JP4545860B2 - 多層発泡シート及び容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する分野】
本発明は、多層発泡シート及び該多層発泡シートから得られる容器に関し、より詳しくは成形性、軽量性、剛性が優れた多層発泡シートであって、深絞り成形に好適な多層発泡シート、及び該多層発泡シートから熱成形によって得られる印刷性及び剛性に優れる容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ポリスチレン系樹脂発泡シートの少なくとも片面に熱可塑性樹脂フィルムを積層した多層発泡シートが知られ、該多層発泡シートから熱成形によって得られた、弁当箱、トレイ、丼、カップ等が食品用容器として広く用いられてきた。
【0003】
上記多層発泡シートの中でも丼、カップ等の深絞り容器の成形に使用される多層発泡シートは、軽量であると同時に剛性がなければならない。又、金型再現性、深絞り成形性が優れていることも要求される。更に、該多層発泡シートを熱成形することによって得られた容器の場合は、商品価値を高めるために表面が美麗で印刷性が良好であることが重要な特性として要求される。
【0004】
上記深絞り成形容器を美しく仕上げ、その表面に美麗な印刷を施すには、該容器の表面は平滑で凹凸がないものでなければならず、そのためには該容器の成形に使用する多層発泡シートの表面が平滑であることが要求される。従来は、多層発泡シートの表面を平滑に仕上げる方法として、多層発泡シートを構成するポリスチレン系樹脂発泡シートの押出発泡時に、該シートの表面に空気を吹きかけて冷却することによって表層を平滑にし、該平滑な表層の上に熱可塑性樹脂フィルムを積層することによって多層発泡シートの表面を平滑にすることが行われてきた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記方法によって表層が平滑にされた従来のポリスチレン系樹脂発泡シートは、熱成形時に発泡シートの破れや透孔が発生しやすいという問題が発生していた。又、発泡シートの表層と内部の加熱条件が異なるので、加熱条件の温度範囲が狭く、従来の多層発泡シートから熱成形によって得られた容器は、金型再現性が悪いという問題も発生していた。
【0006】
更に、多層発泡シートを熱成形することによって得られた容器は、軽量で断熱性に富むことが要求されると同時に、剛性が優れていることも要求される。
しかしながら、軽量性及び断熱性と、剛性とは相反する特性であって、これらの物性を同時に付与するのは極めて困難であった。即ち、多層発泡シートを構成する樹脂量を少なくしたり、発泡倍率を大きくすれば、軽量性や断熱性は容易に改良することができるが、同時に多層発泡シートの剛性が低下するので、該シートから熱成形によって得られた容器は開口部の剛性が不十分になるという問題があった。
【0007】
従来は上記問題を解決することができなかったので、剛性に優れると共に深絞り成形性に優れ、更に表面が平滑な多層発泡シートを製造することは困難であった。その結果、従来の多層発泡シートから得られる容器は、容器開口部の剛性に優れ、外観が美しく、美麗な印刷が施された深絞りの容器を得ることができなかった。
【0008】
本発明は、熱成形における加熱条件の温度範囲が広く、深絞り形状の容器を成形しても発泡シートに破れや透孔が発生することがなく、金型の形状をそのまま再現できると共に表面が平滑な多層発泡シート、及び表面が美麗で印刷性に優れ、軽量性、断熱性に富むと同時に容器の開口部等の剛性に優れた容器を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決する手段】
本発明の多層発泡シートは、ポリスチレン系樹脂発泡層と該ポリスチレン系樹脂発泡層に積層された熱可塑性樹脂層とからなり、ポリスチレン系樹脂発泡層が、熱可塑性樹脂層積層側の発泡層表面を含む第一発泡層と、熱可塑性樹脂層積層側の反対側の発泡層表面を含む第二発泡層とを含む二層以上の発泡層とからなる多層発泡シートにおいて、第二発泡層の厚さt2と第一発泡層の厚さt1との比(t2/t1)が、0.18〜1であり、熱可塑性樹脂層積層側の発泡層表面から厚さ0.4mmまでの発泡層の密度が70kg/m 3 以上130kg/m 3 未満であると共に、熱可塑性樹脂層積層側の反対側の発泡層表面から厚さ0.4mmまでの発泡層の密度が70kg/m 3 を超え130kg/m 3 未満であって、熱可塑性樹脂層積層側の発泡層表面から厚さ0.4mmまでの発泡層の密度が、熱可塑性樹脂層積層側の反対側の発泡層表面から厚さ0.4mmまでの発泡層の密度より低く、且つ上記熱可塑性樹脂層積層側の発泡層表面から厚さ0.4mmまでの発泡層の厚さ方向平均気泡径L1が35〜180μmであると共に、上記熱可塑性樹脂層積層側の反対側の発泡層表面から厚さ0.4mmまでの発泡層の厚さ方向平均気泡径L2が150〜450μmである(但し、厚さ方向平均気泡径L2>厚さ方向平均気泡径L1)ことを特徴とする。
【0011】
上記熱可塑性樹脂層積層側の発泡層表面の表面気泡数は、120〜500個/4mm2であることが好ましい。
【0014】
本発明の容器は、上記多層発泡シートを熱成形して得られた容器であって、熱可塑性樹脂層が外面側に位置することを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の多層発泡シートは、図1に示すように、ポリスチレン系樹脂発泡層(以下、「発泡層」という。)と熱可塑性樹脂層とから構成される。図1において、1は多層発泡シートを、2は発泡層を、3は熱可塑性樹脂層積層側の発泡層表面から厚さ0.4mmまでの発泡層(以下、「熱可塑性樹脂層積層側発泡層」という。)を、4は熱可塑性樹脂層積層側の反対側の発泡層表面から厚さ0.4mmまでの発泡層(以下、「露出側発泡層」という。)を、5は熱可塑性樹脂層を、6は第一発泡層を、7は第二発泡層を、l3は熱可塑性樹脂層積層側発泡層の厚さ0.4mmを、l4は露出側発泡層の厚さ0.4mmをそれぞれ示す。
【0016】
上記発泡層2を構成する基材樹脂は、ポリスチレン系樹脂であって、該ポリスチレン系樹脂はスチレンの単独重合体及び共重合体を包含する。該共重合体は、下記の一般式(1)で表されるスチレン系モノマーを共重合成分として含有するものが好ましく、該共重合成分のモノマー単位の含有量は、25重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましい。
【0017】
【化1】
上記一般式(1)において、Rは水素原子またはメチル基を示し、Zはハロゲン原子またはメチル基を示し、pは0または1〜3の整数である。
【0018】
上記スチレンの単独重合体や共重合体は、ポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリスチレン−ポリフェニレンエーテル共重合体、ポリスチレンとポリフェニレンエーテルとの混合物などが例示される。
【0019】
上記ポリスチレン系樹脂は、ビカット軟化点が100℃以上であることが好ましく、電子レンジの加熱に耐え得る耐熱性を有するという観点からは、110℃以上であることがより好ましい。ビカット軟化点が100℃未満の場合は、熱成形によって得られる容器の耐熱性が悪く、熱湯を入れると容器が変形する虞がある。
尚、該ビカット軟化点はJIS K7206(試験荷重はA法、伝熱媒体の昇温速度は50℃/時)にて求められる。
【0020】
本発明で用いられるポリスチレン系樹脂は、その溶融粘度が、190℃、剪断速度100/secの条件において、20Pa・s〜10000Pa・sであることが好ましく、100〜5000Pa・sであることがより好ましい。該溶融粘度が20Pa・s未満では、発泡層形成時にダイより押出された溶融樹脂を引取ることができず、発泡層2の形成が困難になる虞れがある。一方、10000Pa・sを超えると、粘度が高すぎて押出圧力が上昇しすぎて押出成形が困難になり、良質の発泡層2を得ることができなくなる虞れがある。
【0021】
上記ポリスチレン系樹脂に、脆性改善等を目的として耐衝撃性ポリスチレン、スチレン−共役ジエンブロック共重合体や、該共重合体の水添物を添加することができる。
【0022】
又、上記ポリスチレン系樹脂には、本発明の目的を著しく損なわない範囲で、必要に応じて各種の添加剤、例えば、造核剤、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、導電性付与剤、耐候剤、紫外線吸収剤、難燃剤、無機充填剤等を添加することができる。
【0023】
発泡層2を形成するための気泡調整剤としては、タルク、カオリン、マイカ、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、クレー、酸化アルミニウム、ベントナイト、ケイソウ土等の無機物粉末、又は重炭酸ナトリウム、クエン酸モノナトリウム塩等が例示される。これらの気泡調整剤は、通常は単独で使用されるが2種以上組合せて用いてもよい。
【0024】
気泡調整剤として用いる無機物粉末は、粒子径が小さいほど発泡層2の気泡径を小さくする効果が大きいので、使用量が少なくても気泡径を小さくすることができる。かかる観点から無機物粉末の平均粒子径(遠心沈降法)は30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることが更に好ましい。但し、平均粒子径が小さくなるほど加工に費用がかかり、無機物粉末の価格が高くなるので、0.1μmを下限とすることが好ましい。上記無機物粉末の中でも、タルクが気泡径を小さくする効果が大きいと共に安価なので最も好ましい。
【0025】
発泡層2の形成に用いる発泡剤としては、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ブタンとi−ブタンとの混合物、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロブタン、シクロペンタン等の環式脂肪族炭化水素、トリクロロフロロメタン、ジクロロジフロロメタン、1,1−ジフルオロエタン、1,1−ジフルオロ−1−クロロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、メチルクロライド、エチルクロライド、メチレンクロライド等のハロゲン化炭化水素およびこれらの混合物等の揮発型発泡剤を使用することができる。
【0026】
又、本発明においては、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾビスイソブチロニトリル、重炭酸ナトリウム等の分解型発泡剤を使用したり、二酸化炭素等の無機ガスや水を使用することもできる。更に、上記各種の発泡剤を適宜混合して用いることもできる。
但し、オゾン層の破壊等環境へ悪影響のを及ぼすことが少ないハロゲン化水素を含まないものを使用することが好ましい。
【0027】
上記発泡剤は、特に限定されず、目標とする発泡層2の密度に対応して適宜選択することができる。
【0028】
本発明においては、熱可塑性樹脂層積層側発泡層3の密度は、露出側発泡層4の密度より小さい。発泡層2がこのように構成されていると、軽量であっても剛性に優れた多層発泡シート1を得ることができ、更にかかる構成の多層発泡シート1から熱成形によって得られる容器の開口部の剛性は、従来の多層発泡シートから得られた容器の開口部の剛性より優れている。即ち、本発明の多層発泡シート1は、密度が低くて軽い熱可塑性樹脂層積層側発泡層3を芯材として、該熱可塑性樹脂層積層側発泡層3の一方の面には密度が高い無発泡の熱可塑性樹脂層が積層され、他方の面には密度が高く剛性に富む露出側発泡層4が積層されて、全体として曲げ応力に対して強い剛性を発揮するサンドイッチ構造を有しているので、従来の多層発泡シートより強度、特に剛性が優れている。
【0029】
又、熱可塑性樹脂層積層側発泡層3の密度は、露出側発泡層4の密度より小さいので、従来の多層発泡シートと比較すると発泡層の密度が同一であっても、露出側発泡層4の密度が大きく表面硬度が高いので、発泡層の表面に傷がつきにくい。
【0030】
上記熱可塑性樹脂層積層側発泡層3の密度は70kg/m3以上130kg/m3未満であり、軽量であって耐熱性、剛性に優れているという点からは75kg/m3以上130kg/m3未満であることが好ましく、更に剛性と経済性にも優れているという点から、80kg/m3以上130kg/m3未満であることが好ましい。該密度が、70kg/m3未満の場合は、熱成形を行なう際に該発泡層の伸び不足により、熱可塑性樹脂層積層側発泡層3と熱可塑性樹脂層5との界面において熱可塑性樹脂層積層側発泡層3に破れや透孔が発生する虞がある。
一方、該密度が130kg/m3以上の場合は、熱成形によって得られた容器の断熱性が低下したり、衝撃を受けると割れやすくなる虞があり、経済性も低下する。
【0031】
熱可塑性樹脂層積層側発泡層3の密度が70kg/m3以上130kg/m3未満であると共に、上記露出側発泡層4の密度は70kg/m3を超え130kg/m 3 未満であり、軽量であって耐熱性、剛性に優れているという点からは75kg/m3を超え130kg/m 3 未満であることが好ましく、更に剛性と経済性にも優れているという点からは80kg/m3を超え130kg/m 3 未満であることが好ましい。該密度が、70kg/m3以下の場合は、熱成形を行なう際に、露出側発泡層4の伸び不足により得られる容器に破れや透孔が発生する虞や、熱成形によって得られる深絞り形状の容器の剛性が小さくなって容器としての機能が低下する虞がある。一方、該密度が130kg/m 3 以上の場合は、熱成形によって得られた容器の断熱性が低下したり、衝撃を受けると割れやすくなったり、経済性が低下する虞がある。
【0032】
上記露出側発泡層4の密度は、露出側発泡層4の表面を基準として、該表面から厚さ約0.4mmで切出した長方形の試験片について重量と体積を測定し、該測定によって得られた重量を体積で割って求めるものとする。試験片の体積は、試験片の縦方向長さに横方向長さを掛けて算出した面積に、試験片の厚さを掛けて求め、該試験片の厚さはJISB7503に規定されたダイヤルゲージ(例えば、株式会社尾崎製作所製「PEACOCK型式H」)を使用して求める。
【0033】
熱可塑性樹脂層積層側発泡層3の密度は、熱可塑性樹脂層5の表面を基準として、推定される熱可塑性樹脂層5の厚さに0.4mmを加えた厚さを有する長方形の試験片を切出し、該試験片について重量と体積を測定し、該測定によって得られた重量から熱可塑性樹脂層5の重量を引いて熱可塑性樹脂層積層側発泡層3の重量を求め、該熱可塑性樹脂層積層側発泡層3の重量を熱可塑性樹脂層積層側発泡層3の体積で割って求めるものとする。
【0034】
上記熱可塑性樹脂層5の重量は、顕微鏡を用いて撮影した上記長方形の試験片の断面写真から求めた熱可塑性樹脂層5の厚さに、試験片の縦方向長さと横方向長さと熱可塑性樹脂層5を構成している樹脂の密度を掛けて求める。上記熱可塑性樹脂層積層側発泡層3の体積は、上記ダイヤルゲージを用いて試験片全体の厚さを再度測り、該厚さから上記断面写真から求めた熱可塑性樹脂層5の厚さを引くことよって正確な熱可塑性樹脂層積層側発泡層3の厚さを求め、該厚さに試験片の縦方向長さと横方向長さを掛けて求める。
【0035】
本明細書において、露出側発泡層4と熱可塑性樹脂層積層側発泡層3の密度は、上記方法によって測定し、kg/m3単位で小数点以下1桁目を四捨五入して求めることとする。
【0036】
上記熱可塑性樹脂層積層側発泡層3の厚さ方向平均気泡径L1は35〜180μmである。平均気泡径L1が35μm未満の場合は、熱成形する際に熱可塑性樹脂層5と熱可塑性樹脂層積層側発泡層3との界面において、熱可塑性樹脂層積層側発泡層3に破れや透孔が発生する虞がある。一方、平均気泡径L1が180μmを超える場合は、熱可塑性樹脂層積層側発泡層3の表面が凹凸状になるので、熱可塑性樹脂層5の表面平滑性が悪くなり、熱成形によって得られる容器の外面側表面の印刷性が低下する虞がある。
【0037】
露出側発泡層4の厚さ方向平均気泡径L2は、150〜450μmである。露出側発泡層4の厚さ方向平均気泡径L2が、150μm未満の場合は、深絞り形状の成形を行うと、破れや透孔が発生する虞がある。一方、平均気泡径L2が450μmを超える場合は、外観が悪くなり、断熱性も低下する虞がある。
【0038】
本発明においては、露出側発泡層4の厚さ方向平均気泡径L2は常に熱可塑性樹脂層積層側発泡層3の厚さ方向平均気泡径L1より大きい(平均気泡径L2>平均気泡径L1)。
露出側発泡層4の厚さ方向平均気泡径L2が熱可塑性樹脂層積層側発泡層3の厚さ方向平均気泡径L1と等しい場合、又は露出側発泡層4の厚さ方向平均気泡径L2が熱可塑性樹脂層積層側発泡層3の厚さ方向平均気泡径L1より小さい場合は、深絞り形状の成形を行うと露出側発泡層4において、破れや透孔が発生する虞がある。また、熱可塑性樹脂層積層側発泡層3の表面が凹凸状になるので、表面平滑性が悪くなって熱成形によって得られる容器の外面側に美麗な印刷ができない虞がある。
【0039】
本明細書における各発泡層の表面から厚さ0.4mmまでの発泡層の厚さ方向平均気泡径は、次のように求める。
まず多層発泡シート1における押出方向に対して垂直な断面、即ち押出方向と直交する幅方向と厚さ方向で定まる面を顕微鏡で撮影し、各々の断面写真について厚さ方向に直線lを引き、直線lと交わる露出側発泡層4の表面から0.4mmの厚さt4までの全ての気泡の数n4、及び直線lと交わる熱可塑性樹脂層積層側発泡層3の表面から0.4mmの厚さt3までにおける全ての気泡の数n3を数える。
このようにして得られたt4とn4から各断面写真について露出側発泡層4の気泡径(t4/n4)を計算し、又t3とn3とから各断面写真について熱可塑性樹脂層積層側発泡層3の気泡径(t3/n3)を計算する。このように露出側発泡層4の気泡径と熱可塑性樹脂層積層側発泡層3の気泡径を測定し、前者の平均値を露出側発泡層4の厚さ方向平均気泡径L2とし、後者の平均値を熱可塑性樹脂層積層側発泡層3の厚さ方向平均気泡径L1とする。
【0040】
上記熱可塑性樹脂層積層側発泡層3の表面気泡数は、120〜500個/4mm2であることが好ましい。表面気泡数が120個/4mm2未満の場合は、熱可塑性樹脂層5の表面平滑性が不充分なものとなって印刷性が悪くなる虞がある。一方、表面気泡数が500個/4mm2を超えると、連続気泡率が増大して熱成形する際の発泡層2の二次発泡性が悪くなる虞がある。
【0041】
上記表面気泡数の測定は、顕微鏡(株式会社キーエンス製デジタルHDマイクロスコープVH−700)を用いて、熱可塑性樹脂層積層側発泡層3の表面をテレビ画面上に拡大して写し、該拡大された画面上において実際の試料面積4mm2に相当する面積内の気泡径の数を測定する。具体的には、後述する方法によって作製した縦2mm以上、横2mm以上の測定試料を、顕微鏡の試料台に発泡層の表面がテレビ画面に写し出されるように水平に置き、拡大倍率100倍(面積の拡大倍率で10000倍)に拡大して、テレビ画面上において400cm2(実際の試料面積4mm2に相当する)範囲内の気泡数を測定する。尚、露出側発泡層4の表面気泡数を測定する場合も同様である。
【0042】
本明細書における熱可塑性樹脂層積層側発泡層3の表面気泡数の測定において使用する試験片の作製は、熱可塑性樹脂層5の表面を基準として、該表面から熱可塑性樹脂層5の厚さに50μmを加えた厚さに試験片を切出すことによって行なう。熱可塑性樹脂層5の厚さは、予め顕微鏡を用いて撮影した多層発泡シート1の断面写真から求める。
尚、露出側発泡層4の表面気泡層を測定する場合は、露出側発泡層4の表面を基準として切出した厚さ50μmの試験片を使用する。
【0043】
上記表面気泡数の測定においては、テレビ画面上の20cm角の正方形の内側を残してその周囲をマスキングテープ等で貼り、該正方形の内部に存在する気泡数を数える。尚、上記正方形の境界線上に気泡が存在している場合は、相対する一の辺を跨っている気泡は測定の対象とするが、相対する他の辺を跨っている気泡は測定の対象としない。
【0044】
本発明における発泡層2の厚さは、0.5〜6mmが好ましく、0.8〜5mmがより好ましく、深絞り成形をする際は1.0〜4mmがとくに好ましい。該発泡層2の厚さが0.5mm未満の場合は、多層発泡シート1を熱成形して得られる容器の強度や断熱性が低下する虞がある。6mmを超える場合は、多層発泡シート1を熱成形する際に発泡層2の内部と外部との間において加熱ムラが発生しやすく、金型の形状を再現した容器を得ることができない虞がある。
【0045】
本明細書における多層発泡シート1の厚さ、熱可塑性樹脂層5の厚さ、発泡層2の厚さ、後述する第一発泡層6の厚さ、第二発泡層7の厚さは、多層発泡シート1の押出方向に対して垂直方向の断面を顕微鏡で撮影し、その写真より求めるものとする。
【0046】
本発明の発泡層の連続気泡率は、40%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、20%以下であることが特に好ましい。該連続気泡率が、40%を超えると、熱成形時の二次発泡性や得られる容器の強度等の物性が悪くなる虞がある。
【0047】
上記発泡層の連続気泡率の測定は、ASTM D2856の手順Cに準拠して行う。尚、連続気泡率の測定に用いる発泡層の体積は、測定試料の面積と発泡層の厚さから算出し、該発泡層の厚さは前記の顕微鏡を使用する方法で求めた値を用いるものとする。
【0048】
本発明の多層発泡シート1は、発泡層2に熱可塑性樹脂層5が積層されている。該熱可塑性樹脂層5に用いられる樹脂としては、ポリ塩化ビニル等の塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン等のポリスチレン系樹脂、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、及びこれらの樹脂の混合物が挙げられる。
【0049】
上記各種の樹脂の中でも、熱可塑性樹脂層積層側発泡層3との接着性、熱成形性、印刷性の点から、熱可塑性樹脂層積層側発泡層3の基材樹脂と同様のポリスチレン系樹脂を使用することが好ましく、柔軟性があって取り扱いやすい点で、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂がより好ましい。
【0050】
尚、上記熱可塑性樹脂層には、本発明の目的を著しく損なわない範囲で、必要に応じて各種の添加剤、例えば、造核剤、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、導電性付与剤、耐候剤、紫外線吸収剤、難燃剤、無機充填剤等を添加することができる。
【0051】
熱可塑性樹脂層5は少なくとも一層の樹脂層からなり、上記各種の樹脂の中から同種又は異なる種類の樹脂を選択し、複数の層からなる樹脂層として構成することもできる。
【0052】
熱可塑性樹脂層5の厚さは、10〜500μmが好ましく、50〜300μmがより好ましい。該熱可塑性樹脂層5の厚さが10μm未満の場合は、熱成形の際に破れや透孔が発生する虞があり、熱成形によって得られた容器の開口部等の剛性が低下する虞もある。一方、500μmを超える場合は、加熱時間を長くしなければならなくなるので、発泡層2が加熱されすぎて凹凸が発生して外観不良になる虞がある。
【0053】
本発明の発泡層2は、熱可塑性樹脂層積層側の発泡層表面を含む第一発泡層6と、熱可塑性樹脂層積層側の反対側の発泡層表面を含む第二発泡層7とを含む二層以上の発泡層からなることが好ましい。かかる構成を採用すると、発泡層2の各々の発泡層表面における密度や平均気泡径の調整が容易になるので、その結果、深絞り成形性が特に優れ、金型再現性にも優れている上に、熱可塑性樹脂層の表面が平滑で、外観が美麗な多層発泡シートを容易に得ることができる。
【0054】
本発明の発泡層2は、熱可塑性樹脂層積層側の発泡層表面を含む第一発泡層と、熱可塑性樹脂層積層側の反対側の発泡層表面を含む第二発泡層とを積層した二層の発泡層からなり、第二発泡層の厚さt2と第一発泡層の厚さt1との比(t2/t1)が、0.18〜1であることがより好ましい。該比(t2/t1)が0.18未満の場合は、第二発泡層7が薄くなりすぎて深絞り形状の熱成形を行う際の成形性や金型再現性が低下したり、熱成形された容器の開口部等の剛性が低下する虞がある。一方、該比(t2/t1)が1を超える場合は、第一発泡層6が薄くなりすぎて表面が凹凸となり、熱成形された容器の側面部における印刷性が悪くなったり、軽量であると共に剛性を有する多層発泡シートを得ることができなくなる虞がある。
【0055】
このように発泡層2が、第一発泡層6と第二発泡層7からなる二層の発泡層として構成され、且つ第二発泡層7の密度が第一発泡層6の密度より小さく構成されていると、第一発泡層6と第二発泡層7の密度を別々に調整することができる上に、更に第二発泡層の厚さt2と第一発泡層の厚さt1との比(t2/t1)が、0.18〜1となるように構成されていると、特に剛性に優れた多層発泡シート1を得ることができる。
【0056】
上記第二発泡層7は、スチレン二量体及び三量体の成分(以下、併せて「低分子量成分」という。)が2000重量ppm以下、より好ましくは1000重量ppm以下の発泡層として構成することが好ましい。該成分を2000重量ppm以下にすると、剛性に優れた多層発泡シートを得ることができる。更に、このように構成された第二発泡層7を容器の内側に向けて熱成形すると、上記サンドイッチ構造の効果に加え、更に開口部の剛性に優れた容器を得ることができる。
【0057】
上記ポリスチレン系樹脂発泡層中の低分子量成分とは、以下のようにして測定した値である。
【0058】
試料の調整及び測定は次のように行なう。
ポリスチレン系樹脂発泡層の露出側表面から0.4mmまでの範囲内の発泡層4に相当する部分から約0.2gを正確に秤量し、ビーカー中において約15mlのテトラヒドロフランに溶解させる。
ポリスチレン系樹脂発泡層がテトラヒドロフランに完全に溶解したことを確認した後、該約15mlのテトラヒドロフラン溶液を、約250mlのn−ペンタン中に滴下してポリスチレン系樹脂を析出させる。次に、上記15mlのビーカー中に約5mlのテトラヒドロフランを入れてビーカー中を洗浄し、該洗浄に使用した約5mlのテトラヒドロフランを前記約250mlのn−ペンタン中に滴下することにより洗浄操作を行なう。該洗浄操作は二回行なう。
上記n−ペンタン中に滴下したポリスチレン系樹脂を、No.5Bのろ紙を使用してビーカー中にろ別する。尚、ろ過は、吸引ろ過は行なわず、自然ろ過を行なう。
上記ろ液の入ったビーカーを15℃の水浴にて保温しつつ、コンプレッサーエアーをろ液に吹きかけながら6〜8時間かけて、ろ液を約100mlに濃縮する。
上記約100mlに濃縮されたろ液に約40mlのアセトニトリルを加え、更に15℃の水浴にて保温しつつ、コンプレッサーエアーをろ液に吹きかけながら2〜3時間かけて、ろ液を約6〜9mlに濃縮する。
上記約6〜9mlに濃縮されたろ液にアセトニトリルを加え、全量が10mlとなるように希釈したものを測定用試料とする。
上記測定試料を下記仕様の高速液体クロマトグラフに注入して、ポリスチレン系樹脂発泡層中の低分子量成分の含有量を測定する。
【0059】
高速液体クロマトグラフの仕様は次の通りである。
測定装置 株式会社島津製作所製高速液体クロマトグラフ
液送ポンプLC−6A(二台)、自動試料注入装置SIL−6A、紫外線分光光度計検出器SPD−6A、カラムオーブンCTO−6A、システムコントローラSCL−6A、データ処理装置C−R3A
【0060】
【0061】
以上、発泡層2を第一発泡層6と第二発泡層7とからなる二層の発泡層として構成する場合について説明したが、本発明はこれに限定するものでなく、発泡層2を第一発泡層6と第二発泡層7とその他の発泡層から構成することもできる。
【0062】
以下、本発明の多層発泡シートの製造方法について説明する。
【0063】
以下、発泡層が第一発泡層6と第二発泡層7とから構成される多層発泡シートの製造方法について説明する。
【0064】
第一発泡層6及び第二発泡層7は、押出機を用いて基材樹脂、気泡調整剤等の各種の添加剤、発泡剤を溶融混練して発泡性溶融混合物とした後、目的とする樹脂温度に調整された該発泡性溶融混合物を、高圧のダイ内から大気圧下に放出することによって形成される。尚、溶融混合物が高圧のダイ内から大気圧下に放出される際、必要に応じて第一発泡層6及び第二発泡層7に空気を吹きかけて冷却することによって、各々の厚さ方向平均気泡径を調整することができる。
【0065】
第一発泡層6及び第二発泡層7を形成するための発泡剤の添加量、気泡調整剤の添加量は、基材樹脂の種類、発泡剤の種類、気泡調整剤の種類や、後述する発泡性溶融樹脂混合物の押出温度や、目的とする各発泡層の密度等によって適宜選択できるが、通常は、基材樹脂100重量部に対して、発泡剤は0.5〜10重量部である。
【0066】
第一発泡層6における平均気泡径の調整は、例えば、気泡調整剤としてタルクを2〜10重量部添加することによって行なう。第二発泡層7における平均気泡径の調整は、例えば、基材樹脂100重量部当たり気泡調整剤としてタルクを0.1〜4重量部添加することによって行なう。
尚、第一発泡層6における平均気泡径は、気泡調整剤の量を調節する以外に、溶融混合物が大気圧下に放出される際に空気を吹きかけて冷却すること等によって微調整することができる。
【0067】
但し、上記発泡時における空気による冷却は微調整にすぎない。発泡層2を二以上の発泡層からなる積層体として構成する場合は、第一発泡層6の気泡径を第二発泡層7の気泡径とは無関係に、気泡調整剤の量によって独自に調節できるので、従来の製法とは異なり多量の空気を吹きかけて冷却しないでも気泡径の小さい第一発泡層6を形成することができる。
【0068】
上記放出される発泡性溶融混合物の樹脂温度は、基材樹脂の種類、発泡剤の種類・添加量、気泡調整剤の種類・添加量や、目的とする発泡層の密度等によって適宜選択できるが、通常は120〜250℃である。
【0069】
第一発泡層6と、第二発泡層7とを積層する方法としては、共押出法、熱融着法等が挙げられる。
【0070】
上記共押出法は、第二発泡層7を構成する基材樹脂及び発泡剤等からなる発泡性溶融樹脂混合物と、第一発泡層6を構成する基材樹脂及び発泡剤等からなる発泡性溶融樹脂混合物とを、ダイ内で融着し一体としてシート状に押出して発泡させる方法である。
該共押出法により二層からなる発泡層を得るための方法には、▲1▼フラットダイを用いて板状に共押出することにより積層された発泡層とする方法、▲2▼環状ダイを用いて筒状に共押出した後、該筒状発泡シートを切開いて積層された発泡層とする方法、▲3▼環状ダイを用いて筒状に共押出しすると共に、該発泡シートの内面が接着可能な状態にあるうちに挾圧ロールで該発泡シートを挟み込み、内面を圧着することによって貼り合わせて積層された発泡層とする方法が挙げられる。
【0071】
上記共押出法は、発泡工程と積層工程とを同時にしかも連続的に行うことができるので生産性に優れる上に、発泡層同士の接着性、外観が極めてよいものが得られる。共押出法の中では、上記▲2▼の環状ダイを用いて筒状に共押出した後、該筒状発泡シートを切開いて発泡層を得る方法が、広幅の発泡層を製造しやすいので好ましい。
【0072】
上記熱可塑性樹脂層5は、押出機を用いて基材樹脂と各種の添加剤を溶融混練した後、Tダイやサーキュラーダイ等の各種のダイからシート状に押出すことによって形成することができる。
【0073】
熱可塑性樹脂層5と発泡層との積層は、熱可塑性樹脂層5と、第一発泡層6及び第二発泡層7からなる発泡層との押出樹脂温度が異なるので、予め形成された発泡層に熱可塑性樹脂層5を接着剤や、加熱融着や、押出ラミネートによって積層することが好ましい。但し、本発明はこれらに限定するものではなく、共押出しによって積層することもできる。
【0074】
以上の説明においては、発泡層2の片面に熱可塑性樹脂層5が積層された多層発泡シート1について説明してきたが、本発明はこれに限定するものではなく、上記露出側発泡層4にも熱可塑性樹脂層を積層しても構わない。
【0075】
以下、本発明の容器について説明する。
本発明の容器は、上記多層発泡シートを熱成形して得られた容器であって、熱可塑性樹脂層5が外面側に、露出側発泡層4若しくは第二発泡層7が内面側に位置していることが好ましい。このように構成された容器は、平均気泡径が小さく表面が平滑な熱可塑性樹脂層積層側発泡層3に熱可塑性樹脂層5が積層されているので、熱可塑性樹脂層5の表面が平滑になり、外観が美麗である。更に、深絞り形状の容器の外面側に印刷する場合であっても、かすれ等の印刷不良が発生することが殆どない。
【0076】
更に、発泡層2を第一発泡層6と第二発泡層7とからなる二層の発泡層として構成し、上記したように容器の内面側となる第二発泡層7を低分子量成分の含有率が2000重量ppm、好ましくは1000重量ppm以下の第二発泡層7として構成すると、更に剛性が優れた容器を得ることができる。
【0077】
本発明の容器は、雄型及び/又は雌型からなる金型を使用して多層発泡シートを熱成形することにより得ることができる。該熱成形法としては、真空成形や圧空成形、更にこれらの応用としてフリードローイング成形、プラグ・アンド・リッジ成形、リッジ成形、マッチド・モールド成形、ストレート成形、ドレープ成形、リバースドロー成形、エアスリップ成形、プラグアシスト成形、プラグアシストリバースドロー成形等やこれらを組み合わせた成形方法等が挙げられる。かかる熱成形法は、短時間に連続して容器を得ることができるので、好ましい方法である。
【0078】
本発明の容器の絞り比は、通常は0.1〜1.5であるが、0.3〜1.5の深絞りが好ましい。絞り比が1.5より大きいと部分的に薄い箇所が発生する虞がある。
尚、絞り比は、容器開口面の最大内径をDとし、容器の深さをHとして、H/Dによって定められる。
【0079】
本発明の容器は、トレイ、丼、弁当箱、カップ等の用途に用いられ、特に開口部の形状が円形の深絞り形状の容器は、曲面印刷性が優れているので丼、カップ用として好ましい。
【0080】
【実施例】
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
【0081】
以下の実施例、比較例において、実施例1,2、比較例1〜4の場合は、第一発泡層及び第二発泡層の基材樹脂として、共に出光石油化学株式会社製ポリスチレン「HH32、溶融粘度2040Pa・s、密度1050kg/m3、ビカット軟化点100℃以上」(以下、「樹脂A」という。)を使用した。
【0082】
実施例3、参考例1の場合は、第二発泡層の基材樹脂として、低分子量成分の含有量が少ない東洋スチレン株式会社製ポリスチレン「トーヨースチロールGPHRM−55、密度1050kg/m3、ビカット軟化点100℃以上」(以下、「樹脂B」という。)を使用し、第一発泡層の基材樹脂として「樹脂A」を使用した。
【0083】
実施例4の場合は、第二発泡層の基材樹脂として、耐熱性の東洋スチレン株式会社製ポリスチレン「トーヨースチロールGP TF−2−311、密度1050kg/m3、ビカット軟化点110℃以上」(以下、「樹脂C」という。)を使用し、第一発泡層の基材樹脂として「樹脂A」を使用した。
【0084】
上記樹脂Aの溶融粘度は、チアスト社製レオビス2100を使用して、内径1.0mm、長さ10mmのノズルを用い、温度190℃、剪断速度100/secの条件下にて測定した。
【0085】
実施例1〜4、参考例1、比較例1〜4におけるタルクは、松村産業株式会社製ハイフィラー♯12を使用し、発泡剤は、n−ブタン70wt%とiso−ブタン30wt%からなるブタン混合物を使用した。
【0086】
実施例1〜4、参考例1、比較例1〜4における熱可塑性樹脂層は、日本ポリスチレン株式会社製耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)「H640N(密度1050kg/m3)」(以下、「樹脂D」という。)を使用した。
【0087】
実施例1
第一発泡層の形成には、バレル直径115mmの第一押出機とバレル直径150mmの第二押出機とからなるタンデム押出機を使用した。第一押出機の原料投入口から、ポリスチレン系樹脂「樹脂A」100重量部にタルク3.4重量部が添加された混合物を投入して加熱混練し、該混合物を約200℃に調整して溶融混合物とした後、該溶融混合物100重量部に対して3.6重量部の発泡剤を圧入して第一発泡層を形成する発泡性溶融混合物とし、次いで、第二押出機内で該発泡性溶融混合物の樹脂温度を154℃に調整した。
【0088】
第二発泡層の形成には、バレル直径115mmの第一押出機とバレル直径150mmの第二押出機とからなるタンデム押出機を使用した。第一押出機の原料投入口から、ポリスチレン系樹脂「樹脂A」100重量部にタルク2.5重量部が添加された混合物を投入して加熱混練し、該混合物を約200℃に調整して溶融混合物とした後、該溶融混合物100重量部に対して4.0重量部の発泡剤を圧入して第二発泡層を形成する発泡性溶融混合物とし、次いで、第二押出機内で該発泡性溶融混合物の樹脂温度を145℃に調整した。
【0089】
上記第二発泡層を形成する発泡性溶融樹脂混合物の吐出量を、第一発泡層を形成する発泡性溶融樹脂混合物の吐出量の0.3倍となるように両発泡性溶融樹脂混合物を共押出用ダイ内に導入して、該ダイ内で両者を合流させてから大気圧下に内側を第一発泡層、外側を第二発泡層として筒状に押出発泡することにより円筒状の発泡層を形成した。次に、該円筒状の発泡層の内側及び外側に空気を吹きかけながら、円筒状の発泡層を直径340mmの円柱状の冷却装置側面上を通過させながら冷却した後、押出方向に切開いて第一発泡層と第二発泡層とが積層された発泡層2を形成した。
【0090】
次に、押出ラミネート法により熱可塑性樹脂層5を第一発泡層側に積層し、本発明の多層発泡シートを得た。具体的には、バレル直径110mmの押出機を使用し、幅1200mmのTダイから「樹脂D」を押出して、上記発泡層2の第一発泡層側に熱可塑性樹脂層を形成した。
【0091】
実施例2
第一発泡層としてポリスチレン系樹脂「樹脂A」100重量部に対してタルク3.5重量部が添加された混合物を押出機に投入したこと、約200℃に調整された第一発泡層形成用の溶融樹脂混合物100重量部に対して3.4重量部の発泡剤を圧入したこと、第二発泡層としてポリスチレン系樹脂「樹脂A」100重量部あたりタルク2.4重量部が添加された混合物を押出機に投入したこと、約200℃に調整された第二発泡層形成用の溶融樹脂混合物100重量部あたり4.1重量部の発泡剤を圧入したこと、第二発泡層を形成する発泡性溶融樹脂混合物の吐出量を、第一発泡層を形成する発泡性溶融樹脂混合物の吐出量の0.61倍とすることにより発泡層における第二発泡層と第一発泡層の厚さの比を変えたこと以外は、実施例1と同様に本発明の多層発泡シートを形成した。
【0092】
実施例3
第一発泡層としてポリスチレン系樹脂「樹脂A」100重量部に対してタルク3.5重量部が添加された混合物を押出機に投入したこと、約200℃に調整された第一発泡層形成用の溶融樹脂混合物100重量部に対して3.4重量部の発泡剤を圧入したこと、第二発泡層としてポリスチレン系樹脂「樹脂B」100重量部あたりタルク2.4重量部が添加された混合物を押出機に投入したこと、約200℃に調整された第二発泡層形成用の溶融樹脂混合物100重量部あたり4.0重量部の発泡剤を圧入したこと、第二発泡層を形成する溶融樹脂混合物の吐出量を、第一発泡層を形成する溶融樹脂混合物の吐出量の0.67倍とすることにより発泡層2における第二発泡層と第一発泡層との厚さの比を変えたこと以外は、実施例1と同様に本発明の多層発泡シートを形成した。
【0093】
実施例3において得られた多層発泡シートは、低分子量成分の含有率が少ない第二発泡層であることから更に剛性に優れるものであった。又、容器内面を構成する露出側発泡層の表面硬度が高く、傷がつきにくかった。尚、第二発泡層の低分子量成分は、920重量ppmであった。
【0094】
参考例1
第一発泡層としてポリスチレン系樹脂「樹脂A」100重量部に対してタルク3.5重量部が添加された混合物を押出機に投入したこと、約200℃に調整された第一発泡層形成用の溶融樹脂混合物100重量部に対して3.7重量部の発泡剤を圧入したこと、第二発泡層としてポリスチレン系樹脂「樹脂B」100重量部あたりタルク2.3重量部が添加された混合物を押出機に投入したこと、約200℃に調整された第二発泡層形成用の溶融樹脂混合物100重量部あたり3.7重量部の発泡剤を圧入したこと以外は、実施例1と同様に本発明の多層発泡シートを製造した。
【0095】
参考例1において得られた多層発泡シートは、低分子量成分の含有率が少ない第二発泡層であることから更に剛性に優れるものであった。又、容器内面を構成する露出側発泡層の表面硬度が高く、傷がつきにくかった。尚、第二発泡層の低分子量成分は、850重量ppmであった。
【0096】
実施例4
第二発泡層としてポリスチレン系樹脂「樹脂C」を使用した以外は、実施例1と同様に多層発泡シートを製造した。
該多層発泡シートから後述する熱成形によって得られた容器は、食品等を入れて電子レンジで加熱しても熱変形することがなく、耐熱性に優れたものであった。
【0097】
比較例1
第一発泡層としてポリスチレン系樹脂「樹脂A」100重量部あたりタルク3.6重量部が添加された混合物を押出機に投入したこと、約200℃に調整された第一発泡層形成用の溶融樹脂混合物100重量部あたり3.5重量部の発泡剤を圧入したこと、第二発泡層としてポリスチレン系樹脂「樹脂A」100重量部あたりタルク2.9重量部が添加された混合物を押出機に投入したこと、約200℃に調整された第二発泡層形成用の溶融樹脂混合物100重量部あたり4.2重量部の発泡剤を圧入したこと以外は、実施例1と同様に多層発泡シートを得た。
【0098】
比較例1おいて得られた多層発泡シートは、露出側発泡層の厚さ方向平均気泡径L2が150μm未満であるため、熱成形の際に発泡層の破れと透孔が発生し、深絞り成形性が悪いものであった。
【0099】
比較例2
第一発泡層としてポリスチレン系樹脂「樹脂A」100重量部あたりタルク2.3重量部が添加された混合物を押出機に投入したこと、約200℃に調整された第一発泡層形成用の溶融樹脂混合物100重量部あたり3.3重量部の発泡剤を圧入したこと、第二発泡層としてポリスチレン系樹脂「樹脂A」100重量部あたりタルク1.9重量部が添加された混合物を押出機に投入したこと、約200℃に調整された第二発泡層形成用の溶融樹脂混合物100重量部あたり4.4重量部の発泡剤を圧入したこと以外は、実施例1と同様に多層発泡シートを形成した。
【0100】
比較例2において得られた多層発泡シートは、熱可塑性樹脂層積層側発泡層3の厚さ方向平均気泡径L1が200μmとなり、熱成形された容器の側面部における印刷性が悪いものであった。
【0101】
比較例3
第一発泡層としてポリスチレン系樹脂「樹脂A」100重量部あたりタルク3.4重量部が添加された混合物を押出機に投入したこと、約200℃に調整された第一発泡層形成用の溶融樹脂混合物100重量部あたり2.7重量部の発泡剤を圧入したこと、第二発泡層としてポリスチレン系樹脂「樹脂A」100重量部あたりタルク2.1重量部が添加された混合物を押出機に投入したこと、第二発泡層形成用の溶融樹脂混合物100重量部あたり4.5重量部の発泡剤を圧入したこと以外は、実施例1と同様に多層発泡シートを形成した。
【0102】
比較例3において得られた多層発泡シートは、露出側発泡層の密度が熱可塑性樹脂層積層側発泡層の密度より低く、充分な剛性を得ることができなかった。
【0103】
比較例4
第一発泡層としてポリスチレン系樹脂「樹脂A」100重量部あたりタルク3.4重量部が添加された混合物を押出機に投入したこと、約200℃に調整された第一発泡層形成用の溶融樹脂混合物100重量部あたり3.1重量部の発泡剤を圧入したこと、第二発泡層としてポリスチレン系樹脂「樹脂A」100重量部あたりタルク2.4重量部が添加された混合物を押出機に投入したこと、第二発泡層形成用の溶融樹脂混合物100重量部あたり4.8重量部の発泡剤を圧入したこと以外は、実施例1と同様に多層発泡シートを形成した。
【0104】
比較例4において得られた多層発泡シートは、露出側発泡層の密度が熱可塑性樹脂層積層側発泡層の密度より低く、充分な剛性を得ることができなかった。
【0105】
上記実施例1〜4、参考例1、比較例1〜4において、得られた各多層発泡シートの熱可塑性樹脂層積層側発泡層3の厚さ方向平均気泡径L1・密度・表面気泡数、露出側発泡層4の厚さ方向平均気泡径L2・密度・表面気泡数、第二発泡層と第一発泡層の厚さの比(t2/t1)を実施例1〜4、参考例1については表1に、比較例1〜4については表2に示す。発泡層の厚さ、多層発泡シートの厚さを、実施例1〜4、参考例1については表3に、比較例1〜4については表4にそれぞれ示す。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
【表4】
【0110】
上記実施例1〜4、参考例1、比較例1〜4において得られた多層発泡シートの連続気泡率は、いずれも8〜20%であった。又、発泡層を構成する熱可塑性樹脂層積層側発泡層と熱可塑性樹脂層との接着性は良好で、いずれの多層発泡シートについても剥離試験において発泡層の材料破壊が確認された。
【0111】
上記実施例、参考例、比較例における多層発泡シート厚さ・発泡層の厚さ・第一発泡層の厚さ・第二発泡層の厚さの測定は、具体的には前記した方法に基づいて次のように行った。
各実施例、参考例、比較例で得られた多層発泡シートにつき、試験片を幅方向に等間隔で10箇所サンプリングし、各試験片における押出方向に対して垂直な断面を顕微鏡で撮影し、次に、各々の断面写真について各層の厚さを測定し、該10点の厚さの平均値を各層の厚さとした。又、表1、表2の発泡層における第一発泡層の厚さと第二発泡層の厚さとの比はこれらの平均値から算出した。
【0112】
尚、第一発泡層と第二発泡層との界面が不明確な場合は、押出発泡する際に、どちらか一方の発泡層に着色剤を添加することにより、各発泡層の厚さを明確に判断することができる。
【0113】
上記実施例、参考例、比較例における密度の測定は、具体的には前記した方法に基づいて次のように行った。
多層発泡シートから、押出方向に平行に長さ20mm、幅5mmの長方形の試験片作製用試料を、熱可塑性樹脂層積層側発泡層の密度測定用と露出側発泡層の密度測定用の各々について切出した。
【0114】
熱可塑性樹脂層積層側発泡層の場合は、前述したように、熱可塑性樹脂層の表面を基準として、推定される熱可塑性樹脂層5の厚さに0.4mmを加えた厚さを有する長方形の試験片をスライサーを用いて切出し、該試験片について重量と体積を測定し、該測定によって得られた重量から熱可塑性樹脂層の重量を引いて熱可塑性樹脂層積層側発泡層の重量w(g)を求め、試験片全体の厚さから断面写真から求めた熱可塑性樹脂層の厚さを引いて熱可塑性樹脂層積層側発泡層の厚さl(mm)を求めた。
【0115】
露出側発泡層の場合は、第二発泡層の表面を基準として厚さ約0.4mmの試験片をスライサーを用いて上記試験片作製用試料から試験片を切出し、該試験片について試験片の質量w(g)、試験片の厚さl(mm)を測定した。
【0116】
上記各試験片の質量w(g)、各試験片の厚さl(mm)から各試験片の密度dを次式により算出した。
d=(w/103)÷{(2×0.5/106)×(l/103)}
【0117】
以上の測定を、熱可塑性樹脂層積層側発泡層と露出側発泡層のそれぞれについて、多層発泡シートの幅方向における等間隔の10箇所について行なった。次に、熱可塑性樹脂層積層側発泡層と露出側発泡層のそれぞれの密度dについて算術平均を行い、熱可塑性樹脂層積層側発泡層の密度(kg/m3)と露出側発泡層の密度(kg/m3)とを求めた。
【0118】
熱可塑性樹脂層積層側発泡層、露出側発泡層の表面気泡数の測定は、カミソリで表面から厚さ50μmにスライスした測定試料を使用した。
露出側発泡層の表面気泡数の測定は、露出している表面を基準として、カミソリで50μmの厚さにスライスした測定試料を用いた。熱可塑性樹脂層積層側発泡層の表面気泡数を測定する場合は、前述したように、熱可塑性樹脂層の表面を基準として、熱可塑性樹脂層の厚さに50μmを加えた厚さにスライスした測定試料を用いた。これらの測定試料は、多層発泡シートの幅方向に等間隔で10箇所サンプリングし、これらの各々の測定試料について表面気泡数を測定し、各々の熱可塑性樹脂層積層側発泡層の表面気泡数の平均値を熱可塑性樹脂層積層側発泡層の表面気泡数とし、各々の露出側発泡層の表面気泡数の平均値を露出側発泡層の表面気泡数とした。
【0119】
上記実施例1〜4、参考例1、比較例1〜4において得られた多層発泡シートについて、プラグアシスト法により熱可塑性樹脂層が積層された面を外面側に位置するように熱成形して、開口部が直径150mmの円形、深さ70mm、絞り比0.46の丼形状の容器を得た。
【0120】
上記成形によって得られた各容器の深絞り成形性、印刷性、金型再現性、容器開口部の剛性の評価を実施例1〜4、参考例1については表3に、比較例1〜4については表4にそれぞれ示す。
【0121】
深絞り成形性の評価は、成形の底部周縁等の円弧状に引伸ばされて成形されている部分(以下、「コーナー部」という。)に破れや透孔が発生しているか否かを目視にて評価した。
○・・・容器のコーナー部に破れや透孔が発生していない。
×・・・容器のコーナー部に破れや透孔が発生している。
【0122】
印刷性の評価は、容器の側面部に曲面印刷を行い、容器の表面の印刷がかすれているかどうか否かを目視にて評価した。
○・・・容器の表面の印刷にかすれが無い。
×・・・容器の表面の印刷にかすれがある。
【0123】
金型再現性は熱成形を行い金型形状と同様な容器が得られるか否かを評価した。
○・・・金型形状と同様に再現されている。
×・・・金型形状と同様に再現されていない。
【0124】
容器開口部の剛性は、株式会社エー・アンド・デイ製テンシロンRTM−500を用いて上記丼形状の開口面に対して水平方向に容器開口部の周縁を圧縮速度100mm/minで圧縮した。その際、長さ52mm×幅4mm×深さ4mmの溝を有する治具に容器開口部のフランジが溝に入るようにセットし、容器の内径の1/2(75mm)まで圧縮した時の最大応力を測定し、該応力が9.8Nを基準として剛性を評価した。
尚、上記実施例1〜4、参考例1、比較例1〜4において得られた各々の容器について、発泡層の押出方向(MD)及び押出方向に対して垂直な方向(TD)の各々について36個、合計72個の容器について行い、全体の平均値を容器開口部の剛性として、次の様に評価した。
○・・・・ 剛性が9.8N以上の場合
×・・・・ 剛性が9.8N未満の場合
【0125】
【発明の効果】
本発明の多層発泡シートは、ポリスチレン系樹脂発泡層と該ポリスチレン系樹脂発泡層に積層された熱可塑性樹脂層とからなる多層発泡シートにおいて、熱可塑性樹脂層積層側の発泡層表面から厚さ0.4mmまでの発泡層の密度が、熱可塑性樹脂層積層側の反対側の発泡層表面から厚さ0.4mmまでの発泡層の密度より低く、且つ上記熱可塑性樹脂層積層側の発泡層表面から厚さ0.4mmまでの発泡層の厚さ方向平均気泡径L1が35〜180μmであると共に、上記熱可塑性樹脂層積層側の反対側の発泡層表面から厚さ0.4mmまでの発泡層の厚さ方向平均気泡径L2が150〜450μmである(但し、厚さ方向平均気泡径L2>厚さ方向平均気泡径L1)という構成を採用している。即ち、本発明の多層発泡シートは、熱可塑性樹脂層積層側の発泡層表面から厚さ0.4mmまでの密度が小さい発泡層が、無発泡の熱可塑性樹脂層と、熱可塑性樹脂層積層側の反対側の発泡層表面から厚さ0.4mmまでの密度が高い発泡層とに挟まれているというサンドイッチ構造を採用しているので、従来の多層発泡シートと比較すると剛性が優れている。又、外部に直接露出している熱可塑性樹脂層積層側の反対側の発泡層の密度が高いので、表面硬度が高く傷がつきにくい。
【0126】
又、本発明の構成を採用すると、熱可塑性樹脂層が厚さ方向平均気泡径L1が小さい発泡層の表面に積層されているので、熱可塑性樹脂層の表面が平滑で、外観が美麗である。更に、熱可塑性樹脂層積層側の反対側の発泡層の厚さ方向平均気泡径L2が大きいので、熱成形時の加熱条件の温度範囲が広く、熱成形性、特に深絞り成形性に優れ、金型再現性にも優れている。
【0127】
本発明の多層発泡シートにおいては、熱可塑性樹脂層積層層側の発泡層表面から厚さ0.4mmまでの発泡層の密度が70kg/m3以上130kg/m3未満となるように構成すると、熱可塑性樹脂層積層側発泡層と熱可塑性樹脂層との界面において熱可塑性樹脂層積層側発泡層に破れや透孔が発生する虞がなく、熱成形によって得られた容器の断熱性が低下したりし、衝撃を受けると割れやすくなったり、経済性が低下する虞がない。又、熱可塑性樹脂層積層側の反対側の発泡層表面から厚さ0.4mmまでの発泡層の密度が70kg/m3を超え130kg/m 3 未満となるように構成すると、熱成形を行う際に発泡層の伸び不足により、熱成形によって得られる容器に破れや透孔が発生する虞や、熱成形によって得られる深絞り形状の容器の剛性が小さくなって容器としての機能が低下する虞がない。
【0128】
本発明においては、熱可塑性樹脂層積層側の発泡層の表面気泡数を120〜500個/4mm2となるように構成すると、特に表面平滑性が良く印刷性に優れる。
【0129】
本発明においては、ポリスチレン系樹脂発泡層が、熱可塑性樹脂層積層側の発泡層表面を含む第一発泡層と、熱可塑性樹脂層積層側の反対側の発泡層表面を含む第二発泡層とを含む二層以上の発泡層からなるという構成を採用すると、ポリスチレン系樹脂発泡層の各々の発泡層表面における密度や平均気泡径の調整が容易である。その結果、剛性が特に優れ、熱成形時の加熱条件の幅が特に広く、深絞り成形性が特に優れ、金型再現性にも優れている上に、熱可塑性樹脂層の表面が平滑で、外観が美麗な多層発泡シートを容易に得ることができる。
【0130】
本発明の多層発泡シートにおいては、ポリスチレン系樹脂発泡層が、熱可塑性樹脂層積層側の発泡層表面を含む第一発泡層と、熱可塑性樹脂層積層側の反対側の発泡層表面を含む第二発泡層とを積層した二層の発泡層からなり、第二発泡層の厚さt2と第一発泡層の厚さt1との比(t2/t1)が、0.18〜1であるという構成を採用すると、深絞り成形性、金型再現性に更に優れたものとなる。
【0131】
本発明の容器は、上記多層発泡シートを熱成形して得られた容器であって、熱可塑性樹脂層が積層された面が外面側に位置するように構成されている。従って、本発明の容器は、外面側が平滑で印刷適性に優れているので、外観が美麗な上に、容器の外面側に印刷してもかすれ等の印刷不良が発生しない。又、本発明によれば、容器内面側の発泡層の密度が高く構成されているので、容器開口部の剛性に優れ、従来の容器と比較すると発泡層全体の密度が同一であっても傷がつきにくい容器得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の多層発泡シートの縦断面図である。
【符号の説明】
1 多層発泡シート
2 発泡層
3 熱可塑性樹脂層積層側発泡層
4 露出側発泡層
5 熱可塑性樹脂層
Claims (3)
- ポリスチレン系樹脂発泡層と該ポリスチレン系樹脂発泡層に積層された熱可塑性樹脂層とからなり、ポリスチレン系樹脂発泡層が、熱可塑性樹脂層積層側の発泡層表面を含む第一発泡層と、熱可塑性樹脂層積層側の反対側の発泡層表面を含む第二発泡層とを含む二層以上の発泡層とからなる多層発泡シートにおいて、第二発泡層の厚さt2と第一発泡層の厚さt1との比(t2/t1)が、0.18〜1であり、熱可塑性樹脂層積層側の発泡層表面から厚さ0.4mmまでの発泡層の密度が70kg/m 3 以上130kg/m 3 未満であると共に、熱可塑性樹脂層積層側の反対側の発泡層表面から厚さ0.4mmまでの発泡層の密度が70kg/m 3 を超え130kg/m 3 未満であって、熱可塑性樹脂層積層側の発泡層表面から厚さ0.4mmまでの発泡層の密度が、熱可塑性樹脂層積層側の反対側の発泡層表面から厚さ0.4mmまでの発泡層の密度より低く、且つ上記熱可塑性樹脂層積層側の発泡層表面から厚さ0.4mmまでの発泡層の厚さ方向平均気泡径L1が35〜180μmであると共に、上記熱可塑性樹脂層積層側の反対側の発泡層表面から厚さ0.4mmまでの発泡層の厚さ方向平均気泡径L2が150〜450μmである(但し、厚さ方向平均気泡径L2>厚さ方向平均気泡径L1)ことを特徴とする多層発泡シート。
- 熱可塑性樹脂層積層側の発泡層表面の表面気泡数が120〜500個/4mm2であることを特徴とする請求項1記載の多層発泡シート。
- 請求項1または2に記載の多層発泡シートを熱成形して得られた容器であって、熱可塑性樹脂層が外面側に位置することを特徴とする容器。
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