以下、本発明のプリンタの一実施の形態について、図1から図10に基づいて説明する。なお、本実施の形態のプリンタ10は、インクジェット式のプリンタであるが、かかるインクジェット式プリンタは、インクを吐出して印刷可能な装置であれば、いかなる吐出方法を採用した装置でも良い。
なお、以下の説明においては、下方側とは、プリンタ10が設置される設置面1側を指し、上方側とは、設置面1から離間する側を指す。また、後述するキャリッジ60が移動する方向を主走査方向、主走査方向に直交する方向であって印刷対象物12が搬送される方向を副走査方向とする。また、印刷対象物12が供給される側を給紙側(後端側)、印刷対象物12が排出される側を排紙側(手前側)として説明する。
プリンタ10は、設置面1に接触するシャーシ11を具備し、このシャーシ11には、各種ユニットが搭載される。各種ユニットには、PFモータ25(搬送駆動源に対応)によって印刷対象物12を搬送する用紙搬送機構20、キャリッジモータ(CRモータ55)によってキャリッジ60を主走査方向に往復動させるキャリッジ機構50等があり、その他、図3および図4に示す制御部70が存在する。
ここで、用紙搬送機構20の詳細について、図2に基づいて説明する。図2に示す用紙搬送機構20は、給紙ローラ21と、ホッパ22と、分離パッド23とを備えている。
図1および図3に示すPFモータ25によって回動駆動される給紙ローラ21は、ローラ本体21aと、該ローラ本体21aの外周部に巻回されるゴム材21bとを有している。また、この給紙ローラ21の側面視は、略D形を為している。この給紙ローラ21のうち、ゴム材21bの円弧部分によって、印刷対象物12のうち、厚みが比較的薄い用紙を送り込むと共に、ゴム材21bの平坦部分によって用紙を通過させて、排紙側の排紙ローラ対40による搬送動作時に搬送負荷を与えない様になっている。
ホッパ22は、その上面に用紙を載置可能な板状体からなり、図示する様に傾斜姿勢に設けられている。また、ホッパ22は、上部に設けられた回動軸22aを中心に揺動可能に設けられている。そして、図示しないカム機構での揺動によって、下端部が給紙ローラ21に対して弾性的に圧接するか、または離間する。したがって、ホッパ22が給紙ローラ21に対して圧接方向に揺動すると、ホッパ22上に堆積された用紙の束は給紙ローラ21に圧接する。かかる圧接状態で給紙ローラ21が回動すると、堆積された用紙の最上位のものが排紙側へと送られる。
分離パッド23は、摩擦係数の高い部材からなり、給紙ローラ21と対向する位置に設けられている。給紙ローラ21が回動すると、ゴム材21bの円弧部分と分離パッド23とが圧接する。給紙ローラ21の回動により送られた最上位の用紙は、この圧接部分を通過して排紙側へと進むが、最上位の用紙に伴なって排紙側へと進もうとする次位以降の用紙は、かかる圧接部分の存在により、排紙側への進行が阻止される。それによって、用紙の重送が防止される。
また、用紙搬送機構20の排紙側には、板状体からなる紙案内24が略水平に設けられている。給紙ローラ21によって送り込まれた用紙の先端は、紙案内24に斜めに当接し、滑らかに排紙側に案内される。また、紙案内24よりも排紙側には、PF駆動ローラ31(駆動ローラに対応)と、PF従動ローラ32(従動ローラに対応)とからなる、PFローラ対30(ローラ対に対応)が設けられている。ここで、PF従動ローラ32は、後述するバネ34の付勢力(弾性力)の作用によって、常時PF駆動ローラ31に向かう付勢力を受けている。
そのため、ホッパ22側、または後述する開口部37を通過して搬送されてくる印刷対象物12は、PF駆動ローラ31と従動ローラ32との間で、当該印刷対象物12に対して所定の付勢力を与えながら挟持(ニップ)する。また、PF駆動ローラ31は、図1および図3に示すPFモータ25からの駆動力が伝達されて、回転する。そのため、PFモータ25が一定ピッチで1ステップ分だけ作動すると、PFローラ対30で挟持されている印刷対象物12は、当該1ステップ分だけ排紙側に搬送される。なお、プリンタ10には、PF駆動ローラ31からPFモータ25に向かう、不図示の増速ギヤ輪列が存在している。したがって、大きなトルクがPF駆動ローラ31側に作用しない限り、該PF駆動ローラ31側からPFモータ25を回転させるのが困難である。
ここで、PF従動ローラ32は、従動ローラホルダ33の排紙側に軸支されている。従動ローラホルダ33は、回動軸33aを中心に回動可能に設けられている。また、従動ローラホルダ33は、弾性部材としてのバネ34によって、PF従動ローラ32が常にPF駆動ローラ31に圧接する方向(図2の反時計方向)に回動付勢されている。なお、バネ34は、ねじりコイルバネであり、回動軸33aに挿通されている。しかしながら、図7においては、バネ34を、模式的に通常のコイルバネとして示している(バネ43も同様)。
また、PF駆動ローラ31は、主走査方向(図2の紙面表裏方向)に長い、例えば金属を材質とする軸体31a(図6参照)を具備している。そして、この軸体31aの表面に、高摩擦のグリップ体31bが、一体的に被着されている。また、PF従動ローラ32と従動ローラホルダ33とは、共にPF駆動ローラ31の軸方向に複数配設されている。
一方、PF従動ローラ32は、PF駆動ローラ31と接触する表面は、上述のグリップ体31bよりも低摩擦の部材(図示せず)から成り、この低摩擦の部材は、金属等を材質とする軸体31aの外周面を覆うように設けられている。
また、0桁側(図2の紙面表側)に位置する従動ローラホルダ33近傍には、印刷対象物12の通過を検出する、紙検出器35が設けられている。紙検出器35は、センサ本体部35bと検出レバー35aとを具備している。このうち、検出レバー35aは、その側面形状が略「く」の字形状となっていて、その中央付近の回動軸35cを中心に、回動可能に設けられている。また、センサ本体部35bは、検出レバー35aの上方に位置していて、発光部(図示せず)および該発光部からの光を受ける受光部(図示せず)を備えている。そして、検出レバー35aの回動軸35cから上側が、その回動動作により、発光部から受光部に向かう光の遮断および通過を行うように構成されている。
したがって、図2に示すように、印刷対象物12の通過に伴って、検出レバー35aが上方に押し上げられるように回動すると、検出レバー35aの上側がセンサ本体部35bから外れる。これによって、受光部が受光状態となって、印刷対象物12の先端の通過を検出する。また、印刷対象物12の後端が、検出レバー35aを通過すると、検出レバー35aが下方に戻る方向に回動する。それにより、受光部が非受光状態に切り替えられ、印刷対象物12の後端の通過を検出する。
なお、本実施の形態では、印刷対象物12のうち、後述するような切欠部123が存在するフォトスタンド紙120が用いられ、しかも、図7に示すように、フォトスタンド紙120と紙検出器35との間には、一定の間隔が存在している。そのため、紙検出器35を用いた紙検出を行えない状態となっている。
また、PF駆動ローラ31の排紙側には、プラテン36および後述する印刷ヘッド62が上下に対向する様に配設されている。プラテン36は、ガイド部材に対応し、排紙ローラ対40によって印刷ヘッド62の下へ搬送されてくる印刷対象物12を、下方側から支持する。
ここで、プラテン36の側断面図を、図4に示す。図4に示すように、プラテン36には、該プラテン36の基準平面36aから上方に向かい、リブ37a,37b,37c(摺動部に対応)が突出している。これらリブ37a,37b,37cは、副走査方向に連なって設けられており、印刷対象物12を良好に搬送可能としている。
また、リブ37aは、主走査方向において、他のリブ37aと一定間隔を有した状態で、間欠的に設けられており、隣り合うリブ37a,37aの間には、上述の基準平面36aが存在している。しかしながら、プラテン36は、フォトスタンド紙120等の規定の印刷対象物12に対して、縁まで印刷する、縁無し印刷に対応させる必要がある。そのため、基準平面36aのうち、規定の印刷対象物12の縁が差し掛かる部分には、副走査方向に沿っていると共に、下方に向かって凹んでいる、凹部(不図示)が設けられている。また、リブ37aとリブ37b、およびリブ37bとリブ37cとの間には、主走査方向に延びる凹部38a,38b(非摺動部に対応)が存在している。
また、プラテン36よりも排紙側には、上述のPFローラ対30と同様にローラ対に対応する、排紙ローラ対40が設けられている。排紙ローラ対40は、第2の駆動ローラに対応する排紙駆動ローラ41と、第2の従動ローラに対応する排紙従動ローラ42とを具備している。排紙駆動ローラ41は、上述のPF駆動ローラ31と同様に、PFモータ25からの駆動力が伝達されて、回転する。また、排紙従動ローラ42には、上述のPF従動ローラ32と同様に、バネ43によって、排紙従動ローラ42が常に排紙駆動ローラ41に圧接する方向に向かう付勢力が与えられる。
そして、印刷対象物12は、所定の付勢力が与えられながら、排紙ローラ対40で挟持(ニップ)される。その状態で、排紙駆動ローラ41が回動すると、図2の左向きに排出される。なお、排紙駆動ローラ41は、印刷対象物12の幅方向に延びる軸体に、ゴムローラが幅方向に間欠配置される構成を採用している。また、上述のPFモータ25は、その駆動力をPF駆動ローラ31と排紙駆動ローラ41とに分配させる構成を採用している。しかしながら、PFモータ25以外に、別途のモータを設け、そのモータによって排紙駆動ローラ41を駆動させる構成を採用しても良い。
また、上述したホッパ22の下方には、開口部37が設けられている。開口部37は、プリンタ10の後端側における開口部分であり、印刷対象物12を通過させるのに十分な、主走査方向における幅を有している。なお、開口部37を通過させる印刷対象物12の一例としては、後述するフォトスタンド紙120が挙げられる。
続いて、キャリッジ機構50について説明する。キャリッジ機構50は、図1および図3に示すように、キャリッジ60を具備している。また、キャリッジ機構50は、支持フレーム51と、この支持フレーム51によって支持されると共に、キャリッジ60を摺動可能に保持するキャリッジ軸54と、後述する遮蔽プレート部52の背面側に配設されているキャリッジモータ(CRモータ55)と、このCRモータ55に取り付けられている歯車プーリ56と、無端のベルト57と、歯車プーリ56との間にこの無端のベルト57を張設する従動プーリ58と、を備えている。
図1に示すように、支持フレーム51は、遮蔽プレート部52と、遮蔽プレート部52の両端側において、排紙側に向かい折曲された側方プレート部53と、から構成されている。一対の側方プレート部53には、シャーシ11の長手に沿うように、キャリッジ60のスライドをガイドするキャリッジ軸54が支持されている。また、遮蔽プレート部52の背面側には、歯車プーリ56を駆動させるCRモータ55が設けられている。
また、上述のプラテン36に対向して、キャリッジ60が設けられている。キャリッジ60には、図1に示すように、K(ブラック)、LM(ライトマゼンタ)、LC(ライトシアン)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各インクをそれぞれ収納している6つのカートリッジ61が、着脱可能に搭載される。なお、搭載されるカートリッジ61は、6色に限られるものではなく、4色、7色および8色等、何色分であっても良い。また、カートリッジ61に充填されるインクは、染料系インクには限られず、顔料系インク等、他の種類のインクを搭載しても良い。
図7に示すように、キャリッジ60の下部には、印刷ヘッド62が設けられている。印刷ヘッド62には、吐出要素としてのノズル63aが印刷対象物12の搬送方向に列状に配置され、それぞれの色のインクに対応したノズル列63を形成している。なお、本実施の形態では、ノズル列63は、例えば180個のノズル63aから構成されており、このうち、180番目のノズル63aが給紙側、1番目のノズル63aが排紙側に位置している。
また、キャリッジ60の下部に設けられ、各インクに対応づけられたノズル列63には、ノズル63a毎に、電歪素子の1つであって応答性に優れたピエゾ素子(不図示)が配置されている。ピエゾ素子は、ヘッド駆動手段に対応し、インク通路を形成する壁面に接する位置に設置されていて、このピエゾ素子の作動によって当該壁面が押されて、インク通路の端部にあるノズル63aからインク滴を吐出することが可能となっている。
なお、印刷ヘッド62は、ピエゾ素子を用いたピエゾ駆動方式に限られず、その他の方式を用いても良い。その他の方式としては、例えば、インクをヒータで加熱し、発生する泡の力を利用するヒータ方式、磁歪素子を用いる磁歪方式、静電気力を利用した静電方式、ミストを電界で制御するミスト方式等が、主な方式として挙げられる。
また、キャリッジ60の下方には、検出手段の一部を為すPWセンサ64が取り付けられている。PWセンサ64は、光学センサであり、光を印刷対象物12に対して投射する光源と、印刷対象物12からの反射光を対応する画像信号に変換するラインセンサ(または、CCD素子)とを具備している。PWセンサ64は、キャリッジ60の移動に伴って、主走査方向へ移動する。その際に、光を投受光することにより、印刷対象物12の存在の有無を判別可能としている。なお、180番目のノズル63aとPWセンサ64とは、主走査方向において同一の位置に配置されている。しかしながら、異なる位置に配置するようにしても良い。
次に、制御部70の構成について、図5等に基づいて説明する。制御部70は、バス70a、CPU71、ROM72、RAM73、キャラクタジェネレータ(CG)74、I/F専用回路75、DCユニット76、PFモータ駆動回路77、CRモータ駆動回路78、ヘッド駆動回路79、不揮発性メモリ80等を備えている。なお、制御部70は、これらの構成が協働することにより、制御手段、予測手段、検出手段の一部、基準点判断手段の一部、送り量判断手段として機能する。
また、CPU71およびDCユニット76には、上述の紙検出器35、PWセンサ64、後述するロータリエンコーダ81、キャリッジ40の移動量を検出する不図示のリニアエンコーダ、プリンタ10の電源をオン/オフする電源SW等)の各出力信号が入力される。
CPU71は、ROM72や不揮発性メモリ80等に記憶されているプリンタ10の制御プログラムを実行するための演算処理や、その他の必要な演算処理を行う。
また、ROM72は、情報記憶手段に対応させることができ、ROM72には、プリンタ10を制御するための制御プログラムおよび処理に必要なデータ等が記憶されている。本実施の形態では、ROM72には、印刷対象物12の種類に応じた、駆動制御プログラム等が記憶されている。この駆動制御プログラムは、後述する図9に示すフローチャートに対応した、PWセンサ64の検出に基づくPFモータ25の制御駆動を可能としている。また、I/F専用回路75は、パラレルインタフェース回路を内蔵しており、コネクタ91を介してコンピュータ90から供給される印刷信号を受け取ることができる。
RAM73は、CPU71が実行途中のプログラムあるいは、演算途中のデータ等を一時的に格納するメモリである。また、不揮発性メモリ80は、インクジェットプリンタ10の電源を切った後も、保持しておくことが必要な各種データを記憶するためのメモリである。なお、不揮発性メモリ80を、情報記憶手段に対応させることもできる。
また、DCユニット76は、DCモータであるPFモータ25、CRモータ55の速度制御を行うための制御回路である。DCユニット76は、CPU71から送られてくる制御命令、後述するロータリエンコーダ81の出力信号、および紙検出器35の出力信号に基づいて、PFモータ25およびCRモータ55の速度制御を行うための各種演算を行い、その演算結果に基づいて、PFモータ駆動回路77およびCRモータ駆動回路78へ、モータ制御信号を送信する。
ここで、図6に示すように、ロータリエンコーダ81は、多数のスリット82を有する円盤状スケール83と、スリット82に対して発光する不図示の発光部と、スリット82を通過した光を受光する不図示の受光部とを備える検出部84を有している。このロータリエンコーダ81は、PF駆動ローラ31へ駆動力を伝達する、歯車31a(図3参照)に取り付けられていて、PFモータ25の駆動によって回転駆動される。そして、PFモータ25の駆動により、円盤状スケール83が回転すると、検出部84は、スリット82を通過する光によって形成される立ち上がり信号と立ち下り信号とを出力する。そして、DCユニット76は、立ち上がり信号および立ち下がり信号を受信することにより、PF駆動ローラ31の回転量(回転速度)を算出することが可能となり、該PFモータ25の駆動制御を行うことができる。
なお、ロータリエンコーダ81の分解能の一例としては、印刷対象物12の搬送量に換算すると、1/5760inchとするものがある。この場合、印刷対象物12の搬送量の最小単位は、1/5760inchとなる。
また、PFモータ駆動回路77は、DCユニット76からのモータ制御信号に基づいて、PFモータ25を駆動制御する。このPFモータ25は、印刷対象物12を搬送するための動力源となる。また、CRモータ駆動回路78は、DCユニット76からのモータ制御信号に基づいて、CRモータ55を制御駆動する。なお、PFモータ25およびCRモータ55は、停止状態において、位置保持することを可能としている。また、ヘッド駆動回路79は、CPU71からの駆動制御を行う信号に基づいて、印刷ヘッド62に存在するピエゾ素子を制御駆動する。
なお、上述の制御部70における各構成は、信号線であるバス70aによって接続されている。かかるバス70aにより、CPU71、ROM72、RAM73、CG74、I/F専用回路75、不揮発性メモリ80等は相互に接続され、これらの間でデータの授受を可能としている。
また、印刷対象物12の1種である、フォトスタンド紙120の形状を、図7に示す。フォトスタンド紙120は、例えば1.9mm程度の厚さを有する、厚紙部材である。このフォトスタンド紙120には、印刷部121と、この印刷部121に隣接するボード部122とが設けられている。ボード部122は、印刷部121に対して、その一側辺が揃えられているものの、印刷部121よりも幅が狭く設けられている。そのため、フォトスタンド紙120には、1の対角線の上下両端側に、略長方形状の切欠部123が設けられている。
なお、印刷部121のうち、ボード部122との境界線上にあると共に、切欠部123に露出している部分を、側縁部分124とする。また、切欠部123のうち、排紙側に位置する切欠部123は、第1の切欠部に対応し(以下、必要に応じて切欠部123aとする)、給紙側に対応する切欠部123は、第2の切欠部に対応する(以下、必要に応じて切欠部123bとする)。
フォトスタンド紙120は、2つのボール紙が貼合わされた厚紙部材であり、裏面のボール紙には、切り起こしにより脚部を形成するための切取線が設けられている。フォトスタンド紙120は、印刷部121への印刷終了の後に、ボード部122を切り取り、さらに脚部を切り越こすことができる。それにより、フォトスタンドとして、立脚可能となっている。
以上のような構成を用いて、プリンタ10を作動させる場合の制御の詳細について、図9に基づいて説明する。
まず、ユーザが、フォトスタンド紙120をセットして、印刷開始命令を送ると、フォトスタンド紙120の給紙動作が開始される(ステップS10:搬送工程の一部に対応)。この場合、ユーザは、例えば上述の開口部37から、フォトスタンド紙120を差し込む。すると、PFモータ25の送り動作により、開口部37にフォトスタンド紙120が差し掛かり、続いて排出側の先端が、PFローラ対30に挟持される。そして、PFモータ25によりPF駆動ローラ31が駆動され、それによって排紙側に送られる。
また、かかるPFモータ25による送り動作と共に、CRモータ55も同時に駆動される。そして、キャリッジ60が主走査方向に駆動され、PWセンサ64によるスキャン動作が実行される(図7参照)。このスキャン動作により、フォトスタンド紙120の有無の判別、およびフォトスタンド紙120の形状の認識が行われる。この場合、PWセンサ64は、フォトスタンド紙120のうち、排紙側に位置するボード部122に対するスキャン動作を行う。すると、同時に切欠部123aも認識されるが、この段階では、本当に切欠部123a(ボード部122)なのか否か、認識することができない。
続いて、PWセンサ64により、スキャン動作を実行する(ステップS11)。すなわち、PFモータ25の駆動により、フォトスタンド紙120が順次送られると、PWセンサ64とボード部122とが対向する状態から、印刷部121との境界部分に移行する(図7、図10参照)。同時に、PWセンサ64は、CRモータ55の駆動により主走査方向に移動し、スキャン動作を行う(検出工程に対応)。すると、PWセンサ64は、ボード部122と印刷部121との幅の違いに起因する検出信号を、CPU71に送信する。CPU71は、PWセンサ64が側縁部分124に差し掛かり、給紙が終了したことを認識する。つまり、給紙が完了し、印刷部121に対する印刷が行える状態となる。なお、CPU71が側縁部分124に差し掛かって幅の違いを認識した場合、この認識地点が送りの基準点となる。しかしながら、フォトスタンド紙120の手前側の端部を、基準点としても良い。また、側縁部分124に差し掛かって幅の違いを認識したと判断される場合、この判断が基準点判断工程に対応する。
次に、ステップS12では、CPU71は、給紙完了位置を、PFモータ25の制御駆動における送り開始位置に定義する。すなわち、フォトスタンド紙120においては、紙検出器35による用紙検出が行えないため、CPU71は、給紙した直後から、通常の用紙とは異なるフォトスタンド紙120であることを認識し、紙検出器35での非検出制御に切り替える。この場合、上述のPWセンサ64による給紙完了位置の検出に基づいて、ここからフォトスタンド紙120の搬送量をカウントする。なお、本実施の形態では、給紙完了位置は、印刷ヘッド62の180番目のノズル63a(最も給紙側のノズル63a)が、印刷部121とボード部122との境界線上に略差し掛かる位置としている。しかし、給紙完了位置は、これには限られず、種々変更可能である。
なお、上述の非検出制御は、図7における通常の制御領域(オーバーライド領域(紙検出器35における紙無し領域)における制御ともいう。)に対応する。
次に、この給紙完了位置から、フォトスタンド紙120を印刷開始位置まで搬送する(ステップS13;搬送工程の一部に対応)。ここで、印刷開始位置とは、印刷ヘッド62における1番目のノズル63aが、上述の境界線上に略差し掛かる位置としている。この場合のPFモータ25の駆動制御も、搬送量をカウントすることにより行われる。また、ステップS14において、PWセンサ64における、用紙幅の判定が行われる。この判定において、用紙幅が、規定のフォトスタンド紙120の用紙幅と一致しない場合には、ステップS15に進行する。また、用紙幅が規定のフォトスタンド紙120の用紙幅と一致する場合には、次のステップS15に進行する。
続いて、ステップS15を実行する。すなわち、ステップS14においてYesと判断された場合、またはステップS21またはステップS24のいずれかを経た場合、CPU71は、印刷データがRAM73に存在するか否かを判断する。この判断において、印刷データが存在する、と判断される場合には、次のステップS16に進行する。また、印刷データがないと判断される場合には、ステップS25に進行する。
次に、ステップS15において印刷データが存在すると判断された場合、印刷動作を開始する(ステップS16)。この印刷動作は、CRモータ55の駆動により、キャリッジ60を主走査方向に移動させると共に、印刷ヘッド62を制御駆動することにより行う。なお、PFモータ25の駆動制御は、後述するステップS19、またはステップS21のいずれかとなる。
ステップS16の後に、DCユニット76は、PWセンサ64を用いたフォトスタンド紙120の用紙長さの判定を行う(ステップS17)。この判定においては、例えば蹴飛ばし制御領域に到達する前に、切欠部123aにPWセンサ64が差し掛かる場合、または蹴飛ばし制御領域を過ぎても切欠部123aが検出されない場合には、用紙長さが不適切な状態となる。この場合、用紙長さが、規定のフォトスタンド紙120と不一致であると判断され、後述するステップS23に進行する。
ステップS17において、Yesと判断された場合、DCユニット76は、フォトスタンド紙120の送りが、切替点に到達したか否か(蹴飛ばし制御範囲に到達したか否か)の判断を行う(ステップS18)。この判断は、PFモータ25による搬送量が、蹴飛ばし制御領域に到達したか否かにより、判断する。すなわち、上述のロータリエンコーダ81を用いたPF駆動ローラ31の回転量(回転速度)の算出により、フォトスタンド紙120の搬送量が、規定の蹴飛ばし制御領域に到達するだけの搬送量に到達したか否かを判断する。この判断において、フォトスタンド紙120の送りが、蹴飛ばし制御範囲に到達したと判断される場合(Yesの場合)には、次のステップS19に進行する。また、蹴飛ばし制御駆動範囲に到達していないと判断される場合(Noの場合)には、後述するステップS20に進行する。
ステップS18において、蹴飛ばし制御範囲に到達したと判断される場合には、DCユニット76は、PFモータ25に対して、回転数を遅くして、PFモータ25を1ステップ分(1行分)だけ駆動させる制御を行う(ステップS19;搬送工程の一部に対応)。すなわち、印加電圧を、印刷時に比べて低くし、電流値を印刷時に比べて減算する制御(ホールド電流制御)を行う。
この蹴飛ばし制御においては、側縁部分124に差し掛かると、バネ34によりフォトスタンド紙120が排紙方向に向かう蹴飛ばし力Fが付与される(図8参照)。このため、PFモータ25には、かかる蹴飛ばし力Fに抗することが可能となる電流値を流す制御(ホールド電流制御)が為される。ここで、プリンタ10には、上述の増速ギヤ輪列が存在しており、大きなトルクがPF駆動ローラ31側に作用しない限り、該PF駆動ローラ31側からPFモータ25を回転させるのが困難である。したがって、電流値を減少させる制御を行うだけ、または、PFモータ25に対して、印刷対象物12を若干給紙側に向かわせる駆動力を与えるだけで、蹴飛ばし力Fに抗させることができる。なお、蹴飛ばし制御を、印刷ヘッド62において、1行分だけ駆動させると、続いて後述するステップS21に進行する。
また、上述のステップS18において、蹴飛ばし制御範囲に到達していないと判断される場合(Noの場合)、通常の印字駆動制御を行い、PFモータ25を1ステップ分(1行分)だけ駆動させる(ステップS20)。この通常の印字駆動制御においては、PFモータ25に対して、回転数を通常の印刷時の回転数(すなわち、ステップS19よりも高い回転数)にする。この場合、電流値は、上述のステップS19における場合より大きくする。このステップS20における印刷駆動制御を1ステップ分(1行分)だけ実行した後に、次のステップS21に進行する。
なお、上述した、蹴飛ばし制御領域に対応する駆動量、および通常のトルクでの駆動量は、予めROM72に記憶されている。また、上述したように、蹴飛ばし制御領域を通過した場合も、通常のトルクでの制御領域となるが、通過したか否かの判断は、ROM72に予め記憶されている、駆動量に到達したか否かで行われる。この駆動量は、PFローラ対30が第2の切替点を通過したと判断されるまでの間の駆動量である。
ステップS19およびステップS20を経過した後に、続いて、フォトスタンド紙120が、規定の印刷終点位置に到達しているか否かが判断される(ステップS21)。ここで、本実施の形態では、印刷終点位置は、印刷部121の縁無し印刷に対応させている。すなわち、図10に示すように、180番目からN番目までのノズル63aが、印刷部121の上部に差し掛からず、ボード部122と切欠部123bに差し掛かる部位である。
この部位においては、180番目のノズル63aおよびその近傍のノズル63aは、縁無し印刷の実行時においては、印刷部121から外れて、プラテン36にもインク滴を吐出する。しかしながら、プラテン36には、凹部38aが存在していていて、縁無し印刷実行時には、キャリッジ60が主走査方向に移動すると、180番目のノズル63aおよびその近傍のノズル63aは、凹部38aと対向可能となる。そのため、印刷部121からはみ出したインク滴は、凹部63aに落とし込まれ、リブ37a〜37c等の他の部分を汚さずに済む。
上述のステップS21において、フォトスタンド紙120の送りが、規定の印刷終点位置に差し掛かったと判断される場合(Yesの場合)、ピエゾ素子の駆動を停止させ、インク滴を吐出させる動作を停止させる(ステップS22)。ここで、図10に示すように、フォトスタンド紙120の送りにより、ノズル列63が、側縁部分124との間の間隔が距離Sである、直線Pに差し掛かる場合を考える。この場合、縁無し印刷を行うためには、該180番目のノズル63aが、直線Pを超える前の段階まで、インク滴を吐出するようにすれば良い。すなわち、180番目のノズル63aが距離Sの範囲内にある場合、ピエゾ素子の駆動を継続すれば良い。
しかしながら、180番目のノズル63aが直線Pを超えた後に、さらにフォトスタンド紙120が送られると、図4の二点鎖線に示すように、プラテン36のリブ37b(図4参照)が露出する。この状態で、ノズル63aからインク滴を吐出させると、リブ37bにインク滴が付着してしまい、次にリブ37b上を送られる印刷対象物12の裏面の汚れの原因となる。そこで、180番目のノズル63aが直線Pを超えるだけの搬送量に到達した場合、CPU71は、ヘッド駆動回路79を介して、ピエゾ素子を駆動を停止させ、インク滴の吐出を終了させる(ステップS22)。この場合、印刷データが残存していても、該残存する印刷データの印刷は、カットされる。
なお、図10における直線Pは、側縁部分124から距離Sを隔てて、該側縁部分124に対して平行を為しており、フォトスタンド紙120の送りが進行しても、距離Sは固定的である。また、上述の印刷終点位置までの駆動は、基準点を基準とするが、かかる基準点から印刷終点位置までの搬送量は、予めROM72等の情報記憶手段に記憶されている。
また、上述のステップS21において、フォトスタンド紙120が規定の印刷終点位置に到達していない判断される場合(Noと判断される場合)、上述したステップS15に戻り、上述したのと同様のステップを繰り返す。
上述のステップS14、ステップS15、ステップS17において、それぞれNoと判断された場合、またはステップS22を経過した場合、DCユニット76は、PFモータ25に向けて、フォトスタンド紙120を排紙させる制御を行う(ステップS23)。この場合、PWセンサ64における検出動作を停止させ、所定の回転速度にてPFモータ25を駆動させる。
以上のような各ステップを経ると、切欠部123が存在するフォトスタンド紙120の印刷部121に対して、いわゆる縁無し印刷を実行した場合でも、プラテン36のリブ37bに対して、インク滴を吐出させることが防止できる。それにより、リブ37bにインク滴が付着せずに済み、次回に印刷が実行される印刷対象物12の裏面を汚さずに済む。
また、紙検出器35がフォトスタンド紙120の上方を通過しない場合、フォトスタンド紙120の後端位置が検出できない。また、仮に紙検出器35がフォトスタンド紙120の上方を通過する場合でも、切欠部123bの存在により、フォトスタンド紙120の後端位置が検出できない。しかしながら、本実施の形態では、フォトスタンド紙120を送りながらPWセンサ64を主走査方向に移動させて、切欠部123や側縁部分124の位置を認識し、これを基準点としている。しかも、予めROM72等の情報記憶手段に、直線Pまでの搬送量を記憶させている。このため、PWセンサ64による検出のみで、縁なし印刷を確実に実行させることができ、紙検出器35が使用できないことにより、リブ37b等にインク滴を付着させてしまう、といった不具合を解消することができる。
また、本実施の形態のPFモータ25の制御においては、PFローラ対30が蹴飛ばし制御領域に差し掛かると、PFモータ25の回転が低速になる。ここで、側縁部分124の頂点をPF駆動ローラ31が排紙方向に向かって超えた場合、フォトスタンド紙120の側縁部分124に、排紙方向に向かう蹴飛ばし力Fが付与され、フォトスタンド紙120は、図7に示すように、矢示Aの向きに回動しようとする。
しかしながら、プリンタ10には、上述の増速ギヤ輪列が存在していると共に、PFモータ25が蹴飛ばし制御領域に差し掛かると、PFモータ25の回転が低速になるように、駆動制御(ホールド電流制御)されている。このため、PF駆動ローラ31は、蹴飛ばし力Fに抗して、回転が早まるのを抑えることができる。そのため、フォトスタンド紙120は、図7に示すような、矢示Aの向きに回動するのを抑えることができる。
また、上述のように、フォトスタンド紙120の搬送誤差補正を行えると共に、フォトスタンド紙120の矢示Aの向きへの回転を抑えることができるため、印刷部121における印刷画質が悪化するのを防ぐことができる。すなわち、搬送誤差が大きい場合には、印刷部位に白い筋が入る等の不具合が生じると共に、図7の矢示Aの向きの回転が生じる場合には、その回転によって、側縁部分124が存在する側に向かうにつれて、送りピッチが大きくなり、その回転時に印刷が為されると、側縁部分124に向かうにつれて幅広となる筋が形成される。また、該側縁部分124を乗り越えた後に印刷される部分は、乗り越える前に印刷された部分と比較して、若干傾いた状態となる。
しかしながら、上述のようにして、搬送誤差の補正を行うと共に、フォトスタンド紙120の矢示Aの向きの回転を抑えることができるため、フォトスタンド紙120を用いた場合でも、印刷画質を良好にすることが可能となる。
また、PWセンサ64によって、フォトスタンド紙120が、幅方向に存在するか否かが検出される。そのため、紙検出器35によりフォトスタンド紙120が存在しない、と判断されるのが防止される。それにより、ギャップ調整機構が誤作動して低下した状態で、キャリッジ60が移動し、印刷ヘッド62とフォトスタンド紙120が衝突するのを防ぐことができる。
また、PWセンサ64は、キャリッジ60に設けられているため、キャリッジ60の移動に伴って、フォトスタンド紙120の幅を検出することができる。さらに、PFモータ25は、DCモータであるため、駆動トルクを簡単に増大/減算させることができる。また、側縁部分124を基準点とし、駆動が開始される。そのため、切欠部123aをフォトスタンド紙120の送りの基準とすることができ、切替点までの駆動制御を一層確実に行うことが可能となる。
さらに、PFローラ対30が第2の切替点を超えた場合には、PFモータ25の駆動速度が増大させることができる。そのため、排出までの時間を短縮することができる。
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
上述の実施の形態では、一の対角線の両端に、切欠部123があるフォトスタンド紙120が印刷対象物である場合について説明している。しかしながら、切欠部123は、1つのみ設けられている構成でも良く、また3つ以上設けられている構成でも良い。また、切欠部の形状は、略四角形には限られず、円形等、種々の形状であっても良い。また、フォトスタンド紙120以外の、切欠部が存在する印刷対象物に、本発明を適用しても良い。また、ガイド部材としては、プラテン62以外の、印刷対照物12の送りを支えるものを用いても良い。
また、上述の実施の形態では、フォトスタンド紙120に対して縁なし印刷を行う場合に対応した搬送量を、ROM72に記憶させている。しかしながら、フォトスタンド紙120に対する印刷は、縁なし印刷には限られず、例えばフォトスタンド紙120においては、印刷部121よりも印刷領域が小さな、通常印刷を行うようにしても良い。また、フォトスタンド紙120においては、ボード部122に印刷を行うようにしても良い。なお、ボード部122に印刷を行う場合、印刷部121とボード部122とで、主走査方向の移動量の切り替えを行うようにすれば良い。
10…プリンタ、12…印刷対象物、25…PFモータ(搬送駆動源に対応)、30…PFローラ対(ローラ対に対応)、31…PF駆動ローラ、32…PF従動ローラ、34…バネ、40…排紙ローラ対(ローラ対に対応)、41…排紙駆動ローラ、42…排紙従動ローラ、50…キャリッジ機構、55…CRモータ、60…キャリッジ、61…カートリッジ、62…印刷ヘッド、63…ノズル列、63a…ノズル(吐出要素に対応)、64…PWセンサ(検出手段の一部に対応)、70…制御部(制御手段、検出手段の一部、予測手段、基準点判断手段、送り量判断手段に対応)、72…ROM(情報記憶手段に対応)、76…DCユニット、80…不揮発性メモリ、81…ロータリエンコーダ