JP4540764B2 - 切削工具 - Google Patents

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Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえば金型の彫り込み加工などに使用される円弧切れ刃を有する刃先交換式の切削工具に関する。
【０００２】
【従来の技術】
円弧切れ刃を備えた刃先交換式の切削工具の一例として、図５に示すラジアスエンドミルが知られている。工具本体は、円柱形状をなし、シャンク部と刃部２１とからなり、刃部２１先端の外周には、回転方向および半径方向外側に開口して切欠きされたチップ取付座２２が形成されている。チップ取付座２２には、超硬合金その他の硬質材料からなる円板形状のスローアウェイチップ（以下、「チップ」という。）２３がその中央取付穴２４を利用して、締付ねじ２５により締着固定されている。チップ２３は、その円形の上面２６がすくい面、環状の側面が逃げ面となるように組み込まれている。切れ刃２７は、すくい面と逃げ面の交差稜線部に形成されている。
【０００３】
このような構成からなる切削工具は、コーナ刃の強度が高まるため、欠損やチッピングが防止されるという利点があり、特に、高硬度材や難削材の加工に優れた性能を発揮する。また、浅い切り込みで加工を行う場合は、加工面あらさを低下させることなく、一刃当たりの送り量を大きくして高能率に加工を行うことができる。さらに、工具突き出し量の長い深彫り込みの加工において、びびり振動の発生防止に効果がある。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、以下に従来技術の問題点を記述する。
【０００５】
工具本体の軸方向に浅い切込みを与えて切削する場合は、同一箇所を繰り返して切削することにより次第に溝が深くなり、それによって円弧切れ刃の接触領域が増し、切削抵抗の増大を招くこととなる。これは、外周刃と加工溝の壁面との間に間隙、いわゆる逃げがないために生ずるものである。切削抵抗が増大すると、振動が誘起されて、チッピングや欠損が生じやすくなる。すなわち、切削抵抗の増大は、工具寿命を短くし、加工面あらさを低下させるという問題がある。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記の如き課題に鑑みなされたもので、複数のスローアウェイチップが、円柱状又は円盤状をなす工具本体先端部の外周に、その上面を工具本体の回転方向に向けて配設され、それぞれの中央取付穴の利用により、締付ねじによりチップ取付座に着脱自在に固定されるようにした切削工具において、前記スローアウェイチップは、略三角形平板状又は略長方形平板状のものからなり、その上面と側面との交差稜線部に形成される切れ刃は、相互に異なる曲率半径を有して隣接配置される底刃及びコーナ刃と、当該コーナ刃に隣接して配置される直線状切れ刃の外周刃とから構成され、前記コーナ刃は、前記工具本体の半径方向外側に位置し加工径に相当する部分を切削する切れ刃であり、前記底刃は、前記コーナ刃の半径方向内側に隣接し、その内周端から外周端に向かうに従い後端側に向かうように傾斜して、前記コーナ刃とともに彫り込み加工における切り込みを担う切れ刃であり、当該底刃の曲率半径Ｒ１は、前記スローアウェイチップの内接円の直径又は長辺の長さより大きい寸法に設定され、かつ、前記コーナ刃の曲率半径Ｒ２よりも大きい寸法に設定され、当該外周刃の切れ刃稜線は工具本体の軸方向に対してαなる角度で配設されたことを特徴とする。
【０００７】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について図を参照しながら説明する。図１及び図２に示す工具本体１は、円柱状を成し、工作機械に把持されるシャンク部２とチップ５が組み込まれる刃部３とから構成されている。刃部３先端の外周側面には、工具本体１の先端側及び半径方向外側に開口して切欠きされたチップ取付座４が回転対称の位置に形成されている。チップ取付座４には、図３に示すチップ５が、その中央取付穴７を介して締付ねじ８により締着固定されている。
【０００８】
チップ５は、図３に示す如く、凸形状に湾曲した側面９と、略三角形の平坦な上面１０及び下面１１とからなる平板状を成すものである。チップ５がチップ取付座４に配置されたときには、その上面１０がすくい面を構成し、側面９が逃げ面を構成する。上面１０と側面９との交差稜線部には、円弧状の稜線からなる底刃６ａ及びコーナ刃６ｂと、直線状の稜線からなる外周刃６ｃとが形成されている。
【０００９】
前記底刃６ａは、加工物の底面を切削する切れ刃であり、その切れ刃形状は加工面あらさや加工能率を左右する。曲率半径が大きいほど、加工面あらさが向上し、また、１刃当たりの送り量を大きくとることができる。そこで、本発明では、底刃の曲率半径Ｒ１をチップ５の内接円の半径より大きい寸法に設定することにより、加工面あらさの向上と、加工能率の上昇が得られている。次に、底刃６ａに隣接するコーナ刃６ｂは、半径方向外側に位置する切れ刃であり、加工径に相当する部分を切削する切れ刃でもある。すなわち、工具本体１を軸直角方向に送った場合に、加工物に最初に接触する切れ刃がコーナ刃６ｂであり、このようなことからコーナ刃６ｂには切れ味と切れ刃強度の双方の切削性能が要求されている。しかし、コーナ刃６ｂは、その曲率半径Ｒ２が大きくなるにしたがい切れ刃強度が向上するものであり、一方、曲率半径Ｒ２が小さくなるにしたがい切れ味が向上するものであり、斯かる両性質を同時に満足させることは容易ではない。そこで、本発明は、コーナ刃６ｂの曲率半径Ｒ２と底刃６ａの曲率半径Ｒ１とを異なる寸法に設定し、いわゆる円形チップの切れ刃強度を維持しつつ、三角チップの切れ味の両性質を兼ね備えるように構成したものである。
【００１０】
次に、コーナ刃６ｂに隣接する外周刃６ｃは、加工物の壁面を切削する切れ刃であり、チップ５が工具本体１に組み込まれた状態においては、その切れ刃稜線はバックテーパαを成して工具本体１の軸方向後方に真っ直ぐ延在するように形成されている。ここで、バックテーパとは、工具本体１の軸方向に対して半径方向内側に傾斜した角度をいう。前述したように、円形チップを備えるラジアスエンドミルでは、加工溝が深くなるに従い、切れ刃６の接触領域が増し、切削抵抗が増大するという問題があった。そこで、本発明は、チップ５が工具本体１に組み込まれた状態において、逃げを形成するようにしたものである。これにより、外周刃６ｃと壁面との余計な干渉を避けることができ、これにより、彫り込み加工において円滑な加工を達成することができる。
【００１１】
図４は、本発明の第２の実施形態を示したものである。図１ないし図３に示したものと同一構成部分には、同一符号を付してその説明を省略する。第１の実施形態に対する主な相違点は、工具本体に組み込まれて使用されるチップ１２の形状である。チップ１２は、略長方形を成し、その長辺側の稜線部に底刃１３ａとされる円弧切れ刃が形成されている。切れ刃の曲率半径Ｒ３は、本チップの長辺の長さより大きい寸法に設定している。前述した略三角形チップ５では、１チップ当たり３コーナ使用可能であったのに対し、本チップは２コーナ使用である点でも第１の実施形態と相違する。本チップ１２は、底刃１３ａの切れ刃稜線を長く形成できるため、送りの高い高能率加工に向いている。
【００１２】
なお、底刃１３ａ、コーナ刃１３ｂ、外周刃１３ｃの配置構成については、前述した略三角形チップ５と共通する。
【００１３】
【発明の効果】
本発明によれば、彫り込み加工時の切削抵抗の増大を抑制して、円滑な加工を行うことができる。また、送り量を高くして高能率に加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明に係わる切削工具の第１の実施形態を示す（ａ）正面図、（ｂ）は側面図、（ｃ）は底面図である。
【図２】図１（ａ）の刃部先端の拡大図を示したものである。
【図３】図１の工具本体に組み込まれて使用されるチップの（ａ）は正面図、（ｂ）は側面図である。
【図４】本発明に係る切削工具の第２の実施形態を示す刃部先端の拡大図である。
【図５】従来の切削工具の一例を示す刃部先端の拡大図である。
【符号の説明】
１ 工具本体
５ チップ
６ａ、１３ａ 底刃
６ｂ、１３ｂ コーナ刃
６ｃ、１３ｃ 外周刃
α バックテーパ
Ｒ１、Ｒ３ 底刃の曲率半径
Ｒ２、Ｒ４ コーナ刃の曲率半径

Claims (1)

  1. 複数のスローアウェイチップが、円柱状又は円盤状をなす工具本体先端部の外周に、その上面を工具本体の回転方向に向けて配設され、それぞれの中央取付穴の利用により、締付ねじによりチップ取付座に着脱自在に固定されるようにした切削工具において、前記スローアウェイチップは、略三角形平板状又は略長方形平板状のものからなり、その上面と側面との交差稜線部に形成される切れ刃は、相互に異なる曲率半径を有して隣接配置される底刃及びコーナ刃と、当該コーナ刃に隣接して配置される直線状切れ刃の外周刃とから構成され、前記コーナ刃は、前記工具本体の半径方向外側に位置し加工径に相当する部分を切削する切れ刃であり、前記底刃は、前記コーナ刃の半径方向内側に隣接し、その内周端から外周端に向かうに従い後端側に向かうように傾斜して、前記コーナ刃とともに彫り込み加工における切り込みを担う切れ刃であり、当該底刃の曲率半径Ｒ１は、前記スローアウェイチップの内接円の直径又は長辺の長さより大きい寸法に設定され、かつ、前記コーナ刃の曲率半径Ｒ２よりも大きい寸法に設定され、当該外周刃の切れ刃稜線は工具本体の軸方向に対してαなる角度で配設されたことを特徴とする切削工具。
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