JP4588152B2 - 水系感熱性粘着剤組成物、感熱性粘着シート及び感熱性粘着シートの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、所謂ディレードタックラベル等に使用される水系感熱性粘着剤組成物、感熱性粘着シート及び該感熱性粘着シートの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ガラス製などの瓶、ペットボトル等の容器に貼付するラベルとして、ラベル基材上に粘着剤を塗工すると同時に容器に貼付するグルーラベルや、ラベル基材上に粘着剤及び剥離紙を順次形成した粘着ラベル等が使用されている。しかし、グルーラベルは、粘着剤の粘度の管理や粘着剤を塗工する機械の清掃等の手間を要するため、最近ではあまり好まれない。また、剥離紙を形成した粘着ラベルは、ラベルから剥がした大量の剥離紙がゴミとして発生するため、その処分に手間を要すると共に、資源の節減の観点からも好ましくない。
【0003】
このような問題を解決するラベルとして、ディレードタックラベルと称されるものが知られている。ディレードタックラベルは、常温では非粘着性であるが加熱によって粘着性を発現するディレードタック層(感熱性粘着剤層)をラベル基材上に形成したものであり、剥離紙が不要で、しかも加熱するだけで容易に容器に貼付することができるという利点を有している。ディレードタック層は、通常、ガラス転移温度が0〜30℃程度の熱可塑性樹脂層に、固体可塑剤の粒子と必要に応じて粘着付与剤とを散在させたものであり、加熱によって固体可塑剤を溶融し、これによって熱可塑性樹脂を可塑化して粘着性を発現するものである。前記固体可塑剤の例は、特開平7−278251号公報、特開平7−145352号公報等に記載されており、例えば、ジシクロヘキシルフタレートがよく知られ、一般的に使用、実用化されている。
【0004】
上述のようなディレータックラベルは、最近ではエマルジョン型の感熱性粘着剤を基材の裏面に塗工した後、乾燥のための加熱工程を経て製造されることが多い。その場合の加熱温度は、粘着剤層の形成段階でジシクロヘキシルフタレートが溶融して粘着性が発現してしまわないように、45℃以下の低温であることが必要とされている。しかし、このような低温の加熱では加熱乾燥工程に時間を要するため、ディレードタックラベルの生産性が低下してしまうという問題点がある。また、ディレードタックラベルでは上述のように剥離紙を使用していないため、重ねたまま、例えば夏場の高温下で長期間保存すると、ジシクロヘキシルフタレートによる熱可塑性樹脂の可塑化が徐々に起こり、ラベル同士が互いに付着する所謂ブロッキングが起こってしまう。従って、このようなブロッキングを防止するために、保冷設備が必要となるという問題点がある。
【0005】
上記ブロッキングの問題を解決する手法として、特公昭62−21835号公報には、粘着剤組成物中にワックスを配合することが開示されている。しかし、この方法は効果として不十分であるばかりか逆に粘着性の低下をもたらしてしまうものである。また、特開平9−221644号公報では、粘着剤組成物中に配合する粘着付与剤の軟化点温度を150〜170℃に高めることによりブロッキングの解決を試みているが、用いている固体可塑剤の融点が低いことから、十分な耐ブロッキング性が得られず加熱乾燥工程における生産性を向上するには不十分である。
【0006】
さらに、特開平11−269440号公報では、粘着剤層を2層構造にすることにより耐ブロッキング性の向上を試みているが、感熱性粘着シートを作製するのに多工程が必要となるという問題があった。
【0007】
また、従来の感熱性粘着シートでは、空冷式UV印刷機で印刷を行うと、印刷時に発生する熱によりブロッキングが起きるため、該印刷機による印刷が不可能であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、塗工後、より高い温度で加熱乾燥を行うことができるとともに、長期間保存する場合にもブロッキングが生じず、従来並みの活性化温度で粘着性が発現可能な水系感熱性粘着剤組成物、及び該水系感熱性粘着剤組成物で形成された粘着剤層を有する感熱性粘着シートとその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記特性に加え、基材面に対して強い接着強度を有し、しかも一段階で塗工することのできる水系感熱性粘着剤組成物、及び該水系感熱性粘着剤組成物で形成された粘着剤層を有する感熱性粘着シートとその製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、空冷式UV印刷機による印刷を可能とする水系感熱性粘着剤組成物、及び該水系感熱性粘着剤組成物で形成された粘着剤層を有する感熱性粘着シートとその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定の融点を有する固体可塑剤と特定の軟化点を有する粘着付与剤とを組み合わせて使用すると、耐ブロッキング性を著しく向上できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、支持体の少なくとも片面に下記固体可塑剤、下記熱可塑性樹脂及び下記粘着付与剤を含み、且つ該固体可塑剤の含有量が熱可塑性樹脂100重量部に対して350〜800重量部、該粘着付与剤の含有量が熱可塑性樹脂100重量部に対して100〜500重量部である水系感熱性粘着剤組成物を塗工して形成された粘着剤層を有する空冷式UV印刷用感熱性粘着シートを提供する。
固体可塑剤:ビス(シス−3,3,5−トリメチルシクロヘキシル)フタレート
熱可塑性樹脂:ガラス転移温度(Tg)が−10〜25℃
粘着付与剤:軟化点が150〜180℃のロジン誘導体
本発明は、また、前記空冷式UV印刷用感熱性粘着シートの製造方法であって、支持体の少なくとも片面に下記固体可塑剤、下記熱可塑性樹脂及び下記粘着付与剤を含み、且つ該固体可塑剤の含有量が熱可塑性樹脂100重量部に対して350〜800重量部、該粘着付与剤の含有量が熱可塑性樹脂100重量部に対して100〜500重量部である水系感熱性粘着剤組成物を塗工して粘着剤層を設ける空冷式UV印刷用感熱性粘着シートの製造方法を提供する。
固体可塑剤:ビス(シス−3,3,5−トリメチルシクロヘキシル)フタレート
熱可塑性樹脂:ガラス転移温度(Tg)が−10〜25℃
粘着付与剤:軟化点が150〜180℃のロジン誘導体
本発明は、さらに、前記空冷式UV印刷用感熱性粘着シートを用いた空冷式UV印刷用ディレードタックラベルを提供する。
本発明は、さらに、前記空冷式UV印刷用ディレードタックラベルの製造方法であって、下記固体可塑剤、下記熱可塑性樹脂及び下記粘着付与剤を含み、且つ該固体可塑剤の含有量が熱可塑性樹脂100重量部に対して350〜800重量部、該粘着付与剤の含有量が熱可塑性樹脂100重量部に対して100〜500重量部である水系感熱性粘着剤組成物を基材の裏面に塗工した後、乾燥のための加熱工程を経て製造することを特徴とする空冷式UV印刷用ディレードタックラベルの製造方法を提供する。
固体可塑剤:ビス(シス−3,3,5−トリメチルシクロヘキシル)フタレート
熱可塑性樹脂:ガラス転移温度(Tg)が−10〜25℃
粘着付与剤:軟化点が150〜180℃のロジン誘導体
尚、本明細書には、上記発明の他に、固体可塑剤、熱可塑性樹脂及び粘着付与剤を含む水系感熱性粘着剤組成物であって、固体可塑剤の融点が70℃以上であり、且つ粘着付与剤の軟化点が150〜180℃である水系感熱性粘着剤組成物、固体可塑剤が、(i)ヒドロキシ化合物と多塩基酸との多エステル化合物、(ii)ポリヒドロキシ化合物と有機一塩基酸とのエステル化合物及び(iii)リン化合物から選択された少なくとも1種の成分である前記水系感熱性粘着剤組成物、(i)ヒドロキシ化合物と多塩基酸との多エステル化合物が、脂環式炭素環を有するアルコールと多塩基酸との多エステル化合物である前記水系感熱性粘着剤組成物、脂環式炭素環を有するアルコールと多塩基酸との多エステル化合物がビス(シス−3,3,5−トリメチルシクロヘキシル)フタレートである前記水系感熱性粘着剤組成物、固体可塑剤の含有量が熱可塑性樹脂100重量部に対して350〜800重量部である前記水系感熱性粘着剤組成物、支持体の少なくとも片面に前記水系感熱性粘着剤組成物を塗工して形成された粘着剤層を有する感熱性粘着シート、支持体の少なくとも片面に前記水系感熱性粘着剤組成物を塗工して粘着剤層を設ける感熱性粘着シートの製造方法についても記載する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明において使用される熱可塑性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルの単独又は共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ビニルピロリドン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン−(メタ)アクリル酸共重合体などの(メタ)アクリル酸又はそのエステルを単量体として含むアクリル系重合体;酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニルを単量体として含む酢酸ビニル系重合体;スチレン−ブタジエン共重合体、イソブチレン樹脂、イソブチレン−イソプレン共重合体、ブタジエン樹脂、スチレン−イソプレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体などの合成ゴム;天然ゴム;エチレン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ビニルピロリドン−スチレン共重合体、塩素化プロピレン樹脂、ウレタン樹脂、エチルセルロースなどが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0011】
これらの中でも、アクリル系重合体[例えば、(メタ)アクリル酸エステルを単量体として含むアクリル系重合体]、酢酸ビニル系重合体、合成ゴム、天然ゴムなどが好ましい。また、前記アクリル系重合体の中でも、特に、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体(例えば、アクリル酸C2-20アルキルエステル−メタクリル酸C1-4アルキルエステル共重合体)、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体(例えば、アクリル酸C2-20アルキルエステル−メタクリル酸C1-4アルキルエステル−(メタ)アクリル酸共重合体)、アクリル酸エステル−スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(例えば、アクリル酸C2-20アルキルエステル−スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体)等のアクリル酸エステル(例えば、アクリル酸C2-20アルキルエステル)とメタクリル酸エステル(例えば、メタクリル酸C1-4アルキルエステル)又はスチレンとをコモノマーとして含むアクリル系共重合体などが好ましい。
【0012】
熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、被着物の種類等を考慮し、粘着シートとした場合の接着性及び耐ブロッキング性を損なわない範囲で適宜選択でき、通常、−10〜70℃程度、好ましくは0〜50℃程度である。前記ガラス転移温度が低すぎると耐ブロッキング性が低下しやすい。また、前記ガラス転移温度が高すぎると、感熱性粘着剤層を形成する際の加熱乾燥時の製膜が不十分になりやすく、また接着性が低下しやすくなる。
【0013】
本発明では、固体可塑剤として融点が70℃以上(好ましくは80℃以上)のものを用いる。融点の上限は、溶融させる際の操作性等を考慮して適宜設定でき、支持体の材質等によっても異なるが、一般には180℃、好ましくは160℃、さらに好ましくは120℃(特に100℃)程度である。固体可塑剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0014】
固体可塑剤の種類としては、上記の融点の条件を充足していれば特に限定されず、例えば、(i)ヒドロキシ化合物(特に、モノヒドロキシ化合物)と多塩基酸(二塩基酸を含む)との多エステル化合物、(ii)ポリヒドロキシ化合物(ジヒドロキシ化合物を含む)と有機一塩基酸(脂肪族、脂環式又は芳香族モノカルボン酸など)とのエステル化合物(モノエステル又は多エステル化合物)、(iii)リン酸エステル類、亜リン酸エステル類、ホスフィン類等のリン化合物などが挙げられる。
【0015】
前記(i)ヒドロキシ化合物と多塩基酸との多エステル化合物の代表的な例として、例えば、ジフェニルフタレート(融点:73℃)、ビス(ジメチルシクロヘキシル)フタレート(融点:94℃)、ジメントールフタレート(融点:134℃)、ジボルニルフタレート(融点:136℃)、ビス(t−ブチルシクロヘキシル)フタレート(融点:103,150℃)、ビス(シス−3,3,5−トリメチルシクロヘキシル)フタレート(融点:93℃)等のフタル酸エステル類;ビス(シス−3,3,5−トリメチルシクロヘキシル)テレフタレート(融点:133℃)、ビス(トランス−3,3,5−トリメチルシクロヘキシル)テレフタレート(融点:103℃)、ビス(ジメチルシクロヘキシル)テレフタレート(融点:89℃)等のテレフタル酸エステル類などが挙げられる。
【0016】
前記(ii)ポリヒドロキシ化合物と有機一塩基酸とのエステル化合物の代表的な例として、例えば、安息香酸スクロース(融点:98℃)などの多価アルコールのカルボン酸エステル類;ハイドロキノンジアセテート(融点:123℃)、トリメチルハイドロキノンジアセテート(融点:109℃)、3,4,5−トリメチルカテコールジアセテート(融点:120℃)などの、ベンゼン環がアルキル基で置換されていてもよいハイドロキノン若しくはレゾルシノール又はベンゼン環がアルキル基で置換されたカテコールと有機一塩基酸とのジエステル化合物等が挙げられる。
【0017】
前記(iii)リン化合物の代表的な例として、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノールビス(ジフェニルホスフェート)(融点:97℃)、レゾルシノールビス[ジ(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート](融点:95℃)、トリ(4−メチルフェニル)ホスフェート(融点:78℃)、トリ(4−t−ブチルフェニル)ホスファイト(融点:75℃)、トリフェニルホスフィン(融点:80℃)、トリ(3−メチルフェニル)ホスフィン(融点:100℃)などが挙げられる。
【0018】
上記の固体可塑剤の中でも、(i)ヒドロキシ化合物と多塩基酸との多エステル化合物が好ましく、特に、脂環式炭素環(シクロアルカン環、シクロアルケン環、橋かけ環など)を有するアルコールと、芳香族多価カルボン酸(フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸など)等の多塩基酸との多エステル化合物が好ましい。このような多エステル化合物は、前記アルコールと前記多塩基酸又はその反応性誘導体(例えば、酸無水物、酸ハライド、活性エステルなど)から、公知乃至慣用のエステル化法を利用することにより製造できる。例えば、上記アルコールと多塩基酸とをプロトン酸触媒の存在下、トルエン溶媒中で所定の温度で反応させ、生成する水を除去することにより、目的とする多エステル化合物を得ることができる。
【0019】
上記の多エステル化合物(i)の中でも特に有効な固体可塑剤として、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール(特に、シス−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール)から得られる多エステル化合物、例えば、ビス(シス−3,3,5−トリメチルシクロヘキシル)フタレート(融点:93℃)等が挙げられる。
【0020】
なお、上記3,3,5−トリメチルシクロヘキサノールには、ヒドロキシル基と5位のメチル基との立体的な位置関係により、シス体とトランス体の2つの幾何異性体が存在する。本発明では、前記の融点の条件を充足していれば、これらの何れの異性体から得られる多エステル化合物を使用することもでき、またこれらの異性体の混合物から得られる多エステル化合物を使用することもできる。
【0021】
本発明において、水系感熱性粘着剤組成物中の固体可塑剤の含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、一般には350〜800重量部程度、好ましくは400〜700重量部程度である。固体可塑剤の量が少なすぎると、十分な耐ブロッキング性が得られなくなりやすく、また多すぎると、凝集力が低下し十分な接着強度が発現しないことがある。
【0022】
本発明では、粘着付与剤として軟化点が150〜180℃のものを用いる。軟化点が150℃未満の場合には、ブロッキングが極めて起こりやすく、軟化点が180℃を超えると、活性化温度が高くなり好ましくない。粘着付与剤の種類は、軟化点が上記の範囲にあれば特に限定されず、例えば、テルペン樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、クマロン−インデン樹脂、スチレン系樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン誘導体(ロジン、重合ロジン、水添ロジン及びそれらのグリセリン、ペンタエリスリトール等とのエステル、樹脂酸ダイマー等)、キシレン樹脂等の樹脂類などを使用できる。軟化点の調整は、例えば、樹脂の分子量や分子量分布、低分子量成分と高分子量成分との比率などを適宜選択することにより行うことができる。これらの粘着付与剤は、2種以上併用してもよい。
【0023】
水系感熱性粘着剤組成物中の粘着付与剤の含有量は、熱可塑性樹脂と固体可塑剤の組み合わせに応じて適宜決められるが、好ましくは熱可塑性樹脂100重量部に対して100〜500重量部程度、さらに好ましくは120〜400重量部程度である。
【0024】
本発明の水系感熱性粘着剤組成物には、上記粘着付与剤の他に、特性を損なわない範囲で慣用の添加剤、例えば、製膜助剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、滑剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等)、帯電防止剤、ブロッキング防止剤(無機粒子、有機粒子等)を添加してもよい。
【0025】
前記製膜助剤としては、例えば、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートなどのグリコールエーテル類及びグリコールエステル類;フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、セバシン酸ジオクチルなどのカルボン酸ジエステル類;ベンジルアルコール、トルエン、アセトン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどの有機溶媒等が挙げられる。これらの製膜助剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0026】
本発明の水系感熱性粘着剤組成物は、従来より公知の各種の方法により調製できる。例えば、水系感熱性粘着剤組成物の調製法として、水系感熱性粘着剤組成物を構成する各成分を予め混合した後に水に分散させる方法、熱可塑性樹脂エマルジョン又は粘着付与剤エマルジョンに固体可塑剤を分散させた後にこれらのエマルジョンを混合する方法、固体可塑剤を水に分散させておき、この固体可塑剤水分散液に熱可塑性樹脂エマルジョン及び粘着付与剤エマルジョンを混合する方法等が挙げられる。固体可塑剤を上記エマルジョン又は水に分散させる方法としては、溶融させた固体可塑剤を分散させる方法、固体可塑剤を微粉末にしながら分散させる方法及び微粉末にした固体可塑剤を分散させる方法等を例示することができる。
【0027】
前記熱可塑性樹脂エマルジョンは、乳化重合により調製してもよく、また、乳化重合以外の方法により重合体を得た後、必要に応じて添加剤を用いることによりエマルジョン化して調製してもよい。例えば、水溶性の有機溶剤(例えば、イソプロピルアルコールなどのアルコールなど)の存在下で重合した重合体を含む有機溶液に添加剤(例えば、乳化剤、pH調整剤、酸など)を添加した後、水を添加してエマルジョン化し、その後、有機溶剤を除去することにより熱可塑性樹脂エマルジョンを調製することができる。
【0028】
水系感熱性粘着剤組成物中の固体可塑剤の平均粒子径は、好ましくは0.5〜20μm程度であり、さらに好ましくは1〜15μm程度である。平均粒子径が0.5μmより小さいと耐ブロッキング性が低下したり、粉砕に時間を要して生産性が低下するおそれがある。平均粒子径が20μmを超えると塗工面がざらつき、ラベルの品質が低下するおそれがある。
【0029】
本発明の感熱性粘着シートは、支持体の少なくとも一方の面に上記水系感熱性粘着剤組成物を塗工して、感熱粘着剤層(ディレードタック粘着剤層)を形成することにより製造することができる。
【0030】
本発明の感熱性粘着シートの支持体(基材)としては、例えば、塗工紙、プラスチックフィルム、木材、布、不織布、金属等を使用できる。プラスチックフィルムを構成するポリマーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリアルキレンナフタレート等)、ポリカーボネート、ポリアミド(ポリアミド6、ポリアミド6/6、ポリアミド6/10、ポリアミド6/12等)、ポリエステルアミド、ポリエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエステル等が挙げられ、さらにこれらの共重合体、ブレンド物、架橋物を用いてもよい。
【0031】
水系感熱性粘着剤組成物の塗工方法としては、例えば、ロールコーター、エヤナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、バーコーター、コンマコーター、グラビアコーター、シルクスクリーンコーター等を用いた方法を挙げることができる。感熱性粘着剤層はグラビヤ印刷機などを用いた印刷により形成することもできる。感熱性粘着剤層の塗工量は、例えば4〜20g/m2、好ましくは5〜15g/m2程度である。該粘着剤層の厚みが小さすぎると、ラベルとして使用する際に十分な接着機能が得られにくくなる。また、逆に粘着剤層の厚みが大きすぎると、粘着性を発現するのに時間がかかりやすくなる。
【0032】
本発明の感熱性粘着シートは、瓶、ペットボトルなどの容器等に貼付するラベルとして好適に使用される。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、70℃以上の融点の固体可塑剤と150〜180℃の高軟化点の粘着付与剤とを組み合わせるため、塗工後、より高い温度で加熱乾燥を行うことができるとともに、長期間保存する場合にもブロッキングが生じず、しかも従来並みの活性化温度で粘着性が発現する。また、基材面に対して強い接着強度を有し、しかも一段階の塗工により感熱性粘着剤層を設けることができる。
また、基材裏面にグラビア印刷等により印刷層を設ける際にも、より高い温度による迅速な加熱乾燥が可能となり、これまで不可能であった空冷式UV印刷機による印刷も可能となる。このため、感熱性粘着シートを用いたラベル等の生産効率が大幅に向上する。
【0034】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、固体可塑剤の平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製、LA−500)により測定し、メジアン径で記載した。
【0035】
実施例1
(固体可塑剤水分散液の調製)
固体可塑剤として、ビス(シス−3,3,5−トリメチルシクロヘキシル)フタレート(融点93℃)100重量部、分散剤としてアニオン系界面活性剤(ポリカルボン酸アンモニウム塩)15重量部及び水80重量部を混合し、ボールミルを用いて平均粒子径2.2μmになるまで粉砕することにより、ビス(シス−3,3,5−トリメチルシクロヘキシル)フタレートの水分散液を得た。
(感熱性粘着剤組成物の調製)
上記で調製したビス(シス−3,3,5−トリメチルシクロヘキシル)フタレートの水分散液中に、熱可塑性樹脂としてのアクリル系重合体(2−エチルヘキシルアクリレート−スチレン−アクリル酸共重合体、ガラス転移温度Tg:25℃)の水系エマルジョン、粘着付与剤としての軟化点が160℃であるロジン樹脂の水系分散液及び水を加えて均一になるまで撹拌し、固形分濃度50重量%の感熱性粘着剤組成物を得た。このときの配合比は、固体可塑剤[ビス(シス−3,3,5−トリメチルシクロヘキシル)フタレート]100重量部に対して熱可塑性樹脂17重量部、粘着付与剤26重量部であった。
(感熱性粘着シート)
上記で調製した感熱性粘着剤組成物を坪量102.3g/m2の片アート紙の原紙面(裏面)及び厚さ25μmのコロナ放電処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、単に「PETフイルム」ともいう)に、バーコーターを用いて乾燥後の塗工量が10g/m2となるように塗工し、40℃で2.5分間乾燥させて感熱性粘着シートを得た。
【0036】
実施例2
(固体可塑剤水分散液の調製)
実施例1と同様にして固体可塑剤水分散液を調製した。
(感熱性粘着剤組成物の調製)
熱可塑性樹脂の水系エマルジョンとして、アクリル系重合体(2−エチルヘキシルアクリレート−スチレン−アクリル酸共重合体、ガラス転移温度Tg:15℃)の水系エマルジョンを用いた以外は、実施例1と同様にして感熱性粘着剤組成物を調製した。
(感熱性粘着シートの作製)
実施例1と同様にして感熱性粘着シートを作製した。
【0037】
実施例3
(固体可塑剤水分散液の調製)
実施例1と同様にして固体可塑剤水分散液を調製した。
(感熱性粘着剤組成物の調製)
熱可塑性樹脂の水系エマルジョンとして、ゴム系樹脂であるSBR0589[日本合成ゴム株式会社製、ガラス転移温度Tg:8℃(実測値)]の水系エマルジョンを用いた以外は実施例1と同様にして感熱性粘着剤組成物を調製した。
(感熱性粘着シートの作製)
実施例1と同様にして感熱性粘着シートを作製した。
【0038】
比較例1
(固体可塑剤水分散液の調製)
実施例1と同様にして固体可塑剤水分散液を調製した。
(感熱性粘着剤組成物の調製)
粘着付与剤として軟化点が125℃のロジン樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱性粘着剤組成物を調製した。
(感熱性粘着シートの作製)
実施例1と同様にして感熱性粘着シートを作製した。
【0039】
比較例2
(固体可塑剤水分散液の調製)
実施例1と同様にして固体可塑剤水分散液を調製した。
(感熱性粘着剤組成物の調製)
粘着付与剤として軟化点が140℃のテルペン樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱性粘着剤組成物を調製した。
(感熱性粘着シートの作製)
実施例1と同様にして感熱性粘着シートを作製した。
【0040】
比較例3
(固体可塑剤水分散液の調製)
固体可塑剤として、ジシクロヘキシルフタレート(融点65℃)100重量部、分散剤としてアニオン系界面活性剤(ポリカルボン酸アンモニウム塩)15重量部、水80重量部を混合し、ボールミルを用いて平均粒子径2.2μmになるまで粉砕することにより、ジシクロヘキシルフタレートの水分散液を得た。
(感熱性粘着剤組成物の調製)
固体可塑剤水分散液として上記で調製したジシクロヘキシルフタレートの水分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱性粘着剤組成物を調製した。
(感熱性粘着シートの作製)
実施例1と同様にして感熱性粘着シートを作製した。
【0041】
性能試験
(接着強度)
PETフィルムに塗工して得られた感熱性粘着シートを幅25mm、長さ125mmの大きさに切断して試験片とした。この試験片を120℃で30秒間加熱して粘着性を発現させ、ガラス板[岩城硝子(株)製、Micro S1ide G1ass 白緑磨)上に置き、ゴムロールで2kgの荷重をかけて2往復することにより貼付した。これを23℃、50%RHの雰囲気下に1日放置した後、引張リ試験機(オリエンテック社製、テンシロンUCT−5T)を使用して、引張り速度300mm/分、剥離角度180°で接着力を測定した。その結果を表1に示した。
【0042】
(耐ブロッキング性)
片アート紙に塗工して得られた感熱性粘着シート4枚をアート紙の光沢面(表面)と感熱性粘着剤を塗工した面(裏面)とが接するように重ね、555g/cm2の荷重をかけて60℃の雰囲気下に24時間放置した後、以下の基準で耐ブロッキング性の評価を行った。その結果を表1に示した。
5:剥離抵抗なく剥離した。
4:剥離時に若干音を発しながら剥離した。
3:剥離時に連続的に音を発しながら剥離した。
2:剥離時に紙の繊維が一部粘着層に残った。
1:ブロッキングによリ周囲が紙破れした。
0:ブロッキングにより全面密着し、紙破れした。
【0043】
(実機耐熱性)
片アート紙に塗工して得られた感熱性粘着シートの塗工面を、アート紙の光沢面と重ね、空冷式UV印刷機で印刷試験を行い、印刷時に発生する熱によりブロッキングが起こるかどうか、以下の基準で評価を行った。その結果を表1に示した。
○:ブロッキングを起こしていない。
×:ブロッキングにより、重ねたアート紙と密着した。
【0044】
【表1】
表1より明らかなように、実施例の感熱性粘着シートは接着強度及び耐ブロッキング性の何れの点も優れている。また、実施例の感熱性粘着シートによれば、ディレードタック糊の分野ではこれまで不可能であった空冷式UV印刷機による印刷が可能となる。
Claims (4)
- 支持体の少なくとも片面に下記固体可塑剤、下記熱可塑性樹脂及び下記粘着付与剤を含み、且つ該固体可塑剤の含有量が熱可塑性樹脂100重量部に対して350〜800重量部、該粘着付与剤の含有量が熱可塑性樹脂100重量部に対して100〜500重量部である水系感熱性粘着剤組成物を塗工して形成された粘着剤層を有する空冷式UV印刷用感熱性粘着シート。
固体可塑剤:ビス(シス−3,3,5−トリメチルシクロヘキシル)フタレート
熱可塑性樹脂:ガラス転移温度(Tg)が−10〜25℃
粘着付与剤:軟化点が150〜180℃のロジン誘導体 - 請求項1に記載の空冷式UV印刷用感熱性粘着シートの製造方法であって、支持体の少なくとも片面に下記固体可塑剤、下記熱可塑性樹脂及び下記粘着付与剤を含み、且つ該固体可塑剤の含有量が熱可塑性樹脂100重量部に対して350〜800重量部、該粘着付与剤の含有量が熱可塑性樹脂100重量部に対して100〜500重量部である水系感熱性粘着剤組成物を塗工して粘着剤層を設ける空冷式UV印刷用感熱性粘着シートの製造方法。
固体可塑剤:ビス(シス−3,3,5−トリメチルシクロヘキシル)フタレート
熱可塑性樹脂:ガラス転移温度(Tg)が−10〜25℃
粘着付与剤:軟化点が150〜180℃のロジン誘導体 - 請求項1に記載の空冷式UV印刷用感熱性粘着シートを用いた空冷式UV印刷用ディレードタックラベル。
- 請求項3に記載の空冷式UV印刷用ディレードタックラベルの製造方法であって、下記固体可塑剤、下記熱可塑性樹脂及び下記粘着付与剤を含み、且つ該固体可塑剤の含有量が熱可塑性樹脂100重量部に対して350〜800重量部、該粘着付与剤の含有量が熱可塑性樹脂100重量部に対して100〜500重量部である水系感熱性粘着剤組成物を基材の裏面に塗工した後、乾燥のための加熱工程を経て製造することを特徴とする空冷式UV印刷用ディレードタックラベルの製造方法。
固体可塑剤:ビス(シス−3,3,5−トリメチルシクロヘキシル)フタレート
熱可塑性樹脂:ガラス転移温度(Tg)が−10〜25℃
粘着付与剤:軟化点が150〜180℃のロジン誘導体
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