JP4599794B2

JP4599794B2 - ポリスチレン成型用積層シートの製造方法

Info

Publication number: JP4599794B2
Application number: JP2002355056A
Authority: JP
Inventors: 貴司玉岡; 直茂呂居; 悠介河野
Original assignee: DIC Corp
Current assignee: DIC Corp
Priority date: 2002-12-06
Filing date: 2002-12-06
Publication date: 2010-12-15
Anticipated expiration: 2022-12-06
Also published as: JP2004181915A

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、成型性及び耐水性に優れる、新規なポリスチレン成型用積層シート及びその製造方法に関する。
【０００２】
【従来の技術】
近年、食品包装用を始め各種の成型トレーが用いられている。成型用積層シートとして、ポロプロピレン系、ポリスチレン系等が広く用いられている。各種トレーには意匠性を付与するために用いられるグラビアインキとして従来から溶剤系インキが使用されてきているが、溶剤系インキは、残留溶剤量、耐油性の低下等の問題点がある。昨今、環境対応で水性化が期待され始め、残留溶剤量を低減できる水性グラビアインキを用いた成型トレーの検討が始まっている。水性グラビアインキとしては、バインダー樹脂に水性ポリウレタン樹脂を使用したインキがある（例えば、特許文献１参照）。しかしながら、成型性が未だ充分と言えない。特にポリスチレン系素材に適用する際に充分な成型性が得られていない。
【０００３】
【特許文献１】
特開平１０−１３０５６０号公報
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、水性グラビアインキ層を有する、密着性、成型加工性、耐水性に優れる成型用積層シート及び該積層シートの製造方法を提供する。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ポリスチレン系基材に対して、特定のアクリル酸系樹脂を用いたインキを用いることにより、上記の課題を解決することを見出し、本発明に至った。
【０００６】
すなわち、本発明は第一に、無延伸ポリスチレンフィルム層、印刷インキ層及びポリスチレン系シート層をこの順に有するポリスチレン成型用積層シートであって、該印刷インキ層が、バインダー樹脂として、酸価１０〜３００（ｍｇKOH／ｇ）、ガラス転移点１０〜１００℃の水分散性ポリオレフィン樹脂及び又は酸価１０〜３００（ｍｇKOH／ｇ）、ガラス転移点１０〜１００℃の水溶性ポリオレフィン樹脂を含有する水性グラビアインキの皮膜からなることを特徴とするポリスチレン成型用積層シートを提供する。
【０００７】
本発明は第二に、バインダー樹脂として、酸価１０〜３００（ｍｇKOH／ｇ）、ガラス転移点１０〜１００℃の水分散性ポリオレフィン樹脂及び又は酸価１０〜３００（ｍｇKOH／ｇ）、ガラス転移点１０〜１００℃の水溶性ポリオレフィン樹脂を含有する水性グラビアインキを、無延伸ポリスチレンフィルムに印刷する工程、該印刷面に、ポリスチレン系シート層を熱圧着でラミネート加工する工程を有することを特徴とするポリスチレン成型用積層シートの製造方法を提供する。
【０００８】
【発明の実施の形態】
本発明は、無延伸ポリスチレンフィルム層、印刷インキ層及びポリスチレン系シート層をこの順に有するポリスチレン成型用積層シートであって、該印刷インキ層が、バインダー樹脂として、酸価１０〜３００（ｍｇKOH／ｇ）、ガラス転移点１０〜１００℃の水分散性ポリオレフィン樹脂及び又は酸価１０〜３００（ｍｇKOH／ｇ）、ガラス転移点１０〜１００℃の水溶性ポリオレフィン樹脂を含有する水性グラビアインキの皮膜からなることを特徴とするポリスチレン成型用積層シートに関する。まず、本発明のポリスチレン成型用積層シートに用いる、水性グラビアインキについて以下に詳述する。
【０００９】
本発明のポリスチレン成型用積層シートに用いる水性グラビアインキに使用するバインダー樹脂は、水分散性及び又は水溶性オレフィン−アクリル酸共重合体アルカリ中和物で構成される。特徴として、水分散性の場合は、ガラス転移点は１０〜１００℃であり、好ましくは１０〜５０℃である。ガラス転移点が１００℃を越えると、ラミネート、成型加工後にインキ乾燥皮膜／ポリスチレンのシート間で浮きが発生もしくはラミネート強度が著しく低下し実用上問題となる。酸価範囲は１０〜３００（ｍｇKOH／ｇ）であり、好ましくは１０〜１００（ｍｇKOH／ｇ）である。酸価が３００（ｍｇKOH／ｇ）を越えると、インキ乾燥皮膜の耐水性を保持する上で好ましくない。水溶性の場合も同様である。水分散性樹脂、水溶性樹脂はそれぞれ単独で用いても良いし、併用しても良い。
【００１０】
本発明に用いる水性グラビアインキ中での前記したバインダー樹脂の配合比率は、４０〜６０質量％であることが好ましい。
【００１１】
本発明に用いる水性グラビアインキに用いる顔料ベース成分としては、アゾ系、ジアゾ系、フタロシアニン系等の顔料を分散剤であるアクリル酸樹脂、溶剤イソプロピルアルコール、水とで練肉した高濃度顔料ベースが好ましく用いられる。顔料ベース中の不揮発分に対する顔料の含有割合は、４０〜７０質量％であることが好ましい。
【００１２】
本発明に用いる水性グラビアインキに用いる溶剤は、水を基本として、他に水系の溶剤として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコールを併用することが出来る。配合比は、水：アルコールで１００：０〜３０：７０であることが好ましい。
【００１３】
本発明に用いる水性グラビアインキには、必要に応じて、他に、分散剤、消泡剤、レベリング剤、抗菌剤、防黴剤、有機溶剤等の添加剤を用いることが出来る。
【００１４】
本発明に用いる水性グラビアインキは、通常グラビア用印刷インキに使用されるアトライター、サンドミル、ビーズミル、ボールミル、高速印刷機等で練肉され所定の粘度になるように調整する事により製造される。得られた水性グラビアインキは印刷時に適性粘度になるまで希釈して、主として、ポリスチレンフィルムに印刷され、成型用積層シートの印刷層を構成するために用いられる。希釈液は水、メタノール、エタノール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールを任意に配合したもの、または１種類を用いることができる。
【００１５】
本発明の成型用積層シートでは、基材フィルムとしては、無延伸のポリスチレンフィルムが用いられる。フィルムの厚さは、２０〜８０μｍ程度が好ましく、２０〜４０μｍがより好ましい。フィルムの表面は、放電コロナ処理が施されていることが好ましい。
【００１６】
成型用積層シートの印刷層の厚みは、乾燥状態で、０．１〜５．０μｍ程度になるように印刷又は塗工することが望ましい。より好ましくは、０．１〜２．０μｍ程度である。
【００１７】
印刷乃至は塗工方式としては、従来公知の、正転乃至はリバースグラビア印刷方式が適用できる。グラビアコーターとしては、ナチュラルリバーススクイズコーター、ナチュラルリバースロールコーター、ナチュラルロールコーター、リバースロールコーター等があり、正転グラビアコーター方式が好ましく用いることができる。
【００１８】
本発明の成型用積層シートは、無延伸ポリスチレンフィルム層、前記した本発明に用いる水性グラビアインキ印刷層及びポリスチレン系シート層をこの順に有することを特徴としている。基材フィルムである無延伸ポリスチレンフィルムに本発明に用いる水性グラビアインキの印刷層を設けた後、ポロスチレン系樹脂シート層を熱圧着ラミネート方式で印刷層に積層する方法等が採られる。
【００１９】
熱ラミネートの条件は、１５０〜１９０℃、ニップ圧１〜１０ｋｇ／ｃｍ^２ラミネート速度５０〜１００ｍ／ｍｉｎ程度が好ましい。より好ましくは、１６０〜１８０℃程度である。
【００２０】
本発明の成型用積層シートは、例えば、食品用トレー、弁当箱等に用いられる形状に成型される。成型方法としては主として真空成型法が用いられる。真空成型の中でも詳しくは、ストレート法、ドレープ法、エアースリップ法、プラグアシスト法等が好ましく用いられる。
【００２１】
【実施例】
以下に、実施例を用いて、本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定するものではない。部及び％は特に断らない限り質量部、質量％を表すものとする。
【００２２】
（実施例１）
ステンレスタンクに水性藍顔料ベースを４０部、酸価２５、ガラス転移点２０℃、固形分４０％に調整したスチレン−アクリル酸エマルジョン樹脂５２部、消泡剤０．１部、ワックス２部、イソプロピルアルコール２部、水２．９部を加え、３０分攪拌し、実施例１インキを得た。この実施例１インキ１００部を、水／エタノール＝４／６の混合溶剤で希釈し、インキ粘度をザーンカップ＃３で１６〜１８秒に調整した。この調整インキを、コロナ処理した無延伸ポリスチレンフィルムにグラビア印刷し、この印刷物を厚さ１００μｍのポリスチレンシートと１８０℃の熱を掛けて熱ラミネートして積層体を得た。
【００２３】
（実施例２）
ステンレスタンクに水性藍顔料ベースを４０部、酸価７０、ガラス転移点４０℃、固形分２５％に調整した水溶性スチレン−アクリル酸樹脂５２部、消泡剤０．１部、ワックス２部、イソプロピルアルコール２部、水２．９部を加え、３０分攪拌し、実施例２インキを得た。この実施例２インキ１００部を、水／エタノール＝４／６の混合溶剤で希釈し、インキ粘度をザーンカップ＃３で１６〜１８秒に調整した。この調整インキを、コロナ処理した無延伸ポリスチレンフィルムにグラビア印刷し、この印刷物を厚さ１００μｍのポリスチレンシートと１８０℃の熱を掛けて熱ラミネートして積層体を得た。
【００２４】
（実施例３）
ステンレスタンクに水性藍顔料ベースを４０部、酸価９０、ガラス転移点１００℃、固形分４０％に調整したスチレン−アクリル酸エマルジョン樹脂５２部、消泡剤０．１部、ワックス２部、イソプロピルアルコール２部、水２．９部を加え、３０分攪拌し、実施例３インキを作成した。この実施例３インキ１００部を、水／エタノール＝４／６の混合溶剤で希釈し、インキ粘度をザーンカップ＃３で１６〜１８秒に調整した。この調整インキを、コロナ処理した無延伸ポリスチレンフィルムにグラビア印刷し、この印刷物を厚さ１００μｍのポリスチレンシートと１８０℃の熱を掛けて熱ラミネートして積層体を得た。
【００２５】
（比較例１）
ステンレスタンクに水性藍顔料ベースを４０部、酸価９０、ガラス転移点１６０℃、固形分４０％に調整したスチレン−アクリル酸エマルジョン樹脂５２部、消泡剤０．１部、ワックス２部、イソプロピルアルコール２部、水２．９部を加え、３０分攪拌し比較例１インキを作成した。この比較例１インキ１００部を、水／エタノール＝４／６の混合溶剤で希釈し、インキ粘度をザーンカップ＃３で１６〜１８秒に調整した。この調整インキを、コロナ処理した無延伸ポリスチレンフィルムにグラビア印刷し、この印刷物を厚さ１００μｍのポリスチレンシートと１８０℃の熱を掛けて熱ラミネートして積層体を得た。
【００２６】
（比較例２）
ステンレスタンクに水性藍顔料ベースを４０部、酸価３５０、ガラス転移点１００℃、固形分４０％に調整した水溶性スチレン−アクリル酸樹脂５２部、消泡剤０．１部、ワックス２部、イソプロピルアルコール２部、水２．９部を加え、３０分攪拌し比較例２インキを作成した。この比較例２インキ１００部を、水／エタノール＝４／６の混合溶剤で希釈し、インキ粘度をザーンカップ＃３で１６〜１８秒に調整した。この調整インキを、コロナ処理した無延伸ポリスチレンフィルムにグラビア印刷し、この印刷物を厚さ１００μｍのポリスチレンシートと１８０℃の熱を掛けて熱ラミネートして積層体を得た。
【００２７】
（比較例３）
ステンレスタンクに溶剤型藍顔料ベースを３０部、セルロースとアクリル樹脂５０部、消泡剤０．１部、ワックス２部、トルエン１０部、イソプロピルアルコール７．９部、３０分攪拌し比較例３インキを作成した。この比較例３インキ１００部を、トルエン／酢酸エチル／イソプロピルアルコール＝５／３／２の混合溶剤で希釈し、インキ粘度をザーンカップ＃３で１６〜１８秒に調整した。この調整インキを、コロナ処理した無延伸ポリスチレンフィルムにグラビア印刷し、この印刷物を厚さ１００μｍのポリスチレンシートと１８０℃の熱を掛けて熱ラミネートして積層体を得た。
【００２８】
実施例１〜３及び比較例１〜３の積層体につき、成型加工性、耐水性、密着性、印刷物の残留溶剤量を評価した結果を表１に示す。尚、評価方法及びその判定基準は以下のとおりである。
【００２９】
（成型加工性）
積層体を真空成型機のドレープ法で成型した時の割れ、接着不良を下記の基準で評価。
【００３０】
（割れ）；目視判定良（○）不良（×）
（ラミネート接着性）
セロハン粘着テープ２５ｍｍを印刷フィルム面に均一になるように押さえつけ、次にセロハン粘着テープを印刷フィルム面より素早く剥離する。この時、セロハン粘着テープに取られたフィルムの割合を調べる。
（◎）：フィルム取られ無し。
（○）：フィルムが全体の１０％以内取られる。
（△）：フィルムが全体の１０％〜３０％取られる。
（×）：フィルムが全体の５０％以上取られる。
【００３１】
（耐水性）
室温（２５℃）の水中に積層体を２日間及び１週間浸漬し、成型品の印刷部とポリスチレンフィルムとの浮きを目視確認。
（◎）：１週間浮き無し
（○）：２日間浮き無し
（△）：１日間浮き無し
（×）：ブリスター有り
【００３２】
（密着性）
セロハン粘着テープ２５ｍｍを印刷フィルム面に均一になるように押さえつけ、次にセロハン粘着テープを印刷フィルム面より素早く剥離する。この時、セロハン粘着テープに取られたインキ塗膜の割合を調べる。
（◎）：インキ取られ無し。
（○）：インキが全体の１０％以内取られる。
（△）：インキが全体の１０％〜２５％取られる。
（×）：インキが全体の２５％以上取られる。
【００３３】
（残留溶剤）
無延伸のポリスチレンフィルムにグラビア印刷機でインキをベタ印刷し、巻き取った後にガスクロマトグラフィーで残留溶剤量を確認する。残留溶剤量の単位は、ｍｇ／ｍ^２で表示する。
【００３４】
【表１】

【００３５】
上記の実験結果から、本発明のポリスチレン成型用積層シートは、優れた成型加工適性、耐水性、密着性及び低残留溶剤量を有していることが示される。
【００３６】
【発明の効果】
本発明により、残量溶剤の少ない環境に優しき、更に、成型加工適性、耐水性、密着性に優れるポリスチレン成型用積層シート及びその製造方法を提供することが出来る。

Claims

バインダー樹脂として、酸価１０〜３００（ｍｇＫＯＨ／ｇ）、ガラス転移点１０〜１００℃の水分散性及び又は水溶性スチレン−アクリル酸樹脂を含有する水性グラビアインキを、無延伸ポリスチレンフィルムに印刷する工程、該印刷面に、ポリスチレン系シート層を熱圧着でラミネート加工する工程を有することを特徴とするポリスチレン成型用積層シートの製造方法。