中心にしてジアリールアミン基が自由に回転することができる構造を有することにより、重合反応においてダイマーなどの低分子成分が生成せず、結果的に生成したポリマーのガラス転移温度を高くすることに成功したものである。したがって−C(R2,R3)−としては、−CH2−や、−CHMe−(Meはメチル)が最も好ましい。また、−C(R2,R3)−の存在により図1に示すように分子の重なり合うエキシマー現象が抑制できるのも大きなメリットである。
この基本的技術思想を害しないかぎり、Ar1とAr2は芳香族系の広い範囲の基を包含することができる。請求項1に示すものはAr2の1つの具体例を示すにすぎない。
【0018】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0019】
実施例1
▲1▼ベンジル誘導体の合成
空冷管、温度計、マグネットと窒素導入管のついた100mlの3つ口フラスコに、N,N′−ジフェニルベンジジン20.2g(60mmol)、ヨードベンゼン12.5g(60mmol)、銅粉38gと炭酸カリウム16.6g(120mmol)を加え、窒素気流下マッドヒーターで230℃で24時間反応した。反応後、室温まで冷却し500mlのエチレンジクロリドで希釈した。この液を濾過し不溶物を分離し、溶媒を減圧下回収した。得られた残渣は、カラムクロマトグラフィー(展開液クロロホルム:n−ヘキサン=1:1)で精製し、下記式(6)で示される目的物を4.6g(11.1mmol)得た(収率18.6%)。
【化11】
【0020】
▲2▼モノマーの合成
前記式(6)で示されるベンジジン誘導体2.0g(5mmol)は、25mlの滴下ロート、水冷管、温度計、マグネットと窒素導入管のついた100mlの3つ口フラスコに、トリエチルアミン2.0g(20mmol)と共にジメチルスルホキシド(DMSO)25mlに溶解させた。これに滴下ロートから、1.5g(10mmol)のα−クロロメチルp−スチレンを室温で滴下した。この後、マッドヒーターで100℃、24時間反応した。反応後、室温まで冷却し沈殿物を濾過し、濾液は減圧下回収した。得られた残渣は、カラムクロマトグラフィー(展開液クロロホルム:n−ヘキサン=2:1)で単離した。これにより目的の式(7)で示されるスチレンモノマーを1.0g(1.9mmol)、収率18.9%で得た。融点58.5〜60.2℃。図3は、このものの1H−NMRチャートであり、図4は、IRチャートである。
【化12】
【0021】
▲3▼ポリマー(PTPD−2)の合成
前記式(7)で示されるモノマー0.5g(0.95mmol)とアゾビスイソブチロニトリル(以下AIBNと略する)0.005g(0.03mmol)を、水冷管、窒素導入管、水銀温度計そして、マグネットのついた30mlの4つ口フラスコに加えテトラヒドロフラン(以下THFと略す)4mlに溶かした。そして、液体窒素で凍結脱気を3回くり返した。
このTHF溶液は、マッドヒーターで窒素気流下60℃、24時間ラジカル重合を行った。その後、室温まで冷却し1000mlのアセトン中にあけ、析出したポリマーを回収した。得られた粗製のポリマーは、その後THF−アセトンで3回再沈精製を行い0.3g(収率60%)の後記式(8)にその繰り返し単位を示すポリ〔p−N′−(p−N,N−ジフェニルアミノ)ビフェニル〕N′−フェニルアミノメチル〕スチレン(以下PTPD−2と略する)を得た。
【0022】
▲4▼ポリマー(PTPD−2)の構造と物性
式(8)に示す繰り返し単位をもつ前記ポリマーを、THFを移動層としたGPC分析(日立製L7100シリーズ)を行ったところ、重量平均分子量(Mw)19000、数平均分子量(Mn)14500であった(いずれもポリスチレン換算)。示差走査熱量計(パーキンエルマー社製DTA7)で測定したガラス転移温度は142℃であり、熱重量計(パーキンエルマー社製DTA7)で測定した窒素ガス中での分解温度も403℃と高く、高い熱安定性を示した。理研計器社製表面分析装置(AC−1)で測定したイオン化ポテンシャルは5.6eVであり、ホール輸送性材料としては十分に小さいイオン化ポテンシャルを有することが分った。
PTPD−2の有機溶媒に対する溶解性を下記表1に示す。
【表1】
(++)可溶、(+)一部可溶、(−)不溶
【化13】
【0023】
実施例2
▲1▼モノマーの合成
水冷管、25mlの滴下ロート、マグネットそして水銀温度計のついた200mlの3つ口フラスコ内において、ジフェニルアミン10.2g(6.0mmol)と炭酸水素ナトリウム5.0g(4.00mmol)をメタノール100mlに溶解させた。これに滴下ロートから、3.1g(2.00mmol)のα−クロロメチルp−スチレンを室温で滴下した。この後、マッドヒーターで還流下8時間反応した。反応後、室温まで冷却した沈殿物を濾過し、濾液は減圧下回収した。得られた残渣は、カラムクロマトグラフィー(展開液n−ヘキサン:クロロホルム=4:1)で単離した。これにより目的の下記式(9)で示されるスチレンモノマーを1.1g(0.34mmol)、収率17.3%で得た。融点65.0〜66.0℃。図5は、このものの1H−NMRチャートであり、図6は、IRチャートである。
【化14】
【0024】
▲2▼ポリマー(PDPAMS)の合成
前記式(9)で示されるモノマー1.0gとアゾビスブチロニトリル(以下AIBMと略す)0.01g(0.06mmol)を、水冷管、窒素導入管、水銀温度計そしてマグネットのついた50mlの4つ口フラスコに加えテトラヒドロフラン(以下THFと略す)4mlに溶かした。そして、液体窒素で凍結脱気を3回くり返した。
このTHF溶液は、マッドヒーターで窒素気流下還流させながら24時間ラジカル重合を行った。その後、室温まで冷却し1000mlのメタノール中にあけ、析出したポリマーを回収した。得られた粗製のポリマーは、その後THF−メタノールで2回再沈精製を行い0.89g(収率89.0%)のポリ(p−N,N−ジフェニルアニリノメチル)スチレン(以下PDPAMSと略する)を得た〔下記式(10)にその繰り返し単位を示す〕。
【化15】
【0025】
▲3▼ポリマー(PDPAMS)の構造と物性
式(10)に示す繰り返し単位をもつ前記ポリマーを、THFを移動層としたGPC分析(日立製L7100シリーズ)を行ったところ、重量平均分子量(Mw)34000、数平均分子量(Mn)18000であった(いずれもポリスチレン換算)。示差走査熱量計(パーキンエルマー社製DTA7)で測定したガラス転移温度は80℃であり、熱重量計(パーキンエルマー社製DTA7)で測定した窒素ガス中での分解温度も378℃と高く、高い熱安定性を示した。理研計器社製表面分析装置(AC−1)で測定したイオン化ポテンシャルは5.6eVであり、ホール輸送性材料としては十分に小さいイオン化ポテンシャルを有することが分った。
PDPAMSの有機溶媒に対する溶解性を下記表2に示す。
【表2】
(++)可溶、(+)一部可溶、(−)不溶
【0026】
実施例3
実施例1の方法に準拠し、下記化学反応式に従って、カルバゾール基を有するアリールアミン含有ビニルポリマーを得た。
【化16】
得られたポリマーは、カルバゾール基を含有しているため、実施例1や2のポリマーに較べて耐熱性に優れている。
【0027】
実施例4
実施例1の方法に準拠し、下記化学反応式に従って、フルオレン基をもつアリールアミン含有ビニルポリマーを得た。
【化17】
得られたポリマーは、フルオレン基を含有しているため、実施例1や2のポリマーに較べて耐熱性に優れている。
【0028】
実施例5
<EL素子の作製>
図2は本発明の一実施例の断面図である。1はガラス基板で2のシート抵抗15Ω/□のITO(インジウム−チン−オキサイド)がコートされている。その上に正孔輸送性高分子層3として実施例2で得られた式(10)で示される繰り返し単位をもつアリールアミン含有ビニルポリマー(PDPAMS)をクロロホルム溶液からディップコーティング法により400Å厚に形成した。その上から、発光層4として下記式
【化18】
で示される電子輸送性のトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体を700Å、10−5Torrの真空下で蒸着して形成した。最後に陰極電極としてMgとAg(10:1)を同じ真空度で2000Å共蒸着した。発光領域の領域は縦0.5cm、横0.5cmの正方形状とした。
【0029】
前記の有機エレクトロルミネッセント素子においてITOを陽極、Mg:Agを陰極として、直流電圧を印加してガラス基板を通して発光を観察した。輝度はトプコン輝度計BM−8により測定した。この素子は初期駆動5Vの印加により緑色の発光が得られ、発光スペクトルから発光層のトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体が発光していることを確認した。輝度は14Vで2500cd/m2と高い値を示した。また、作製後3カ月間、室温下、乾燥窒素雰囲気中で保存した素子においても初期特性がほとんど変わらず、素子の保存安定性は極めて良好であることを確認した。さらに、乾燥窒素雰囲気中で100℃の条件で100時間保存した素子においてもおおきな劣化は見られず、この素子が高い耐熱性を有することが確認された。また一定電流値で連続駆動を行った場合においても、3カ月後に輝度の大幅な低下は見られなかった。
【0030】
比較例1
低分子モデル化合物である下記式
【化19】
のアリールアミン蒸着膜を正孔輸送層に用いた同様の素子では輝度半減時間が25時間である。
【0031】
前記実施例5と比較例1から、実施例5で用いた新規高分子(PDPAMS)の高いガラス転移温度により有機層の安定性が大幅に改善されていることがわかる。
また、本発明の素子は発光層がトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体以外の有機材料の時でも同様に安定性の向上が認められた。
【0032】
実施例6
正孔輸送高分子層3を形成するポリマーとして実施例1で得られた式(8)で示される繰り返し単位をもつアリールアミン含有ビニルポリマー(PTPD−2)を用いた以外は実施例3を繰り返した。
【0033】
前記の有機エレクトロルミネッセント素子においてITOを陽極、Mg:Agを陰極として、直流電圧を印加してガラス基板を通して発光を観察した。輝度はトプコン輝度計BM−8にて測定した。この素子からは直流電圧の印加により緑色の発光が得られ、発光スペクトルから発光層のトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体が発光していることを確認した。図9は輝度−電圧特性を示し、図10は電流密度−電圧特性を示す。本発明においては、アリールアミン含有ビニルポリマーよりなる正孔輸送性高分子層3の膜厚が200Åのときが膜厚を300Åとしたときや400Åとしたときに比べて同じ電圧をかけた場合、最も高い輝度を示す。その最高輝度は11Vにおいて8700cd/m2であった。
【0034】
また、作製後3カ月間、室温にて乾燥窒素雰囲気中で保存した素子においても初期特性がほとんど変わらず、素子の保存安定性は極めて良好であることを確認した。さらに、乾燥窒素雰囲気中で100℃の条件で100時間保存した素子においてもおおきな劣化は見られず、この素子が高い耐熱性を有することが確認された。また一定電流値で連続駆動を行った場合においても、3カ月後に輝度の大幅な低下は見られなかった。
【0035】
比較例2
低分子モデル化合物である下記式
【化20】
のアリールアミン蒸着膜を正孔輸送層に用いた同様の素子では輝度半減時間が10時間である。
【0036】
前記実施例6と比較例2から、実施例6で用いた新規高分子(PTPD−2)の高いガラス転移温度により有機層の安定性が大幅に改善されていることがわかる。
また、本発明の素子は発光層がトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体以外の有機材料のときでも同様に安定性の向上が認められた。
【0037】
【発明の効果】
(1) 本発明により新規なアリールアミン含有ビニルモノマーおよびそのポリマーが提供できた。
(2) 本発明によれば発光特性および長期間の安定性に優れた有機エレクトロルミネッセント素子が提供される。したがって、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は実用化に十分な信頼性を有し、表示、照明の分野で広く利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアリールアミン含有ビニルポリマーが従来のアリールアミン含有ビニルポリマーに較べてエキシマーを抑制する理由を説明するためのモデル図である。
【図2】本発明実施例で用いる有機EL素子の断面構造を示すモデル図である。
【図3】実施例1のモノマーの1H−NMRチャートを示す。
【図4】実施例1のモノマーのIRチャートを示す。
【図5】実施例2のモノマーの1H−NMRチャートを示す。
【図6】実施例2のモノマーのIRチャートを示す。
【図7】実施例5のEL素子にかかる輝度−電圧曲線を示す図である。
【図8】実施例5のEL素子にかかる電流密度−電圧曲線を示す図である。
【図9】実施例6のEL素子にかかる輝度−電圧曲線を示す図である。
【図10】実施例6のEL素子にかかる電流密度−電圧曲線を示す図である。
【符号の説明】
1 ガラス基板
2 ITO膜
3 正孔輸送性高分子層
4 発光層
5 電極
Claims (3)
- 下記一般式(1)
で示されるアリールアミン含有ビニルモノマーを重合して得られる下記の一般式(2)を示すアリールアミン含有ビニルポリマーであって、
上記一般式(2)で示されるアリールアミン含有ビニルポリマーにおいて、繰り返し単位が下記一般式(3)(4)(5)で示された数平均分子量1,000〜1,000,000のいずれかであることを特徴とするアリールアミン含有ビニルポリマー。
一般式(3)
また、Ar4とAr5が結合してAr4とAr5とNが一体になって、
一般式(4)
で示される繰り返し単位を含有するアリールアミン含有ビニルポリマー。
一般式(5)
で示される繰り返し単位を含有するアリールアミン含有ビニルポリマー。 - 請求項1に記載のアリールアミン含有ビニルポリマーを用いることを特徴とする有機エレクトロルミネッセント素子。
- 請求項1に記載のアリールアミン含有ビニルポリマーが正孔輸送層として使用されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセント素子。
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