以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る排気装置を備えた自動二輪車を示す側面図である。同図に示す自動二輪車は、車体フレームFRの前半部を構成するメインフレーム1の前端にフロントフォーク2が支持され、このフロントフォーク2の下端に前輪3が、フロントフォーク2の上端にハンドル4がそれぞれ取り付けられている。メインフレーム1の後端下部には、後述のスイングアームブラケットが設けられ、このスイングアームブラケットに、スイングアーム7の前端がピポット軸(図示せず)を介して上下揺動自在に軸支されている。このスイングアーム7の後端に後輪8が取り付けられている。前記メインフレーム1の後部に連結されたシートレール9が車体フレームFRの後半部を構成している。メインフレーム1の下部にはエンジンEが取り付けられ、このエンジンEの前方にラジエータ10が配置されている。この自動二輪車は、前記エンジンEによりチェーン11を介して後輪8を駆動するとともに、前記ハンドル4で操向するように構成されている。
前記シートレール9にはライダー用シート12と同乗者用シート13とが支持されている。前記メインフレーム1の上部、つまり、車体上部で、前記ハンドル4とライダ用シート12との間には、燃料タンク14が取り付けられている。また、車体前部には前照灯17が装着されている。
図2は前記エンジンEを示す正面図である。このエンジンEのシリンダヘッド19における前面には複数(この実施形態では2つ)の排気ポート20が形成され、これら排気ポート20にそれぞれ排気管21の各上流端部210が接続されている。両排気管21の下流端部220は、集合部22で1本に集合された状態で、図1のマフラ(排気消音装置)23に接続されている。各排気管21は金属製の単一の円管を曲げ加工したものである。マフラ23は、エンジンEの後面と後輪8との間に配置されて、車体の左右方向のほぼ中央部に位置している。ここで、エンジンEの後面とは、エンジン本体および変速機を含むエンジンE全体の後面である。
図3(a),(b)は前記各排気管21および集合部22を示す正面図および平面図である。図3(a)に示すように、各排気管21は、前方から見て曲がった曲がり部21a〜21cを3つ有するほぼS字形状に形成されている。各曲がり部21a〜21cの上流側および下流側には、直線部21d〜21gが存在する。また、両排気管21,21は、上流端部210,210が図2のエンジンEの左右方向に離間した排気ポート20,20にそれぞれ接続され、下流端部220,220が、前記上流端部210,210と左右方向位置が入れ替わって集合部22に接続されており、各々の中間部が、前方から見て交差している。
各排気管21は、曲がり角度の小さな第1の曲がり部21aが上流端部210を形成する短い直線部21dに連なって形成され、この第1の曲がり部21aから比較的長い直線部21eを経て、前方から見て左斜め下方に向かって延び、曲がり角度の大きな第2の曲がり部21bにより右方に転向し、直線部21fで右側に延び、さらに、曲がり角度の大きな第3の曲がり部21cにより中央部後方へ転向し、直線部21gを経て下流端部220に達する形状を有している。すなわち、排気管21は、前方から見て、排気の流れ方向Aにおける前後の直線部21e,21fよりも左側に突出している第2の曲がり部21bと、前部の直線部21f,21gよりも右側に突出している第3の曲がり部21cとをそれぞれ1つずつ有して、ほぼS字形状となっている。これにより、各排気管21の下流端部220から鉛直に延ばした前後方向に平行な基準面S1,S2、つまり、下流端部220を通り、車体の前後中心軸を含む鉛直な車体中心面CSに対して平行な基準面S1,S2に対し、各排気管21が自己の基準面S1,S2の左右両側に突出するように大きく曲がりくねっている。こうして、限られた上下寸法の中で、排気管21の全長を長くとっている。
この実施形態の自動二輪車では、前述のとおり、図1に示す排気管21とマフラ23を含む排気装置の全長の短縮と装置全体としての容量アップを図ることを目的として、マフラ23がエンジンEの後面と後輪8との間に配置されており、マフラを後輪8の側方位置に配置する場合と比較して、エンジンEとマフラ23との間隔が小さくなっている。したがって、一般的なL字形状に曲がった排気管を用いて排気ポート20とマフラ23とを接続すると、排気管の長さを所要の排気慣性が得られるのに十分な長さとするのが難しい。そこで、前記排気管21は、前方から見て、図2に示す曲がった曲がり部21a〜21cを3つ有するほぼS字形状としている。これにより、排気管21は、車体の左右方向に蛇行しながらエンジンEの下方へ向かうので、車体の左右方向の所定範囲内から外側方へ出っ張らずに全長を長くとることができ、所要の優れた排気慣性を確保することができるとともに、排気管21およびマフラ23を含む排気装置全体を前後方向長さが短いコンパクトなものにできる。
また、2つの排気管21は、各々の中間部を前方から見て交差させて、各々の下流端部220を上流端部210と左右方向位置が入れ替わった配置で設けているので、各排気管21を、内部を排気が円滑に流動できる大きな曲率半径で湾曲された3つの曲がり部21a〜21cを有する形状としながらも、2つの排気管21の長さを容易に同一に設定することができる。
さらに、前記排気管21は、図3(a)に示す3つの曲がり部21a〜21cの各々の上流側および下流側にそれぞれ直線部21d〜21gを有した形状になっているので、直管を曲げ加工して排気管21を製造する場合に、直管における曲がり部21a〜21cを形成すべき箇所の両側部位を曲げ加工機の1対のチャッキングで把持しながら曲げローラに押し付けることで、排気管21の曲げ加工が容易となり、曲がり部21a〜21cを所定の曲率に正確に形成することができる。
また、前記排気管21は、エンジンEの左側、図2のエンジン冷却水用の水ポンプ24の吐出通路を形成するウォータパイプ24aを回避して配設されている。
なお、前記実施形態では、排気管21を2つ備えた場合について説明したが、排気管21が単一の場合、または排気管21を3つ以上有しているエンジンにおいても、それら排気管21を前方から見て曲がった曲がり部21a〜21cを3つ以上有する形状とすることにより、上述したと同様の効果を得ることができる。また、排気管21を複数対有する場合、各対を構成する2つの排気管21を前述のとおり、中間部で交差させるのが好ましい。
図4はマフラ23および集合部22を示す平面図である。集合部22は、2つの排気管21の各下流端部220を、集合連結管27を介して単一の接続管28に接続した構成になっている。接続管28の後端は、マフラ23の内部に排気管21からの排気を導入する入口管29に連結されている。この入口管29は、マフラーケース30に固定されてマフラーケース30から前方に突出しており、マフラ23内部に設けられた後述の膨張室に前記排気を導入する排気導入通路の一部を構成する。この入口管29には、これに導入された排気中の酸素の含有量を検出する排気成分検出センサ31が取り付けられている。なお、図3(b)のC−C線断面図である図3(c)に示すように、前記集合連結管27は、これを2割りした第1および第2の連結管半体27A,27Bを互いに突き合わせて、各々の長さ方向に沿って両端部に設けたフランジを互いに溶接して結合した構成になっている。
図5は前記マフラ23の平面断面図、図6はVI-VI 線に沿った断面図である。図5において、前記マフラーケース30は、前後両端が開口した筒部32と、この筒部32の前後両端の開口を閉止する前側端板33および後側端板34とを備えており、筒部32の前後両端のフランジと前後両側の端板33,34の各々の周端部とをかしめにより互いに結合してなるフランジ部37,38を介して互いに連結されている。このようにして形成された前後のフランジ部37,38は、これらの外側面が筒部32の外周面よりも外側方に突出しており、この両フランジ部37,38の外周面における右側部分間に、マフラーカバーとなるマフラーサイドカバー39の前後両端部が溶接により接合されている。このマフラーサイドカバー39の詳細については後述する。前記筒部32は、内筒35を有する2重管に構成されて、内筒35との間にガラスウール18が充填されており、これにより、排気Gの消音効果が高められている。マフラーケース30の筒部32、前側端板33、後側端板34および内筒35は、ステンレスのような金属製の板材で形成されている。
前記マフラーケース30の内部は、内筒35の内周面に固着された3枚の隔壁板40,41,42により区画されて、4つの膨張室43,44,47,48が形成されている。これらの膨張室43,44,47,48は、この順序でつながっており、最上流の第1の膨張室43がマフラーケース30の最前部に、これの下流側の第2の膨張室44がマフラーケース30の最後部に、それぞれ配置され、これら両膨張室43,44の間で、第2の膨張室44の前側に隣接して第3の膨張室47が、第1の膨張室43の後側に隣接して第4の膨張室48が、それぞれ配置されている。さらに、前記マフラーケース30の内部には、排気Gをマフラーケース30内に導入する排気導入管49が、前記3枚の隔壁板40,41,42に、それぞれを貫通した状態で支持されている。この排気導入管49は、その上流端が、マフラーケース30の前側端板33に支持された入口管29に接続されて、排気Gをマフラーケース30の最前部に設けられた最上流の第1の膨張室43に導入する排気導入通路Pを形成している。
すなわち、前記排気導入通路Pは、マフラーケース30の前側端板33に貫通状態で固定された入口管29と前記排気導入管49とにより構成されている。前記排気導入管49は、排気Gを膨張室に導入する排気導管の一つであり、入口管29に接続された上流端から各隔壁板40〜42を順次貫通してマフラーケース30の後側端板34の近傍まで延びる上流管部49aと、この上流管部49aの下流端からU字状に延びてマフラーケース30の前方へ反転させる折返し部49bと、この折返し部49bの下流端から前側端板33の近傍まで延びる下流管部49cとを備えている。上流管部49a、折返し部49bおよび下流管部49cは、横断面(排気通路)が円形である。図6に示すように、上流管部49aは下流管部49cよりも下方に位置しており、これによって排気導入管49の水平方向幅を抑制している。下流管部49cの下流端は、マフラーケース30の最前部の第1の膨張室43内まで延びており、この下流端部に、排気Gのエネルギを干渉効果により減衰させながら第1の膨張室43内に導入する排気緩衝器50が取り付けられている。この排気緩衝器50の詳細については後述する。
前記排気導入管49の下流管部49cの内部には、上流側の第1の触媒コンバータ51と下流側の第2の触媒コンバータ52とが流れ方向Aの隙間53を介して装着されている。第1および第2の触媒コンバータ51,52として、この実施形態において、周知のハニカム式のものが用いられいる。このハニカム式の触媒コンバータ51,52は、モノリス担体と呼ばれるハニカム形状のセラミック構造体からなる触媒担体にアルミナをコートし、その上に酸化反応の触媒としてPtやPdなどが、還元反応の触媒としてRhがコーティングされたものである。なお、ハニカム式に代えて、パンチングされたパイプの全体に触媒がコーティングされてなるパイプ式のものを用いてもよい。
図7〜図9はそれぞれ第1ないし第3隔壁板40〜42を示す背面図である。これらの図において、各隔壁板40〜42には、排気導入管49の上流管部49a(図5)をそれぞれ貫通させた状態で支持する第1の支持開口部40a、41a,42aと、排気導入管49の下流管部49c(図5)をそれぞれ貫通させた状態で支持する第2の支持開口部40b、41b、42bとが、それぞれ下方中央部および上方中央部に形成されている。これら支持開口部40a、41a,42a,40b、41b、42bは、図5に示すように、開口周縁部を切り起こして支持用のフランジが形成されていることにより、貫通された排気導入管49を安定して支持できるようになっている。
また、第1ないし第3の各隔壁板40〜42には、各々の第1の支持開口部40a,41a,42aの上方で、かつ、第2の支持開口部40b,41b,42bの側方位置に、開口周縁にフランジを有する第3の支持開口部40c,41c,42cがそれぞれ形成されている。これら各第3の支持開口部40c,41c,42cには、図5の右側の第1連通管54が貫通状態で支持されており、この第1連通管54は、マフラーケース30内の最前部の第1の膨張室43を最後部の第2の膨張室44に連通する連通路を形成する。この第2の膨張室44を区画形成する第3の隔壁板42には、図9に示すように、第2の支持開口部42bの下方位置に連通孔42eが形成されており、この連通孔42eが、図5の第2の膨張室44を第3の膨張室47に連通する。
さらに、図8に示す中間の第2の隔壁板41には、第3の支持開口部41Cの下方で、かつ、第1の支持開口部41aの側方位置に、開口周縁にフランジを有する第4の支持開口部41dが形成されているとともに、第2の支持開口部41bに対し第3の支持開口部41cとは反対側の側方位置に、開口周縁にフランジを有する第5の支持開口部41eが形成されている。第4の支持開口部41dには、図6に示す第2連通管57が貫通状態で支持されており、この第2連通管57は、第2の膨張室44を第3の膨張室47に連通する連通路を形成する。
また、図9に示す最後部の第3の隔壁板42には、開口周縁にフランジを有する第4の支持開口部42dが、第2の支持開口部42bに連通して形成されている。図5に示すように、第3の隔壁板42の第4の支持開口部42dおよび第2の隔壁板41の第5の支持開口部41eには、テールパイプ58が貫通状態で支持されている。このテールパイプ58は、上流端近傍における内方側の半部が切欠かれて、排気導入口58aが形成されており、下流端部が、開口を外部に連通した状態でマフラーケース30の後側端板34に固定されている。したがって、テールパイプ58は、最下流の第4の膨張室48内の排気Gを排気導入口58aから導入してマフラーケース30の外部に排出する。テールパイプ58における排気導入口58aの形成により半円状に残存した下流端部は、第1の隔壁板40に突き当てた状態で、図7に示すように、第1の隔壁板40に半円状に形成された溶接用切欠部40dを介して溶接されることにより、第1の隔壁板40に固着されている。
図5のマフラ23は、排気導入管49の下流管部49c内に第1および第2の触媒コンバータ51,52が装着されて、触媒付き排気消音装置として構成されており、以下のように機能する。すなわち、図1のエンジンEから2つの排気管21および集合連結管27を通ってマフラ23に導かれた排気Gは、図5の入口管29を通ってマフラ23内部の排気導入管49内に流入し、この排気導入管49の上流管部49aを経てマフラ23の前端部から後端部近傍に導かれたのち、折返し部49bに沿いながらマフラ23の前方へ向け反転されて下流管部49cに導かれる。さらに、排気Gは、下流管部49c内の第1の触媒コンバータ51内に導入されることにより、酸化反応により、HCやCOの浄化が促進される。この第1の触媒コンバータ51の各部を通った排気Gは、隙間53に導出されて混合されることにより、排気Gの流れが場所的に均一化される。この隙間53が存在しない長い触媒コンバータに排気を通した場合には、折返し部49bを通る際の遠心力により排気の流れが偏って、排気の浄化が効果的に促進されないことがある。
前記第1の触媒コンバータ51を通って或る程度浄化された排気Gは、第2の触媒コンバー52内を通ってさらに浄化されたのち、排気緩衝器50から第1の膨張室43内に流入して膨張する。この第1の膨張室43から第1連通管54内に流入して収縮されながら第2の膨張室44に向け導かれ、第2の膨張室44内に流入して再び膨張する。この第2の膨張室44から第3の隔壁板42の流通孔42e(図9)を通って第3の膨張室47内に流入したのち、第2連通管57内に流入して再び収縮されながら第4の膨張室48に向け導かれて、第4の膨張室48内に流入して再び膨張する。このように、このマフラ23では、排気Gの収縮と膨張をくり返すことで排気Gのエネルギを消耗させて、騒音を十分に低減できるので、所要の消音効果を確保できる。前記第4の膨張室48内に導かれた排気Gは、排気導入口58aからテールパイプ58内に流入して、テールパイプ58を通ってマフラ23の外部に排出される。
前記マフラ23では、排気Gが触媒コンバータ51,52を通過するときに、排気G中に含有している酸素の全てを未燃焼成分と共に再び燃焼させることができれば、排気GをHCやCO成分が殆ど残存しない状態となり、最も良好な浄化性能を得ることができる。そのためには、エンジンEから排出する排気Gを所要量の酸素が含有された状態に制御することが必要であり、エンジンEに燃料を供給する燃料供給制御装置(図示せず)において、空燃比が理論空燃比14.8程度になるように制御して、所要量の酸素を含有した排気Gとするのが望ましい。
そこで、マフラ23では、その入口管29に取り付けた排気成分検出センサ31(図4)により、マフラ23に導かれた排気Gに含まれる酸素量を、マフラ23内に導入される前に、つまり触媒コンバータ51,52に導入される前に検出して、その検出信号に基づき燃料供給制御装置が吸入混合気の空燃比を14.8程度になるように、燃料供給量をフィードバック制御するようになっている。したがって、触媒コンバータ51,52に導入される前の排気G中に含まれる酸素量が正確にコントロールされるので、触媒コンバータ51,52の浄化性能が最大限に発揮されて、排気G中のHCやCO等の成分を効果的に除去できる。これに対し、従来では、膨張室内に導入して膨張した排気に含まれる酸素量を検出しているので、膨張室内に残存している酸素と新たに導入された排気に含まれる酸素が混在して、エンジンから排出された排気中に含まれる酸素量を正確に検出することができないから、燃料供給制御装置によるフィードバック制御は応答性の悪いものとなり、触媒コンバータを通過した排気を十分に浄化できないことがある。
また、前記触媒付き排気消音装置であるマフラ23は、排気Gを、各膨張室43,44,47,48に導くのに先立って、排気導入管49内に装着した第1および第2の触媒コンバータ51,52内を通過させて浄化するようにしているので、マフラ23内に導入した排気Gの全てを効果的に浄化することができる。これに対し、従来の一般的な触媒付き排気消音装置では、排気管から導かれた排気を先ず膨張室内に流入して膨張させることにより、排気の脈動を抑制し、かつ排気の速度を低下させて、触媒コンバータに通すときの抵抗を低減するようにしている。その結果、膨張室内で膨張した排気は、速度が低下しても、膨張に伴い圧力が高くなるので、膨張室を区画する隔壁とマフラーケースとの間の隙間から一部が漏れて、排気の全てを触媒コンバータに通すことができず、排気の浄化性能の低下を招いていた。
さらに、マフラ23では、排気Gを、排気導入管49の上流管49aを介してマフラーケース30内の前端部から後端近傍箇所に導いたのち、折返し部49bから下流管部49cを介してマフラーケース30内の第1の膨張室43内に導入し、この第1の膨張室43から第1連通管54を介して後端側の第2の膨張室44に導き、第2の膨張室44から第3および第4の膨張室47,48を順次通過させたのち、テールパイプ58からマフラーケース30の外部に排出するようにしている。したがって、排気Gは、第1の膨張室43に入る前に、入口管29から排気導入管49を通って、マフラーケース30内の前後端を1往復近く流動するので、膨張前の排気通路を長くできる。これにより、排気Gの脈動による排気慣性を有効利用して、排気効率を高めることができる。また、このマフラ23は、第1および第2の触媒コンバータ51,52がマフラーケース30内の排気導入管49の内部に装着されているので、触媒コンバータ51,52が保温ないし昇温されることから、運転開始直後などにおける触媒コンバータ51,52の触媒の活性化が促進され、排気Gの浄化性能が向上する。
マフラ23は、次の製造工程により製造される。先ず、図10に示すように、マフラーケース30の筒部32の後端部に後側端板34をかしめにより固着する。一方、第1ないし第3の隔壁板40〜42に、排気導入管49、第1および第2連通管54,57およびテールパイプ58を、所要の支持開口部40a〜40c、41a〜41e、42a〜42d(図7〜9)に挿入させて溶接し、さらに、入口管29を挿入した排気導入管49に前側端板33を溶接して、マフラーアセンブリ23Aを製作する。このマフラーアセンブリ23Aを、マフラーケース30の筒部32の前端開口から矢印の方向に筒部32内へ挿入して、マフラーケース30の所定位置に配置し、テールパイプ58の出口を後側端板34に溶接するとともに、筒部32の前端部に前側端板33をかしめにより固着して、マフラ23が完成する。ここで、テールパイプ58における排気導入口58aが切欠き形成されて半円状となった上流端が、第1の隔壁板40に溶接により固着されているから、第1の各隔壁板40が補強されるので、挿入時に内筒35の内面との摩擦力により第1の隔壁板40が変形するのが防止される。
なお、前記実施形態では、排気成分検出センサ31(図4)を入口管29に設けた場合について説明したが、触媒コンバータ51,52に対する上流側であれば、何れの部位に設けても、上述したと同様の効果を得ることができる。また、前記実施形態では、2つの触媒コンバータ51,52を用いる場合を例示したが、単一の触媒コンバータを用いることもできる。
前記排気導入管49の下流管部49cの下流端には上述した排気緩衝器50が設けられている。図11に示すように、この排気緩衝器50は、排気導入管49と共に排気導入通路Pの外周の一部分を形成する円筒状の周壁59と、排気導入通路Pの終端を形成する通路端壁60とを有している。通路端壁60は、排気導入通路Pの上流に向かって膨出するように滑らかに湾曲した球面形状を有しており、周壁59の下流端部に嵌め込み固定されて、周壁59の下流端の開口を閉塞している。周壁59は、排気Gを第1の膨張室43内に流出させるための複数の流出孔59aが周面全体にほぼ均一な配置で形成されて、下流管部49cの下流端部の外周面に嵌め込んで溶接により固定されている。
図5に示すように、前記排気緩衝器50が設けられている排気導入管49の下流管部49cは、その下流端近傍部分が、第1の隔壁板40に片持ち式に支持されており、しかも、排気緩衝器50には触媒コンバータ51,52を通過して高温となって大きなエネルギを有する排気Gが流動する。したがって、排気緩衝器50は振動し易い。これに対し、排気緩衝器50の通路端壁60が内方に向け膨出した球面形状を有しているから、排気Gを通路端壁60に沿って小さな抵抗で滑らかに側方に導くようにガイドするので、下流管部49cの下流端部分および排気緩衝器50の排気Gによる振動を効果的に抑制できる。しかも、排気緩衝器50は、周壁59に設けた多数の流出孔59aを介して第1の膨張室43内に排気Gを均等に流出させて膨張させることができ、また、排気Gを流出孔59aに通すことにより、排気Gの騒音をソフトな音に低減できる効果もある。
前記排気緩衝器50は、排気導管である第1および第2連通管54,57の下流端部分に取り付けてもよく、これら連通管54,57においても上述と同様の効果を得ることができる。なお、排気緩衝器50の通路端壁60は、球面形状のほかに、円錐状でもよく、連通管54,57の横断面形状が四角形であれば、それに合わせて四角錐状でもよい。また、通路端壁60は、排気導入管49の下流側へ向け膨出する形状としてもよく、その場合、排気Gを滑らかに側方にガイドする効果は得られないが、排気Gによる振動を防止する効果は得られる。
また、図12に示すように、排気導入管49の折返し部49bの内部には、排気Gを第1の触媒コンバータ51へ導入するための触媒入口通路61が形成されており、この触媒入口通路61に、排気Gの流れの通路横断面内における偏りを抑制する2枚の整流板62A,62Bが配設されている。これら整流板62A,62Bは、折返し部49bに対応する曲率で湾曲した形状になっており、折返し部49b内の流れ方向Aに沿って延びている。折返し部49bでは、遠心力によって触媒入口通路61の外側を通過する排気Gの量が多くなる傾向がある。整流板62A,62Bがない場合、排気Gの通路外側への偏りが大きくなり、偏った状態で排気Gが第1の触媒コンバータ51に導入されると、第1の触媒コンバータ51における触媒入口通路61の外側に対向する部分に多くの排気Gが流入するために、触媒の利用効率が低下する。そこで、この実施形態では、触媒入口通路61における排気GをUターンして第1の触媒コンバータ51に導く折返し部49bに、2枚の整流板62A,62Bを設けて、排気Gの上述した偏りを防止している。
図13(a),(b)はそれぞれ図12のXIIIA−XIIIA線に沿った断面図およびXIIIB−XIIIB線に沿った断面図である。これらの図において、2枚の整流板62A,62Bは、触媒入口通路61における通路横断方向の中間に位置して互いに平行な配置で設けられている。2枚の整流板62A,62Bは、ほぼ長方形の横断面形状を有するパイプ62における相対向する2つの長辺部分によって構成されている。パイプ62は、排気導入管49の折返し部49bを2つ割りした形状の折返し部半体49b1,49b2の間に挟み込まれて、相対向する2つの短辺部分が折返し部49bの内面に接した状態で、折返し部49bに形成された溶接用孔63を介して溶接(プラグ溶接)されることにより、折返し部49bに固定されている。このような構成とすることにより、2枚の整流板62A,62Bを一つのパイプ62により形成することができるので、折返し部49bの製造が容易になる。
図12に示す整流板62A,62Bが長過ぎると、排気Gに対する抵抗が大きくなって圧力損失も大きくなる。そこで、各整流板62A,62Bは、図14(a)に示すように、折返し部49bのU字状の対称面Cを貫通して上流側と下流側に延びる長さに設定している。これにより、遠心力による偏りが最も大きくなる対称面C付近で排気Gを整流して、流れの偏りを抑制できる。この実施形態では、内側の第1整流板62Aを、これの上流端が対称面Cから通路上流方向に向かってθ1=23°程度の角度まで延びる長さに設定し、第2整流板62Bを、これの上流端が対称面Cから通路上流方向に向かってθ2=30°程度の角度まで延びる長さに設定している。両整流板62A,62Bの下流端は、対称面Cから通路下流方向に向かって90°の角度まで延びている。これにより、整流板62A,62Bは、長くなり過ぎることに起因して排気Gに対する抵抗の増大に伴う圧力損失の増大を抑制しながら、排気Gの偏りを効果的に抑制するよう機能する。
整流板62A,62Bの上述した効果は、実験の結果、確認することができたので、この実測結果を、図14を参照しながら説明する。同図(a)は実施形態のように2枚の整流板62A,62Bを触媒入口通路61に設けた場合で、同図(b)は比較のために示した、整流板62A,62Bを設けない場合である。実験条件として、排気導入管49の上流管部49aの長さL1と内径φ1、下流管部49cの長さL2と内径φ2、整流板62A,62Bの出口から出口圧力測定点Pout までの距離L3、折返し部49bの内側の曲率半径R0および外側の曲率半径R3は、(a)および(b)共にそれぞれ同一に設定してある。これらの具体的な数値を示すと、排気導入管49の上流管部49aは内径φ1が43mmで長さL1が230mm、下流管部49cは内径φ2が64mmで長さL2が210mm、折返し部49は内側の曲率半径R0が8mmで外側の曲率半径R3が52mmである。
図14(a)の排気導入管49において、内側の第1の整流板62Aは、曲率半径R1=22mmで湾曲し、外側の第2の整流板62Bは、曲率半径R2=36mで湾曲している。上流管部49aの入口でゲージ圧2700Paで速度を100m/Sに設定した排気Gを排気導入管49内に導入して、(a),(b)双方の触媒入口通路61の入口圧力測定点Pinおよび出口圧力測定点Pout での圧力P1,P2をそれぞれ測定した。
その結果、入口と出口の圧力差(P1−P2)、つまり折返し部49bでの圧力損失は、整流板62A,62Bを設けた(a)の方が整流板62A,62Bの無い(b)よりも24%小さいことが確認できた。また、シミュレーションにより、(a)では、触媒入口通路61内に導入した排気Gの一部が、両整流板62A,62Bの間および内側の整流板62Aと折返し部49b内面との間にそれぞれ流入したのち、整流板62A,62Bに沿って第1の触媒コンバータ51に導かれていること、および触媒入口通路61内において排気Gの流れの外側への偏りが抑制されていること、つまり整流されていることが確認できた。したがって、2枚の整流板62A,62Bを前記条件で設けた場合には、排気Gに対する十分な整流効果と圧力損失の抑制との双方をバランス良く得られることが判明した。
整流板62A,62Bの数は1つまたは3つ以上でもよく、形状もこの実施形態のものに限られず、種々の形状とすることができる。また、整流板62A,62Bを設ける位置も通路横断方向の中間に限定されるものではなく、通路横断方向の一方寄りに設けてもよい。
つぎに、図5に示したマフラ23の一側部に取り付けたマフラーサイドカバー39について説明する。図1に示すように、マフラ23は、エンジンEの後面と後輪8との間におけるエンジンEの下方位置に設けられていることから、このマフラ23の後部近傍がチェーン11に近接した配置となる。そのため、マフラーケース30の外面における後方上部には、走行するチェーン11から飛散したグリスが付着する。マフラーケース30は内部を流動する排気Gによって高温になっているので、前記付着したグリスが加熱されてマフラーケース30の外面に焼き付く状態となり、マフラ23の外観を損なうことがある。そこで、マフラ23には、グリスが付着する可能性のある外面部分を前記マフラーサイドカバー39で覆うようにしている。
図15は前記マフラーサイドカバー39を備えたマフラ23を示す正面図、図16は同マフラ23の右側面図、図17は図16のXVII−XVII線に沿った断面図である。前記マフラーサイドカバー39は、板材からなり、図15に示すように、マフラ23に取り付けたときの美観を保つことを目的として、マフラーケース30の外面における、チェーン11から飛散したグリスが付着する可能性があり、かつ車体の外方から見える後部上方の角部付近を含め、左側の側面のほぼ全体を覆う大きな長方形状を有している。このマフラーサイドカバー39は、図16に示すように、マフラーケース30における前側フランジ部37および後側フランジ部38に架け渡す状態で溶接45により固定されている。なお、図15に示すように、マフラ23は、左右一対のステー64を介してスイングアームブラケット(図示せず)に支持されている。
図16から明らかなとおり、前記マフラーサイドカバー39が取り付けられているマフラーケース30における前後両側のフランジ部37,38は、マフラーケース30の筒部32の外周面よりも外側方に突出している。したがって、前記両フランジ部37,38間に架け渡す配置とされたマフラーサイドカバー39は、図17に示すように、筒部32との間に隙間を有する。隙間は、チェーン11から飛散したグリスを導入する空間63を形成する。マフラーサイドカバー39の上端部には、上方斜め外側方に向け傾斜しながら突出するガイド部39aが屈曲形成されており、このガイド部39aがグリスを空間63内に導入するようにガイドする。さらに、マフラーサイドカバー39には補強用の凹凸を形成するための複数の突起39bが形成されている。これら突起39bは、マフラーケース30の前後方向に沿って互いに平行に延びた複数の突条からなる。
前記マフラーサイドカバー39が取り付けられたマフラ23では、チェーン11から飛散したグリスが、マフラーサイドカバー39のガイド部39aによって前記空間63内に導入されて、マフラーケース30の左側の外面およびマフラーサイドカバー39の内側面に付着する。マフラーケース30の筒部32に付着したグリスは焼き付くが、このグリスの焼き付きは、マフラーサイドカバー39により隠蔽されて、車体の外方からは視認できないので、グリスの付着により美観を損なうことが防止される。マフラーケース30におけるマフラーサイドカバー39よりも上方箇所は、エンジンEにより車体の左側方から見えないように隠蔽される。
また、マフラーサイドカバー39の外面には、ガイド部39aによってグリスが殆ど付着しないが、マフラーサイドカバー39の外面にグリスが付着しても、このグリスは拭き取ることで容易に除去できる。これは、マフラーサイドカバー39が空間63を介してマフラーケース30の筒部32から離間しているので、マフラーサイドカバー39が筒部32からの伝熱により高温になることがないから、このマフラーサイドカバー39の外面に付着したグリスが焼き付くことがないからである。また、マフラーサイドカバー39は、突起39bによって補強されているので、走行時の車体の振動によるびびり音の発生が防止される。
図12に示した整流板62A,62Bは、U字状の折返し部49bの有無にかかわらず使用されて、整流効果を発揮する。図18に示す第2実施形態では、排気導入管49における触媒コンバータ82の上流側に位置するほぼ真直な触媒入口通路61Aに、排気Gの偏りを抑制する整流板72が配設されている。この整流板72は、平板を排気Gの流動方向を中心に捩じって形成されている。これにより排気Gに前記中心周りの旋回を与えて、通路横断面内での排気Gの偏りが抑制される。
図19に示す第3実施形態では、触媒入口通路61Aが下流に向かって拡径する円錐台形状となっており、これに合わせて、整流板73が、円錐台形状の前後開口した筒体によって形成されている。これにより、整流板73が排気Gを触媒入口通路61Aの外周部に沿うように案内して、排気Gが円錐台状の触媒入口通路61Aの中心部に集中するのを防止する。