JP4603254B2 - 金属酸化物ゾル液の製造方法、結晶質金属複酸化物ゾルおよび金属酸化物膜 - Google Patents
金属酸化物ゾル液の製造方法、結晶質金属複酸化物ゾルおよび金属酸化物膜 Download PDFInfo
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本発明の金属酸化物ゾル液の製造方法においては、溶存炭酸ガスを脱気した水を用いるのが好ましい。
本発明の金属酸化物ゾル液の製造方法においては、150℃から700℃まで加熱したときの熱重量変化が10重量%未満である金属酸化物ゾルの溶液を得るのが好ましい。
本発明の金属酸化物ゾル液の製造方法においては、粒度分布が、5〜20nmにピークをもつ単分散であり、かつ、150℃から700℃まで加熱したときの熱重量変化が10重量%未満である金属酸化物ゾルの溶液を得るのが特に好ましい。
本発明の金属酸化物ゾル液の製造方法においては、金属酸化物がペロブスカイト化合物である金属酸化物ゾルの溶液を得るのが好ましい。
また、本発明の金属酸化物ゾル液の製造方法においては、前記有機溶媒溶液として、有機溶媒に、長周期型周期表の第2、3、8〜12、14及び15族から選ばれる金属のアルコキシドと、長周期型周期表の第4、14及び15族から選ばれる金属のアルコキシドを溶解した溶液を用いるのが好ましい。
本発明の結晶質金属複酸化物ゾルは、150℃から700℃まで加熱したときの熱重量変化が10重量%未満であるものが好ましく、粒度分布が、5〜20nmにピークをもつ単分散であり、さらに150℃から700℃まで加熱したときの熱重量変化が10重量%未満であるものがより好ましい。
本発明の結晶質金属複酸化物ゾルは、結晶質金属複酸化物がペロブスカイト化合物であるものが好ましい。
本発明の第3によれば、本発明の製造方法により製造された金属酸化物ゾル液から形成されてなる金属酸化物膜が提供される。
本発明で得られる金属酸化物ゾル液は、濃縮しても安定であり、溶媒に再溶解させることもできる。
本発明の結晶質金属複酸化物ゾルは、誘電体薄膜、導電体薄膜、圧電体薄膜、半導体薄膜等の形成用材料として有用である。
本発明で得られる金属酸化物ゾル液を用いることにより、ひび割れ等のない緻密かつ均質な金属酸化物膜を形成することができる。
また、本発明の金属酸化物膜は、誘電体薄膜、導電体薄膜、圧電体薄膜、半導体薄膜等として、電子デバイス分野において広く利用することができる。
1)金属酸化物ゾル液の製造方法
本発明の金属酸化物ゾル液の製造方法は、1種以上の金属アルコキシドを溶解した有機溶媒溶液に、金属アルコキシドに対して3〜10倍モルの水を添加して、前記金属アルコキシドを加水分解する工程を有する金属酸化物ゾル液の製造方法であって、金属アルコキシドを加水分解して得られる反応液における金属酸化物ゾルの濃度が、金属酸化物に換算して5重量%以下になるように、前記有機溶媒溶液中における金属アルコキシドの濃度を設定することを特徴とする。
金属アルコキシドの金属としては、例えば、長周期型周期表の第2〜4、8〜12、14〜16族から選ばれる金属が挙げられる。金属アルコキシドのアルコキシ基としては特に制約はないが、入手容易性及び加水分解反応性等の観点から、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましい。
単一金属アルコキシドの具体例としては、バリウムジメトキシド、バリウムジエトキシド、バリウムジプロポキシド、バリウムジブトキシド等のバリウムアルコキシド;チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトラブトキシド等のチタンアルコキシド;トリエトキシイットリウム、トリイソプロポキシイットリウム等のイットリウムアルコキシド;トリエトキシランタン、トリイソプロポキシランタン等のランタンアルコキシド;ジエトキシストロンチウム、ジイソプロポキシストロンチウム等のストロンチウムアルコキシド;等が挙げられる。
本発明においては、2種以上の金属アルコキシドを用いるのが好ましく、チタンアルコキシドとアルカリ土類金属アルコキシドを組み合わせて用いるのがより好ましい。具体的には、チタンアルコキシドとバリウムアルコキシドの組み合わせ、チタンアルコキシドとバリウムアルコキシドとストロンチウムアルコキシドの組み合わせ等が挙げられる。2種以上の金属アルコキシドを用いる場合には、得られる金属酸化物ゾル液から、複酸化物(複数の金属からなる酸化物)の薄膜を形成することができる。特に、長周期型周期表の第2、3、8〜12、14及び15族から選ばれる金属のアルコキシドと、長周期型周期表の第4、14及び15族から選ばれる金属のアルコキシドとを組み合わせて用いる場合には、優れた物性を有する強誘電体膜が得られるペロブスカイト化合物のゾル液を得ることができる。
これらの溶媒は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また本発明においては、溶存炭酸ガスを脱気した水を用いるのがより好ましい。溶存炭酸ガスを脱気した水を用いることにより、反応液中に金属炭酸塩が析出するのを防ぐことができる。溶存炭酸ガスを脱気した水を得る方法としては、水を煮沸する方法、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスをバブリングする方法等が挙げられる。
水の使用量は、用いる金属アルコキシドに対して3〜10倍モルであれば特に制限されず、用いる金属アルコキシドの反応性等によって任意に選択することができる。
希釈用の溶媒としては、水と相溶性のあるものが好ましく、金属アルコキシドの溶解に用いる有機溶媒と同じであっても異なっていてもよい。例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒;2−メトキシメタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール等のアルコキシアルキルアルコール系溶媒等が挙げられる。
反応温度は特に制限されないが、通常、−50℃〜+100℃の範囲、好ましくは0℃から有機溶媒の還流温度までの範囲である。撹拌時間は、通常数分から数日間、好ましくは数十分から数時間である。
金属アルコキシドの加水分解反応により得られた金属酸化物ゾル液を濃縮する方法は特に制約されず、通常の濃縮方法を採用できる。
金属酸化物ゾル液中の金属酸化物ゾルの粒度分布は、例えば、非接触後方散乱光学技術により測定することができる。
本発明の第2は結晶質金属複酸化物ゾルである。本発明の結晶質金属複酸化物ゾルは、本発明の製造方法により得られる金属酸化物ゾル液に含まれる金属酸化物ゾルであるのが好ましい。
本発明の結晶質金属複酸化物ゾルは、結晶質の金属複酸化物のゾルであり、好ましくはペロブスカイト構造を有する化合物(ペロブスカイト化合物)のゾルである。
上記式中、Xは0<X<1であり、X’は0≦X’≦1であり、Yは0≦Y≦1であり、Zは0≦Z≦1であり、かつ0≦X’+Y+Z≦1である。
本発明の結晶質複酸化物ゾルとしては、強誘電特性を有するBaTiO3、(Ba1−XSrX)TiO3のゾルが特に好ましい。
本発明の第3は、本発明の製造方法により製造された金属酸化物ゾル液から形成されてなる金属酸化物膜である。
本発明の金属酸化物膜は、本発明の製造方法により得られた金属酸化物ゾル液を基体表面に塗布し、乾燥・焼成することによって形成することができる。
四つ口フラスコ中で、バリウムジエトキシドをメタノールと2−メトキシエタノールの混合溶液に溶解した。この溶液中に、チタンテトライソプロポキシドを、バリウムジエトキシドとチタンテトライソプロポキシドとのモル比が1:1となるように添加し、混合した(A液)。A液中の金属アルコキシドの濃度は、水を滴下して金属アルコキシドを加水分解して得られる反応液中に存在する金属酸化物ゾルが酸化物換算で5重量%となる量である。
図1より、結晶質チタン酸バリウムのピークが確認された。また、平均結晶子サイズをシエラーの式により求めたところ8nmであった。
また、D1液の粒度分布を高感度高濃度粒子径測定装置(シスメック(株)製)により測定した。測定結果を図2に示す。図2中、横軸は粒径(nm)、縦軸はピーク強度をそれぞれ示す。図2より、D1液に含まれる金属酸化物ゾルは、10nm〜20nmにピークを持つ単分散であることが判った。
測定結果を図3に示す。図3中、横軸は測定温度(℃)、縦軸(左)は重量減少率(%)、縦軸(右)は熱量の変化(μV)をそれぞれ示す。aは温度変化に対する重量変化、bは温度変化に対する熱量変化をそれぞれ示す。図3より、100℃付近で溶剤蒸発による重量減少が認められたが、それより高温(150℃〜700℃)においては、重量変化がほとんど見られなかった。D1液は、金属アルコキシドの加水分解反応がほぼ完結して得られるものであり、アルコキシ基の残存が少なく、高温で加熱しても重量減少がほとんどないものと考えられた。
実施例1において、A液にB液を滴下した。水の滴下量は、バリウムジエトキシドとチタンテトライソプロポキシドの合計モル数の10倍モルとした。
B液の滴下終了後、約70℃で1時間還流した。反応液を室温まで放冷し、密閉容器に移して数日間放置した。得られたゾル液(C2液)をロータリーエバポレータでバス温度60℃で、酸化物換算で30重量%となるまで濃縮して濃縮ゾル液(D2液)を得た。
D2液を実施例1と同様にして熱重量分析したところ、実施例1と同様の結果を得た。
また、濃縮ゾル液(D2液)は安定に存在し、メタノールと2−メトキシエタノールの混合溶媒を加えたところ、再溶解した。
水を、バリウムジエトキシドとチタンテトライソプロポキシドの合計モル数の6倍モルの代わりに3倍モル用いる以外は、実施例1と同様の操作を行い、濃縮ゾル液(D3液)を得た。得られた濃縮ゾル液(D3液)をスパチュラですくい取り、ガラス基板表面に塗りつけ、得られた塗膜を室温で風乾して金属酸化物膜を得た。得られた金属酸化物をX線回折により分析した。X線回折の測定結果を図1に示す。図1より、結晶質チタン酸バリウムのピークが確認された。
Claims (8)
- チタンアルコキシドおよびアルカリ土類金属アルコキシドを溶解した有機溶媒溶液であって、前記有機溶媒溶液中における、チタンアルコキシドおよびアルカリ土類金属アルコキシドの濃度が、チタンアルコキシドおよびアルカリ土類金属アルコキシドを加水分解して得られる反応液における金属酸化物に換算して5重量%以下になるように設定された有機溶媒溶液に、チタンアルコキシドおよびアルカリ土類金属アルコキシドの合計に対して3〜10倍モルの、溶存炭酸ガスを脱気した水を添加して、チタンアルコキシドおよびアルカリ土類金属アルコキシドを加水分解する工程と、
得られた反応液を濃縮することにより、粒度分布が、5〜20nmにピークをもつ単分散である金属酸化物ゾルの溶液であって、金属酸化物ゾルの濃度が、金属酸化物に換算して25〜45重量%の金属酸化物ゾル液を得る工程と
を有することを特徴とする金属酸化物ゾル液の製造方法。 - 150℃から700℃まで加熱したときの熱重量変化が10重量%未満である金属酸化物ゾルの溶液を得ることを特徴とする請求項1に記載の金属酸化物ゾル液の製造方法。
- 金属酸化物が結晶質であることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属酸化物ゾル液の製造方法。
- 金属酸化物がペロブスカイト化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属酸化物ゾル液の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかの製造方法により製造される、金属酸化物として結晶質のものを含む結晶質金属複酸化物ゾル。
- 150℃から700℃まで加熱したときの熱重量変化が10重量%未満である請求項5に記載の結晶質金属複酸化物ゾル。
- 結晶質金属複酸化物がペロブスカイト化合物である請求項5又は6に記載の結晶質金属複酸化物ゾル。
- 請求項1〜4のいずれかの製造方法により製造された金属酸化物ゾル液から形成されてなる金属酸化物膜。
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