JP4597287B2 - 空調方法及び空調システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ペリメータゾーンを有する室の床下空間に供給された空調空気を,室の下方から室内に供給して空調する際の空調方法,及び空調システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
窓等のペリメータを有する室の空調システムを構成する場合,これまでは,インテリアゾーンと窓のあるペリメータゾーンとに別々に空調装置を設置して,各々のゾーンの空調を個別におこなうことが一般的であった。
しかしながら窓の近傍に空調装置を設置した場合,管の老朽化などにより空調装置に出入りする熱媒や空調装置の冷却コイルからの結露水が漏れる可能性も考慮しなければならず,さらに前記インテリアゾーンの空調方式が床下空調方式の場合には,床下空間に冷温水配管やドレン配管が通ることになり,好ましくなかった。
【0003】
そのため,例えば特開平5−312393号公報に開示されたように,床下空気吸い込み側と室内空気吸い込み側とに切り換え自在な吸込口切換ダンパを有するファンユニットを窓の下に設置し,外気と室内との間の熱の出入り状態に応じて前記吸込口切換ダンパを切り換え,例えば暖房の立ち上がり運転時には床下空気の一部を吸い込んで窓に供給し,室温が所定温度に達した後は室内空気の一部を吸い込んで窓に供給するアンダーフロア空調用ペリメータ負荷処理方法が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来技術では,窓側と室側との間の風量のバランスをとることができないので,例えば床下空気の一部を吸い込んで窓に吹き出させる運転時において,常に一定の風量のみを吸い込んで窓側に吹き出すことしかできず,窓側に過剰に送風したり,あるいは過少に送風するといった事態が起こりうる。その結果,過剰に送風した場合には,室のインテリアゾーンの熱負荷に対応できず,そのため空調装置自体から供給される空調空気の温度を直ちに調整する必要があり,結果的にエネルギーのロスを招く。また逆に過少に送風した場合には,インテリアゾーンの熱負荷には,余裕があるものの,例えば冬期の暖房時においては,窓側への風量が不足してコールドドラフトを防ぎきれないという問題が生ずる。また前記従来技術では,暖房運転の立ち上がった後は床上の室内空気を吸い込んでいるので,却ってコールドドラフトを強くすることになるおそれがある。その結果足下の気流増加と温度降下を招来し,より冷たさを感じることになるおそれもあった。これを補うためには従来の技術では,空調空気の温度を上昇するしかなく,より多くのエネルギーを必要となる。
【0005】
本発明は,かかる点に鑑みてなされたものであり,ペリメータゾーンを有する室をいわゆる床下空調方式で空調するにあたり,床下空気をペリメータゾーンとインテリアゾーンに分配することとし,各分配量を室温等に応じて制御することで,前記問題を解決することをその目的としている。また従来の一般的な床吹き出し空調システムでは,吹き出し空気の気流が一定であるため,居住者が吹き出し部分からの気流を却って不快に感じることも指摘されているが,本発明は,室温によって,そのようなドラフト感の低減を可能なシステムを提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため,請求項1によれば,空調装置の送風機によって室の床下空間に供給された空調空気を,前記室のペリメータゾーンとインテリアゾーンとに下方から供給する空調方法であって,前記室のインテリアゾーンの温度に基づいて,前記床下空間の空調空気を吸い込んで前記ペリメータゾーンの下方から上方に向けて送風する他の送風機の送風量を制御して,前記ペリメータゾーンとインテリアゾーンとに供給する空調空気の風量を分配し、夏期の冷房運転時には、前記他の送風機は停止することを特徴とする,空調方法が提供される。なお,他の送風機のモータなどをインバータ制御したり,あるいは強弱の切り換え制御することで,前記分配を容易に実現できる。
【0007】
かかる空調方法によれば,インテリアゾーンの温度に基づいて,前記ペリメータゾーンとインテリアゾーンとに供給する空調空気の風量を,他の送風機の送風量の制御によって分配するようにしたので,例えばインテリアゾーンへの供給量が足りずに所定の室温にすることができない場合,ペリメータゾーンへの供給量を減じて,その分インテリアゾーン側へと回してインテリアゾーンの熱負荷に対処することができる。したがって,従来のように直ちに空調装置から供給される空調空気の温度自体を調節する必要がなく,エネルギーを効率よく利用することができる。
【0008】
この場合,前記風量の分配だけではインテリアゾーンの温度を所定温度にすることができない場合には,請求項2のように前記空調装置を制御して空調空気の温度を調整すればよい。これによってインテリアゾーンを所望の温度にすることが可能になる。
【0012】
請求項3によれば,空調装置の送風機によって室の床下空間に供給された空調空気を,当該室のペリメータゾーンとインテリアゾーンに対して床面から吹き出させて前記室内を空調するシステムであって,前記床下空間の空調空気を吸い込んで前記ペリメータゾーンの下方から上方に向けて送風する他の送風機を備え,前記室内のインテリアゾーンの温度を検出する温度検出装置と,前記温度検出装置によって得られた温度に基づいて,前記他の送風機の送風量及び前記空調装置の空調空気の温度を制御する制御装置と,を有し、前記他の送風機は,夏期の冷房運転の際には,インテリアゾーンの温度に基づいて前記制御装置によって停止制御され,暖房運転の際には,予め定められた送風量を送風するように制御されることを特徴とする,空調システムが提供される。
【0013】
この空調システムによれば,前記した空調方法を好適に実施することが可能である。またインテリアゾーンへの吹き出し風量が居住者にとって不快なドラフト感として感じられる場合には,温度制御を行ってインテリアゾーンのドラフト感の低減を図るようにしてもよい。
【0015】
そして予め前記制御装置自体を,空調空気の温度制御よりも他の送風機の送風量の制御を優先させて行うように構成しておけば,まず床下空間の空調空気の分配制御を行い,その後それだけではインテリアゾーンの温度を所定の温度に達成できないときに初めて空調装置の制御を実施することになり,従来のように直ちに空調装置自体を制御する方式と比べると,常にエネルギー効率の良い運転を行う空調システムを実現できる。
【0016】
なお各請求項において床下空間の空調空気は,床下に形成された床下チャンバはもちろんのこと,床下空間に施工されているダクト内に流通する空調空気も含むものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態について説明すると、図1は、本実施の形態にかかる空調システムの概観を示しており,室Rに対して床下空調方式で空調を実施するシステムとして構築されている。
【0018】
空調装置としてのエアハンドリングユニット1は,室RのインテリアゾーンIの奥に設置されている。もちろんこのエアハンドリングユニット1は,別室,例えば機械設備室や廊下等に設置されていても良い。このエアハンドリングユニット1は,上部に吸込口2を有し,ケーシング3内には,上流側から順に,フィルタ4,冷温水コイル5,加湿器(図示せず),ファン6を有している。そしてファン6によって吸い込まれて,清浄化,温度調整された空気は下部の供給口7から,空調空気として床下チャンバ8へと供給されるようになっている。
【0019】
床下チャンバ8上の床面には,床下チャンバ8内に通ずる床面吹出し口11が適宜数設けられており,床下チャンバ8内に供給された空調空気を室R内に下方から上方に向けて給気SA1として供給する。なおこの実施の形態では,ファン6を定格運転して床下チャンバ8への空調空気の供給量は一定とした例を示している。
【0020】
一方室RのペリメータゾーンPには,窓21が設置されている。この窓21の下方には,送風ユニット22が設置されている。この送風ユニット22は,ケーシング23内にファン24を有し,ケーシング23の上部には吹出し口25を有している。このファン24は,床下チャンバ8内の空調空気を吸い込んで,前記吹き出し口25から上方に向けて給気SA2としてこれを吹き出すようになっている。
【0021】
本実施の形態においては,前記ファン24は,制御装置26によってインバータ制御されるようになっている。すなわち,インテリアゾーンI内には,インテリアゾーンI内の室温を検出する温度センサ27が設置されており,この温度センサ27によって検出されたインテリアゾーンI内の室温に基づいてファン24の送風量が制御される。
【0022】
具体的な制御例を説明する。まず夏期の冷房運転の場合には,目標室温に近づけるようにファン24の送風量が制御される。例えば目標温度26℃に設定されているとき,エアハンドリングユニット1から床下チャンバ8内に供給された冷風のうち,例えば70%を床面吹き出し口11が吹き出す給気SA1,30%を送風ユニット22の吹出し口25から吹き出される給気SA2として分配するようにファン24が制御され,そのときの運転状態でインテリアゾーンIの室温が26℃になれば,その状態が維持される。
そして26℃を越えるようであれば,インテリアゾーンIに供給する冷熱を多くするため,給気SA1の風量を多くする必要があり,その場合には,ファン24の送風量を減じることで,結果的に給気SA1の風量を多くする制御がなされる。例えば給気SA1の風量が空調空気の25%となるように制御される。逆に,26℃に満たないようであれば,インテリアゾーンIに対して給気SA1が供給過剰であるから,給気SA1の風量を減じるために,ファン24からの送風量を多くする制御がなされる。
【0023】
そしてこのような床下チャンバ8内の空調空気の分配によっては,インテリアゾーンIの室温が目標温度に達しない場合には,制御装置26は,エアハンドリングユニット1自体から供給される空調空気の温度を調整するようにエアハンドリングユニット1を制御するようになっている。例えば冷温水コイル5などを調整して,空調空気の温度を下げたりする。
【0024】
また冬期の暖房運転の際にも,同様にインテリアゾーンIの室温に基づいてファン24とエアハンドリングユニット1の制御を行ってもよいが,そうすると,ファン24からの給気SA2の量が少なすぎてコールドドラフトCDに対処できず,コールドドラフトCDに対処できない場合が生ずる。これを防止するために,冬期の暖房運転の際には,次のような制御が適している。すなわち,コールドドラフトCDの対処を優先させて,これに対向するのに必要な風量を確保するようにファン24が制御され,後は,インテリアゾーンIの室温が所定温度に達するように,空調空気の温度を調整するようにエアハンドリングユニット1内の冷温水コイル5を通る熱媒量,又は該熱媒の温度が制御装置26によって制御されるようにすればよい。
【0025】
以上の構成を有する本実施の形態にかかる空調システムによれば,まず夏期の冷房運転の際には,エアハンドリングユニット1から床下チャンバ8内に供給される空調空気を,インテリアゾーンIの室温を優先させてインテリアゾーンIとペリメータゾーンPとに分配するように,ファン24が制御される。したがって,エネルギーの効率のよい利用の下で,室Rの空調を適切に実施することが可能である。
【0026】
また冬期の暖房運転の際には,コールドドラフトCDの対処を優先させるように,ファン24の送風量が制御されて,室Rの空調が実施される。したがって,この場合も必要最小限のエネルギーを用いてコールドドラフトCDの居住域への侵入を防止しつつ,インテリアゾーンIの適切な空調が実施できる。
【0027】
いずれにしても,床下チャンバ8内に供給された空調空気の量をまず室外の負荷(コールドドラフト,外部負荷)と室内の負荷とに対応するように分配することで,各々の場合に対処するようにファン24が制御され,ファン24の制御だけでは対処できない場合に,はじめてエアハンドリングユニット1が制御装置26によって制御されるようになっている。そのため,室内での温度差が減少しエネルギーの効率の良い利用が図れる。
【0028】
なおそのように最終的なインテリアゾーンIの室温に基づく厳密な制御だけではなく,例えば次のように制御しても良い。
【0029】
例えばファン24の送風量を強,中,弱,断のように4段に切り換え可能としておき,冷房時には,ファン24を弱又は停止させるようにしておき,後はインテリアゾーンIの室温に基づく,エアハンドリングユニット1の制御を制御装置26が制御する。このように夏期の冷房時に,ペリメータゾーンPへの送風量を減じるのは,窓21から熱は,室内空気を暖めて比重が軽くなり,その結果,暖まった空気は天井付近に溜まるので,床面からの吹き出し空調であることを考えれば,実際問題として居住域(床面から1.5m以下のところ)では殆ど影響がないからである。したがって,空調空気の大部分をインテリアゾーンI側に供給するようにファン24の送風量を減じてもよいのである。
【0030】
そして冬期の暖房運転の際には,ファン24を強又は中の送風量となるように切り換え制御を行い,後はインテリアゾーンIの室温に基づく,エアハンドリングユニット1の制御を制御装置26が実施する。これは,コールドドラフトCDが居住域に侵入する不快感が大きいことに着目したためである。しかしながらかかる制御であっても,基本的には,ファン24の送風量の切り換えによってまず床下チャンバ8内の空調空気の分配を行っているので,床面から吹き出す気流も弱くでき,従来よりも快適で効率のよいエネルギー利用の下で室Rの空調を行える。
【0031】
なお前記制御例は,季節に応じた冷房,暖房運転に着目した例であるが,これに限らず,朝,昼,夜等,1日における時間帯によってペリメータゾーンの負荷状況に応じた制御を実施してもよい。例えば冬期において,朝,夜は,コールドドラフトCDが強いと見なして,ファン24の送風量を強とし,昼はコールドドラフトCDが弱いと見なして,ファン24の送風量を弱とする。そうすれば,その分インテリアゾーンIに供給する給気SA1の量を多くできるから,結果としてエアハンドリングユニット1から供給される空調空気の温度を下げることができる。この場合でも,通常の室温に基づく空調装置の制御よりも先に,床下チャンバ8内の空調空気の分配制御をまず優先させて実施しているので,従来よりもエネルギー効率がよい。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば,床下空間の空調空気をインテリアゾーンの温度に基づいて,ペリメータゾーンとインテリアゾーンに分配するようにしたので,従来技術のようにペリメータゾーンへの空調空気の過剰供給によるエネルギーロスを防止して,適切な空調を実施することが可能である。さらにまた居住者に対する床吹き出し気流によるドラフト感の低減を行って,快適な空調環境の実現も可能である。特に請求項6,7の場合には,冬期の暖房運転時のコールドドラフトに対しても適切に対処することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態にかかる空調システムの説明図である。
【符号の説明】
1 エアハンドリングユニット
5 冷温水コイル
6 ファン
8 床下チャンバ
11 床面吹出し口
21 窓
24 ファン
25 吹出し口
26 制御装置
I インテリアゾーン
P ペリメータゾーン
SA 給気
Claims (4)
- 空調装置の送風機によって室の床下空間に供給された空調空気を,前記室のペリメータゾーンとインテリアゾーンとに下方から供給する空調方法であって,
前記室のインテリアゾーンの温度に基づいて,前記床下空間の空調空気を吸い込んで前記ペリメータゾーンの下方から上方に向けて送風する他の送風機の送風量を制御して,前記ペリメータゾーンとインテリアゾーンとに供給する空調空気の風量を分配し、
夏期の冷房運転時には、前記他の送風機は停止することを特徴とする,空調方法。 - 前記他の送風機の送風量の制御による前記風量の分配だけではインテリアゾーンの温度を所定温度にすることができない場合に,前記空調装置を制御して前記空調空気の温度を調整することを特徴とする,請求項1に記載の空調方法。
- 空調装置の送風機によって室の床下空間に供給された空調空気を,当該室のペリメータゾーンとインテリアゾーンに対して床面から吹き出させて前記室内を空調するシステムであって,
前記床下空間の空調空気を吸い込んで前記ペリメータゾーンの下方から上方に向けて送風する他の送風機を備え,
前記室内のインテリアゾーンの温度を検出する温度検出装置と,
前記温度検出装置によって得られた温度に基づいて,前記他の送風機の送風量及び前記空調装置の空調空気の温度を制御する制御装置と,を有し、
前記他の送風機は,夏期の冷房運転の際には,インテリアゾーンの温度に基づいて前記制御装置によって停止制御され,暖房運転の際には,予め定められた送風量を送風するように制御されることを特徴とする,空調システム。 - 前記制御装置は,空調装置の空調空気の温度の制御よりも他の送風機の送風量の制御を優先させて行うように構成されたことを特徴とする,請求項3に記載の空調システム。
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