JP4529380B2 - 溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面外観の優れた溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
溶融亜鉛めっき鋼板は、めっき密着性、耐食性、コストなどの点で優れ、建材、家電を中心に多くの需要がある。しかしながら、溶融亜鉛めっき鋼板には非常に小さな多数の点状の欠陥が生成しやすく、表面外観に劣るため、自動車外板用途としては、用いることができない。従って、自動車外板用途としては、表面外観が非常に良好である、電気亜鉛めっき鋼板が用いられているが、コスト的に非常に劣り、厚めっきができないという問題がある。一方、自動車外板用途としては、塗装密着性、塗装耐食性、溶接性などの点で優れた特性を有し、表面外観が良好である、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(溶融亜鉛めっき鋼板に対して、めっき層の合金化処理を行い、めっき層全体がFe−Zn合金となっている鋼板)が多用されているが、良好な品質の合金化溶融亜鉛めっき鋼板を安定して得るためのFe−Zn合金制御が難しいため、極限られたメーカーによって供給されているのが現状である。従って、表面外観の優れた溶融亜鉛めっき鋼板が求められていた。
【0003】
前記のとおり、溶融亜鉛めっき鋼板には非常に小さな多数の点状の欠陥が生成しやすい。本発明者らは、この点状の表面欠陥の特徴ならびに発生原因について鋭意調査を行った結果、前記点状の表面欠陥は以下の欠陥に分類できることが判明した。
【0004】
(1)ドロス性欠陥
溶融亜鉛めっき鋼板における小さな点状の表面欠陥の中には、その中心にトップドロス粒子(Fe−Al合金)、ボットムドロス粒子(Fe−Zn合金)などの粒子が存在するものがあることが判明した。本明細書では、このような表面欠陥を「ドロス性欠陥」と呼ぶ。
【0005】
(2)ドロス状欠陥
溶融亜鉛めっき鋼板における小さな点状の表面欠陥の中には、その中心に「ドロス性欠陥」に見られるような粒子が存在せず、表面欠陥の部分のめっき層と鋼板の界面には、局部的に下地の鋼板が亜鉛と反応してFe−Zn合金が形成されたアウトバースト組織(outburst組織)が存在するものがあることが判明した。本明細書では、このような欠陥を「ドロス状欠陥」と呼ぶ。
【0006】
(3)鋼板凹凸性欠陥
溶融亜鉛めっき鋼板における小さな点状の表面欠陥の中には、その中心に「ドロス性欠陥」に見られるような粒子が存在せず、また、「ドロス状欠陥」に見られるような、めっき層と鋼板の界面における、局部的に下地鋼板が亜鉛と反応してFe−Zn合金が形成されたアウトバースト組織が存在せず、ただ単に、下地鋼板の表面に凹凸のみが存在するものがあることが判明した。本明細書では、このような欠陥を「鋼板凹凸性欠陥」と呼ぶ。
【0007】
(1)の「ドロス性欠陥」の主な発生原因は、溶融亜鉛めっき浴中に存在する、トップドロス粒子(Fe−Al合金)、ボットムドロス粒子(Fe−Zn合金)(図1参照)が、めっき層中にトラップされることで、図2(a)に示されるように、その部分のめっき厚が厚くなる。その後のスキンパス工程により圧延される際に、図2(b)に示されるように、ドロス粒子のある部分は、他の部分とつぶれ方が異なるため、点状の欠陥に見えるようになるものである。従って、「ドロス性欠陥」は、めっき浴のドロス除去を頻繁に行い、浴中のドロスをなくすことにより解決できる。
【0008】
また、(3)の「鋼板凹凸性欠陥」の主な発生原因は、下地鋼板表面に比較的大きな凹凸が存在する部分では、ガスワイピングで、めっき厚が厚くなり、その後のスキンパス工程により圧延される際に、前記めっき厚が厚くなった部分は他の部分とつぶれ方が異なるため、点状の欠陥に見えるようになるものである。従って、「鋼板凹凸性欠陥」は、鋼板表面に比較的大きな凹凸を生じないように、めっき浴に浸漬される前の鋼板に打痕疵やスリ疵を生じさせないように、鋼板の取り扱いや通板等に注意を払うことにより解決できる。
【0009】
前記のように、「ドロス性欠陥」ならびに「鋼板凹凸性欠陥」に対する解決策を取ることにより、点状欠陥に改善の傾向は認められた。点状の欠陥の中に、(2)の「ドロス状欠陥」があること自体は、これまで知られておらず、本発明者らが新たに見出した。従って、前記「ドロス状欠陥」に対する有効な解決策は明らかにされていないため、点状欠陥の数を、表面外観が良好であると認められるレベルまでに減少させることはできなかった。
【0010】
また、溶融亜鉛めっき鋼板には、前記の点状の欠陥以外に、Znの凝固組織に起因する小さなスパングル模様、ガスワイピングに起因するサザナミ模様が生成しやすく、これに起因する表面外観劣化の問題がある。
【0011】
すなわち、溶融亜鉛めっき鋼板においては、建材用途向けにスパングルを大きく生成させるべく、PbやSbを添加したレギュラースパングル材と呼ぶ商品があるが、自動車外板用途のように均一な表面外観が求められる場合には、PbやSbを添加しないミニマイズドスパングル材と呼ばれる商品が適用されている。
しかしながら、PbやSbを添加しない場合でも、Znの凝固に伴う小さなスパングルが存在し、表面外観劣化の原因となっている。
【0012】
溶融亜鉛めっき鋼板では、ガスワイピング時にサザナミ模様が発生する場合がある。これは、比較的長周期の凹凸であり、自動車用途のように塗装を施して使用される場合には、塗装後鮮映性の劣化という問題を生じる。
【0013】
従って、溶融亜鉛めっき鋼板では、スパングル模様やサザナミ模様に起因する表面外観の劣化が無いことが望ましい。
【0014】
以下に先行技術文献情報について記載する。尚、非特許文献1については説明の都合上、[発明の実施の形態]で内容を説明する。
【0015】
【非特許文献1】
黒部淳、外4名,「溶融めっき浴内流れに関するコールドモデル実験」,鉄と鋼,Vol81(1995),No.7,p.733−738
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
上記の現状に鑑みて、本発明の第1の目的は、点状欠陥、特に「ドロス状欠陥」に起因する点状欠陥を低減し、表面外観が良好な溶融亜鉛めっき鋼板とその製造方法を提供することである。
【0017】
また、本発明の第2の目的は、さらに、スパングル模様やサザナミ模様に起因する表面外観の劣化を防止できる溶融亜鉛めっき鋼板とその製造方法を提供することである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の要旨は以下のとおりである。
【0019】
(1)P含有量が0.01〜0.1質量%で、表面粗さがRaで0.1〜0.8μmである下地鋼板表面に、Znを98質量%以上含有するめっき層を有する溶融亜鉛めっき鋼板であって、鋼板表面のFe−Al層が破壊され、Fe−Zn合金化反応(Outburst反応)が起こることに起因するドロス状欠陥の数が1平方メートル当たり100個以下であることを特徴とする表面外観に優れた溶融亜鉛めっき鋼板。
【0020】
(2)Znを98質量%以上含有するめっき層は、Pb含有量が0.02質量%以下であることを特徴とする(1)に記載の表面外観に優れた溶融亜鉛めっき鋼板。
【0021】
(3)鋼板を、還元性あるいは非酸化性の雰囲気で焼鈍した後、大気に接触させること無く溶融亜鉛浴中に通板せしめて亜鉛めっき処理する溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法において、溶融亜鉛浴として、Znを98質量%以上含み、該溶融亜鉛浴中に添加されるAlの濃度が0.18〜0.5質量%である浴を用い、かつ、鋼板が溶融亜鉛浴に浸漬された直後から浴中ロールに接触するまでの間で、鋼板表面に、Znを98質量%以上、Alを0.18〜0.5質量%含み、板面位置での板面に垂直方向の流速が1.0〜5m/秒の範囲内にある亜鉛浴を吹き付けることを特徴とする表面外観に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0022】
(4)鋼板を、還元性あるいは非酸化性の雰囲気で焼鈍した後、大気に接触させること無く溶融亜鉛浴中に通板せしめて亜鉛めっき処理する溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法において、溶融亜鉛浴として、Znを98質量%以上含み、該溶融亜鉛浴中に添加されるAlの濃度が0.18〜0.5質量%である浴を用い、かつ、浴中ロールに接触した直後の鋼板表面に、Znを98質量%以上、Alを0.18〜0.5質量%含み、板面位置での板面に垂直方向の流速が1.0〜5m/秒の範囲内にある亜鉛浴を吹き付けることを特徴とする表面外観に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0023】
(5)鋼板を、還元性あるいは非酸化性の雰囲気で焼鈍した後、大気に接触させること無く溶融亜鉛浴中に通板せしめて亜鉛めっき処理する溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法において、溶融亜鉛浴として、Znを98質量%以上含み、該溶融亜鉛浴中に添加されるAlの濃度が0.18〜0.5質量%である浴を用い、かつ、鋼板が溶融亜鉛浴に浸漬された直後から浴中ロールに接触するまでの間で、鋼板表面に、Znを98質量%以上、Alを0.18〜0.5質量%含み、板面位置での板面に垂直方向の流速が1.0〜5m/秒の範囲内にある亜鉛浴を吹き付け、さらに、浴中ロールに接触した直後の鋼板表面に、Znを98質量%以上、Alを0.18〜0.5質量%含み、板面位置での板面に垂直方向の流速が1.0〜5m/秒の範囲内にある亜鉛浴を吹き付けることを特徴とする表面外観に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0025】
)鋼板を、還元性あるいは非酸化性の雰囲気で焼鈍した後、大気に接触させること無く溶融亜鉛浴中に通板せしめて亜鉛めっき処理する溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法において、溶融亜鉛浴として、Znを98質量%以上含み、該溶融亜鉛浴中に添加されるAlの濃度が0.18〜0.5質量%である浴を用い、かつ、めっき浴温度ならびに侵入板温度を430〜455℃とするとともに、(3)〜()の何れかに記載の方法で、溶融亜鉛浴中で鋼板表面に亜鉛浴を吹き付けることを特徴とする表面外観に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0027】
) (3)〜()の何れかに記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法において、溶融亜鉛浴として、Znを98質量%以上含み、該溶融亜鉛浴中に添加されるAlの濃度が0.18〜0.5質量%である浴に代えて、Znを98質量%以上含み、該溶融亜鉛浴中に添加されるAlの濃度が0.18〜0.3質量%である浴を用い、また鋼板表面に吹き付ける亜鉛浴として、Alを0.18〜0.5質量%含む亜鉛浴に代えて、Alを0.18〜0.3質量%含む亜鉛浴を用い、更に、浴を分析して検出されるFe濃度が、
[Fe%]≦5x[Al%]2−3.25x[Al%]+0.575
を満たす条件にて製造することを特徴とする表面外観に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0028】
)鋼板は、表面粗さがRaで0.1〜0.8μmであることを特徴とする(3)〜()の何れかに記載の表面外観に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0029】
)鋼板は、P含有量が0.01〜0.1質量%であることを特徴とする(3)〜()の何れかに記載の表面外観に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0030】
10)鋼板は、P含有量が0.01〜0.1質量%で、表面粗さがRaで0.1〜0.8μmであることを特徴とする(3)〜()の何れかに記載の表面外観に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0031】
11)溶融亜鉛浴中に含有されるPbの濃度を0.02質量%以下とすることを特徴とする(3)〜(10)の何れかに記載の表面外観に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0032】
12)ガスワイピングを行ってから2〜5秒経過後かつめっき層が凝固する以前に鋼板を冷却することを特徴とする(3)〜(11)の何れかに記載の表面外観に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0033】
なお、本明細書において、鋼の成分、溶融亜鉛浴(本明細書では、めっき浴ともいう。)の成分、めっき層の成分を示す%は、全て質量%である。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、発明に至った経緯とともに説明する。
【0035】
本発明者らは、上記の課題、特に「ドロス状欠陥」を解決するために詳細に検討した結果、この欠陥の主な発生原因は、下記(a)〜(f)のメカニズムによるものであることを見出した。下記(a)〜(d)はめっき浴中、(e)及び(f)はガスワイピング工程〜スキンパス工程におけるものであり、また下記(a)〜(f)は、それぞれ、図3の「ドロス状欠陥」の発生メカニズムを説明する模式図の(a)〜(f)に対応する。
(a)めっき浴に浸漬直後、鋼板11表面にFe−Al層12が生成する。
(b)鋼板11の突起部が、浴中ロール15の突起部と接触する。
(c)鋼板11の突起部と浴中ロール15の突起部との接触部でFe−Al層12が破壊される。
(d)Fe−Al層12が破壊された部分でFe−Zn合金化反応(Outburst反応)が発生し、Fe−Zn合金13が生成する。
(e)ガスワイピングによりFe−Zn合金13生成部でめっき厚が厚くなる。
(f)めっき厚が厚い部分は、その後のスキンパス工程によるつぶされ方が他の部分と異なり色調の差を生じる。これが「ドロス状欠陥」となる。前記めっき厚の厚い部分は、スキンパス工程前でも見えるが、スキンパス工程後により目立ちやすくなる。
【0036】
そして、上記の課題を解決する手段を種々検討した結果、「ドロス状欠陥」の発生を防止するためには、▲1▼鋼板表面に強固なFe−Al層を形成すること、▲2▼形成されたFe−Al層の欠落を防止すること、が重要であることを見出した。すなわち、前記(a)におけるFe−Al層の形成を強化し、前記(b)において、浴中で鋼板表面と浴中ロールが接触してもFe−Al層の破壊が抑制されるようにすることにより、前記(d)におけるFe−Zn合金化反応(Outburst反応)を抑制できることを見出した。
【0037】
また、▲3▼Fe−Al層が欠落した場合でもこれを再び生成させ補修することも重要であることを見出した。すなわち、前記(b)で、鋼板表面と浴中ロールが接触してFe−Al層が破壊された部分に、浴中で再びFe−Al層を生成させることにより、前記(d)におけるFe−Zn合金化反応(Outburst反応)を抑制できることを見出した。
【0038】
また、前記▲3▼の観点からは、Fe−Al層が欠落した場合に、Fe−Al層欠落部分におけるFe−Zn合金化反応(Outburst反応)の速度を抑制し、Fe−Zn合金の成長を極力小さくすることが重要であることを見出した。すなわち、前記(a)におけるFe−Al層の形成を強化し、仮に前記(b)で、鋼板表面と浴中ロールが接触してFe−Al層が破壊された場合においても、前記(d)におけるFe−Zn合金化反応(Outburst反応)の速度を抑制し、Fe−Zn合金の成長を極力小さくすることにより、点状欠陥を形成させないかあるいは仮に点状欠陥が形成されたとしても、その大きさを小さく押さえこむことにより、実質的に問題ないレベルに抑制できることを見出した。
【0039】
また、本発明者らは、上記の課題、特に「スパングル模様」を解決するために詳細に検討した結果、この欠陥は、溶融亜鉛の凝固時の結晶成長によるものであり、冷却を早く行うことにより、スパングルの大きさを小さくできることを見出した。
【0040】
また、本発明者らは、上記の課題、特に「サザナミ模様」を解決するために詳細に検討した結果、この欠陥は、基本的にはガスワイピング時の圧力変動に起因するものであり、根本対策としては、ガスワイピング方法の改善、例えば圧力変動の少ない加圧装置の使用等の設備改善を行うべきと考えられるが、設備改造費用が高価になる。本発明者等は、ガスワイピング後、所定時間経過後に冷却開始することにより、溶融亜鉛表面が平滑化し、サザナミ模様を安価な方法で軽減できることを見出した。
【0041】
本発明は上記知見に基づき、更に研究を重ねることで完成された。以下に本発明を詳細に説明する。先ず、本発明の溶融亜鉛めっき鋼板について説明する。
【0042】
本発明においては、溶融亜鉛めっき鋼板は、めっき層の組成がZn98%以上であり、点状の表面欠陥の数が1平方メートル当たり100個以下であることを規定する。めっき層の組成がZn98%未満では、Zn以外の元素がめっき層に含まれる合金めっきとなり、本発明が対象とする亜鉛めっき鋼板には当てはまらない。また、点状の表面欠陥の数が1平方メートル当たり100個超であると、良好な表面外観が得られない。なお、本発明者らは、自動車外板用途へ適用された鋼板の製造実績から、点状の表面欠陥の大きさが100μm超になると表面外観を低下し、外観品質を劣化させる問題のあることを経験的に知見している。従って、本発明では、前記点状の表面欠陥は、大きさが100μm超のものを対象としており、点状の表面欠陥の数は大きさが100μm超の点状の表面欠陥の数である。
【0043】
本発明においては、鋼板(下地鋼板)の表面粗さは、Raで0.1〜0.8μmであることが好ましい。これは以下の理由に基づく。
【0044】
図4は、下地鋼板の表面粗さを規定することによる「ドロス状欠陥」の抑制メカニズムを説明する模式図で、(A)は表面粗さRaが0.8μm超の場合、(B)は表面粗さRaが0.8μm以下の場合を示す。また(A)、(B)において、(a)は原板の状態、(b)はめっき浴中においてFe−Al層が形成された状態、(c)は浴中ロールと接触後の状態、(d)は浴中ロールと接触してFe−Al層が破壊されたことでFe−Zn合金化反応が生成する状態を説明する。
【0045】
下地鋼板11の表面粗さがRaで0.8μm超の場合、図4(A)に示されるように、浴中ロールと接触した際の1個の山にかかる圧力が高く、Fe−Al合金層12が破壊されやすくなり、(d)に示されるように、Fe−Al合金層12が破壊された部分でFe−Zn合金化反応が発生し、Fe−Zn合金13が生成しやすくなることで、「ドロス状欠陥」が発生しやすくなる。これに対して、下地鋼板11の表面粗さがRaで0.8μm以下の場合、図4(B)に示されるように、多くの山に荷重が分散されることにより、1個の山に係る圧力が低く、Fe−Al合金層11が破壊されにくいため、(d)に示されるように、Fe−Zn合金化反応が抑制され、「ドロス状欠陥」の発生が抑制される。従って、「ドロス状欠陥」の発生を防止する観点から、表面粗さはRaで0.8μm以下であることが好ましい。一方、下地鋼板11の表面粗さがRaで0.1μm未満の場合には、鋼板をハンドリングする際に、擦り傷などの欠陥を生じさせやすくなり、めっき浴で該欠陥部分にFe−Zn合金化反応(Outburst反応)が生じなくても、ガスワイピング後に該欠陥部分でめっきが盛り上がり、いわゆる「鋼板凹凸性欠陥」の増加を招くため好ましくない。
【0046】
また、本発明においては、下地鋼板のP含有量は0.01〜0.1%であることが好ましい。これは以下の理由に基づく。
【0047】
図5は、P含有量の異なる鋼板を、浴中Al濃度:0.12%、浴温:460℃の溶融亜鉛浴で亜鉛めっきし、めっき浴から引き上げた後直ちに450℃で合金化処理を行った際のめっき層中への拡散Fe量、すなわちFe−Zn合金化量の変化を示す。
【0048】
図5に示されるように、鋼中にPが0.02%あるいは0.09%含有された鋼板では、Pが0.002%含有された鋼板に比べて、Fe−Zn合金化反応における合金化初期段階の反応が著しく抑制される。Fe−Zn合金化反応における合金化初期段階の反応が著しく抑制されると、めっき浴に浸漬直後鋼板表面において部分的にFe−Al層が生成されなかったり、あるいは生成されたFe−Al層がめっき浴中で部分的に破壊されたとしても、その部分(Fe−Al合金がない部分)でFe−Zn合金化反応が抑制されることで、「ドロス状欠陥」の発生を防止する効果がある。P含有量が0.01%未満では、前記Fe−Zn合金化反応における合金化初期段階の反応を抑制する効果が不充分であるので、P含有量は0.01%以上であることが好ましく、0.02%以上であることがより好ましい。Pを、0.1%を超えて含有させると、鋼の脆化を招くため、P含有量は0.1%以下であることが好ましい。
【0049】
P以外の成分については特に制限を設ける必要はなく、この種の溶融亜鉛めっき鋼板の用途で一般に用いられる範囲でよい。
C:0.1%以下、本発明で特に有効であるのは、0.01%以下である
Si:0.5%以下
Mn:2.5%以下
S:0.015%以下
N:0.0050%以下
Al:0.02〜0.1%
Ti:なし、または、0.02〜0.3%
Nb:なし、または0.05%以下
B:なし、または、0.0002〜0.0020%
上記範囲の限定理由を以下に説明する。
C:Cはプレス成形性の向上のためにできるだけ少ない方がよい。但し、強度を上昇させる効果を得るため0.1%程度までCを添加することもある。一方、本発明は、浴中でのアウトバースト反応が顕著に発生する極低炭素Ti添加鋼に於いて特に有効である。この場合、Cは鋼中へ不可避的に混入する不純物元素であるが、鋼板の成形性に悪影響を及ぼすのでその含有量は少ないほど好ましい。ただ、このように混入が不可避であるCの悪影響を回避する手段として「Ti添加によりCを炭化物として固定すること」が有効であるが、C含有量が多くなるに伴ってこれを固定するのに必要なTiの添加量が増大し、そのため鋼が硬質化すると共に製造コストの上昇を招くことから、その許容限度である0.01%をC含有量の上限と定めた。
【0050】
Si:Siも鋼中へ不可避的に混入する不純物元素であり、やはりその含有量は低いほど好ましい。また、鋼を強化する場合には、積極的に添加することもあるが、Si含有量が高くなると熱延時に発生する特有のスケールにより酸洗不良を起こしたり、めっき性の劣化を招いたりすることから、その許容限度である0.5%をSi含有量の上限と定めた。
【0051】
Mn:Mnも鋼の強化のために有効な元素である。しかし、2.5%を越えて含有するとプレス成形性を著しく劣化させるので好ましくない。
【0052】
S:Sは鋼の延性を劣化させる。さらに、極低炭素Ti添加鋼の場合には、Tiと結び付くことにより固溶Cを固定するために有効に作用する所謂有効Ti量(後述する有効Ti量=Ti*)を減少させるためにできるだけ少ない方がよいが、実用上本発明の効果を損なわない範囲として、その上限を0.015%とした。
【0053】
N:Nはプレス成形性向上のためには少ない方がよいが、実用上本発明の効果を損なわない範囲として、その上限を0.0050%とした。
【0054】
Al(sol.Al):Alは脱酸のために必要であるため、通常、0.02%以上0.1%以下程度添加される。
【0055】
Ti:普通鋼に於いては、特に添加する必要はない。極低炭素Ti添加鋼に於いて、Tiは鋼中のC、Nを固定してプレス成形性を向上させるために添加する。したがって、0.02%未満ではその効果が少なく、0.30%を超えて添加しても、その効果が飽和するばかりか、Tiに起因するスジムラが抑制できなくなるため、この範囲に限定した。また、とくに高いプレス成形性が要求される場合には、Ti添加量の範囲をTi*/C(原子比)≧4の範囲に限定することが望ましい。なお、有効Ti量(Ti*)=Ti−48/32S−48/14Nである。
【0056】
Nb:Nbは極低炭素Ti添加鋼においてさらに表面外観の向上が要求される場合に微量に添加することができる。これは、Nbが鋼中のCと反応してNbCを形成しその一部は焼鈍時に再溶解するため、固溶Cが鋼中に存在するようになるためである。このような固溶Cは前述したように結晶粒界を安定化させるが、一方では深絞り性を劣化させる。したがって、0.05%以下に抑えるべきである。
【0057】
B:極低炭素Ti添加IF鋼では、結晶粒界の清浄度が高く、結晶粒界強度が低いため、2次加工脆性が低下する傾向がある。したがって、2次加工脆性が要求される用途にはBを添加することができる。ただし、0.0002%未満ではその効果が無く、0.0020%を超えて含有すると、延性が著しく劣化するため、この範囲に限定した。
【0058】
次に、本発明の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法について図6を参照して説明する。
図6は連続溶融亜鉛めっきラインの要部構成例を示す。図6において、1は熱処理炉(連続焼鈍炉)、2はスナウト、3はめっき槽、4は溶融亜鉛浴、5はシンクロール、6はサポートロール、7はガスワイピングノズル、8は冷却装置、Sは鋼板である。サポートロール6は鋼板Sを挟む両側に配置されている。
【0059】
鋼板(めっき原板)Sは、還元性あるいは非酸化性雰囲気に保持された熱処理炉1で焼鈍された後、熱処理炉1出側に接続されたスナウト2内を案内されて溶融亜鉛浴4に浸漬通板されて亜鉛めっきされ、浴中ロールであるシンクロール5及びサポートロール6によって案内されて溶融亜鉛浴4から上方に引き上げられ、浴上に配置されたガスワイピングノズル7でめっき付着量が調整され、しかる後冷却装置8で冷却される。冷却後そのまま、あるいは、必要に応じて、いずれも図示されていない、スキンパスミルで調質圧延され、および/または化成処理設備で化成処理され、および/または塗油装置で塗油された後、巻取り装置で巻取られ、溶融亜鉛めっき鋼板が製造される。
【0060】
溶融亜鉛浴4は、Znを98%以上含み、さらにAlが添加されている。溶融亜鉛浴中に添加されるAlの濃度は0.18〜0.5%とすることが好ましい。Alの濃度が0.18%未満では、Fe−Al層を強固に形成することができない。また、浴中Al濃度が0.18%未満では、めっき浴中で鋼板表面へ亜鉛浴を吹き付けたとしても、Fe−Al層が形成されていない部分にFe−Al層を強固に生成させることはできない。一方、浴中Al濃度が0.5%超では、溶融亜鉛めっき鋼板としての品質、例えば、化成処理性や接着性が損なわれるので、好ましくない。
【0061】
また、めっき浴に浸漬された直後から浴中ロールに接触するまでの間で、鋼板表面に、Znを98%以上、Alを0.18〜0.5%含む亜鉛浴を吹き付けることが好ましい。鋼板がめっき浴中に浸漬された直後から、鋼板表面にはFe−Al層が形成され始めるが、このFe−Al層の形成反応によりAlが消費されるため、鋼板とめっき浴との境界層のAl濃度は徐々に低下する。境界層のAl濃度が低下すると、鋼板の表面では、Fe−Al層形成反応よりも、Fe−Zn合金化反応の方が起こりやすくなるため、徐々にFe−Al層のFe−Zn反応抑制効果が低下することになる。このような状態において、鋼板が浴中ロールに接触した場合には、Fe−Al層は破壊されやすく、Fe−Zn合金化反応(Outburst反応)が起こりやすくなり、「ドロス状欠陥」を生成させやす
【0062】
ところが、浴中に浸漬された直後から、浴中ロールに接触するまでの間で、鋼板表面に、Alを0.18〜0.5%含む亜鉛浴を吹き付けると、Fe−Al層形成反応によってAl濃度が低下した境界層を薄くするかあるいは取り去って、本来のAl濃度のめっき浴が鋼板表面と接するようになる。その結果、本来のFe−Al層形成反応の継続が維持され、鋼板表面に、強固なFe−Al層が形成されるようになり、その後、浴中ロールと接触しても破壊されにくい強固なFe−Al層が形成される。
【0063】
また、浴中ロールに接触した直後の鋼板表面に、Znを98%以上、Alを0.18〜0.5%含む亜鉛浴を吹き付けてもよい。これにより、万が一浴中ロールに接触した際に鋼板表面のFe−Al層が破壊されたとしても、本来のAl濃度を有するめっき浴が鋼板表面に次々と接するようになることで、Fe−Al層が破壊されFeが露出した部分において、再び、Fe−Al層を形成することができ、Fe−Zn合金化反応(Outburst反応)を抑制して「ドロス状欠陥」の発生を防止し、表面外観に優れて溶融亜鉛めっき鋼板を製造することができる。この場合、亜鉛浴を吹き付ける位置は、鋼板がサポートロール6を通過した後で吹き付けることが好ましい。
【0064】
また、めっき浴に浸漬された直後から浴中ロールに接触するまでの間で、鋼板表面に、Znを98%以上、Alを0.18〜0.5%含む亜鉛浴を吹き付け、さらに、浴中ロールに接触した直後の鋼板表面に、Znを98%以上、Alを0.18〜0.5%含む亜鉛浴を吹き付けることがより好ましい。浴中ロールに接触する前に加え、浴中ロールに接触した後の鋼板表面に、Alを0.18〜0.5%含む亜鉛浴を吹き付けることにより、Fe−Zn合金化反応(Outburst反応)の抑制に対して2重の備えとなる。
【0065】
鋼板表面に強固なFe−Al層を形成し、その後浴中ロールと接触しても破壊されにくい強固なFe−Al層が形成させるためには、又はFe−Al層が欠落した場合にこれを再び生成させ補修する効果を高めるためには、亜鉛浴は、板面に垂直にぶつかる流速が1.0〜5m/秒となるように吹き付けることが好ましい。
【0066】
板面位置での板面に垂直方向の流速が1.0m/秒未満では、前述の効果が不十分になる。また前記流速が5m/秒超では前述の効果が飽和するだけでなく、浴面が攪拌されることで酸化亜鉛が発止しやすくなる。ノズルから吐出しためっき浴の速度はめっき浴中で減衰するので、板面位置での板面に垂直方向の流速は、めっき浴の吹き付け条件と板面における流速を、別途実験により確認する。鋼板表面に亜鉛浴を吹き付けるときは、前記の結果を元に、板面位置での板面に垂直方向の流速が1.0m/秒以上5m/秒以下になる条件で吹き付ける。
【0067】
非特許文献1に記載されているように、めっき浴は、走行する鋼板により誘起される流れにより、流れを生じるが、めっき槽内全体の平均流速は4cm/秒である。即ち、鋼板の走行速度1〜2m/秒に比べるとほとんど動いていないと考えてよい。このように、ほとんど動いていないめっき浴に対して、鋼板は連続的に走行しており、焼鈍炉で還元され活性となった新規な鉄面が次々と繰り出され、めっき浴と接した瞬間から、Fe−Al合金を形成する反応が次々と起こっており、鋼板近傍のめっき浴はAlがFe−Al形成に消費され欠乏した状態となっている。即ち、このような状態において、鋼板近傍のめっき浴中のFe−Al合金を生成するのに作用する有効Al量は低くなっており、Fe−Al合金は脆弱なものとなり、アウトバースト反応を生じやすく、ドロス状の欠陥を生成しやすい状態となっている。このような状態を回避するためには、鋼板表面に、Znを98%以上、Alを0.18〜0.5%含む亜鉛浴を吹き付けることが必要である。
【0068】
図7(a)〜(d)は、めっき浴中で鋼板表面に亜鉛浴を吹き付ける位置を説明する図である。(a)は従来法(亜鉛浴の吹き付けなし)、(b)はめっき浴4に浸漬された直後から浴中ロールであるシンクロール5に接触するまでの間で、鋼板表面に亜鉛浴吹き付け装置21で亜鉛浴を吹き付ける場合、(c)は浴中ロールであるサポートロール6に接触した直後の鋼板表面に亜鉛浴吹き付け装置22で亜鉛浴を吹き付ける場合、(d)はめっき浴4に浸漬された直後から浴中ロールであるシンクロール5に接触するまでの間で、亜鉛浴吹き付け装置21で亜鉛浴を鋼板表面に吹き付け、さらに、浴中ロールであるサポートロール6に接触した直後の鋼板表面に亜鉛浴吹き付け装置22で亜鉛浴を吹き付ける場合を示す。亜鉛浴吹き付け装置21、22は鋼板の両面に亜鉛浴を吹き付け可能に設けられている。
【0069】
鋼板表面への亜鉛浴の吹き付け方法は特に限定されない。例えば、めっき浴中の溶融亜鉛をポンプで吸引し、吸引した溶融亜鉛を鋼板表面の幅方向に対向して噴射部を備えるノズルから吹き付ける方法等で行うことができる。
【0070】
また、本発明においては、めっき浴温度及びめっき浴侵入板温度をいずれも430〜455℃とすることが好ましい。前記で規定する温度は、通常の溶融亜鉛めっきを行う際のめっき浴温度及びめっき浴侵入板温度である460〜480℃に比べていずれも低い温度である。このような低い温度にすることにより、Fe−Zn合金化反応(Outburst反応)の速度を抑制し、Fe−Zn合金の成長を極力小さくすることにより、「ドロス状欠陥」を生成させないかあるいは仮に「ドロス状欠陥」が生成したとしても、その大きさを小さく押さえこむことにより、実質的に問題ないレベルに抑制できる。めっき浴温度、めっき浴侵入板温度の少なくとも一方が455℃を超える温度で操業すると、Fe−Zn合金化反応が活発に起こってしまい、「ドロス状欠陥」の発生を抑制することができない。一方、430℃未満の温度で操業する場合には、Znの融点が419℃であり、凝固点に非常に近い温度になることから、めっき浴の一部分で凝固が始まり、操業上問題となるので好ましくない。
【0071】
また、本発明においては、めっき浴温度及びめっき浴侵入板温度をいずれも430〜455℃とすることと、前記で記載しためっき浴中において鋼板表面へ亜鉛浴を吹き付けることとを組み合わせて行うことは、「ドロス状欠陥」の発生を防止する上でより好ましい。
【0072】
また、「ドロス状欠陥」の発生を防止する観点からは、めっき時に下地鋼板表面に形成されたFe−Al層が破壊されにくいことが好ましく、また仮にFe−Al層に強固でない部分があったり、あるいはFe−Al層に破壊された部分があったとしても、該部分におけるFe−Zn合金化反応が抑制されることが好ましい。係る観点からは、鋼板(めっき原板)の表面粗さは、Raで0.1〜0.8μmであること、または、鋼板(めっき原板)は、鋼中のP含有量は0.02〜0.1%であることが好ましく、鋼板(めっき原板)の表面粗さがRaで0.1〜0.8μmで、鋼中のP含有量が0.02〜0.1%であることがより好ましい。
【0073】
通常、溶融亜鉛めっき鋼板(本明細書ではGIと略する。)と合金化溶融亜鉛めっき鋼板(本明細書ではGAと略する。)は、同一の連続溶融亜鉛めっきラインで製造される。合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造するときは、めっき層のFe−Zn合金化反応を促進する観点から、めっき浴中のAl濃度は、溶融亜鉛めっき鋼板を製造する場合のAl濃度に比べて低い濃度にされる。溶融亜鉛めっき鋼板を製造する場合、強固なFe−Al合金層を形成する観点から、めっき浴のAl濃度は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する場合に比べて、Al濃度は高濃度にされる。
【0074】
連続溶融亜鉛めっきラインでは、めっき浴中のAl濃度を迅速に変更することができない。そのため、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する期間(以下、GA製造期間と呼ぶ。)と、溶融亜鉛めっき鋼板を製造する期間(以下、GI製造期間と呼ぶ。)を分け、前記各々のめっき鋼板は製造チャンスを分けて製造される。
【0075】
GA製造期間では、めっき浴のAl濃度が低いことから、ボットムドロス(Fe−Znドロス:FeZn7)が生成し、めっき槽底部に堆積する。GI製造期間では、めっき浴のAl濃度が高いことから、ボットムドロス(Fe−Znドロス:FeZn7)は生成しにくい。GA製造期間からGI製造期間に移行すると、GA製造期間で生成したボットムドロス(Fe−Znドロス:FeZn7)がめっき浴中を浮遊し、鋼板に付着して「ドロス性欠陥」が発生しやすくいだけでなく、「ドロス状欠陥」も発生しやすいという問題がある。
【0076】
「ドロス性欠陥」については、浴のドロス除去を頻繁に行い、浴中のドロスをなくすことにより解決できると考えられるので、浴中のドロスをなくした後で溶融亜鉛めっき鋼板を製造すれば、表面外観の優れた溶融亜鉛めっき鋼板が製造できると考えられる。しかし、どの時点で浴中ドロスが完全になくなったかを確実に判断できないため、「ドロス性欠陥」の発生を確実に防止できる時を的確に判断できないだけでなく、「ドロス状欠陥」の発生を確実に防止できないという問題もあり、歩留まりの低下を招いていた。
【0077】
本発明者らは、GA製造期間とGI製造期間における、Fe−ZnあるいはFe−Alのドロス粒子の存在状態ならびに、めっき浴を分析して得られる浴中Fe濃度について調査した。その結果、判明したことについて説明する。
【0078】
図8は、GA製造期間、およびGA製造期間からGI製造期間に移行した時にGI製造期間における、浴中のAl濃度、トップドロス粒子(Fe−Alドロス:Fe2Al5)及びボットムドロス粒子(Fe−Znドロス:FeZn7)の存在状態の変化を示す概念図で、(a)はAl濃度の状態、(b)はトップドロスの存在状態、(c)はボットムドロスの存在状態を示す。(a)において、実線はトータルAl濃度(浴を分析して求められるAl濃度)、破線はトータルAl濃度からトップドロス(Fe2Al5)として存在するAl量を除いた場合のAl濃度(以下、有効Al濃度と呼ぶ。)を示す。本発明で規定するAl濃度はトータルAl濃度を指している。
【0079】
なお、GA製造期間におけるめっき浴中のAl濃度(トータルAl濃度)C(AlGA)は例えば0.12%程度、GI製造期間におけるめっき浴中のAl濃度(トータルAl濃度)C(AlGI)は例えば0.20%程度である。
【0080】
GA製造期間においては、Fe−Znのドロス粒子が堆積している(領域A)。GA製造期間からGI製造期間に移行すると、めっき浴中のAl濃度は、C(AlGA)からC(AlGI)に上昇される。GI製造期間では、めっき浴のAl濃度がC(AlGI)に上昇されたことで、Fe−Znのドロスが徐々にFe−Alのドロスに変化して、完全にFe−Alのドロス粒子だけの状態になる(領域B)。その後、Fe−Alのドロス粒子は減少し始め、やがてFe−Alドロス粒子は完全に消滅する(領域C)。
【0081】
領域Bでは、「ドロス性欠陥」と「ドロス状欠陥」が発生しやすく、領域Cでは、「ドロス性欠陥」は低減されるが、「ドロス状欠陥」が依然として認められ、Fe−Alドロス粒子が完全に消滅した後(領域D)で初めて「ドロス状欠陥」の発生を防止できることが判った。
【0082】
この理由は、「ドロス状欠陥」の発生を防止するには、鋼板表面に強固なFe−Al層を形成することが必要であり、そのためにはFe−Al層を形成するためのAl濃度が適切な濃度にあることが必要なためである。領域B〜Cでは、浴中のAlはFe−Alドロス生成に費やされることで、図8(a)の破線で示される、強固なFe−Al層の形成に必要なAl濃度、すなわち有効Al濃度は低く、Fe−Alドロス粒子が完全に消滅した領域Dにおいて、初めて強固なFe−Al層の形成に必要な有効Al濃度が確保されたことによると考えられる。
【0083】
また、このときにめっき浴を分析して得られるAl濃度(トータルAl濃度)とFe濃度の関係を調査した結果、強固なFe−Al層の形成に必要な有効Al濃度を確保して「ドロス状欠陥」の発生を防止するには、分析されるFe濃度は、分析されるAl濃度に対して、次式の関係を満足する範囲でなければならないことが判明した。
[Fe%]≦5×[Al%]2−3.25×[Al%]+0.575
ここで、GI製造期間のめっき浴のAl濃度は、前記したとおり、0.18〜0.5%としてもよいが、GI製造期間からGA製造期間への移行時また逆にGA製造期間からGI製造期間への移行時に、めっき浴おAl濃度をより速やかに所要のAl濃度にできるようにする観点から、GI製造期間におけるAl濃度は0.18〜0.3%とすることが好ましい。
【0084】
以上の知見及び考えに基づき、本発明においては、溶融亜鉛めっき鋼板と合金化溶融亜鉛めっき鋼板を同一の連続溶融亜鉛めっきラインで製造するにあたって、GA製造期間からGI製造期間に移行した時に、GI製造期間において、溶融亜鉛浴中に添加されるAlの濃度を0.18〜0.3%に規定し、また浴を分析して検出されるFe濃度は、Al濃度に対して、
[Fe%]≦5x[Al%]2−3.25x[Al%]+0.575
を満たす条件にて溶融亜鉛めっき鋼板を製造することを規定する。
【0085】
[Fe%]が上式を満足しない状態で溶融亜鉛めっき鋼板を製造すると、Fe−Znおよび/またはFe−Alのドロス粒子が存在する状態での製造となるため、「ドロス性欠陥」が生成しやすくなる。また、Fe−Znおよび/またはFe−Alのドロス粒子が存在する状態では、浴中のAlはこれらドロス粒子の生成に消費されているため、鋼板表面のFe−Zn反応抑制層としてのFe−Al層を形成するために消費される有効Al濃度が低い状態となっている。そのため、強固なFe−Al層の生成が不十分になり、Fe−Al層が破壊されやすく、「ドロス状欠陥」の生成を助長することになる。
【0086】
また、本発明においては、溶融亜鉛浴中に混入するPbの濃度を0.02%以下とすることが好ましい。Pb濃度が0.02%超になると、スパングルが大きく成長してしまうので好ましくない。
【0087】
ガスワイピング時の圧力変動によってめっき層に凹凸(サザナミ模様)ができる。サザナミ模様の解消に対しては、ガスワイピングを行ってから冷却が開始されるまでの時間を長くしてめっき層を平滑化することが有効である。本発明においては、サザナミ模様の発生を防止する観点から、ガスワイピングノズル7でガスワイピングを行ってから2〜5秒経過後かつめっき層が凝固する前に鋼板を冷却装置9で冷却することが好ましい。ガスワイピングを行ってから2秒未満で冷却を開始すると、溶融状態のめっき層がレベリングされる前に強制的に凝固されるため、サザナミ模様が残留してしまうため好ましくない。冷却を開始するまでの時間が、5秒を超えるとスパングルが成長してスパングル模様が認められるようになるので好ましくない。
【0088】
また、めっき皮膜が凝固した後に冷却を行ってもスパングルの微小化に対しては効果がない。ガスワイピングを行ってから2〜5秒経過後、かつめっき層が凝固する前に冷却を行うことにより、スパングルを小さくすることができる。
【0089】
【実施例】
(実施例1)
供試鋼板として、C:0.002%、Si:0.01%、Mn:0.15%、S:0.01%、N:0.0020%、sol.Al:0.04%、Ti:0.06%を含有する鋼をベースに、Pを0.004%、0.01%、0.02%、0.05%、0.09%と調整した5種類の鋼(残部はFe及び不可避不純物である)を溶製し、さらに熱間圧延、酸洗による脱スケール処理、冷間圧延を施して厚さ0.8mmの鋼板を準備した。その際、冷間圧延時に、最終スタンドの圧延ロールの表面粗さを変えることで冷間圧延後の鋼板表面粗さを調整した。
【0090】
図6に示した連続溶融亜鉛めっきラインにおいて、めっき浴中に図7(b)〜(d)に示されるようなめっき浴吹き付けが可能な亜鉛浴吹き付け装置を配置し、該ラインに、準備した供試鋼板を装入して、焼鈍後、亜鉛めっき浴(Al:0.18%)に浸漬通板して亜鉛めっきを行い、ガスワイピングノズルでめっき付着量を片面当たり60g/m2に調整し、さらに冷却した後、スキンパスミルでスキンパスを行って溶融亜鉛めっき鋼板を製造した。なお、めっき浴侵入板温は460℃、めっき浴温は460℃とし、めっき浴中での亜鉛浴吹き付け条件を変えてめっきした(吹き付け無しの場合を含む)。
【0091】
前記で製造した溶融亜鉛めっき鋼板の点状の表面欠陥の個数を調査し、また外観の良否を評価した。点状欠陥の個数は、大きさが100μm超のものを対象とした。また、インヒビターを添加した希塩酸(濃度1%)を用いてめっき皮膜の亜鉛層だけを溶解し、100μm超の点状欠陥部分の外観を顕微鏡観察し、点状欠陥部分の鋼板の界面にFe−Zn合金の存在有無を調査し、Fe−Zn合金が存在するドロス状欠陥であることを確認した.外観の良否は、個数が100個/m2以下を良好、100個/m2超を劣る、と評価した。
【0092】
供試材のP含有量、表面粗さ、および点状の表面欠陥の個数を表1に示す。
【0093】
【表1】
Figure 0004529380
【0094】
P含有量、表面粗さRaの一方が本発明範囲内にある鋼板は、両方が本発明範囲を外れる鋼板に比べて点状の表面欠陥の個数が少ない。P含有量及び表面粗さRaの両方が本発明範囲内にある鋼板(本発明例1〜12)は表面欠陥の個数が100個以下であり、表面外観がより優れる。
【0095】
(実施例2)
供試鋼板として、実施例1で溶製したP含有量が0.01%の鋼を用い、さらに熱間圧延、酸洗による脱スケール処理、冷間圧延を施して、厚さ0.8mm、表面粗さRaが0.5μmの鋼板を準備した。図6に示した連続溶融亜鉛めっきラインにおいて、めっき浴中に図7(b)〜(d)に示されるようなめっき浴吹き付けが可能な亜鉛浴吹き付け装置を配置し、該ラインに、準備した供試鋼板を焼鈍後、亜鉛めっき浴に浸漬通板して亜鉛めっきを行い、ガスワイピングノズルでめっき付着量を片面当たり60g/m2に調整し、さらに冷却した後、スキンパスミルでスキンパスを行って溶融亜鉛めっき鋼板を製造した。めっき浴侵入板温は460℃、めっき浴温は460℃、亜鉛浴組成は、Al:0.18〜0.50%、残部実質的にZnとした。本発明法では、亜鉛浴中で、亜鉛めっき浴をポンプで吸引し、吸引した亜鉛浴を、図7(b)〜(d)の何れかの位置で鋼板表面に吹き付けた。ポンプは能力が200L/分のメタルポンプを使用し、別途実験により吸引条件と板面位置での流速を確認し、その条件により鋼板表面に亜鉛浴を吹き付けた(後記実施例3〜5でも同様である)。比較法では、亜鉛浴中で鋼板表面への亜鉛吹き付けは行わなかった。
【0096】
前記で製造した溶融亜鉛めっき鋼板について、実施例1と同様にして、点状の表面欠陥の個数を調査し、また外観の良否を評価した。めっき浴Al濃度、亜鉛浴吹き付け位置および調査結果を表2に示す。
【0097】
【表2】
Figure 0004529380
【0098】
めっき浴中でAl濃度が本発明範囲内の亜鉛浴を鋼板表面に吹き付けて製造された本発明法による溶融亜鉛めっき鋼板(本発明例1〜15)は、点状欠陥の個数が100個以下で表面外観が良好である。本発明例の鋼板の中では、浴中ロール(シンクロール)接触前に吹き付けるより、浴中ロールに接触後に吹き付ける方が、点状欠陥の個数がより少なく、表面外観が優れ、浴中ロール前後の両方で吹き付ける方が、点状欠陥の個数がさらに少なく、さらに表面外観が優れる。
【0099】
これに対して、鋼板表面に亜鉛浴の吹き付けを行わないで製造された溶融亜鉛めっき鋼板(比較例1〜3)は、点状欠陥の個数が100個超で、表面外観が劣る。
【0100】
(実施例3)
供試鋼板として、実施例1で溶製したP含有量が0.01%の鋼を用い、さらに熱間圧延、酸洗による脱スケール処理、冷間圧延を施して、厚さ0.8mm、表面粗さRaが0.5μmの鋼板を準備した。準備した供試鋼板を図6に示した連続溶融亜鉛めっきラインに装入して、焼鈍後、亜鉛めっき浴に浸漬通板して亜鉛めっきを行い、ガスワイピングノズルでめっき付着量を片面当たり60g/m2に調整し、さらに冷却した後、スキンパスミルでスキンパスを行って溶融亜鉛めっき鋼板を製造した。
【0101】
亜鉛浴組成は、Al:0.18〜0.50%、残部実質的にZnとし、めっき浴侵入板温、めっき浴温度を変えてめっきを行った。一部鋼板に対して、めっき浴中で鋼板がシンクロールに接触する前に亜鉛浴を吹き付けた。
【0102】
前記で製造した溶融亜鉛めっき鋼板について、実施例1と同様にして、点状の表面欠陥の個数を調査し、また外観の良否を評価した。めっき浴Al濃度、めっき浴侵入板温とめっき浴温度の条件、亜鉛浴吹き付け条件および調査結果を表3に示す。
【0103】
【表3】
Figure 0004529380
【0104】
めっき浴Al濃度が本発明範囲あり、めっき浴侵入板温とめっき浴温度が本発明範囲にある本発明法で製造された溶融亜鉛めっき鋼板(本発明例1〜18)は、点状欠陥の個数が100個以下で表面外観が良好である。本発明例の中では、めっき浴中で亜鉛浴を吹き付けたものの方が、点状欠陥の個数がより少なく、表面外観がより優れる。
【0105】
これに対して、めっき浴侵入板温およびめっき浴温度の何れかが本発明範囲を外れる条件で製造された溶融亜鉛めっき鋼板(比較例1〜3)は、点状欠陥の個数が100個超で、表面外観が劣る。
【0106】
(実施例4)
供試鋼板として、実施例1で溶製したP含有量が0.01%の鋼を用い、さらに熱間圧延、酸洗による脱スケール処理、冷間圧延を施して、厚さ0.8mm、表面粗さRaが0.5μmの鋼板を準備した。準備した供試鋼板を図6に示した連続溶融亜鉛めっきラインに装入して、焼鈍後、亜鉛めっき浴に浸漬通板して亜鉛めっきを行い、ガスワイピングノズルでめっき付着量を片面当たり60g/m2に調整し、さらに冷却した後、スキンパスミルでスキンパスを行って溶融亜鉛めっき鋼板を製造した。
【0107】
亜鉛浴組成は、Al:0.18%、残部実質的にZnとし、めっき浴侵入板温、めっき浴温度はいずれも440℃とし、ガスワイピング後冷却するまでの時間を変えた。一部鋼板に対して、めっき浴中で鋼板がシンクロールに接触する前に亜鉛浴を吹き付けた。
【0108】
前記で製造した溶融亜鉛めっき鋼板について、実施例1と同様にして点状の表面欠陥の個数を調査し、さらにスパングル模様、サザナミ模様の状態を目視観察で評価した。スパングル模様、サザナミ模様は下記基準で評価した。
(スパングル模様)上記溶融亜鉛めっき鋼板において、表面を光学顕微鏡で観察し、写真撮影を行った後に、その写真上でスパングルの粒径を測定した。
微小:0.2mm未満
小:0.2〜0.5mm
大:0.5mm超
(サザナミ模様)上記溶融亜鉛めっき鋼板において、ストリップ進行方向に8mmの長さに渡って測定し、その高低差をさざなみ高さとした。
優:1μm未満
良:1〜2μm
劣:2μm超
めっき浴Al濃度、めっき浴侵入板温とめっき浴温度の条件、亜鉛浴吹き付け条件および調査結果を表4に示す。
【0109】
【表4】
Figure 0004529380
【0110】
めっき浴Al濃度とめっき浴侵入板温とめっき浴温度が本発明範囲にあり、さらにガスワイピング後の冷却時間が本発明範囲内にある条件で製造された溶融亜鉛めっき鋼板(本発明例1〜6)は、点状欠陥の個数が100個以下でスパングル模様が小さく且つサザナミ模様も少なく、表面外観が良好である。本発明例の中では、めっき浴中で亜鉛浴を吹き付けたものの方が、点状欠陥の個数がより少なく、表面外観がより優れる。
【0111】
これに対して、ガスワイピング後の冷却時間が本発明範囲を外れる条件で製造された溶融亜鉛めっき鋼板(比較例1、2)は、スパングル模様、サザナミ模様の何れかが目立ち、表面外観が劣る。
【0112】
(実施例5)
GA製造期間からGI製造期間に変更されたGI製造期間において、GI製造開始以降のめっき浴中のAl濃度、Fe濃度を調査し、同時にその時に製造されていた溶融亜鉛めっき鋼板について、実施例1と同様にして、点状の表面欠陥の発生個数を調査し、さらに表面外観の良否を評価した。なお、一部鋼板に対して、めっき浴中で亜鉛浴を吹き付けた。調査に供した溶融亜鉛めっき鋼板はいずれもスキンパス後のものである。なお、調査に供する鋼板は、鋼中P含有量が0.01%で下地鋼板粗さRaが0.5μmである鋼板を選んだ。
【0113】
調査結果を表5に示す。
【0114】
【表5】
Figure 0004529380
【0115】
めっき浴Al濃度が本発明範囲内にあり、Fe濃度が、Al濃度に対して、下記の関係式を満足する条件で製造された溶融亜鉛めっき鋼板(本発明例1〜6)は、点状欠陥の個数が100個以下で、表面外観が良好である。本発明例の中では、めっき浴中で亜鉛浴を吹き付けたものの方が、点状欠陥の個数がより少なく、表面外観がより優れる。
【0116】
これに対して、Fe濃度が、Al濃度に対して、下記の関係を満足しない条件で製造された溶融亜鉛めっき鋼板(比較例1〜3)は、点状欠陥の個数が100個超で、表面外観が劣る。
[Fe%]≦5x[Al%]2−3.25x[Al%]+0.575
【0117】
【発明の効果】
本発明によれば、めっき浴に浸漬直後に鋼板表面に強固なFe−Al層を形成し、及び/又はFe−Al層が欠落した場合に、該部分におけるFe−Zn合金化反応(Outburst反応)の速度を抑制できる。そのため、点状の表面欠陥、特に「ドロス状欠陥」に起因する点状の表面欠陥の発生を防止して、表面外観に優れる溶融亜鉛めっき鋼板を製造できる。
【0118】
また、本発明によれば、溶融亜鉛めっき鋼板と合金化溶融亜鉛めっき鋼板が同一の溶融亜鉛めっきラインで製造される場合において、合金化溶融亜鉛めっき製造期間から溶融亜鉛めっき鋼板製造期間に変更された際に、溶融亜鉛めっき鋼板製造期間で溶融亜鉛めっき鋼板に発生しやすいドロス性欠陥やドロス状欠陥の発生を確実に防止して、表面外観に優れた溶融亜鉛めっき鋼板を安定製造できる。
【0119】
本発明によれば、「スパングル模様」や「サザナミ模様」が低減されるので、表面外観に優れた溶融亜鉛めっき鋼板を安価に製造できる。
【0120】
本発明の溶融亜鉛めっき鋼板は、建材、家電等の用途に使用できるだけでなく、特に自動車用途への使用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】めっき浴中でドロス粒子が浮遊している状態を説明する図である。
【図2】「ドロス性欠陥」の発生原因を説明するめっき鋼板の断面模式図で、(a)はドロス粒子がトラップされたスキンパス工程前のめっき層の状態を示し、(b)はスキンパス工程後のめっき層の状態を示す。
【図3】「ドロス状欠陥」の発生メカニズムを説明する模式図で、(a)〜(d)はめっき浴、(e)と(f)はガスワイピング工程〜スキンパス工程でのメカニズムを説明する。
【図4】下地鋼板表面粗さによる「ドロス状欠陥」の抑制メカニズムを説明する模式図で、(A)は表面粗さRaが0.8μm超の場合、(B)は表面粗さRaが0.8μm以下の場合を示す。
【図5】鋼板中のP含有量がFe−Zn合金化速度に及ぼす影響を示す図である。
【図6】連続溶融亜鉛めっきラインの要部構成例を示す図である。
【図7】亜鉛めっき浴中で鋼板に亜鉛浴を吹き付ける場所の例を説明する図で、(a)は従来法、(b)はめっき浴に浸漬された直後から浴中ロールに接触するまでの間で、鋼板表面に亜鉛浴を吹き付ける場合、(c)は浴中ロールに接触した直後の鋼板表面に亜鉛浴を吹き付ける場合、(d)はめっき浴に浸漬された直後から浴中ロールに接触するまでの間で、鋼板表面に亜鉛浴を吹き付け、さらに、浴中ロールに接触した直後の鋼板表面に亜鉛浴を吹き付ける場合を示す。
【図8】同一の連続溶融亜鉛めっきラインでGAとGIを製造する場合のめっき浴のAl濃度、及びめっき浴中のドロスの存在状態を説明する概念図である。
【符号の説明】
S 鋼板
1 熱処理炉(連続焼鈍炉)
2 スナウト
3 めっき槽
4 溶融亜鉛浴
5 シンクロール
6 サポートロール
7 ガスワイピングノズル
8 冷却装置
9 ドロス粒子
11 下地鋼板
12 Fe−Al層(Fe−Al合金層)
13 Fe−Zn合金
14 めっき層
15 浴中ロール
21、22 亜鉛浴吹き付け装置

Claims (12)

  1. P含有量が0.01〜0.1質量%で、表面粗さがRaで0.1〜0.8μmである下地鋼板表面に、Znを98質量%以上含有するめっき層を有する溶融亜鉛めっき鋼板であって、鋼板表面のFe−Al層が破壊され、Fe−Zn合金化反応(Outburst反応)が起こることに起因するドロス状欠陥の数が1平方メートル当たり100個以下であることを特徴とする表面外観に優れた溶融亜鉛めっき鋼板。
  2. Znを98質量%以上含有するめっき層は、Pb含有量が0.02質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の表面外観に優れた溶融亜鉛めっき鋼板。
  3. 鋼板を、還元性あるいは非酸化性の雰囲気で焼鈍した後、大気に接触させること無く溶融亜鉛浴中に通板せしめて亜鉛めっき処理する溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法において、溶融亜鉛浴として、Znを98質量%以上含み、該溶融亜鉛浴中に添加されるAlの濃度が0.18〜0.5質量%である浴を用い、かつ、鋼板が溶融亜鉛浴に浸漬された直後から浴中ロールに接触するまでの間で、鋼板表面に、Znを98質量%以上、Alを0.18〜0.5質量%含み、板面位置での板面に垂直方向の流速が1.0〜5m/秒の範囲内にある亜鉛浴を吹き付けることを特徴とする表面外観に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  4. 鋼板を、還元性あるいは非酸化性の雰囲気で焼鈍した後、大気に接触させること無く溶融亜鉛浴中に通板せしめて亜鉛めっき処理する溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法において、溶融亜鉛浴として、Znを98質量%以上含み、該溶融亜鉛浴中に添加されるAlの濃度が0.18〜0.5質量%である浴を用い、かつ、浴中ロールに接触した直後の鋼板表面に、Znを98質量%以上、Alを0.18〜0.5質量%含み、板面位置での板面に垂直方向の流速が1.0〜5m/秒の範囲内にある亜鉛浴を吹き付けることを特徴とする表面外観に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  5. 鋼板を、還元性あるいは非酸化性の雰囲気で焼鈍した後、大気に接触させること無く溶融亜鉛浴中に通板せしめて亜鉛めっき処理する溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法において、溶融亜鉛浴として、Znを98質量%以上含み、該溶融亜鉛浴中に添加されるAlの濃度が0.18〜0.5質量%である浴を用い、かつ、鋼板が溶融亜鉛浴に浸漬された直後から浴中ロールに接触するまでの間で、鋼板表面に、Znを98質量%以上、Alを0.18〜0.5質量%含み、板面位置での板面に垂直方向の流速が1.0〜5m/秒の範囲内にある亜鉛浴を吹き付け、さらに、浴中ロールに接触した直後の鋼板表面に、Znを98質量%以上、Alを0.18〜0.5質量%含み、板面位置での板面に垂直方向の流速が1.0〜5m/秒の範囲内にある亜鉛浴を吹き付けることを特徴とする表面外観に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  6. 鋼板を、還元性あるいは非酸化性の雰囲気で焼鈍した後、大気に接触させること無く溶融亜鉛浴中に通板せしめて亜鉛めっき処理する溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法において、溶融亜鉛浴として、Znを98質量%以上含み、該溶融亜鉛浴中に添加されるAlの濃度が0.18〜0.5質量%である浴を用い、かつ、めっき浴温度ならびに侵入板温度を430〜455℃とするとともに、請求項3〜の何れかの項に記載の方法で、溶融亜鉛浴中で鋼板表面に亜鉛浴を吹き付けることを特徴とする表面外観に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  7. 請求項3〜の何れかの項に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法において、溶融亜鉛浴として、Znを98質量%以上含み、該溶融亜鉛浴中に添加されるAlの濃度が0.18〜0.5質量%である浴に代えて、Znを98質量%以上含み、該溶融亜鉛浴中に添加されるAlの濃度が0.18〜0.3質量%である浴を用い、また鋼板表面に吹き付ける亜鉛浴として、Alを0.18〜0.5質量%含む亜鉛浴に代えて、Alを0.18〜0.3質量%含む亜鉛浴を用い、更に、浴を分析して検出されるFe濃度が、
    [Fe%]≦5x[Al%]2−3.25x[Al%]+0.575
    を満たす条件にて製造することを特徴とする表面外観に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  8. 鋼板は、表面粗さがRaで0.1〜0.8μmであることを特徴とする請求項3〜の何れかの項に記載の表面外観に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  9. 鋼板は、P含有量が0.01〜0.1質量%であることを特徴とする請求項3〜の何れかの項に記載の表面外観に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  10. 鋼板は、P含有量が0.01〜0.1質量%で、表面粗さがRaで0.1〜0.8μmであることを特徴とする請求項3〜の何れかの項に記載の表面外観に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  11. 溶融亜鉛浴中に含有されるPbの濃度を0.02質量%以下とすることを特徴とする請求項3〜10の何れかの項に記載の表面外観に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  12. ガスワイピングを行ってから2〜5秒経過後かつめっき層が凝固する以前に鋼板を冷却することを特徴とする請求項3〜11の何れかの項に記載の表面外観に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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