JP4543202B2 - 複数超音波照射によるリポソーム製造装置及び製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、超音波を利用した微細リポソームの製造装置、及びその製造方法に関するものであり、更に詳しくは、複数の異なる周波数の超音波を利用することにより、数十nmから150nmの大きさにおいて、粒度分布が狭く、異物の混入がない高品質のリポソームを高効率に製造し、提供することが可能な上記リポソームの製造装置、及びその製造方法に関するものである。本発明は、リポソームの製造に、低周波超音波と高周波超音波を用い、超音波作用の周波数依存性を巧みに組み合わせることにより、また、超音波照射方法、試料溶液の流通方法に多くの工夫を盛り込むことにより上述の性能を有するリポソームを実現し、提供することを可能とするものである。本発明により製造されるリポソームは、薬物運搬体あるいは複合型薬剤として、医薬品の技術分野で重要な物質であり、その他にも化粧品、食品等多くの分野で利用可能な重要製品である。
リポソームに関する製造技術としては、その医薬品応用としての重要性から各種のものが開発されており、例えば、超音波法、逆相蒸発法、エタノール注入法、押し出し法、界面活性剤法、及び超臨界法等が知られている(非特許文献1、2参照)。一般に、逆相蒸発法、超臨界法あるいは界面活性剤法では、一枚膜の数μm程度の大きなリポソームの作製が可能であるとされており、同法で製造されるリポソームは、薬物等の水溶性物質の保持効率が高いという長所を有する。しかしながら、その大きさゆえに、体内目的部位への搬送や細胞浸透においては、大きな制限が存在する。一方、本発明により製造するリポソームの大きさは、数十nmから150nmまでを目標としたものであり、作用機構や薬物修飾法において、従来品とは大きな差異が存在する。
エタノール注入法については、製造途中でリポソーム濃度が希釈されるために、限外ろ過等による濃縮操作が必要であることや、エタノールをリポソームから完全に除去することが難しいといった欠点がある。押し出し法においては、30−150nmといった小さなリポソームの製造に特徴を有するが、粒径分布の制御が細孔透過を利用していることから、細孔以下の大きさのリポソームに対しては効果的ではなく、また、細孔の目詰まりによる操作性の悪さ等が指摘されている。
一方、超音波法は、リポソームに関する研究の創成期から現在まで使用されている効果的なリポソーム製造方法であり、短時間で効率的に微細(例えば、100nm)なリポソーム製造が可能であること、製造装置としては大型のものは必要がなく、簡便に用いることができること等の利点がある。例えば、逆相蒸発法に従って、脂質と薬物の混合物を、リポソーム調製装置の試料容器に供給し、減圧による溶媒留去及び超音波照射を用いて、乳化−ベシクル形成の一連の工程を同一容器内で行い、次いで希釈して試料容器からリポソームを回収するリポソーム調製装置(特許文献1参照)が提案されている。また、他に、有用物質、リン脂質を含有する脂質成分と水が共存する状態で、超音波処理することによりリポソームを製造する方法(特許文献2参照)、金属ポルフィリン錯体を安全に生体内に投与することが可能な、金属ポルフィリン錯体包埋リポソームの製造に、超音波処理を使用する方法(特許文献3参照)、等が提案されている。しかしながら、従来の超音波法によるリポソームの製造法では、キャビテーションに基づくリポソーム内包物の損傷や、超音波ホーンの材料である金属微粉の混入等が難点とされていた。更に、超音波照射できる溶液量がごく少量に限られること、超音波照射により溶液温度が上昇し、その結果、原料の分解や変性が見られること、超音波照射にムラが見られること等の欠点を有していた。
ホーン先端からの金属微粉混入に関しては、Freitasらが金属/ガラス2重管式の照射装置を提案しているが(特許文献4参照)、その適用例としては、エマルジョン形成といった比較的弱い超音波での応用であるとともに、振動面から試料液までに、多くの界面や壁面が存在することから、超音波照射効率に問題があると考えられる。
特公平6−65382号公報 特開2003−306427号公報 特開2005−41869号公報 独国特許出願公開第10243837号明細書(2002) 野島庄七、砂本順三、井上圭三編、「リポソーム」、南江堂(1988) V.P.Torchilin,V.Weissig編,"Liposomes",Oxford University Press(2003)
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、上記従来技術の諸問題を解決することが可能な微細リポソームの製造技術を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、物理的分散作用に優れた低周波超音波を、超音波ホーン先端金属片の混入のおそれなく照射することと、更に、低周波超音波とは作用機構の異なる高周波超音波を相補的に用いることにより、効果的に、しかも、キャビテーションによる変性影響の少ない高品質のリポソームの作製が可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
我が国の高齢化社会の到来とともに、医薬に対する関心はますます高まりつつある。医薬品産業は、これまでに新規な医薬の開発に注力してきたが、その開発リスクは高く、「副作用がある」、「薬効は高いが製造コストが高くつく」等の理由で日の目を見なかったものも多い。これらの問題を解決し得る最も有効な手段の一つが、必要最低限の量の医薬を必要な場所に運搬するドラッグデリバリーシステム(DDS)であり、その運搬体の一種として最も有用なものがリポソームである。このような応用分野におけるリポソーム製造において特に要求される事項としては、人体に投与するゆえに、(1)超高純度であること、(2)サイズが150nm以下であること、が挙げられる。本発明は、このような新規な医薬の開発において要望されている事項を備えたリポソームを調製することができるリポソームの製造装置、及び製造方法の提供を目的とするものである。
また、本発明は、低周波超音波と高周波超音波を用いることにより、効率良く、しかもキャビテーションによる変性影響の少ない高品質のリポソームを作製することを可能とするリポソームの製造装置、及び製造方法の提供を目的とするものである。また、本発明は、循環型超音波照射系と間接照射方式の採用により、サイズ均一性の高いリポソームを、効率良く、外部雰囲気の影響を低減させて製造することを可能とするリポソームの新規製造技術の提供を目的とするものである。更に、本発明は、リポソームの大量生産から実験室での微量の試料まで、広範囲の試料に対して適用が可能なリポソームの製造装置及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)超音波照射によりリポソームを製造するための装置において、複数の異なる周波数の超音波を照射する超音波照射手段を有するリポソームの製造装置であって、
超音波照射手段が、20−50kHzの低周波超音波照射手段、及び500kHz−20MHzの高周波超音波照射手段を有することを特徴とするリポソームの製造装置。
)原料液を循環させながら、低周波超音波照射手段及び高周波超音波照射手段による超音波照射を可能とする循環流路を有する上記()に記載のリポソームの製造装置。
)低周波超音波、及び高周波超音波の間接照射系を有する上記(1)又は(2)に記載のリポソームの製造装置。
)1)キャビテーションによる損傷が少なく、2)ナノメートルサイズに揃った粒子径と均一な球形の形態を有するリポソームを調製することができる上記(1)から()のいずれか1項に記載のリポソームの製造装置。
)粒子径が、ナノレベルオーダーのリポソームを調製することができる上記(1)から(4)のいずれか1項に記載のリポソームの製造装置。
)複数の異なる周波数の超音波を原料液に照射することにより、微細リポソームを調製するリポソームの製造方法であって、
20−50kHzの低周波超音波、及び500kHz−20MHzの高周波超音波を照射することを特徴とするリポソームの製造方法。
)原料液を循環させながら、低周波超音波及び高周波超音波を照射する上記()に記載のリポソームの製造方法。
)間接照射系により、低周波超音波、及び高周波超音波を照射する上記(6)又は(7)に記載のリポソームの製造方法。
)1)キャビテーションによる損傷が少なく、2)ナノメートルサイズに揃った粒子径と均一な球形の形態を有するリポソームを調製することができる上記()から()のいずれか1項に記載のリポソームの製造方法。
10)粒子径が、ナノレベルオーダーのリポソームを調製する上記(6)から()のいずれか1項に記載のリポソームの製造方法。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、低周波超音波照射、及び高周波超音波照射により、キャビテーションによる損傷が少なく、ナノメートルサイズの平均粒径と、均一な球形の粒形を有するリポソームを調製する製造装置、及び製造方法に係るものであり、本発明の特徴は、(1)複数の異なる周波数の超音波を照射する機構、及び(2)循環型の超音波間接照射系を有することの2点である。本発明では、原料液を、振幅を大きく取りやすい低周波超音波によりマイクロレベルの粒径に分散させ、次いで、加速度が大きくなる高周波超音波によりナノレベルまで微細化させてナノメートルオーダーのリポソームを調製するものである。また、本発明では、原料液を循環して超音波照射することにより、外部雰囲気の影響を制御、低減することができる。
次に、(1)複数の異なる周波数の超音波を照射する機構について説明すると、本発明においては、原料をマイクロレベルの粒径に分散させる低周波超音波(20−50kHz、好適には28−40kHz)による照射と、更に、キャビテーション損傷の少ない条件下で、リポソーム粒径をナノレベルまで極微細化、均一化する作用を有する高周波超音波(500kHz−20MHz、好適には1−5MHz)による照射の併用を特徴とするものである。本発明は、2つの異なる周波数の超音波、すなわち、振幅を大きくとりやすい低周波の超音波と、加速度が大きくなる高周波の超音波を組み合わせることにより、微細なリポソーム(超音波リポソーム)を高収率で調製し得る画期的な機構を有する。
低周波領域においては、振動振幅を増幅する機構であるホーンを使用することが容易であり、10−20倍程度の増幅が可能である。このような大きな振動振幅により、活発なキャビテーションがホーン直下に形成され、キャビテーション気泡からの衝撃波や、激しい渦流によるせん断力等がリポソーム原料の微細化に極めて有効となる。しかしながら、極めて強力な超音波場が形成されるために、ホーン先端からの材料金属の飛散が問題となる。
そこで、ホーンの利点を活かしつつ、金属片の混入を防ぐために、試料とホーンの間にカップリング材を介した間接照射とする。カップリング材に求められる性能は、超音波エネルギーの吸収が少ないこと、強力な超音波場においても損傷を受けにくいこと、生体に対して有害でないこと等である。有害でないこと、という観点から、多くの金属は対象外となる。通常、ホーンに使用される金属であるチタンは、生体に与える害毒が比較的小さい金属であるが、金属微粉の混入により細胞損傷等の恐れが高まり望ましいものではない。
一方、ガラスやセラミックス材料等について、カップリング材としての可能性を検討したが、石英ガラス、アルミナやジルコニア等、ほとんどのセラミックス系の材料において短時間(10分程度)で表面の損傷が顕著となり、1時間以上の長時間にわたる超音波照射に耐性のある材料を見出すことができなかった。そこで、シリコーンゴム等の可とう性高分子系材料について試験を行ったところ、耐性があることが判明した。この際、超音波の吸収を少なくするためには0.5mm以下の厚さが好ましいとともに、ホーン先端に形成される強力音場を有効に利用するためには、ホーンからの距離をとることなく、接触させて設置することが望ましいことを見出した。これらの知見により、低周波超音波による高エネルギー密度の反応場を、金属片等の不純物混入の恐れなく、形成することが可能となった。この結果、リポソーム原料の粒径をマイクロメートルレベルの大きさまで容易に減少させることが可能となった。
また、カップリング材としての膜を介しての間接照射とすることにより、試料溶液と空気との接触を制御することが容易となり、リポソームの空気による酸化等、従来法でしばしば問題となっていた点を克服することができる、という利点も同時に付加されることを見出した。このように、低周波超音波を、ホーンを用いて振幅増幅し、更に、間接照射することによって、不純物混入のない、効率的にリポソーム原料の微細化を達成することが可能となる。
しかしながら、超音波リポソーム作製においてしばしば問題とされるキャビテーション由来の原料損傷については、このような機構だけで解決することは難しい。そこで、高周波超音波の照射を付加するという本発明のもう一つの要点が重要となる。キャビテーションは超音波による気泡の発生を原因とするが、発生した気泡の膨張−収縮により酸化剤や衝撃波の生成が起きる。キャビテーション閾値は超音波の周波数に対して指数的に上昇することが知られており、高周波超音波を使用することによりキャビテーションの弊害を取り除くことが可能となる(T.J.Mason,J.P.Lorimer、“Applied Sonochemistry,”,Wiley−VCH(2002)参照)。
一方、キャビテーション気泡によって生成される酸化剤の量は、気泡内への水分蒸発量等との関連から200−500kHzの領域においてピークを持つことが知られている
(S.Koda,T.Kimura,T.Kondo,H.Mitome, Ultrasonics Sonochemistry,10(2003)149−156参照)。
そこで、これらのキャビテーションによる酸化剤形成の影響を小さくするためには、酸化剤生成の活発な周波数領域を大きく上回る1−20MHzといった高周波超音波の照射が望ましい。このような領域における超音波の作用機構は、低周波超音波とは異なり、超音波による加速度に由来するとの考え方が一般的であるが、現状では明確な根拠は無い(実吉純一、菊池喜充、能本乙彦、”超音波技術便覧 新訂版”、pp.121、日刊工業新聞(1978)参照)。
高周波超音波による作用は、ホーンを使用した場合の低周波のような力強さは無いものの、洗浄におけるナノサイズ汚れの除去や、ナノエマルションの安定化に有効であるといわれている(K.Kamogawa,G.Okudaira,M.Matsumoto,T.Sakai,H.Sakai and M.Abe,Langmuir,20 (2004)2043−2047参照)。
そこで、低周波超音波による微細化を必要最小限の短時間行うとともに、微細化されたリポソーム原料を、更に、目的とする150nm以下の大きさで分布の狭いものにそろえるという作用を高周波超音波で分担し、キャビテーションによる原料損傷を最小限に押さえ込むというプロセスを確立した。ここで、高周波超音波においては、ホーンの作製が不可能であることから、凹レンズ型あるいはとい型の2つの集束型照射機構について比較検討し、超音波の作用効率を高めることとした。
得られた結果としては、凹レンズ型集束型照射機構は1点に強い音場を形成できるが、作用領域が狭く、極端に高い音圧は、たとえ高周波であってもキャビテーション発生の可能性を高めることから好ましいものではなかった。一方、パイプ状の流れに沿って超音波を集束できるとい型照射機構では良好な結果が得られた。更に、このようなパイプ状の流通型照射機構とすることにより、低周波超音波照射部分で実現された間接照射とすることによるメリット、すなわち、試料溶液と雰囲気との接触を制御することが容易となり、空気による酸化等、従来法でしばしば問題となっていた点を克服することができるという利点を引き続き保持することが可能となる。
次に、(2)循環型の超音波間接照射系について説明すると、本発明においては、低周波超音波照射部位、及び高周波超音波照射部位の双方を間接照射とすることにより、外部雰囲気の影響を制御、低減した循環流路系のプロセスとすることができる。このような流れ系を実現することによるメリットとしては、1)空気酸化等の雰囲気からの悪影響を取り除くことが容易となる、2)製品への不純物混入を押さえ高純度品の製造に有利である、3)反応原料を一度に大量に処理することが可能である、4)逆に試料量が少ない場合でも操作が可能である、5)照射部位が固定されるため、すべての試料溶液に対して均一なエネルギー照射を可能とする、等が挙げられる。このことは、サイズ均一性の高い超音波リポソーム調製に有利となる。また、6)温度調節が容易である、7)プロセスの進行状況をモニタすることが容易である、といった、これまでにない多くの利点を達成することができる。
更に、強制的に試料を循環させる方式によってもたらされる流れの影響は、リポソームの調製プロセス自体にも好影響を及ぼすことが確認された。すなわち、ナノメートルオーダーのリポソーム調製においては、超音波による脂質集合体の分散作用が重要となるが、一方で、微細化されたリポソームの再集合化も起きており、必ずしも長時間の超音波照射が微細化に結びつかない。特に、超音波による定在波が形成されると、リポソームは特定の空間に捕捉されるようになり、リポソーム間の衝突回数が増加し、再集合化が顕著となる。一方、試料を流れによって輸送する効果を付加した循環型照射系においては、リポソームが空間の特定位置に止まることなく移動するので、再集合化が抑制され、リポソームの微細化の進行に益するところとなる。
次に、本発明の装置について、図面を参照しながらその一例を説明する。
本発明の超音波照射装置は、例えば、図1に示すように、循環流路を構成する回路に、流路変更用の3方コック(C1、C2、C3)、低周波超音波照射デバイス(LF)、高周波超音波照射デバイス(HF)、循環用ポンプ(P)、及び反応液貯留槽(R)、が配置された構造を有する。まず、反応液貯留槽(R)に収容された反応液(原料液)は、ポンプ(P)により低周波超音波照射デバイス(LF)へ送られ、そこで反応液に低周波が照射されて、リポソーム原料の粒径は、マイクロメートルレベルの大きさにまで減少する。このとき、3方コックC1、C2を操作して、貯留槽(R)と低周波超音波照射デバイス(LR)を含む循環流路を形成することにより、反応液を、この流路中で循環させながら低周波超音波照射を複数回行ってもよい。リポソーム原料は、マイクロメートルレベルの微粒子となり、貯留槽(R)中に貯留される。
次に、上記工程で調製され、貯留槽(R)中に貯留された、マイクロメートルレベルのリポソーム原料は、ポンプ(P)により高周波超音波照射デバイス(HF)へ送られ、そこで高周波超音波が照射されて、リポソーム粒径がナノメートルレベルの大きさにまで微粒化される。このとき、3方コックC2、C3、C1を操作することにより、貯留槽(R)と高周波超音波照射デバイス(HF)を含む循環流路を形成し、反応液をこの流路中で循環させながら高周波超音波を複数回照射してもよい。低周波超音波及び高周波超音波を照射してナノメートルサイズの微粒リポソームを調製し、貯留槽(R)中に貯留させて製品とする。また、貯留槽(R)、低周波超音波照射デバイス(LF)、高周波超音波照射デバイス(HF)を含む循環流路を形成して、ナノメートルサイズのリポソームを製造することができる。
図2に示す高周波超音波照射デバイス(HF)は、循環用チューブが両端に接続された照射チューブ、及びとい型高周波振動子が恒温水槽中に設置され、照射チューブ中を連続して通過する反応液に高周波超音波が照射される構造を有している。また、図3に示す低周波超音波照射デバイス(LF)は、循環用チューブが両端に接続された照射液槽が恒温槽中に設置され、照射液槽中を連続して通過する反応液に、低周波超音波ホーンにより低周波超音波が、照射膜(カップリング材)を介して、照射される構造を有している。
上記の低周波超音波照射により調製されたリポソームには、図4に示すように、粒径のばらつきが大きく、数ミクロンサイズの大きな脂質集合体の残存が認められるが、低周波超音波の照射に続いて、高周波超音波を照射すると、図5に示すように、球形粒子で形状が揃った、ナノメートルサイズの高品位なリポソームが得られる。
本発明により、(1)現行の超音波リポソーム調製法の中で金属混入を防げるものは、浴型超音波照射装置を用いて試験管に照射を施すという、「家内制手工業」的な方法であり、この方法の主な欠点は、(a)大量調製が困難であること、(b)照射効率及び収率が低いであるが、本発明では、(イ)循環機構の採用により大量調製・自動化が可能となる、(ロ)複数周波数の超音波照射により製品の品質を均一に保つことができるという効果が得られる、(2)超音波リポソームの原料としては、卵黄フォスファチジルコリン、大豆フォスファチジルコリン等の、比較的安価な脂質から、高付加価値を有する高価なもの(例えば、新規合成脂質)まで幅広く使用することができる、(3)本発明は、大量調製を可能とする循環機構を提供できるとともに、超音波リポソームの実用化のための基礎研究での少量調製への対応といったニーズへも適用が可能である、(4)照射装置の小型化により、ごく少量の出発原料に対しても効率的な超音波照射が可能であり、1ないし10ミリリットル程度の少量の試料に対しても有効な超音波照射が可能となる、という効果が奏される。
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
本実施例では、脂質として、卵黄由来フォスファチジルコリン(Sigma,P3556)を使用してリポソームを調製した。まず、粉末状態の脂質を、洗浄済みのガラスの試験管に25mg秤り取り、クロロホルムを加えて溶解させた後、ドラフト中でパスツールピペット先端からのNガスのフローで溶媒を蒸発させて、試験管の底面に脂質をフィルム状に乾かした。試験管の口をアルミホイルで軽く蓋をして、真空デシケータ内に入れ、ロータリーポンプで一晩真空状態におき、有機溶媒を除去した。
次に、真空デシケータから取り出した試験管に洗浄したガラスビーズを1g程度入れ、更に、バッファー液(Phosphate Buffered Saline)を2.5ml入れ、振動型ミキサーで数分間強く攪拌して脂質を分散させた。このように準備した多層ベシクルの分散液を10倍に希釈した後、超音波を照射した。図1の3方コック、C1,C2,C3を操作することにより、試料液を循環させながら低周波超音波(20kHz)による照射を10分間行った。超音波出力は50Wとした。次に、3方コック、C1,C2,C3を操作することにより、高周波超音波(1MHz)による照射を30分間行った。この時の超音波出力は30Wとした。
低周波超音波照射時に得られたリポソームには、粒径のばらつきが大きく、数ミクロンサイズの大きな脂質集合体の残存が認められた。更に、比較的小さな粒子の集合体を観察すると、棒状のリポソームが認められた(図4参照)。一方、高周波超音波を照射後のものは、ほとんどが球形の形態になるとともに、粒子径も数十nmから150nm程度に揃ったものとなり、好ましい形態と粒径分布へと変化していることが確認された(図5参照)。
以上詳述したように、本発明は、複数の異なる周波数の超音波照射によるリポソームの製造装置、及びその製造方法に係るものであり、本発明により、リポソーム原料液に複数の異なる周波数の超音波を照射することにより、ナノメートルレベルの粒径を有し、粒径分布が狭く、異物が混入することなく、高品位なリポソームを調製することが可能なリポソーム製造装置、及び製造方法を提供することが可能となる。本発明は、物理的分散作用に優れた低周波超音波照射を行い、更に、この低周波超音波とは作用機構が異なる高周波超音波を相補的に用いることにより、効率良く微細リポソームを製造することを可能とするリポソームの新しい製造技術の提供を可能とするものである。本発明のリポソーム製造技術により、超音波ホーン等からの金属混入がなく、しかも、キャビテーションによる障害の少ない、高品位のリポソームを製造することができる。更に、本発明は、必要最低限の量の医薬を、必要な場所に運搬するドラッグデリバリーシステム(DDS)の運搬体として有用な、ナノキャリア(リポソーム)を提供し、人体に投与するゆえに要求される、超高純度であること、サイズが数十nmから150nmであることを満たすリポソームの製造装置、及び製造方法の提供を可能とするものである。
超音波照射装置の全体図を示す。 高周波超音波照射デバイスの構成図を示す。 低周波超音波照射デバイスの構成図を示す。 低周波超音波照射デバイスにより、10分間超音波を照射した時に得られたリポソームの電子顕微鏡写真を示す。 低周波超音波照射デバイスで10分間、及び高周波超音波照射デバイスで30分間の循環式間接照射を行った時に得られたリポソームの電子顕微鏡写真を示す。
符号の説明
C1、C2、C3:3方コック
HF:高周波超音波照射デバイス
LF:低周波超音波照射デバイス
P:循環用ポンプ
R:反応液貯留槽

Claims (10)

  1. 超音波照射によりリポソームを製造するための装置において、複数の異なる周波数の超音波を照射する超音波照射手段を有するリポソームの製造装置であって、
    超音波照射手段が、20−50kHzの低周波超音波照射手段、及び500kHz−20MHzの高周波超音波照射手段を有することを特徴とするリポソームの製造装置。
  2. 原料液を循環させながら、低周波超音波照射手段及び高周波超音波照射手段による超音波照射を可能とする循環流路を有する請求項に記載のリポソームの製造装置。
  3. 低周波超音波、及び高周波超音波の間接照射系を有する請求項1又は2に記載のリポソームの製造装置。
  4. 1)キャビテーションによる損傷が少なく、2)ナノメートルサイズに揃った粒子径と均一な球形の形態を有するリポソームを調製することができる請求項1からのいずれか1項に記載のリポソームの製造装置。
  5. 粒子径が、ナノレベルオーダーのリポソームを調製することができる請求項1から4のいずれか1項に記載のリポソームの製造装置。
  6. 複数の異なる周波数の超音波を原料液に照射することにより、微細リポソームを調製するリポソームの製造方法であって、
    20−50kHzの低周波超音波、及び500kHz−20MHzの高周波超音波を照射することを特徴とするリポソームの製造方法。
  7. 原料液を循環させながら、低周波超音波及び高周波超音波を照射する請求項に記載のリポソームの製造方法。
  8. 間接照射系により、低周波超音波、及び高周波超音波を照射する請求項6又は7に記載のリポソームの製造方法。
  9. 1)キャビテーションによる損傷が少なく、2)ナノメートルサイズに揃った粒子径と均一な球形の形態を有するリポソームを調製することができる請求項からのいずれか1項に記載のリポソームの製造方法。
  10. 粒子径が、ナノレベルオーダーのリポソームを調製する請求項からのいずれか1項に記載のリポソームの製造方法。
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