JP4589574B2 - 油圧式無段変速装置及び動力伝達装置 - Google Patents

油圧式無段変速装置及び動力伝達装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、産業機械や車両等、各種の産業分野で広く利用可能な油圧式無段変速装置及び動力伝達装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
既に最大行程容積の等しい可変容量形油圧装置と、差動油圧装置とを組み合わせて、両者のシリンダブロックを共有し、同シリンダブロックが回転する油圧式無段変速装置がある。
【0003】
この装置は、可変容量形油圧装置からの吐出量が0のとき、差動油圧装置を介して、油圧式無段変速装置の入力側と出力側とが直結されることによって、この直結時を中心として増速及び減速の両方に広範囲の無段変速を得ることができるようにされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の装置においては、可変容量形油圧装置と差動油圧装置の最大行程容積が等しくされている。このことから、可変容量形油圧装置側の吐出量と差動油圧装置側の受入量が等しくなることにより、差動油圧装置側のプランジャによって与えられる出力側の回転速度が入力回転速度と等しく、かつ逆向きの場合でないと、出力回転数が「0」、すなわち、いわゆる中立を実現することができない。
【0005】
従って、出力回転数が「0」となるのは、すなわち可変容量形油圧装置側の最大吐出量と差動油圧装置側の最大受入量が等しくなるのは、ワンポイントとなり、そのポイントにシフト装置を合わせることが難しい問題がある。
【0006】
本発明の目的は、出力回転の中立、すなわち、出力回転数が「0」となる範囲に幅を持たせることができるとともに出力回転部が入力回転と逆回転する際には、作動油が油抜き部を介して漏れなくなり、油圧閉回路から作動油が漏れなくなるため、出力回転部が入力回転と逆転するときの効率が改善する油圧式無段変速装置及び動力伝達装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、プランジャを備え、当接部によって同プランジャの突出入を行う可変容量形の第1油圧装置と、プランジャを備え、同プランジャの当接によって入力回転に対して相対又は同期回転のいずれかを行う出力回転部を設けた第2油圧装置を組合せ、双方のプランジャを収納するシリンダブロックを共有し、同シリンダブロックを入力回転と同期回転する構成とした油圧式無段変速装置において、第1油圧装置の行程容積が第2油圧装置の行程容積を上回る範囲を有する構成とし、第1油圧装置と第2油圧装置とを連通する油圧閉回路のうち、出力回転部が正回転するときの低圧油路側に油抜き部を設け、前記出力回転部が逆回転するときに、前記油抜き部をシールする機構を設けたことを特徴とする油圧式無段変速装置を要旨とするものである。
【0008】
ここで、当接部とは、第1油圧装置のプランジャがシリンダブロックの軸心周りに公転する間に、プランジャとの当接箇所とプランジャを収納するプランジャ孔の底部とが接近離間するように構成され、プランジャとの当接によっては駆動されない部をいう。又、出力回転部とは、第2油圧装置のプランジャがシリンダブロックの軸心周りに公転する間に、プランジャとの当接箇所とプランジャを収納するプランジャ孔の底部とが接近離間するように構成され、プランジャとの当接によって駆動される部をいう。
【0009】
請求項の発明は、請求項1において、第2油圧装置のプランジャに印加する油圧を解放するために作動する油抜き機構を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項の発明は、請求項において、前記油抜き機構は、油圧閉回路をシリンダブロック外部に直接解放するものであることを特徴とする。
請求項の発明は、請求項において、前記油抜き機構は、第2油圧装置のプランジャを摺動自在に収納するプランジャ孔をシリンダブロック外部に直接解放するものであることを特徴とする。
【0011】
請求項の発明は、請求項乃至請求項のうちいずれか1項において、第1油圧装置の最大行程容積と第2油圧装置の最大行程容積の容積差を微小差としたことを特徴とする。
【0012】
請求項の発明は、請求項に記載の油圧式無段変速装置のシリンダブロックを、原動機からの入力回転を得る入力軸と連結する構成とするとともに、同入力軸を反原動機側に延出して出力軸として構成し、前記延出された入力軸外周に前記出力回転部を設け、同出力回転部の動力伝達を行うとともに正逆回転切替可能な正逆回転切替装置を設けたことを特徴とする動力伝達装を要旨とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
参考例
以下、本発明の実施形態を説明する前に、作業機として作業用車両の走行用に使用される油圧式無段変速装置(以下、無段変速装置20という)の参考例を、図1〜図1を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1に示すように無段変速装置20は、作業用車両のパワーユニットのケース26内に収納されている。無段変速装置20は、第1油圧装置100と、同第1油圧装置100との間に油圧閉回路C(図9〜図11参照)を形成する第2油圧装置200とから構成されている。
【0015】
無段変速装置20の入力軸21は図9に示すようにエンジン22のクランク軸に連結され、出力側である後記するヨーク23に連結された出力ギヤ24は図示しない終減速装置に連結された入力ギヤ25に噛合されている。
【0016】
前記第1油圧装置100は、可変容量形の油圧装置に相当し、第2油圧装置200は固定容量形の差動油圧装置に相当する。
無段変速装置20のケース26は、円筒状の筒部材27と、筒部材27の両端開口に対して塞ぐようにボルト挿通孔28,29を介して図示しないボルトにて一体に連結された一対の側壁部材30,31とから構成されている。
【0017】
無段変速装置20の入力軸21において、入力端側は、ケース26の側壁部材30に対して軸受部32を介して回転自在に支持されている。又、ケース26の側壁部材31には、出力回転部としてのヨーク23が、軸受部33を介して回動自在に支持されている。そして、入力軸21の出力端側は、ヨーク23と同軸上に位置するように、ヨーク23に対して軸受23a及びオイルシール23bを介して回動自在に貫通されて支持されている。同出力端のヨーク23から突出した端部はPTO軸とされている。
【0018】
図5に示すように側壁部材30の中央において、内外両側面には、一対の軸受収納孔34,35が同軸上に配置されるように並設されている。軸受収納孔34,35間には、軸受収納孔34,35よりも縮径した貫通孔36が形成されている。そして、貫通孔36にはスリーブ37が回動自在に配置され、又、両軸受収納孔34、35には貫通孔36を挟んで対称上に円錐コロ軸受38,39が嵌合固定されている。そして、入力軸21は両円錐コロ軸受38,39を介して、支持されている。又、軸受収納孔34の開口は、側壁部材30にボルト付けされたカバー15にて覆われている。図5に示すようにカバー15の貫通孔15aにはシール部材16を介して入力軸21が貫通されている。
【0019】
図5に示すように、円錐コロ軸受38の外輪38aは、軸受収納孔34の段部にシム50を介して当接されている。又、円錐コロ軸受39の外輪39aは、軸受収納孔35の奥側の段部に当接されている。
【0020】
そして、軸受収納孔34内において、入力軸21の入力端側外周にはナット40が螺合されている。ナット40の螺合により、円錐コロ軸受38の内輪38bは、スリーブ37を介して、円錐コロ軸受39の内輪39bを押圧し、さらに、入力軸21に嵌合したスリーブ41を押圧する。スリーブ41は、シリンダブロック42を押圧する。そして、シリンダブロック42は、入力軸21外周に突設した係止部46に当接される。よって、シリンダブロック42は入力端側のみからナット40を螺合するのみで軸方向に固定することができる。又、軸受外輪38aと側壁部材30との間に介在するシム50の枚数や厚みを加減することで軸受38,39の予圧を調整することができる。
【0021】
円錐コロ軸受38,39及びスリーブ37により、軸受部32が構成されている。
(第1油圧装置100)
第1油圧装置100は、入力軸21と、シリンダブロック42、プランジャ43、及び前記プランジャ43に対して当接する斜板面44を含むクレイドル45とを備えている。前記クレイドル45は、入力軸21が貫通されている。前記斜板面44は、可変容量形油圧装置の斜板に相当するとともに、アキシャル型の油圧装置における当接部に相当する。
【0022】
図3に示すように、前記クレイドル45はシリンダブロック42の軸心Oと直交するトラニオン軸線TRを中心としてケース26に対して傾動自在に支持されている。すなわち、前記クレイドル45は、斜板面44を含む仮想平面が、軸心Oと直交する位置を直立位置とする。そして、この直立位置を基準にして、クレイドル45は図3において反時計回り方向に所定角度傾いた位置(第1の位置)と、直立位置を基準にして時計回り方向に所定角度傾いた位置(第2の位置)の間を傾動可能にされている。
【0023】
参考例では、斜板面44が直立位置に位置したときを基準に、この図3において、時計回り方向を正とし、反時計回り方向を負という。そして、本参考例では図12の出力回転数Nout=Ninを境に、Nout>Ninの時に負側に傾動し、Nout<Ninの時に、正側に傾動する。なお、出力回転数とは、参考例、第1、第2実施形態及びその変形例ではヨーク23の回転数である。
【0024】
なお、図3に示された斜板面44は、クレイドル45が第1の位置にあるときの負の最大傾動角度位置で傾動した状態を示している。又、クレイドル45が第2の位置に位置したときは、斜板面44については正の傾動角度位置という。
【0025】
シリンダブロック42は、入力軸21に対してスプライン21a結合により一体に連結されている。シリンダブロック42は、略円柱状の組合せ形状で、軸方向に位置する両端周面は、中央部よりも縮径されている。
【0026】
シリンダブロック42において、前記中央部は、その回転中心(軸心O)の回りに複数のプランジャ孔47が環状に配列され、軸心Oと平行に延設されている。同プランジャ孔47は、シリンダブロック42の中央部の段部面においてクレイドル45側に開口が形成されている。各プランジャ孔47には、プランジャ43が摺動自在に配置されている。プランジャ43の先端には、鋼球48が転動自在に嵌合されており、プランジャ43は鋼球48及び鋼球48を取着したシュー49を介して斜板面44に当接されている。傾斜状態の斜板面44はシリンダブロック42の回転に伴ってプランジャ43を往復作動させ、吸入、吐出行程の作用を付与する。
【0027】
(第2油圧装置200)
第2油圧装置200は、前記シリンダブロック42に摺動自在に配置された複数のプランジャ58、及び前記プランジャ58に対して当接する回転斜面51をもつ筒状のヨーク23とを備えている。
【0028】
図1,図3に示すように、側壁部材31には、軸受収納孔52、及び軸受収納孔52よりも小径の貫通孔53が互いに同軸となるようにそれぞれ形成されている。そして、軸受収納孔52には円錐コロ軸受54が嵌合されている。又、筒部材27の出力端部内周面には、玉軸受55が固定されている。ヨーク23は、大径部と小径部を備えており、大径部が玉軸受55に、小径部が円錐コロ軸受54に嵌合されることにより、回動自在に支持されている。又、ヨーク23の小径部は、貫通孔53内に止着されたシール部材56を介して外部に突出されている。同ヨーク23のその突出端には、出力ギヤ24が形成されている。
【0029】
回転斜面51は、ヨーク23において、シリンダブロック42側の端面に形成されており、回転斜面51を含む仮想平面が軸心Oに対して一定角度(以下、傾斜角という)をもって傾斜している。
【0030】
前記シリンダブロック42の中央部には、その回転中心の回りにプランジャ孔47と同数のプランジャ孔57が環状に配列され、軸心Oと平行に延設されている。同プランジャ孔57のピッチ円は前記プランジャ孔47のピッチ円と同心及び同径とされている。又、各プランジャ孔57は互いに隣接するプランジャ孔47間に位置するように、図2に示すようにシリンダブロック42の周方向において、プランジャ孔47とは互いに1/2ピッチずつずらして配置されている。
【0031】
プランジャ孔57はシリンダブロック42の中央部の段部面において、前記ヨーク23側に開口が形成されている。各プランジャ孔57には、プランジャ58が摺動自在に配置され、その先端には、鋼球59が転動自在に嵌合されている。プランジャ58は鋼球59及び鋼球59を取着したシュー60を介して回転斜面51に当接されている。前記回転斜面51とシリンダブロック42との相対回転に伴ってプランジャ58が往復作動して吸入、吐出行程を繰り返す。
【0032】
参考例では、第1油圧装置100の最大行程容積VPmaxは、第2油圧装置200の最大行程容積VMma xの1.7倍となるように設定されている。具体的には、本参考例では、第1油圧装置100の斜板面44の最大傾動角が第2油圧装置200の回転斜面51の傾斜角よりも大きくなるように設定することにより、前記最大行程容積の差を得るようにしている。第1油圧装置100と第2油圧装置200の最大行程容積に差を持たせることにより、第1油圧装置100の行程容積VPが第2油圧装置200の行程容積VMを上回る範囲を有する構成とされている。
【0033】
(油圧閉回路C)
前記第1油圧装置100と第2油圧装置200との間に形成されている油圧閉回路Cについて説明する。
【0034】
シリンダブロック42の内周面には、ともに環状の第1油室61及び第2油室62が互いにシリンダブロック42の軸方向に並んで並設されている。なお、説明の便宜上、第1油室61を油室A、第2油室62を油室Bということがある。
【0035】
シリンダブロック42には第1油室61及び第2油室62を共に連通する第1弁孔63が、プランジャ孔47と同数個、シリンダブロック42の軸方向に沿って延設されている。又、シリンダブロック42には前記第1油室61及び第2油室62を共に連通する第2弁孔64が、プランジャ孔57と同数個、シリンダブロック42の軸方向に沿って延設されている。
【0036】
第1弁孔63のピッチ円は第2弁孔64のピッチ円と同心及び同径とされている。又、プランジャ孔47、57よりも内方に位置するように、プランジャ孔47、57のピッチ円よりもそのピッチ円の径は小さくされている。又、各第1弁孔63は隣接する第2弁孔64間に位置するように、図2に示すようにシリンダブロック42の周方向において、第2弁孔64とは互いに1/2ピッチずつずらして配置されている。又、第1弁孔63とプランジャ孔47の各中心、及び第2弁孔64とプランジャ孔57の各中心は、図2に示すように軸心Oから放射状に延びる直線上に位置するように配置されている。
【0037】
図1に示すように、油路65は、プランジャ孔47の底部と、第1弁孔63の第1油室61及び第2油室62との間の部位間を連通するように形成されている。前記プランジャ孔47の底部と、第1弁孔63の第1油室61及び第2油室62との間の部位は、シリンダブロック42の長さ方向(軸心Oが延びる方向)において所定距離を有するように配置されている。従って、油路65は、図1及び図6に示すように、シリンダブロック42の外周側から内方へ向けて斜状にされている。
【0038】
各第1弁孔63には、第1油室61と第2油室62との間において、対応するプランジャ孔47に連通する油路65のポートUが形成されている。
各第1弁孔63には、スプール型の第1切替弁66が摺動自在に配置されている。第1切替弁66は分配弁に相当する。円錐コロ軸受39の外輪39aの外周面には円筒状のホルダ68が固定されている。ホルダ68の内周面において、軸方向の中央部は縮径されており、同縮径部には、玉軸受69を介してリテーナ70が回動自在に支持されている。リテーナ70は、円筒状の筒部71と、筒部71のシリンダブロック42側の端部に張出形成されたフランジ72とから構成されている。そして、リテーナ70は、図1及び図5に示すようにその軸心が玉軸受69により軸心Oに対して斜交するようにして配置され、この状態で、入力軸21が回動可能に貫通されている。この斜交により、フランジ72のシリンダブロック42に対向する面(以下、フランジ面という)を含む仮想平面は、軸心Oに対して斜交する。
【0039】
図7(a)に示すようにリテーナ70のフランジ72には、係止溝73がその軸心を中心にして等角度毎に外周から軸心に向かって切り込み形成されている。係止溝73には、図7(b)に示すように第1切替弁66に設けられたくびれ部66bが係入されている。なお、くびれ部66bは隣接した大径部66cよりも小径とされている。
【0040】
第1切替弁66は軸心Oと斜交するフランジ面を備えたリテーナ70と係合することにより、図8に示すような変位を実現する。
図8に示すように、前記リテーナ70のフランジ72は、第1切替弁66をポート閉鎖位置n0を中心としてポートUと第2油室62とを連通させる第1開口位置n1と、ポートUと第1油室61とを連通させる第2開口位置n2間を往復移動させる。そして、このリテーナ70により、第1油圧装置100には図8に示すようにシリンダブロック42の軸心の周りの回転向きに対応して0°〜180°の範囲で領域H、180°〜360°(0°)の範囲で領域Iが付与されている。
【0041】
ここで、領域HとはポートUと第2油室62が連通する区間を全て含む領域のことであり、領域IとはポートUと第1油室61が連通する区間を全て含む領域のことである。
【0042】
前記斜板面44が直立位置から負の傾動角度位置へと変位した場合、図12において、このときの第1油圧装置100の行程容積VPは、0からVPmaxと変化し、それに応じて入力軸21の入力回転数がNinのとき出力回転数Nout (出力ギヤ24の回転数)はNinから2.7Ninの範囲の速度が得られるように本参考例ではその第1油圧装置100側の作動油の吐出量が設定されている。
【0043】
なお、図12において、縦軸は第1油圧装置100及び第2油圧装置200の行程容積を示し、横軸はヨーク23(出力回転部)の出力回転数Noutを示している。同図において、実線は、第1油圧装置100の行程容積VPの変化を示し、一点鎖線は第2油圧装置200の行程容積VMの変化を示している。
【0044】
第1油圧装置100の行程容積とは、シリンダブロック42が1回転する間に、プランジャ43とプランジャ孔47で形成されるプランジャ室が、第1油室61及び第2油室62と授受する作動油量のことである。
【0045】
第2油圧装置200の行程容積とは、ヨーク23(出力回転部)がシリンダブロック42に対して1回転する間に、プランジャ58とプランジャ孔57で形成されるプランジャ室が、第1油室61及び第2油室62と授受する作動油量のことである。
【0046】
又、本参考例では、図3のように斜板面44が負側へ傾動した場合に、シリンダブロック42の軸心O周りの回転角0°〜180°の範囲で、作動油がポートUを介してプランジャ孔47へ吸入され、180°〜360°(0°)の範囲で、作動油がポートUを介してプランジャ孔47から吐出される。そして、斜板面44が正側へ傾動した場合に、シリンダブロック42の軸心O周りの回転角0°〜180°の範囲で、作動油がポートUを介してプランジャ孔47から吐出され、180°〜360°(0°)の範囲で、作動油がポートUを介してプランジャ孔47へ吸入される。吐出する油室及び吸入する油室は、シリンダブロック42の軸心O周りの回転角に対応した領域H,Iによって決まる。
【0047】
図1及び図3に示すように、油路75は、プランジャ孔57の底部と、第2弁孔64の第1油室61及び第2油室62との間の部位間を連通するように形成されている。プランジャ孔57の底部と、第2弁孔64の第1油室61及び第2油室62との間の部位は、シリンダブロック42の長さ方向(軸心Oが延びる方向)において所定距離を有するように配置されている。従って、油路75は、図1及び図3に示すように、シリンダブロック42の外周側から内方へ向けて斜状にされている。
【0048】
各第2弁孔64には、第1油室61と第2油室62との間において、対応するプランジャ孔57に連通する油路75のポートWが形成されている。
各第2弁孔64には、スプール型の第2切替弁76が前記プランジャ58に対して平行となるように摺動自在に配置されている。第2切替弁76は分配弁に相当する。
【0049】
図6に示すようにヨーク23のシリンダブロック42側の端面の中央部には収納孔78が形成されている。収納孔78内において、入力軸21の外周には筒状のホルダ79が一体に固定されている。ホルダ79には玉軸受80を介して筒状の支持部材81がヨーク23の収納孔78の底部に対して複数のピン82を介して一体に連結され、シリンダブロック42に相対回転自在に取付けられている。支持部材81の内周には、リテーナ83が玉軸受84を介して回動自在に連結されている。
【0050】
リテーナ83は、前記リテーナ70と同一の構成である筒部、フランジ、係止溝を備えているため、それらの各構成については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0051】
リテーナ83は、図6に示すようにその軸心が玉軸受84により軸心Oに対して斜交するようにして配置され、この状態で、入力軸21が回動に貫通されている。この斜交により、フランジ72のシリンダブロック42に対向する面(以下、フランジ面という)を含む仮想平面は、軸心Oに対して斜交する。
【0052】
リテーナ83の係止溝73には、図7(b)に示すように第2切替弁76に設けられたくびれ部76bが係入されている。くびれ部76bは隣接した大径部76cよりも小径とされている。
【0053】
第2切替弁76は軸心Oと斜交するフランジ面を備えたリテーナ83と係合することにより、図8に示すような変位を実現する。
なお、図8において、リテーナ70のフランジ72と、リテーナ83のフランジ72との相対位置は、リテーナ70,83が回転自在にされているため変化するが、説明の便宜上、1つにまとめて図示している。
【0054】
そして、ヨーク23(出力回転部)のシリンダブロック42との相対回転に伴って、リテーナ83のフランジ72により、第2油圧装置200にはヨーク23(出力回転部)のシリンダブロック42に対する軸心O周りの相対回転角0°〜180°の範囲で領域J、180°〜360°(0°)の範囲で領域Kが付与されている。
【0055】
ここで、領域JとはポートWと第1油室61が連通する区間を全て含む領域のことであり、領域KとはポートWと第2油室62が連通する区間を全て含む領域のことである。
【0056】
又、本参考例では、図3のように斜板面44が負側へ傾動した場合に、ヨーク23(出力回転部)のシリンダブロック42に対する軸心O周りの相対回転角0°〜180°の範囲で、作動油がポートWを介してプランジャ孔57へ吸入され、180°〜360°(0°)の範囲で、作動油がポートWを介してプランジャ孔57から吐出される。斜板面44が正側へ傾動した場合に、ヨーク23(出力回転部)のシリンダブロック42に対する軸心O周りの相対回転角0°〜180°の範囲で、作動油がポートWを介してプランジャ孔57から吐出され、180°〜360°(0°)の範囲で、作動油がポートWを介してプランジャ孔57へ吸入される。吐出する油室及び吸入する油室は、ヨーク23(出力回転部)のシリンダブロック42に対する軸心O周りの相対回転角に対応した領域J,Kによって決まる。
【0057】
前記プランジャ孔47、プランジャ孔57、第1油室61、第2油室62、第1弁孔63、第2弁孔64、油路65、油路75、ポートU及びポートWとにより、油圧閉回路Cが構成されている。
【0058】
図4に示すように、第1油室61、及び第2油室62に対応してシリンダブロック42の外周よりの位置には、一対の弁収納孔85、86が、軸心Oと平行に配置されている。両弁収納孔85,86の底部は、弁収納孔85よりも縮径された貫通孔87により互いに連通されている。又、両弁収納孔85,86には、シリンダブロック42の中央部の段部面において、外部に開放された開口88、89が形成されている。両弁収納孔85,86には、一対のチャージ弁(逆止弁)90、91が配置されている。
【0059】
チャージ弁90,91は同一構成のため、チャージ弁90の構成について説明し、チャージ弁91の同一構成については同一符号を付してその説明を省略する。
【0060】
チャージ弁90のケース体92は、円筒状に形成されている。ケース体92の周壁には、内外を連通する連通孔92aが形成されている。ケース体92において、一端側の開口部は栓体93にて閉塞され、他端側の開口部は鋼球からなる弁体94の弁座95が形成されている。前記弁体94と栓体93間には、コイルスプリング96が収納され、コイルスプリング96により弁体94は弁座95を閉鎖している。
【0061】
又、各チャージ弁90,91のケース体92は、弁収納孔85,86に対してその長さ方向(軸心Oと平行な方向)に摺動自在に配置されている。弁収納孔85,86の開口88,89の内周面にはC状をなすバネ係止リング88a,89aが固定されている。バネ係止リング88a,89aと各チャージ弁90,91との間にはコイルスプリング97,98が介装されており、各チャージ弁90,91を弁収納孔85,86の底部側へ付勢するようにされている。コイルスプリング97,98の付勢力については後記する。
【0062】
第1油室61と弁収納孔85の間、第2油室62と弁収納孔86との間には、連通油路61a,62aが形成されている。
前記油圧閉回路Cに作動油をチャージするために、入力軸21内には軸心Oに沿って軸孔99が穿設されている。軸孔99はスリーブ37に対応する部位において、半径方向に導入油路99aを有している(図3参照)。同導入油路99aはスリーブ37に半径方向に穿設された油路37a及び外周面に形成された周溝37bに連通されている。側壁部材30には周溝37bに連通する油路30aが設けられ、油路30a内には図示しないチャージポンプから作動油が圧送される。
【0063】
図4に示すように入力軸21及びシリンダブロック42において、貫通孔87と相対する部分には軸孔99に連通する分岐路99b,42aが形成されている。軸孔99内に圧送された作動油は分岐路99b、42a、貫通孔87及びチャージ弁90,91を介して前記油圧閉回路Cを満たす。すなわち、チャージ弁90,91の弁体94は油圧閉回路Cの圧力が軸孔99内のチャージ圧に達するまで開口して、軸孔99内の作動油を油圧閉回路Cに供給する。又、同チャージ弁90,91は作動油が軸孔99へ逆流するのを防止する。
【0064】
なお、コイルスプリング97,98の付勢力は、作動油の所定のチャージ圧によりコイルスプリング97,98の付勢力に抗して連通孔92aが連通油路61a,62aと連通する位置までケース体92が移動可能になるように設定されている。
【0065】
図4のチャージ弁90側においては、チャージ弁90が、作動油の所定のチャージ圧によりコイルスプリング96の付勢力に抗して連通孔92aが連通油路61a,62aと連通する位置まで位置した状態を示している。同図において、α矢印は、軸孔99から、分岐路99b,42a、貫通孔87、弁収納孔85、連通孔92a、連通油路61aを通過する作動油の流れを示している。
【0066】
又、チャージ圧が下がった場合には、コイルスプリング97,98の付勢力により、チャージ弁90,91のケース体92は弁収納孔85,86の底部に当接される。このときには、連通油路61a,62aが弁収納孔85,86の開口88,89を介してシリンダブロック42外部と連通され、油圧閉回路C内の作動油が同外部に解放される。すなわち、油圧閉回路Cがシリンダブロック42外部に直接解放される。
【0067】
図4のチャージ弁91側においては、作動油が所定のチャージ圧より下がった際、コイルスプリング98の付勢力によりチャージ弁91のケース体92は弁収納孔86の底部に当接され、連通油路62aが弁収納孔86の開口89を介して外部と連通された状態を示している。同図において、β矢印は、第2油室62から連通油路62a、弁収納孔86、開口89を介してシリンダブロック42外部へ流れる作動油の移動軌跡を示している。
【0068】
なお、図4においては、説明の便宜上、チャージ弁90側においては連通孔92aが連通油路61aに連通した状態を示し、チャージ弁91側の連通油路62aが弁収納孔86の開口89と連通した状態を示しているが、同時にこのような状態になることはない。
【0069】
(油抜き部110)
次に、油抜き部110について説明する。
図4に示すように入力軸21において、第1油室61及び第2油室62と相対する周面には、周溝21c,21dが形成されている。図6に示すように入力軸21には油抜き部110が形成されている。油抜き部110は、入力軸21の外周面において、軸方向に延び、前記周溝21dに連結する溝部111と、同溝部111の端から入力軸21の径方向に穿設されるとともに軸孔99に連通した油通路112とを備えている。軸孔99は、図6に示すように導入油路99a及び分岐路99bに連通する小径部113、小径部113に隣接した中径部114、中径部114に隣接するとともに、入力軸21の出力端端面に開口する大径部115とを備えている。各部113〜115は同軸となるように形成されている。
【0070】
油抜き部110の油通路112の内端は絞り部112aを介して軸孔99の中径部114に連通されている。軸孔収納部材116は中径部114と大径部115内に摺動自在に収納されている。軸孔収納部材116はスプール弁状に形成されている。軸孔収納部材116は中径部114に摺動自在に嵌合された第1ランド117と、大径部115に摺動自在に嵌合された第2ランド118と、第1ランド117と第2ランド118とを連結するとともに両ランドよりも小径の連結部119を備えている。
【0071】
第1ランド117の軸長は中径部114の軸方向長さよりも短くされている。そして、第1ランド117が小径部113と中径部114間の係止段部114aに係止した際には、第1ランド117は油通路112の絞り部112a側開口端部を開放可能に位置している(図6参照)。連結部119と第1ランド117には、軸方向に延出された孔120が形成され、その一端は連結部119の周面に開口され、他端は第1ランド117の小径部113側端面に開口されている。
【0072】
この結果、第1ランド117が小径部113と中径部114間の係止段部114aに係止した際には、第2油室62の作動油は、周溝21d、油抜き部110(溝部111、油通路112、絞り部112a)を介して軸孔99の中径部114に流れる。そして、中径部114に流れた作動油は、孔120を介して軸孔99の小径部113へ流れるようにされている。なお、絞り部112aがあるために、小径部113へ流れ出す作動油の量は制限されて少量とされている。
【0073】
又、第1ランド117が入力軸21の出力端側へ移動した際、油通路112の絞り部112a側の開口部を閉塞する。又、第2ランド118は反連結部側(すなわち、入力軸21の出力端側)に行くほど徐々に小径となるテーパ面を備えた略円錐台形のテーパ部118aと、テーパ部118aの先端に設けられ、大径部115と摺接自在に形成されたバネ係止部118bとを備えている。
【0074】
軸孔99の大径部115において、入力軸21の出力端側の開口部には栓体121が螺入量を調節自在に螺合されている。又、栓体121の軸心に沿って、軸孔収納部材116のストッパ部材122が螺入量を調節自在に螺合されている。軸孔収納部材116のストッパ部材122の内端は大径部115内をその軸心方向に沿って延出されている。栓体121と第2ランド118のバネ係止部118bとの間にはコイルスプリング124が介装されている。コイルスプリング124の付勢力により、軸孔収納部材116を通常のチャージ圧時には係止段部114aに係止させている。又、栓体121の螺入量を調節することにより、コイルスプリング124の付勢力の調整が可能とされている。
【0075】
又、コイルスプリング124の付勢力よりも大きなチャージ圧を得るために、図示しないチャージポンプを駆動して軸孔99内の作動油を加圧すると、軸孔収納部材116は、コイルスプリング124の付勢力に抗して入力軸21の出力端側に移動可能に、その受圧面積が設定されている。この移動により、軸孔収納部材116は、油通路112の絞り部112a側開口端部を閉塞可能とされている。そして、軸孔収納部材116のストッパ部材122によって、軸孔収納部材116は、出力端側に移動する際の最大移動量が制限されている。
【0076】
(作用)
さて、上記のように構成された無段変速装置20の作用を説明する。
なお、以下、本参考例をはじめ、下記の実施形態においても、説明の便宜上、エンジン22のクランク軸から入力軸21に付与される入力回転数Ninは一定のものとして説明する。
【0077】
又、本参考例では、軸孔収納部材116がコイルスプリング124の付勢力により、軸孔収納部材116が常に係止段部114aに係止されているため、油抜き部110、孔120を介して、少量の作動油が第2油室62(すなわち、油圧閉回路C)から軸孔99の小径部113へ流れ出すことが許容されている。
【0078】
(出力回転数Nout がNinの場合)
図示しないシフトレバーを操作して、クレイドル45を介して斜板面44を直立位置に位置させる。
【0079】
この状態においては、エンジン22の駆動力により入力軸21を介してシリンダブロック42がNinで回転する。以後、Ninと同一向きの回転を正方向の回転という。斜板面44は入力軸21の軸心Oに対して直立位置の中立状態にある。第1油圧装置100のプランジャ43は斜板面44によっては往復動されず、従って、この状態では油圧閉回路C内を作動油が循環しない。このため、第2油圧装置200側においては各プランジャ58の突出端がストローク運動ができない状態でシュー60を介して回転斜面51に当接係合するため、シリンダブロック42と回転斜面51とは直結状態となり、一体回転する。すなわち、この状態は、入力軸21と出力ギヤ24とが直結状態となる。この回転斜面51に付与された正方向への回転は、ヨーク23、出力ギヤ24、入力ギヤ25を介して終減速装置へ伝達される。
【0080】
図9は、このときの状態の模式図である。図9〜図11において、Nin、Noutに付された矢印は該当する部材の回転方向を示している。
前記斜板面44が直立位置に位置している場合には、図12に示すように第1油圧装置100の行程容積VPは0となり、出力回転数Nout(出力ギヤ24の回転数)は入力回転数Ninとなる。
【0081】
(出力回転数Nout がNinと2Ninの間の場合)
図示しないシフトレバーを操作して、クレイドル45を介して斜板面44を図3で示すように負側に傾動して所定の負の傾動角度位置と直立位置との間の領域に位置させる。この所定の負の傾動角度位置とは、第1油圧装置100の行程容積VPの絶対値が第2油圧装置200の行程容積VMの絶対値(=VMmax)と等しくなるまでの位置である。
【0082】
この場合、エンジン22の駆動力により入力軸21を介してシリンダブロック42がNinで回転する。すると、第1油圧装置100は、シリンダブロック42の軸心O周りの回転角0°〜180°の範囲で、作動油がポートUを介してプランジャ孔47へ吸入し、180°〜360°(0°)の範囲で、作動油をポートUを介してプランジャ孔47から吐出する。吐出する油室及び吸入する油室は、シリンダブロック42の軸心O周りの回転角に対応した領域H,Iによって決まる。
【0083】
なお、第1油圧装置100が吐出、吸入する作動油量は、斜板面44の負側への傾動角が大きくなるにつれて、増加する。この時、第2油圧装置200は、ヨーク23(出力回転部)のシリンダブロック42に対する軸心O周りの相対回転角0°〜180°の範囲で、作動油をポートWを介してプランジャ孔57へ吸入し、180°〜360°(0°)の範囲で、作動油をポートWを介してプランジャ孔57から吐出する。吐出する油室及び吸入する油室は、ヨーク23(出力回転部)のシリンダブロック42に対する軸心O周りの相対回転角に対応した領域J,Kによって決まる。 この結果、シリンダブロック42が入力軸21を介して駆動される回転数Ninと、プランジャ58の回転斜面51への突出押圧作用による正方向の回転数との合成(和)により、回転斜面51は回転される。この回転斜面51に付与される正方向の回転は、ヨーク23、出力ギヤ24、入力ギヤ25を介して終減速装置へ正方向の回転として伝達され、増速作用を行う。
【0084】
このとき、斜板面44が直立位置から所定の負の傾動角度位置側へと変位すると、図12において第1油圧装置100の行程容積VPは0からVMmax へと増加し、それに応じて出力回転数Nout はNinから2Ninへと増速する。
【0085】
なお、出力回転数Nout がNinから2Ninに変化するときの第2油圧装置200の行程容積VMはVMmaxのままである。又、本参考例ではVPmax =1.7VMmaxとしている。
【0086】
この状態の作動油の流れ及び回転の様子は、図9に示している。
この状態では前記と同様に油抜き部110等を介して、少量の作動油が第2油室62(すなわち、油圧閉回路C)から軸孔99の小径部113へ流れ出して若干のロスが生ずる。しかし、作動油の流れ出す量は少量であり、かつ、第2油室62(油室B)側は、第1油室61(油室A)側より低圧であり、ヨーク23を増速のために押圧するプランジャ58の作動効率を低下させないため、問題はない。
【0087】
(出力回転数Nout が2Ninを越える場合)
前述したときよりも、さらに前進高速にしたい場合、クレイドル45を介して斜板面44を負の最大傾動角度位置側に位置させる。
【0088】
このとき、第1油圧装置100の行程容積VPは、第2油圧装置200の行程容積VM(=VMmax)よりも大きくなる範囲(VMmax<VP≦1.7VMmax)に入る。
【0089】
この結果、第1油圧装置100の行程容積VPに対して第2油圧装置200の行程容積VMが相対的に小さくなるので、第2油圧装置200では、これを補うため第2油圧装置200のプランジャ58の往復速度が早くなる。このため、プランジャ58の回転斜面51への突出押圧作用によって正方向の回転数が増大し、その増大した回転数と、シリンダブロック42の正方向の回転数との和により、ヨーク23、出力ギヤ24が正方向への出力回転数が2Ninのときよりも増速回転される。
【0090】
又、回転斜面51に付与された回転トルクは、ヨーク23、出力ギヤ24、入力ギヤ25を介して終減速装置へ伝達される。
又、斜板面44を負の最大傾動角度に位置させた場合、図12において第1油圧装置100の行程容積VPはVP max=1.7VMmaxであり、一方、第2油圧装置200の行程容積はVMmaxで一定である。その結果、VPmax =1.7VM maxであるため、それに応じて出力回転数Nout は2Ninから2.7Ninへと増速する。
【0091】
この状態の作動油の流れ及び回転の様子は、図9に示している。
又、この状態では前記と同様に油抜き部110等を介して、少量の作動油が第2油室62(すなわち、油圧閉回路C)から軸孔99の小径部113へ流れ出して若干のロスが生ずる。しかし、作動油の流れ出す量は少量であり、かつ、第2油室62(油室B)側は、第1油室61(油室A)側より低圧であり、ヨーク23を増速のために押圧するプランジャ58の作動効率を低下させないため、問題はない。
【0092】
(出力回転数Nout が0とNinの間の場合)
図示しないシフトレバーを操作して、クレイドル45を介して斜板面44を正側に傾動して直立位置から正の傾動角度位置の領域に位置させる。なお、正の傾動角度位置のうち、所定の正の傾動角度位置とは、第1油圧装置100の行程容積VPの絶対値が第2油圧装置200の行程容積VMの絶対値と等しくなるまでの位置である。
【0093】
この場合、斜板面44が正方向へ傾動するため、エンジン22の駆動力により入力軸21を介してシリンダブロック42が回転すると、第1油圧装置100は、シリンダブロック42の軸心O周りの回転角0°〜180°の範囲で、作動油をポートUを介してプランジャ孔47から吐出し、180°〜360°(0°)の範囲で作動油をポートUを介してプランジャ孔47へ吸入する。吐出する油室及び吸入する油室は、シリンダブロック42の軸心O周りの回転角に対応した領域H,Iによって決まる。
【0094】
なお、第1油圧装置100が吐出、吸入する作動油量は、斜板面44の正側への傾動角が大きくなるにつれて増加する。この時、第2油圧装置200は、ヨーク23(出力回転部)のシリンダブロック42に対する軸心O周りの相対回転角0°〜180°の範囲で、作動油をポートWを介してプランジャ孔57から吐出し、180°〜360°(0°)の範囲で、作動油をポートWを介してプランジャ孔57へ吸入する。吐出する油室及び吸入する油室は、ヨーク23(出力回転部)のシリンダブロック42に対する軸心O周りの相対回転角に対応した領域J,Kによって決まる。
【0095】
この結果、プランジャ58の回転斜面51への突出押圧作用により、前記「出力回転数Nout がNinと2Ninの間及び2Ninを越える場合」とは逆方向の回転を与える。従って、前記逆方向の回転数と、シリンダブロック42の正方向の回転数との合成(和)により、ヨーク23、出力ギヤ24が回転される。このときの回転数の和は、逆方向の回転数分減少した正方向の回転数となるため、出力回転数Nout は「出力回転数Nout がNinの場合」に比較して小さくなる。
【0096】
参考例では、このとき、斜板面44が直立位置から正の最大傾動角度位置側へと変位すると、図12において第1油圧装置100の行程容積VPは0から−VMmax (前記「−」はポートUから第2油室62に吐出される場合を意味している。以下、同じ)側へと増加し、それに応じて出力回転数Nout はNinから0 へと減速する。
【0097】
なお、このときの出力回転数Nout がNinから0に変化するときの第2油圧装置200の1回転当たりの行程容積VMは−VM maxである。(前記「−」は第2油室62からポートWへ吸入される場合を意味している。)
この状態では前記と同様に油抜き部110等を介して、少量の作動油が第2油室62(すなわち、油圧閉回路C)から軸孔99の小径部113へ流れ出して若干のロスが生ずる。しかし、作動油の流れ出す量は少量であり、かつ、第2油室62(油室B)側は、第1油室61(油室A)側より低圧であり、ヨーク23を減速のために押圧するプランジャ58の作動効率を低下させないため、問題はない。
【0098】
図10は、このときの状態の模式図である。第1油室61(油室A)側は、第2油室62(油室B)側よりも高圧側となっており、油圧閉回路Cでは、図に示す矢印で示すような作動油の流れとなっている。
【0099】
(出力回転数Nout が0の場合)
次に、図示しないシフトレバーを操作し、クレイドル45を介して斜板面44を前記所定の正の傾動角度位置のうち、第1油圧装置100の行程容積VPの絶対値が第2油圧装置200の行程容積VMの絶対値と等しくなる位置に位置させる。
【0100】
この場合、本参考例では第1油圧装置100の行程容積VPは−VMmaxとなる。この結果、前記逆方向の回転数と、シリンダブロック42が入力軸21を介して駆動される回転数Ninとが釣り合い、すなわち、回転数の和は0(出力回転数Nout は0) となり、出力ギヤ24は停止する。
【0101】
この状態で、さらにクレイドル45を介して斜板面44を前記所定の正の傾動角度位置からさらに正側に傾動させると、第1油圧装置100の行程容積VPの絶対値は、第2油圧装置200の行程容積VM(=VMmax)の絶対値よりも大きくなる範囲に入る。
【0102】
このため、第1油圧装置100の行程容積VPの絶対値に対して第2油圧装置200の行程容積VMの絶対値が相対的に小さくなるので、本来ならば第2油圧装置200では、これを補うため第2油圧装置200のプランジャ58の往復速度が早くなるはずである。
【0103】
しかし、この時第2油室62は、第1油室61側に比して高圧側となり、第2油室62(すなわち、油圧閉回路C)から作動油が油抜き部110等を介して軸孔99の小径部113へ高圧の作動油が流れ出す。シリンダブロック42が1回転する際の油圧閉回路Cから流れ出す最大ロス量をLとしたとき、
第1油圧装置100の行程容積VPの絶対値と第2油圧装置200の行程容積VMの絶対値との差(|VP|−|VM|)が、
|VP|−|VM|≦L
を満足している間は、結果として、|VP|と|VM|+ロス量が釣り合うため、第2油圧装置200では、引き続き、前記逆方向の回転数と、シリンダブロック42が入力軸21を介して駆動される回転数Ninとが釣り合い、すなわち、回転数の和は0(出力回転数Nout は0) となり、出力ギヤ24は停止した状態(中立)を保持する。
【0104】
図12において、Δ1は|VP|−|VM|が、0からLとなるまでの間の両装置の行程容積差を示している。
(出力回転数Nout が0未満の場合)
さらにクレイドル45を介して斜板面44を前記所定の正の傾動角度位置から正側に傾動させ、第1油圧装置100の行程容積VPの絶対値と第2油圧装置200の行程容積VMの絶対値との差(|VP|−|VM|)が、
|VP|−|VM|>L となるようにする。すると、第1油圧装置100の行程容積VPの絶対値に対して第2油圧装置200の行程容積VMの絶対値とロス量の和がさらに相対的に小さくなるので、第2油圧装置200では、これを補うため第2油圧装置200のプランジャ58の往復速度が早くなる。
【0105】
なお、本参考例では、軸孔収納部材116は軸心Oに沿った方向には移動せず、油通路112の絞り部112a側開口端部を閉塞しないものとする。
このため、プランジャ58の回転斜面51への突出押圧作用によって逆方向の回転数が増大し、その増大した逆方向の回転数と、シリンダブロック42の正方向の回転数との合成(和)により、ヨーク23、出力ギヤ24が入力回転とは逆回転される。
【0106】
又、逆方向の回転トルクは、ヨーク23、出力ギヤ24、入力ギヤ25を介して終減速装置へ伝達される。
又、斜板面44を正の最大傾動角度位置側に位置させた場合、図12において第1油圧装置100の行程容積VPは−VPmax=−1.7VMmaxであり、一方、第2油圧装置200の行程容積は−VMmaxで一定である。しかし、上記のように、本参考例では、軸孔収納部材116は軸心Oに沿った方向には移動せず、油通路112の絞り部112a側開口端部を閉塞しないものとしている。
【0107】
このため、油抜き部110からの作動油のロス量分の回転量は減少したものとなるが、−VPmax =−1.7VM maxであるため、それに応じて出力回転数Nout は0から減速する。又、それに応じて出力回転数Nout は0 から後進方向に増速する。
【0108】
図12においては、「シール無」と付された実線上において、Noutが変化する。
又、図11は、このときの状態の模式図である。第2油室62(油室B)側は、第1油室61(油室A)側よりも高圧側となっており、油圧閉回路Cでは、図に示す矢印で示すような作動油の流れとなっている。
【0109】
参考例によれば以下のような効果を得ることができる。
(1) 参考例の無段変速装置20(油圧式無段変速装置)は、第1油圧装置100として、プランジャ43を備え、軸心Oの周りで回動不能としたクレイドル45の斜板面44(当接部)によって同プランジャ43の突出入を行うようにした。又、第2油圧装置200として、プランジャ58を備え、同プランジャ58の突出入によって入力回転に対して相対又は同期回転のいずれかを行うヨーク23(出力回転部)を設けた。そして、第1油圧装置100と第2油圧装置200双方のプランジャ43,58を収納するシリンダブロック42を共有し、シリンダブロック42を入力回転と同期回転する構成とした。
【0110】
さらに、第1油圧装置100の行程容積VPが第2油圧装置200の行程容積VMを上回る範囲を有する構成とし、第1油圧装置100と第2油圧装置200とを連通する油路(油圧閉回路C)のうち、ヨーク23が入力回転と正回転するときの低圧油路側となる第2油室62に油抜き部110を設けた。
【0111】
この結果、第1油圧装置100の行程容積VPが、第2油圧装置200の行程容積VMmaxと等しくなるときから、油抜き部110の油逃し量(油圧閉回路Cから流れ出すロス量)にて対応できる範囲では、出力回転数Noutは0となって、中立を実現できる。従って、油逃し量の分だけ、中立を行える範囲に幅を持たせることができる。
【0112】
(第実施形態)
次に本発明を作業機として作業用車両の送稿用に使用される油圧式無断変速装置を具体化した実施形態を図1乃至図12を参照して説明する。
本実施形態では、前記参考例の構成と同一であるが、軸孔収納部材116の作用が一部異なっている。従って、前記参考例の構成に使用した構成については同一符号を付して説明する。
【0113】
(作用)
実施形態の作用は、前記参考例の作用の説明中、(出力回転数Nout がNinの場合)、(出力回転数Nout がNinと2Ninの間の場合)、(出力回転数Nout が2Ninを越える場合)、(出力回転数Nout が0とNinの間の場合)及び(出力回転数Nout が0の場合)は同じであるため、説明を省略する。
【0114】
以下には、(出力回転数Nout が0未満の場合)を説明する。
(出力回転数Nout が0未満の場合)
なお、説明の便宜上、第1油圧装置100の行程容積VPの絶対値と第2油圧装置200の行程容積VMの絶対値との差(|VP|−|VM|)が、
|VP|−|VM|≦L
を満足しており、第2油圧装置200では、引き続き、前記逆方向の回転数と、シリンダブロック42が入力軸21を介して駆動される回転数Ninとが釣り合っている状態から説明をする。
【0115】
すなわち、回転数の和は0(出力回転数Nout は0)となり、出力ギヤ24は停止した状態(中立)を保持している状態とする。
この状態においては、|VP|−|VM|=Lのときには、第1油圧装置100の行程容積VPは、図12のa点の位置に位置している。
【0116】
この状態で、コイルスプリング124の付勢力よりも大きなチャージ圧を得るために、図示しないチャージポンプを駆動して軸孔99内の作動油を加圧する。
すると、軸孔収納部材116がコイルスプリング124の付勢力に抗して入力軸21の出力端側に移動し、油通路112の絞り部112a側開口端部を閉塞する。
【0117】
この結果、第2油室62(すなわち、油圧閉回路C)から作動油が油抜き部110等を介して軸孔99の小径部113へ流出するのが停止する。このため、今まで、ロスしていた作動油の分まで、第2油圧装置200のプランジャ58を押圧する作動油量が増加する。
【0118】
従って、第1油圧装置100の行程容積VPの絶対値に対して第2油圧装置200の行程容積VMの絶対値がさらに相対的に小さくなるので、第2油圧装置200では、これを補うため第2油圧装置200のプランジャ58の往復速度が早くなる。
【0119】
このため、プランジャ58の回転斜面51への突出押圧作用によって逆方向の回転数が増大し、その増大した逆方向の回転数と、シリンダブロック42の正方向の回転数との合成(和)により、ヨーク23、出力ギヤ24が逆方向へ回転される。
【0120】
又、逆方向の回転トルクは、ヨーク23、出力ギヤ24、入力ギヤ25を介して終減速装置へ伝達される。
このとき、図12においては、出力回転数Noutはa点からb点に移動する。
【0121】
この後、クレイドル45を介して斜板面44を、正の最大傾動角度位置側に位置させた場合、図12において第1油圧装置100の行程容積VPは−VPmax =−1.7VM maxであるため、それに応じて出力回転数Nout は移動したb点から逆向きの回転が加速する。
【0122】
図12においては、「シール有」と付された実線上において、Noutが変化する。
実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
【0123】
(1) 第実施形態においては、ヨーク23(出力回転部)が入力回転とは逆回転するときに、油抜き部110の絞り部112a側開口端部を閉塞する軸孔収納部材116(シールする機構)を設けた。
【0124】
この結果、ヨーク23(出力回転部)が入力回転と逆回転する際には、作動油が油抜き部110を介して漏れなくなる、すなわち、油圧閉回路Cから作動油が漏れなくなるため、ヨーク23が入力回転と逆転するときの効率が改善する。
【0125】
(第実施形態)
次に、第実施形態を図13〜図20を参照して説明する。なお、参考例の構成と、同一構成については、参考例の図面も参照されたい。
【0126】
実施形態の構成は、参考例の構成中、第2油圧装置200が固定容量形の差動油圧装置として構成した代わりに行程容積可変形の差動油圧装置としたことが異なっている。
【0127】
以下、この異なる構成を中心にして説明するが、参考例と同一構成又は相当する構成については同一符号を付す。
第2油圧装置200において、参考例では、支持部材81はヨーク23に対して固定されたピン82に対して軸方向に固定されていた。それに対して、本実施形態では、支持部材81は、ピン82に対して軸心Oに沿って摺動自在に嵌合されている。さらに、支持部材81に対して玉軸受80を介して連結されていたホルダ79は、入力軸21の外周に対して軸心Oに沿って摺動自在に、かつ、ピン128によって入力軸21と一体回転するように嵌合されている。又、入力軸21外周面において、ホルダ79が位置する部位よりも出力端側には、係止リング125が固定されており、ホルダ79が出力端側への移動時に、係止リング125により、係止可能にされている。
【0128】
このため、リテーナ83は、軸心Oに対して斜交するようにして支持部材81、玉軸受80,84、ホルダ79とともに一体に軸心Oに沿って移動可能とされている。
【0129】
係止部46とホルダ79との間には、入力軸21の外周面に巻装された付勢手段としてのコイルスプリング126が配置され、コイルスプリング126の付勢力により、ホルダ79は入力軸21の出力端側に常時付勢されている。
【0130】
入力軸21において、係止リング125に係止したホルダ79に対応した位置には、ピン孔127が径方向に延びるように形成され、軸孔99の大径部115と連通されている。ピン孔127内には、作動ピン128が入力軸21の径方向に摺動自在に配置されている。ホルダ79の内周面において、ピン孔127に対応した部位には、テーパ溝129がホルダ79の長さ方向に亘って設けられている。テーパ溝129の底面は係止リング125側(すなわち、入力軸21の出力端側)に接近するほどホルダ79の軸心(入力軸21の軸心Oと一致する)から離間するようにホルダ79の軸心に対して斜めに形成されている。すなわち、テーパ溝129は、軸孔収納部材116のテーパ部118aとは逆方向に斜状とされるとともに、その底面の勾配が、テーパ部118aの勾配よりも急になるようにされている。なお、ここでいう勾配が急とは、そのテーパ部分を軸心O方向に沿って移動した際に、軸心Oから離間する程度が大きいことをいう。
【0131】
前記作動ピン128は、その内端が軸孔収納部材116のテーパ部118aに当接されるとともに、外端がホルダ79のテーパ溝129の底面に当接されている。ホルダ79が係止リング125に当接している状態では、作動ピン128はテーパ溝129の底面の近位端側に当接されている。そして、作動ピン128が入力軸21の軸心Oを中心とした放射方向に移動した際には、テーパ溝129の底面を介してホルダ79をコイルスプリング126の付勢力に抗して入力軸21の入力端側に移動させ、テーパ溝129の底面の遠位端側に当接可能とされている。テーパ溝129の近位端側から遠位端側までの作動ピン128の押圧位置の移動により、リテーナ83のフランジ72に係合された第2切替弁76の変位端が入力軸21の入力端側に変位するようにされている。
【0132】
この第2切替弁76の変位端の変位により、すなわち、図15,20で示すようにヨーク23(出力回転部)がシリンダブロック42に対して1回転する間の領域J,Kの割合が変化することにより、図19において第2油圧装置200の最大行程容積の絶対値はVM maxから0.6VM maxへと変化するように、ポートWの開閉タイミングが変えられるように設定されている。
【0133】
なお、第実施形態では、図15に示すように、ヨーク23(出力回転部)のシリンダブロック42との相対回転に伴って、リテーナ83のフランジ72により、第2油圧装置200には領域J、領域Kが付与されている。
【0134】
実施形態において、領域JとはポートWと第1油室61が連通する区間を全て含む領域のことであり、領域KとはポートWと第2油室62が連通する区間を全て含む領域のことである。
【0135】
なお、以下、作動ピン128がテーパ溝129の底面の近位端側に当接した際の第2切替弁76の変位位置を第1変位位置R1といい、遠位端側に当接した際の第2切替弁76の変位位置を第2変位位置R2という(図15参照)。従って、第2切替弁76は、これらの図15の第1変位位置R1又は第2変位位置R2で示す線上に沿って作動する。
【0136】
又、本実施形態では、第1油圧装置100の最大行程容積VPmaxは、第2油圧装置200の最大行程容積VMmaxと略同一になるように形成されている。ただし、厳密にいうと、若干VPmaxの方が大きく、差Δ2を有している。具体的には、本実施形態では、第1油圧装置100のプランジャ孔47の内径が、第2油圧装置200のプランジャ孔57の内径と略同一径にし、かつ、プランジャ43、58の径が略同一となるようにされており、かつ、プランジャ43,58のストローク量が最大行程容積において、差を有するように、斜板面44の最大傾動角が回転斜面51の傾斜角よりも若干大きくなるように設定されている。
【0137】
他の構成は、参考例と同様に構成されているため、その説明を省略する。
(作用)
上記のように構成された無段変速装置20の作用を説明する。
【0138】
なお、説明の便宜上、エンジン22のクランク軸から入力軸21に付与される入力回転数Ninは一定のものとして説明する。
(出力回転数Nout がNinの場合)
図示しないシフトレバーを操作して、クレイドル45を介して斜板面44を直立位置に位置させる。
【0139】
この状態においては、参考例と同じ理由から、シリンダブロック42と回転斜面51とは直結状態となり、一体回転する。すなわち、この状態は、入力軸21と出力ギヤ24とが直結状態となる。この回転斜面51に付与された正方向への回転は、ヨーク23、出力ギヤ24、入力ギヤ25を介して終減速装置へ伝達される。
【0140】
前記斜板面44が直立位置に位置している場合には、図19に示すように第1油圧装置100の行程容積VPは0となり、出力回転数Nout(出力ギヤ24の回転数)は入力回転数Ninとなる。
【0141】
(出力回転数Nout がNinと2Ninの間の場合)
図示しないシフトレバーを操作して、クレイドル45を介して斜板面44を参考例と同様に負側に傾動して所定の負の傾動角度位置と直立位置との間の領域に位置させる。この所定の負の傾動角度位置とは、第1油圧装置100の行程容積VPの絶対値が第2油圧装置200の行程容積VMの絶対値(=VMmax)と等しくなるまでの位置である。
【0142】
この場合においても、参考例と同じ理由により、シリンダブロック42が入力軸21を介して駆動される回転数Ninと、プランジャ58の回転斜面51への突出押圧作用による正方向の回転数との合成(和)により、回転斜面51は回転される。この回転斜面51に付与される正方向の回転は、ヨーク23、出力ギヤ24、入力ギヤ25を介して終減速装置へ正方向の回転として伝達され、増速作用を行う。
【0143】
このとき、斜板面44が直立位置から所定の負の傾動角度位置側へと変位すると、図19において第1油圧装置100の行程容積VPは0からVMmax へと増加し、それに応じて出力回転数Nout はNinから2Ninへと増速する。
【0144】
なお、出力回転数Nout がNinから2Ninに変化するときの第2油圧装置200の行程容積VMはVMmaxのままである。又、本実施形態ではVPmax≒VMmaxとしている。又、この状態の作動油の流れ及び回転の様子は、図16に示している。
【0145】
この状態では前記と同様に油抜き部110等を介して、少量の作動油が第2油室62(すなわち、油圧閉回路C)から軸孔99の小径部113へ流れ出して若干のロスが生ずる。しかし、作動油の流れ出す量は少量であり、かつ、第2油室62(油室B)側は、第1油室61(油室A)側より低圧であり、ヨーク23を増速のために押圧するプランジャ58の作動効率を低下させないため、問題はない。
【0146】
(出力回転数Nout が2Ninを越える場合)
この状態で、コイルスプリング124の付勢力よりも大きなチャージ圧を得るために、図示しないチャージポンプを駆動して軸孔99内の作動油を加圧する。
【0147】
すると、軸孔収納部材116がコイルスプリング124の付勢力に抗して入力軸21の出力端側に移動し、油通路112の絞り部112a側開口端部を閉塞する。
【0148】
又、軸孔収納部材116の入力軸21の出力端側への移動により、作動ピン128がテーパ部118aにて押圧されて、入力軸21の軸心Oから放射方向に移動する。作動ピン128は、ホルダ79のテーパ溝129の底面の近位端側を押圧点の開始位置として、この押圧点を徐々に遠位端側に向けて変位しながら、斜状のテーパ溝129を押し続ける。このため、ホルダ79は作動ピン128の押圧により、コイルスプリング126の付勢力に抗して入力軸21の入力端側に移動する。この結果、作動ピン128がテーパ溝129の底面の遠位端側に当接すると、第2切替弁76の変位端は、第1変位位置R1から第2変位位置R2までのいずれかの位置に移動する。
【0149】
すると、ポートWと第2油室62に連通する区間が狭くなり、ポートWと第1油室61に連通される区間が広くなる。すなわち、2Ninを越えると領域Jは、図20に示すように広くなり、領域Kは狭くなる。
【0150】
この結果、第1油圧装置100の行程容積のVP max に対して第2油圧装置200の行程容積が相対的に小さくなるので、第2油圧装置200では、これを補うため第2油圧装置200のプランジャ58の往復速度が早くなる。このため、プランジャ58の回転斜面51への突出押圧作用によって正方向の回転数が増大し、その増大した正方向の回転数と、シリンダブロック42の正方向の回転数との和により、ヨーク23、出力ギヤ24が正方向への出力回転数が2Ninのときよりも増速回転される。
【0151】
又、正方向の回転トルクは、ヨーク23、出力ギヤ24、入力ギヤ25を介して終減速装置へ伝達される。
又、斜板面44を負の最大傾動角度位置側に位置させた場合、図19において第1油圧装置100の最大行程容積VPmaxは、第2油圧装置200の最大行程容積VMmaxとは、略等しくしている(VPmax≒VMmax)が、厳密にいうと、若干VPmaxの方が大きく、差Δ2を有している。なお、図19では、Δ2の部分は、説明の便宜上、拡大して図示している。
【0152】
又、一方、第2油圧装置200の行程容積は第2切替弁76が第2変位位置R2のときには0.6VMmaxとしている。その結果、それに応じて出力回転数Nout は2Ninから略2.7Ninへと増速する。
【0153】
この状態の作動油の流れ及び回転の様子は、図16に示している
なお、本実施形態では、この状態では油抜き部110は、閉塞されている。
(出力回転数Nout が0とNinの間の場合)
この状態においては、軸孔収納部材116がコイルスプリング124の付勢力により、軸孔収納部材116を常に係止段部114aに係止されているため、油抜き部110、孔120を介して、少量の作動油が第2油室62(すなわち、油圧閉回路C)から軸孔99の小径部113へ流れ出すことが許容されている。すなわち、第2切替弁76の変位端は、第1変位位置R1に位置する。
【0154】
図示しないシフトレバーを操作して、クレイドル45を介して斜板面44を正側に傾動して直立位置から正の傾動角度位置の領域に位置させる。なお、正の傾動角度位置のうち、所定の正の傾動角度位置とは、第1油圧装置100の行程容積VPの絶対値が第2油圧装置200の行程容積VMの絶対値と等しくなるまでの位置である。
【0155】
この場合、参考例と同じ理由により、プランジャ58の回転斜面51への突出押圧作用により、前記「出力回転数Nout がNi nと2Ninの間及び2Ninを越える場合」とは逆方向の回転を与える。従って、前記逆方向の回転数と、シリンダブロック42の正方向の回転数との合成(和)により、ヨーク23、出力ギヤ24が回転される。このときの回転数の和は、逆方向の回転数分減少した正方向の回転数となるため、出力回転数Nout は「出力回転数Nout がNinの場合」に比較して小さくなる。
【0156】
本実施形態では、このとき、斜板面44が直立位置から正の最大傾動角度位置側へと変位すると、図19において第1油圧装置100の行程容積VPは0から−VMmax 側へと増加し、それに応じて出力回転数Nout はNinから0 へと減速する。
【0157】
なお、このときの出力回転数Nout がNinから0に変化するときの第2油圧装置200の1回転当たりの行程容積VMは−VM maxである。
この状態では前記と同様に油抜き部110等を介して、少量の作動油が第2油室62(すなわち、油圧閉回路C)から軸孔99の小径部113へ流れ出して若干のロスが生ずる。しかし、作動油の流れ出す量は少量であり、かつ、第2油室62(油室B)側は、第1油室61(油室A)側より低圧であり、ヨーク23を増速のために押圧するプランジャ58の作動効率を低下させないため、問題はない。
【0158】
図17は、このときの状態の模式図である。第1油室61(油室A)側は、第2油室62(油室B)側よりも高圧側となっており、油圧閉回路Cでは、図に示す矢印で示すような作動油の流れとなっている。
【0159】
(出力回転数Nout が0の場合)
次に、図示しないシフトレバーを操作し、クレイドル45を介して斜板面44を前記所定の正の傾動角度位置のうち、第1油圧装置100の行程容積VPの絶対値が第2油圧装置200の行程容積VMの絶対値と等しくなる位置に位置させる。
【0160】
この場合、本実施形態では第1油圧装置100の行程容積VPは−VMmaxとなる。この結果、−VP≒−VM maxであるので前記逆方向の回転数と、シリンダブロック42が入力軸21を介して駆動される回転数Ninとが釣り合い、すなわち、回転数の和は0(出力回転数Nout は0)となり、出力ギヤ24は停止する。
【0161】
この状態で、さらにクレイドル45を介して斜板面44を前記所定の正の傾動角度位置からさらに正側に傾動させると、第1油圧装置100の行程容積VPの絶対値は、第2油圧装置200の行程容積VM(=VMma x)の絶対値よりも大きくなる範囲に入る。
【0162】
このため、第1油圧装置100の行程容積VPの絶対値に対して第2油圧装置200の行程容積VMの絶対値が相対的に小さくなるので、本来ならば第2油圧装置200では、これを補うため第2油圧装置200のプランジャ58の往復速度が早くなるはずである。
【0163】
しかし、この時第2油室62は、第1油室61側に比して高圧側となり、第2油室62(すなわち、油圧閉回路C)から作動油が油抜き部110等を介して軸孔99の小径部113へ高圧の作動油が流れ出す。シリンダブロック42が1回転する際の油圧閉回路Cから流れ出す最大ロス量をLとしたとき、
第1油圧装置100の行程容積VPの絶対値と第2油圧装置200の行程容積VMの絶対値との差(|VP|−|VM|)が、
|VP|−|VM|≦L(=Δ2)
を満足している間は、|VP|と|VM|+ロス量が釣り合うため、第2油圧装置200では、引き続き、前記逆方向の回転数と、シリンダブロック42が入力軸21を介して駆動される回転数Ninとが釣り合い、すなわち、回転数の和は0(出力回転数Nout は0) となり、出力ギヤ24は停止した状態(中立)を保持する。
【0164】
図19において、Δ2は|VP|−|VM|が、0からLとなるまでの間の両装置の行程容積差を示している。
(出力回転数Nout が0未満の場合)
さらに、この状態で、コイルスプリング124の付勢力よりも大きなチャージ圧を得るために、図示しないチャージポンプを駆動して軸孔99内の作動油を加圧する。すると、軸孔収納部材116がコイルスプリング124の付勢力に抗して入力軸21の出力端側に移動し、油通路112の絞り部112a側開口端部を閉塞する。
【0165】
又、軸孔収納部材116の入力軸21の出力端側への移動により、作動ピン128がテーパ部118aにて押圧されて、入力軸21の軸心Oから放射方向に移動する。作動ピン128は、ホルダ79のテーパ溝129の底面の近位端側を押圧点の開始位置として、この押圧点を徐々に遠位端側に向けて変位しながら、斜状のテーパ溝129を押し続ける。このため、ホルダ79は作動ピン128の押圧により、コイルスプリング126の付勢力に抗して入力軸21の入力端側に移動する。この結果、作動ピン128がテーパ溝129の底面の遠位端側に当接すると、第2切替弁76の変位端は、第1変位位置R1から第2変位位置R2までのいずれかの位置に移動する。
【0166】
すると、図20に示すようにポートWと第2油室62に連通する区間が狭くなり、ポートWと第1油室61に連通される区間が広くなる。すなわち、出力回転数Noutが0より小さくなると領域Jは、広くなり、領域Kは狭くなる。
【0167】
この結果、第1油圧装置100の行程容積のVP max に対して第2油圧装置200の行程容積が相対的に小さくなり、第2油圧装置200では、これを補うため第2油圧装置200のプランジャ58の往復速度が早くなる。このため、プランジャ58の回転斜面51への突出押圧作用によって逆方向の回転数が増大し、その増大した逆方向の回転数と、シリンダブロック42の正方向の回転数との和により、ヨーク23、出力ギヤ24が逆方向への出力回転数が0のときよりも増速回転される(図19参照)。
【0168】
又、前記軸孔収納部材116が入力軸21の出力端側に移動し、油通路112の絞り部112a側開口端部を閉塞したことにより、第2油室62(すなわち、油圧閉回路C)から作動油が油抜き部110等を介して軸孔99の小径部113へ流出するのが停止する。このため、今まで、ロスしていた作動油の分まで、第2油圧装置200のプランジャ58を押圧する作動油量が増加する。
【0169】
従って、第1油圧装置100の行程容積VPの絶対値に対して第2油圧装置200の行程容積VMの絶対値がさらに相対的に小さくなるので、第2油圧装置200では、これを補うため第2油圧装置200のプランジャ58の往復速度が早くなる。
【0170】
このため、プランジャ58の回転斜面51への突出押圧作用によって逆方向の回転数が増大し、その増大した逆方向の回転数と、シリンダブロック42の正方向の回転数との合成(和)により、ヨーク23、出力ギヤ24が逆方向へ回転される。
【0171】
又、逆方向の回転トルクは、ヨーク23、出力ギヤ24、入力ギヤ25を介して終減速装置へ伝達される。
このとき、図19においては、出力回転数Noutはc点(c点は出力回転数Noutが0であって、行程容積は−VPmaxの値の点である。)からd点に移動する。
【0172】
又、クレイドル45を介して斜板面44を正の最大傾動角度位置側に位置させた場合、図19において第1油圧装置100の最大行程容積VPmaxの絶対値は、若干の差はあるもののVPmax≒VMmaxであり、一方、第2油圧装置200の行程容積の絶対値は0.6VMmaxとなる。従って、それに応じて出力回転数Nout は0から減速するがそれに応じて出力回転数Nout は移動したd点から逆向きの回転が加速する。すなわち、図19では、移動したd点からさらに左方へ向かうように出力回転数Nout は後進方向に増速する。
【0173】
図19に示すように「シール有」と付された実線上において、Noutが変化する。
又、逆方向の回転トルクは、ヨーク23、出力ギヤ24、入力ギヤ25を介して終減速装置へ伝達される。
【0174】
又、図18は、このときの状態の模式図である。第2油室62(油室B)側は、第1油室61(油室A)側よりも高圧側となっており、油圧閉回路Cでは、図に示す矢印で示すような作動油の流れとなっている。
【0175】
本実施の形態によれば以下のような効果を得ることができる。
(1) 第実施形態の無段変速装置20(油圧式無段変速装置)は、第1油圧装置100として、プランジャ43を備え、軸心Oの周りで回動不能としたクレイドル45の斜板面44(当接部)によって同プランジャ43の突出入を行うようにした。又、第2油圧装置200として、プランジャ58を備え、同プランジャ58の突出入によって入力回転に対して相対又は同期回転のいずれかを行うヨーク23(出力回転部)を設けた。そして、第1油圧装置100と第2油圧装置200双方のプランジャ43,58を収納するシリンダブロック42を共有し、シリンダブロック42を入力回転と同期回転する構成とした。
【0176】
さらに、第1油圧装置100の最大行程容積VPmaxが第2油圧装置200の最大行程容積VMmaxを上回る範囲を有する構成とし、第1油圧装置100と第2油圧装置200とを連通する油路(油圧閉回路C)のうち、ヨーク23が入力回転と正回転するときの低圧油路側となる第2油室62に油抜き部110を設けた。
【0177】
この結果、参考例と同様に第1油圧装置100の行程容積VPが、第2油圧装置200の行程容積VMmaxと等しくなるときから、油抜き部110の油逃し量(油圧閉回路Cから流れ出すロス量L)にて対応できる範囲では、出力回転数Noutは0となって、中立を実現できる。従って、油逃し量の分だけ、中立を行える範囲に幅を持たせることができる。
【0178】
(2) 又、第実施形態によれば、第1油圧装置の最大行程容積VPmaxと第2油圧装置200の最大行程容積VMmaxの容積差を微小差とした。すなわち、斜板41の最大傾動角と回転斜面51の傾斜角との差を微小とすることでプランジャ43、58のストローク量を微小差としたので、プランジャを第1油圧装置100と第2油圧装置200との両方にそれぞれ共通のプランジャを用意できるため、部品が両装置に兼用できる。
【0179】
又、ストローク量は微小差であるため、シリンダブロック42をコンパクトにすることができる。
なお、本明細書において、微小差とは、油逃し量の分だけ、中立を行える範囲に幅を持たせることができる程度のものをいう。
【0180】
(第実施形態)
次に第実施形態を図21〜図2を参照して説明する。なお、参考例と異なる構成を中心に説明する。従って、参考例の構成に使用した構成については同一符号を付して説明する。なお、参考例の構成と、同一構成については、参考例の図面も参照されたい。
【0181】
実施形態は、参考例の構成中、各プランジャ孔57の底部には、シリンダブロック42の中央部外周面に開口する開放孔130が形成され、シリンダブロック42の中央部外周には筒状のカバー部材131が軸方向に沿って摺動自在に嵌合されていることが異なっている。
【0182】
詳説すると、シリンダブロック42の中央部外周面において、軸方向の一端には突条132が形成され、他端には係止リング133が固定されている。そして、カバー部材131と係止リング133との間において、シリンダブロック42の中央部外周にはコイルスプリング134が巻装されており、カバー部材131を突条132に係止するように付勢されている。カバー部材131が突条132に係止されている際には、開放孔130はカバー部材131により閉塞されるとともに、カバー部材131が入力軸21の出力端側に移動された際には、開放孔130は外部に開放可能にされている。
【0183】
カバー部材131の外周面には周回するフランジ135が突設されている。作動部材136は、ケース26の筒部材27に設けられた操作孔27aを介してケース26内に挿入されている。作動部材136は、先端に自身の軸心の周りに回転自在なコロ137が設けられており、コロ137を介してカバー部材131のフランジ135に当接されている。そして、図示しないアクチュエータ(例えばソレノイド)等により、コイルスプリング134の付勢力に抗しながらフランジ135を介してカバー部材131を入力軸21の出力端側に駆動するようにされている。前記アクチュエータは、シフトレバー146が後進域側へシフト操作された際に、図示しない制御装置からの制御信号により、所定時間作動して、作動部材136によりカバー部材131を入力軸21の出力端側に駆動し、所定時間経過後は、制御信号を消失してその駆動を解除するようにされている。
【0184】
カバー部材131、作動部材136、コイルスプリング134等により、油抜き機構Mが構成されている。
又、第実施形態では、第実施形態と同様に、第1油圧装置100の最大行程容積VPmaxは、第2油圧装置200の最大行程容積VMmaxと略同一になるように形成されている。ただし、厳密にいうと、若干VPmaxの方が大きく、差Δ2を有している。具体的には、本実施形態では、第1油圧装置100のプランジャ孔47の内径が、第2油圧装置200のプランジャ孔57の内径と略同一径にし、かつ、プランジャ43、58の径が略同一となるようにされており、かつ、プランジャ43のストローク量が,プランジャ58のストローク量よりも大きくなるようにして最大行程容積において、差を有するように、斜板面44の最大傾動角が回転斜面51の傾斜角よりも若干大きくなるように設定されている。
【0185】
又、本実施形態では、出力ギヤ24は省略され、代わりに出力回転部としてのヨーク23には、図24に示すように正逆回転切替装置としてのギヤシフト装置138(CST)が接続されている。ギヤシフト装置138は、第1クラッチ139、第2クラッチ140を備えている。第1クラッチ139は、ヨーク23に連結された駆動側クラッチプレートに対して従動クラッチプレートを連結すると、従動クラッチプレートに連結されたギヤ141が、ギヤ142を介して、図示しない終減速装置に駆動トルクを伝達する。又、第2クラッチ140は、ヨーク23に連結された駆動側クラッチプレートに対して従動クラッチプレートを連結すると、ギヤ143、アイドラギヤ144、145、及びアイドラギヤ145に噛合されたギヤ142を介して図示しない終減速装置に駆動トルクを伝達する。
【0186】
すなわち、シフトレバー146(図27参照)の操作に連係されており、この操作に基づいて、前進時には第1クラッチ139を接続し、後進時には、第2クラッチ140を接続する。
【0187】
なお、プランジャ孔57は、油圧閉回路Cの一部を構成している。
(作用)
次に、上記のように構成された無段変速装置20の作用を説明する。
【0188】
なお、第実施形態では、出力回転数Noutは、ギヤ142の回転数のことをいう。
(出力回転数Nout がNinの場合)
なお、油抜き機構Mを構成するカバー部材131が突条132に係止されており、開放孔130はカバー部材131により閉塞されているものとする。
【0189】
図27に示すようにシフトレバー146を操作して、クレイドル45を介して斜板面44を直立位置に位置させる。
この状態においては、参考例と同じ理由から、シリンダブロック42と回転斜面51とは直結状態となり、一体回転する。すなわち、この状態は、入力軸21と出力ギヤ142とが直結状態となる。この回転斜面51に付与された回転は、ヨーク23、連結された第1クラッチ139、ギヤ141、ギヤ142を介して終減速装置へ伝達される。又、図24に示すギヤシフト装置138(CST)又は後述する図29に示すギヤシフト装置150が接続される場合には、第1実施形態及び後述する第実施形態とは異なり、Ninと逆向きにギヤ142又は出力軸155が回転する時を、正方向の回転という。
【0190】
前記斜板面44が直立位置に位置している場合には、図28に示すように第1油圧装置100の行程容積VPは0となり、出力回転数Nout(出力ギヤ24の回転数)は入力回転数Ninとなる。
【0191】
(出力回転数Nout がNinと2Ninの間の場合)
シフトレバー146を操作して、クレイドル45を介して斜板面44を参考例と同様に負側に傾動して所定の負の傾動角度位置と直立位置との間の領域に位置させる。この所定の負の傾動角度位置とは、第1油圧装置100の行程容積VPの絶対値が第2油圧装置200の行程容積VMの絶対値(=VMmax)と等しくなるまでの位置である。
【0192】
この場合においても、参考例と同じ理由により、シリンダブロック42が入力軸21を介して駆動される回転数Ninと、プランジャ58の回転斜面51への突出押圧作用による正方向の回転数との合成(和)により、回転斜面51は回転される。この回転斜面51に付与される正方向の回転は、ヨーク23、連結された第1クラッチ139、ギヤ141、ギヤ142を介して終減速装置へ正方向の回転として伝達され、増速作用を行う。
【0193】
このとき、斜板面44が直立位置から所定の負の傾動角度位置側へと変位すると、図28において第1油圧装置100の行程容積VPは0からVMmax へと増加し、それに応じて出力回転数Nout はNinから2Ninへと増速する。
【0194】
なお、出力回転数Nout がNinから2Ninに変化するときの第2油圧装置200の行程容積VMはVMmaxのままである。又、この状態の作動油の流れ及び回転の様子は、図26に示している。
【0195】
この状態では前記と同様に油抜き部110等を介して、少量の作動油が第2油室62(すなわち、油圧閉回路C)から軸孔99の小径部113へ流れ出して若干のロスが生ずる。しかし、作動油の流れ出す量は少量であり、かつ、第2油室62(油室B)側は、第1油室61(油室A)側より低圧であり、ヨーク23を増速のために押圧するプランジャ58の作動効率を低下させないため、問題はない。
【0196】
(出力回転数Nout が0とNinの間の場合)
シフトレバー146を操作して、クレイドル45を介して斜板面44を正側に傾動して直立位置から正の傾動角度位置に位置させる。なお、正の傾動角度位置のうち、所定の正の傾動角度位置とは、第1油圧装置100の行程容積VPの絶対値が第2油圧装置200の行程容積VMの絶対値と等しくなるまでの位置である。
【0197】
この場合、参考例と同じ理由により、プランジャ58の回転斜面51への突出押圧作用により、前記「出力回転数Nout がNinと2Ninの間及び2Ninを越える場合」とは逆方向の回転を与える。従って、前記逆方向の回転数と、シリンダブロック42の正方向の回転数との合成(和)が、ヨーク23、連結された第1クラッチ139、ギヤ141、ギヤ142を介して終減速装置へ伝達される。
【0198】
このときの回転数の和は、逆方向の回転数分減少した正方向の回転数となるため、出力回転数Nout は「出力回転数Nout がNinの場合」に比較して小さくなる。
【0199】
本実施形態では、このとき、斜板面44が直立位置から正の最大傾動角度位置側へと変位すると、図28において第1油圧装置100の行程容積VPは0から−VMmax 側へと増加し、それに応じて出力回転数Nout はNinから0 へと減速する。
【0200】
なお、このときの出力回転数Nout がNinから0に変化するときの第2油圧装置200の1回転当たりの行程容積VMは−VM maxである。
この状態では前記と同様に油抜き部110等を介して、少量の作動油が第2油室62(すなわち、油圧閉回路C)から軸孔99の小径部113へ流れ出して若干のロスが生ずる。しかし、作動油の流れ出す量は少量であり、かつ、第2油室62(油室B)側は、第1油室61(油室A)側より低圧であり、ヨーク23を増速のために押圧するプランジャ58の作動効率を低下させないため、問題はない。
【0201】
図25は、このときの状態の模式図である。第1油室61(油室A)側は、第2油室62(油室B)側よりも高圧側となっており、油圧閉回路Cでは、図に示す矢印で示すような作動油の流れとなっている。
【0202】
(出力回転数Nout が0の場合)
次に、シフトレバー146を操作し、クレイドル45を介して斜板面44を前記所定の正の傾動角度位置のうち、第1油圧装置100の行程容積VPの絶対値が第2油圧装置200の行程容積VMの絶対値と等しくなる位置に位置させる。
【0203】
この場合、本実施形態では第1油圧装置100の行程容積VPは−VMmaxとなる。この結果、−VP≒−VM maxであるので前記逆方向の回転数と、シリンダブロック42が入力軸21を介して駆動される回転数Ninとが釣り合い、すなわち、回転数の和は0(出力回転数Nout は0)となり、出力ギヤ24は停止する。
【0204】
この状態で、さらにクレイドル45を介して斜板面44を前記所定の正の傾動角度位置からさらに正側に傾動させると、第1油圧装置100の行程容積VPの絶対値は、第2油圧装置200の行程容積VM(=VMmax)の絶対値よりも大きくなる範囲に入る。
【0205】
このため、第1油圧装置100の行程容積VPの絶対値に対して第2油圧装置200の行程容積VMの絶対値が相対的に小さくなるので、本来ならば第2油圧装置200では、これを補うため第2油圧装置200のプランジャ58の往復速度が早くなるはずである。
【0206】
しかし、この時第2油室62は、第1油室61側に比して高圧側となり、第2油室62(すなわち、油圧閉回路C)から作動油が油抜き部110等を介して軸孔99の小径部113へ高圧の作動油が流れ出すため、作動油の流れ出す量は多くなる。シリンダブロック42が1回転する際の油圧閉回路Cから流れ出す最大ロス量をLとしたとき、
第1油圧装置100の行程容積VPの絶対値と第2油圧装置200の行程容積VMの絶対値との差(|VP|−|VM|)が、
|VP|−|VM|≦L(=Δ2)
を満足している間は、結果として、|VP|と|VM|+ロス量が釣り合うため、第2油圧装置200では、引き続き、前記逆方向の回転数と、シリンダブロック42が入力軸21を介して駆動される回転数Ninとが釣り合い、すなわち、回転数の和は0(出力回転数Nout は0) となり、出力ギヤ24は停止した状態(中立)を保持する。
【0207】
図28において、Δ2は|VP|−|VM|が、0からLとなるまでの間の両装置の行程容積差を示している。なお、図28では、Δ2の部分は、説明の便宜上、拡大して図示している。
【0208】
(出力回転数Nout が0未満の場合)
さらに、この状態で、シフトレバー146を後進域側へシフトすると、このシフトレバー146の操作に応動して、図示しないアクチュエータ(ソレノイド)は、所定時間作動して、作動部材136をカバー部材131を入力軸21の出力端側に駆動する。
【0209】
この結果、カバー部材131の移動により、開放孔130が外部に開放されるため、第2油圧装置200のプランジャ孔57に係る作動油の油圧が解放される。又、この油圧が解放されると、プランジャ58の回転斜面51に対する押圧作用がなくなり、ヨーク23は第2油圧装置200からフリーとなる。このため、ギヤシフト装置138の第1クラッチ139が切り離すことができるようになるのでシフトレバー146の操作と連動して第2クラッチ140が接続される。前進側へ戻す時も同じ理由で、プランジャ孔57の作動油の油圧を解放する。
【0210】
前記所定時間経過後は、そのアクチュエータの駆動が解除されるため、コイルスプリング134の付勢力により、カバー部材131は、突条132に係止されるまで移動し、開放孔130を再び閉塞する。この結果、プランジャ孔57には作動油の油圧が働きプランジャ58が回転斜面51に対して押圧を開始する。
【0211】
(出力回転数Nout が0と−Ninの間の場合)
第2クラッチ140による後進接続が行われた後は、図28に示すように出力回転数Noutと、第1油圧装置100の行程容積の変化状態は、前進(正転)の場合と同じであり、(出力回転数Nout が0とNinの間の場合)の説明と同じため説明を省略する。図25は作動油の流れ及び回転方向を示している。
【0212】
(出力回転数Nout が−Ninと−2Ninの間の場合)
この場合も、第1油圧装置100と第2油圧装置200の作用は(出力回転数Nout がNinと2Ninの間の場合)と同じであるため、説明を省略する。図26は作動油の流れ及び回転方向を示している。
【0213】
実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
(1) 第実施形態では、ヨーク23(出力回転部)の回転方向が切り替わる(正→逆及び逆→正)際に、第2油圧装置200のプランジャ58に印加する油圧を解放するために作動する油抜き機構Mを設けた。
【0214】
この結果、ヨーク23の回転方向が切り替わる(正→逆及び逆→正)際のトルクが解放でき、正逆回転切り替えを容易に行うことができる。
特に、本実施形態では、プランジャ孔57をシリンダブロック42外部に直接解放するようにしたため、上記効果を容易に実現することができる。
【0215】
(2) 第実施形態では、無段変速装置20を、エンジン22(原動機)からの入力回転を得る入力軸21を備える構成とするとともに、同入力軸21を反原動機側に延出して出力軸として構成した。そして、延出された入力軸21外周にヨーク23(出力回転部)を設け、ヨーク23の動力伝達を行うとともに正逆回転切替可能なギヤシフト装置138(正逆回転切替装置)を設けて、動力伝達装置とした。
【0216】
この結果、動力伝達装置として、上記(1)の作用効果を奏することができる。
(第実施形態)
次に第実施形態について説明する。
【0217】
実施形態は、シリンダブロック42を第1油圧装置及び第2油圧装置が共有するとともに、プランジャ43、58をラジアルに配置した(以下、ラジアル型という)油圧装置20に具体化したものである。
【0218】
以下、図30〜図34を参照して簡単に説明する。
図30はラジアル型の油圧式無段変速装置を示している。なお、前記第実施形態の構成と同一構成又は相当する構成については、同一符号を付してその説明を省略し、異なるところを中心にして説明する。
【0219】
(第1油圧装置100)
シリンダブロック42は入力軸21の入力側端部がケース26の内周面に対して軸受161を介して回動自在に支持されるとともに出力側端部が出力回転部としての出力回転筒23Aの内周面に対して軸受162を介して相対回動自在に連結されている。又、出力回転筒23Aは、軸受170を介して側壁部材31に対して回動自在に支持されている。なお、出力回転筒23Aは、他の実施形態のヨーク23に相当する機能を有する。
【0220】
ラジアル型の第1油圧装置100では、複数のプランジャ43がシリンダブロック42に対して軸心Oを中心に放射方向へ突出入自在に配置されている。
リング状部材165は、外周面が横断面(軸心Oに直交する方向に切断したときの断面)円形に形成され、ケース26の内周面に対して自身の軸心の周りで摺接した状態で回動自在に嵌合されている。すなわち、前記リング状部材165の外周面165sの軸心(中心)は、ケース26に嵌合した内周面の軸心Sと同軸上に配置されている。
【0221】
リング状部材165の内周面165rは、横断面円形に形成され、その軸心R(中心)が外周面の軸心(中心)に対して偏心して配置されている。すなわち、軸心Rは、軸心Sに対して偏心して配置されている。
【0222】
前記リング状部材165は当接部に相当する。
そして、図31に示すように、リング状部材165は内周面軸心Rが軸心Oと一致する位置(以下、中立位置という)を含む所定範囲を回動可能とされている。すなわち、リング状部材165は中立位置を基準にして、図32に示すように時計回り方向に所定角度回動した位置(以下、本実施形態ではこの位置を第1の位置という)と、図33に示すように反時計回り方向に所定角度回動した位置(以下、第実施形態ではこの位置を第2の位置という)の間を回動可能にされている。なお、入力軸21の回転は図31において反時計回り方向に回転するものとする。リング状部材165は連結軸177を介してケース26に内装した油圧装置178の駆動により、第1の位置、第2の位置間を往復移動する。
【0223】
実施形態では、リング状部材165が中立位置に位置したときを基準に、時計回り方向へ回転した際の位置を負側の回転位置とし(図32参照)、反時計回り方向の回転を正側の回転位置という(図33参照)。
【0224】
そして、第実施形態では出力回転数Nout=Ninを境に、Nout>Ninの時に負側の回転位置に移動し、Nout<Ninの時に、正側の回転位置に移動する。なお、出力回転数とは、出力回転筒23Aの回転数である。
【0225】
なお、図32は、リング状部材165が第1の位置に位置したとき、すなわち負側の回転位置の最大回転位置に位置する状態を示している。又、図33はリング状部材165が第2の位置に位置したとき、すなわち正側の回転位置の最大回転位置に位置する状態を示している。
【0226】
シリンダブロック42において、リング状部材165に相対する部分には、その回転中心(軸心O)を中心として複数のプランジャ孔47が放射状にかつ互いに等角度間隔で配置されている。同プランジャ孔47は、シリンダブロック42の外周面において開口が形成されている。各プランジャ孔47には、プランジャ43が前記開口から突出入するように摺動自在に配置されている。
【0227】
正側の回転位置または負側の回転位置に位置するリング状部材165はシリンダブロック42の回転に伴ってプランジャ43を往復作動させ、吸入、吐出行程の作用を付与する。この結果、本実施形態での第1油圧装置100では、例えば、参考例、第1、第2、第3実施形態の斜板面44が正、負方向に傾動した場合と、同様にプランジャ43を突出入作動させる構成となる。
【0228】
(第2油圧装置200)
ラジアル型の第2油圧装置200は、シリンダブロック42、シリンダブロック42に摺動自在に配置された複数のプランジャ58、及び前記プランジャ58に対して当接する摺接部材171を備えた出力回転筒23Aとを含む
複数のプランジャ58はシリンダブロック42に対して軸心Oを中心に放射方向へ突出入自在に配置されている。摺接部材171は図34に示すように内外周面が同軸となるように円形リング状に形成され、出力回転筒23A内端の内周面に対して嵌合固定されている。摺接部材171の内周面は、横断面円形に形成され、その中心は出力回転筒23Aに嵌合した内周面の中心Qに一致するように配置されている。
【0229】
従って、摺接部材171はその軸心(中心Q)が入力軸21の軸心Oとは所定のオフセット量Δaをもって偏心するように配置されており、出力回転筒23Aが回転する際には、軸心Oの周りを中心Qが円を描いて移動する。
【0230】
シリンダブロック42において、摺接部材171に相対する部分には、その回転中心(軸心O)を中心として複数のプランジャ孔57が放射状にかつ互いに等角度間隔で配置されている。同プランジャ孔57は、シリンダブロック42の外周面において開口が形成されている。各プランジャ孔57には、プランジャ58が前記開口から突出入するように摺動自在に配置されている。
【0231】
前記摺接部材171とシリンダブロック42との相対回転時、プランジャ58と摺接部材171との当接により、プランジャ58が往復作動して吸入、吐出行程を繰り返す。
【0232】
又、第実施形態では、第実施形態と同様に第1油圧装置100の最大行程容積VPmaxは、第2油圧装置200の最大行程容積VMmaxと略同一になるように形成されている。ただし、厳密にいうと、若干VPmaxの方が大きく、差Δ2を有している。具体的には、第1油圧装置100のプランジャ孔47の内径が、第2油圧装置200のプランジャ孔57の内径と略同一径にし、かつ、プランジャ43、58の径が略同一となるようにされており、かつ、プランジャ43,58のストローク量が最大行程容積において、差を有するように、リング状部材165の最大回転位置を設定している。
【0233】
又、第実施形態では、第1切替弁66は、第1弁孔63の底部に配置したコイルスプリング175により、軸受としての玉軸受69の内輪に対して押圧した状態で当接されている。玉軸受69はその軸心が参考例と同様に軸心Oに対して斜交するようにして配置されている。第2切替弁76は、第2弁孔64の底部に配置したコイルスプリング176により、軸受としての玉軸受84の内輪に対して押圧した状態で当接されている。
【0234】
玉軸受84はその軸心が軸心Oに対して斜交するようにして配置されている。
又、本実施形態では、支持部材81は、出力回転筒23Aの内周面に軸心Oと平行に形成されたガイド溝23cに沿って摺動自在に係合されている。さらに、支持部材81に対して玉軸受80を介して連結されたホルダ79は、入力軸21の外周に対して軸心Oに沿って摺動自在に嵌合されている。
【0235】
又、シリンダブロック42とホルダ79間には、入力軸21の外周面に巻装された付勢手段としてのコイルスプリング126が配置され、コイルスプリング126の付勢力により、ホルダ79は入力軸21の出力端側に常時付勢されている。
【0236】
(作用)
上記のように構成された無段変速装置20の作用を第実施形態の図15〜図20を利用して説明する。
【0237】
なお、説明の便宜上、エンジン22のクランク軸から入力軸21に付与される入力回転数Ninは一定のものとして説明する。
(出力回転数Nout がNinの場合)
図示しないシフトレバーを操作して、油圧装置178を介して作動させてリング状部材165を中立位置に位置させる。
【0238】
この状態においては、第実施形態と同じ理由から、シリンダブロック42と摺接部材171(出力回転筒23A)とは直結状態となり、一体回転する。
前記リング状部材165が中立位置に位置している場合には、図19に示すように第1油圧装置100の行程容積VPは0となり、出力回転数Nout(出力ギヤ24の回転数)は入力回転数Ninとなる。
【0239】
(出力回転数Nout がNinと2Ninの間の場合)
図示しないシフトレバーを操作して、油圧装置178を介してリング状部材165を回転させ、中立位置と第1の位置の間の負側の回転位置の領域に位置させる。
【0240】
この場合においても、第実施形態と同じ理由により、シリンダブロック42が入力軸21を介して駆動される回転数Ninと、プランジャ58の摺接部材171への突出押圧作用による正方向の回転数との合成(和)により、摺接部材171(出力回転筒23A)は回転される。この摺接部材171に付与される正方向の回転は、出力回転筒23A、出力ギヤ24等を介して終減速装置へ正方向の回転として伝達され、増速作用を行う。
【0241】
このとき、リング状部材165が中立位置から負側の回転位置へと変位すると、図19において、第1油圧装置100の行程容積VPは0からVMmax へと増加し、それに応じて出力回転数Nout はNinから2Ninへと増速する。
【0242】
なお、出力回転数Nout がNinから2Ninに変化するときの第2油圧装置200の行程容積VMはVMmaxのままである。又、本実施形態ではVPmax≒VMmaxとしている。又、この状態の作動油の流れ及び回転の様子は、図16に示している。
【0243】
この状態では第実施形態と同様に油抜き部110等を介して、少量の作動油が第2油室62(すなわち、油圧閉回路C)から軸孔99の小径部113へ流れ出して若干のロスが生ずる。しかし、作動油の流れ出す量は少量であり、かつ、第2油室62(油室B)側は、第1油室61(油室A)側より低圧であり、出力回転筒23Aを増速のために押圧するプランジャ58の作動効率を低下させないため、問題はない。
【0244】
(出力回転数Nout が2Ninを越える場合)
リング状部材165を第1の位置に位置させた状態で、コイルスプリング124の付勢力よりも大きなチャージ圧を得るために、図示しないチャージポンプを駆動して軸孔99内の作動油を加圧する。
【0245】
すると、軸孔収納部材116がコイルスプリング124の付勢力に抗して入力軸21の出力端側に移動し、油通路112の絞り部112a側開口端部を閉塞する。
【0246】
又、軸孔収納部材116の入力軸21の出力端側への移動により、作動ピン128がテーパ部118aにて押圧されて、入力軸21の軸心Oから放射方向に移動する。作動ピン128は、ホルダ79のテーパ溝129の底面の近位端側を押圧点の開始位置として、この押圧点を徐々に遠位端側に向けて変位しながら、斜状のテーパ溝129を押し続ける。
【0247】
このため、ホルダ79は作動ピン128の押圧により、コイルスプリング126の付勢力に抗して入力軸21の入力端側に移動する。この結果、作動ピン128がテーパ溝129の底面の遠位端側に当接すると、第2切替弁76の変位端は、第1変位位置R1から第2変位位置R2までのいずれかの位置に移動する。
【0248】
すると、ポートWと第2油室62に連通する区間が狭くなり、ポートWと第1油室61に連通される区間が広くなる。すなわち、2Ninを越えると領域Jは、図20に示すように広くなり、領域Kは狭くなる。
【0249】
この結果、第実施形態と同様の理由により、第1油圧装置100の行程容積のVP max に対して第2油圧装置200の行程容積が相対的に小さくなるので、第2油圧装置200では、これを補うため第2油圧装置200のプランジャ58の往復速度が早くなる。
【0250】
このため、プランジャ58の摺接部材171への突出押圧作用によって正方向の回転数が増大し、その増大した正方向の回転数と、シリンダブロック42の正方向の回転数との和により、出力回転筒23A、出力ギヤ24が正方向への出力回転数が2Ninのときよりも増速回転される。
【0251】
又、リング状部材165を第1の位置に位置させた場合、図19において第1油圧装置100の最大行程容積VPmaxは、第2油圧装置200の最大行程容積VMmaxとは、略等しくしている(VPmax≒VMmax)が、厳密にいうと、若干VPmaxの方が大きく、差Δ2を有している。
【0252】
又、一方、第2油圧装置200の行程容積は第2切替弁76が第2変位位置R2のときには0.6VMmaxとしている。その結果、それに応じて出力回転数Nout は2Ninから略2.7Ninへと増速する。図16はこの状態の作動油の流れ及び回転の様子を示している。
【0253】
なお、本実施形態では、この状態では油抜き部110は、閉塞されている。
(出力回転数Nout が0とNinの間の場合)
この状態においては、軸孔収納部材116がコイルスプリング124の付勢力により、軸孔収納部材116が常に係止段部114aに係止されているため、油抜き部110、孔120を介して、少量の作動油が第2油室62(すなわち、油圧閉回路C)から軸孔99の小径部113へ流れ出すことが許容されている。すなわち、第2切替弁76の変位端は、第1変位位置R1に位置する。
【0254】
図示しないシフトレバーを操作して、油圧装置178を介して作動させてリング状部材165を中立位置から正側の回転位置の領域に位置させる。
この場合、第実施形態と同じ理由により、プランジャ58の摺接部材171への突出押圧作用により、前記「出力回転数Nout がNinと2Ninの間及び2Ninを越える場合」とは逆方向の回転を与える。従って、前記逆方向の回転数と、シリンダブロック42の正方向の回転数との合成(和)により、出力回転筒23A、出力ギヤ24が回転される。
【0255】
このときの回転数の和は、逆方向の回転数分減少した正方向の回転数となるため、出力回転数Nout は「出力回転数Nout がNinの場合」に比較して小さくなる。
【0256】
本実施形態では、このとき、リング状部材165が中立位置から第2の位置へと変位すると、図19において第1油圧装置100の行程容積VPは0から−VMmax 側へと増加し、それに応じて出力回転数Nout はNinから0 へと減速する。
【0257】
なお、このときの出力回転数Nout がNinから0に変化するときの第2油圧装置200の1回転当たりの行程容積VMは−VM maxである。
この状態では前記と同様に油抜き部110等を介して、少量の作動油が第2油室62(すなわち、油圧閉回路C)から軸孔99の小径部113へ流れ出して若干のロスが生ずる。しかし、作動油の流れ出す量は少量であり、かつ、第2油室62(油室B)側は、第1油室61(油室A)側より低圧であり、出力回転筒23Aを減速のために押圧するプランジャ58の作動効率を低下させないため、問題はない。図17は、このときの状態の模式図である。
【0258】
(出力回転数Nout が0の場合)
次に、図示しないシフトレバーを操作し、油圧装置178を介してリング状部材165を回転させ、リング状部材165を第2の位置に位置させる。
【0259】
この場合、本実施形態では第1油圧装置100の行程容積VPは−VMmaxとなる。この結果、−VP≒−VM maxであるので前記逆方向の回転数と、シリンダブロック42が入力軸21を介して駆動される回転数Ninとが釣り合い、すなわち、回転数の和は0(出力回転数Nout は0)となり、出力ギヤ24は停止する。
【0260】
この状態で、さらに油圧装置178を介してリング状部材165を回転させ、第2の位置からさらに正側に回動させると、第1油圧装置100の行程容積VPの絶対値は、第2油圧装置200の行程容積VM(=VMmax)の絶対値よりも大きくなる範囲に入る。
【0261】
このため、第1油圧装置100の行程容積VPの絶対値に対して第2油圧装置200の行程容積VMの絶対値が相対的に小さくなるので、本来ならば第2油圧装置200では、これを補うため第2油圧装置200のプランジャ58の往復速度が早くなるはずである。
【0262】
しかし、この時第2油室62は、第1油室61側に比して高圧側となり、第2油室62(すなわち、油圧閉回路C)から作動油が油抜き部110等を介して軸孔99の小径部113へ高圧の作動油が流れ出す。
【0263】
シリンダブロック42が1回転する際の油圧閉回路Cから流れ出す最大ロス量をLとすると、第実施形態と同様に、
第1油圧装置100の行程容積VPの絶対値と第2油圧装置200の行程容積VMの絶対値との差(|VP|−|VM|)が、
|VP|−|VM|≦L(=Δ2)
を満足している間は、|VP|と|VM|+ロス量が釣り合うため、第2油圧装置200では、引き続き、前記逆方向の回転数と、シリンダブロック42が入力軸21を介して駆動される回転数Ninとが釣り合い、すなわち、回転数の和は0(出力回転数Nout は0) となり、出力ギヤ24は停止した状態(中立)を保持する。
【0264】
図19において、Δ2は|VP|−|VM|が、0からLとなるまでの間の両装置の行程容積差を示している。
(出力回転数Nout が0未満の場合)
さらに、この状態で、コイルスプリング124の付勢力よりも大きなチャージ圧を得るために、図示しないチャージポンプを駆動して軸孔99内の作動油を加圧する。すると、軸孔収納部材116がコイルスプリング124の付勢力に抗して入力軸21の出力端側に移動し、油通路112の絞り部112a側開口端部を閉塞する。
【0265】
又、軸孔収納部材116の入力軸21の出力端側への移動により、作動ピン128がテーパ部118aにて押圧されて、入力軸21の軸心Oから放射方向に移動する。作動ピン128は、ホルダ79のテーパ溝129の底面の近位端側を押圧点の開始位置として、この押圧点を徐々に遠位端側に向けて変位しながら、斜状のテーパ溝129を押し続ける。このため、ホルダ79は作動ピン128の押圧により、コイルスプリング126の付勢力に抗して入力軸21の入力端側に移動する。この結果、作動ピン128がテーパ溝129の底面の遠位端側に当接すると、第2切替弁76の変位端は、第1変位位置R1から第2変位位置R2までのいずれかの位置に移動する。
【0266】
すると、図20に示すようにポートWと第2油室62に連通する区間が狭くなり、ポートWと第1油室61に連通される区間が広くなる。すなわち、出力回転数Noutが0より小さくなると領域Jは、広くなり、領域Kは狭くなる。
【0267】
この結果、第1油圧装置100の行程容積のVP max に対して第2油圧装置200の行程容積が相対的に小さくなり、第2油圧装置200では、これを補うため第2油圧装置200のプランジャ58の往復速度が早くなる。このため、プランジャ58の回転斜面51への突出押圧作用によって逆方向の回転数が増大し、その増大した逆方向の回転数と、シリンダブロック42の正方向の回転数との和により、出力回転筒23A、出力ギヤ24が逆方向への出力回転数が0のときよりも増速回転される(図19参照)。
【0268】
又、前記軸孔収納部材116が入力軸21の出力端側に移動し、油通路112の絞り部112a側開口端部を閉塞したことにより、第2油室62(すなわち、油圧閉回路C)から作動油が油抜き部110等を介して軸孔99の小径部113へ流出するのが停止する。このため、今まで、ロスしていた作動油の分まで、第2油圧装置200のプランジャ58を押圧する作用が高まる。
【0269】
従って、第1油圧装置100の行程容積VPの絶対値に対して第2油圧装置200の行程容積VMの絶対値がさらに相対的に小さくなるので、第2油圧装置200では、これを補うため第2油圧装置200のプランジャ58の往復速度が早くなる。
【0270】
このため、プランジャ58の摺接部材171への突出押圧作用によって逆方向の回転数が増大し、その増大した逆方向の回転数と、シリンダブロック42の正方向の回転数との合成(和)により、出力回転筒23A、出力ギヤ24が逆方向へ回転される。
【0271】
又、逆方向の回転トルクは、出力回転筒23A、出力ギヤ24等を介して終減速装置へ伝達される。
このとき、図19においては、第実施形態と同様に出力回転数Noutはc点(c点は出力回転数Noutが0であって、行程容積は−VPmaxの値の点である。
)からd点に移動する。
【0272】
又、油圧装置178を介してリング状部材165を第2の位置に位置させた場合、図19において第1油圧装置100の最大行程容積VPmaxの絶対値は、若干の差はあるもののVPmax≒VMmaxであり、一方、第2油圧装置200の行程容積の絶対値は0.6VMmaxとなる。従って、それに応じて出力回転数Nout は0から減速するが、それに応じて出力回転数Nout は移動したd点から逆向きの回転が加速する。すなわち、移動したd点から出力回転数Nout は後進方向に増速する。
【0273】
図19に示すように「シール有」と付された実線上において、Noutが変化する。
又、図18は、このときの状態の模式図である。第2油室62(油室B)側は、第1油室61(油室A)側よりも高圧側となっており、油圧閉回路Cでは、図に示す矢印で示すような作動油の流れとなっている。
【0274】
実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
(1) 第実施形態の無段変速装置20(油圧式無段変速装置)は、第1油圧装置100として、プランジャ43を備え、リング状部材165(当接部)によって同プランジャ43の突出入を行うようにした。又、第2油圧装置200として、プランジャ58を備え、同プランジャ58の当接によって入力回転に対して相対又は同期回転のいずれかを行う出力回転筒23A(出力回転部)を設けた。そして、第1油圧装置100と第2油圧装置200双方のプランジャ43,58を収納するシリンダブロック42を共有し、シリンダブロック42を入力回転と同期回転する構成とした。
【0275】
さらに、第1油圧装置100の最大行程容積VPmaxが第2油圧装置200の最大行程容積VMmaxを上回る範囲を有する構成とし、第1油圧装置100と第2油圧装置200とを連通する油路(油圧閉回路C)のうち、出力回転筒23Aが入力回転と正回転するときの低圧油路側となる第2油室62に油抜き部110を設けた。
【0276】
この結果、第実施形態と同様に第1油圧装置100の行程容積VPが、第2油圧装置200の行程容積VMmaxと等しくなるときから、油抜き部110の油逃し量(油圧閉回路Cから流れ出すロス量L)にて対応できる範囲では、出力回転数Noutは0となって、中立を実現できる。従って、油逃し量の分だけ、中立を行える範囲に幅を持たせることができる。
【0277】
(2) 又、第実施形態によれば、第実施形態の(2)と同様の効果を奏する。
なお、本発明の実施形態は、前記各実施形態に限定されるものではなく、下記のように実施してもよい。
【0278】
(1) 第実施形態の構成中のギヤシフト装置138の構成を図29に示すギヤシフト装置150(CST)の構成に変えること。
ギヤシフト装置150は、同図に示すように図示しない終減速装置に駆動トルクを伝達する出力軸155に連結された前進クラッチ152、及び後進クラッチ153を備えている。下記の歯車列を添えている。
【0279】
前進クラッチ152の駆動側クラッチプレートは、出力ギヤ24に噛合されたギヤ151を備えている。そして、シフトレバー146の操作により、前進クラッチ152が連結されると、ヨーク23、出力ギヤ24、ギヤ151、前進クラッチ152、出力軸155を介して、図示しない終減速装置に駆動トルクを伝達する。
【0280】
又、出力ギヤ24には、アイドラギヤ156、アイドラギヤ156と共通軸を有するアイドラギヤ157及び中間ギヤ159を介して後進クラッチ153の駆動側クラッチプレートに連結されたギヤ160からなる歯車列が連結されている。そして、シフトレバー146の後進側操作により、後進クラッチ153が連結されると、前記歯車列、出力軸155を介して、図示しない終減速装置に駆動トルクを伝達する。
【0281】
この実施形態では、ギヤシフト装置150が正逆回転切替装置に相当する。
(2) 第実施形態において、油抜き機構Mを省略して、その代わりに、図4に示す、チャージ弁90を油抜き機構Mとしてもよい。
【0282】
すなわち、(出力回転数Nout が0未満の場合)において、シフトレバー146を後進域側へシフトすると、このシフトレバー146の操作に応動して、チャージポンプのチャージ圧をコイルスプリング97,98の付勢力よりも低減する。すると、図4に示すように、チャージ弁90,91が弁収納孔85,86の内底部に押圧係止される(図4においては、チャージ弁91のみ、移動したことを図示している。)。すると、第1油室61、第2油室62の作動油が弁収納孔85,86の開口88,89を介して外部に放出される。
【0283】
この油圧が解放されると、プランジャ孔57の作動油の油圧が解放されるため、プランジャ43の斜板面44に対する押圧作用、及びプランジャ58の回転斜面51に対する押圧作用がなくなる。特に、ヨーク23は第2油圧装置200からフリーとなる。このためギヤシフト装置138の第1クラッチ139が切り離すことができるようになるので、シフトレバー146の操作と連動して、第2クラッチ140が接続される。前進側へ戻すときも同じ理由でプランジャ孔57の作動油の油圧を解放する。
【0284】
前記所定時間経過後は、図示しないチャージポンプにてチャージ圧を元に復帰させると、チャージ弁90,91は、開口88,89を閉塞する。この結果、プランジャ孔47,57には作動油の油圧が働き、プランジャ43及びプランジャ58がそれぞれ斜板面44及び回転斜面51に対して押圧を開始する。
【0285】
このようにしても、第実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
(3) 又、図7(c)のようにしてもよい。
すなわち、第1切替弁66、第2切替弁76のくびれ部66b,76bは隣接した大径部66cよりも小径とし、大径部66c,76cとテーパ面66d,76dを介して隣接するように構成する。又、テーパ面66d,76dは第1切替弁66,第2切替弁76の軸心に向かうほど、相対する他の66d,76dとはその離間距離が短くなるように形成する。このため、同図に示すように、フランジ72の両側面はテーパ面66dに対して線接触するようにして配置されている。このようにすると、接触面同士が線接触となるため、点接触する場合に比して当接箇所の負荷が軽減され、耐久性が向上する。
【0286】
(4) 第実施形態及び第実施形態の変形例として、下記のようにしてもよい。
実施形態及び第実施形態では、出力回転数Noutが0未満のときは、油抜き部110を閉塞するようにしたが、軸孔収納部材116の第1ランド117を省略したり、図14の二点鎖線で示すように連結部119を長くしてその代わりに第1ランド117の軸方向長さを短くして、出力回転数Noutが0未満のときは、油抜き部110を閉塞しないよう構成すること。この場合、出力回転数Noutが0未満のときは、油抜き部110からの作動油が抜けるため、出力回転数Noutは、第実施形態よりも効率は悪くなるがこれでもよい。
【0287】
すなわち、この場合は、油抜き部110からの作動油のロス量分の回転量は減少したものとなるが、図19に示すようにc点からe点(e点は、出力回転数Noutが−0.7Ninよりも大きい値であって、行程容積は−VPmaxの値の点である。)に移行し、出力回転数Nout は0から減速する(0 から後進方向に増速する)。
【0288】
図19においては、「シール無」と付された実線上においてNoutが変化する。
(5) 第実施形態の構成中、ホルダ79を入力軸21に固定して、コイルスプリング126、ピン孔127、作動ピン128、テーパ溝129を省略してもよい。そして、第1油圧装置100の最大行程容積VPmaxを、第2油圧装置200の最大行程容積VMmaxよりも大きくしてもよい。例えば、参考例と同様に1.7倍となるように設定してもよい。第1油圧装置100と第2油圧装置200の最大行程容積に差を持たせることにより、第1油圧装置100の行程容積VPが第2油圧装置200の行程容積VMを上回る範囲を有する構成となる。
【0289】
こうすると、ラジアル型の油圧式無無段変速装置において、参考例と同様の効果を奏することができる。
【0290】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1乃至請求項の発明によれば、第1油圧装置の行程容積が、第2油圧装置の行程容積と等しくなるときから、油抜き部の油逃し量にて対応できる範囲では、出力回転数は0となって、中立を実現でき、油逃し量の分だけ、中立を行える範囲に幅を持たせることができる。
【0291】
さらに、請求項に記載の発明によれば、出力回転部が入力回転とは逆回転するときに、油抜き部をシールする機構を設けたため、出力回転部が入力回転と逆回転する際には、作動油が油抜き部介して漏れなくなり、油圧閉回路から作動油が漏れなくなるため、出力回転部が入力回転と逆転するときの効率が改善する。
【0292】
請求項乃至請求項に記載の発明によれば、出力回転部の回転方向が切り替わる(正→逆及び逆→正)際に、第2油圧装置のプランジャに印加する油圧を解放するために作動する油抜き機構を設けたため、出力回転部の回転を正から逆、又は逆から正へ切替える際のトルクが解放でき、正逆回転切り替えを容易に行うことができる。
【0293】
請求項に記載の発明によれば、第1油圧装置の最大行程容積と第2油圧装置の最大行程容積の容積差を微小差としたことにより、すなわち、両装置のプランジャのストローク量を微小差とするだけでよくなり、シリンダブロックをコンパクトにすることができる。
【0294】
請求項に記載の発明によれば、請求項に記載の効果を動力伝達装置にも実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】参考例の無段変速装置の平断面図。
【図2】同じく無段変速装置のシリンダブロックの横断面図。
【図3】図2の3−3線断面図。
【図4】同じく要部断面図。
【図5】同じく要部断面図。
【図6】同じく要部断面図。
【図7】(a)はリテーナ70の斜視図、(b)は要部拡大図、(c)は他の例の要部拡大図。
【図8】第1切替弁66、第2切替弁76によるポートが開口するタイミングを示す説明図。
【図9】参考例の無段変速装置の概念図。
【図10】同じく参考例の作用を示す無段変速装置の概念図。
【図11】同じく作用を示す無段変速装置の概念図。
【図12】同じく行程容積と出力回転数とを表した特性図。
【図13】第実施形態の無段変速装置の平断面図。
【図14】同じく要部断面図。
【図15】同じく第1切替弁66、第2切替弁76によるポートが開口するタイミングを示す説明図。
【図16】同じく第実施形態の無段変速装置の概念図。
【図17】同じく作用を示す無段変速装置の概念図。
【図18】同じく作用を示す無段変速装置の概念図。
【図19】同じく行程容積と出力回転数とを表した特性図。
【図20】ポートが開口するタイミングを示す説明図。
【図21】第実施形態の無段変速装置の平断面図。
【図22】同じく要部断面図。
【図23】同じく作用を示す断面図。
【図24】第実施形態の無段変速装置の概念図。
【図25】同じく無段変速装置の概念図。
【図26】同じく作用を示す無段変速装置の概念図。
【図27】シフターの平面図。
【図28】行程容積と出力回転数とを表した特性図。
【図29】他の実施形態の要部概念図。
【図30】第実施形態の無段変速装置の平断面図。
【図31】同じく第1油圧装置の横断面図。
【図32】同じく作用を示す横断面図。
【図33】同じく作用を示す横断面図。
【図34】同じく第2油圧装置の横断面図。
【符号の説明】
23…ヨーク(出力回転部)、23A…出力回転筒(出力回転部)、
42…シリンダブロック、43…プランジャ、44…斜板面(当接部)、
47…プランジャ孔、51…回転斜面、57…プランジャ孔、
58…プランジャ、
100…第1油圧装置、110…油抜き部、
138…ギヤシフト装置(正逆回転切替装置)、
165…リング状部材(当接部)、200…第2油圧装置
C…油圧閉回路、M…油抜き機構。

Claims (6)

  1. プランジャを備え、当接部によって同プランジャの突出入を行う可変容量形の第1油圧装置と、プランジャを備え、同プランジャの当接によって入力回転に対して相対又は同期回転のいずれかを行う出力回転部を設けた第2油圧装置を組合せ、双方のプランジャを収納するシリンダブロックを共有し、同シリンダブロックを入力回転と同期回転する構成とした油圧式無段変速装置において、
    第1油圧装置の行程容積が第2油圧装置の行程容積を上回る範囲を有する構成とし、第1油圧装置と第2油圧装置とを連通する油圧閉回路のうち、出力回転部が正回転するときの低圧油路側に油抜き部を設け
    前記出力回転部が逆回転するときに、前記油抜き部をシールする機構を設けたことを特徴とする油圧式無段変速装置。
  2. 第2油圧装置のプランジャに印加する油圧を解放するために作動する油抜き機構を備えたことを特徴とする請求項1に記載の油圧式無段変速装置。
  3. 前記油抜き機構は、油圧閉回路をシリンダブロック外部に直接解放するものである請求項2に記載の油圧式無段変速装置。
  4. 前記油抜き機構は、第2油圧装置のプランジャを摺動自在に収納するプランジャ孔をシリンダブロック外部に直接解放するものである請求項2に記載の油圧式無段変速装置。
  5. 第1油圧装置の最大行程容積と第2油圧装置の最大行程容積の容積差を微小差としたことを特徴とする請求項2乃至請求項4のうちいずれか1項に記載の油圧式無段変速装置。
  6. 請求項5に記載の油圧式無段変速装置のシリンダブロックを、原動機からの入力回転を得る入力軸と連結する構成とするとともに、同入力軸を反原動機側に延出して出力軸として構成し、
    前記延出された入力軸外周に前記出力回転部を設け、
    同出力回転部の動力伝達を行うとともに正逆回転切替可能な正逆回転切替装置を設けたことを特徴とする動力伝達装置。
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