JP4573700B2 - サクション駆動ローラ及び溶液製膜方法 - Google Patents

サクション駆動ローラ及び溶液製膜方法 Download PDF

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Description

本発明は、液晶表示装置などに使用されるポリマーフイルムをつくる溶液製膜方法及びこの溶液製膜方法に利用可能なサクション駆動ローラに関する。
液晶表示装置は、低電圧・低消費電力で小型化・薄膜化が可能であるなどの様々な利点から、パーソナルコンピュータや携帯機器のモニター、テレビ用途などに幅広く利用されている。一般に液晶表示装置は、液晶セル、光学補償シート、偏光子から構成されているが、さらに、このような光学材料の技術分野では、偏光板の保護や、画像着色の解消や、視野角の拡大などの用途に応じて様々なポリマーフイルム製品が使用されている。
これらのポリマーフイルムにおいて、大きな複屈折率や高いレターデーション値を実現し、また偏光板の保護膜になることができるなどの利点を有することから、安価で薄膜な液晶表示装置の提供が可能なポリマーフイルムとして、セルロースアシレートフイルムがある。
セルロースアシレートフイルムの製造方法としては、ポリマーを加熱して溶融状にして製膜する溶融製膜方法や、溶媒とポリマーなどを含むドープを調整して製膜する溶液製膜方法が知られている。溶液製膜方法は、流延ダイを使用してドープを支持体上に流延し、流延膜を形成させ、流延膜が自己支持性を有するものとなった後、これを支持体より剥ぎ取り、乾燥処理によりそのフイルムに含まれる溶媒を蒸発させてから巻き取ることにより、ポリマーフイルムを製造する。
上記の溶液製膜方法は、支持体から剥ぎ取られたポリマーフイルムを巻き取るまでの間に、乾燥工程や側端部の切除除去工程などの様々な工程が備えられている。これらの各工程内、あるいは各工程間では、ポリマーフイルムは主にローラにより支持または搬送されている。これらのローラには、駆動ローラと非駆動ローラとがあり、非駆動ローラは、主に、ポリマーフイルムの搬送路を決定するとともに搬送安定性を向上させるために使用される。
一方、駆動ローラは、ポリマーフイルムに駆動を伝達し、これを下流へと搬送するために使用されており、通常はサクションローラが使用されている。製膜におけるフイルム搬送では、流延工程や剥ぎ取り工程、乾燥工程、巻き取り工程などの各工程内あるいは各工程間で、搬送張力の分離が必要となる場合があり、その際には、サクションローラにより駆動力をフイルムに与えることで搬送張力の分離を図っている。このサクションローラは、それ自体にポリマーフイルムを吸着させて搬送するため、ローラ周面に多数の空気吸引孔を有している。
サクションローラを使用した場合、非駆動のローラに比べて、フイルムには方向性が特定できない複雑な力が作用するため、フイルムは変形しやすい。また、フイルムに掛かる搬送前後の張力差によってもフイルムは変形する。さらに、サクションローラの周面上には多数の空気吸引孔が形成されており、この吸引孔の孔縁にポリマーフイルムが接触した状態でフイルムがスリップしたり収縮や変形が発生したりすると、フイルムに微細なキズが発生する。
最近の液晶表示装置の高輝度化に伴い、保護膜などとして使用されているフイルムのキズは微小であっても見えやすくなる。また偏光板の保護フイルムとして使用される場合、偏光板が使用される液晶表示装置はバックライトを有しており、フイルムを透過して画面を見る構造上、フイルムにキズがある場合、キズが乱反射などを起こすことから、フイルム上のキズはたとえ微小であっても、表示装置として品質上、大きな問題となってしまう。
そこで、セルロースアシレートフイルムのキズの発生を抑制する方法として、フイルムと駆動ローラの温度差を小さくしてフイルムを製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、サクションローラの孔径を小さくしてフイルムを製造する方法などが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2002−194107号公報 特開2003−094467号公報
しかしながら、先に示した特許文献1の方法は、フイルムと駆動ローラとの温度差を小さくすることで、ある程度キズを付きにくくすることができると考えられるが、フイルムを乾燥させるためには、含有溶媒の蒸発を促すためできる限り高温での乾燥が好ましいため、温度差を小さくすると乾燥温度が制約されてしまい、効率よく乾燥を行うことができない。また、特許文献2の方法は、サクションローラの吸引孔を小さくすることでフイルムの変形を抑制して、使用開始からの初期の段階ではキズの発生を抑制することができるが、サクションローラを使用している間に、ローラ自身にキズが生じた場合、結果的にフイルムにもキズが発生する。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、セルロースアシレートフイルムの製造方法として、フイルムにキズの付きにくい溶液製膜方法及びこの溶液製膜方法に利用可能なサクション駆動ローラを提供しようとするものである。
発明者らは上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ドープを支持体の上に流延して流延膜を形成し、この流延膜に自己支持性を持たせた後、駆動ローラなどを使用して搬送しながら乾燥してセルロースアセテートフイルムを作製する溶液製膜方法において、所定の駆動ローラを使用することにより、フイルムにキズを付きにくくすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、ポリマーフィルムの乾燥室内にてパスローラと共に並べられ、前記ポリマーフィルムを前記パスローラに巻きかけて搬送するサクション駆動ローラにおいて、周面に円形の吸引孔を有し、前記吸引孔の面取り量が前記吸引孔の径の2%以上20%以下であることを特徴とする。
前記周面の表面硬度が、ビッカ−ス硬度で500以上2000以下であることが好ましい。また、前記周面の表面粗さRyが、0.3μm以上1.0μm以下であることが好ましい。更に、前記吸引孔の径が1mm以上6mm以下であることが好ましい。加えて、前記サクションローラの表面温度がこのサクションローラに接触する直前の前記ポリマーフィルム温度よりも高い状態を維持する温調装置を有することが好ましい。
本発明の溶液製膜方法は、ポリマー及び溶媒を含む膜を支持体上に形成する膜形成工程と、前記膜を前記ポリマーフィルムとして前記支持体から剥ぎ取る剥ぎ取り工程と、上記のサクション駆動ローラを用いて、前記ポリマーフィルムを搬送しながら、前記ポリマーフィルムから前記溶媒を蒸発させる乾燥工程とを有することを特徴とする。
前記のサクションローラを使用する際には、その周面温度を制御することが好ましく、そのため、1基のサクションローラに対して少なくとも1つの温度調節設備を有していることが好ましく、また、サクションローラの周面温度を、サクションローラに接触する直前のフイルム温度よりも高くしながら製膜することが好ましい。
本発明の溶液製膜方法により、擦りキズが付きにくいセルロースアシレートフイルムを製造することができる。また、この溶液製膜方法により得られるフイルムは、偏光板の保護フイルムとして使用することができるなどの良好な光学特性を有しており、本発明により得られるフイルムを構成要素とすることにより、光学特性に優れた偏光板ならびに液晶表示装置を得ることができる。
本発明に使用されるセルロースアシレートは、セルロースの水酸基への置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するセルロースアシレートを使用することが好ましい。
(I)2.5≦A+B≦3.0
(II)0≦A≦3.0
(III)0≦B≦2.9
但し、式中A及びBは、セルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換基を表わし、Aはアセチル基の置換度、また、Bは炭素原子数3以上22以下のアシル基の置換度である。なお、セルロースアシレートの90重量%以上が0.1mm以上4mm以下の粒子を使用することが好ましい。
セルロースを構成するβ−1、4結合しているグルコース単位は、2位、3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位及び6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1)を意味する。
全アシル置換度、すなわち、DS2+DS3+DS6は2.00以上3.00以下が好ましく、より好ましくは2.22以上2.90以下であり、特に好ましくは2.40〜2.82である。また、D6S/(DS2+DS3+DS6)は0.32以上が好ましく、より好ましくは0.322以上、特に好ましくは0.324以上0.340以下である。ここで、DS2はグルコース単位の2位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「2位のアシル置換度」とも言う)であり、DS3は3位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「3位のアシル置換度」とも言う)であり、DS6は6位の水酸基のアシル基による置換度である(以下、「6位のアシル置換度」とも言う)。
本発明のセルロースアシレートに使用されるアシル基は1種類だけでもよいし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていてもよい。2種類以上のアシル基を使用するときは、そのひとつがアセチル基であることが好ましい。2位、3位及び6位の水酸基のアセチル基による置換度の総和をDSAとし、2位、3位及び6位の水酸基のアセチル基以外のアシル基による置換度の総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は、より好ましくは2.2以上2.86以下であり、特に好ましくは2.40以上2.80以下である。また、DSBは1.50以上であることが好ましく、特に好ましくは1.7以上である。さらにDSBは、その28%以上が6位水酸基の置換基であるが、より好ましくは30%以上が6位水酸基の置換基であり、31%がさらに好ましく、特には32%以上が6位水酸基の置換基であることも好ましい。さらに、セルロースアシレートの6位のDSA+DSBの値が0.75以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.80以上であり特に好ましくは0.85以上であるセルロースアシレートを使用することである。これらのセルロースアシレートにより、溶解性の好ましいドープを作製することができる。特に、非塩素系有機溶媒において良好な溶液を作製することができる。さらに、低粘度かつ濾過性のよい溶液の作製をすることができる。
本発明のセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリル基でもよく、特に限定されない。それらは、例えば、セルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましい例としては、プロピオニル基,ブタノイル基,ケプタノイル基,ヘキサノイル基,オクタノイル基,デカノイル基,ドデカノイル基,トリデカノイル基,テトラデカノイル基,ヘキサデカノイル基,オクタデカノイル基,iso−ブタノイル基,t−ブタノイル基,シクロヘキサンカルボニル基,オレオイル基,ベンゾイル基,ナフチルカルボニル基,シンナモイル基などが挙げられる。これらの中でも、プロピオニル基,ブタノイル基,ドデカノイル基,オクタデカノイル基,t−ブタノイル基,オレオイル基,ベンゾイル基,ナフチルカルボニル基,シンナモイル基などがより好ましく、特に好ましくはプロピオニル基,ブタノイル基である。
ドープを調製する溶媒としては、芳香族炭化水素(例えばベンゼン、トルエンなど),ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン,クロロホルム,クロロベンゼンなど),アルコール(例えば、メタノール,エタノール,n−プロパノール,n−ブタノール,ジエチレングリコールなど),ケトン(例えば、アセトン,メチルエチルケトンなど),エステル(例えば、酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸プロピルなど)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン,メチルセロソルブなど)などが挙げられる。
上記のハロゲン化炭化水素においては、炭素原子数1以上7以下のものが好ましく使用され、ジクロロメタンが最も好ましく使用される。セルロースアシレートの溶解性、支持体からの剥ぎ取り性、フイルムの機械強度など、光学特性等の物性の観点から、ジクロロメタンの他に炭素原子数1以上5以下のアルコールを1種、ないし数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶媒全体に対し2重量%以上25重量%以下が好ましく、5重量%以上20重量%以下がより好ましい。アルコールの具体例としては、メタノール,エタノール,n−プロパノール,イソプロパノール,n−ブタノールなどが挙げられるが、メタノール,エタノール,n−ブタノール、あるいはこれらの混合物が好ましく使用される。
最近、環境に対する影響を最小限に抑えるため、ジクロロメタンを使用しない溶媒組成も提案されている。この目的に対しては、炭素原子数が4以上12以下のエーテル、炭素原子数が3以上12以下のケトン,炭素原子数が3以上12以下のエステルが好ましく、これらを適宜混合して使用する。これらのエーテル、ケトン及びエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトン及びエステルの官能基(すなわち、−O−,−CO−及び−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も有機溶媒として使用することができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
なお、セルロースアシレートの詳細は、特願2004−264464号の[0140]段落から[0195]段落に記載されている。これらの記載は、本発明に適用することができる。また、溶媒及び可塑剤,劣化防止剤,紫外線吸収剤(UV剤),光学異方性コントロール剤,レターデーション制御剤,染料,マット剤,剥離剤,剥離促進剤などの添加剤についても、同じく特願2004−264464号の[0196]段落から[0516]段落に詳細に記載されている。これらの記載は、本発明に適用することができる。
本発明のセルロースアシレートフイルムに好ましく使用される紫外線吸収剤について説明する。本発明のセルロースアシレートフイルムは、その高い寸法安定性から、偏光板または液晶表示用部材などに使用されるが、これらの劣化防止を目的として、紫外線吸収剤が好ましく使用される。紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく使用される。本発明に好ましく使用される紫外線吸収剤の具体例としては、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としての具体例を下記に示すが、本発明はこれらに限定されない。2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)、(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、(2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイトなどが挙げられる。特に、(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、(2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジンなどのヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイトなどの燐系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、セルロースアシレートに対して質量割合で1ppm以上2ppm以下が好ましく、10ppm以上5000ppm以下がより好ましい。
また、特開平6−148430号公報、特開平7−11056号公報に記載の紫外線吸収剤も好ましく使用することができる。本発明で好ましく使用される上記記載の紫外線吸収剤は、透明性が高く、偏光板や液晶素子の劣化を防ぐ効果に優れており、特に不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。紫外線吸収剤の使用量は化合物の種類、使用条件などにより一様ではないが、通常はセルロースアシレートフイルム1m2 当り、0.2g以上5.0g以下が好ましく、0.4g以上1.5g以下がさらに好ましく、0.6g以上1.0g以下が特に好ましい。
その他に使用できる添加剤としては、旭電化プラスチック用添加剤概要「アデカスタブ」のカタログにある光安定剤が挙げられるが、チバ・スペシャル・ケミカルズのチヌビン製品案内にある光安定剤及び紫外線吸収剤も使用することができる。また、SHIPRO KASEI KAISHAのカタログにあるSEESORB、SEENOX、SEETECや城北化学工業のUV吸収剤及び酸化防止剤や共同薬品のVIOSORB、吉富製薬の紫外線吸収剤も使用することができる。
なお、紫外領域の分光透過率に関しては、特開2003−043259号公報に、色再現性に優れ、かつ紫外線照射の耐久性にも優れた光学フイルム、偏光板及び表示装置を得るために必要な390nmにおける分光透過率が50%以上95%以下であり、かつ350nmにおける分光透過率が5%以下である光学フイルムについて記載されている。
反応溶媒としては、炭化水素系溶媒(好ましくはトルエン、キシレン)、エーテル系溶媒(好ましくはジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどを使用することができる。これらの溶媒は、単独でも数種を混合して使用してもよく、反応溶媒として好ましくはトルエン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドである。
反応温度としては、好ましくは0℃以上150℃以下、より好ましくは0℃以上100℃以下、さらに好ましくは0℃以上90℃以下であり、特に好ましくは20℃以上90℃以下である。本反応には塩基を使用しないのが好ましい。ただし、塩基を使用する場合には、有機塩基、無機塩基のどちらでもよいが、好ましくは有機塩基であり、ピリジン、3級アルキルアミン(好ましくは、トリエチルアミン、エチルジイソプルピルアミンなど)である。
本発明のセルロースアシレートフイルムの光学特性は、
式(IV):Re(λ)=(nx−ny)×d
式(V):Rth(λ)={(nx+ny)/2−nz}×d
で表されるReレターデーション値、Rthレターデーション値が、それぞれ、以下の式(VI)及び(VII)を満たすことが好ましい。
式(VI):46nm≦Re(630)≦200nm
式(VII):70nm≦Rth(630)≦350nm
上記式中、Re(λ)は波長λnmにおける正面レターデーション値(単位:nm)、Rth(λ)は波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。またnxはフイルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフイルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフイルムの厚み方向の屈折率であり、dはフイルムの厚さである。
さらに好ましくは、下記式(VIII)及び(IX)を満たすことである。
式(VIII):46nm≦Re(630)≦100nm
式(IX):180nm≦Rth(630)≦350nm
湿度変化や高温経時による質量変化や寸法変化に伴い、Re及びRthの光学特性値は変化するが、Re及びRthの値の変化は少ないほど好ましい。湿度による光学特性変化を少なくするために、6位アシル置換度の大きなセルロースアシレートや疎水性の各種添加剤(可塑剤、レターデーション発現剤、紫外線吸収剤など)を使用して、フイルムの透湿度や平衡含水率を小さくする。好ましい透湿度は60℃、95%RH24時間で1平方メートル当たり400g以上2300g以下である。好ましい平衡含水率は、25℃、80%RHにおける測定値が3.4%以下である。また、25℃における湿度を10%RHから80%RHに変化させた時の光学特性の変化量がRe値で12nm以下、Rth値で32nm以下であることが好ましい。好ましい疎水性添加剤の量は、セルロースアシレートに対して10%以上30%以下であり、12%以上25%以下がより好ましく、14.5%以上20%以下が特に好ましい。また、添加剤に揮発性や分解性があってフイルムの質量変化や寸法変化が発生すると、光学特性変化が起こる。したがって、80℃、90%RHで48時間経時した後のフイルムの質量変化量は5%以下であることが好ましい。同様に、60℃、95%RHで24時間経時後の寸法変化量は5%以下であることが好ましい。また寸法変化や質量変化が少々あっても、フイルムの光弾性係数が小さいと光学特性の変化量は少なくなることから、フイルムの光弾性係数は50×10-13 cm2 /dyne以下であることが好ましい。
本発明に使用されるドープの製造方法は、特に限定されるものではない。具体的な一例を以下に説明する。ジクロロメタンを主溶媒とし、アルコール類を添加した混合溶媒を使用して、それにセルロースアシレート及び可塑剤(例えば、トリフェニルフォスフェート、ビフェニルジフェニルフォスフェートなど)を添加して攪拌溶解することでドープ(以下、原料ドープと称する)を作製する。なお溶解する際に、加温あるいは冷却することで溶解性を向上することができる。さらに、原料ドープと混合溶媒と紫外線吸収剤(例えば、ベンゾトリアゾール系化合物が好ましい)とを混合し、溶解させて添加液(以下、添加剤液とも称する)を調製する。また、原料ドープと混合溶媒とマット剤(例えば、シリカ粒子など)とを混合し、分散させて添加液(以下、マット剤液とも称する)を調製する。さらに、目的に応じて劣化防止剤、光学異方性コントロール剤、染料及び剥離剤をそれぞれ含む添加液を調製しても良い。
前記原料ドープ及び添加液を調製した後に不純物を取り除くため、濾過装置で濾過を行うことが好ましい。濾過装置には、濾過フィルタの平均孔径が100μm以下のものを使用して、濾過流量を50L/時以上で行うことが好ましい。また、その後に原料ドープ及び添加液の泡抜きを行うことが好ましい。泡抜きは公知のいずれの方法をも適用することができる。
なお、セルロースアシレートフイルムを得る溶液製膜法における素材、原料、添加剤の溶解方法及び添加方法、濾過方法、脱泡などのドープの製造方法については、特願2004−264464号の[0517]段落から[0616]段落に詳細に記載されている。これらの記載は、本発明に適用することができる。
図1に、本発明を実施したフイルム製膜ライン10を示す。ストックタンク11には添加剤液12、ストックタンク13にはマット剤液14、ストックタンク15には原料ドープ16が、それぞれ貯蔵されている。またそれぞれのストックタンク11,13,15には、その中の液12,14,16を送液するための送液ポンプ17,18,19が取り付けられている。
添加剤液12とマット剤液14をあらかじめ混合し、スタティックミキサ20を使用して攪拌して均一な添加剤液を作製後、この添加液を原料ドープ16に混合させ、スタティックミキサ21で攪拌し、均一な液(以下、この液を流延ドープと称する)を作製する。流延ドープは、濾過装置22を使用して濾過した後に、流延ダイ30に送液する。
流延ダイ30の下方には、バックアップローラ31,32により支持された流延バンド33が設けられている。流延バンド33は、駆動装置(図示しない)により、バックアップローラ31と32が回転して無端で走行する。流延バンド33の移動速度、すなわち流延速度は10m/分以上200m/分以下であることが好ましい。また、流延バンド33の周面温度を所定の値とするために、バックアップローラ31,32には伝熱媒体循環装置34が形成されており、その中を所定の温度に保持されている伝熱媒体が通過することにより、バックアップローラ31,32の温度を所定の温度に保持する。これにより、流延バンド33の周面温度を所定の温度に調整する。なお、流延バンド33の周面温度は、−20℃〜40℃であることが好ましい。
流延ダイ30、流延バンド33などは流延室35に収められている。流延室35内には、この中の温度を所定の値に保つために温調設備36が取り付けられている。流延室35内の温度は、−10℃以上57℃以下であることが好ましい。また、揮発している有機溶媒を凝集回収するための凝縮機37が設けられている。凝縮液化した有機溶媒は、回収装置38により回収された後、再生されドープ調整用溶媒として再利用される。
流延ダイ30から流延ビードを形成させながら、流延ドープを流延バンド33の上に流延して流延膜39を形成する。このとき、流延ドープの温度は、−10℃以上57℃以下であることが好ましい。また、流延ビードの形成を安定化させるために減圧チャンバ40が流延ビード背面に取り付けられ、所望の圧力に調整されていることが好ましい。流延膜39は、流延バンド33の走行と共に移動する。このときに流延膜39中の有機溶媒を揮発させるため、送風機41〜43を設けて乾燥風を送風することが好ましい。送風機41〜43の取り付け位置は、流延バンド33の上部上流側,下流側,流延バンド33下部に設けられている形態を図示しているが、これに限定されるものではない。形成直後の流延膜39に乾燥風が吹き付けられることによる膜面の面状変動を抑制するため、遮風装置44が設けられていることが好ましい。なお、図1では支持体として流延バンドを使用している例を示しているが、流延ドラムを使用することもできる。この場合、流延ドラムの周面温度は−20℃以上40℃以下であることが好ましい。
流延膜39が自己支持性を有するものとなった後、剥取ローラ45で支持しながらフイルム(以下、湿潤フイルムと称する)46として流延バンド33から剥ぎ取る。その後に多数のローラが設けられている渡り部50を搬送させた後にテンタ60に送り込む。渡り部50では、送風機51から所望の温度の乾燥風を送風させることで湿潤フイルム46の乾燥を進行させる。乾燥風の温度は、20℃以上250℃以下であることが好ましい。なお、渡り部50では、下流側のローラの回転速度を上流側のローラの回転速度より速くすることにより湿潤フイルム46にドローを付与させることもできる。テンタ60の内部の湿潤フイルム46は、その両縁がクリップで把持された状態で搬送中に乾燥される。
湿潤フイルム46は、テンタ60で所定の揮発分量まで乾燥された後、フイルム61として送り出される。フイルム61は、耳切装置62により、その両縁が切断される。切断された両縁部は、カッターブロワ(図示しない)によりクラッシャ63に送られる。フイルム両縁部は、クラッシャ63により粉砕されてチップになる。このチップをドープ調製用に再利用することがコストの点から有利である。なお、このフイルムの両縁を切断する工程は、省略することもできるが、前記流延工程からフイルムを巻き取る工程までのいずれかで行うことが好ましい。
フイルム61は、1本以上のパスローラ64と1基以上の駆動ローラ65が備えられている乾燥室66に送られる。乾燥室66内の温度は、特に限定されるものではないが、50℃以上200℃以下の範囲であることが好ましい。この温度制御を行うために、乾燥室66には専用給気口67aが設置されており、送風機67により送風される。乾燥室66でフイルム61は、パスローラ64に巻き掛けられながら搬送される間に、有機溶媒が揮発して乾燥する。乾燥室66には、吸着回収装置68が取り付けられており、揮発溶媒は吸着回収装置68により吸着回収される。溶媒成分が除去された大気は、乾燥室66内に乾燥風として再度送風される。なお、乾燥室66は、乾燥温度を変えるために多数の区画に分割されていることがより好ましい。また、耳切装置62と乾燥室66との間に予備乾燥室(図示しない)を設けてフイルム61の予備乾燥を行うことが、フイルム温度が急激に上昇することによるフイルム61の形状変化を抑制できるためより好ましい。なお、使用する駆動ローラ65については後で詳細に説明する。
フイルム61は、冷却室69に搬送され、略室温まで冷却される。なお、乾燥室66と冷却室69との間に調湿室(図示しない)を設けても良い。調湿室では、フイルム61に所望の湿度及び温度に調整された空気を吹き付けることによりフイルム61を巻き取る際の巻き取り不良の発生を抑制することができる。
また、フイルム61が搬送されている間の帯電圧が、所定の範囲(例えば、−3kV以上+3kV以下)となるように、強制除電装置(除電バー)80を設けることが好ましい。図1では、冷却室69の下流側に設けられている例を図示しているが、その位置に限定されるものではない。さらに、ナーリング付与ローラ81を設けて、フイルム61の両縁にエンボス加工でナーリングを付与することが好ましい。なお、ナーリングされた箇所の凹凸は1μm以上200μm以下であることが好ましい。
最後に、フイルム61を巻取室82内の巻取ローラ83で巻き取る。この際、プレスローラ84で所望のテンションを付与しつつ巻き取ることが好ましい。なお、テンションは巻取開始時から終了時まで徐々に変化させることがより好ましい。巻き取られるフイルム61は、長手方向(流延方向)に少なくとも100m以上とすることが好ましく、幅方向は600mm以上であることがより好ましく、1400mm以上1800mm以下であることが特に好ましい。また、1800mmより大きい場合にも効果がある。厚みが15μm以上100μm以下の薄いフイルムを製造する際に適用することができる。
図2は乾燥室の内部で使用される駆動ローラとしてのサクションローラ65の1部を切り欠いて示す正面図であり、周面全体に吸引孔91を多数有する。ここで、サクションローラ65の吸引孔91は、フイルム61を吸着するために必要十分な吸引力と、搬送するための接触圧を有する様態の吸引孔であればよいため、その形状は限定されない。例えば、円孔に代えて、角孔やその他の形状のものであってもよいし、さらにはローラ軸方向に長いスリット状の開口であってもよい。また、使用するサクションローラ65には、吸引ポンプなどの負圧源92が接続されており、吸引孔91から空気を吸引することで、サクションローラ65上のフイルム61を吸引し、搬送時のフイルム61のズレを抑制しながら次工程へとフイルム61を搬送することができる。このとき、上記の吸引ポンプなどの負圧源92によりサクションされる力は、0.5kPa以上10kPa以下であることが好ましく、より好ましくは1kPa以上5kPa以下であり、特に、2kPa以上4kPa以下であることが好ましい。これらのサクション力を用いてフイルム61を搬送すると、フイルム61のずれを抑制することができることから、フイルム61の表面でのキズやしわの発生を低減することができるという効果が得られる。
使用するサクションローラ65は、そのローラ周面65aがクロムめっきにより硬化処理されており、表面硬化層65bがローラ本体65cの周面に形成される(図4参照)。この硬化処理によって、その硬度は、ビッカ−ス硬度で500以上2000以下、より好ましくは800以上1200以下とする。また、そのローラ周面65aの表面粗さRyは、0.3μm以上1.0μm以下が好ましく、より好ましくは0.5μm以上0.8μm以下であるが、この周面の表面粗さRy(μm)は、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さLだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線からもっとも高い山頂までの高さともっとも低い谷底までの深さとの和である。また、これらの値は、サクションローラ65が吸引孔91を有する場合には、孔のない平滑部での周面の表面粗さRyであり、サクションローラ65における吸引孔91の有無には関係しない。なお、硬化処理はクロムめっき処理に代えて、窒化処理や焼き入れ処理、その他の硬化処理であってもよい。また、ローラ本体65cは、アルミ,SUSなどの各種金属が用いられるが、特に限定はしない。
図2及び図3に示すように、サクションローラ65の吸引孔91として円孔を使用する場合には、孔径D1は1mm以上6mm以下の範囲であることが好ましく、より好ましい範囲は2mm以上4mm以下である。また、吸引孔91のピッチP1は0.3mm以上30mm以下であることが好ましく、P2は0.5mm以上80mm以下であることが好ましい。さらに、開口率〔(吸引孔91による総開口面積/吸引孔91が形成される吸引孔形成総面積)×100〕は、5%以上30%以下の範囲が好ましい。なお、91aは円孔の面取り部を示す。
図4に示すように、吸引孔91は、打ち抜きなどにより、面取り部91aも同時に形成される。これによりフイルム61における微細なキズの生成を、より抑制することができる。また、図3に示すように、各吸引孔91の個々における面取り量A1は、孔径D1に対して2%以上20%以下であることが好ましく、その角度θは80度以上170度以下が好ましい。なお、面取り部91aは、打ち抜きなどのプレス加工の他に、切削によって形成してもよい。
図5に示すように、サクションローラ65の周面温度を一定に維持するためにローラ温調装置100が設けられている。ローラ温調装置100は、その周面温度を制御するための送風口101aを有する送風ダクト101を、1基のサクションローラ65に対して少なくとも1つ有し、サクションローラ65の周面温度をサクションローラ65に接触する直前のフイルム温度よりも高くなるように送風する。送風ダクト101はヒーターを有する温度調節機102及び送風機103と連結しており、温度を調節した空気を送風することで、温度の調節を行うことができる。ただし、送風口101aは周面温度が制御できる範囲内に設けられていれば、その設置位置はサクションローラ90に対して、上部、下部、側部など限定されない。加えて、その設置台数も限定されない。また、送風による温度制御に代えて、熱媒体をサクションローラ内に循環させてローラ周面温度をフイルム温度よりも僅かに高く設定してもよい。この接触直前のフイルム61とサクションローラ65の周面との温度の差は、好ましくは1℃以上30℃以下であり、より好ましくは、5℃以上15℃以下である。
本発明の溶液製膜方法において、ドープを流延する際に、2種類以上のドープを同時積層共流延させること、または逐次積層共流延させることもできる。同時積層共流延を行う場合には、フィードブロックを取り付けた流延ダイを使用しても良いし、マルチマニホールド型流延ダイを使用しても良い。共流延により多層からなるフイルムは、空気面側の層の厚さ及び/又は支持体側の層の厚さがそれぞれ全体のフイルム厚さ中で0.5%以上30%以下であることが好ましい。さらに、同時積層共流延を行う場合には、ダイスリットから支持体にドープを流延する際に高粘度ドープが低粘度ドープで包み込まれることが好ましい。また、同時積層共流延を行う場合には、ダイスリットから支持体にドープを流延する際、内部のドープは、そのドープよりもアルコールの組成比が大きなドープで包み込まれることが好ましい。
流延ダイ、支持体などの構造、共流延、剥離法、延伸、各工程の乾燥条件、ハンドリング方法、カール、平面性矯正後の巻取方法から、溶媒回収方法、フイルム回収方法まで、特願2004−264464号の[0617]段落から[0889]段落に詳しく記載されている。これらの記載は、本発明に適用することができる。
[性能・測定法]
(カール度・厚み)
巻き取られたセルロースアシレートフイルムの性能及びそれらの測定法は、特願2004−264464号の[0112]段落から[0139]段落に記載されている。これらの記載は、本発明に適用することができる。
[表面処理]
前記セルロースアシレートフイルムの少なくとも一方の面が表面処理されていることが好ましい。前記表面処理が真空グロー放電処理,大気圧プラズマ放電処理,紫外線照射処理,コロナ放電処理,火炎処理,酸処理またはアルカリ処理の少なくとも一種であることが好ましい。
[機能層]
(帯電防止・硬化層・反射防止・易接着・防眩)
前記セルロースアシレートフイルムの少なくとも一方の面が下塗りされていても良い。さらに、このセルロースアシレートフイルムをベースフイルムとして、他の機能性層を付与した機能性材料として用いることが好ましい。前記機能性層が帯電防止層,硬化樹脂層,反射防止層,易接着層,防眩層及び光学補償層から選択される少なくとも1層を設けることが好ましい。
セルロースアシレートフイルムに、種々様々な機能、特性を実現するための表面処理機能性層の付与方法は、特願2004−264464号の[0890]段落から[1087]段落に詳細な条件、方法も含めて記載されている。これらの記載は、本発明に適用することができる。
前記機能性層が、少なくとも1種の界面活性剤を0.1mg/m2 以上1000mg/m2 以下含有することが好ましい。また、前記機能性層が、少なくとも一種の滑り剤を0.1mg/m2 以上1000mg/m2 以下含有することが好ましい。さらに、前記機能性層が、少なくとも1種のマット剤を0.1mg/m2 以上1000mg/m2 以下含有することが好ましい。さらには、前記機能性層が、少なくとも1種の帯電防止剤を1mg/m2 以上1000mg/m2 以下含有することが好ましい。
(用途)
前記セルロースアシレートフイルムは、特に偏光板保護フイルムとして有用である。セルロースアシレートフイルムを偏光子に貼り合わせた偏光板を、液晶層に通常は2枚貼って液晶表示装置を作製する。ただし、液晶層と偏光板との配置は限定されるものではなく、公知の各種配置とすればよい。特願2004−264464号には、液晶表示装置として、TN型,STN型,VA型,OCB型,反射型,その他の例が詳しく記載されている。この記載は、本発明に適用することができる。また、同出願には光学的異方性層や、反射防止,防眩機能を付与したセルロースアシレートフイルムについての記載もある。さらには、適度な光学性能を付与して二軸性セルロースアシレートフイルムとした光学補償フイルムとしての用途も記載されている。これは、偏光板保護フイルムと兼用して使用することもできる。特願2004−264464号の[1088]段落から[1265]段落に詳細が記載されている。これらの記載は、本発明に適用することができる。
また、本発明により光学特性に優れるセルローストリアセテートフイルム(TACフイルム)を得ることができる。前記TACフイルムは、偏光板保護フイルムや写真感光材料のベースフイルムとして使用することができる。さらにテレビ用途などの液晶表示装置の視野角依存性を改良するための光学補償フイルムとしても使用することができる。特に、偏光板の保護膜を兼ねる用途に効果的である。そのため、従来のTNモードだけでなくIPSモード、OCBモード、VAモードなどにも用いられる。なお、前記偏光板保護膜用フイルムを用いて偏光板を構成してもよい。
本発明について実験例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれら態様に限定されるものではない。説明は実験1で詳細に行い、実験2から実験8については、実験1と同じ条件の箇所の説明は省略する。また、後に各実験の実験条件及び実験結果を表1にまとめて示す。
セルロースアセテートフイルムを作製するため、原料として、セルローストリアセテート:20質量部、酢酸メチル:58重量部、アセトン:5質量部、メタノール:5質量部、エタノール:5質量部、ブタノール:5質量部、可塑剤A(ジトリメチロールプロパンテトラアセテート):1.2質量部、可塑剤B(トリフェニルフォスフェート):1.2質量部、UV剤a(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン):0.2質量部、UV剤b(2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール):0.2質量部、UV剤c(2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール):0.2質量部、剥離剤a(C1225OCH2 CH2 O−P(=O)−(OK)2 ):0.02質量部、剥離剤b(クエン酸):0.02質量部、微粒子(二酸化ケイ素(粒径20nm、モース硬度約7)):0.05質量部を、適宜スタティックミキサを使用して混合後、攪拌溶解させて、濾過装置を使用して濾過したものを流延ドープとして作製した。
ローラとしてのサクションローラ65の外径は400mmであり、その幅は2000mmのものを使用した。フイルム製品の厚みは80μmとなるように、流延幅を1500mmとして、流延ダイ30からドープの量を調整して流延を行った。
流延ダイ30及び配管は、製膜時においては36℃に保温した。流延ダイ30は、コートハンガー型であり、厚み調整ボルトは20mmピッチに設けられているものを使用した。流延エッジ部20mmを除いたフイルムで50mm離れた任意の2点の厚み差は1μm以内であり、幅方向の厚みの最小値で最も大きな差が3μm/m以下となるように調整した。また、フイルムの厚みは±1.5%以下となるように調整した。
流延ダイ30の1次側には減圧するための減圧チャンバ40を設置した。減圧チャンバ40の減圧度は、流延ビードの前後で1Pa以上5000Pa以下の圧力差が生じるようになっていて、流延スピードに応じて調整することができる。また、減圧チャンバ40の温度も調整した。さらに、流延ビード前後及び後部にラビリンスパッキン(図示しない)を設けた。また、両端には開口部を設け、そこから、流延ビードの両縁の乱れを調整するためにエッジ吸引装置(図示しない)が取り付けられている。
流延ダイ30の材質は、析出硬化型のステンレスや2層ステンレスであり、熱膨張率が2×10-5(℃-1)以下の素材であり、電解質水溶液での強制腐食試験でSUS316と略同等の耐腐食性を有する素材を使用した。また、ジクロロメタン、メタノール、水の混合液に3ヵ月浸漬しても気液界面にピッティング(孔開き)が生じない耐腐食性を有する素材を使用した。流延ダイ30の接液面の仕上げ精度は周面粗さRyで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下であり、スリットのクリアランスは自動調整により0.5mm以上3.5mm以下まで調整可能なものを使用した。本実験では、1.5mmで実施した。ダイリップ先端の接液部の角部分については、Rはスリット全巾に亘り50μm以下になるように加工した。ダイ内部での剪断速度は1(1/秒)以上5000(1/秒)以下の範囲であった。
流延ダイ30のリップ先端には、硬化膜が設けられているものを使用した。硬化膜を設ける手段としては、セラミックスコーティング,ハードクロムめっき,窒化処理などがある。硬化膜としてセラミックスを使用する場合には、研削可能であり、気孔率が低く脆くなく耐腐食性が良く、かつ流延ダイと密着性がないものが好ましく、具体的には、タングステン・カーバイド,Al2 3 ,TiN,Cr2 3 などがあり、タングステン・カーバイドがより好ましい。なお、本実験では、溶射法によりタングステン・カーバイドコーティングを形成したものを使用した。
さらに流延ダイ30のスリット端には、流出するドープが局所的に乾燥固化することを防止するため、ドープを可溶化する溶媒である混合溶媒(ジクロロメタン:87重量部、アセトン:13重量部)をビード端部とスリット気液界面に片側で0.5ml/分で供給した。この液を供給するポンプの脈動率は5%以下のものを使用した。また、減圧チャンバ40によりビード背面の圧力を150Pa低くした。また、減圧チャンバ40の温度を一定にするため、ジャケット(図示しない)を取り付けた。そのジャケット内に40℃に調整された伝熱媒体を供給した。エッジ吸引風量は、1L/分以上100L/分以下の範囲で調整可能なものを使用し、本実験では30L/分以上40L/分以下の範囲で適宜調整した。
支持体として幅2.0m,長さが70mのステンレス製のエンドレスバンドを流延バンド33として利用した。流延バンド33の厚みは1.5mmであり、周面の表面粗さRyは0.05μm以下になるように研磨した。材質はSUS316製で、十分な耐腐食性と強度を有するものとした。流延バンド33全体の厚みムラは0.5%以下であった。流延バンド33は2個のバックアップローラ31,32により駆動させた。また、流延バンド33とバックアップローラ31,32との相対速度差が0.01m/分以下になるように調整した。この際、流延バンド33の速度変動は0.5%以下であった。また、1回転の幅方向の蛇行は1.5mm以下に制限するように流延バンド33の両端位置を検出して制御した。さらに、流延ダイ30直下におけるダイリップ先端と流延バンド33との上下方向の位置変動は200μm以下とした。
バックアップローラ31,32は、流延バンド33の温度を調整することができるように、内部に伝熱媒体を送液することができるものを使用した。流延ダイ側のバックアップローラ31には20℃の伝熱媒体(液体)を流し、バックアップローラ32には40℃の伝熱媒体(液体)を流した。流延直前の流延バンド中央部の周面温度は15℃であり、その両端の温度差は6℃以下であった。なお、流延バンド33は、表面欠陥がないものが好ましく、30μm以上のピンホールは皆無であり、10μm以上30μm以下のピンホールは1個/m2 以下、10μm未満のピンホールは2個/m2 以下であるものを使用した。
流延室35の温度は、35℃に保った。流延バンド33上に流延されたドープから形成された流延膜39は、平行流の乾燥風を送風することにより乾燥した。乾燥風の温度は、流延バンド上部の上流側を135℃、下流側を140℃、流延バンド下部を65℃となるように、送風機41,42,43から送風した。それぞれの乾燥風の飽和温度は、いずれも−3℃付近であった。次に、剥離ローラ45を使用して流延バンド33から湿潤フイルム46として剥ぎ取った。この際、剥取不良を抑制するため、流延バンド速度に対して剥取速度(剥取ローラドロー)は、100.5%とした。また、乾燥した際に発生した溶媒ガスは、凝縮器37で凝縮液化し、回収装置38で回収した。溶媒が除去された乾燥風は再度加熱して乾燥風として再利用した。その際、溶媒に含まれる水分量を0.5%以下に調整して再使用した。湿潤フイルム46を渡り部50の1本以上のローラを介して搬送し、テンタ60に送った。このときに送風機51から70℃の乾燥風を送風し、湿潤フイルム46のさらなる乾燥を行った。
テンタ60に送られた湿潤フイルム46は、テンタ60内で、断続的に配置された給気ノズル(図示しない)より、幅方向風速が一定になるようあらかじめ調整された140℃の熱風をフイルムの法線方向(フイルム平面に対して垂直な方向)から吹き付けることで乾燥した後、テンタ60より開放してフイルム61とした。
次に、テンタ出口から30秒以内に両端の耳切を耳切装置62で行った。後述する乾燥室65で高温乾燥する前に、100℃の乾燥風が供給されている予備乾燥室(図示しない)でフイルム61を予備加熱した。
フイルム61を1本以上のパスローラ64と1基以上のサクションローラ65を配置する乾燥室66内で高温乾燥した。パスローラ64とサクションローラ65の周面の材質はSCS13(実験1及び2)であるものを使用した。ただし、周面の硬化の程度を比較するため、周面の材質がクロムめっきによるHCr(実験3から実験8)であるものも使用した。また、サクションローラ65は多数の吸引孔からなるものを使用し、その孔径は4mmとしたが、孔径の違いを比較するため、その孔径が0.8mm以上8mm以下となる様々なサイズの孔を有するものを使用した。さらに、吸引孔91の孔面取り量は10%としたが、比較のため、1%以上25%以下の面取り量を有するサクションローラ65も使用した。サクションローラ65前のテンションは150N/mとし、サクションローラ65以後のテンションは350N/mとした。乾燥室内の温度において、サクションローラ65直前のフイルム温度は90℃となるように調整した。サクションローラ65の周面温度は50℃となるよう調整を行った。ただし、実験2,4,5から8では周面温度は100℃となるように調整した。その他の実験結果については後ほど詳細に説明する。
乾燥風に含まれる溶媒ガスは、吸着回収装置68を使用して吸着回収除去した。吸着剤は活性炭であり、脱着は乾燥空気を使用して行った。回収した溶媒は水分量0.3重量%以下に調整してドープ調製用溶媒として再利用した。乾燥風には溶媒ガスの他、可塑剤、紫外線吸収剤、その他の高沸点化合物が含まれているため、冷却除去する冷却機及びプレアドソーバーでこれらを除去し、再生循環使用した。そして、最終的に屋外排出ガス中のVOC(揮発性有機溶媒)は10ppm以下となるように吸脱着条件を設定した。フイルム両端の耳切処理を行った後、フイルム61の両端を、ナーリング付与ローラ71を使用してナーリングした。ナーリングは、片側からエンボス加工を行うことで付与し、ナーリングする幅は10mmとなるよう、また、最大高さは平均厚みよりも平均12μm高くなるように押し圧を設定した。
次に、フイルム61を巻取室72に搬送した。巻取室72は、その内部環境を室内温度28℃、湿度70%に保持した。さらに、フイルム帯電圧が−1.5kV以上+1.5kV以下になるようにイオン風除電装置(図示しない)も設置した。巻き取る際、巻き取り速度は50m/分とした。
〔実験1〕
実験1では、図1に示す溶液製膜方法で、硬化処理を施していないサクションローラ65を使用した。サクションローラ65の諸元は、周面の材質がSCS13で、表面の硬度はビッカース硬度で150、表面粗さRyは0.6μm、吸引孔の直径は4mm、吸引孔の面取り量は10%である。また、サクションローラ直前のフイルム温度を90℃とし、サクションローラでフイルムを吸引する圧力は2.0kPaとし、サクションローラ65の周面の表面温度は50℃として、24時間の連続製造を行った。
〔実験2〕
実験2では、サクションローラ65の周面の表面温度を100℃にした他は、実験1と同じ条件で24時間の連続製造を行なった。
〔実験3〕
実験3では、サクションローラ65の周面の材質としてSUS304を使用し、その表面を硬化クロムめっき処理し、厚さt1を50μmとした硬化処理層を有するサクションローラを使用した。なお、サクションローラのその他の条件は実験1と同じであり、実験1と同じ条件で24時間の連続製造を行なった。
〔実験4〕
実験4では、実験3のサクションローラを使用して、サクションローラ65の周面の表面温度を100℃にした他は、実験3と同じ条件で24時間の連続製造を行なった。
〔実験5〕
実験5では、実験4のサクションローラ65の吸引孔91の直径を8mmに変更した他は、実験4と同じ条件で24時間の連続製造を行なった。
〔実験6〕
実験6では、実験4のサクションローラ65の吸引孔91の直径を0.8mmに変更した他は、実験4と同じ条件で24時間の連続製造を行なった。
〔実験7〕
実験7では、実験4のサクションローラ65の吸引孔91の面取り量A1を1%に変更した他は、実験4と同じ条件で24時間の連続製造を行なった。
〔実験8〕
実験8では、実験4のサクションローラ65の吸引孔91の面取り量A1を25%に変更した他は、実験4と同じ条件で24時間の連続製造を行なった。
〔評価方法〕
フイルムの完成度を、フイルムのキズの有無,フイルム変形量の2項目について評価した。また、フイルム搬送中のフイルム保持力も評価した。
〔フイルムキズの評価〕
得られたフイルム61からサンプルを切り出し、それをディスプレイに組み上げ、目視にてキズの有無を確認した。通常の輝度のバックライトでキズが確認できる場合を×、高輝度のバックライトでキズが確認できる場合を△、高輝度のバックライトでキズらしいものが全く見えない場合を○とした。
〔フイルム変形の評価〕
フイルム61を長手方向に2m切断し、机の上に広げて平面性を評価し、孔状の変形が目視で確認できる場合を×とした。
〔フイルム保持力の評価〕
フイルム保持力は下記の方法で評価した。サクションローラ上流側のテンションを100N/幅に固定した状態で、サクションローラ65の前後でテンションの差を付けて、フイルム61を30m/分の速度で搬送する。この際、フイルム61がサクションローラ65の上で滑り始めるテンション差を求め、その値をフイルム保持力として評価する。サクションローラ65の上において、フイルム61に滑りが生じているかどうかについては、サクションローラ65の回転数をモニターすることによって確認する。
上記の評価方法に基づき実験1〜実験8に関して評価した。その結果をまとめたものを、製膜したフイルム61の完成度及び保持力評価結果として表1に示す。また、各結果の詳細な説明を下記に示す。
Figure 0004573700
表1からも明らかなように、実験1では、フイルム変形、フイルム保持力ともに良好な値(○)を示したが、フイルムキズの確認において、通常のバックライトを使用した際、フイルム表面上にキズが確認された(×)。実験2では、フイルム変形、フイルム保持力ともに良好な値(○)を示したものの、フイルムキズは高輝度のバックライトを使用した場合において確認された(△)。実験3では、フイルムキズ及びフイルム変形は確認されず(○)、フイルム保持力も良好な値(○)を示し、液晶表示製品などに使用するのに満足したフイルム特性を示すものであった。実験4でも、フイルムキズ及びフイルム変形は確認されず(○)、フイルム保持力も良好な値(○)を示した。実験5では、フイルムキズは確認できなかった(○)が、一方でフイルム61の変形が確認された(×)。実験5で確認された変形は、実験4では確認できなかったフイルム61の孔変形形状であった。また、フイルム61の保持力は良好であった(○)。実験6では、フイルム61の変形は確認されず、良好な値を示した(○)が、フイルムキズ及びフイルム保持力において満足のいく値を得ることができなかった(×)。実験7では、フイルムキズは通常のバックライトで確認された(×)ものの、フイルム変形、フイルム保持力は良好な値を示した(○)。実験8では、フイルムキズは確認されなかった(○)。また、フイルム61の保持力は良好であった(○)が、フイルム変形が確認された(×)。
〔硬化処理の有無の違い〕
実験1と実験3とは、サクションローラ65の周面材質が、それぞれSCS13,HCrと異なる以外は、全て同じ工程及び実験条件でフイルムを製造した。したがって、これらの結果を比べることで、サクションローラ65の周面材質の違いが、フイルム61の品質に与える影響について把握することができる。実験1では、フイルム変形,保持力ともに良好な値(○)が得られたが、フイルムキズが確認された(×)。一方で、実験3では、フイルムキズ,変形,保持力いずれも良好(○)であった。また、実験2と実験4とは、サクションローラ65の周面材質が、それぞれSCS13,HCrと異なり、実験1,3がサクションローラ65の周面温度が50℃に対して、100℃である以外は、全て同じ工程及び実験条件でフイルム61を製造した。したがって、これらの結果を比べることでも、サクションローラ65の周面材質の違いが、フイルム61の品質に与える影響について把握することができる。実験2は、フイルム61の変形,保持力ともに良好であった(○)が、多少のキズが確認された(△)。実験4では、実験2と同様に、フイルム61の変形, 保持力ともに良好な値(○)が得られると同時に、フイルムキズも良好であった(○)。以上より、サクションローラ65の周面材質の違い、すなわち硬化処理の違いに応じてフイルム61の品質に影響が生じること、さらには、品質低下を抑制してフイルムを製造するには硬化処理を施したサクションローラ65を使用することが好ましいということが分かった。
〔サクションローラの周面上における円孔の孔径の違い〕
実験4ないし実験6は、サクションローラ65の周面上における円孔の孔径がそれぞれ、4mm,8mm,0.8mmと異なる以外は、全て同じ工程及び実験条件でフイルム61を製造した。したがって、これらの結果を比べることで、サクションローラ65の周面上における円孔の孔径の違いが、フイルム61の品質に与える影響について把握することができる。実験4では、フイルムキズ,変形,保持力ともに良好な値(○)が得られた。一方で、実験5では、フイルムキズ,保持力ともに良好(○)であったが、変形が確認された(×)。また、実験6では、フイルム変形は良好(○)であったが、フイルムキズを確認する(×)とともに、満足のいく保持力を得ることができなかった(×)。以上より、サクションローラ65の周面上における円孔の孔径の違いに応じてフイルム61の品質に影響が生じること、さらには、品質低下を抑制してフイルム61を製造するには、その値が1mm以上6mm以下であることが好ましいということが分かった。
〔サクションローラの周面上における円孔の面取り量の違い〕
実験4,7,8は、サクションローラ65の周面上における円孔の面取り量がそれぞれ10%,1%,25%と異なる以外は、全て同じ工程及び実験条件でフイルム61を製造した。したがって、これらの結果を比べることで、サクションローラ65の周面上における円孔の面取り量の違いが、フイルム61の品質に与える影響について把握することができる。実験4では、フイルムキズ,変形,保持力ともに良好な値(○)が得られた。一方で、実験7では、フイルム変形,保持力ともに良好(○)であったが、キズが確認された(×)。また実験8では、フイルムキズ,保持力は良好(○)であったが、フイルム61の変形を確認した(×)。以上より、サクションローラ65の周面上における円孔の面取り量の違いに応じて、フイルム61の品質に影響が生じること、さらには、品質低下を抑制してフイルム61を製造するには、その値が2%以上20%以下であることが好ましいということが分かった。
〔サクションローラの周面温度の違い〕
実験1と実験2とは、サクションローラ65の周面温度がそれぞれ50℃,100℃と異なる以外は、硬化処理の施していないサクションローラ65を使用して、全て同じ工程及び実験条件でフイルム61を製造した。したがって、これらの結果を比べることで、サクションローラ65の周面温度の違いが、フイルム61の品質に与える影響について把握することができる。実験1では、フイルム変形,保持力ともに良好な値(○)が得られたが、多くのフイルムキズを確認した(×)。一方で、実験2では、フイルム変形,保持力ともに良好(○)であったが、多少のフイルムキズを確認した(△)。また、実験3と実験4とは、サクションローラ65の周面温度がそれぞれ50℃,100℃と異なる点は実験1,2と同じであるが、硬化処理を施したサクションローラ65を使用して、全て同じ工程及び実験条件でフイルム61を製造した。したがって、これらの結果を比べることで、硬化処理を施したサクションローラ65を使用した場合における、サクションローラ65の周面温度の違いが、フイルム61の品質に与える影響について把握することができる。しかし、実験3,4ともにフイルムキズ,フイルム変形量,フイルム保持力ともに良好(○)であり、両者に相違を見出すことができなかった。これは、硬化処理を施したサクションローラ65を使用したため、フイルムキズの発生などの品質の低下が抑制できたためであると考えられる。以上より、サクションローラ65の周面温度の違いに応じてフイルム61の品質に影響が生じること、また、この現象は、硬化処理を施していないサクションローラ65を用いた場合において顕著であることが分かった。さらには、品質低下を抑制してフイルム61を製造するには、フイルム温度とローラ表面の温度差において、ローラ表面の温度がフイルム温度よりも高くすることが好ましいということが分かった。
本発明の溶液製膜方法を実施した溶液製膜設備の概略図である。 本発明のサクションローラを示す一部を切り欠いた正面図である。 サクションローラの周面を拡大して示す平面図である。 図3におけるIV−IV線に沿う断面図である。 サクションローラの温度調節装置を示す設備の正面図である。
符号の説明
10 フイルム製膜ライン
33 流延バンド
61 フイルム
65 サクションローラ(駆動ローラ)
65a ローラ周面
65b 表面硬化層
91 吸引孔
91a 面取り部

Claims (6)

  1. ポリマーフィルムの乾燥室内にてパスローラと共に並べられ、前記ポリマーフィルムを前記パスローラに巻きかけて搬送するサクション駆動ローラにおいて、
    周面に円形の吸引孔を有し、
    前記吸引孔の面取り量が前記吸引孔の径の2%以上20%以下であることを特徴とするサクション駆動ローラ。
  2. 前記周面の表面硬度が、ビッカ−ス硬度で500以上2000以下であることを特徴とする請求項1記載のサクション駆動ローラ。
  3. 前記周面の表面粗さRyが、0.3μm以上1.0μm以下であることを特徴とする請求項1または2記載のサクション駆動ローラ。
  4. 前記吸引孔の径が1mm以上6mm以下であることを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1項記載のサクション駆動ローラ。
  5. 前記サクションローラの表面温度がこのサクションローラに接触する直前の前記ポリマーフィルム温度よりも高い状態を維持する温調装置を有することを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1項記載のサクション駆動ローラ。
  6. ポリマー及び溶媒を含む膜を支持体上に形成する膜形成工程と、
    前記膜を前記ポリマーフィルムとして前記支持体から剥ぎ取る剥ぎ取り工程と、
    請求項1ないし5のうちいずれか1項記載のサクション駆動ローラを用いて、前記ポリマーフィルムを搬送しながら、前記ポリマーフィルムから前記溶媒を蒸発させる乾燥工程とを有することを特徴とする溶液製膜方法。
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