JP4559871B2 - 固体酸触媒及び固体酸触媒によるニトリル化合物の製造方法 - Google Patents
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Description
このような中で、ゼオライト、ペルフルオロスルホン酸樹脂などの固体酸触媒は反応系からの回収、再利用が容易であることから酸触媒として注目されており、有機反応を有効に進行させる固体触媒として、ポリスチレン樹脂にペンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メタン(C6F5CHTf2)を担持させた「スーパー酸触媒」が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
また、チタン成分、ニオブ成分及びアルカリ金属成分を含む層状金属酸化物を合成し、この層間のアルカリ金属カチオンを、有機アミン又は有機アンモニウムカチオンと交換してポリアニオンナノシートを合成し、更に二次元凝集させた固体酸触媒、特にTi/Nb比が1.1〜1.5において極めて活性が高い固体酸触媒が提案されている(例えば、非特許文献2、非特許文献3及び特許文献1参照)。
しかしながら、前記の固体酸触媒は、原料前駆体を高温で焼成することにより層状金属酸化物を得、この層状金属酸化物中の金属アルカリイオンを酸によりプロトン交換して、酸型の層状金属酸化物とし、更にこの層を剥離するために、有機アミン又は有機アンモニウムカチオンで層間のプロトンを交換して層の剥離を行ってポリアニオンナノシートとし、更に酸を加えてポリアニオンナノシートを二次元凝集させて固体酸触媒を得るという煩雑な工程が必要である。また、500〜1500℃での高温焼成工程が必要であるために得られる層状金属酸化物の粒子径が大きくなり、従って層剥離によって得られるポリアニオンナノシートの粒子径も大きくなるという問題があった。その結果、固体酸触媒の活性、特にエステル化反応、エステル加水分解反応、アミド化反応、アミド脱水縮合反応又はニトリル化反応における活性は未だ満足できるものではなかった。
すなわち、本発明はプロトン及び/又は有機カチオンを含む層状チタン酸ナノシートを含有する固体酸触媒であって、該層状チタン酸ナノシートが、チタンアルコキシド又は水酸化チタンを、有機カチオンを生成する化合物と接触させることにより得られるものである固体酸触媒、及び該固体酸触媒からなる、エステル化触媒、エステルの加水分解触媒、アミド化触媒、アミド脱水縮合触媒又はニトリル化触媒である。また、該触媒の存在下でニトリル化合物を製造する方法である。
ここで用いられるチタン又はシリコンのアルコキシドは、チタン又はシリコンと、アルコール(ROH)のヒドロキシ基からプロトンが脱離したアルコラート(RO−)との、アルコラート錯体を意味する。
該チタンアルコキシドは、水と混合することにより、又は水と混合した後、加熱することにより加水分解されて水酸化チタンを生成することができる。
該チタン塩は、水と混合することにより、又は水と混合した後、加熱することにより加水分解されて水酸化チタンを生成することができるが、その際、更にアルカリを共存させてもよい。該共存させるアルカリ化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類水酸化物、更にはアンモニアやアミン類を挙げることができる。これらの中でも、入手のし易さ、取り扱い性の観点から、アルカリ金属水酸化物、アンモニア及びアミン類がより好ましい。
アルカリの添加量は、チタン塩水溶液のpHが2以上となる量、より好ましくはpHが4以上となる量である。
該シリコンアルコキシドは、水と混合することにより、又は水と混合した後、加熱することにより加水分解されてシリケートを生成することができる。
シリケートを生成するシリコン化合物としては、シリカゾル、シリカゲル、水ガラスなどが挙げられるが、シリカゾルが好ましい。
該シリコン化合物は、水と混合することにより、又は水と混合した後、加熱することにより加水分解されてシリケートを生成することができるが、その際、更にアルカリを共存させてもよい。該共存させるアルカリ化合物としては、上記と同様のものが挙げられる。これらの中でも、入手のし易さ、取り扱いの容易さの観点から、アルカリ金属水酸化物、アンモニア及びアミン類がより好ましい。
アミン類とは、アンモニアの水素原子の1個又は2個以上の水素原子が炭化水素残基Rで置換された化合物で、窒素原子上の置換基の数により第1級アミン(RNH2)、第2級アミン(RR’NH),第3級アミン(RR’R’’N)に分類することができる。本発明に用いるアミン類には、上記以外に第4級アンモニウム水酸化物を含む。これらアミン類については、固体酸触媒として用いる場合の反応溶媒への分散性を考慮して、炭素鎖長の異なる様々なアミン類を使用できる。
本発明の固体酸触媒の調製温度は、層状構造を持ったチタン酸ナノシートが生成する温度領域であれば特に限定されず、2〜200℃の範囲で行うことができるが、10〜150℃の温度範囲が好ましく、20〜100℃の範囲がより好ましい。該調製温度が高すぎると、有機カチオンが分解したり、シリケートを含有する場合はシリケートがゲル化したり、或いは層状構造のチタン酸の結晶相の転位により層状構造を呈さなくなる。
チタンアルコキシドとシリコンアルコキシドとの混合物又は水酸化チタンとシリケートとの混合物と、アミン類との混合比率は、(チタン源+シリコン源)/アミン類(モル比)が4以下、好ましくは、0.1〜2の範囲である。ここで、シリコンアルコキシド又はシリケートを総称してシリコン源という。
また、チタン源とシリコン源の混合比率は、触媒活性の点から、(Si/Ti)質量比で0.8/100〜20/100が好ましく、0.8/100〜14/100がより好ましい。
チタンアルコキシドとシリコンアルコキシドとの混合物又は水酸化チタンとシリケートとの混合物を含む溶液又は懸濁液中のチタン濃度は、TiO2とSiO2に換算した総和において10質量%以下、好ましくは2質量%以下、更に好ましくは0.2質量%以下である。
加水分解の温度及び時間は、用いるチタン源、シリコン源に応じて適宜選択することができる。また、チタン源のチタン成分とともに、他の元素、例えば、バナジウム成分、ニオブ成分、タンタル成分、ジルコニウム成分、アルミニウム成分、鉄成分などを共存させて、複合化することもできる。
なお、層状構造を持つチタン酸ナノシートの生成は、X線回折、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察などにより確認することができる。例えば、有機カチオンとして、第4級アンモニウム塩を用いて反応させた場合、カチオンサイズが大きくなるにしたがって層間隔は増加することがX線回折より確認されており、有機カチオンは層間に存在しているものと考えられる。このことから、特に炭素数が2以上のアルキル基を有する有機カチオンを含む層状チタン酸ナノシートが、有機溶媒への分散性を良好にし、固体酸触媒として幅広く使用できるものにしていると推定される。
なお、ここでチタン酸ポリアニオンナノシートは、チタンを中心とした8個の酸素との8面体構造を基本ユニットとし、このユニットが平面状に並んだ構造を有する。具体的には3チタン酸、4チタン酸、5チタン酸、6チタン酸、レピドクロサイト型などの構造を有するチタン酸ナノシートである。
このようにして得られるプロトン及び/又は有機カチオンを含む層状チタン酸ナノシート、更にプロトン及び/又は有機カチオンとシリケートとを含む層状チタン酸ナノシートは、溶液のまま、もしくは溶媒を除去して乾燥させた後に得られる粉末は固体酸触媒、特にエステル化触媒、エステルの加水分解触媒又はアミド化触媒又はアミド脱水縮合触媒又はニトリル化触媒として有効である。以下、このニトリル化触媒について詳述する。
実施例1(触媒Aの調製)
イソプロピルアルコール10mLにチタンテトライソプロポキシド33.54g(118mmol)を溶解させてチタンテトライソプロキシド溶液を得た。
10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(和光純薬工業株式会社製)352.88g(テトラブチルアンモニウムヒドロキシド:136mmol)を室温下、攪拌しながら、前記チタンテトライソプロキシド溶液を徐々に滴下した。滴下とともにチタンテトライソプロキシド溶液は加水分解して白濁するが、攪拌を続けるとやがて無色透明溶液となった。このときのTiO2換算濃度は約2%であり、Ti/テトラブチルアンモニウムヒドロキシドのモル比は0.87であった。
得られた無色透明溶液をガラス板上に数滴滴下し、乾燥させた膜を用いてX線回折分析を行った。その結果、図1に示すようなX線回折パターンが得られた。このX線パターンでは、d値で16.60(角度2θで5.32°)付近に主ピーク(第1ピーク)が認められ、次いで第2ピークがd=8.56(10.33°)付近に、第3ピークがd=5.71(15.51°)付近に認められた。第1ピークに対して第2ピーク、第3ピークのd値はそれぞれ約1/2及び1/3になっていることから層構造であることが確認でき、第1ピークの相関距離がテトラブチルアンモニウムヒドロキシドの分子サイズに相当することより、層間に有機カチオンが挟まれた構造と推定された。また、無色透明溶液をラマン分光分析した結果、層状チタン酸(レピドクロサイト型層状酸化チタン)に特有の278cm-1、442cm-1、702cm-1付近にピークが認められた。
前記無色透明溶液を、真空乾燥機を用いて60℃で乾燥し、白色粉体(触媒A)を得た。この粉体0.1gに対して水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフランの各溶媒を9.9g添加して攪拌した。攪拌後の様子を目視観察した結果、全ての溶液で透明溶液となっており、チタン酸ナノシートが十分に分散した分散溶液が得られたことを確認できた。
イソプロピルアルコール10mLにチタンテトライソプロポキシド0.34g(1.18mmol)を溶解させてチタンテトライソプロキシド溶液を得た。
ジメチルオクチルアミン0.21g(1.36mmol)を水25g及びイソプロピルアルコール125gの混合溶媒に溶解させ、室温下攪拌しながら、前記チタンテトライソプロキシド溶液を徐々に滴下した。滴下直後より、溶液は白濁したが、攪拌を続け無色透明溶液を得た。このときのTiO2換算濃度は0.06%であり、Ti/ジメチルオクチルアミンのモル比は0.87あった。
この溶液について、ラマン分光分析を行った結果、層状チタン酸(レピドクロサイト型層状酸化チタン)に特有のピークが得られた。
前記無色透明溶液を、実施例1と同様に乾燥して得た白色粉体(触媒B)を用いて、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフランの各溶媒との分散性を評価した結果、全ての溶液で透明溶液となっており、チタン酸ナノシートが十分に分散した分散溶液が得られたことを確認できた。
四塩化チタン1.18mmol(0.22g)を蒸留水150gに氷冷しながら溶解し、溶解後、室温になるまで放置した。その後、5%アンモニア水をpHが7になるまで添加し、水酸化チタンを得た。
水酸化チタンを濾別、洗浄後、再度蒸留水150gを添加し、攪拌しながら10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド溶液3.53g(1.36mmol)を添加した。攪拌を続けると、無色透明溶液になった。このときのTiO2換算濃度は0.06%であり、Ti/テトラブチルアンモニウムヒドロキシドのモル比は0.87であった。
この溶液について、ラマン分光分析を行った結果、層状チタン酸(レピドクロサイト型層状酸化チタン)に類似するピークが得られた。
前記無色透明溶液を、実施例1と同様に乾燥して得た白色粉体(触媒C)を用いて、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフランの各溶媒との分散性を評価した結果、全ての溶液で透明溶液となっており、チタン酸ナノシートが十分に分散した分散溶液が得られたことを確認できた。
10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(和光純薬工業製)3.80g(テトラブチルアンモニウムヒドロキシド:1.46mmol)に蒸留水を加えて147gとした水溶液を室温下攪拌しながら、別に用意したイソプロピルアルコール10mlにTiとSiの比率(Si/Ti)=5.3/100(質量比)となるようにチタンテトライソプロポキシド0.34g(1.19mmol)とシリコンテトラプロポキシド0.02g(0.08mmol)を溶解させた溶液をゆっくり滴下した。滴下とともにチタン及びシリコン原料は加水分解して白濁するが、攪拌を続行するとやがて無色透明溶液となった。この溶液は(Ti+Si)/テトラブチルアンモニウムカチオンのモル比は、0.87である。この溶液の溶媒を留去して濃縮し、TiO2及びSiO2換算の総和で0.1gの粉体(触媒D)を含む懸濁液10mlを得た。
ジメチルオクチルアミン0.22g(1.46mmol)を水25g及びイソプロピルアルコール125gの混合溶媒に溶解させ、室温下、攪拌しながら、別に用意したイソプロピルアルコール10mlに、シリコンとチタンの比率(Si/Ti)=5.3/100(質量比)となるようにチタンテトライソプロポキシド0.34g(1.19mmol)とシリコンテトラエトキシド0.02g(0.08mmol)を溶解させた溶液をゆっくり滴下した。滴下直後より、溶液は白濁したが、攪拌を続行することで無色透明溶液を得た。この溶液の溶媒を留去して濃縮してTiO2及びSiO2換算の総和で0.1gの粉体(触媒E)を含む懸濁液10mlを得た。
水25g及びイソプロピルアルコール125gの混合溶媒に、ジメチルオクチルアミン0.23g(1.51mmol)を溶解させた溶液と、別に用意したイソプロピルアルコール10mlに、シリコンとチタンの比率(Si/Ti)=13.8/100(質量比)となるようにチタンテトライソプロポキシド0.30g(1.06mmol)とシリコンテトラプロポキシド0.07g(0.25mmol)を溶解させた溶液を使用した以外は実施例2と同様の操作を行った。調製した溶液の溶媒を留去・濃縮してTiO2及びSiO2換算の総和で0.1gの粉体(触媒F)を含む懸濁液10mlを得た。
イソプロピルアルコール10mLにチタンテトライソプロポキシドを33.54g(118mmol)を溶解させてチタン源を得た。
25%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド49.59g(136mmol)に蒸留水を添加して全体を150gとした。これに前記チタン源を徐々に滴下した。滴下とともにチタン源は加水分解して白濁するが、攪拌を続けるとやがて無色透明溶液となった。
得られた溶液についてX線回折分析を行った結果、層構造を示すX線回折パターンが得られ、生成したチタン酸が層間に有機カチオンを挟んだ層構造であることが確認できた。
前記無色透明溶液を、実施例1と同様に乾燥して得た白色粉体(触媒G)を用いて、実施例1と同様にして分散性を評価した。その結果、水への分散性は良好なものの、有機溶媒中では全く分散せず、沈降した状態であった。
撹拌器、ガス導入管、温度計及び脱水装置を装備した四つ口フラスコに、触媒A、1gとオレイン酸(花王(株)製、商品名ルナック0-A)500gを混合し、反応温度300℃で1000ml/minのアンモニアガスを導入して反応させた。得られた反応生成物をガスクロマトグラフィー[ガスクロ装置:HEWLETT PACKARD Series 6890、カラム:J & W Scientific 製HP−5(カラム内径×長さ:0.25mm×60m)]で組成分析してニトリルの生成量を測定した。結果を表1に示す。尚、反応終了時間は、アンモニアガスを導入してから、上記のガスクロマトグラフィー法の測定で脂肪族アミドが検出限界以下になるまでの時間である。
実施例7において、触媒Aの代わりに触媒B〜Eを含む懸濁液各100mL(触媒B〜Fとして各1g)を使用した以外は実施例7と同様に行った。その結果を表1に示す。
実施例7において、触媒Aの代わりに触媒Gを用いて実施例7と同様に行なった。その結果を表1に示す。
Claims (7)
- プロトン及び/又は有機カチオンを含む層状チタン酸ナノシートを含有する固体酸触媒であって、該層状チタン酸ナノシートが、チタンアルコキシド又は水酸化チタンを、有機カチオンを生成する化合物と接触させることにより得られるものである固体酸触媒。
- 有機カチオンが、炭素数2以上のアルキル基を有する、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン及び第4級アンモニウム水酸化物から選ばれる少なくとも1種のアミン類に由来する有機カチオンである請求項1に記載の固体酸触媒。
- プロトン及び/又は有機カチオンを含む層状チタン酸ナノシートが、更にシリケートを含有する請求項1又は2に記載の固体酸触媒。
- プロトン及び/又は有機カチオンを含む層状チタン酸ナノシートが、チタンアルコキシドとシリコンアルコキシドとの混合物又は水酸化チタンとシリケートとの混合物を、有機カチオンを生成する化合物と接触させることにより得られるものである請求項3に記載の固体酸触媒。
- プロトン及び/又は有機カチオンを含む層状チタン酸ナノシートが、シリコン化合物及びチタン化合物を含む溶液又は懸濁液と、有機カチオンを生成する化合物を含む溶液とを混合して得られるものである請求項3又は4に記載の固体酸触媒。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の固体酸触媒からなる、エステル化触媒、エステルの加水分解触媒、アミド化触媒、アミド脱水縮合触媒又はニトリル化触媒。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の固体酸触媒の存在下、脂肪酸又はこれらのアルキルエステル(アルキル基の炭素数は1〜5)とアンモニアからニトリル化合物を製造する方法。
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