JP4524340B2 - 血管内皮増殖因子c(vegf−c)タンパク質およびその遺伝子、変異体、ならびにその使用 - Google Patents
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Description
本発明は一般に、遺伝子工学の分野に関し、さらに詳しくは内皮細胞の増殖因子および増殖因子遺伝子に関する。
発明の背景
成熟組織の発達成長、改造および再生、ならびに固形腫瘍の増殖は、脈管形成が伴う場合にのみに生じ得る。血管芽細胞および造血前駆細胞は中胚葉から分化し、卵黄嚢の血島や胚の一次血管系を形成する。これら初期の(in situ)分化中の内皮細胞からの血管の発達は脈管形成と呼ばれている。胚発生における主要な血管は、脈管形成を通じて構築されると信じられているが、血管樹の停止の形成は、脈管形成と呼ばれる、既存の血管から血管が発生する過程の結果として起こると考えられているRisau et al., Devel. Biol., 125:441-450(1988)。
内皮細胞は、機能的にまた形態学的に明確な数種の血管へと発達する。器官が分化し、それらの特殊な機能を遂行し始めると、内皮細胞の表現型の異質性は増す。脈管形成刺激を受けると、内皮細胞は再び細胞周期に入り、拡散し、細胞周期から脱し、次いで再び分化してそれらの組織環境と機能的に適合した新しい血管となる。脈管形成中の内皮細胞は、下層にある基底膜を退化、拡散させ、血管周囲のストロマへ向かって突き出した毛細管の新芽を形成する。Ausprunk et al., Microvasc. Rev., 14:51-65(1977)。組織発達および再生中の脈管形成は、厳格に制御された内皮細胞増殖、拡散、分化および生残の過程に依存している。内皮細胞調節系の機能不全は、多くの疾患の鍵となる特徴である。さらに重要なことには、腫瘍の増殖および転移も脈管形成に依存することが示されている。Folkman et al., J. Biol. Chem., 267:10931-10934(1992)。
細胞の増殖および分化を調節する鍵シグナルには、ポリペプチド増殖因子とそれらのトランスメンブラン受容体が介在し、その多くがチロシンキナーゼである。チロシンキナーゼ挿入配列内の自己リン酸化ペプチドおよび活性化した受容体のカルボキシル末端配列は通常、応答細胞における遺伝子発現の再調整のためのシグナル変換に関与しているキナーゼ基質により認識される。いくつかのファミリーの受容体チロシンキナーゼが同定されている。Van der Greer et al., Ann. Rev. Cell Biol., 10:251-337(1994)。脈管形成刺激を導入する主要な増殖因子および受容体は図1に模式的に示されている。
また、繊維芽細胞増殖因子も脈管形成の調節に関与していることが知られている。それらは培養内皮細胞に対して細胞***促進性および走化性を有することが判っている。また、繊維芽細胞増殖因子も、コラゲナーゼやプラスミノーゲンアクチベーターなどのプロテアーゼの産生を刺激し、内皮細胞による管の形成を誘導する。Sakela et al., Ann.Rev. Cell Biol., 4:93-126(1988)。繊維芽細胞増殖因子にはFGF-1とFGF-2という2つの一般的なクラスがあり、双方とも通常のシグナルペプチドを欠いている。両種はヘパリンと親和性を有し、FGF-2は、内皮下の細胞外マトリックスにおいてヘパリン硫酸プロテオグリカンと結合しており、損傷後そこから放出される。ヘパリンは、変性および分解からの保護、ならびにFGFの二量体化の双方によって、脈管形成FGFによる内皮細胞の増殖刺激を強化する。培養内皮細胞はFGF-1受容体を発現するが、他の親和性の高い繊維芽細胞増殖因子受容体のレベルは有意ではない。
受容体チロシンキナーゼの他のリガンドのうち、血小板由来増殖因子PDGF-BBはニワトリ漿尿膜において弱い脈管形成能を有することが判っている。Risau et al., Growth Factors, 7:261-266(1992)。形質転換増殖因子α(TGFα)は、いくつかの腫瘍細胞種により、またマクロファージにより分泌される脈管形成因子である。c-met原癌遺伝子によりコードされる受容体である肝細胞増殖因子(HGF)も強い脈管形成能を有する。
最近では、内皮細胞特異的増殖因子および受容体が、主として内皮細胞の増殖、分化およびある分化した機能の刺激にあずかっていることが示されている。これらのうち最もよく研究されているものは、PDGFファミリーのメンバーである血管内皮増殖因子(VEGF)である。血管内皮増殖因子は23kDのサブユニットがジスルフィド結合した二量体糖タンパク質である。報告されている他のVEGFの作用としては、細胞内カルシウムの動態化、プラスミノーゲンアクチベーターおよびプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-1合成の誘導、内皮細胞におけるヘキソース輸送の刺激、ならびにin vitroにおける単球遊走の誘導が挙げられる。4つのVEGFイソ型は異なるmRNAスプライス変異体によりコードされ、内皮細胞における有糸***を等しく刺激することができるようである。しかしながら、各イソ型では細胞表面のプロテオグリカンに対する親和性が異なり、VEGFに対しては親和性の低い受容体として振る舞う。VEGFの121および165アミノ酸イソ型(VEGF121およびVEGF165)は可溶型で分泌されるが、189および206アミノ酸残基のイソ型はラセミ細胞の表面に会合しており、ヘパリンに対し強い親和性を有している。VEGFは、内皮細胞に対するその有糸***促進活性に基づき、また、微小血管を透過性にするその能力によっていくつかのソースから独自に精製されており、そのため血管透過性因子(VPF)とも呼ばれている。
VEGFに対して親和性の高い2種の受容体:VEGFR-1/Flt-1(fms様チロシンキナーゼ-1)およびVEGFR-2/KDR/Flk-1(キナーゼ挿入ドメイン含有受容体/胎児肝臓キナーゼ-1)が同定されている。これらの受容体はPDGF受容体ファミリーに分類されているが、それらの細胞外ドメインに免疫グロブリン様のループを5つではなく7つ有しており(図1を参照)、このファミリーで通常見られるものより長いキナーゼ挿入を有している。VEGF受容体の発現は主として血管内皮細胞で起こるが、いくらかは造血前駆細胞、単球および黒色腫細胞にも存在し得る。内皮細胞だけがVEGFに応答して増殖し、異なる供給源からの内皮細胞は異なる応答を示すことが報告されている。従って、VEGFR-1およびVEGFR-2が介在するシグナルは細胞種特異的であると思われる。最近、VEGF関連胎盤増殖因子(PIGF)が、高い親和性でVEGFR-1と結合することが判った。PIGFはVEGFの増殖因子の活性を増強することができたが、それ自身の内皮細胞を刺激することはなかった。天然に存在するVEGF/PIGFヘテロ二量体はVEGFホモ二量体とほぼ同様に、内皮細胞に対する強力な細胞***促進物質であった。Cao et al., J. Biol. Chem., 271:3154-62(1996)。
Flt4受容体チロシンキナーゼ(VEGFR-3)は、VEGFR-1およびVEGFR-2遺伝子の産物と構造上、密接に関連している。このような類似性にもかかわらず、成熟型のFlt4は、タンパク質分解により細胞外ドメインにおいて切断され、ジスルフィド結合した2つのポリペプチドとなるという点でVEGF受容体とは異なる。Pajusola et al., Cancer Res., 52:5738-5743(1992)。4.5および5.8kb Flt4 mRNAは、選択的な3’エキソンの使用によりそれらのC末端で異なるポリペプチドをコードしている。VEGFまたはPIGFのイソ型はFlt4との結合には高い親和性を示さないか、またはその自己リン酸化を引き起こす。
Flt4の発現はVEGFR-1またはVEGFR-2の発現よりもさらに限定されたものであると思われる。Flt4の発現はまず、交尾後8.5日のマウス胎芽の頭部間葉、主静脈の血管芽細胞における、また胚体外では尿膜におけるin situハイブリダイゼーションにより検出可能となる。交尾後12.5日の胎芽では、Flt4シグナルは発達中の静脈および推定に基づくリンパ管内皮で認められるが、動脈内皮には存在しないようである。発達の後期においては、Flt4 mRNAは発達中のリンパ管に限定されるようになる。成人においてリンパ管内皮および上位の小静脈のあるものはFlt4 mRNAを発現し、転移性リンパ節の、またリンパ管腫におけるリンパ洞で高い発現が起こる。これらの結果はリンパ管の小静脈起源の理論を支持するものである。
これまでに5種の内皮細胞特異的受容体チロシンキナーゼ、Flt-1(VEGFR-1)、KDR/Flk-1(VEGFR-2)、Flt4(VEGFR-3)、Tie、およびTek/Tie-2が記載されており、これらはシグナル変換に不可欠の固有のチロシンキナーゼ活性を有している。マウス胎芽におけるFlt4、Flt-1、Tie、およびTekを不活性化する標的突然変異では、分子レベルで脈管形成におけるそれらの不可欠かつ特異的な役割が示されている。VEGFR-1およびVEGFR-2は高い親和性でVEGFと結合し(それぞれKd16および760pM)、またVEGFR-1も関連する胎盤増殖因子(PIGF;Kd約200pM)と結合する。TekのリガンドはPCT特許公報WO96/11269で報告されている。
発明の概要
本発明は、VEGF-Cで示されるFlt4受容体チロシンキナーゼ(VEGFR-3)のリガンドを提供する。従って本発明は、Flt4受容体チロシンキナーゼに結合できる精製かつ単離されたポリペプチドを提供する。本発明のFlt4リガンドは、Flt4受容体チロシンキナーゼを発現する宿主細胞内でFlt4受容体チロシンキナーゼのチロシンリン酸化を刺激できることが好ましい。本発明の好ましいリガンドは哺乳類のポリペプチドである。極めて好ましいリガンドはヒトのポリペプチドである。下記に詳細に説明されるように、互いに、または他のポリペプチドと結合した本発明のポリペプチドを含んでなる二量体および多量体が、本発明の態様として具体的に考えられている。
1つの具体例では、Flt4リガンドポリペプチドは、還元条件下でSDS-PAGEにより測定した際の分子量がおよそ23kDである。例えば、本発明は前立腺癌細胞系統由来のコンディショニング培地から精製できるおよそ23kDの1種以上のポリペプチドからなるリガンドが含まれる。なお、この細胞系統はATCC受託番号CRL1435を有する。このPC-3細胞由来リガンドポリペプチドのアミノ酸配列の決定により、このリガンドポリペプチドが配列番号5で示されたアミノ末端アミノ酸配列を含んでなることが明らかになった。本発明はまた、Flt4リガンドを生産するPC-3前立腺癌細胞系統の新たな用途を提供する。好ましい具体例では、リガンドはPC-3細胞培養培地から直接精製、単離され得る。
極めて好ましい具体例では、リガンドポリペプチドは、ヒトFlt4受容体チロシンキナーゼと高い親和性で結合する配列番号8で示されるアミノ酸配列の断片を含んでなる。受容体チロシンキナーゼのポリペプチドリガンドに関して「高い親和性」とは、典型的には、本明細書でVEGFR-2およびVEGFR-3に結合するVEGF-Cに関して報告され、また当技術分野の他のところでVEGF、PIGF、PDGFおよびそれらの受容体に対する他の因子に関して報告されているように、ナノモル以下の解離定数(Kd)によって特徴付けられた結合関係を表すと理解される。断片の例としては、残基約112〜残基約213の配列番号8で示されるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチド;配列番号8の残基約104〜残基約227のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチド;および配列番号8の残基約112〜残基約227のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドが挙げられる。他の断片例としては、下記により詳細に記載されるように、ほぼ以下の残基:31〜213、31〜227、32〜227、103〜217、103〜225、104〜213、113〜213、103〜227、113〜227、131〜211、161〜211、103〜225、227〜419、228〜419、31〜419、および1〜419にわたる配列番号8のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドが挙げられる。
本発明はまた、1以上のFlt4リガンドのポリペプチド前駆体を提供し、ここでこのような前駆体の1つ(「プレプロVEGF-C」で示される)は配列番号8で示される全アミノ酸配列(アミノ酸残基1〜419)を含んでなる。従って本発明は、配列番号8で示される残基1〜419のアミノ酸配列を有する精製かつ単離されたポリペプチドを含む。本発明のリガンド前駆体は、適当な宿主細胞で発現させた場合、切断により、Flt4受容体チロシンキナーゼに対して高い親和性で結合するポリペプチドを産生する。配列番号8で示されるアミノ酸配列において、推定される102アミノ酸リーダー(プレプロ)ペプチドが同定されている。かくして、関連する態様において、本発明は配列番号8で示される残基103〜419のアミノ酸配列を有する精製かつ単離されたポリペプチドを含む。
1つの具体例では、発現したFlt4リガンドポリペプチド前駆体は、発現時にタンパク質分解により切断されておよそ23kDのFlt4リガンドポリペプチドを生じる。かくして、配列番号8で示される前駆体ポリペプチドの切断産物であり、かつ、還元条件下でおよそ23kDの分子量を有するFlt4リガンドポリペプチドが提供される。
約29および32kDの分子量を有するポリペプチドから構成される推定VEGF-C前駆体/プロセッシング産物も、本発明の態様とみなされる。
もう1つの具体例では、発現したFlt4リガンドポリペプチド前駆体は、発現時にタンパク質分解により切断されておよそ21kDのVEGF-Cポリペプチドを生じる。配列解析により、観察された21kD型は、23kD型のアミノ末端からおよそ9アミノ酸下流にアミノ末端を有することが示され、このことは選択的切断部位が存在することを示唆している。
前記から、本発明の態様にはFlt4受容体チロシンキナーゼと高い親和性で結合することができる断片である、配列番号8で示される残基1〜419のアミノ酸を有する精製かつ単離されたポリペプチドの断片が含まれることは明らかであろう。好ましい具体例には、還元条件下でSDS-PAGEにより評価した際、およそ21/23kDおよび29/32kDの見かけの分子量を有する断片が含まれる。より一般には、本発明は、脊椎動物起源のVEGF-Cである精製かつ単離されたポリペプチドを含み、ここでVEGF-Cは還元条件下でSDS-PAGEにより評価した際、約21〜23kDの分子量を有し、かつ、Flt4受容体チロシンキナーゼ(VEGFR-3)と結合できる。VEGFR-3と結合できる約30〜23kDの脊椎動物VEGF-C型もまた、本発明の態様であると考えられる。
証拠からは、Flt4リガンド活性を保持するのに不可欠なアミノ酸は、配列番号のアミノ酸およそ103/112〜226/227内に含まれ、成熟した、天然に存在するFlt4リガンドを生じるカルボキシ末端タンパク質分解による切断は配列番号8のアミノ酸のほぼ226〜227位で起こることが示唆される。従って、好ましいFlt4リガンドは、配列番号8のアミノ酸ほぼ103〜227を含んでなる。
本明細書に記載されるVEGF-C突然変異解析により、C末端を規定する自然のプロセッシング切断によって生じる、天然に存在する配列番号8のアミノ酸103〜227にわたるVEGF-Cポリペプチドが存在し、それがflt4リガンドとして生物学的に活性があることが示される。配列番号8の残基104〜213から構成されるポリペプチド断片は、生物学的に活性なVEGF-Cを保持することが示されている。さらなる突然変異解析により、配列番号8のアミノ酸113〜213のみにわたるポリペプチドがFlt4リガンド活性を保持していることが示されている。従って、好ましいポリペプチドは、ほぼ、配列番号8のアミノ酸残基103〜227、104〜213または113〜213にわたる配列を含んでなる。
さらに、VEGFファミリーのポリペプチドメンバーの配列を比較することにより、いっそう小さな断片が生物学的活性を保持しているであろうという示唆が与えられ、このようにより小さな断片も本発明の態様としてみなされる。特に、VEGFファミリーのポリペプチドの8個の高度に保存されたシステイン残基は、配列番号8の残基131〜残基211の領域を規定しており(図2、5および10を参照)、ゆえに残基約131〜残基約211にわたるポリペプチドはVEGF-Cの生物学的活性を保持しているものと期待される。事実、ほぼ残基161〜211を含んでなるポリペプチドは、進化論的に保存されたRCXXCCモチーフを保持し、VEGF-C活性を保持するものと仮定され、ゆえに本発明の態様としてみなされる。
本明細書では、VEGF-CポリペプチドはFlt4と結合することに加え、KDR/flk-1受容体チロシンキナーゼ(VEGFR-2)と結合し、これを活性化することが示されている。従って本発明は、KDR受容体チロシンキナーゼ(VEGFR-2)およびFlt4受容体チロシンキナーゼ(VEGFR-3)の少なくとも1つと結合できる精製かつ単離されたポリペプチドを含み、このポリペプチドはかかる結合を許容するのに有効な配列番号8のアミノ酸配列の一部を含んでなる。1つの好ましい具体例では配列番号8のアミノ酸配列の一部とは、そのアミノ末端残基として配列番号8の残基102〜161の間のアミノ酸を有し、かつ、そのカルボキシ末端残基として配列番号8の残基210〜228の間のアミノ酸を有する連続部分である。極めて好ましい具体例では、この部分はそのアミノ末端残基として配列番号8の残基102〜131の間のアミノ酸を有する。なお極めて好ましい具体例では、配列番号8のアミノ酸配列の一部は、そのアミノ末端残基として配列番号8の残基102〜114の間のアミノ酸を有し、かつ、そのカルボキシ末端残基として配列番号8の残基212〜228の間のアミノ酸を有する連続部分である。受容体に結合しそれを活性化する本発明のポリペプチド(例えば、VEGFR-2およびVEGFR-3)は、受容体が介在するVEGF-Cの生物学的活性を刺激するために有用である。受容体に結合しそれを活性化する本発明のポリペプチドは、受容体が介在するVEGF-C活性を阻害するために有用である。
本発明のポリペプチドという定義は、その範囲内にその変異体を含めることを意図したものである。考えられるポリペプチド変異体には、当業者に認識されるように、保存的置換により、かかるポリペプチドの正確なアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有する精製かつ単離されたポリペプチドが含まれ(例えば、VEGF-C、VEGF-C前駆体およびVEGF-C断片)、これらはポリペプチドのVEGF-Cの生物学的活性またはVEGF-C阻害活性の少なくとも1つの保持と一致している。また「変異体」には、ポリペプチドに対して用いる場合、限定されるものではないが、メチオニン、および/または翻訳および/または分泌を促進するためのリーダー配列の付加;精製を容易にするためのペプチド配列(例えば、ポリヒスチジン配列および/または抗体精製のためのエピトープ)の付加;およびVEGF-Cとの融合タンパク質を形成するためのポリペプチドをコードする配列の付加をはじめとするアミノ酸付加を有するポリペプチドをも含めることを意図している。また「変異体」には、アミノ末端、カルボキシ末端、または本明細書で教示されたヒト、マウスおよびウズラVEGF-C配列の間で保存されていないアミノ酸の中間部にアミノ酸欠失を有するポリペプチドをも含めることを意図しており、それらは欠失が生じたポリペプチドのVEGF-CまたはVEGF-C阻害活性の保持と一致している。
また「変異体」には、ポリペプチドのVEGF-CまたはVEGF-C阻害活性の保持と一致する1以上のアミノ酸残基に修飾を有するポリペプチドを含めることを意図している。かかる修飾には、グリコシル化(天然のVEGF-Cのグリコシル化と同じ、または異なる)、および他の置換基(例えば、標識、血清半減期を延長させる化合物)(例えば、ポリエチレングリコール)などの付加が含まれる。
本発明のその他のポリペプチドとしては、プレプロVEGF-Cの成熟VEGF-Cへのプロセッシングの結果見出されたある断片がある。例えば、本発明は、還元条件下でSDS-PAGEにより評価した際に約29kDの分子量を有し、かつ、実質的にそのアミノ末端アミノ酸残基として配列番号8の残基228を有する配列番号8の一部から構成されるアミノ酸配列を有する精製かつ単離されたポリペプチド;還元条件下でSDS-PAGEにより評価した際に約15kDの分子量を有し、かつ、実質的にそのアミノ末端アミノ酸残基として配列番号8の残基32を有する配列番号8の一部から構成されるアミノ酸配列を有する精製かつ単離されたポリペプチドを含む。かかるポリペプチドは、VEGF-C受容体との相互作用および/または生物学的に活性なVEGF-Cとの相互作用を通じてVEGF-Cの生物学的活性を調整するものと期待される。
VEGF-Cにおいて保存されているシステイン残基のいくつかは、鎖間ジスルフィド結合にあずかって、天然に存在する種々のVEGF-Cポリペプチドのホモおよびヘテロ二量体を形成する。前記の考察以外に、証拠は鎖間ジスルフィド結合を欠いたVEGF-CポリペプチドがVEGF-Cの生物学的活性を保持していることにある。結果として、本発明の材料および方法には、鎖間ジスルフィド結合の存在か不在かにかかわらず、少なくとも1種のVEGF-Cの生物学的活性を保持しているVEGF-C断片の総てが含まれる。また本発明は、互いに、または他のポリペプチドと結合したかかる断片を含んでなる多量体(二量体を含む)も含む。断片の結合は、ポリペプチド鎖の共有結合(例えば、ジスルフィド結合)によるものであっても、非共有結合(例えば、水素結合、安定なまたは誘導性の双極子−双極子相互作用による結合、疎水性または親水性相互作用による結合、これらの結合メカニズムの組み合わせなど)によるものであってもよい。従って本発明は、その少なくとも1種の単量体がVEGFR-2および/またはVEGFR-3と結合でき、かつ、かかる結合を許容するのに有効な配列番号8のアミノ酸配列の一部を含んでなるポリペプチドであり、しかもその多量体自身がVEGFR-2および/またはVEGFR-3と結合できる、精製かつ単離されたポリペプチド多量体を含む。好ましい具体例では、本明細書で教示されるように、この多量体は少なくとも1つのVEGF-Cの生物学的活性を有する。
1つの具体例では、多量体の少なくとも1種の単量体がPDGF/VEGFファミリーのタンパク質のもう1つのメンバーに由来するポリペプチド、例えば血管内皮増殖因子(VEGF)ポリペプチド、血管内皮増殖因子B(VEGF-B)ポリペプチド、血小板由来増殖因子A(PDGF-A)ポリペプチド、血小板由来増殖因子B(PDGF-B)ポリペプチド、c-fos誘導性増殖因子(FIGF)ポリペプチド、または胎盤増殖因子(PIGF)ポリペプチドである。
極めて好ましい具体例では、本発明の多量体は2種の単量体ポリペプチドからなる二量体である。例えば、本発明は、その各単量体がVEGFR-2およびVEGFR-3のうち少なくとも1つと結合でき、かつ、かかる結合を許容するのに有効な配列番号8のの一部を含んでなるアミノ酸配列を有する二量体を含む。共有結合を有する二量体およびその2つ単量体が互いに共有結合していない二量体が考えられる。
さらにもう1つの態様では、本発明は、本発明のポリペプチドの類似体を含む。「類似体」とは、1以上のアミノ酸挿入、内部のアミノ酸欠失、および/または非保存的アミノ酸置換を含む改変を有するポリペプチドをいう。類似体の定義はかかる改変を具体化する類似体ポリペプチドのその変異体の範囲内に含めることを意図している。「変異体」とは、本明細書でポリペプチドに関して用いる場合、一般にVEGF-C変異体、VEGF-C類似体、およびVEGF-C類似体の変異体をいうことを意図している。好ましい類似体は、その類似体が由来する天然ペプチド配列に対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する。極めて好ましい類似体は、天然ペプチド配列に対して95%、96%、97%、98%、99%以上のアミノ酸配列同一性を有する。
例えば1つの具体例では、本発明は、VEGFR-3と結合できる脊椎動物起源のVEGF-Cポリペプチド類似体(例えば、還元条件下でSDS-PAGEにより評価した際約21-23kDの脊椎動物VEGF-C類似体)を含み、ここでVEGF-Cにおいて進化論的に保存されているシステイン残基は欠失または置換し、かつ、類似体はVEGFR-3と結合でき、野生型VEGF-Cに比べVEGFR-2結合親和性は低下している。本発明の具体例の類似体に関しては、残基が「進化論的に保存されている」という決定は、本明細書に与えられ、図5で類似性を示すために整列されたヒト、マウス、およびウズラVEGF-C配列のアライメントを参照することによってのみなされる。他の種由来のVEGF-Cはその残基を欠いていてもよいという事実にかかわらず、3つの配列総てに同じ残基が存在すれば、その残基は進化論的に保存されていることが示される。好ましい具体例では、保存されているシステイン残基は配列番号8の156位のシステインに相当する。配列番号8(ヒトVEGF-C)の156位のシステインはVEGF-Cの進化論的に保存された部分内にあるので、「156位のシステインに相当する」ことは、注目する脊椎動物VEGF-C配列の解析から容易に決定される(図5を参照、ヒト、マウスおよびウズラVEGF-Cポリペプチドを比較のこと)。図5の3つのVEGF-C形態を有するヒトVEGF-C対立遺伝子変異体、他の哺乳類のVEGF-Cポリペプチドなどのアライメントは、たとえ対立遺伝子変異体が注目するシステインに先立つ残基がちょうど155より長くとも短くとも、配列番号8の156位のシステインに相当するシステインと認められるであろう。
もう1つの具体例では、本発明は、ヒトVEGF-Cの類似体であり、かつ、Flt-1受容体チロシンキナーゼ(VEGFR-1)、KDR受容体チロシンキナーゼ(VEGFR-2)およびFlt4受容体チロシンキナーゼ(VEGFR-3)の少なくとも1つと結合できる精製ポリペプチドを含む。
具体的に考えられるのは、VEGFR-3とは結合するが、野生型ヒトVEGF-CのVEGFR-2結合親和性に比べて(例えば、実質的に配列番号8のアミノ酸103〜227から構成されるアミノ酸配列を有するヒトVEGF-CのVEGFR-2結合親和性に比べて)VEGFR-2との結合親和性が低下したヒトVEGF-Cの類似体である。このようなヒトVEGF-C類似体のファミリーの1つには、VEGF-C△156ポリペプチドがある。「VEGF-C△C156ポリペプチド」とは、配列番号8の156位のシステインが欠失しているか、または別のアミノ酸に置換している類似体を意味する。VEGF-C△C156ポリペプチド類似体は、配列番号8の総て、または配列番号8の156位を含むその一部を含んでなる本発明のVEGF-C類似体のいずれからでも作製できる。VEGF-C△C156ポリペプチド類似体は、VEGFR-3との結合を許容するのに有効な配列番号8の一部を含んでなることが好ましい。
例えば、本発明は、VEGFR-3と結合し、VEGFR-2結合親和性が低く、かつ、配列番号8のアミノ酸131〜211を含むアミノ酸配列を有し、配列番号8の156位のシステイン残基が欠失または置換しているVEGF-C△C156ポリペプチドを含む。好ましい具体例では、VEGF-C△C156ポリペプチドは、そのアミノ末端残基として配列番号8の残基102〜114の間のアミノ酸を有し、かつ、そのカルボキシ末端残基として配列番号8の残基212〜228の間のアミノ酸を有する配列番号8の連続部分を含んでなり、そこでは配列番号8の156位のシステイン残基が欠失または置換している。本明細書で例示された具体例では、配列番号8の156位のシステイン残基はセリン残基で置換している。
VEGFR-3に結合するがVEGFR-2結合親和性の低いヒトVEGF-C類似体の第二のファミリーとして、VEGF-C△R226△R227ポリペプチドがある。「VEGF-C△R226△R227ポリペプチド」とは、VEGF-Cのカルボキシ末端プロペプチドのタンパク質分解によるプロセッシング部位を排除する目的で、配列番号8の226および227位のアルギニン残基が欠失または他のアミノ酸で置換している類似体を意味する。VEGF-C△R226△R227ポリペプチドはVEGFR-3との結合を許容するのに有効な配列番号8の部分を含んでなることが好ましい。例えば、本発明は、配列番号8のアミノ酸112〜419を含んでなるアミノ酸配列を有し、配列番号8の226および227位のアルギニン残基が欠失または置換しているVEGF-C△R226△R227ポリペプチドを含む。本明細書で具体的に例示されるものとしては、配列番号8の226および227位のアルギニン残基がセリン残基で置換しているVEGF-C△R226△R227ポリペプチドがある。
本発明のVEGF-C類似体のもう1つのファミリーには、ヒトVEGF-Cbasicペプチドがある。「ヒトVEGF-Cbasicペプチド」とは、VEGF受容体結合に関与しているVEGFにおける1以上の塩基性残基(例えば、図2に示されるVEGF165前駆体における残基Arg108、Lys110およびHis112)を模倣するために、塩基性側鎖を有する少なくとも1つのアミノ酸がVEGF-Cコード配列に導入されているVEGF-C類似体を意味する。2個または3個の塩基性残基がVEGF-Cに導入されていることが好ましい。本明細書で与えられるVEGF/VEGF-Cペプチドアライメントに基づけば、配列番号8の187、189および191位が塩基性残基を導入するための好ましい位置である。例えば、本発明は、VEGFR-1、VEGFR-2およびVEGFR-3の少なくとも1つと結合でき、かつ、配列番号8の残基131〜211を含んでなるアミノ酸配列を有し、配列番号8の187位のグルタミン酸残基、189位のトレオニン残基、および191位のプロリン残基がそれぞれ、アルギニン残基、リジン残基、およびヒスチジン残基で置換しているVEGF-Cbasicポリペプチドを含む。
本発明のさらなる1つの態様として、有用なVEGF類似体を作出するためにVEGF-C構造情報が用いられる。例えば、成熟VEGF-Cは不対システイン(配列番号8の137位)を含んでおり、非共有結合ポリペプチド二量体を形成することができる。1つの具体例では、VEGF類似体が作出され、ここでは、成熟VEGF-C由来の不対システイン残基がVEGFの同じ位置に導入される(例えば、ヒトVEGF165前駆体のLeu58に導入される(図2、Genbank Acc. No. M32977))。かかるVEGF類似体をVEGF+cysポリペプチドと称する。かくして、本発明は配列番号56で示されるアミノ酸配列を有するヒトVEGF165前駆体の残基53〜63から選択された位置でシステイン残基をVEGFアミノ酸配列に導入した、ヒトVEGF類似体を含む。天然に存在している少なくとも4つのVEGFイソ型が記載されており、各イソ型のVEGF+cysポリペプチド類似体が推測される。配列番号56で示されるアミノ酸配列を有するヒトVEGF165前駆体の58位に相当するVEGFイソ型の位置で、システインを導入することが最も好ましい。
本発明は、限定されるものではないが、VEGF-C前駆体、VEGF-Cおよび生物学的に活性なそれらの断片をコードするcDNAおよびゲノムDNA、さらにVEGF-C変異体およびVEGF-C類似体をコードするDNAを含み、本発明の総てのポリペプチドをコードする精製かつ単離されたポリヌクレオチド(すなわち核酸)をもまた提供する。本発明の好ましい核酸は、配列番号8のアミノ酸残基1〜419をコードするDNA、または前記のそれらの断片または類似体の1つを含んでなる。遺伝コードの縮重のために、多数のかかるコード配列が考えられ、それぞれは配列番号8に示されるアミノ酸配列またはそれらの断片または類似体のコードを共通に有している。遺伝コードの縮重により本発明のポリペプチドのいずれをコードする別個のポリヌクレオチドも、本発明の範囲内にある。
本発明の好ましいポリヌクレオチドは、配列番号7で示されるヌクレオチド352〜1611のヒトVEGF-CcDNA配列を含んでなる。本発明の他のポリヌクレオチドは、例えば、ヒト以外の哺乳類、鳥類(例えば鳥類のウズラ)および他のものからVEGF-Cポリペプチドをコードする。なおかつ本発明の他のポリヌクレオチドは、VEGF-C断片、およびVEGF-Cの一部または総てをコードするそれらDNAの対立遺伝子変異体のコーディング配列を含んでなる。
本発明の他のポリヌクレオチドは、VEGF-C変異体またはVEGF-C類似体のコーディング配列を含んでなる。好ましい変異体をコードする、また類似体をコードするポリヌクレオチドは、本明細書に開示された1以上のコドン置換、欠失、または挿入が導入され、変異体/類似体をコードするポリヌクレオチドを作出するヒト、マウス、またはウズラのVEGF-CcDNA配列(例えば、配列番号7のヌクレオチド352〜1611またはそれらの連続部分)を含んでなる。例えば、VEGF-C△C156ポリペプチドをコードする好ましいポリヌクレオチドは、817〜819位のシステインコドンが異なるアミノ酸をコードするコドン(例えば、セリンをコードするTTCコドン)で置換された配列番号7の総てまたは一部分を含んでなる。
さらに本発明は標準的なストリンジェントのハイブリダイゼーション条件下で前記ポリヌクレオチドへハイブリダイズするポリヌクレオチドを含んでなる。代表的なストリンジェントハイブリダイゼーション条件は下記の通りである:42℃において50%ホルムアミド、5X SSC、20mM NaPO4、pH6.8中でハイブリダイゼーション、次いで55℃において0.2X SSC中で洗浄。これらの条件において、ハイブリダイズする配列の長さおよびGCヌクレオチド含量に基づいて多様性があることは当業者により理解される。当技術分野の公式基準は適切なハイブリダイゼーション条件を決定するのに適切である。Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual(Second ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)§§9.47-9.51を参照。これらポリヌクレオチドはVEGF-C、VEGF-C断片、またはVEGF-C類似体をコードするポリヌクレオチドとハイブリダイズでき、他の(ヒトでない)哺乳類種のVEGF-CおよびヒトVEGF-C対立遺伝子変異体をコードするポリヌクレオチドを同定、精製、単離するための核酸プローブとして有用である。さらに、これらのポリヌクレオチドは下記に記載されるように、本発明のスクリーニング方法に有用である。
本発明のプローブとして有用な好ましい核酸は、配列番号7の少なくとも約16の連続したヌクレオチドをもつ核酸配列を含んでなる。さらに好ましくは、これらの核酸プローブは、配列番号7で見出される少なくとも約20の連続したヌクレオチドもつ核酸配列を有するであろう。これらの核酸をプローブとして用いる際、その核酸は特に配列番号7の配列の一部とハイブリダイズすることが好ましい。特異的なハイブリダイゼーションは、本明細書で標準的なストリンジェントのハイブリダイゼーション条件下でのハイブリダイゼーションと定義される。特に他の哺乳類VEGF-C遺伝子を同定、単離するために、好ましくはそれらはVEGF-Cに関連した遺伝子とハイブリダイズしない(例えば、ヒトVEGFまたはヒトVEGF-B遺伝子とハイブリダイズしない)ように核酸プローブを選択する。
かくして、本発明は特に、そのポリヌクレオチドがVEGF-Cをコードする遺伝子、例えばヒト遺伝子とハイブリダイズできる少なくとも約16のヌクレオチドを含んでなるポリヌクレオチドを含む。ハイブリダイゼーションの特異性は、コードする核酸、例えばVEGFまたはVEGF-Bへのポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションを支持しないハイブリダイゼーション条件下で、本発明のポリヌクレオチドがVEGF-Cをコードする核酸とハイブリダイズできることを保証する。1つの具体例では、少なくとも約16のヌクレオチド、好ましくは少なくとも約20のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドは、配列番号7に見られる連続したヌクレオチド配列、または配列番号7のヌクレオチド配列の補体として選択される。
もう1つの具体例では、本発明は、本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と少なくとも90パーセント(好ましくは少なくとも95パーセント、さらに好ましくは少なくとも97、98または99パーセント)のヌクレオチド配列同一性を有するポリヌクレオチドを含む。非常に好ましい具体例では、そのポリペプチドは、ヒトVEGF-C前駆体(配列番号8におけるVEGF-C前駆体およびその対立遺伝子変異体など)、ヒトVEGF-C、または生物学的に活性なVEGF-C断片をコードするヌクレオチド配列と少なくとも95パーセントの配列同一性を有する。
本発明のその他の態様は、本発明の核酸を含んでなるベクター;および本発明の核酸またはベクターで形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞を含む。本発明の好ましいベクターは、本発明のベクターを適当なプロモーターおよび転写および/またはそれに次ぐ翻訳を調節する他の制御配列に機能し得る形で連結した発現ベクターであり、ベクターで形質転換またはトランスフェクトされた適当な原核または真核宿主細胞はそれによってコードされたポリペプチドを発現することができる(例えば、それによってコードされたVEGF-C、VEGF-C断片、VEGF-C変異体、またはVEGF-C類似体)。本発明の好ましいベクターは、ATCC受託番号97231を有するプラスミドpFLT4-Lである。かかるベクターおよび宿主細胞はVEGF-Cおよびその断片、変異体および類似体を含み、本発明のポリペプチドを組換えにより産生するのに有用である。
本発明の関連する態様では、原核および真核細胞、特に単細胞宿主細胞のような宿主細胞を修飾して、本発明のポリペプチドを発現させる。そこで本発明のポリペプチドの発現をさせるように、単離された本発明のDNAで安定的に宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトすればよい。かくして、本発明はさらに本発明のポリペプチドを作製する方法を含む。好ましい方法で、本発明の核酸またはベクターを宿主細胞内で発現させ、本発明のポリペプチドを宿主細胞または宿主細胞増殖培地から精製する。
同様に、本発明は特にVEGFR-1、VEGFR-2および/またはVEGFR-3と結合することができるポリペプチドを作製する方法を含み、それは(a)本発明の核酸で宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトし;(b)その宿主細胞を培養して核酸を発現させ;(c)VEGFR-1、VEGFR-2および/またはVEGFR-3と結合することができるポリペプチドを宿主細胞または宿主細胞増殖培地から精製する工程を含んでなる。本発明はまた、本発明の方法により作製し、精製かつ単離されたポリペプチドを含む。1つの好ましい具体例では、本発明は、他のヒトポリペプチドを実質的に含まないヒトVEGF-Cポリペプチドまたはその生物学的に活性な断片、変異体、または類似体を含む。
別法として、宿主細胞は、通常宿主細胞で発現されない、または所望されるよりも低い割合で発現する内性VEGF-C遺伝子を活性化することによって修飾され得る。かかる宿主細胞は、VEGF-Cを発現するよう修飾され(例えば、相同組換え)、総てまたは一部が天然に存在しているVEGF-Cプロモーターを異種プロモーターの一部または総てで置き換えてVEGF-Cを発現させる。かかる宿主細胞では、異種プロモーターDNAはVEGF-Cをコードする配列へ機能し得る形で連結され、すなわちVEGF-Cをコードする配列の転写が制御される。例えば、PCT国際公開No.WO94/12650; PCT国際公開No.WO92/20808; およびPCT国際公開No.WO91/09955を参照。本発明はまた異種プロモーターDNAに加えて、増幅可能なマーカーDNA(例えば、ada、dhfr、およびカルバミルリン酸シンセターゼ、アスパラギン酸トランスカルバミラーゼ、およびジヒドロオロターゼをコードする多機能CAD遺伝子)および/またはイントロンDNAが異種プロモーターDNAとともに宿主細胞へ組換えることを考える。VEGF-Cをコードする配列へ連結すれば、マーカーDNAの増幅は標準的な選択方法により、かかる宿主細胞でVEGF-Cコード配列は同時増幅される。かくして、本発明は、例えばヒトVEGF-Cをコードする配列を有する核酸を含んでなり、さらに非VEGF-Cプロモーター配列(すなわち異種プロモーター配列)またはヒトVEGF-Cをコードする配列をもつ細胞でRNA転写を増強する他の非VEGF-C制御配列を含んでなる細胞を含む。
本発明により得られたDNA配列情報は、相同組換えまたは「ノックアウト」法による機能的VEGF-Cを発現しないまたはVEGF-C断片、変異体または類似体を発現する齧歯類の開発を可能にする[Capecchi, Science, 244: 1288-1292(1989)を参照]。かかる齧歯類はin vivoでのVEGF-CおよびVEGF-Cモジュレーターの活性の研究用モデルとして有用である。
もう1つの態様では、本発明は本発明の1以上のポリペプチドへ特異的に結合する、かつ/または本発明のポリペプチド多量体へ結合する抗体を含む。本発明の抗体に関して「特異的に結合する」とは、これまでに確認されたVEGF、VEGF-B、PDGF-A、PDGF-B、FIGFおよびPIGFのような関連増殖因子と交差反応する抗体を排除することを意味する。異なる種類のVEGF-Cポリペプチドにより高いレベルのアミノ酸類似性が共有されているため、本発明のヒトVEGF-Cポリペプチドへ特異的に結合する抗体が多くの場合、本発明の非ヒト(例えば、マウス、ウズラ)VEGF-Cポリペプチドと結合することが理解されるであろう。当技術分野における標準技術に従い、本発明のポリペプチドに対してモノクロナール抗体およびポリクロナール抗体の双方を作製し得る。例えば、Harlow and Lane, Antibodies; A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York(1988))を参照。また、標準的なタンパク質操作技術および組換え技術を用いて、ヒト化抗体および抗原結合抗体断片および他のキメラ抗体ポリペプチドを産生するしてもよい。本発明はさらに本発明の抗体を産生するハイブリドーマ細胞、または本発明の抗体ポリペプチドを発現させるために遺伝子操作した他の細胞種を含む。本発明の抗体は、脈管形成、血管新生、リンパ管およびそれらの疾患状態、外傷治癒、または特定の腫瘍細胞、造血または白血病細胞を監視する診断上の応用に使用してもよい。この抗体はまた、受容体を活性化からリガンドを遮断するために;本発明のポリペプチドを精製するために;さらに本発明のポリペプチドの存在に関して流体をアッセイするために用いてよい。本発明はさらに本発明の抗体を用いる免疫学的アッセイ(ラジオイムノアッセイ、酵素結合イムノソルベントアッセイ、サンドイッチアッセイなど)を含む。
本発明のリガンドは、検出可能なラベルで標識され、in situでそれらの対応する受容体を同定するために使用することが可能である。標識されたFlt4リガンドおよび抗Flt4リガンド抗体は、リンパ管、上位内皮小静脈およびそれらの疾患状態、および組織化学的組織片で発現するFlt4受容体の検出における画像形成試薬として用いてもよい。リガンドまたは抗体は、画像形成用の好適な超磁性(supermagnetic)、常磁性、高電子密度、音響発生、または放射性薬剤と共有または非共有結合させてもよい。また、ビオチンおよびアビジンなどのその他の非放射性標識を用いてもよい。
本発明の関連する態様は、特異的な細胞、例えば内皮細胞の検出のための方法である。これらの細胞はin vivoまたはin ex vivoの生物学的組織サンプルで見出されよう。その検出方法は、例えば内皮細胞を含んでなる生物学的組織を、ポリペプチドがその細胞と結合する条件下でVEGFR-2および/またはVEGFR-3と結合できる本発明のポリペプチドと接触させ、所望により生物学的組織を洗浄し、生物学的組織において細胞に結合したポリペプチドを検出し、それによりその細胞を検出する工程を含んでなる。本発明の特定のポリペプチドは、VEGFR-2およびVEGFR-3の双方を発現する細胞の検出および/または画像形成に有用であるが、他のポリペプチド(例えばVEGF-C△156ポリペプチド)が、特にVEGFR-3を発現するそれらの細胞の画像形成に有用であることは明らかであろう。
本明細書に記載されたVEGF-C(限定されるものではないが、血管内皮細胞の増殖および移動に作用すること;リンパ内皮細胞およびリンパ管の増殖を促進すること;血管透過性を増大させること;および骨髄形成(例えば、好中球の増殖)に作用することを含む)に関する多くの生物学的活性は、これらの生物学的活性を調整(刺激または阻害)するためのポリペプチドおよび本発明の抗体の多くのの診断上の、ならびにin vitroおよびin vivoにおける臨床上の有用性を支持するものである。一般に、1以上のVEGF-C生物学的活性を保持するVEGF-Cならびに前駆体、断片、変異体、および類似体ポリペプチドは、所望の生物学的活性を刺激するための有用なアゴニストであるが、受容体が介在するVEGF-C活性を刺激することなく(すなわち、受容体を活性化せず)VEGFR-2および/またはVEGFR-3(単独または他のポリペプチドとのホモもしくはヘテロ二量体としてのいずれかで)と結合することのできる前駆体、断片、変異体、および類似体ポリペプチドは、VEGF-Cのアンタゴニスト(阻害剤)として有用である。同様に、生物学的に活性なVEGF-C型と結合し、それによりVEGF-C受容体相互作用を阻害する本発明の抗体は、VEGF-Cの阻害剤として有用である。VEGF-Cコード配列の一部および/またはその補体からなるアンチセンスオリゴヌクレオチドは本発明の阻害剤としても考えられる。生物学的に活性なポリペプチドおよび本発明の阻害剤ポリペプチドの双方は、様々な画像形成用途における有用性を有する。
例えば、血管内皮細胞におけるVEGF-Cの生物学的作用は、脈管形成(例えば、外傷治癒中に、組織移植で、眼の疾患において、動脈狭窄症を回復させる副行血管の形成において、不完全骨折後の損傷した組織へ)を刺激するための、また血管形成を阻害するための(例えば、腫瘍増殖および/または転移癌を阻害するために)本発明のポリペプチドのin vivoでの使用を示唆する。血管内皮細胞におけるVEGF-Cの生物学的作用は、VEGF-Cの生物学的に活性な形態のin vitroでの使用を示し、培養血管内皮細胞およびそれらの前駆体の増殖(その増殖を含む)を促進する。リンパ内皮におけるVEGF-Cの生物学的作用は、リンパ管形成(例えば、組織移植患者などのリンパ管の再増殖または透過性を促進するために;癌治療(例えば、乳癌)での手術後の腋窩のリンパ管の損失を軽減するために;リンパ管の形成不全またはリンパ閉塞の治療のために)を刺激するための、またそれを阻害するための(例えば、リンパ管腫を治療するために)in vivoでの本発明のポリペプチドの使用を示す。本発明のポリペプチドのin vivoでのその他の使用は炎症、浮腫、象皮病、およびミルロイ病の治療または予防を含む。リンパ内皮細胞における生物学的作用は、VEGF-Cの生物学的に活性な形態のin vitroでの使用を示し、培養リンパ内皮細胞およびそれらの前駆体の増殖を促進する。
かくして、本発明はかかる内皮細胞または前駆細胞を、内皮または内皮前駆細胞の増殖を調整するのに有効な量の本発明のポリペプチドまたは抗体(またはその抗原結合部分)と接触させることを含んでなる、脊椎動物内皮細胞または脊椎動物内皮前駆細胞の増殖を調整する(刺激する/増強するまたは阻害する/低下させる)方法を含む。哺乳類内皮細胞およびそれらの前駆体が好ましい。ヒト内皮細胞は非常に好ましい。1つの具体例では、内皮細胞はリンパ内皮細胞である。もう1つの具体例では、その細胞は血管内皮細胞である。その方法はin vitro法(例えば、培養内皮細胞に対する)であってもよいし、in vivo法であってもよい。特に、末梢血管、骨髄、または臍帯血から単離されたCD34+内皮前駆細胞[例えば、Asahara et al., Science, 275;964-967(1997)を参照]のin vitroでの増殖調整が考えられる。in vivo法に関しては、医薬組成物(医薬上許容される希釈剤、アジュバント、賦形剤、担体などにおいて処方されたポリペプチドを含んでなる)を、in vivoでリンパ内皮細胞の増殖を調整するのに有効な量で、被験者に投与することが非常に好ましい。
1つの好ましい具体例では、内皮細胞はリンパ内皮細胞であり、そのポリペプチドは野生型VEGF-Cポリペプチド(例えば、配列番号8で示される残基103〜227のアミノ酸配列を有するVEGF-Cと比較)と比較して、哺乳類の血管の透過性に対する作用を低下させるものである。この具体例においては、VEGF-C△C156ポリペプチドの使用が考えられる。
in vivoにおける内皮細胞の増殖を調整する場合、本発明では内皮細胞関連疾患の調整が考えられる。本発明で考える内皮細胞疾患には、限定されるものではないが、リンパ管の物理的喪失(例えば、腋窩リンパ組織の手術での切除)、リンパ管閉塞(例えば、象皮病)、およびリンパ管腫を含む。好ましい1つの具体例では、被験者、および内皮細胞はヒトである。内皮細胞はin vitroまたはin vivoで提供され、それらは組織移植片に含まれれてもよい。ポリペプチドの有効な量とは、本明細書では、当業者により理解されるように、細胞増殖速度における再現可能な変化(顕微鏡観察または肉眼観察、および細胞倍化時間の測定、または核酸合成アッセイにより決定される)を達成するのに必要であると実験的に決定されるポリペプチドの量として定義される。
リンパ球の産生および成熟を刺激するために、組織およびリンパ管間の白血球の輸送を促進または阻害するために、または胸腺の内外の移動に影響を与えるために、本発明のポリペプチドを用いてもよい。
骨髄形成におけるVEGF-Cの生物学的作用は、骨髄形成(特に好中球の増殖)を刺激するための、またはそれを阻害するためのin vivoおよびin vitroでの本発明のポリペプチドの使用を示唆する。このように、本発明は、哺乳類被験体の骨髄形成を調整する方法であって、骨髄形成の調整を必要とする哺乳類被験体へ、骨髄形成を調整するのに有効な量の本発明のポリペプチドまたは抗体(またはその抗原結合部分)を投与することを含んでなる方法を含む。1つの具体例では、顆粒球減少症を患う哺乳類被験体が選択され、その方法は被験体に骨髄形成を刺激するのに有効な量のポリペプチドを投与することを含んでなる。特に、本発明のポリペプチドは被験体の血液中の好中球数を増加させるのに有効な量で投与される。好ましい被験体はヒト被験体である。ポリペプチドの有効量は、当業者により理解されるように、好中球の再産生における再現可能な変化(顕微鏡観察または肉眼観察、および細胞倍化時間の測定、または核酸合成アッセイにより決定される)を達成するのに必要であると実験的に決定される量である。
関連の具体例では、本発明は、哺乳類被験体の血中の好中球数を増加させる方法であって、血中好中球数の増加を必要とする被験体の細胞で、VEGF-Cタンパク質をコードするDNA、非VEGF-Cプロモーターまたは細胞中のDNAの発現を促進する他の非VEGF-C制御配列に機能し得る形で連結したDNAを発現させる工程を含んでなる方法を含む。
同様に、本発明は哺乳類幹細胞を、哺乳類内皮細胞の増殖を調整するのに有効な量の本発明のポリペプチドまたは抗体と接触させる工程を含んでなる、in vitroまたはin vivoでの好中球の増殖を調整する方法を含む。
さらに一般には、本発明はCD34+前駆細胞を、哺乳類内皮細胞の増殖を調整するのに有効な量の本発明のポリペプチドまたは抗体と接触させる工程を含んでなる、in vitroまたはin vivoでのCD34+前駆細胞(特に、造血前駆細胞および内皮前駆細胞)の増殖を調整する方法を含む。In vitro法のためには、特に臍帯血または骨髄から単離されたCD34+前駆細胞が考えられる。
また、CD34+前駆細胞の増殖を刺激するための本発明のin vitroおよびin vivo法も、造血/骨髄形成または内皮細胞増殖を調整するために他のポリペプチド因子とともに本発明のポリペプチドを(同時にまたは逐次)用いる方法を含むことは下記の詳細な説明から明らかとなろう。かかる他の因子は限定されるものではないが、コロニー刺激因子(「CSFs」例えば、顆粒球-CSF(G-CSF)、マクロファージ-CSF(M-CSF)、および顆粒球-マクロファージ-CSF(GM-CSF))、インターロイキン-3(IL-3、多コロニー刺激因子とも呼ばれる)、他のインターロイキン類、幹細胞因子(SCF)、VEGFのような他のポリペプチド因子、および既に記載されている、当業者に公知なそれらの類似体を含む。概略は、The Cytokine Handbook, Second Ed, Angus Thomson(editor), Academic Press(1996); Callard and Gearing; The Cytokine FactsBook, Academic Press Inc.(1994); and Cowling and Dexter, TIBTECH, 10(10);349-357(1992)を参照。本発明のポリペプチドの不在下で必要とされる前記因子を少量使用する限り、前駆細胞または骨髄形成細胞増殖因子または1以上の前記因子を有する補因子としての本発明のポリペプチドの使用は、予め得難い骨髄形成作用の有効性を高め、かつ/または予め獲得できる骨髄形成用の有効性を高めるであろう。
方法に加えて、本発明は前段で同定された1以上の因子との混合物中に本発明のポリペプチドを含んでなる組成物を含む。好ましい組成物はさらに医薬上許容される希釈剤、アジュバント、賦形剤、または担体を含んでなる。本発明はまた、(a)封入された少なくとも1つの本発明のポリペプチド(b)1以上の前記ポリペプチド(例えば、単位投与形で、相互に混合しない)を含んでなるキットを含む。
本発明のポリペプチドまたは抗体のin vivo投与を含む方法に対して、適当な医薬上許容されるビヒクル、例えば医薬上許容される希釈剤、アジュバント、賦形剤、または担体を用いる適当な方法のいずれかでポリペプチドまたは抗体を投与することを考えるものである。このように、本発明はさらに本発明の1以上のポリペプチドまたは抗体を含んでなる組成物、例えば医薬組成物を含む。医薬組成物とは、限定されるものではないが、香味料、保存料;顆粒化剤および崩壊剤;結合剤;時間遅延物質;オイル;懸濁化剤;分散助剤または湿潤剤;抗酸化剤;乳化剤などをはじめとする慣例の無毒な担体、賦形剤(例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、リン酸ナトリウム、カオリン、水)、アジュバント、ビヒクルなどを含む一回量処方で哺乳類宿主へ、例えば、経口、局所、非経口(皮下注射、静脈内、筋肉内、槽内注射または注入技術を含む)、吸入剤噴霧による、または直腸投与される組成物を意味する。
さらに本発明は、前記のいずれかの方法において使用される薬剤の製造のための、本発明のポリペプチドの使用法を提供する。同様に、さらに本発明は、前記に示した条件および疾病状態のいずれかの治療に用いる薬剤の製造のための、本発明のポリペプチドの使用法を提供する。このような方法は、所望により、薬剤の製造のためのさらなる生物学的に活性な成分(例えば、VEGF、PIGF、G-CSFなど)の使用を含む。
前記の方法のためのポリペプチドの有効量は、経験に基づき、標準を用いて、in vitroおよびin vivoの用量-反応アッセイにより決定される。それに加え、本明細書に記載した実験データは、所望の生物学的反応を達成するために有効な、本発明のポリペプチドの量に関して指針を提供する。例えば、成熟VEGF-Cの1形態に対して決定された解離定数(VEGFR-3に対してはKD=135pMおよびVEGFR-2に対してはKD=410pM)は、生物学的作用を達成するために必要なVEGF-C濃度に関して指標を与える。なぜなら、このような解離定数は、VEGF-Cポリペプチドの半量が、VEGF-Cの生物学的作用が介在する受容体に結合している濃度を表すからである。0〜8ピコモルのVEGF-Cが皮内注射されるin vivo Milesアッセイの結果から、局在する生物学的作用を誘発するためには、ピコモル量の成熟VEGF-Cで十分であるという指標が与えられる。成熟VEGF-Cで処理されたウシ毛細血管上皮細胞への、3H-チミジン取り込みのin vitro分析により、10〜1000pM濃度において、細胞増殖に対する細胞VEGF-C作用の増大が示された。ひとまとめにすると、このデータは、完全なプロセッシングを受けたVEGF-Cの100〜1000pMの局在濃度は、in vivoにおいてVEGF-Cの生物学的活性を有することを示唆する。その他の本発明のポリペプチドの有効濃度は、一般に、適切な受容体に対する、ポリペプチドの解離定数に相関すると予想される。薬物動力学的および薬理学的分析により、本発明のポリペプチドの、所望の局所または全身濃度を達成するための好ましい用量、投与処方および投与方法が明らかとなる。
また、本発明のポリペプチドは、結合アッセイにおける活性受容体またはリガンドの存在を検出するための生体組織検査材料の分析により、将来の転移のリスクを数量化するために用いられてよい。このような結合アッセイは、検出可能な本発明の標識ポリペプチドまたは、例えば標識抗体と結合させた非標識ポリペプチドの使用を含んでよい。このような物質を含んでなるキットは、本発明の範囲内に含まれる。
本発明はまた、請求の核酸(すなわち、ポリヌクレオチド)の、内皮細胞疾患のスクリーニングに使用する方法を提供する。好ましい具体例では、本発明は、被験体からの内皮細胞核酸サンプルの供給工程、VEGF-Cをコードする遺伝子とハイブリダイズできる(および好ましくはVEGF-C mRNAとハイブリダイズできる)本発明のポリヌクレオチドと、上皮細胞核酸サンプルとの接触、内皮細胞核酸およびポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーションレベルの定量ならびに、疾患とハイブリダイゼーションレベルの相関を含んでなる、哺乳類被験体における内皮細胞疾患のスクリーニングする方法を提供する。好ましい哺乳類被験体、および内皮細胞核酸の供給源はヒトである。ポリヌクレオチドによるスクリーニング法によって考えられる疾患は、限定されるものではないが、前記のリンパ管疾患のような血管疾患および低酸素症が含まれる。
その他の(非ヒト)VEGF-C型をコードする、精製かつ単離されたポリヌクレオチドもまた、本発明の態様であり、それによりコードされるポリペプチド、および非ヒトVEGF-C型に結合する抗体もそうである。好ましいVEGF-Cの非ヒト型としては、鳥類および哺乳動物種をはじめとする他の脊椎動物種由来の形態である。哺乳類型が非常に好ましい。このようにして、本発明は精製かつ単離された哺乳類のVEGF-Cポリペプチドを包含し、また、そのようなポリペプチドをコードする、精製および単離されたポリヌクレオチドも包含する。
1つの具体例では、本発明は、その配列が、推定されるマウスVEGF-C前駆体に一致する、配列番号11の残基1〜415のアミノ酸配列を有する精製かつ単離されたポリペプチドを含む。推定されるマウスVEGF-C前駆体は、ヒトのプレプロポリペプチドのプロセッシングと同様にして、成熟マウスVEGF-Cにプロセッシングされると信じられている。このようにして、関連ある態様では、本発明は、Flt4受容体チロシンキナーゼ(例えば、ヒトまたはマウスFlt-4受容体チロシンキナーゼ)と高い親和性で結合することができる、精製かつ単離されたポリペプチドを包含し、そのポリペプチドは、配列番号11の残基1〜415のアミノ酸配列を有する精製かつ単離されたポリペプチドの断片を含んでなり、その断片はFlt4受容体チロシンキナーゼと高い親和性をで結合することができる。さらに本発明は、前記のポリペプチドおよび、配列番号10で示される配列の総てまたは一部を含んでなる核酸などの、前記のポリペプチドをコードする精製かつ単離された核酸の多量体を包含する。
もう1つの具体例では、本発明は、精製かつ単離されたウズラVEGF-Cポリペプチド、生物学的に活性な断片およびそれらの多量体、ならびに前記のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを包含する。
野生型タンパク質の生物学的特性を改変するためには、他の種由来のVEGF-Cポリペプチドを、ヒトVEGF-C変異体に関して本明細書に記載された方法により、改変すればよい。例えば、以下に記載するヒトVEGF-C△C156変異体のための方法に従い、配列番号11の152位または配列番号13の155位におけるシステインの除去により、VEGF-2結合特性の改変が期待される。
さらにもう1つの具体例では、本発明は、天然の宿主細胞において、VEGF-Cがかかる細胞中で発現される条件下において、VEGF-C遺伝子または他の機能し得る形で連結したタンパク質コーディング遺伝子の発現を誘導することができるVEGF-Cプロモーターを含んでなるDNAを包含する。このように、本発明は、VEGF-Cプロモーター配列を含んでなる精製核酸を包含する。本明細書に記載されているゲノムクローンλ5は、VEGF-C翻訳開始コドンの上流に5kb以上のヒトゲノムDNAを含んでなり、かつ、本発明のプロモーターDNAを含む。約2.4kbの、この上流配列は、配列番号48に示されている。このように、1つの具体例において、本発明は、配列番号48の一部を含んでなる精製核酸を包含し、その部分は、天然の宿主細胞においてVEGF-Cが発現される条件下で、機能し得る形で連結されたタンパク質コーディング遺伝子の発現を誘導することができる。同様に、本発明は、ヒトVEGF-C以外のタンパク質をコードする配列に機能し得る形で連結された、本発明のVEGF-Cプロモーター核酸を含んでなるキメラ核酸も包含する。
以下、本発明のさらなる態様および具体例を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
図1は、血管新生および脈管形成に関与する主要な内皮細胞受容体チロシンキナーゼおよび増殖因子を模式的に示している。免疫グロブリン様ドメイン(IGH)、真皮増殖因子相同ドメイン(EGFH)、フィブロネクチンIII型ドメイン(FNIII)、トランスメンブラン(TM)および傍膜(JM)ドメイン、チロシンキナーゼ(TK1,TK2)ドメイン、キナーゼ挿入ドメイン(KI)およびカルボキシ末端ドメイン(CT)を含む主要な構造的ドメインが示されている。
図2は、推定アミノ酸配列PDGF-A(配列番号53)、PDGF-B(列番号54)、PIGF-1(配列番号55)、VEGF-B167(配列番号56)、VEGF165(配列番号57)およびFlt4リガンド(VEGF-C、(配列番号8))の比較を示している。
図3は、VEGF-Cプロモーター-リポーター構築体およびHeLa細胞におけるその活性を模式的に示している。VEGF-C開始コドンおよび約6kbの上流配列を含むゲノムクローンの制限地図が構築体の上に描かれている。構築体は、推定されるVEGF-CプロモーターをpGL3ベクター(プロメガ)中のルシフェラーゼに結連結し、リン酸カルシウム媒介トランスフェクション法により、HeLa細胞に導入して作製される。得られたルシフェラーゼ活性は、プロモーター比活性の測定値を得るために、プロモーターを含まないpGL3塩基性構築体を用いてそのレベルを比較した。ルシフェラーゼ活性は、この対照対構築体の活性の比として、グラフで表されている。構築体がHeLa細胞にトランスフェクトされ、細胞を24時間飢餓状態にさせた後に、4時間の血清刺激を行うという実験におけるルシフェラーゼ活性の数値比も示されている(ルシフェラーゼ活性は、血清飢餓細胞に対する血清刺激細胞の活性の比として表される)。
図4は、競合結合アッセイの結果が模式的に示されている。VEGF165(黒三角:▼)、野生型VEGF-C(黒丸:●)、および3つのVEGF-C変異体[VEGF-C R226,227S(白四角:□);VEGF-C△N△CHis(白丸:○);およびVEGF-C△N△CHisC156S(白三角:△)]の、VEGFR-2およびVEGFR-3との結合を、125I-VEGF-C△N△CHisと競合する能力が示されている。
図5には、ヒト(配列番号:8)、ネズミ(配列番号:11)およびウズラ(配列番号:13)VEGF-Cポリペプチドのアミノ酸配列を、類似性を示すように並べて示してある。3つの種総てに保持されている残基は太字で示されている。
図6A-Cには、トランスフェクトされた293 EBNA細胞により生成された、種々の型の組換えVEGF-Cの電気泳動分画が示されている。図6Bには、偽(M)トランスフェクト細胞、野生型(wt)VEGF-C cDNAでトランスフェクトされた細胞、およびVEGF-C変異体のVEGF-C-R102SをコードするcDNAでトランスフェクトされた細胞から生成されたポリペプチドの、非還元条件下での電気泳動分画が示されている。図6Bにおいて同定された各バンドを切り取り、別個のレーン中で、還元条件下、電気泳動分画に付した。wtVEGF-Cに相当するバンドの分画は図6Cに示されている。
図7A-Bには、非還元ゲル電気泳動により明らかとなった野生型および変異型組換えVEGF-Cの形態およびサイズが示されている。図7Aは、培地中に分泌されたVEGF-Cの型を示している;図7Bは、細胞により保持されていたVEGF-C型を示す。対照として、偽(M)トランスフェクト細胞を供した。
図8A-Bは、抗血清882および抗血清905を用いて免疫沈降させた標識VEGF-C型のパターンの比較を表す。隣接するレーンは、還元およびアルキル化を受けた(+でマークされたレーン)、または受けなかった(-でマークされレーン)免疫沈降物を含んだ。
図9は、VEGF-Cのタンパク質分解工程の図式モデルである。VEGF-Cポリペプチドの領域は、以下のように示されている:単一配列=黒四角;VEGF-相同ドメイン=網掛け四角;N末端およびC末端プロペプチド=それぞれドットおよび白四角。
VEGF-相同ドメインにおいて保持されているシステイン残基は、ドットで示されている(鮮明にするため、C末端プロペプチドのシステイン残基はマークされていない)。N結合グリコシル化の推定部位は、Yの記号で示されている。数字は、還元条件下において、SDS-PAGEにより測定された、相当するポリペプチドのおおよその分子量(kDa)を示している。ジスルフィド結合は、-S-S-で示され;非共有結合は点線で示されている。クエスチョンマークは、可能性のあるα非共有結合の存在を示している。タンパク質分解による小画分のジスルフィド結合した21kDa型の形成は、図には示されていない。いくつかの中間型もまた、図を単純化するために除外した。特に、唯一の前駆体ポリペプチドは最初に切断されている。この図は、その他の中間型、例えば21kDa+31kDa、31kDa+31kDa+29kDaが存在しないことを示唆するものではない。
図10は、ヒトおよびマウスVEGF-Cアミノ酸配列の比較を表す。マウスVEGF-Cのアミノ酸配列は一番上の列に示し、ヒト配列との差異はその下にマークされている。矢印は、シグナルペプチダーゼのための推定切断部位を示す;BR3PモチーフならびにCR/SCモチーフは枠で囲まれ、保存されているシステイン残基は、配列の上を太字でマークしてある。アルギニン残基158も太字でマークしてある。番号は、マウスVEGF-C残基をさす。
図11Aおよび11Bは、ヒト(11A)およびネズミ(11B)VEGF-C遺伝子のゲノム構造を表す。エキソン−イントロン連結配列は、エキソンおよびイントロンの長さとともに表してある。イントロン配列は、下部のケースの文字として表してある。VEGF−C cDNAに認められるオープンリーディングフレームのヌクレオチドは、トリプレットで、上部のケース文字として示してある(連結部においてコードされたコドンに相当する)。
図12は、ヒトVEGF-C遺伝子におけるエキソン−イントロン組織を表す。7つのエキソンは白四角で表し、エキソンのサイズは塩基対で表してある。イントロンは線で表し、イントロンのサイズは(塩基対)線上に表してある。推定される2.4kbの成熟mRNAの5’および3’非翻訳配列は、陰をつけた四角で表してある。VEGF-C遺伝子を特徴づけるために利用されるゲノムクローンの局在は、遺伝子地図の下部に表してある。
発明の詳細な説明
本明細書は、新規血管内皮増殖因子および、ヒト前立腺癌細胞系列PC-3から調製されたcDNAライブラリーからの、この新規増殖因子をコードするDNAのクローン化が記載されている。単離されたcDNAは、タンパク質分解プロセッシングを受け、細胞培養液に分泌されるタンパク質をコードする。その過程は、以下に詳細に記載されている。VEGF-Cとして示される分泌タンパク質は、細胞外ドメインに結合し、Flt4(VEGF-3)およびKDR/flk-1(VEGF-2)双方のチロシン自己リン酸化を誘導する。対照的に、VEGFおよびPIGFは双方とも、VEGF-3との高い親和性結合をせず、自己リン酸化も誘発しない。VEGF-Cもまた、内皮細胞のコラーゲンゲルへの移動を刺激し、in vivoにおける血管透過性を誘導する。トランスジェニックマウスにおいては、VEGF-Cはリンパ内皮細胞の増殖を誘導し、中性顆粒球の増加を引き起こす。VEGF-C変異体および類似体の実験、ならびにVEGF前駆体の実験に基づき、1以上のVEGF-C前駆体(シグナルペプチドを除き、配列番号8の残基32〜419の完全なアミノ酸配列を有する、最も大きな推定天然VEGF-C前駆体)は、VEGF-3を刺激することができる。
プレプロ-VEGF-CをコードするcDNA配列の提供に加え、本発明の適用はまた、生物学的活性のために必要なVEGF-Cアミノ酸配列部分、および変性した場合、VEGF-Cの生物学的活性を調整する(アップレギュレートまたは阻害)であろう部分(の1以上のアミノ酸)に関する重要な指針を提供する。このような変性は、組換えDNAならびに、VEGF-CをコードするcDNAの位置指向突然変異およびその結果修飾されたcDNA組換え発現のようなタンパク質技術より容易に達成できる。当業者はまた、タンパク質組換え体の生成において、所望の生物学的活性を有するポリペプチドをコードする配列とともに、付加配列が発現されてよい。例えば、付加アミノ酸がアミノ末端、カルボキシ末端に加えられてよく、またはポリペプチド配列に挿入されてよい。同様に、内因性/天然タンパク質のある残基を欠失している一方で所望の生物学的活性は保持している、所望の生物学的に活性なタンパク質の欠失変異体が組換えにより発現可能である。さらに、組換えタンパク質変異体が、所望の生物学的活性を排除しない、保存的アミノ酸置換をもって作出されてよいことは十分公知である(限定されるものではないが、1以上のアミノ酸と類似した化学的側鎖を有する他のアミノ酸との置換を含む(酸性、塩基性、脂肪族、脂肪族ヒドロキシル、芳香族、アミドなど)。従って、VEGF-Cのこのような改変は、本発明の範囲内で、VEGF-C同等体であると予想される。
以下にその詳細を記載するように、推定されるプレプロVEGF-Cは、推定分子量46,883であり;推定されるプレプロVEGF-Cプロセッシング中間生成物は、約32kDの観察分子量を有し;コンディショニング培地から単離された成熟VEGF-Cの、還元条件下におけるSDS-PAGEにより評価された分子量は約23kDである。精製および組換えVEGF-Cの観察分子量の差異の主要な部分、ならびにVEGF-Cオープンリーディングフレーム(ORF)によりコードされるプレプロVEGF-Cの推定分子量は、プレプロVEGF-Cポリペプチドのアミノ末端およびカルボキシル末端領域における配列の、タンパク質分解による除去に起因する。PDGFの構造に関する実験(Heldin et al., Growth Factors 8:245-52(1993))からの推定により、受容体結合およびVEGF-Cによる活性化のために重要な領域が、VEGF-Cタンパク質の分泌型中に見出されるアミノ酸残基104〜213中に含まれることが示唆される(すなわち、推定プレプロリーダー配列およびいくつかのカルボキシ末端配列を欠く形態)。23kDポリペプチド結合VEGF-3は、VEGF-CのVEGF相同ドメインと一致する。生合成の後、未完成のVEGF-Cポリペプチドは、推定VEGF-Cアミノ酸配列において同定された、3つの推定N結合グリコシル化部位においてグリコシル化されてよい。N結合グリコシル化のような修飾を包含するポリペプチドが、本発明の態様として意図されるものである。
このファミリーの他のリガンドと比較して、VEGF-Cポリペプチドの長さを増大させるカルボキシル末端アミノ酸配列は、バルビアニ環3タンパク質(BR3P)配列のシステイン残基を思わせるのスペーシングパターンを示す(Dignam et al.., Gene, 88:133-40(1990);Paulsson et al., J. Mol. Biol., 211:331-49(1990))。この新規の、VEGF-CのC末端シルクタンパク質様構造モチーフは、生合成の後に切断除去される独立したドメイン中に折り畳まれていてもよい。興味深いことに、BR3P型の少なくとも1つのシステインモチーフも、VEGFのカルボキシル末端に見出される。以下に詳細に説明されるように、推定される前駆体および推定される完全にプロセッシングされたVEGF-Cは双方とも細胞培養液中に検出され、このことは、細胞プロテアーゼによる切断を示唆している。VEGF-C単離体のアミノ末端およびカルボキシ末端配列の決定を行い、タンパク質分解プロセッシング部位を同定した。プロVEGF-C分子の種々のVEGF-Cに対して生じた抗体は、前駆体と生産物の関係および比率、それらの細胞分布ならびに、プロセッシングおよび分泌の反応速度を決定するために用いられる。
VEGF-Cは、8個のシステイン残基の保存パターンを有し、これがPDGFに類似した逆行性で二量体の生物学的に活性な分子を作る、鎖内および鎖間のジスルフィド結合の形成にあずかっている可能性がある。鎖間のジスルフィド架橋に関与しているシステイン残基の突然変異解析により、PDGFとは対照的に、VEGF二量体は、生物学的活性を維持するためには、これらの共有結合による相互作用により、ともに会合している必要がある。VEGF-Cポリペプチド鎖のジスルフィド結合は、非還元条件下でのVEGF-Cの分析により明らかとなったが、組換えタンパク質もまた、「完全にプロセッシングされた」リガンド活性VEGF-C型を含み、これはポリペプチド間にジスルフィド結合を持たない(図9参照)。
VEGFおよびVEGF-C間を区別するVEGFR-3は、構造において、VEGFR-1およびVEGFR-2と密接に関係している。Finnerty etal., Oncogene,8:2293-98(1993);Galland et al., Oncogene, 8:1233-40(1993);Pajusola et al., Cancer Res., 52:5738-43(1992)。VEGFR-3を除いて、VEGFR-2チロシンキナーゼはまた、VEGF-Cに応答して活性化される。VEGFR-2が介在するシグナルは、形態学的に驚くべき変化、アクチン再構成およびこの受容体を過剰発現するブタ大動脈内皮細胞の膜の波打ちを引き起こす。これらの細胞において、VEGFR-2はまた、リガンド誘導性の化学走性および有糸***を媒介した。Waltenberger et al., J. Biol. Chem, 269:26988-95(1994)。同様に、受容体キメラCSF-1R/VEGFR-3は、NIH 3T3繊維芽細胞において異所で発現した場合は有糸***を誘発したが、ブタ大動脈内皮細胞においてはそうではなかった(Pajusola et al., 1994)。これらの結果と一致して、VEGFR-2mRNAを発現するが、VEGFR-1またはVEGFR-3mRNAはごく微量かまたは全く発現しないウシ毛細血管内皮(BCE)細胞は、VEGF-Cによる刺激による移動促進が認められた。コラーゲンゲル中のBCE細胞培養物の光学顕微鏡観察もまた、VEGF-Cがこれらの細胞の増殖を刺激することを示唆している。このように、データは、リガンドのVEGFファミリーおよび受容体が、それらのシグナル伝達において重要な特異性を示すことを表している。
VEGFR-3の発現パターン(Kaipainen et al., Proc. Natl. Acad. Sci.(USA)、92:3566-70(1995)は、VEGF-Cが胚形成期において静脈およびリンパ管系の形成に機能している可能性があることを示唆している。本明細書において示されている成人組織におけるVEGF-Cの構成的発現は、さらに、この遺伝子産物がまた、VEGFR-3が発現されるリンパおよびある静脈内皮の分化した機能の維持に関与していることを示唆する(Kaipainen et al., 1995)。リンパ毛細管は十分に形成した基底板を持たず、シルク様BR3Pモチーフが組織におけるVEGF-Cの利用率を調整できる分子構造の作出に関与しているという興味深い可能性を有している。しかしながら、ここに示したように、VEGF-Cはまた、成人の組織ではあまり豊富ではないが、胚組織の血管芽および分枝脈管の増殖内皮細胞において豊富であるVEGFR-2も活性化する。Millauer et al., Nature, 367:576-78(1993)。これらのデータは、VEGFR-2が血管新生および脈管形成の主要なレギュレーターであることを示唆している。このように、VEGF-Cは、リンパ系内皮に対して固有の作用を有し、VEGFとともに脈管形成およびおそらくいくつかのタイプの内皮細胞の透過性の調節におけるさらに重複する機能を有する。VEGF-CはVEGFR-2を刺激し、内皮細胞の移動を促進するので、VEGF-Cは血管およびリンパ管の脈管形成の誘発剤として、外傷の治癒、組織移植、眼の疾患、動脈梗塞の回りおよび梗塞の後に損傷した組織中の副行血管形成において有用であろう。
これまでに同定された脈管形成を促進する増殖因子には、繊維芽細胞増殖因子、肝臓細胞増殖因子/分散因子、PDGFおよびTGF-αが含まれる(例えばFolkman, Nature Med., 1:27-31(1995);Friesel et al., FASEB J., 9:919-25(1995);Mustonen et al., J. Cell Biol., 129:895-98(1995)を参照)。しかしながら、VEGFは、内皮細胞に相対的に特異的な唯一の増殖因子であった。新しく同定された因子VEGF-B[Olofsson et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 93:2578-81(1996)]および、VEGF-Cはこのように、血管新生、脈管形成、透過性および、おそらくまた他の内皮機能のための、特異的で過剰な正のシグナルの複雑性に対する、発明者らの理解を増大させる。ノーザンブロッティングを用いる発現試験により、心臓および骨格筋における豊富なVEGF-Cの発現が示された;胎盤、卵巣、小腸、胸腺、腎臓、前立腺、脾臓、精巣および大腸のような他の組織もこの遺伝子を発現する。一方、PIGFは、圧倒的に胎盤において発現され、VEGF、VEGF-BおよびVEGF-Cの発現パターンは多くの組織中で重複しているが、このことは、VEGFファミリーのメンバーがヘテロ二量体を形成し、それらの生理学的機能を働かせるために相互作用することを示唆している。
マウスゲノム中のVEGF受容体遺伝子座の不活性化を導く標的突然変異は、VEGFR-Iが、血管内皮を形成する内皮細胞の適切な組織に必要であることを示し、一方VEGFR-2は内皮細胞および造血細胞双方の発生に必要である。このことは、VEGFファミリーの4つの遺伝子は、血管の先天異常または心臓疾患を引き起こす突然変異を標的とし得ることを示唆している。
以下、実施例により本発明の好ましい具体例を説明するが、実施例には本発明の抗VEGF-C、VEGF-C変異体および類似体、VEGF-Cをコードする核酸、ならびに抗VEGF-C抗体の単離、同定、および機能が示されている。
実施例1
pLTRF41発現ベクターの作製
2形態のFlt4受容体チロシンキナーゼ(VERGFR-3)cDNA(Flt4短鎖型(Flt4s)、Genbank受託番号X68203、配列番号1;およびFlt4長鎖型(Flt4l)、Genbank受託番号X68203およびS66407、配列番号2)の同定および単離は、引用することにより本明細書の一部とみなされる、1994年11月14日に出願された米国特許出願第08/340,011号で報告された。pLTRFlt4lで示されるFlt4発現ベクター(Flt4の長鎖型をコードする)は、総てが引用することによりそのまま本明細書の一部とみなされる1997年2月13日にPCT公報WO 97/05250として公表された1996年8月1日に出願された同一所有のPCT特許出願PCT/FI96/00427および1996年6月28日に出願された同一所有の米国特許出願第08/671,573号;1996年2月14日に出願された第08/601132号;1996年1月12日に出願された第08/585,895号;および1995年8月1日に出願された第08/510,133号に記載されたようにして、Makela et al., Gene, 118:293-294(1992)で報告されたpLTRpoly発現ベクター(Genbank受託番号X60280、配列番号3)およびFlt4cDNAを用いて構築した。
実施例2
Flt4でトランスフェクトされた細胞の作製および解析
DOTAPリポソームに基づくトランスフェクション試薬(Boehringer-Mannheim, Mannheim, Germany)を用い、NIH3T3細胞(60%密集)を5マイクログラムのpLTRFlt4l構築体およびネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子を含有する、0.25マイクログラムのpSV2neoベクター(Southern et al., J. Mol. Appl. Genet., 1:327(1982))で同時トランスフェクトした。トランスフェクション後1日めに、細胞を0.5mg/mlのジェネティシン(GIBCO, Grand Island, N.Y.)を含有する選択培地に移した。ジェネティシン耐性細胞のコロニーを、Flt4タンパク質の発現に関して単離および解析した。3.3% SDSおよび125mM Tris、pH6.8を含有する沸騰溶解緩衝液中で細胞を溶解した。サンプルのタンパク質濃度は、BCA法(Piece, Rockford IL)によって測定した。各細胞溶解液由来の約50マイクログラムのタンパク質を、6% SDSポリアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)およびFlt4のカルボキシ末端に対する抗血清を用いるイムノブロッティングにより、Flt4の存在に関して解析した。ウエスタンブロットにおけるシグナルは、ECL法(Amersham)を用いて現した。
抗Flt4抗血清の作製に関しては、Flt4短鎖型の40のカルボキシ末端アミノ酸残基をコードするFlt4cDNA断片:NH2-PMTPTTYKGSVDNQTDSGM VLASEEFEQI ESRHRQESGFR-COOH(配列番号4)を、657bp EcoRI断片として、グルタチオン-S-トランスフェラーゼをコードする領域を含むフレームにおいて、pGEX-1λT細菌発現ベクター(Pharmacia LKB, Inc., Uppsala, Sweden)中へクローン化した。得られたGST-Flt4S融合タンパク質は大腸菌(E. coli)で生産し、グルタチオン-S-Sepharose 4Bカラムを用いるアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。精製したタンパク質は凍結乾燥し、リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)に溶解し、フロイントのアジュバントと混合し、次いで当技術分野において標準的な方法(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988)を用い、2週間間隔でウサギの免疫化に用いた。追加抗原による4回目の免疫化の後、トランスフェクト細胞由来のFlt4の免疫沈降のため抗血清を用いた。また、Flt4を発現する細胞クローンもリガンド刺激分析に用いた。
実施例3
Flt4 ECバキュロウイルスベクターの構築、ならびにその産物の発現および精製
総て引用することにより本明細書の一部とみなされる、1997年2月13日にPCT公報WO 97/05250として公表された1996年8月1日に出願された同一所有のPCT特許出願PCT/FI96/00427および1996年6月28日に出願された同一所有の米国特許出願第08/671,573号;1996年2月14日に出願された第08/601,132号;1996年1月12日に出願された第08/585,895号;および1995年8月1日に出願された第08/510,133号に記載されたように、Tessier et al., Gene 98:177-183(1991)に記載のpVTBacプラスミドおよび実施例1に記載のFlt4cDNAを用い、Flt4の細胞外ドメイン(Flt4 EC)の発現を容易にするためにバキュロウイルス発現ベクターを構築した。精製を容易にするため、Flt4ECをコードする配列に、6xHisタグをコードするヌクレオチド配列を機能し得る形で連結した。
Flt4 EC構築体は、リポフェクションにより、バキュウロウイルスゲノムDNAとともにSF-9細胞へとトランスフェクトした。組換えウイルスは当技術分野において標準的な方法を用いて、精製、増幅し、High-Five細胞(Invitrogen, San Diego CA)の感染に使用した。Flt4細胞外ドメイン(Flt4EC)は、組換えFlt4細胞外ドメインのカルボキシ末端にコードされている6xHisタグの結合および溶出については製造業者の指示(Qiagen)に従い、Ni-NTAアフィニティークロマトグラフィーを用いて、感染High-Five細胞の培養培地から精製した。
実施例4
コンディショニング培地からのFlt4リガンドの単離
本発明のヒトFlt4リガンドは、血清フリーHam’s F-12 Nutrient混合物(GIBCO)(7%ウシ胎児血清(FCS)を含有)中のPC-3前立腺癌細胞系統(ATCC CRL 1435)によりコンディショニングした培地から単離した。細胞をこの培地に再び播種し、増殖させ、次いで血清フリー培地に変えた。コンディショニング培地の調製およびそれらの中でFlt4チロシンリン酸化を刺激した成分の同定は、総て引用することによりそのまま本明細書の一部とみなされる、1996年8月1日に出願された同一所有のPCT特許出願PCT/FI96/00427および1996年6月28日に出願された同一所有の米国特許出願第08/671,573号;1996年2月14日に出願された第08/601132号;1996年1月12日に出願された第08/585,895号;1995年8月1日に出願された第08/510,133号;および1994年11月14日に出願された第08/340,011号に詳細に記載されている。コンディショニング培地のFlt4リン酸化を刺激する能力は、PC-3コンディショニング培地がCentricon-10濃縮器(Amicon)を用いて4倍濃縮された場合に顕著に上昇した。CNBr活性化セファロールCL-4B(Pharmacia;Flt4ECドメイン約1mg/mlセファロース樹脂)に結合させた50マイクロリットルのFlt4細胞外ドメインで、濃縮したPC-3コンディショニング培地を前処理すると、Flt4チロシンリン酸化が完全に無効になった。このコンディショニング培地を同様に非置換セファロースCL-4Bで前処理しても、刺激活性には作用しなかった。また、濃縮後に得られた流出物には10,000未満の分子量のタンパク質が含まれており、これがFlt4のリン酸化を刺激することはなかった。
もう1つの具体例では、非コンディショニング培地、Flt4リガンドを発現するPC-3細胞からの培地、または50ng/mlのVEGF165もしくは50ng/mlのPIGF-1のじうれかを含有する非コンディショニング培地を用い、LTRFlt4lを発現する形質転換NIH 3T3細胞におけるFlt4の自己リン酸化の比較を行った。細胞を溶解し、抗Flt4抗血清を用いて免疫沈降させ、次いで抗ホスホチロシン抗体を用いるウエスタンブロッティングにより解析した。Flt4リガンドを発現するPC-3コンディショニング培地(レーンFlt-4L)だけがFlt4の自己リン酸化を刺激した。
これらの実験により、PC-3細胞はFlt4の細胞外ドメインと結合し、次いでこの受容体を活性化するリガンドを産生するが示された。
実施例5
Flt4リガンドの精製
アフィニティークロマトグラフィーにおいて、組換えにより産生されたFlt4細胞外ドメイン(Flt4)を用い、実施例4で特徴付けたようなヒトPC-3細胞によって発現したリガンドを精製かつ単離した。
2回の血清フリーコンディショニング培地回収物は総量8リットルからなり、PC-3細胞の密集層を含む15cm径の培養ディッシュの500密集塊から回収した。コンディショニング培地は10,000 x gでの遠心分離により清澄化し、次いで製造者の指示に従い、10kDカットオフのOmega限外濾過膜を備えたUltrasette Tangential Flow Device(Filtron, Northborough, MA)を用いて80倍に濃縮した。組換えFlt4細胞外ドメインは、組換えバキュウロウイルス細胞系で発現させ、Ni-アガロース(Qiagenから入手したNi-NTAアフィニティーカラム)上のクロマトグラフィーにより精製した。精製した細胞外ドメインをCNBr活性化Sepharose CL-4Bに5mg/mlの濃度で結合させ、リガンドアフィニティークロマトグラフィー用のアフィニティーマトリックスとして使用した。
回転させた試験管中で、室温にて3時間、濃縮したコンディショニング培地を2mlの組換えFlt4細胞外ドメイン-Sepharoseアフィニティーマトリックスとともにインキュベートした。一連の精製工程は総て+4℃で行った。次いでこのアフィニティーマトリックスを内径15mmのカラムに移し、100mlのPBSおよび50mlの10mM Na-リン酸塩緩衝液(pH6.8)で連続的に洗浄した。結合物質は、100mMグリシン-HClを用い、pH4.0、2.4および1.9の連続する6mlの溶出により段階的に溶出させた。溶出液の2ml画分をいくつか、0.5mlの1M Ni-リン酸塩(pH8.0)を含有する試験管に回収した。画分は直ちに混合し、1mM Tris-HCl(pH7.5)中で透析した。各75μlのアリコートをそれらのFlt4のチロシンリン酸化を刺激する能力に関して分析した。限外濾過物、リガンドアフィニティークロマトグラフィー前後の濃縮コンディショニング培地の100μlアリコート、ならびに洗浄中にFlt4細胞外ドメイン-Sepharoseマトリックスから遊離した物質の15倍濃縮画分も、それらのFlt4チロシンリン酸化を刺激する能力に関して分析した。
濃縮コンディショニング培地は、Flt4を過剰発現するトランスフェクトNIH 3T3細胞において、顕著なFlt4のチロシンリン酸化を誘導した。培地をFlt4Sepharoseアフィニティーマトリックスに付した後に採取したコンディショニング培地においては、このような活性は認められなかった。特異的に結合したFlt4刺激物質はPBS、10mM Na-リン酸塩緩衝液(pH6.8)およびpH4.0中での洗浄後もアフィニティーマトリックス上に保持されていた。それはpH2.4で最初の2つの2ml画分に溶出した。溶出緩衝液のpHをさらに低下させても、さらなるFlt4刺激物質の遊離は見られなかった。Flt4発現細胞を非コンディショニング培地で処理した対照では、Flt4のリン酸化は認められず、同様に、分子量が10kD未満のポリペプチドを含有するコンディショニング培地の限外濾過画分でFlt4発現細胞を処理した後では、リン酸化は見られなかった。
クロマトグラフィー画分の小アリコートをSpeed Vac濃縮器(Savant, Farmingdale, N.Y.)で濃縮し、還元条件下でSDS-PAGEに付し、次いで当技術分野における標準的技術であるゲルの銀染色を行った。およそ23kDの分子量を有する(還元条件)主要なポリペプチドは、Flt4刺激活性を含有する画分で検出された。このポリペプチドは他のクロマトグラフィー画分には認められなかった。一方、これらのバンドおよび32kDの移動度を有する非常に弱いバンドの他、2つに活性画分で検出された他の総ての成分はまた、出発物質にも、またその他少量ながら濃縮後の洗浄および溶出工程にも分布していた。3回の独立したアフィニティー精製で同様の結果が得られ、このことは23kDのポリペプチドが高い親和性でFlt4と結合し、Flt4のチロシンリン酸化を誘導することを示している。
23kDのポリペプチドを含有する画分を合し、Speed Vac濃縮器内で乾燥させ、次いで12.5%ゲル中のSDS-PAGEに付した。次いでゲルから得たタンパク質Immobilon-P(PVDF)トランスファーメンブラン(Millipore, Marlborough, MA)にエレクトロブロッティングし、Coomassie Blue R-250でブロットを染色することにより視覚化した。染色された23kDバンドのみを含有する領域をブロットから切り取り、Prosite Protein Sequencing System(Applied Biosystems, Foster City, CA)でN末端アミノ酸配列解析にかけた。データは610A Data Analysis System(Applied Biosystems)を用いて解析した。解析により、単一のN末端配列、NH2-XEETIKFAAAHYNTEILK-COOH(配列番号5)が明らかになった。
実施例6
真核細胞発現ベクターにおけるPC-3細胞cDNAライブラリーの構築
ヒトポリ(A)+RNAは、oligo(dT)(III型、Collaborateve Biochemical Products, Becton-Dickinson Labware, Bedford, MA)セルロースアフィニティークロマトグラフィーを用いる一段階法により(Sambrook et al., 1989)PC-3細胞が密集した5つの15cm径ディッシュから単離した。収量は70マイクログラムであった。6マイクログラムのポリ(A)+RNAを用い、哺乳類発現ベクターpcDNAIおよびキットに含まれている説明書に従って、InvitrogenのLibrarianキットにおいて、oligo(dT)プライムcDNAライブラリーを作製した。ライブラリーは、平均挿入サイズが1.8kbである約106個の独立した組換え体を含むと見積もられた。
実施例7-9
Flt4リガンドアミノ末端をコードするcDNAの増幅
Flt4リガンドをコードするcDNAを単離するために用いられる手法は、総て引用することにより本明細書の一部とみなされる、1996年8月1日に出願された同一所有のPCT特許出願PCT/FI96/00427および1996年6月28日に出願された同一所有の米国特許出願第08/671,573号;1996年2月14日に出願された第08/601,132号;1996年1月12日に出願された第08/585,895号;および1995年8月1日に出願された第08/510,133号に詳細に記載されている。まず、変性オリゴヌクレオチドは単離されたヒトFlt4リガンドのN末端アミノ酸配列に基づき設計し(図5を参照)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)においてプライマーとして用い、PC-3cDNAライブラリー由来の(十分にプロセッシングを受けた)Flt4リガンドアミノ末端をコードするcDNA部分を増幅した。TAクローニングキット(Invitrogen)を用いて増幅したcDNA断片をpCR IIベクター(Invitrogen)へクローン化し、次いでSangerの放射性ジデオキシヌクレオチド配列決定法を用いて配列決定した。6クローンを分析し、6クローン総てが期待するペプチド(Flt4リガンド前駆体のアミノ酸残基104〜120、配列番号8)をコードする配列を含んでいた。コドン6の第3のヌクレオチドからコドン13の第3のヌクレオチドまでの領域にわたるヌクレオチド配列(PCRプライマー間の伸長領域)は6クローン総てで確認され、従ってこれはFlt4リガンドのアミノ末端部分をコードする独特の配列からの増幅産物を表すものであった。
2種のネスティッドPCR反応において、前記のPC-3cDNAライブラリーの1マイクログラムのDNAに由来する対応するcDNAの完全5’末端を増幅するために、単離ヒトFlt4リガンドのN末端をコードする独特なヌクレオチド配列に基づき、2対のネスティッドプライマー(nested primer)を設計した。約220bpの1つの主要な産物と、約270bp、150bp、および100bpの3つの少量産物が得られた。
およそ220bpの増幅断片をアガロースゲルから切り取り、TAクローニングキットを用いpCRIIベクターへクローン化し、次いで配列決定した。3種の組換えクローンを解析し、それらは配列5’
(配列番号6)を含んでいた。初めの配列はベクターを表し、下線の配列はcDNA挿入部の5’末端の増幅産物を表す。
Flt4リガンドをコードするcDNAクローンの3’部分をPCRにより増幅するために、23kDのヒトFlt4リガンドのアミノ末端をコードするクローンの増幅5’配列に基づき、2対の非重複ネスティッドプライマーを設計した。1350bpおよび570bpの大きさを有する2つのDNA断片が得られた。これらの断片をpCRIIベクターへクローン化し、クローンの挿入配列を決定した。これらの断片は双方とも、VEGF配列と相同なアミノ酸配列をコードする配列を含んでいることが判った。
実施例10
Flt4リガンドcDNAの5’PCR断片を用いるPC-3細胞cDNAライブラリーのスクリーニング
Flt4リガンドの5’末端をコードする153bp断片を、大腸菌DNAポリメラーゼIのクレノー断片(Boehringer Mannheim)を用いて[32P]-dCTPで標識した。この断片を増幅したPC-3細胞cDNAライブラリーのハイブリダイゼーションスクリーニングのためのプローブとして用いた。
このライブラリーのフィルターレプリカを、50%ホルムアミド、5x SSPE、5xデンハート液、0.1%SDSおよび0.1mg/ml変性サケ***DNAを含有する溶液中で、42℃にて20時間、放射標識プローブとハイブリダイズした。フィルターを1x SSC、0.1%SDS中で室温にて30分間2回、次いで65℃にて30分間2回洗浄し、一晩露光した。
オートラジオグラフィーに基づき、プローブとハイブリダイズしている10個の陽性組換え細菌コロニーがライブラリーから選択された。これらのコロニーからプラスミドDNAを精製し、EcoRIおよびnotI消化、次いでアガロースゲル電気泳動、その後の臭化エチジウム染色により解析した。10個のプラスミドクローンは、それぞれおよそ1.7、1.9および2.1kbのサイズの挿入配列の存在に基づき、3つの群に分類された。プライマーおよびそれに次ぐ配列決定反応のためのウォーキングプライマーとしてT7オリゴヌクレオチドを用いて、各群からのプラスミドの挿入配列を決定した。
配列解析により、総てのクローンが23kDヒトFlt4リガンドのNH2末端をコードするオープンリーディングフレームを含むことが示された。ジデオキシ配列決定はウォーキングプライマーを用いて下流方向へと続けた。2kbクローン由来の全ヒトcDNA配列および推定アミノ酸配列は、それぞれ配列番号7および8に示されている。「プレプロ」リーダー配列の推定切断部位は、配列番号8の残基102と103の間に位置する。GenBankデータベースにおける配列と比較したとき、このリーディングフレームの予測されるタンパク質産物は、図2に示したように、PDGF/VEGFファミリーの増殖因子の予測されるアミノ酸配列と相同な領域を含むことが判った。
pcDNAIベクター内に2.1kbヒトcDNAクローンを含有するプラスミドpFLT4-Lは、受託番号97231としてAmerican Type Culture Collection, 12301 Parklawn Drive, Rockvill, MD 20852に寄託されている。
実施例11
Flt4リガンドベクターのタンパク質産物によるFlt4自己リン酸化の刺激
配列番号7および8で示される配列をコードするオープンリーディングフレームを含むプラスミドpFlt4-Lの2.1kbヒトcDNA挿入配列(ヒトプレプロVEGF-C、下記参照)は、HindIIIおよびNotI制限酵素を用いてpcDNAIベクターから切り出し、分離用アガロースゲルから単離し、次いでpREP7発現ベクター(Invitrogen)中の対応部位へ連結させた。pFlt4-L挿入配列を含有するpREP7ベクターを、リン酸カルシウムトランスフェクション法(Sambrook et al., 1989)を用いて、293-EBNA細胞(Invitrogen)へトランスフェクトした。トランスフェクション後約48時間で、トランスフェクト細胞の培地を、ウシ胎児血清を除いたDMEM培地に換え、36時間インキュベートした。次いでコンディショニング培地を回収し、5000 x gで20分間遠心分離し、Centriprep 10(Amicon)を用いて5倍濃縮し、実施例4のように、LTRFlt4l(Flt4受容体)を発現するNIH 3T3細胞を刺激するのに用いた。個の細胞を溶解し、抗Flt4抗血清を用いて免疫沈降させ、抗ホスホチロシン抗体を用いるウエスタンブロッティングにより解析した。
2つの異なるディッシュのトランスフェクト細胞からのコンディショニング培地は、Flt4受容体のバックグラウンドレベルのリン酸化しか与えないmockトランスフェクト細胞からの培地に比べ、Flt4自己リン酸化を刺激した。濃縮したコンディショニング培地をSepharoseに結合させたFlt4ECドメインのスラリー20マイクロリットルに予め吸収させた場合(実施例4を参照)にはリン酸化は見られず、このことはFlt4自己リン酸化にあずかる活性が実際にFlt4リガンドにあったことを示すものである。従って、これらの結果は、およそ2.1kbの挿入配列を有し、かつ、配列番号7で示されるオープンリーディングフレームを含有する発現ベクターが、トランスフェクト細胞で生物学的に活性なFlt4リガンド(VEGF-C)として発現することを実証する。このオープンリーディングフレームによりコードされる配列は、配列番号8で示される。
配列番号8の全アミノ酸配列(残基1〜419)からなるポリペプチドの推定分子量は46,883である。配列番号8のアミノ酸残基103〜419からなるポリペプチドの推定分子量は35,881である。PC-3培養物から精製されたFlt4は、還元条件下でSDS-PAGEにより測定した際、約23kDの測定分子量を有していた。従って、Flt4リガンドmRNAは前駆体ポリペプチドへ翻訳され、そこからタンパク質分解による切断により成熟リガンドが得られると考えられた。また、Flt4リガンドは、推定Flt4リガンドアミノ酸配列(図2の下線のN残基)で確認できる共通配列と適合する3箇所の推定N結合グリコシル化部位でグリコシル化され得る。
このファミリーの他のリガンドと比較してFlt4リガンドサブユニットの推定分子量を増加させるカルボキシル末端アミノ酸配列は、Balbiani環の3タンパク質(BR3P)配列をを暗示するシステイン残基のスペーシングパターンを示す(Dignam et al., Gene, 88:133-140(1990))。このような配列はFlt4リガンド前駆体に存在する個々に折りたたまれたドメインをコードするものと考えられ、例えば、分泌、溶解度、安定性、細胞表面の局在化またはFlt4リガンドの活性の調節に関与し得る。興味深いことに、BR3T種の少なくとも1つのシステインモチーフもまた、VEGFカルボキシ末端アミノ酸配列中に見出される。
このように、Flt4リガンドmRNAはまず、プラスミドFLT4-LのcDNA挿入配列に相当するmRNAから前駆体へと翻訳され、それからタンパク質分解による切断により成熟リガンドが得られる。成熟Flt4リガンドポリペプチドを定義するためには、まず、COS細胞などの細胞内でcDNAクローン(pcDNAI発現ベクター中に寄託される)を発現させる。コードされるポリペプチド、その断片、またはGST融合タンパク質などの細菌性Flt4融合タンパク質に対して作製した抗体を用いて、Flt4リガンドのVEGF相同ドメインならびにアミノおよびカルボキシル末端プロペプチドに対して抗体を作製する。次いで、細胞の標識のために放射性チロシンを用いるパルスチェイス解析による、トランスフェクト細胞におけるFlt4リガンドの生合成およびプロセッシング、免疫沈降ならびにゲル電気泳動と続けた。プラスミドFLT4-LのcDNA挿入配列によりコードされる産物の3つのドメインに対する抗体を用い、放射性または非放射性アミノ末端配列解析用の物質を単離した。成熟VERGF-Cポリペプチドのアミノ末端配列の決定は、アミノ末端タンパク質分解性プロセッシング部位の同定を考慮したものである。カルボキシル末端ポリペプチドのアミノ末端配列を決定することよりカルボキシル末端プロセッシング部位が与えられよう。このことは、切断を回避するであろう、切断部位に隣接するアミノ酸残基の位置指定突然変異誘発により確認される。
Flt4リガンドはさらに、Flt4リガンド前駆体クローンの3’コーディング配列における連続的な3’欠失によって特徴づけられ、これにより停止コドンが導入され、その結果としてそのタンパク質産物のカルボキシ末端が切断される。このような末端切断型の活性は、例えば、LTRFlt4lを発現するNIH 3T3細胞にような培養細胞に適用した場合、末端切断型タンパク質によって誘導されたFlt4自己リン酸化を研究することによりアッセイされる。関連する血小板由来増殖因子の構造に関する研究(PDGF, Heldin et al.,Growth Factor, 8:245-252(1993))から推定すれば、Flt4リガンドによる受容体の活性化に重要な領域が、推定される102のアミノ酸プレプロリーダー(配列番号8、残基103-282)を欠く分泌VEGF-Cタンパク質の最初のおよそ180のアミノ酸残基内に、また見かけ上は最初のおよそ120のアミノ酸残基(配列番号8、残基103-223)内に含まれることが求められる。
一方、精製リガンドに関して測定された分子量とFlt4リガンドクローンのオープンリーディングフレームから推定された分子量との間の差は、可溶性リガンドがPC-3細胞にも存在するであろう選択的にスプライシングを受けたmRNAから産生され、それから単離リガンドが得られるという事実によるものと考えられる。このような選択的cDNAクローンを単離するためには、寄託クローンのcDNA断片および与えられた配列、ならびに当技術分野で標準的な、PC-3細胞cDNAライブラリー由来の選択的cDNAを単離または増幅するための技術に従って作製したプライマーを用いる。また、プラスミドFLT4-LのcDNA挿入の配列中に与えられたプライマーを用い、PC-3mRNAから直接、逆転写(RT)-PCRを用いて増幅してもよい。選択的cDNA配列は、得られたcDNAクローンから求める。また、ヒトゲノムDNAライブラリーから、当技術分野で標準的な方法とかかるクローンの配列またはそれらのサブクローン化断片を用いて、Flt4リガンドmRNA転写物に相当するゲノムクローンを単離して、対応するエキソンを明らかにすることもできる。次いで、cDNAとゲノムDNAのヘテロ二重らせん解析などの当技術分野で標準的ないくつかの方法により選択的エキソンを確認することができ、これらを次いで特性決定する。
実施例12
ヒト腫瘍細胞系統におけるVEGF-Cをコードする遺伝子の発現
Flt4リガンド(VEGF-C)に相当する転写物の発現は、HT-1080およびPC-3ヒト腫瘍細胞系統から単離されたポリ(A)+RNAを含有するノーザンブロットのハイブリダイゼーションにより解析した。プローブは2.1kbcDNAクローンの放射性標識挿入配列であった(pFlt4-L/VEGF-C、比活性108-109cpm/mgDNA)。50%ホルムアミド、5x SSPE緩衝液、2%SDS、10x デンハート液、100mg/mlサケ***DNAおよび1 x 106cpmの標識プローブ/mlを用い、42℃で一晩ブロットをハイブリダイズした。このブロットを、0.05%SDSを含有する2x SSC中で室温にて30分間2回、次いで0.1%SDSを含有する0.1x SSC中で52℃にて20分間2回洗浄した。次いでこのブロットを、補力スクリーンおよびKodak XARフィルムを用いて-70℃にて3日間露光した。両細胞系統とも、VEGFおよびVEGF-BmRNAと同時に、約2.4kbのFlt4リガンドmRNAを発現した。
実施例13
VEGF-C鎖は生合成およびジスルフィド結合の後、タンパク質分解プロセッシングを受ける
VEGF-Cオープンリーディングフレームから推定した場合、分泌したヒトVEGF-Cポリペプチドの推定分子量は46,883kDであり、このことはVEGF-CmRNAがまず前駆体へと翻訳され、それからタンパク質分解による切断により、測定された21/23kDおよび29/32kDのリガンドが得られることを示唆している。
この可能性は、VEGF-Cを発現する293 EBNA細胞の代謝標識によって検討した。まず、293 EBNA細胞をVEGF-C cDNA構築体でトランスフェクトした。発現産物は、システインおよびメチオニンを除いた培養培地に、100μCi/mlのPro-mix(商標)L-[35S]in vitro細胞標識ミックス(35S-メチオニンおよび35S-システインを含有する)を加えることにより標識した。2時間後、細胞層をPBS中で2回洗浄し、次いで培地をDMEM-0.2%BSAに置き換えた。1、3、6、12および24時間の一連のインキュベーションの後、培養培地を回収し、遠心分離によって清澄化し、濃縮し、+4℃にて一晩、ヒトVEGF-CをFlt4EC-Sepharoseのスラリー30μlに結合させ、次いでPBS中で3回、20mM Tris-HCl(pH7.5)中で2回洗浄し、アルキル化し、SDS-PAGEに付し、オートラジオグラフィーを得た。アルキル化は、25℃にて1時間、10mM 1,4ジチオトレイトール(Boehringer-Mannnheim, Mannheim, Germany)で、次いで30mMヨードアセトアミド(Fluka, Buchs, Switzerland)でサンプルを処理することによって行った。
これらの実験により、見かけの分子量が32kDの推定前駆体ポリペプチドは、ヒトVEGF-C発現ベクターでトランスフェクトされた代謝標識細胞のコンディショニング培地からのFlt4ECアフィニティーマトリックスとは結合するが、mockでトランスフェクトされた細胞からのものとは結合しないことが実証された。3時間の一連のチェイス期間中、VEGF-Cでトランスフェクトされた細胞の培養培地に集積された23kD受容体に結合するポリペプチド量は増加したが、以降は増加せず、このことは23kD型はタンパク質分解プロセッシングによって産生され、それは少なくとも一時的にトランスフェクトした細胞においては完全ではないことをしさするものである。一連の実験のにより、VEGF-Cの32kD型にはアルキル化が起こらない場合に29および32kDのポリペプチドとして移動する2成分が含まれることが示された(図6〜8)。
関連の実験では、4時間の連続代謝標識後にFlt4EC-Sepharoseを用いて単離したヒトVEGF-Cを、非還元条件下でのポリアクリルアミドゲル電気泳動により解析した。非還元条件下では分子量のより高い形態が認められ、このことはVEGF-Cポリペプチドがジスルフィド結合した二量体および/または多量体を形成し得ることを示唆している。これらの実験結果を示すゲル写真は、出典明示して本明細書の一部とみなされるPCT/FI96/00427(公報WO 97/05250)の図13A-Bおよび米国特許出願第08/795,430号の図3A-Bに示されている。
その上、さらなる実験では、高分子量型のVEGF-C(約58kDおよび約43kD)が非還元条件下で認められた(下記および図6Aを参照)。
実施例14
VEGF-CによるVEGFR-2の自己リン酸化刺激
また、VEGFR-2(KDR)を発現するブタ大動脈内皮(PAE)細胞を刺激するために、ヒトVEGF-Cベクターでトランスフェクトされた293 EBNA細胞からのコンディショニング培地(CM)も用いた。Pajusola et al., Oncogene, 9:3545-55(1994); Waltenberger et al., J. Biol. Chem., 269:26988-26995(1994)。この細胞を溶解し、VEGFR-2特異的高血清を用いて免疫沈降させた(Waltenberger et al., 1994)。
PAE-KDR細胞(Waltenberger et al., 1994)をHam’s F12培地-10%ウシ胎児血清(FCS)中で増殖させた。密集したNIH 3T3-Flt4細胞またはPAE-KDR細胞を、それぞれ0.2%ウシ血清アルブミン(BSA)を添加したDMEMまたはHam’s F12培地中で一晩飢餓状態にし、次いで分析用培地で5分間インキュベートした。組換えヒトVEGF(R&D Systems)および刺激剤として機能するPDGF-BBを対照として用いた。細胞は100mMオルトバナジウム酸ナトリウムを含有する氷冷Tris緩衝生理食塩水(TBS)で2回洗浄し、1mMフェニルメチルスルホニルフロリド(PMSF)、0.1U/mlアプロチンおよび1mMオルトバナジウム酸ナトリウムを含有するRIPA緩衝液中で溶解させた。この細胞溶解物を超音波処理し、16,000 x gにて20分の遠心分離により清澄化し、氷上でFlt4(Pajusola et al., 1993)、VEGFR-2またはPDGFR-β(Claesson-Welsh et al., J. Biol. Chem., 264:1742-1747(1989); Waltenberger et al., 1994)に対して特異的な高血清3〜5μlとともに3〜6時間インキュベートした。免疫沈降物をプロテインA-Sepharoseに結合させ、1mM PMSF、1mMオルトバナジウム酸ナトリウムを含有するRIPA緩衝液で3回洗浄し、10mM Tris-HCl(pH7.4)で2回洗浄し、次いで7%ゲルを用いてSDS-PAGEに付した。ポリペプチドをウエスタンブロッティングによりニトロセルロースに移し、PYホスホチロシン特異的モノクローナル抗体(Transduction Laboratories)または受容体特異的高血清とECL検出法(Amersham Corp.)を用いて解析した。
VEGFR-2を発現するPAE細胞を、mockでトランスフェクトされた293-EBNA細胞からの10もしくは2倍濃縮培地で、または組換えVEGF-Cを発現する293-EBNA細胞培養物からの2、5もしくは10倍濃縮培地で処理した。VEGFR-2は特異的抗体で免疫沈降させ、SDS-PAGEおよびホスホチロシン抗体を用いるウエスタンブロッティングにより解析した。比較のために、精製組換えVEGF50ng/mlを含有する非コンディショニング培地での処理も行った。また、さらなる細胞をFlt4ECで前処理したVEGF-CまたはVEGF含有培地でも処理した。
この実験の結果は以下の通りであった。mockでトランスフェクトされた細胞からのCMによって刺激された細胞で、基底レベルのVEGFR-2のチロシンリン酸化が検出された。この培地をさらに濃縮しても、VEGFR-2リン酸化はわずかに増強されるだけであった。CM含有組換えVEGF-Cは、VEGFR-2のチロシン自己リン酸化を刺激しその自己リン酸化ポリペプチドのバンドの強度は、VEGF-C CMを濃縮すると強まった。さらに、Flt4ECアフィニティーマトリックスで培地を前処理した後では、この刺激効果は見られなかった。このアッセイにおけるVEGF-Cの最大効果は、50ng/mlの濃度で非コンディショニング培地に加えられた組換えVEGFの効果に匹敵するものであった。VEGFを含有する培地をFlt4ECで前処理すると、VEGFR-2に対する刺激効果は認められなくなった。これらの結果は、VEGF-C発現ベクターがFlt4(VEGFR-3)のリガンドだけでなく、KDR/Flt-1(VEGFR-2)のリガンドもコードしていることを示唆するものである。
さらに、VEGFR-3およびVERGFR-2のチロシンリン酸化に対するVEGF-Cの刺激効果が受容体特異的であることを確認するため、発明者らは繊維芽細胞で豊富に発現するPDGF受容体β(PDGFR-β)のチロシンリン酸化に対するVEGF-Cの効果を分析した。PDGFR-βを発現するNIH 3T3細胞は、非コンディショニング培地、mockでトランスフェクトされた、もしくはVEGF-Cでトランスフェクトされた細胞からの5倍濃縮CMで、または50ng/mlの組換えヒトPDGF-BBを含有する非コンディショニング培地で処理した。また、VEGF-Cを含有する培地は組換えFlt4ECでも処理した(レーン4)。PDGFR-βは特異的抗体で免疫沈降させ、SDS-PAGEおよびホスホチロシン抗体を用い、次いでストリッピングし、PDGFR-βに特異的な抗体で膜を再プローブするウエスタンブロッティングにより解析した。mockでトランスフェクトされた細胞からのCMを用いてFlt4を発現するNIH 3T3細胞を刺激した場合、弱いPDGFR-βのチロシンリン酸化が検出された。この細胞を、Flt4ECでの前処理をしてまたはせずに、VEGF-Cでトランスフェクトされた細胞からのCMとともにインキュベートした場合も、同様に低いレベルのPDGFR-βリン酸化が認められた。これに対し、50ng/mlのPDGF-BBを添加した場合では、顕著なPDGFR-βのチロシンリン酸化が誘導された。
実施例15
VERGF-Cはコラーゲンゲルにおいて内皮細胞の移動を刺激する
VERGF-C発現ベクターでトランスフェクトされた細胞培養からのコンディショニング培地(CM)を、コラーゲンゲル製のウェルに移し、これを用い、以下のような3次元コラーゲンゲルにおいてウシ毛細管内皮(BCE)細胞の移動を刺激した。
Pertovaara et ai., J. Biol. Chem., 269:6271-74(1994)に記載されたように、BCE細胞(Folkman et al., Proc. Natl. Acad. Sci.(USA), 76:5217-5221(1979))を培養した。コラーゲンゲルは、コラーゲン保存液I(1mM HCl中5mg/ml)と同容量の2x MEMおよび10%新生ウシ血清を含有する2容量のMEMと混合することによって調製し、最終のコラーゲン濃度を1.25mg/mlとした。組織培養プレート(5cm径)を約1mmの厚さの溶液層で被覆し、これを37℃で重合させた。BCE細胞をこの層の上に播種した。移動分析のために、第1のコラーゲン層の上に置いたプラスチックリング(1cm径)の内側に細胞を付着させた。30分後、このリングを取り出し、付着しなかった細胞をすすぎ去った。第2のコラーゲン層および増殖培地層(5%新生ウシ血清(NCS))を、0.75%の低融点寒天(FMC BioProducts, Rockland, ME)により固化して加えた。細胞のスポットの両側で4mm離して総ての層に穴をあけ(3mm径)、その穴へサンプルおよび対照培地を毎日、ピペットで注ぎ入れた。6日後、位相コントラスト光学装置を備えたOlympus CK2倒立顕微鏡で、スポットの端から移動する細胞の顕微鏡写真を撮った。蛍光染色剤ビスベンズイミド(1mg/ml, Hoechst 33258, Sigma)で核染色した後、移動細胞を計数した。
培地添加後6日めに、付着していた元の領域から、非トランスフェクト(対照)細胞またはトランスフェクト(mock; VEGF-C; VEGF)細胞でコンディショニングされた培地を含有する穴に向かって種々の距離で移動する細胞の数を求めた。顕微鏡の接眼レンズの格子を用い、および10倍率の蛍光顕微鏡で、5つの隣接する0.5mm x 0.5mm四方において、付着していた元のリングから移動する細胞数を計数した。同様に、0.5mmだけ格子を移動することにより、0.5mmを上回って移動する細胞を計数した。実験は2回行い同じ結果が得られた。各距離で、VEGF-C含有CMは、非トランスフェクト細胞またはmockでトランスフェクトされた細胞によりコンディショニングされた培地よりも細胞の移動をよりよく刺激したが、VEGF発現ベクターでトランスフェクトされた細胞からの培地よりもその刺激は低かった。その穴へ1ngのFGF2を毎日添加することにより、VEGFでトランスフェクトされた細胞からのCMによる刺激と比較した場合、移動した細胞数およそ2倍になった。
関連する実験では、「組換え体として成熟した」VEGF-Cポリペプチド(下記に記載のVEGF-C△N△CHis)は、用量に依存して(VEGF-C濃度0、10、100および1000pMを試験)、BCEのDNAへの3H-チミジンの取り込みを刺激することが判った。このデータは、光学顕微鏡下で、VEGF-Cがこれらの細胞の増殖を刺激するという観察を確信させることにつながるものである。
実施例16
VEGF-Cは多種組織で発現する
多種ヒト組織由来の単離ポリ(A)+RNA 2マイクログラムを含有するノーザンプロット(Clontech Laboratories, Inc., Palo Alto, CAから入手したブロット)は、放射標識した2.1kb VEGF-C cDNAクローンの挿入配列でプローブした。ノーザンブロッティングおよびハイブリダイゼーション解析により、多種ヒト組織で、最も顕著には心臓、胎盤、筋肉、卵巣および小腸、また顕著ではないものの前立腺、結腸、肺、膵臓および脾臓で、2.4kb RNAとそれより少量の2.0kb mRNAが発現することが示された。VEGF-C RNAは脳、肝臓、腎臓、精巣または胸腺では極めて少量しか見られず、末梢血液白血球(PBL)では全く見られないようである。ヒト胎児の脳、肺、肝臓および腎臓組織由来のRNAの同様の分析から、VEGF-Cは腎臓および肺でよく発現し、肝臓ではそのレベルは低く、一方、脳においては実質的に発現は検出されないことが判った。興味深いことに、これらの組織においてVEGFの発現は、VEGF-Cの発現に相関するが、VEGF-Bは分析した4種の胎児組織の総てで高い発現を示す。
実施例17
VEGF-C遺伝子は染色体4q34に限局化される
VEGF-C遺伝子の染色体上の位置決定のために、1つまたは2つのヒト染色体を保持した24の種間体細胞雑種のDNAパネルを用いた(Bios Laboratories, Inc., New Haven, CT)。規定セットのヒト染色体を含有するヒト齧歯類体細胞雑種由来のDNAを、サザンブロッティングおよびVEGF-C cDNAプローブとのハイブリダイゼーションによって解析した。種々のヒト染色体を表すハイブリッドパネル上の24のDNAサンプルのうち、ヒト特異的シグナルは、ヒト第4染色体を含んだ雑種においてのみ認められた。この結果はVEGF-C特異的プライマーを用いる体細胞雑種DNAのPCRによって確認され、ヒト第4染色体を含有するDNAからのみ増幅したバンドが得られた。
VEGF-CのゲノムP1プラスミドは、特異的プライマーとPCRを用いて単離し、サザンブロッティングおよびVEGF-C特異的cDNAプローブを用いるハイブリダイゼーションにより確認した。VEGF-Cの染色***置を***中期FISHを用いてさらに研究した。FISHにおいてVEGF-CのP1プローブを用い、44の***中期像のうち40で、4q34染色体バンドとの特異的ハイブリダイゼーションが検出された。アスパルチルグルコサミニダーゼ(AGA)遺伝子に特異的なコスミドプローブを用いる二重蛍光色素ハイブリダイゼーションにより、VEGF-Cは、4q34染色体バンドに対して既にマッピングされているAGA遺伝子にまさに隣接して位置していることが示された。
ビオチン標識VEGF-C P1およびジゴキシゲニン標識AGAコスミドプローブを同時に***中期の染色体へハイブリダイズさせた。この実験では、AGA遺伝子がVEGF-C遺伝子よりも末端に位置することが証明された。前記実験は、本発明のポリヌクレオチドの染色体マーカーとして、また正常もしくは疾患細胞においてVEGF-C遺伝子領域の存在するか存在しないかに関しての有用性を実証するものである。4q34におけるVEGF-C遺伝子座は、血管奇形または心血管疾患につながる突然変異の候補標的である。
実施例18
C6神経膠芽腫細胞におけるVEGF、VEGF-BおよびVEGF-C mRNAレベルに対するグルコース濃度および低酸素の作用
C6細胞(ATCC CCL 107)の密集細胞を、2.5mlのDMEMおよび5%ウシ胎児血清と抗生物質を含有する10cm径の組織培養プレートで増殖させた。培養物を16時間の間、5%CO2を含む通常の細胞培養インキュベーター内で酸素正常状態、または気密性ガラスチャンバー内に培養プレートを封入し、次いで酸素の欠乏により炎が消えるまで内部で木片を燃焼させることにより低酸素状態に曝した。ポリアデニル化RNAを単離し(他の実施例に同じ)、次いで8マイクログラムのRNAを電気泳動に付し、VEGF、VEGF-BおよびVEGF-Cプローブの混合物とブロットハイブリダイズした。その結果は、低グルコースおよび高グルコースの双方において、低酸素状態がVEGFmRNAの発現を強く誘導するが、VEGF-BmRNAレベルには有意な影響がないことを示している。低酸素状態の細胞から単離されたVEGF-CmRNAはゲル電気泳動において、わずかに速く泳動し、特に移動度の速いバンドは上方のmRNAバンドの下に見出すことができる。このような観察は、低酸素状態がVEGF-CRNAのプロセッシングに作用することを示唆するものである。このような観察に対する1つの説明として、VEGF-CmRNAスプライシングが変更され、VEGF-Cオープンリーディングフレームに作用し、その結果、低酸素状態の細胞により選択的VEGF-Cタンパク質が産生される。このような選択型のVEGF-CおよびVEGF-Cをコードするポリヌクレオチドが本発明に態様として考えられる。このデータは、生物学的サンプルが、低酸素誘導型のVEGF-Cおよび/またはVEGF-CmRNAに関してスクリーニングされる方法など、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドのスクリーニングおよび診断上の利用を示している。データはさらに低酸素誘導型のVEGF-Cまたは正常型VEGF-Cの抗体および/または他のインヒビターに関する治療指標を示唆している。
実施例19
VEGF-C発現ベクターでトランスフェクトされた293 EBNA細胞由来のVEGF-Cポリペプチドのパルスチェイス標識および免疫沈降
抗VEGF-C抗血清の生産のために、PAM126で示される以下のVEGF-C分枝アミノ末端ペプチドを合成した:
特に、PAM126は2つの有効なリジン(K)残基と結合した4つのペプチド酸(PA)鎖を有する分枝ポリリジン構造K3PA4として合成した。合成は、Fmoc-化学およびTentaGel S MAP RAM10樹脂混合物(RAPP Polymer GmbH, Tubingen, Germany)を用いて、433A Peptide Synthesizer(Applied Biosystems)で行い、切断可能なペプチドおよび樹脂結合ペプチドの双方を得た。切断可能なペプチドは逆相HPLCにより精製し、樹脂結合ペプチドとともに免疫感作に用いた。合成産物の正確さは質量分析(Lasermatt)を用いて確認した。
PAM126ペプチドをリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)に溶解し、フロイントのアジュバントと混合し、次いで当技術分野で標準的な方法(Harlow and Lane, Antibodies, a labolatory manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press(1988))を用いて、2週間間隔でのウサギの免疫感作に用いた。4回の追加抗原感作の後に得られた抗血清を、下記のように、パルスチェイス実験において、VEGF-Cの免疫沈降に用いた。
パルスチェイス分析については、VEGF-C発現ベクターでトランスフェクトされた293 EBNA細胞(すなわち、前記のように、FLT4-LcDNAをpREP7発現ベクターへ挿入した)を37℃にて30分間、メチオニンフリー、システインフリー、血清フリーDMEM培養培地でインキュベートした。次いで培地を換え、200μCiのPro-mix(商標)(Amersham)を加えた。細胞層をこの標識培地で2時間インキュベートし、PBSで洗浄し、次いで血清フリーDMEM中で0、15、30、60、90、120または180分間インキュベートした(チェイス)。種々のチェイス期間の後、培地を回収し、細胞を再びPBS中で2回洗浄し、次いで免疫沈降緩衝液中で溶解させた。23kD VEGF-C型のNH2末端ペプチド(PAM126)に対して作製したVEGF-C特異的抗血清を用いる免疫沈降により、培養培地から、また細胞溶解液からVEGF-Cポリペプチドを解析した。免疫沈降したポリペプチドは、SDS-PAGE、それに次ぐオートラジオグラフィーにより解析した。
得られたオートラジオグラムは、標識2時間後(チェイス時間0)直ちに、VEGF-Cベクターでトランスフェクトされた細胞は約58kD(もともと約55kDと評価され、異なる大きさの標準を用いる場合には約58kDと再評価された)の放射性ポリペプチドバンドを含んでいることを証明し、mockでトランスフェクトされた細胞(M)ではこのようなことは見られなかった。この〜58kDの前駆体のほとんどは二量体化されている。この〜58kDのポリペプチドバンドの強度はチェイス期間が長くなるにつれ徐々に弱まった。VEGF-Cでトランスフェクトされた細胞では、32kDのポリペプチドバンドも認められた(しかし、mockでトランスフェクトされた細胞には認められなかった)。32kDのバンド〜58kDのバンドのそれと同じ速度論で細胞から消失する。さらなる解析により、32kDのバンドは、ジスルフィド結合によりともに会合した29kDと31〜32kD型のダブレットであることが示された。同時に、培地において、32kDそれに次ぐ23kDおよび14〜15kDのポリペプチド量の増加が見られた。
パルスチェイス実験からの結果をまとめると、〜58kDの細胞内ポリペプチドはプロVEGF-Cポリペプチドを意味し、これは細胞内かまたは細胞表面のいずれかでタンパク質分解により切断されて29kDと31〜32kDのポリペプチドとなる。29/31kD型は分泌し、同時にさらにタンパク質分解によりプロセッシングを受けて23kDおよび14〜15kD型となる。さらなる実験では、ジスルフィド結合した29kDと15kD型との二量体が認められた。特定の理論に限定することを意図するものではないが、VEGF-C前駆体のプロセッシングはシグナル配列の除去、COOH末端ドメイン(BR3P)の除去、およびアミノ末端ポリペプチドの除去の際に起こり、結果としてTEE・・・アミノ末端を有するVEGF-Cポリペプチドが得られると考えられる。
高度な解析では、23kDのポリペプチドバンドは密な間隔のポリペプチドダブレットと見られ、このことは切断またはグリコシル化における不均一性を示唆している。
実施例20
VEGF-CをコードするマウスおよびウズラcDNAクローンの単離
A.ネズミVEGF-C
ネズミVEGF-Cをクローン化するため、市販の12日めマウス胎児cDNAライブラリー(λEXloxライブラリー, Novagen, カタログ番号69632-1)のおよそ1 x 106のバクテリオファージλクローンを、配列番号7のヌクレオチド495〜1661を含有するヒトVEGF-CcDNAの放射性標識断片を用いてスクリーニングした。1つの陽性クローンを単離した。
単離したマウスcDNAクローンの挿入配列の1323bp EcoRI/HindIII断片をpBluescript SK+ベクター(Stratagene)の対応部位へサブクローニングし、配列決定した。ヒトクローンに存在する5’末端配列の約710bpがマウスクローンには存在しないことを除き、このクローンのcDNA配列は、本明細書で報告したヒトVEGF-C配列と相同であった。
マウスcDNAライブラリーのさらなるスクリーニングについては、マウスcDNAクローンのコード領域由来の881bpのHindIII-BstXI(HindIII部位はpBluescript SK+ポリリンカーに由来する)断片を放射性標識し、これをプローブとして用いてさらに2つのマウスcDNAライブラリーをスクリーニングした。成体マウス心臓ZAP II cDNAライブラリー(Stratagene,カタログ番号936306)からさらに2つのcDNAクローンを同定した。また、マウス心臓5’伸長およびλgtIIにおけるcDNAライブラリー(Clontech Laboratories, Inc., カタログ番号ML5002b)から、さらに3つのクローンを単離した。この3クローンのうち1つに約1.9kbの挿入配列が含まれていることが判った。このcDNAクローンの挿入配列をpBluescript SK+ベクターのEcoRI部位へサブクローニングしこのクローンの両鎖を完全に配列決定し、その結果、配列番号10および11で示されるヌクレオチドおよび推定アミノ酸配列を得た。
配列番号11に相当するポリペプチドは、ヒトVEGF-Cプレプロペプチドのプロセッシングと同様に、プロセッシングを受けて成熟マウスVEGF-Cタンパク質となると考えられる。マウスタンパク質の推定切断部位は、ヒトVEGF-Cポリペプチド切断部位の同定に関して前記に概略を示した手法を用いて同定した。
前記の結果は、他の非ヒト哺乳類VEGF-Cタンパク質をコードするポリヌクレオチドの同定および単離のための本発明のポリヌクレオチドの使用が有用性を実証するものである。次ぎに、かかる同定および単離ポリヌクレオチドを発現させて(前記実施例で記載したものと同様の手法を用いる)、相当する非ヒト哺乳類型のVEGF-C組換えポリペプチドを産生することができる。
B.ウズラVEGF-C
マウスおよびヒトVEGF-C配列を用いて、ウズラcDNAライブラリーからウズラVEGF-CcDNAを単離するためのプローブを設計した。配列番号7のヌクレオチド495〜1670を含んでなるヒトVEGF-CcDNA断片はPCR増幅により得、製造業者の指示に従いpCRIIベクター(Invitrogen)へクローン化し、次いで増幅した。挿入配列はEcoRI消化および分取ゲル電気泳動、次いで放射性dCTPを用いた標識およびランダムプライミングにより単離した。次いで、pcDNA-1ベクター(Invitrogen)におけるステージE-4のウズラ胎児から作製したcDNAライブラリーをこのプローブを用いてスクリーニングした。約200,000コロニーを平板培養し、フィルターレプリカを放射性プローブとハイブリダイズした。9個の陽性コロニーを確認し、二次平板培養した。9個のコロニーのうち2個が二次スクリーニングでハイブリダイズした。精製クローン(クローン1および14)は、およそ2.7kbのEcoRI挿入配列を有していた。両クローンを増幅し、次いでT7およびSP6プライマー(ベクターへアニーリングする)を用いて配列決定した。さらに、内部SphI制限エンドヌクレアーゼ切断部位を、ベクターT7プライマー部位から約1.9kbと同定し、5’および3’SphI断片のサブクローニング、それに次ぐサブクローンのSphI末端からの配列決定のために用いた。得られた配列を両クローンから同定され、ヒトVEGF-Cコード領域と高い類似性を示した。次ぎに、ウォーキングプライマーを両方向で作製し、全長オープンリーディングフレームを含む二本鎖の配列決定を1743塩基対について完了した。
得られたcDNA配列は長いオープンリーディングフレームと5’非翻訳領域を含む。ウズラcDNAのDNAおよび推定アミノ酸配列は、それぞれ配列番号12および13で示されている。推定ウズラVEGF-CcDNAを用いて行った研究では、そのタンパク質産物がトランスフェクト細胞から分泌し、鳥類のVEGFR-3およびVEGFR-2と相互作用することが示され、これはさらにこのcDNAがウズラVEGF-Cタンパク質をコードしているという結論を確実にするものである。ウズラVEGF-CcDNAでトランスフェクトされた293-EBNA細胞から分泌したタンパク質は、PAM126ポリペプチドに対して作製されたVEGF-C特異的ポリクローナル抗血清を用いる免疫沈降研究で解析した(実施例19)。トランスフェクト細胞からは、約30〜32kDのダブレットバンドおよび約22〜23kDのバンドが免疫沈降したが、対照細胞ではこれらは免疫沈降しなかった。従って、これらの免疫沈降研究から、さらに、非ヒト種由来のVEGF-Cは、ヒトVEGF-Cのプロセッシングと同様にしてプロセッシングされる(プレプロVEGF-C型から)ことが示される。図5に示されたように、ヒト、ネズミおよび鳥類(ウズラ)のVEGF-C前駆体アミノ酸配列は、かなりの程度で保存されている。このように種間での相同性が高いことは、本発明のポリヌクレオチドをプローブとして用い、本明細書に記載したものなどの標準的な分子生物学的技術を用いて、他の種、特に脊椎動物種、さらに特には哺乳類および両類の種に由来するVEGF-Cコード配列を単離することが可能となる。
実施例21
組換えVEGF-CのN末端ペプチド配列解析
VEGF-CcDNAでトランスフェクトされた細胞(293 EBNA)(実施例13を参照)は、いくつかの形態の組換えVEGF-Cを分泌する(図6、レーンIP)。アルキル化されない場合、3つの主要なタンパク質分解プロセッシング型のVEGF-Cが、SDS-PAGEにおいて32/29kD(ダブレット)、21kDおよび15kDの見かけの分子量を有するタンパク質として(ダブレット)移動する。2つの少量のポリペプチドは、それぞれ63および52kDの見かけの分子量を示す。これらのポリペプチドの1つはおそらくグリコシル化された非プロセッシング形態であり、他のポリペプチドはおそらくグリコシル化され部分的にプロセッシングされている。より厳密な大きさの測定(還元条件下でのSDS-PAGEを用いる)により、最初に63、52、32、23および14kDと評価された(還元条件、および異なるセットのサイズ標準の下でのSDS-PAGEを用いる)VEGF-C型の分子量は、それぞれおよそ58、43、31、29、21および15kDである(ほとんどの場合において最初の測定値はより厳密な測定値の許容される10%誤差内にある)。
VEGF-C前駆体のタンパク質分解切断部位を決定するために、イムノアフィニティーカラムを用いて、VEGF-CcDNAでトランスフェクトされた293 EBNA細胞のコンディショニング培地からVEGF-Cポリペプチドを精製した。イムノアフィニティーカラムを調製するために、配列番号8のアミノ酸104〜120に相当する合成ペプチド:H2N-EETIKFAAAHYNTEILK(実施例19のPAM126を参照)でウサギを免疫化した。免疫化しらウサギの血清から、プロテインA-Sepharose(Pharmacia)を用い、IgG画分を単離した。単離したIgG画分は、標準技術を用いて、5mg IgG/ml Sepharoseの濃度でCNBr活性化SepharoseCL-4B(Pharmacia)に共有結合させた。このイムノアフィニティーマトリックスを用いて、1.2リットルのコンディショニング培地(CM)からプロセッシングされたVEGF-Cを単離した。
カラムから溶出した精製物質をゲル電気泳動およびウエスタンブロッティングにより解析した。VEGF-Cポリペプチドを含有する画分を合し、10mM Tris HClに対して透析し、真空乾燥し、Immobilon-P(重フッ化ポリビニリデン、すなわちPVDF)転移膜(Millipore, Marlborough, MA)へ電気転移し、次いでN末端アミノ酸配列解析に付した。
32kDのポリペプチドバンドから2つの異なる配列:NH2-FESGLDLSDA...およびNH2-AVVMTQTPAS...(配列番号14)が得られ、前者はアミノ酸32(配列番号8)から始まる、シグナルペプチドの切断後のVEGF-CのN末端部分に相当し、後者は溶出工程中アフィニティーマトリックスの「結合」により精製物質中に存在したIgGのκ鎖に相当する。
VEGF-Cの29kD型のN末端ペプチド配列を得るために、VEGF-C変異体をコードする構築体(VEGF-C NHIS)を作製した。特に、この構築体は、分泌した前駆体のN末端(すなわち、配列番号8のアミノ酸31〜33の間)に6xHisタグを融合させたVEGF-C変異体をコードするものであった。VEGF-Cの分泌中、タグ配列の切断の可能性を回避するために、32位のフェニルアラニンを除去した。VEGF-C NHis構築体をベクターとしてpREP7へクローン化した。なお、この構成は下記実施例28にさらに十分に記載される。
リン酸カルシウム共沈殿法を用いてVEGF-C NHisを293 EBNA細胞へトランスフェクトした。15cm細胞培養ディッシュで(全25プレート)、DMEM/10%ウシ胎児血清中で細胞をインキュベートした。翌日、同培地を含有する新しい培養ディッシュ(75プレート)へ細胞を再播種し、48時間インキュベートした。次いで、細胞層をPBSで1度洗浄し、次いでFCSを除いたDMEM培地を加えた。前記実施例5で記載したように、この培地中で細胞を48時間インキュベートし、培地を回収し、5000 x gでの遠心分離により清澄化し、Ultrasette Tangential Flow Device(Filtron, Northborough, MA)を用いて500倍濃縮した。TALON(商標)Metal Affinity Resin(Clontech Laboratories, Inc.)とイミダゾール含有緩衝液を用いる天然タンパク質の精製に関する製造業者のプロトコールを用いて、濃縮コンディショニング培地からVEGF-C NHisを精製した。このタンパク質を20mM Tris HCl(pH8.0)、100mM NaClおよび200mMイミダゾールを含有する溶液で溶出した。精製VEGF-C NHisを含有する溶出画分は、抗血清882(PAM-126ポリペプチドで免疫化したウサギ882由来の抗血清)を用いたイムノブロッティングにより検出した。VEGF-C NHisを含有する画分を合し、透析し、真空乾燥した。この形態のVEGF-CのN末端に6xHisタグが存在しているため、VEGF-C NHisの主要なダブレットの上方の成分は、32kD型の野生型VEGF-Cよりもわずかに遅れて移動し、これにより、SDS-PAGEを用いるVEGF-C NHis 32kD変異体の29kDバンドからの分離が改良される。およそ15μgの精製VEGF-Cを、還元条件下でSDS-PAGEに付し、Immobilon-P(PVDF)転移膜(Millipore, Inc., Marlborough, MA)に電気転移し、29kDのバンドをN末端アミノ酸配列解析に付した。この配列解析により、VEGF-Cのアミノ酸228〜232(配列番号8)に相当するH2N-SLPAT...のN末端配列が明らかになった。21kDのポリペプチドバンドから配列番号8のアミノ酸112で始まるアミノ末端に相当する配列H2N-AHYNTEILKS...が得られた。
従って、トランスフェクト293 EBNA細胞によって産生された21Kd型のVEGF-Cが得られるタンパク質分解プロセッシングは、PC-3細胞によって分泌された23kD型のVEGF-Cが得られる切断部位の9個のアミノ酸残基だけ下流で起こると思われる。
15kD型のN末端は、32kD型(NH2-FESGLDLSDA...)のN末端と一致していた。この15kD型は、組換えVEGF-CがCOS細胞により産生される場合には検出されなかった。このことはこの形態の産生が細胞結合特異的であることを示唆している。
実施例22
VEGF-Cの二量型および単量型
VEGF-C二量体の組成は以下のようにして解析した。実施例11に記載のように、pREP7 VEGF-Cベクターでトランスフェクトされた細胞(293 EBAN細胞)を、Pro-mix L-[35P]標識混合物(Amersham Corp.)で代謝標識し、最終濃度100μCi/mlとした。
並行して、「R102S」で示されるVEGF-C変異体を調製し、解析した。VEGF-C-R102SをコードするDNAを調製するために、配列番号8の102位のアルギニンコドンをセリンコドンで置換した。pREP7ベクター中、このVEGF-C-R102SをコードするDNAを前記のように293 EBNA細胞へトランスフェクトして発現させた。抗血清882(配列番号8の残基104〜120に相当するポリペプチドでウサギを免疫化することにより得られる(前記実施例を参照))および抗血清905(プロ-VEGF-Cリーダーの一部に相当するポリペプチド:H2N-ESGLDLSDAEPDAGEATAYASK(配列番号8の残基33〜54)でウサギを免疫化することによ得られる)を用いてVEGF-Cポリペプチドを免疫沈降させた。
各細胞培養物に由来する免疫沈降物を非変性条件下でSDS-PAGEに付した(図6)。バンド1〜6をゲルから切り取り、200mMβ-メルカプトエタノールを含有する1xゲル充填緩衝液に30分間浸漬し、次いで個々に非変性条件下でSDS-PAGEに付した(図6Aおよび6C、レーン1〜6)。
図6A〜Cから判るように、VEGF-Cの各高分子型(図6B、バンド1〜4)はジスルフィド結合によって結合した少なくとも2つの単量体からなる(図6Aおよび6C、還元ゲルにおけるレーン1〜4を比較)。バンド1〜3の主成分は、両タンパク質が同じモル比で存在する32/29kDのダブレットである。21kD型の主要画分は、単量体として、またはジスルフィド結合以外によって結合したホモ二量体として分泌される(図6A〜C中のバンド6およびレーン6)。
R102Sは変異体は、配列番号8の100位のアスパラギン残基において、さらなるVEGF-CのN結合グリコシル化部位を創出する。このさらなるグリコシル化部位でのグリコシル化は、図6A〜Cおよび図7A〜Bで確認されるように、この部位を含有するポリペプチドの見かけの分子量を増す。さらなるグリコシル化は、VEGF-Cに相当する同様の一次構造のポリペプチドと比較した場合、さらなるグリコシル化部位を含むVEGF-C-R 102S型の移動度を低下させる。図6A〜Cおよび図7A〜Bにより、wt VEGF-Cの32kDおよび15kD型に相当するVEGF-C-R 102Sポリペプチドが、高い見かけの分子量を示すことが明らかになり、このことはこれらのポリペプチドの各々が新たに導入されたグリコシル部位をを含むことを示している。特に、VEGF-C由来の15kDポリペプチドに相当するVEGF-C-R 102Sポリペプチドは、ゲル上で、21kD型の野生型(wt)VEGF-Cとともに移動し、このことはゲル上では、のより大きい見かけの分子量に相当する位置へのシフトとして表れる(図6Aおよび6Cのレーン4を比較)。58kD型のVEGF-Cの移動は、R 102S変異による64kDより遅く、このことはこの形態がVEGF-Cの適当なN末端ペプチドを含むことを示している。21、29、および43kD型の移動はR 102S変異によって影響を受けず、このことはこれらのポリペプチドがR102のC末端に位置したペプチド配列を含むことを示唆している。
関連する実験では、「R226,227S」で示されるもう1つのVEGF-C変異体を調製して解析した。VEGF-C-R226,227SをコードするDNAを調製するために、配列番号8の226および227位のアルギニンコドンを位置指定突然変異誘発によりセリンコドンに置換した。得られたDNAを前記のように293 EBNA細胞にトランスフェクトして発現させ、VEGF-CおよびVEGF-C-R 102Sに関しての記載と同様の条件下で解析した。VEGF-C-R226,227Sを発現する細胞からのコンディショニング培地においては、32kD型のVEGF-Cは検出されなかった。これらの結果は、野生型VEGF-CのC末端切断部位が配列番号8の残基226および227に隣接しており、アルギニンのセリンへの突然変異によって破壊されていることを示している。ここでも、ダブレットの29kD成分に移動は変化しなかった(図7A〜B)。
これらのデータを考え併せると、プロセッシングを受けたVEGF-Cの主要な形態は、(1)ジスルフィド結合によって結合したプレプロVEGF-C(配列番号8のアミノ酸32〜227)のアミノ酸32〜227を含有する32kDのポリペプチド〜(2)配列番号8のアミノ酸228で始まる29kDのポリペプチドからなるヘテロ二量体であることが示される。これらのデータはまた、抗血清882および抗血清905を用いて免疫沈降し、標識されたVEGF-C形態のパターンの比較により支持される。
コンディショニング培地を使用してVEGF-C免疫沈降を行った場合、両抗血清(882および905)は、VEGF-Cの主要なプロセッシング形態(32/29kD、21kDおよび15kD)のいくつかまたは総てを認識した。10mMジチオトレイトールの存在下、室温で2時間のインキュベーション、それに次ぐ室温で20分間の25mMヨードアセトアミドを伴うさらなるインキュベーションによるアルキル化によってコンディショニング培地を還元した場合、いずれの抗体も29kD成分を沈降させることはなかったが、抗体882は依然として32kD、21kDおよび15kDのポリペプチドを認識した。それに次ぐ実験では、43kD型を免疫沈降させることができる抗体は見られなかった。これらの結果は、配列番号8のアミノ酸残基104〜120を含有するオリゴペプチドである抗血清882に含まれる抗体を惹起するのに使用されるオリゴペプチド抗原の性質と一致するものである。一方、抗血清905は、抗血清905を得るための免疫化に使用されるオリゴペプチド(配列番号8のアミノ酸33〜54)の配列を含む32kDおよび15kDポリペプチドを認識した。32kDおよび15kD型の移動度シフトを考慮すれば、R 102S変異体を用いた免疫沈降の結果は同じであった(図8A〜B)。抗体905の特異性は、それが非プロセッシングポリペプチドの残基32〜102にわたるN末端ポリペプチドが欠失しているVEGF-C△N型を認識しなかったという事実により確実となる(図8B)。
これらの実験の結果はまた、21kDポリペプチドが(1)他の分子形態とのヘテロ二量体(図6A〜Cおよび図7A〜B)において見られ、かつ、(2)単量体またはジスルフィド結合以外の結合により会合したホモ二量体として分泌される(図6Aおよび6B、レーン6)ことを実証する。
この実施例で開示した実験により、いくつかの形態のVEGF-Cが存在することが実証される。VEGF-C単量体には多様性が見られ、これらの単量体グリコシル化のレベルおよびパターンにより異なる。さらに、VEGF-Cは多量体、例えばホモ二量体またはヘテロ二量体として見られる。VEGF-Cのプロセッシングは図9に模式的に示されている(ジスルフィド結合は示されていない)。VEGF-Cの形態は総て、本発明の範囲内にある。
実施例23
マウス胎児のin situハイブリダイゼーション
種々の細胞および組織におけるVEGF-CmRNA分布を解析するため、交尾後12.5および14.5日のマウス胎児の切片を作製し、標識VEGF-Cプローブを用いるin situハイブリダイゼーションによって解析した。組織切片のin situハイブリダイゼーションは、Vastrik et al., J. Cell Biol., 128:1197-1208(1995)に記載のように行った。マウスVEGF-C抗血清RNAプローブは、マウスVEGF-CcDNA(配列番号10)のヌクレオチド499〜979に相当するcDNA断片を含有する線状化pBluescript II SK+プラスミド(Stratagene Inc., La Jolla, CA)から作製した。放射性標識RNAはT7ポリメラーゼおよび[35P]-UTP(Amersham)を用いて合成した。マウスVEGF-C抗血清およびセンスRNAプローブは、Olofsson et al., Proc. Natl. Acad. Sci.(USA), 93:2576-2581(1996)に記載されたように、マウスVEGF-BcDNA挿入配列を含有する線状化pCRIIプラスミドからの場合と同様にして合成した。高度ストリンジェント洗浄は、30mMジチオトレイトール(DTT)および4x SSCを含有する溶液中で、65℃、45分間であった。スライドを28日間露光して現像し、ヘマトキシリンで染色した。比較として、同様の切片VEGFR-3プローブとハイブリダイズし、交尾後12.5日の胎児もVEGF-BmRNAに対してプロービングした。
これらの実験からの暗視野および明視野顕微鏡写真は、出典明示して本明細書の一部とみなされるWO 97/05250として公表され、1996年8月1日に出願された同一所有のPCT特許出願PCT/FI96/00427に提供されている。この顕微鏡写真からの観察は下記に要約されている。交尾後12.5日の胎児において、パラサジタル(parasagittal)切片は、VEGF-CmRNAが発達中の後腎を取り巻く血管周囲の間葉に顕著であることを明らかにした。さらに、ハイブリダイゼーションシグナルは、発達中の脊椎間、発達中の肺の間葉、頸部領域、および発達中の前頭で見られた。これらのシグナルの特異性は、隣接する切片におけるVEGF-B発現と比較することから明らかになり、ここで心筋層は極めて強いシグナルを示し、他のいくつかの組織ではより低レベルのVEGF-BmRNAが検出された。両遺伝子は、発達中の脊椎間、発達中の肺および前頭で発現するようである。VEGF-Cセンスプローブのハイブリダイゼーションでは、これらの構造内で特異的な発現はないことが示された。
また、発達中の背側大動脈と心静脈が位置する頸静脈領域における交尾後12.5日のマウス胎児のVEGF-CおよびVEGFR-3の発現パターンに関しても研究を行った。Sabin, Am. J. Anat., 9:43-91(1909)の長年わたる理論によれば、ここは第1のリンパ管が静脈嚢様構造から発生する領域である。発達中の静脈嚢を取り囲む間葉では強いVEGF-Cシグナルが検出され、そこはまたVEGFR-3に関しても陽性であった。
腸間膜は発達中の腸に血液を供給し、発達中のリンパ管を含む。交尾後14.5日の発達中の腸間膜はVEGF-CmRNAに関して陽性であり、ある脈管を取り囲む結合組織では特に高い発現が見られる。観察された隣接した腸間膜のVEGFR-3シグナルは、腸間膜の小毛細管に起源する。従って、VEGF-Cとその受容体のmRNA生産の間にはパラクリン関係があると思われる。このデータはVEGF-Cが多様な組織で発現することを示している。さらに、発現パターンは静脈およびリンパ管発達におけるVEGF-Cの役割と一致している。さらに、このデータはVEGF-Cが非ヒト動物で発現することを明らかにするものである。
実施例24
胎児および成体組織におけるVEGF、VEGF-BおよびVEGF-CmRNA発現の解析
脳、肺、肝臓および腎臓由来のポリアデニル化RNA2μgを含有するヒト胎児組織ノーザンブロット(Clontech Inc.)を、以下のプローブ:ヒト全長VEGF-CcDNA挿入配列(GenBank Acc. No. X94216)、PCR増幅により得られたヒトVEGF-B167cDNA断片(ヌクレオチド1〜382、GenBank Acc. No. U48800);および57〜638塩基対にわたるヒトVEGF581bpcDNA断片(Genbank Acc. No. X15997)とハイブリダイズした。ブロットは、当技術分野において標準的な技術を用いてストリンジェントな条件下で洗浄した。
交尾後7、11、15および17日の胎児由来のポリアデニル化RNA2μgを含有するマウス胎児マルチプルティッシュノーザンブロット(Clontech Inc.)を、マウスVEGF-CcDNA断片(塩基対499〜656)とハイブリダイズした。マウス成体組織ノーザンブロットはヒトVEGF、VEGF-B167、VEGF-Cのプローブとニ、さらにVEGFR-3cDNA断片(ヌクレオチド1〜595;Genbank Acc.No.X68203)とハイブリダイズした。
成体マウス組織においては、2.4kbおよび2.0kbmRNAシグナルがVEGF-Cプローブとともに、およそ4:1の比で観察された。最も顕著なシグナルは肺および心臓RNAから得られ、一方、腎臓、肝臓、脳、および骨格筋でのレベルは低く、脾臓および精巣でかろうじて認められるというレベルであった。ヒト組織の場合とい同様、成体マウスにおけるVEGFmRNA発現は、肺および心臓RNAにおいて最も多く、一方、他のサンプルではVEGF-Cと同等の低い調節を示した。Olofeeon et al., Proc. Natl. Acad. Sci.(USA), 93:2576-2581(1996)がこれまでに報告したように、骨格筋および心臓組織では、成体マウスからでは最も高いVEGF-BmRNAレベルを示した。VEGFR-3発現との比較により、VEGF-Cが発現する組織はまた、その同起源の受容体チロシンキナーゼのmRNAを含むが、成体肝臓ではVEGFR-3mRNAは不釣り合いに多いことが示された。
肺発達中のVEGF-CmRNAの調節によりよい眼識を与えるため、種々の妊娠期間(交尾後7、11、15および17日)のマウス胎児から単離したポリアデニル化RNAを、マウスVEGF-Cプローブとハイブリダイズした。これらの解析から、妊娠期間を通じ2.4kbのVEGF-CmRNA量は比較的一定であることが示された。
実施例25
培養ヒト繊維芽細胞における血清、インターロイキン-1およびデキサメタゾンによるVEGFファミリーメンバーのmRNAの調節
ヒトIMR-90繊維芽細胞は、10%FCSおよび抗生物質を含有するDMEM培地で装飾させた。細胞を80%密集まで増殖させ、次いでDMEM中0.5%FCS中で48時間、飢餓状態にした。その後、増殖培地を5%FCSを含有し、10ng/mlのインターロイキン-1(IL-1)を含む、または含まない、1mMのデキサメタゾンを含む、または含まないDMEMに換える。この培養プレートをこれらの添加物とともに、示された時間インキュベートし、次いでTRIZOLキット(GIBCO-BRL)を用いて全細胞RNAを単離した。各サンプルから総RNA約20μgを、Sambrook et al., 前記(1989)に記載のように、1.5%ホルムアルデヒド-アガロースゲルでの電気泳動に付した。このゲルをノーザンブロッティングおよびヒトVEGFクローン(57〜638bpにわたる581bpcDNA、Genbank Acc. No. U15997)およびヒトVEGF-B167cDNA断片(ヌクレオチド1〜382、Genbank Acc. No. U48800)由来の放射性標識した挿入DNAにとのハイブリダイゼーションに用いた。次いで、このノーザンブロットをVEGF-CcDNAプラスミド由来の放射性標識挿入でプローブした。当業者に理解されるように、プライマーは、ランダムプライマーの酵素的伸長反応を含む標準技術を用いて標識した。
ノーザンブロット解析から、飢餓状態のIMR-90細胞、ならびに1時間の刺激後の細胞により、極めて低レベルのVEGF-CとVEGFが発現することが明らかになった。これに対し、このような条件下ではVEGF-Bシグナルが豊富に認められた。血清刺激4時間後、VEGF-CおよびVEGFmRNAが顕著に誘導され、これはIL-1で処理したサンプルでさらに増強された。IL-1の作用は、デキサメタゾンの存在下では無効になるようであった。同様の増強パターンが、8時間サンプルでも観察されたが、24時間サンプルでも48時間サンプルでも、両RNAに関しては、総ての増強調節が徐々に低下していった。これに対し、VEGF-BmRNAレベルは一定に維持され、従って、期間を通じ著しく安定であることが示された。この結果は、種々の疾患を治療するための方法において、VEGF-Cおよびその断片、そのアンタゴニスト、ならびに抗VEGF-C抗体を使用する努力を導くに有用である。
実施例26
組換えネズミVEGF-Cの発現および解析
マウスVEGF-CcDNAは組換えタンパク質として発現し、分泌したタンパク質を、その受容体結合特性に関して解析した。マウスVEGF-CのヒトVEGFR-3細胞外ドメインとの結合は、レトロウイルス発現ベクターにおいて、マウスVEGF-CcDNAでトランスフェクトされたBosc23細胞からの培地を用いることにより研究した。
1.8kbマウスVEGF-CcDNAはEcoRI断片として、SV40初期プロモーター領域を含有するレトロウイルス発現ベクターpBabe-puro中へクローン化し[Morgenstern et al., Nucl. Acids Res., 18:3587-3595(1990)]、次いで、カルシウム−リン酸塩沈殿法により、Bosc23パッケージング細胞系統[Pearet et al., Proc. Natl. Acad. Sci.(USA), 90:8392-8396(1994)]へトランスフェクトした。比較のため、Bosc23細胞はまた、pREP7発現ベクター中、前記のヒトVEGF-C構築体でもトランスフェクトした。トランスフェクト細胞は、代謝標識に先立ち48時間培養した。細胞を、システインおよびメチオニンを除いたDMEM培地へ移し、45分間プレインキュベーションして培地を交換した後、同培地へPro-mix(商標)L-[35S]in vitro細胞標識混合物(Amersham Corp.)を、最終濃度が約120μCi/mlとなるよう加えた。インキュベーション6時間後、培養培地を回収し、遠心分離により清澄化した。
免疫沈降については、それぞれエンプティーベクター、またはマウスもしくはヒト組換えVEGF-Cでトランスフェクトされた代謝標識Bosc23細胞からの培地の1mlアリコートを、成熟ヒトVEGF-CのN末端17アミノ酸オリゴヌクレオチド(H2N-EETIKFAAAHYNTEILK)(配列番号8、残基104〜120)に対して作製したウサギポリクローナル抗血清2μlとともに氷上で一晩インキュベートした。その後、このサンプルをプロテインAセファロースとともに、4℃にて40分間、穏やかに振盪しながらインキュベートした。次いでこのセファロースビーズを免疫沈降緩衝液で2回、20mM Tris HCl, pH7.4で4回洗浄した。サンプルはLaemmi緩衝液中で煮沸し、12.5%ドデジル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により解析した。
トランスフェクトされた代謝標識細胞の培地からのVEGF-Cの免疫沈降により、12.5%SDS-PAGEにおいておよそ30〜32x103MT(ダブレット)および22〜23x103MTのバンドが明らかになった。これらのバンドは、非トランスフェクト細胞またはmockでトランスフェクトされた細胞由来のサンプルでは検出されなかった。これらの結果は、ヒトVEGF-Cに対して作製された抗体が、対応するマウスリガンドを認識することを示し、ネズミVEGF-Cを生産するために起こるタンパク質分解プロセッシングが、ヒトVEGF-Cを生産するために起こるプロセッシングと同様であるという示唆を与えるものであった。
受容体結合実験については、代謝標識したBOSC23細胞からの培地の1mlアリコートを、セファロースに共有結合させたVEGFR-3細胞外ドメイン(実施例3を参照)とともに、4℃にて40分間、穏やかに振盪しながらインキュベートした。このセファロースビーズを氷冷リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)で4回洗浄し、次いでそのサンプルを、Joukov et al., EMBO J., 15:290-298(1996)に記載されたように、ゲル電気泳動により解析した。
免疫沈降アッセイと比較した場合、受容体結合アッセイでも同様に、30〜32x103MTダブレットおよび22〜23x103MTポリペプチドバンドが得られた。このように、マウスVEGF-CはヒトVEGFR-3に結合する。観察されたマウスVEGF-Cポリペプチドのわずかに速い移動は、配列解析で認められた4つのアミノ酸残基の違い(図10、残基H88〜E91)により引き起こされたと考えられる。
マウス組換えVEGF-CのVEGFR-3自己リン酸化を誘導する能力も調べた。VEGFR-3受容体刺激実験については、密集前のNIH 3T3-Flt4細胞、Pajusola et al., Oncogene, 9:3545-3555(1994)を0.2%BSAを含有する血清フリー培地で一晩飢餓状態にした。一般に、VEGF-Cベクターでトランスフェクトされた細胞からのコンディショニング培地で5分間、細胞を刺激し、200μMバナジウム酸塩を含有する冷PBSで3回洗浄し、次いで免疫沈降分析のためRIPA緩衝液に溶解した。この細胞溶解液を16000 x gで25分間遠心分離し、得られた上清を特異的抗血清とともに氷上で2時間インキュベートし、次いでプロテインA-セファロースを用いる免疫沈降および7%SDS-PAGEでの解析を行った。ポリペプチドをニトロセルロースへ移し、Pajusola et al., Oncogene, 9:3545-3555(1994)によって記載されたように、を抗ホスホチロシン(Transduction Laboratories)および抗受容体抗体を用いるイムノブロッティングにより解析した。100mM2-メルカプトエタノール、2%SDS、62.5mM Tris-HCl, pH6.7中、50℃にて30分間、時々振盪しながらフィルターの剥離を行った。実験結果は、マウスVEGF-Cを含有する培養培地は、ヒトバキュウロウイルスVEGF-Cまたはチロシルホスファターゼ阻害過バナジウム酸塩と同程度まで、VERGFR-3の自己リン酸化を刺激することが実証された。
マウスVEGF-Cは、VERGFR-3のインデューサーの可能性があると考えられ、195x受容体の103MTの前駆体およびタンパク質分解により切断された125x103MTのチロシンキナーゼポリペプチド(Pajusola et al., Oncogene, 9:3545-3555(1994))がリン酸化される。
VERGFR-2刺激は、KDR(VERGFR-2)を発現する密集前のブタ大動脈内皮(PAE)細胞(PAE-VEGFR-2)[Waltenberger et al., J. Biol. Chem., 269:26988-26995(1994)]において研究され、これは0.2%BSAを含有する血清フリー培地中で一晩飢餓状態にした。前記のように刺激を行い、細胞溶解液を調製した。受容体免疫沈降については、VERGFR-2に対する特異的抗血清[Waltenberger et al., J. Biol. Chem., 269:26988-26995(1994)]を用いた。免疫沈降物は、VEGFR-3に関して記載したように、7%SDS-PAGEの後に、抗ホスホチロシン抗体を用いるウエスタンブロッティング、フィルター剥離、および抗VERGFR-2抗体(Santa Cruz)でそれをプローブすることにより解析をした。VERGFR-2刺激はまず、組換えVEGF-Cを発現する細胞からの非濃縮培地で試したが、イムノブロッティング解析からは受容体の自己リン酸化は明らかにならなかった。
さらにマウス組換えVEGF-Cも、ヒトVEGF-Cに関して観察されたようにVERGFR-2自己リン酸化を誘導するかどうかを決定するために、VERGFR-2を発現するPAE細胞を、マウスVEGF-C発現ベクターでトランスフェクトされた培養物からの10倍濃縮培地で刺激し、自己リン酸化を分析した。比較のため、ヒト組換えVEGF-C(Joukov et al.,(1996))を含有する10倍濃縮培地で処理した細胞、ヒトVEGF-Cバキュウロウイルスに感染させた昆虫細胞からの非濃縮培地、または過バナジウム酸塩(チロシンホスファターゼインヒビター)を用いた。ヒトバキュウロウイルスVEGF-Cならびに過バナジウム酸塩処理に応答して、VERGFR-2は顕著にリン酸化されたが、ヒトおよびマウス組換えVEGF-Cは、それぞれ弱い、かろうじて検出可能な自己リン酸化の増強を示すに過ぎなかった。エンプティーベクターまはたアンチセンス方向にクローン化されたVEGF-Cでトランスフェクトされた細胞培養物からの培地は、VERGFR-2の自己リン酸化を誘導しなかった。従って、マウスVEGF-CはVERGFR-3と結合し、VERGFR-2の活性化に要される濃度よりもずっと低い濃度でこの受容体を活性化する。やはり、本発明は、VEGF-CとVERGFR-3の間の相互作用に加え、VEGF-CとVERGFR-2との相互作用を利用する本発明の材料を使用する方法を包含する。
実施例27
Pichia酵母で発現したVEGF-C E104-S213断片はFlt4(VEGFR-3)およびKDR(VERGFR-2)の自己リン酸化を刺激する
末端切断型のヒトVEGF-CcDNAを構築した。ここでは(1)推定される成熟VEGF-Cアミノ末端H2N-E(104)ETLK(配列番号8、残基104以下参照)の残基をコードする配列は酵母PHO1シグナル配列(Invitrogen Pichia Expression Kit, カタログ番号K1710-01)にフレーム内で融合し、かつ(2)アミノ酸213の後に停止コドンが導入されている(H2N-...RCMS;すなわち配列番号7のコドン213の後)。得られた末端切断型cDNA構築体を次いでPichia pastoris発現ベクターpHIL-S1(Invutrogen)へ挿入した。クローン化については、コードされるポリペプチド配列を変化させずに、VEGF-Cコード配列の内部BglII部位を変異させた。
次いでこのVEGF-C発現ベクターをPichia細胞へトランスフェクトし、ウェスタンブロッティングにより、培養培地におけるVEGF-Cタンパク質の発現に関してスクリーニングすることにより陽性クローンを同定した。1つの陽性クローンを50ml培養で増殖させ、0〜60時間の種々の時間メタノールで誘導した。前記のように、約10μlの培地をゲル電気泳動、その後のウエスタンブロッティングおよび抗VEGF-C抗血清を用いる検出により解析した。組換えVEGF-C構築体でトランスフェクトされた細胞の培養培地にはおよそ24kDのポリペプチド(グリコシル化のためバンドの拡散が見られた)が集積したが、mockでトランスフェクトされた細胞またはベクター単独でトランスフェクトされた細胞では集積は認められなかった。
組換えVEGF-Cタンパク質を含有する培地を、Centricon 30kDカットオフ限外濾過により濃縮し、これを用いてFlt4(VERGFR-3)を発現するNIH 3T3細胞およびKDR(VERGFR-2)を発現するブタ大動脈内皮(PAE)細胞を刺激した。刺激された細胞を溶解し、VEGFR特異的抗血清を用いて免疫沈降させ、次いでその免疫沈降物を、抗ホスホチロシン抗体、化学発光および蛍光光度法を用いるウエスタンブロッティングにより解析した。VERGFRの最大自己リン酸化のための陽性対照として、10分間の細胞のバナジウム塩(VO4)処理を用いた。組換えVEGF-Cポリペプチドを分泌するPichia培養物からの培地は、195kDと125kDのFlt4ポリペプチド、ならびに約200kDのKDRポリペプチド双方の自己リン酸化を誘導した。一方、バナジウム酸塩は、この受容体バンドだけでなく、おそらくはこの受容体とともに沈降した他のバンドのチロシルリン酸化を強く誘導する。
これらの結果は、アミノ酸残基104E〜213S(配列番号8、残基104〜213)からなるVEGF-CのVEGF相同ドメインは、酵母内で組換えにより産生することができ、これはFlt4(VERGFR-3)およびKDR(VERGFR-2)の自己リン酸化を刺激することができるということを実証するものである。Flt4およびKDRの自己リン酸化を刺激することができる、本明細書で記載した断片のような組換えVEGF-C断片は、本発明の態様として意図されるものであり;これらの断片を用いる方法もまた本発明の範囲内にある。
実施例28
VEGF-Cの差別的プロセッシング形態の特性
以下のオリゴヌクレオチドを用いてVEGF-C変異体および類似体セットを作製した:
5’-TCTCTTCTGTGCTTGAGTTGAG-3’(配列番号15)、VEGF-C R102S(102位(配列番号8)でアルギンをセリンへ変異)の作製に使用;
5’-TCTCTTCTGTCCCTGAGTTGAA-3’(配列番号16)、VEGF-C R102S(102位(配列番号8)でアルギンをグリシンへ変異)の作製に使用;
5’-TGTGCTGCAGCAAATTTTATASGTCTCTTCTGTGGCGGCGGCGGCGGCGGGCGCCTCGCGAGGACC-3’(配列番号17)、VEGF-C△N(アミノ酸32〜102(配列番号8)に相当するN末端プロペプチドの欠失)の作製に使用;
5’-CTGGCAGGGAACTGCTAATAATGGAATGAA-3’(配列番号18)、VEGF-C R226,227S(226およに227位(配列番号8)でアルギンコドンをセリンへ変異)の作製に使用;
5’-GGGCTCCGCGTCCGAGAGGTCGAGTCCGGACTCGTGATGGTGATGGTGATGGGCGGCGGCGGCGGCGGGCGCCTCGCGAGGACC-3’(配列番号19)、VEGF-C NHis(この構築体は、実施例21に示したように、分泌された前駆体のNほぼ末端と融合した6xHisタグを有するポリペプチドをコードする(配列番号8のアミノ酸33))の作製に使用。
前記VEGF-C変異型構築体のいくつかをさらに修飾してその他の構築体を得た。例えば、pALTER中のVEGF-C R102G(Promega)とオリゴヌクレオチド5’-GTATTATAATGTCCTCCACCAAATTTTATAG-3’(配列番号20)を用いてVEGF-C 4Gを作製し、これは4つの点突然変異:R102G、A110G、A111GおよびA112G(110〜112位(配列番号8)でアラニンをグリシンへ変異)を有するポリペプチドをコードする。これら4つの変異体はPC-3および組換えにより293 EBNA細胞で発現したVEGF-Cの推定切断部位に隣接している。
もう1つの構築体はVEGF-C△Nとオリゴヌクレオチド5’-GTTCGCTGCCTGACACTGTGGTAGTGTTGCTGGCGCCGCTAGTGATGGTGATGGTGATGAATAATGGAATGAACTTGTCTGTAAACATCCAG-3’(配列番号21)を用いて作出し、VEGF-C△N△CHisを作製した。この構築体は、N末端ポリペプチド(アミノ酸32〜102)の欠失;C末端ポリペプチド(配列番号8のアミノ酸226〜419)の欠失;およびC末端における6xHisタグの付加を有するポリペプチドをコードする(配列番号59を参照)。
総ての構築体をHindIIIおよびNotIで消化し、HindIII/NotIで消化したpREP7ベクター中へクローン化し、これを用いて293 EBNA細胞をトランスフェクトした。トランスフェクション後約48時間で、細胞を前記のようにPro-mix(商標)で代謝標識するか、または血清フリー培地で2時間飢餓状態にした。次いで培地を回収し、次の実験に用いた。野生型(wt)VEGF-C、VEGF-C NHisおよびVEGF-C△N△CHisは、293 EBNA細胞の場合と同様のレベルまで発現した。同時に、VEGF-C 4Gポリペプチドの発現は、おそらく翻訳産物のコンホメーション変化および安定性の低下のため、顕著に低かった。しかしながら、前記のVEGF-C変異体は総て細胞から分泌された。
トランスフェクト細胞および飢餓状態の細胞からのコンディショニング培地は5倍濃縮し、これを用いてNIH 3T3細胞で発現したFlt4(VERGFR-3)およびPAE細胞で発現したKDR(VERGFR-2)のチロシンリン酸化を刺激するそれらの能力を評価した。野生型(wt)VEGF-Cならびに3つの変異型ポリペプチドの総てはVEGFR-3のチロシンリン酸化を刺激した。観察された最も顕著な刺激は、短鎖成熟VEGF-C△N△CHisによるものであった。この変異体、ならびにVEGF-C NHisはまた、VERGFR-2のチロシンリン酸化も刺激した。このように、分泌された組換えVEGF-Cの主要成分が32/29kDの二量体であるという事実にかかわらず、そのVERGFR-3およびVERGFR-2への結合にあずかるVEGF-Cの活性部分は、VEGF-C前駆体のアミノ酸102と226(配列番号8)の間に位置する。本明細書で記載したもののようなアッセイを用い、これらVEGF-Cタンパク質と変異体の結合特性および生物学的活性の解析および比較することにより、観察された主要な32/29kDおよび21〜23kD VEGF-Cプロセッシング型の有意性にかかわるデータが提供されるであろう。このデータはVEGF-C前駆体のアミノ酸残基103〜225(配列番号8)をコードする構築体が、VERGFR-3とVERGFR-2の双方に対して機能を有する組換えリガンドを作り出すことを示すものである。
本実施例および前記実施例からのデータは、VEGF-Cポリペプチドの多くの断片が生物学的活性を保持していることを実証するものである。天然に存在する、配列番号8のアミノ酸103〜226(または103〜227)にわたるVEGF-Cポリペプチドは、C末端を規定する自然のプロセッシング切断により作り出され、活性を有することが示された。実施例27は、配列番号8の残基104〜213を有する断片が生物学的活性を保持していることを実証する。
さらに、実施例21からのデータは、配列番号8の112位にそのアミノ末端を有するVEGF-Cポリペプチドが活性を保持していることを実証する。その他の実験では、配列番号8の残基1〜112を欠く断片が生物学的活性を保持していることを示した。
関連する実験では、停止コドンは配列番号8の214位においてリジンで置換されていた(配列番号7、ヌクレオチド991〜993)。得られた組換えポリペプチドなお、Flt4自己リン酸化を誘導することができ、このことは配列番号8のアミノ酸残基113〜213にわたるポリペプチドが生物的に活性であることを示している。
VEGFファミリーのポリペプチドのメンバーの配列比較は、配列番号8で推定されるポリペプチドのいっそう小さな断片が生物学的活性を保持しているという示唆を与える。特に、VEGFファミリーのポリペプチドの高度に保存された8個のシステイン残基は、進化論的に重要な配列番号8の残基131〜211(図10を参照)から領域を規定し;それゆえ約残基131〜約残基211にわたるポリペプチドは、VEGF-Cの生物学的活性を保持していると期待される。事実、保存モチーフRCXXCCを保持しているポリペプチド(例えば、配列番号8の約残基161〜約残基211を含んでなるポリペプチド)は、VEGF-Cの生物学的活性を保持していると仮定される。これらの断片の天然のコンホメーション維持するためには、カルボキシ末端に約1、2個のアミノ酸付加を保持し、アミノ末端に1、2またはそれ以上のアミノ酸を保持することが好ましいと考えられる。
前記の考察の他の証拠として、保存されたシステインを欠いたより小さな断片および/または断片類似体であるにもかかわらず、VEGF-Cの生物学的活性を保持しているであろうことにある。結局、本発明の材料および方法には、システイン残基の保存セットのメンバーの存在または不在にかかわらず、少なくとも1つのVEGF-Cの生物学的活性を保持しているVEGF-C断片、変異体、および類似体の総てが含まれる。
実施例29
トランスジェニックマウスにおいてヒトK14ケラチンプロモーターの下にあるヒトVEGF-Cの発現は、皮膚におけるリンパ管の盛んな増殖を誘導する
Flt4受容体チロシンキナーゼは、リンパ管の内皮で相対的に、特異的に発現する。Kaipainen et al., Proc. Natl. Acad. Sci.(USA), 92:3566-3570(1995)。さらに、VEGF-C増殖因子はFlt4受容体を刺激し、このことは血管のKDR受容体に対する活性が低いことを示している(Joukov et al., EMBO J., 15:290-298(1996);実施例26を参照)。
組織におけるVEGF-C過剰発現の特異的作用を解析するため、実験はトランスジェニックマウスで行った。ヒトK14ケラチンプロモーターは、層をなす扁平上皮細胞の基底細胞において活性があり(Vassar et al., Proc. Natl. Acad. Sci.(USA), 86:1563-1567(1989))、組み換えVEGF-C導入遺伝子において発現制御因子として使用した。K14ケラチンプロモーターを含有するベクターはVassar et al., Genes Dev., 5:714-727(1991)およびNelson et al., J. Cell Biol. 97:244-251(1983)。
組換えVEGF-C導入遺伝子は、ヒト全長VEGF-CDNA(GenBnk Acc. No. X94216)。この配列は、XhoI/NotIを用いてpCI-neoベクター(Promega)から切り出され、結果としてオープンリーディングフレームと停止コドンを含有する2027塩基対の断片(配列番号7のヌクレオチド352〜1611)が単離された。次いでこの単離配列を、DNAポリメラーゼのクレノウ断片を用いて末端補充反応(end-filling reaction)を行う。次いでこの平滑末端化断片を、K14ベクターの同様にして開環したBamHI制限部位に連結した。得られた構築体はpCI-neoベクターのポリリンカーに由来するEcoRI部位を含んでいた。このEcoRI部位を標準的な技術を用いて除去して(EcoRIで組換え中間生成物を部分的に消化した後、クレノウが介在する補充反応を行う)、受精したマウス卵母細胞に注入すべきDNA断片の一連の切り出しを容易にした。得られたクローンはK14-VEGF-Cで示され、WO 97/05250として公表された、1996年8月1日に出願された同一所有のPCT特許出願PCT/FI96/00427の図20に示されている。
K14プロモーター、VEGF-CcDNA、およびK14ポリアデニル化シグナルを含有するクローンK14 VEGF-C由来のEcoRI-HindIII断片を単離し、FVB-NIHマウス系統の受精した卵母細胞に注入した。注入接合子を偽妊娠C57/BL/6xDBA/2Jハイブリッドマウスの卵管へ移植した。プライマー:5’-CATGATCGAACCGCCAG-3’(配列番号22)および5’-AATGACCAGAGAGAGGCGAG-3’(配列番号23)を用い、テールDNAのポリメラーゼ連鎖反応により、導入遺伝子の存在に関して得られた創始マウスを解析した。さらに、テールDNAをEcoRVで消化し、次いでマウスに注入されたEcoRI-HindIII断片を用いサザン解析を行った。解析した3週齢の子イヌ8個体のうち、2個体が陽性であり、それら個々のゲノムにおよそ40〜50コピーおよび4〜6コピーの導入遺伝子を有していた。
導入遺伝子のコピー数の多いマウスは小さく、その同腹子より発達が遅く、食物摂取が困難(すなわち、離乳しない)であった。さらなる実験では、腫れた赤い鼻および下毛が少ないことが示された。特殊な液体食餌を与えたが、食餌後の呼吸器上部および消化管の浮腫に苦しみ、呼吸が困難であった。このマウスは誕生8週間後に死に至り、直ちに組織学、免疫組織化学およびin situハイブリダイゼーションのために処理した。
組織学的実験では、同腹子の皮膚に比べ、K14-VEGF-Cトランスジェニックマウスの背部の真皮は萎縮し、結合組織は赤血球を欠いた大きな裂孔に置き換わり、薄い内皮層として並んでいた。これら膨張した管様構造はヒトリンパ管腫に見られるものに類似していた。皮膚の付属器官および毛包の数は減少していた。鼻部では、血管数の増加も見られた。従って、基底表皮におけるVEGF-Cの過剰発現は、大きな血管裂孔をはじめとする皮膚下層における血管の構造の拡張増殖を誘導し得る。in situハイブリダイゼーションでは、これらの裂孔を取り巻く内皮細胞は豊富なFlt4mRNAを含んでいた(方法論については実施例23および30を参照)。血管の形態学により、VEGF-Cはリンパ管の特徴を有する血管の増殖を刺激することが示された。他のK14-VEGF-Cトランスジェニックマウスも、同様の組織変化を有していた。
さらに19個体の子イヌを3週齢でVEGF-C導入遺伝子に関して解析し、解析した子イヌの数はは27個体となった。3番目の導入遺伝子陽性の子イヌを確認し、これはそのゲノムにおよそ20コピーの導入遺伝子を有していた。前記の20コピーのマウスおよび4-6コピーのマウスは、それぞれ子イヌ11個体から6個体、40個体から2個体へと遺伝子を伝達した。これらさらなるトランスジェニックマウスの生理機能をさらに解析した。
成体トランスジェニックマウスは小さく、若干腫れたまぶたを有し、下毛の発達が不十分であった。組織学的実験では、真皮が過形成され、毛包数が減少していることが示され、これらの作用は他の表現型変異に対しては特異的でなく、二次的なものであった。皮膚は萎縮し(皮膚の厚さは、同腹子対照では65%であるのに対して45%)、その結合組織は赤血球を欠き、大きく膨張した血管に置き換わり、薄い内皮細胞層が並んでいた。このように異常な血管は真皮に限られ、不全な、管腔の拡大した過形成リンパ管の特徴に類似していた。Fossum, et al., J. Vet. Int. Med., 6:283-293(1992)を参照。また、この超微細構造的特徴は、管壁に重複内皮接合点、アンカーフィラメントを有し、さらに断片的または部分的に基底膜を欠くことで血管とは異なるリンパ管を思わせた。Leak, Misrovasc. res., 2:361-391(1970)を参照。さらに、IV、XVII型コラーゲンに対する抗体[Muragaki et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92:8763-8776(1995)]およびラミニンはこれら血管を極めて弱く染色するかまたは全く染色しなかったが、他の血管の基底膜染色は顕著であった。またその内皮はリンパ管で発現したデスモプラキンIおよびII(Progen)に対するモノクローナル抗体でポジ染色されることを特徴とするが、血管内皮細胞ではこのようなことはない。Schmelz et al., Differentiation, 57:97-117(1994)を参照。ひとまとめにすると、これらの発見は、異常な血管がリンパ起源であることを強く示唆した。
ノーザンハイブリダイゼーション研究では、トランスジェニックマウスの真皮および毛包において多量のVEGF-CmRNAが検出され、一方、その受容体VERGFR-3およびVERGFR-2ならびにTie-1内皮受容体チロシンキナーゼ[Korhonen et al., Oncogene, 9:395-403(1994)]をコードするmRNAは異常な血管を裏打ちする内皮細胞で発現した。同腹対照動物の皮膚では、VERGFR-3はリンパ管の表面の乳頭状の下層でのみ検出され、一方、VERGFR-2は、総ての内皮に見られ、これは初期の発見にも一致している。Millauer et al., Cell, 72:1-20(1993);およびkaipainen et al., Proc. Natl. Acd. Sci. USA, 92:3566-3570(1995)を参照。
リンパ内皮は、その機能要求に順応するために大きな拡張能力を有している。血管拡張が内皮の拡大および増殖によるものかどうかを調べるため、in vitroで増殖アッセイを行った。具体的には、DNA合成を測定するために、4個体のトランスジェニックマウスおよび4個体の対照マウス由来の3mm x 3mmの皮膚生検を、10mg/mlのBrdUを含むDMEM中、37℃で6時間インキュベートし、70%エタノール中で12時間固定し、パラフィンに包埋した。室温にて、0.1M HCl中0.1%ペプシンで30分間処理しDNAを変性させた後、マウスモノクローナル抗BrdU抗体(Amersham)を用いて染色を行った。トランスジェニックマウスにおけるVEGF-C−受容体相互作用は細胞***シグナルを変換すると考えられ、なぜなら、BrdUの組み込みとそれに次ぐ抗BrdU抗体での染色により証明されるように、若いK14-VEGF-Cマウス由来の皮膚のリンパ内皮が、同腹子対照に比べ、高いDNA合成を示したからである。このデータはさらにVEGF-Cが哺乳類組織において真の増殖因子として作用することを確信させるものである。
関連する実験では、同じVEGF導入遺伝子はリンパ増殖をを誘導しなかったが、代わりに高い透過性の曲がりくねった微細血管の密度を増加させた。
脈管形成は内皮の増殖、発生および移動を含む多段階過程である。Folkman et al., J. Biol. Chem., 267:10931-10934(1992)を参照。このような過程のトランスジェニック表現型への寄与を調べるため、当技術分野で公知の技術を用い、蛍光微細リンパ管造影法を用いてリンパ管の形態および機能を解析した。Leu et al., Am. J. Physiol., 267:1507-1513(1994)を参照。便宜には、8週齢のマウスに麻酔をかけ、加熱パッドに置き、37℃に維持した。FITC-デキストラン2M(PBS中8mg/ml)溶液で満たしたカテーテルに連結した30ゲージの針を尾の先端へ挿入した。50cmの一定水圧(おおよその平均は0.01μl/分の流速)で溶液を、充填ネットワークの拡張が一定に維持されるようになるまで(およそ2時間)注入した。流速および蛍光強度は実験を通じて継続的に監視した。これらの実験では、下記の表に要約されるように、対照マウスおよびトランスジェニックマウスの双方で、同じメッシュサイズを有する典型的な蜂の巣状ネットワークが観察されたが、リンパ管の径はトランスジェニックマウスでは約2倍の大きさであった。(当技術分野で記載されているように、血管の生体内蛍光顕微鏡観察を行った。Fukumura et a., Cancer Res., 55:4824-4829(1995)を参照)。
異常な血管の機能不全のあるものは、その異常な血管を完全にデキストランで満たすのにより長い時間がかかるということにより示された。FITC-デキストランを尾の血管へ注入し、次いで耳の蛍光顕微鏡観察を行うことで、トランスジェニックマウスでは血管形態は変化しておらず、白血球の回転および付着力も正常に見えることが示された。これらの結果はVEGF-Cにより誘導された内皮増殖は、表面上のリンパ管網の過形成はもたらすが、新たな管の発生を引き起こすことはないことが示された。
このようなVEGF-C過剰発現の作用は、予期されなかったことであるが特異的であり、特にその理由としては、他の実施例に記載されたように、VEGF-Cもまた、血管内皮細胞の主要な細胞***誘発受容体であるVERGFR-2に結合してこれを活性化することができるからである。培養において、高濃度のVEGF-Cは、VERGFR-2は発現するが、VERGFR-3は有意な量では発現しないウシ毛細管内皮細胞の増殖および移動を刺激する。さらに、VEGF-Cは、おそらくVERGFR-2の作用を介して、Milesアッセイ[Miles, A.A., and Miles, E.M., J. Physiol., 118:228-257(1952);およびUdaka, et al., Proc. Soc. Exp. Biol. Med., 133:1384-1387(1970)]において血管透過性を誘導する。Milesアッセイにおいて、VEGF-CはVEGFより効力が低く、同程度の透過性を誘導するためには4〜5倍高い濃度のVEGF-C△N△CHisを要する。in vivoにおいて、リンパ管内皮細胞に対するVEGF-Cの特異的作用は、生理学的濃度の増殖因子で内皮細胞増殖のためのVERGFR-3 x VERGFR-2ヘテロ二量体の形成に対する要求に影響し得る。このような可能性を有するヘテロ二量体は、いかにして3つの相同なVEGFが部分的に重複する、いっそう厳密に特異的な生物学的作用を発揮するかを説明することを助けるであろう。
前記のin vivoにおけるデータは、(i)VEGF-CポリペプチドならびにVEGF-Cの生物学的活性を有するポリペプチド変異体および類似体と、(ii)抗VEGF-C抗体およびVEGF-C活性を阻害する(例えば、VEGF-Cに結合するか、またはVEGF-C/受容体相互作用を阻害することによる)VEGF-Cアンタゴニストの双方の有用性を示している。例えば、データは、リンパ組織の増殖が望まれる患者(例えば、胸部癌または他の外科手術によりリンパ組織が除去され、それゆえリンパ管の排水が損なわれて腫大を生じた患者、または象皮病を患う患者)におけるVEGF-Cポリペプチドの治療上の有用性を示すものである。またデータは、リンパ組織の増殖阻害が望まれる病状のための抗VEGF-C抗体物質およびVEGF-Cアンタゴニストの治療上の有用性(例えば、リンパ管腫の治療)を示す。従って、本発明の材料および方法として、VEGF-CならびにVEGF-C変異体、類似体およびアンタゴニストを投与する方法が考えられる。
実施例30
発達中のマウスにおけるVEGF-CおよびFlt14の発現
交尾後16日受胎マウスからの胚を調製し、4%パラホルムアルデヒド(PFA)中で固定して、パラフィンに包理し、6μmの切片を作製した。その切片をシラン処理した顕微鏡用スライドに載せ、キシレンで処理、再水和して、20分間4%PFAで固定、室温で5分間プロテインキナーゼK(7mg/ml; Merck, Darmstadt Germany)で処理して、再び4%PFAで固定し、無水酢酸で処理、漸増濃度のエタノールで溶解して再水和し、乾燥して、in situハイブリダイゼーションに用いた。
切片のin situハイブリダイゼーションを記載のように(Vastrik et al., J. Cell Biol., 128:1197-1208(1995))行った。マウスVEGF-CcDNAのヌクレオチド499〜979に相当する断片を含み、そこで非コーディング領域およびBP3P反復をエキソヌクレアーゼIII処理により排除するマウスVEGF-CアンチセンスRNAプローブを線状化pBluescript II SK+プラスミド(Stratagene Inc.)から作製した。その断片を、pBluescript II SK+のEcoRIおよびHindIII部位へクローン化した。T7RNAポリメラーゼおよび[35S]-UTP(Amersham, Little Chalfont, UK)を用いて放射性標識RNAプラスミドを合成した。1スライドにつき約2百万cpmのVEGF-Cプローブを用いた。一晩ハイブリダイゼーションした後、スライドをまず2xSSCおよび20-30mM DTT中、50℃で1時間洗浄した。37℃で30分間のRNアーゼA処理(20μg/ml)の後に4xSSCおよび20mM DTTおよび50%脱イオン化ホルムアルデヒド中、高いストリンジェンシー洗浄処理を65℃で30分間続けた。高いストリンジェンシー洗浄処理を45分間繰り返した。最後に、スライドを再水和し、室温で30分間乾燥させた。そのスライドを写真エマルジョンに浸し、4週間露光した。Kodak D-16 developerを用いてスライドを現像し、ヘマトキシリンで対比染色し、Permount(Fisher Chemical)で固定した。
Flt4配列のin situハイブリダイゼーション用に、公開配列(Finnerty et al., Oncogene, 8:2293-2298(1993))のbp1〜192を含むマウスFlt4cDNA断片を用い、次の例外も含め前記に記載のプロトコールに従った。約百万cpmのFlt4プローブを各スライドに用いた。ハイブリダイゼーションに続き、ストリンジェント洗浄を1xSSCおよび30mM DTT中、105分間行った。
これらの試験からの暗−明視野顕微鏡写真は、出典明示して本明細書の一部とみなされる1996年8月1日出願、公開PCT特許出願PCT/F196/00427で公開する。顕微鏡写真からの情報を下記に要約する。
最も顕著なFlt4ハイブリダイズ構造は発達中のリンパおよび静脈内皮に対応しているようである。発達中の咽頭粘膜を取り囲む叢様内皮血管構造が認められた。VEGF-Cプローブを用いる最も顕著なシグナルは発達中の鼻甲介骨後部から得られ、それはより高い倍率で隙間結合組織/形成軟骨を取り囲む上皮を示した。この構造はVEGF-Cに対して強いin situハイブリダイゼーションシグナルを示した。このシグナルは見かけ上は遥かに均一であるが、VEGF-Cプローブを用いた場合のより弱いハイブリダイズ領域が鼻周辺に認められた。かくして、VEGF-Cの発現は発達中の鼻甲介骨で著しく高い。
甲介骨は多くの血管叢で取り囲まれ、上皮細胞にり産生される粘液の供給源として、またおよび吸い込んだ空気を温めるための鼻の生理機能において重要である。VEGF-Cは粘膜での甲介骨の静脈叢の形成において重要であること、およびそれが鼻粘液の分泌に必要とされる血管透過性をも調節するであろうことを示唆した。VEGF-Cおよびその誘導体、さらにアンタゴニストは、産生される粘液の量および質の他、甲介骨組織および粘膜の膨圧、それゆえ上部呼吸管の径の調節に用いることができよう。これらの因子は上部呼吸管の炎症性(アレルギー性を含む)および伝染性疾患において臨床上極めて重要である。それゆえに本発明は、鼻構造を含む上部呼吸管に影響を及ぼす炎症性および伝染性疾患を診断し、治療する方法においてVEGF-C、Flt4およびそれらの誘導体を含む本発明の物質を使用する方法を考える。
実施例31
ヒトVEGF-C遺伝子のエキソン−イントロン構成の同定
ヒトVEGF-C遺伝子のエキソン1、2、および3を含む2つのゲノムDNAクローンを、プローブとしてVEGF-CcDNA断片を用いるヒトゲノムDNAライブラリーから単離した。特に、ヒトVEGF-CcDNA(配列番号7)のヌクレオチド629-746に相当するPCR生成断片を用いて、バクテリオファージEMBL-3lambda(Clontech)のヒトゲノムライブラリーをスクリーニングした。「ラムダ3(lambda3)」と呼ばれる1つの陽性クローンを同定し、その挿入断片を14kb XhoI断片として、pBluescriptII(pBSKII)ベクター(Stratagene)へサブクローン化した。標識した130bp NotI-SacI断片でVEGF-CcDNA(NotI部位はクローニングベクターのポリリンカーにあり;SacI部位は配列番号7のヌクレオチド92〜97に一致する)の5’-非コーディング領域から、そのゲノムライブラリーもまたスクリーニングした。「ラムダ5(lambda5)」および「ラムダ8(lambda8)」と呼ばれる2つの陽性クローンを得た。制限マッピング解析は、クローンラムダ3はエキソン2および3を含み、一方クローンラムダ5はエキソン1およびその推定プロモーター領域を含むことを示した。
エキソン4、5、6および7を含む3つのゲノム断片を、ゲノムVEGF-C PIプラスミドクローンからサブクローン化した。特に、ゲノムVEGF-C PIプラスミドクローン7660(Paavonen et al., Circulation, 93: 1079-1082(1996))から精製したDNAを用いた。PI挿入DNAのEcoRI断片をpBSKIIベクターへ連結した。プローブとして標準的長さのVEGF-CcDNAを用い、ヒトVEGF-CcDNA相同配列を含んだクローン7660のサブクローンを、コロニーハイブリダイゼーションにより同定した。3つの異なるゲノム断片を同定、単離した。それは残りのエキソン4〜7を含んでいた。
ゲノム構成を決定するために、制限エンドヌクレアーゼ切断を用い、そのクローンの地図を作った。コーディング領域およびエキソン−イントロン連結もまた、部分的に連続した。この解析の結果は図11Aおよび12に表す。総てのイントロン−エキソン境界の配列(図11A、配列番号24〜35)は、共通スプライシングシグナル(Mount, Nucl. Acids Res., 10: 459-472(1982))に一致した。エキソン5および6間のイントロンの長さは直接、ヌクレオチド配列により決定され、301bpであるとわかった。エキソン2および3間のイントロンの長さは制限マッピングおよびサザンハイブリダイゼーションにより決定され、約1.6kpであるとわかった。他のイントロンはそれぞれ10kb以上の長さである。
同様の解析をマウスゲノムVEGF-C遺伝子について行った。マウスVEGF-Cイントロン−エキソン境界の配列は図11Bおよび配列番号36〜47に表す。
制限マッピングおよび配列データは、VEGF-Cシグナル配列およびN末端プロペプチドの第1残基がエキソン1によりコードされることを示した。第2のエキソンはN末端プロペプチドのカルボキシ末端部分およびVEGF相同ドメインのアミノ末端をコードする。VEGF相同ドメインの最もよく保存されている配列をエキソン3(6つの保護システイン残基を含む)および4(2つのcys残基を含む)に分布している。残りのエキソンは、C-6X-C-10X-CRC型(エキソン5および7)のシステインリッチモチーフ、およびシルクタンパク質特有のC-6X-B-3X-C-C-C型の五重反復モチーフをコードする。
さらにヒトVEGF-C遺伝子プロモーターを同定するために、ラムダ5クローンをさらに解析した。このクローンのシングルおよびダブル消化、およびサザンハイブリダイゼーションの組み合わせを用いる制限マッピングは、それが(1)推定イニシエーターATGコドンの約6kb上流領域、(2)エキソン1、(3)VEGF-C遺伝子のイントロンIの少なくとも5kbを含むことを示した。
エキソン1および5’および3’フランキング配列を含むクローンラムダ5の3.7kbのXbaI断片をサブクローン化しさらに解析した。前記に記載されたように、主要なVEGF-CmRNAバンドは約2.4kbの位置に移動する。1257bpのVEGF-Cコーディング配列および391bpの3’非コーディング配列、約50〜200bpのポリA配列を加えて算出して、mRNA開始部位は翻訳開始コドン約550〜700bp上流であると概算した。
RNアーゼ保護アッセイを用い、mRNA開始部位のより正確な位置を得た。これらの試験の結果は、ヒトVEGF-C遺伝子のRNA開始部位をATG翻訳開始コドン539bp上流に位置することを示した。
さらにヒトVEGF-C遺伝子プロモーターを同定するために、翻訳開始部位約2.4kb上流を包囲するゲノムクローンを単離し、5’非コーディングcDNA配列および推定プロモーター領域を配列決定した。得られた配列は配列番号48で記載する。(配列番号7のVEGF-CcDNA配列の開始は配列番号48の2632の位置に相当し;翻訳開始コドンは配列番号48の2983〜2985の位置に相当する)VEGF遺伝子で認められたことと同様に、VEGF-CプロモーターはGおよびC残基が多く、共通TATAおよびCCAAT配列を欠く。それよりむしろ、それはSpl、TATAの少ない遺伝子の転写を開始することができる局在性核タンパク質に対する多数の推定結合部位(5’-GGGCGG-3’または5’-CCGCCC-3’)を有する。Pugh and Tjian, Gene and Dev., 5:105-119(1991)を参照。さらに、VEGF-C翻訳開始部位の上流配列は、AP-2因子(5’-GCCN3GCC-3’)に対する共通結合部位およびAP-1因子(5’-TKASTCA-3’)に対する結合部位を含むということがわかった。NFkBおよびGATAのような組織特異的な遺伝子発現のレギュレーターの結合部位は、VEGF-Cプロモーターの遠位部分に位置する。これはcAMP-依存性プロテインキナーゼおよびプロテインキナーゼCがAP-2転写因子[Curran and Franza, Cell, 55:395-397(1988)](5’-GCCN3GCC-3’)のアクチベーターとして、VEGF-C転写調節に介在することを示す。
VEGF-C遺伝子は心臓、胎盤、卵巣および小腸のような成人組織で非常に発現され、様々な因子により誘導される。確かに、NFkB(5’-GGGRNTYYC-3’)およびGATAのような組織特異的な遺伝子発現のレギュレーターの可能性ある数種の結合部位はVEGF-Cプロモーターの遠位部分に位置する。例えば、NFkBが内皮細胞の組織因子の発現を調節することは公知である。さらに、GATAファミリーの転写因子は、細胞型に特異的な遺伝子発現を調節すると考えられる。
VEGFとは違いVEGF-C遺伝子は低酸素誘発因子、HIF-1(Levy, et al., J. Biol. Chem., 270:13333-13340(1995))の結合部位を含まない。この研究結果は、VEGF-CmRNAが低酸素状態により調節される場合、そのメカニズムはおもにmRNA安定性の調節に基づくであろうことを提案する。この点については、多くの研究がVEGF遺伝子の低酸素状態の誘発の主要制御点がmRNAの定常状態の調節であることを示してきた。Levy, et al., J. Biol. Chem., 271:2746-2753(1996)を参照。VEGFmRNA安定性および崩壊の相対速度は、その3’非翻訳領域(UTR)の特異的配列モチーフの存在により決定されると考えられ、それはmRNA安定性を調節するということが証明されてきた。(Chen and Shyu, Mol. Cell Biol., 14:8471-8482(1994))VEGF-C遺伝子の3’-UTRもまた配列番号7の1873〜1878の位置に、この型の推定モチーフ(TTATTT)を含む。
トランスフェクトされた細胞のVEGF-Cの定常発現に重要なDNA要素を同定するために、プロモーター領域の至るところに一連の5’欠失を含む1組のルシフェラーゼリポータープラスミドを構築した。第1エキソンの5’部分を含むゲノムDNAの制限断片を、pGL3リポーターベクターのポリリンカー(Promega)へクローン化し、配列決定して確認した。2μgのpSV2-β-ガラクトシダーゼプラスミド(トランスフェクション効率の対照として用いられる)と結合した約10μgの別個の構築物を、リン酸カルシウム媒介トランスフェクション法を用いてHeLa細胞へトランスフェクトした。トランスフェクション2日後、その細胞を回収し、ルシフェラーゼアッセイをした。ルシフェラーゼ活性は、SV40プロモーター/エンハンサーにより駆動されるpGL3制御ベクターの活性に対して正規化した。
図3に表されたように、クローンラムダ5の5.5kbのXhoI-RsrII断片は、プロモーターを持たないベクターと比較した時の9倍近く高い活性を示した。2.2kbの5’XhoI-HindIII断片はプロモーター活性に対する効果はなかった。逆配向の同一断片の活性はバックグラウンドレベルである一方、1.16kbのXbaI-RsrII断片の活性は、pGL3基本ベクターのものの約2倍であった。1057〜199の領域(すなわち、転写開始部位から199〜1057bp上流)のサイレンサー要素の存在を示して、baI-SacI断片のさらなる欠失はプロモーター活性の増大を引き起こした。最短の断片(SacII-RsrII)はバックグラウンド活性だけをもたらし、それはmRNA開始部位がこの構築物に存在しないという事実と一致した。
ヒトVEGF-Cの第1エキソンのさらなる配列が定常発現に重要であるか否かをを決定するために、ヌクレオチド214〜495(すなわち、転写開始部位から214〜495bp下流)にわたるRsrII断片をXbaI-RsrII断片およびルシフェラーゼリポーター遺伝子の両者間にサブクローン化した。確かに、XbaI-RsrII構築物と比較した場合、得られた構築物は活性の50%増加を示した。
VEGF遺伝子は血清由来増殖因子を含む多くの刺激剤によりアップレギュレーションされることが示されている。VEGF-C遺伝子もまた血清により刺激することができるか否かを確認するために、血清飢餓状態のおよび血清刺激されたHT1080細胞からのRNAをプライマー伸長解析を行い、それはVEGF-CmRNAが血清刺激によりアップレギュレーションされることを実証した。
さらなる血清刺激試験は、血清刺激がVEGF-Cプロモーター活性の増加を導くということを示した。細胞は前記に記載のようにトランスフェクトされ、トランスフェクション24時間後0.5%ウシ血清アルブミンを含む培地に交換した。次いで細胞を10%胎児子ウシ血清で4時間刺激し解析した。ラムダ5から誘導されたXbaI-RsrIIプロモーター構築物はウシ刺激において2倍の活性増加をもたらした、一方逆配向の同一断片は反応しなかった。他の総てのプロモーター構築物もまた1.4〜1.6倍の範囲でのアップレギュレーションを示した(図3)。
実施例32
VEGF-Cスプライス変異体の同定
実施例16に記載されたように、多数の2.4kbのVEGF-CmRNAおよびより少量の2.0kbのmRNAは注目すべきである。これらのRNAの起源を明確にするために、いくつかの付加的なVEGF-CcDNAを単離し同定した。実施例10で記載のように、プローブとして153bpのヒトVEGF-CcDNA断片を用い、ラムダgtllベクター(Clontech, product #HL10486)のHT1080からのヒト繊維肉腫cDNAライブラリーをスクリーンした。Joukov et al., EMBO J., 15: 290-298(1996)も参照。9の陽性クローン選び、オリゴヌクレオチド
を用い、PCR増幅により解析した。これらのオリゴヌクレオチドを選択し、配列番号7のヌクレオチド495〜1661に対応するVEGF-CcDNA部分を増幅した。55℃のアニール温度および25サイクルでPCRを行った。
得られたPCR産生物をアガロースゲル上で電気泳動した。解析された9のうち5クローンが推定全長1147塩基対のPCR断片を生じたが、1つはわずかに短かった。より短い断片および推定全長をもつ断片の1つを、pCRTMIIベクター(Invitrogen)へクローン化し、配列決定により解析した。その配列は、より短いPCR断片には153塩基対の欠失があり、それが配列番号7のヌクレオチド904〜1055に相当していることを明らかにした。ヒトおよびマウスVEGF-C遺伝子のエキソン4に相当するこれらの欠失塩基は、図式的に図13Aおよび13Bに表した。エキソン4の欠失は、標準的長さのタンパク質を発現するのに使用されるフレームとは異なるフレームのエキソン5から翻訳された15のアミノ酸残基をもつ(順に標準的長さのVEGF-C前駆体のC末端切断となる)フレームシフトとなる。このように、得られた末端切断型のポリペプチドのC-末端アミノ酸配列は--Leu(181)-Ser-Lys-Thr-Val-Ser-Gly-Ser-Glu-Gln-Asp-Leu-Pro-His-Glu-Leu-His-Val-Glu(199)(配列番号51)であろう。このスプライス変異体によりコードされたポリペプチドは、VEGF-C前駆体のC-末端切断部位を含まないであろう。このように、保護されたエキソン4を欠き、選択的にスプライスされた推定RNA型はHT-1080繊維肉腫細胞として同定され、この型は199のアミノ酸残基をもつタンパク質をコードすると推定され、それはVEGF-Cのアンタゴニストであり得る。
実施例33
in vitroでVEGF-Cは種々の細胞培地中で同様にプロセッシングされる
in vitroでVEGF-Cが種々の細胞種で同様にプロセッシングされるか否かを研究するため、293EBNA細胞、COS-1細胞およびHT-1080細胞を野生型ヒトVEGF-CcDNAでトランスフェクトし、実施例22に記載されたようにPro-Mix(商標)で標識した。培養組織からのコンディショニング培地を回収し、抗血清882(実施例21に記載され、配列番号8のアミノ酸104〜120に相当するペプチドを認識する)を用いて免疫沈降させた。免疫沈降したポリペプチドをSDS-PAGEにより分離し、オートラジオグラフィーにより検出した。試験した総ての細胞株から認められる、分泌組換えVEGF-Cの主要な型は29/32kDのダブレットである。実施例22に記載されているように、これら2つのポリペプチドは相互にジスルフィド結合により結合している。約21kDの主要でないバンドもまた培養培地で検出された。さらに、63kDのプロセッシングを受けていないVEGF-C前駆体が認められた。この形態はCOS-1細胞においてより顕著であり、このことはCOS-1細胞におけるVEGF-Cのタンパク質分解プロセッシングが293EBNA細胞においてより効率的でないということを示唆するものである。PC-3細胞のコンディショニング培地では容易に検出されたが、HT-1080細胞においてこれらの試験条件下では内在VEGF-C(非トランスフェクト細胞の)は、検出できなかった。PC-3細胞および293EBNA細胞におけるサブユニットポリペプチドの大きさと割合の解析は:最も主要な型は、29/32kDaのダブレットであり、主要でない型は21kDポリペプチドであったというよく似た結果を示した。同一の抗体が免疫沈降(前記実施例のデータを参照)に用いられる場合、293EBNA細胞により産生された21kD型は認められるが、ウエスタンブロットにおける882抗体によりそれは認められなかった。実施例21で記載されたように、293EBNA細胞において32kD型の切断が、アミノ酸残基111〜112(配列番号8)間、PC-3細胞において切断部位の下流(残基102〜103間)で起こる。それゆえ、293EBNA細胞で産生された21kD型は、抗血清882を生ずるのに用いられる完全N末端ペプチドを含まない。関連した試験において、コンディショニング培地の分離に先立ち、PC-3細胞を血清フリー培地で種々の期間(1〜8日)培養した。コンディショニング培地をCentricon device(Amicon, Beverly, USA)を用いて濃縮し、抗血清882を用いてウエスタンブロッティング解析を行った。培養1日後、主要な32kDバンドを検出した。漸増する量の21〜23kD型は、4日および8日の培養物からのコンディショニング培地において検出された。実施例5およびそれに次ぐいくつかの実施例では、単に23kDポリペプチドと称されるこのポリペプチドバンドの分散は、不均一および可変量のグリコシル化のために最もあり得るものである。この結果は、培地中でさらにプロセッシングされるか、または切断されて21〜23kD型となる、32kDポリペプチドをその細胞が初めに分泌することを示す。次いで、このポリペプチドバンドの微細な不均質性は、様々なグリコシル化程度、およびPC-3および293EBNA細胞培養組織のアミノ末端に得られるようなプロセッシング切断部位の微細な不均質性に起因するであろう。カルボキシル末端切断部位もまた多様で、可能性ある切断部位の例は、残基216〜217間だけでなく、残基225〜226、226〜227、および227〜228間であろう。ひとまとめにすれば、これらのデータは、分泌された細胞プロテアーゼが、32kDポリペプチドからのVEGF-Cの21〜23kD型の産生にあずかるという可能性を示唆するものである。かかるプロテアーゼはVEGF-C産生の間、溶解したVEGF-C前駆体タンパク質を切断するのにin vitroで用いることができ、または細胞培地中で、およびin vivoで生物学的に活性なVEGF-Cを放出するために用いることができる。
実施例34
VEGFR-3およびVEGFR-2の細胞外ドメインによるVEGF-C型の選択的結合
2つの対比試験において、293EBNA細胞を野生型組換えVEGF-Cをコードする構築物、またはVEGF-C△N△CHis(実施例28)をコードする構築物でトランスフェクトし、トランスフェクト約48時間後、前記の実施例で記載されたように代謝的にPro-Mix(商標)で標識した。その培地をmockトランスフェクト細胞およびトランスフェクト細胞から回収し、受容体結合解析に用いた。
受容体結合を約0.2マイクログラムの(a)免疫グロブリン配列(VEGFR-3-Ig)と融合させたVEGFR-3細胞外ドメインを含んでなる融合タンパク質、または(b)アルカリ性ホスファターゼ配列(VEGFR-2-AP; Cao et al., J. Biol. Chem. 271:3154-62(1996))と融合させたVEGFR-2細胞外ドメインを含んでなる融合タンパク質のいずれかを含む結合緩衝液(PBS, 0.5%BSA, 0.02%Tween20, 1マイクログラム/ml ヘパリン)中で行った。対照として、同アリコートの293EBNAコンディショニング培地を2μlの抗VEGF-C抗血清(VEGF-C-IP)と混合した。
2時間の室温でのインキュベーション後、抗VEGF-C抗体およびVEGFR-3-Igタンパク質をプロテインA-セファロース(PAS)に吸着させ、抗APモノクロナール抗体(Medix Biotech, Genzyme Diagnostic, San Carlos, CA, USA)およびプロテインG-セファロースを用いて、VEGFR-2-APを免疫沈降させた。VEGFR-3-IgまたはVEGFR-2-APに結合したVEGF-Cを含む複合体を結合緩衝液で3回、20mM Tris-HCl(pH7.4)で2回洗浄し、次いでVEGF-C免疫沈降物をRIPA緩衝液で3回、20mM Tris-HCl(pH7.4)で2回洗浄、さらに還元および非還元条件下でSDS-PAGEにより解析した。対照として、同一培地を抗APおよびタンパク質G-セファロース(PGS)またはPASで沈降させ、起こり得る非特異的吸収の対照とした。
これらの試験はVEGFR-3が32/29kDおよび21〜23kD型双方の組換えVEGF-Cと結合する一方、VEGFR-2がコンディショニング培地からの21〜23kD成分と優先的に結合するということを明らかにした。さらに、少量の63kDおよび52kDのVEGF-C型がVEGFR-3と結合することが認められた。さらなる非還元条件下での解析は、いずれかの受容体と結合した21〜23kDのVEGF-Cの大部分が鎖間ジスルフィド結合を含まないことを示している。これらの研究結果は、VEGF-CがVEGFR-2と結合するという結果をいっそう強固なものにする。このデータはVEGFR-3単独に対して、またはVEGFR-3およびVEGFR-2の両方に対して有効であるVEGF-Cの組換え型の使用法を示唆する。他方、これらの結果は実施例28の結果ともに、32/29kD二量体はVEGFR-3と結合するがこれを活性化しないという可能性を消去するわけではない。たとえ前記のポリペプチドの発現が非常に高くとも、N-His VEGF-Cトランスフェクト細胞からのコンディショニング培地はVEGF-C△N△CHisトランスフェクト細胞からの培地よりVEGFR-3の主要チロシンリン酸化の誘導が少ないという結果の説明が、VEGFR-3を活性化する32/29kD二量体の欠乏により可能であろう。受容体を活性化しないが、VEGF-C受容体への結合安定性があるVEGF-Cポリペプチド変異体はVEGF-Cアンタゴニストとして有用である。
実施例35
VEGFR-3へ選択的に結合してそれを活性化するが、VEGFR-2に対してはそうでないVEGF-C類似体の発見
VEGF-C生物学的活性の保持に重要なVEGF-Cのシステイン残基を同定するために、VEGF-C△N△CHisC156Sと称される付加的なVEGF-C変異体を合成し、その中で419のアミノ酸VEGF-C前駆体(配列番号8;Genbank accession number X94216)の156位のシステイン残基をセリン残基で置き換えた。
pALTERベクターでクローン化したVEGF-C△N△CHisの構築物(実施例28を参照)およびPromegaのAltered sites II in vitro mutagenesis systemを用い、突然変異誘発を行った。オリゴヌクレオチド5’-GACGGACACAGATGGAGGTTTAAAG-3’(配列番号52)を用い、所望の突然変異をVEGF-C△N△CHisをコードするcDNAに導入した。得られた変異型VEGF-CcDNA断片をpREO-7ベクター(Invitrogen)のHindIII/NotI部位へサブクローン化し、最終構築物を再配列してC156S変異を確認した。得られたクローンは、配列番号8(156位にセリンコドンをもつ)のアミノ酸103〜225をコードする、さらに6xHisタグをコードするオープンリーディングフレームを有する。
野生型VEGF-CcDNAおよび3種のVEGF-C変異体構築物(VEGF-C R226,227S、VEGF-C △N△CHis、およびVEGF-C △N△CHisC156S)を用い、293EBNA細胞をトランスフェクトし、トランスフェクション16時間後サブクローン化した。トランスフェクション約48時間後、その培地をDMEM/0.1%BSAに交換し、この培地でさらに48時間インキュベーションを続けた。得られたコンディショニング培地をCentriprep-10(Amicon)を用いて30倍濃縮し、免疫検出用に抗VEGF-C抗血清882を用いるウエスタンブロッティングにより培地中のVEGF-C量を解析した。コンディショニング培地中のVEGF-C濃度を測定し平準化する参照サンプルとして、酵母発現系から精製された様々な量の組換えVEGF-C△N△CHisを比較解析した。mockトランスフェクト細胞からのコンディショニング培地を用いて、VEGF-Cコンディショニング培地を希釈し、同一濃度にした。
1アリコートのトランスフェクト細胞を100マイクロキュリー/mlのPRO-MIX(商標)L-[35S]in vitro細胞標識ミックス(Amersham)で6時間代謝標識した。コンディショニング培地を回収し、組換えにより産生されたVEGFR-3EC-IgおよびVEGFR-2EC-Ig構築体(それぞれの受容体の細胞外ドメインの7および3のIgループを含み、免疫グロブリンH鎖定常部へ融合される)を用い、VEGFR-3およびVEGFR-2の細胞外ドメインへの放射能標識されたVEGF-Cタンパク質の結合を解析した。
培養培地に分泌されたVEGF-Cの総てのプロセッシングた型はVEGFR-3ECドメインへ結合し、21kD型が優先的に結合した。高濃度に存在する場合、58kDaおよび29/31kDaのVEGF-C型は、ある程度まで非特異的にタンパク質Aセファロースへ結合した。
VEGFR-2ECドメインは、野生型VEGF-CおよびVEGF-C△N△CHisの成熟21kDa型と優先的に結合した。重要なことに、VEGF-C△N△CHisC156SはVEGFR-2ECとは結合しなかった。
次に前記に記載のVEGF-CポリペプチドのVEGFR-2およびVEGFR-3への結合に関する125I-VEGF-C△N△CHisに匹敵する能力を解析した。
VEGF-C△N△CHisを用いるスキャッチャード解析は、VEGFR-3(KD=135pM)およびVEGFR-2(KD=410pM)に対してVEGF-C結合親和性の指標を与えた。10マイクログラムの精製酵母VEGF-C△N△CHisを3mCiのヨウ素-125、担体フリー(Amersham)、およびIodo-Gen Iodination Reagent(Pierce)を用い、Pierceの標準プロトコールに従い標識した。結果として生じる標識VEGF-C△N△CHisの比活性は、1.25x105cpm/ngであった。
受容体結合を研究するために、PAE/VEGFR-2およびPAE/VEGFR-3細胞をPBS中2%のゼラチンを塗布しておいた24ウェル組織培養プレート(Nunclon)へ播種した。125I-VEGF-C△N△CHis(2x105cpm)および様々な量の非標識VEGF-C(野生型および変異種)と同一濃度の培地を、25mM HEPES(pH8.0)、0.1%BSA、および0.1%NaN3を含むHam’sF12培地のそれぞれのプレートに添加した。その結合は室温にて90分間で進行した。次いでそのプレートを氷上に移し、0.1%BSAを含む氷冷PBSで3回洗浄した。さらに細胞を1M NaOHに溶解し、その細胞溶解液を回収し、γカウンターを用いて、放射能を測定した。コンディショニング培地を含むVEGF-Cの存在における結合は、VEGF-Cコンディショニング培地の代わりにmockトランスフェクト細胞からの同容量の培地を用いる比較対照研究で認められる結合パーセンテージとして算出した。
図4に示されるように、左のパネルの、総てのVEGF-C変異種はVEGFR-3が125I-VEGF-C△N△CHisに置換した。その置換効率は下記の通りである:VEGF-C△N△CHisC156S>VEGF-C△N△CHis>野生型VEGF-C>VEGF-CR226,227S。これらの結果は、VEGF-Cの「組換え成熟」におけるVEGFR-3への結合の増大を得たことを示す。組換えVEGF165はVEGFR-3がVEGF-Cに置換しなかった。
VEGF、VEGF-C△N△CHis、および野生型VEGF-C総ては効率的にVEGFR-2が標識VEGF-C△N△CHis、VEGF-Cに置換され、VEGF-C△N△CHisは野生型VEGF-C(図4、右のパネル)と比較してより強力であった。プロセッシングを受けていないVEGF-CR226,227Sは125I-VEGF-C△N△CHisの弱い競合しか示さなかった。
驚くべきことに、VEGF-C△N△CHisC156SはVEGFR-2がVEGF-C△N△CHisに置換されず、かくして、VEGFR-2の可溶性細胞外ドメインを用いて得られた前記に記載された結果を裏付けるものであった。
また、前記のVEGF-C型のVEGFR-3およびVEGFR-2のチロシンリン酸化を刺激する能力をも調査した。重要なことには、コンディショニング培地の同一希釈物をこれらの試験、および前記に記載した競合的結合試験に用いた。コンディショニング培地のウエスタンブロット解析を抗VEGF-C抗血清882を用いて行い、ほぼ同じ相対量の因子が存在することを確認した。様々なVEGF-C型によるVEGFR-3およびVEGFR-2の自己リン酸化の刺激は、一般にVEGF-Cの「組換えプロセッシング」の程度だけでなく、それらの結合特性とも相互関係があった。VEGF-C△N△CHisC156SはVEGFR-3の自己リン酸化を刺激することにおいて、少なくともVEGF-C△N△CHisと同程度の効果がある。VEGFR-2およびVEGFR-3双方のチロシン自己リン酸化を刺激する能力において野生型VEGF-Cと比較した場合、VEGF-C△N△CHisはより高い効力を示した。VEGF-CR226,227Sコンディショニング培地はVEGFR-3の自己リン酸化における効果はかなり弱く、VEGFR-2の自己リン酸化においてはほとんど効果はなかった。
VEGF-C△N△CHisC156SによるVEGFR-2のチロシンリン酸化の刺激は、mockトランスフェクト細胞からのコンディショニング培地のものと異なるものではなく、かくしてこの変異種がVEGFR-2結合、およびVEGFR-2活性化特性を欠いていることを確認した。
VEGF-C△N△CHisC156Sのin vivoでの血管透過性を変える能力を、Miles assay(実施例29を参照)を用い解析した。アッセイされた組換えVEGF-C型(VEGF-C△N△CHisC156S)を293細胞により産生し、前記に記載されたようにNi-NTA Superflow resin(QIAGEN)を用いコンディショニング培地から精製し、15μg/mlの抗ヒトVEGF中和抗体(R&D systems)で前処理し、同時精製し、内生で産生されたVEGFの残量を中和した。組換えヒトVEGF165(R&D systems)2pmol、および前記のVEGF中和抗体で非処理または前処理したコンディショニング培地からのVEGF165約2pmolに加え、8ピコモルの種々のVEGF-C型をテンジクネズミの背部に皮下注入した。注入20分後、注入部分を解析した。VEGFおよびVEGF-C△N△CHisの双方が、血管透過性の増大を引き起こす一方、VEGF-C△N△CHisC156Sは血管透過性に影響を及ぼさなかった。中和抗体はVEGFの透過活性を完全にブロックし、VEGF-C活性に影響を及ぼさなかった。VEGF中和抗体での処理後でさえ認められる、コンディショニング培地を含むVEGFに対する残留透過活性は、推定上、293細胞により産生されるVEGF以外の透過因子によりもたらされた。
さらにもう1つのアッセイでは、コラーゲンゲルにおけるウシ毛細血管内皮細胞の移動を刺激するVEGF-C△N△CHisおよびVEGF-C△N△CHisC156Sの能力を解析した。△N△CHis型は用量依存的に移動を刺激したが、一方VEGF-C△N△CHisC156S型はアッセイにおいて有意な活性がなかった。
Miles assayを用い、VEGF-CR226,227S(8pM、抗VEGF抗体で前処理した)の血管透過性を誘導する能力もまたアッセイした。その結果は、VEGF-Cの野生型および△N△CHis型と比較した場合、VEGF-CR226,227Sの血管透過性を誘導する能力が非常に弱いことを示した。ひとまとめにすると、このMilesアッセイのデータは前記のVEGFR-2結合および自己リン酸化データと一致し、VEGFR-2が血管透過性におけるVEGF-Cの効果を介在するということを示す。
増殖因子受容体からの細胞***誘発シグナルは、細胞外シグナル調節キナーゼ/マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(ERK/MAPK)経路により頻繁に核へ中継される。精製された組換えVEGF-C△N△CHisおよびPichia発現系により産生されたVEGF-C△N△CHis156Sを用い、VEGFR-2またはVEGFR-3のいずれかを発現する細胞のMAPK経路活性化を決定した。細胞を処理した増殖因子を溶解させ、活性化されたMAPKをウエスタンブロッティングを用いてERK1およびERK2のリン酸化型に対する抗体で検出した。100ng/mlの濃度でVEGF-C△N△CHisはVEGFR-2およびVEGFR-3の両方の発現細胞におけるERK1およびERK2MAPKの急速な活性化を示した。これに対し、VEGF-C△N△CHis156Sは専らVEGFR-3発現細胞においてERK1およびERK2を活性化した。用いた濃度において、VEGF-C△N△CHisおよびVEGF-C△N△CHis156Sは、VEGFR-3によるMAPKの活性化において同等の効果であることがわかった。全MAPKタンパク質量は、ラットp42の合成ペプチドに対して不利なp44/p42MAPK抗体でフィルターの着色をすることにより示され、処理および未処理細胞において類似していることが確認された。
前記データは、VEGF-Cのタンパク質分解プロセッシングがVEGFR-2およびVEGFR-3と結合し、これを活性化する能力の増大をもたらすことを示している。非処理のVEGF-Cはリガンドおよび優先的にVEGFR-3のアクチベーターである一方、成熟21/23kDaVEGF-C型は高い親和性リガンドおよびVEGFR-2およびVEGFR-3両方のアクチベーターである。
さらに、156位のシステイン残基(プレプロVEGF-Cの、配列番号8)を置換することにより選択的なリガンドおよびVEGFR-3のアクチベーターを作製する。この置換により、プロセッシングを受けたVEGF-CのVEGFR-2へ結合させVEGFR-2を活性化させる能力が不活性になる。重要なことには、156位でのシステインの脱離は、それ自体ではセリンの置換ではなく、VEGF-C選択性においてこの予期しない置換の原因となる置換であると思われる。VEGFR-3に関して、他のアミノ酸との156位でのシステインの置換、またはこのシステインの単なる欠失もまた選択的な生物学的活性を有するVEGF-C類似体をもたらすことが推測される。かかる置換および欠失類似体は総て(一括してVEGF-C△C156ポリペプチドという)本発明の態様として考えられる。かくして、ヒトVEGF-Cから誘導された本発明の「VEGF-C△C156ポリペプチド」は配列番号58で表されたポリペプチド、それらのポリペプチド断片(特に配列番号58の残基102〜161間のいずれかのアミノ末端および配列番号58の残基210〜228間のいずれかのカルボキシ末端を有する断片)を含む。本発明の「VEGF-C△C156ポリペプチド」はまた、マウス、ウズラおよび他の野生型VEGF-Cポリペプチドから誘導された類似のポリペプチドを含む。
VEGF-C△N△CHis156SのようなC156S変異(または156位における機能的同等変異)を有する、およびVEGFR-3に関して、生物学的活性もつVEGF-Cポリペプチドは、VEGFR-3刺激が望まれる野生型VEGF-Cタンパク質および生物学的活性を有するその断片に対する前記に記載の同一の方法総てに有用である。最も生物学的に活性なVEGF-C断片およびプロセッシング変異体は、前記実施例で同定された生物学的活性を有する断片および変異体に限定されないが、△C156変異が導入される場合、VEGF-C生物学的活性(VEGFR-3が介在する)を保持するであろうと考えられる。かかる生物学的に活性なVEGF-C△C156ポリペプチド総ては本発明の態様として表されている。
さらに、C156S変異および同等の変異を含むVEGF-C型を用いて、VEGFR-3が介在するVEGF-Cのそれらの効果をVEGFR-3によってのみ得られるものと識別することが可能である。多くの臨床上の観点から医薬の選択性が非常に望まれることが理解され、かかるVEGF-Cポリペプチドの選択的にVEGFR-3を刺激する能力もまた医業に有用であると推測される。例えば、VEGFR-3結合に対するVEGF-C△C156ポリペプチドの選択性により、血管透過性またはVEGFR-2により調整される他のVEGF-C活性の有意な付随的調整なしに、VEGFR-3が介在するVEGF-C生物学的活性を調整するこれらのポリペプチドの有用性が示唆される。
本明細書に与えられたデータはまた、VEGFR-3と結合できるが、VEGFR-3が介在するVEGF-Cの生物学的活性を保持しないというVEGF-C△C156ポリペプチドの有用性を示す。特に、かかる型はVEGFR-3への結合に関する野生型VEGF-Cに匹敵すると思われ、それゆえにVEGFR-3のVEGF-C介在刺激を阻害する分子として考えられる。△C156の変更により、かかるポリペプチド(特に、かかるポリペプチドの共有結合または非共有結合二量体)がVEGFR-2と結合するとは思われない。かくして、ある△C156ポリペプチドおよびポリペプチド二量体は、VEGFR-3が(実質上VEGFR-2のVEGF-C介在刺激を変えることなく)介在するVEGF-C生物学的活性の選択的阻害剤としての有用性があると思われる。
本発明のもう1つの具体例では、△C156ポリペプチドと関連する生物学的活性を有するVEGF-Cポリペプチドを含んでなるヘテロ二量体が考えられる。かかるヘテロ二量体は下記実施例37で記載されるようにin vitroで、または△C156ポリペプチドの投与のあと、内在VEGF-Cでin vivoで作製できると考えられる。かかるヘテロ二量体は、VEGF-Cの生物学的効果がVEGFR-2/VEGFR-3ヘテロ二量体が介在する細胞のVEGF-C介在効果のモジュレーターとして考えられる。wt VEGF-Cを伴うホモ二量体またはヘテロ二量体のVEGF-C△C156ポリペプチドは、後のVEGF様効果を誘導する、特に血管透過性を増大させる能力を選択的に阻害するであろう。
VEGFの8の保護システイン残基の第2および/または第4の置換により、VEGF二量体作製およびVEGF生物学的活性は無効になる。その類似した効果は、配列番号8の156〜165位のシステインが第2および第4保護システイン残基に相当するVEGF-Cについて研究された。VEGF-C△N△CHisC156,165S(すなわちCys156およびCys165双方がセリン残基で置換)の場合、またはVEGF-C△N△CHisC165Sにおいて化学的に架橋された場合、ホモ二量体は得られなかった。他方、架橋VEGF-C△N△CHisおよびVEGF-C△N△CHisC156S双方の約半数は二量体として移動した。このデータはVEGF-C△N△CHisC156Sがホモ二量体を形成することを示す。さらに、優先的に非共有結合二量体を形成するVEGF-C△N△CHisとは異なり、非還元条件下でSDS-PAGEにより検出されたように、VEGF-C△N△CHisC156Sの画分はジスルフィド結合であった。受容体結合研究(前記のような手法を用いる)において、C165SおよびC156,165S型は両者ともVEGFR-3またはVEGFR-2と結合することはできなかった。ひとまとめにすると、これらのデータはVEGF-CによるVEGFR-3活性化にホモ二量体化を必要とすることを示唆し、△N△CHisC156SのVEGFR-2を活性化する能力およびVEGF様効果を誘導する能力がないことは、この変異体のホモ二量体を形成する能力がないためではないことを示す。
実施例36
骨髄形成の誘導におけるVEGF-Cの有用性
造血機能におけるVEGF-Cの効果もまた解析した。特に実施例29に記載されたF1トランスジェニックマウス、およびそれらの非トランスジェニック同腹子から採取した血液サンプルの白血球数を解析した。これらのマウスおよび非トランスジェニックFVB-NIH対照マウス(すなわち、トランスジェニックマウスを産生するのに用いる株)の白血球数データは下記の表に示されている。
前記データが示すように、トランスジェニックマウスの皮膚でのVEGF-Cの過剰発現は、白血球数における認識可能な変化と相互関係がある。特に、好中球の測定数はトランスジェニックマウスにおいて著しく増加した。好中球における著しい増加に対する1つの説明として、VEGF-Cに起因すると考えられる造血活性がある。組織の内外を移動する白血球におけるVEGF-Cの影響は観察される好中球数にも及ぶ。単離されたヒト骨髄および臍帯血CD34-陽性造血細胞で蛍光−活性化細胞選別分析を行い、これらの細胞の画分がFlt4(VEGFR-3)に陽性であることを実証した。かくして、VEGF-Cの骨髄形成における影響はこのVEGFR-3陽性細胞数およびその受容体により及ぼされるであろう。いずれの場合においても、前記データは、ヒトまたは非ヒト被験体における顆粒球(および、特に好中球)総数を増加させるための、すなわち、感染症と闘う被験体の手助けをするためのVEGF-Cポリペプチドの使用を示唆するものである。VEGF-Cポリペプチドの造血活性の開発は、単独造血剤として、および他の有効な薬剤(例えば、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF))との組合わせで、in vitro(すなわち、細胞培養において)およびin vivoの両方において考えられる。
VEGF-Cポリペプチドの造血効果のさらなる研究は、変更されたVEGFR-2結合親和性を有するVEGF-C変異体(例えば、VEGF-C△C156ポリペプチド、VEGF-C△N△CHis、VEGF-CR226-227S)を用い、VEGFR-2、VEGFR-3または両受容体がこの作用に介在するか否かを明らかにするであろう。かかる解析の結果は、VEGF-C変異体が造血剤として有用性があること、および骨髄形成を阻害する薬剤としてどのようなものに有用性があるかということを決定するのに有用であろう。
実施例37
増殖因子のVEGFファミリーのメンバーからなるヘテロ二量体の生成
天然および、組換えにより生成された増殖因子のPDGF/VEGFファミリーのポリペプチドのヘテロ二量体は双方とも天然に存在することが示されており、有糸***誘発活性を有している。例えば、Cao et al., J. Biol.. Chem., 271:3154-62(1996); and Disalvo, et al., J. Biol. Chem., 270:7717-7723(1995)を参照。VEGF-Cポリペプチドを含んでなるヘテロ二量体は、本質的にはCao et al.(1996)により記載されたように、組み換えで生成されたVEGF-Cポリペプチドを用いて、前記の実施例に記載されたVEGF-Cポリペプチドのように生成されてよい。便宜には、組換えにより生成されたVEGF-Cポリペプチドを、別のVEGF、VEGF-B、PIGF、PDGFα、PDGFβ、または増殖因子ポリペプチドにより誘発されたc-fosのような組換えにより生成された別の注目するポリペプチドと同モル比で混合する(例えば、Cao et al.(1990); Collins et al., Nature, 316:748-750(1985)(PDGF-β, GenBank Acc.No.X02811); Claesson-Welsh et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86(13):4917-4921(1989)(PDGF-α, GenBank Acc. No. M22734); Claesson-Welsh et al., Mol. Cell. Biol. 8:3476-3486(1988)(PDGF-β,GenBank Acc.No. M21616); Olofsson et al., Proc. Natl. Acad. Sci.(USA), 93:2576-2581(1996)(VEGF-B, GenBank Acc. No.U48801); Maglione et al., Proc. Natl. Acad. Sci.(USA), 88(20):9267-9271(1996)(PIGF, GenBank Acc. No. X54936); Heldin et al., Growth Factors, 8:245-252(1993);Folkman, Nature Med., I:27-31(1995); Friesel et al., FASEB J., 9:919-25(1995); Mustonen et al., J. Cell Biol., 129:895-98(1995); Orlandini, S., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93(21): 11675-11680(1996);および本明細書の他所に引用されている文献を参照のこと)。混合したポリペプチドを、塩酸グアニジンおよびDTT存在下でインキュベートする。次いでS-スルホン化によりチオール基を保護し、そのタンパク質を、まず尿素/グルタチオン-SH、グルタチオン-S-S-グルタチオンに対して、次いで20mMトリス塩酸に対して一晩透析する。
好ましい具体例では、種々の、異なるプロセッシングを受けたVEGF-C型と前記の実施例に記載されたようなVEGF-C変異体および類似体が、このようなヘテロ二量体を生成するVEGF-Cポリペプチドとして使用される。その後、このヘテロ二量体は、それらのVEGF/PDGFファミリーの受容体に関する結合親和性(特にVEGFR-1、VEGFR-2およびVEGFR-3)、ならびにそれらの受容体刺激能(例えば、その表面に注目の受容体を発現している細胞中の二量体刺激による受容体リン酸化)を測定するためにスクリーニングされる。この結合アッセイは本明細書に記載されているような、また当技術分野の競合結合アッセイであり得る。VEGFR-2とVEGFR-3に関して前記の実施例において記載したように、最初の結合アッセイにおいて、受容体の細胞外ドメインからなる組換えにより生成されたタンパク質が使用可能である。受容体に結合し、刺激するヘテロ二量体が組換え増殖因子ポリペプチドとして使用可能である。結合はするが受容体を刺激しないヘテロ二量体は、増殖因子のアンタゴニストとして有用である。スクリーニングアッセイにおいて、アゴニスト活性またはアンタゴニスト活性を示すヘテロ二量体は、さらに、例えば内皮細胞移動アッセイ、血管透過性アッセイ、およびin vivoアッセイを用いてスクリーニングされる。前記の実施例から、2つのVEGF-Cポリペプチドからなる二量体(すなわち同一のVEGF-Cポリペプチドの二量体ならびに、異なるVEGF-Cポリペプチドの二量体)は、同じアッセイを用いて、都合よくアゴニスト活性とアンタゴニスト活性をスクリーニングできることが明らかとなろう。
1つの好ましい具体例では、二量体を作製するためにVEGF-C△C156ポリペプチドが使用される。VEGF-C△C156ポリペプチドを含んでなるアゴニストとアンタゴニストは、VEGFR-2の随伴刺激または阻害なしに、VEGFR-3の刺激または阻害の特異性が増大することが期待される。
もう1つの好ましい具体例では、そのC末端タンパク質分解切断部位がC末端プロセッシングを減少または削除するように改変されているVEGF-Cポリペプチド(例えばVEGF-C R226、227S)が、阻害アッセイのためのスクリーニングのための二量体を作製するのに使用される。
さらに、もう1つの好ましい具体例では、VEGF-Cのアミノ末端断片を含んでなるVEGF-Cポリペプチド(例えば、本明細書に記載のVEGF-C15kD型)を、二量体を作製するために使用する。
さらに、二量体のうちの一方だけのポリペプチド鎖の不活性化が阻害分子を生成するのに十分であり得ることが予期され、これはVassbotn, Mol. Cell. Biol., 13:4066-4076(1993)が報告したように、例えばPDGF阻害突然変異体の生成により示される。従って、1つの具体例では、阻害はin vivoにおける受容体に結合できない(または非能率的に結合する)ヘテロ二量体化のパートナーをコードするポリヌクレオチド(例えば、cDNA構築体)の発現により、または医薬組成物中のそのモノマーを直接投与することにより達成される。
実施例38
有用な組換えVEGF/VEGF-C遺伝子およびポリペプチドの形成およびスクリーニング
アミノ酸配列の比較により、成熟VEGF-Cは、ある注目に値する構造の差異をもつが、VEGF121に対し構造的類似性を有することが明らかとなる[Tischer et al., J. Biol. Chem., 266(18):11947-54(1991)]。例えば、成熟VEGF-Cは不対システイン(配列番号8の137位)を含有し、非共有結合したポリペプチド二量体を形成することができる。本発明の1つの具体例では、成熟VEGF-Cからの不対システイン残基が、VEGFの同じ位置に導入されてVEGF類似体が作出される(例えばVEGF L58Cと称されるVEGF+cys突然変異体を生成するためにヒトVEGF165前駆体(図2、Genbank Acc. No. M32977)のLeu58に導入)。前記の実施例の、種々のVEGF-C突然変異型を生成するための上記の方法のような、当技術分野において公知の位置指定突然変異誘発を用いて、このような改変がVEGF165コーディング配列に導入される。このVEGF+cys突然変異体は組換えにより発現し、本明細書の他所に記載されたin vitroおよびin vivo活性アッセイを用いて、(単独および他のVEGFとVEGF-C型とのヘテロ二量体として)結合、刺激および阻害活性についてVEGFR-2および/またはVEGFR-3のスクリーニングにかける。本発明のもう1つのVEGF類似体であるVEGF+cys突然変異体は、VEGF165前駆体のcys77に相当する、保存されたシステインを除去するように改変されている。VEGF L58Cからの、このシステインの除去はVEGF-C△N△HisC156Sに似た類似体であるVEGFを結果として生じるであろう。このVEGF類似体は、VEGF-2および/またはVEGFR-1に関してそのVEGF阻害活性を、またVEGFR-C様刺激または阻害活性についてスクリーニングされる。
もう1つの注目に値するVEGFおよびVEGF-C間の構造的差異は、VEGF-CにおけるVEGFにおいて認められ、VEGF受容体結合に包含される、いくつかの塩基性残基(例えば、図2に示されたVEGF165前駆体中の残基Arg108、Lys110とHis112)が存在しないことである。Keyt et al., J. Biol. Chem., 271(10):5638-46(1996)を参照。本発明のもう1つの具体例では、位置指定突然変異誘発により、VEGF-Cコーディング配列の1以上の類似性位置に、塩基性残基(lys、arg、his)のためのコドンが置換される。例えば、好ましい具体例では、VEGF-C(配列番号8)中のGlu187、Thr189とPro191がArg、LysおよびHis残基にそれぞれ置換される。その結果得られるVEGF-C類似体(正確には「VEGF-Cbasic」と称されるポリペプチド)は組換えにより発現し、VEGFR-1、VEGFR-2およびVEGFR-3刺激および阻害活性についてスクリーニングされる。VEGF様活性、VEGF-C様活性を有する、または、VEGFもしくはVEGF-Cの阻害剤として働く前記のVEGFおよびVEGF-C類似体は、本発明のさらなる態様として意図されるものである。類似体をコードするポリヌクレオチドもまた、本発明の態様として意図される。
実施例39
In vitroにおけるヒトCD34+創始細胞の増殖および分化に対するVEGF-Cの作用
MACS CD34+創始細胞単離キット(Miltenyl Biotec, Bergish Gladbach, Germany)を用いて、製造者の指示に従い、ヒトCD34+創始細胞(HPC、10×103)を骨髄または臍帯血の単核細胞から単離し、L-グルタミン(2.5mM)、ペニシリン(125IE/ml)、ストレプトマイシン(125μg/ml)および10%のプール臍帯血(CB)血漿を添加したRPMI 1640培地中で、37℃、加湿雰囲気下、5%CO2存在下で7日間、VEGF-C存在または不在下、および下記の増殖因子の組み合わせのうちの1つの存在または不在下で培養した。各実験は3回反復した。7日後、各培養液中の総細胞数を評価した。
最初の一連の実験では、VEGF-Cを10ng/mlから1μg/mlの濃度範囲で、CB CD34+HPCsに加えた。細胞数は培養の7日目に評価した。単一因子として添加された場合、血清フリー条件下では、100ng/mlのVEGF-Cは、ごくわずかのCD34+HPCsの生存と増殖を助けた。培地のみでは、ほとんどの細胞は7日間の培養期間中に死滅した。しかしながら、VEGF-Cを与えられた培養液中には、一貫してより多くの細胞が存在した。
次の実験では、組換えヒト幹細胞因子(rhSCF、20ng/ml、PreproTech、Rocky Hill, NY)単独または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(rhGM-CSF、100ng/mk、Sandoz、Basel、Switzerland)+SCFとの組み合わせのいずれかを添加した培養液中のVEGF-Cの同時刺激作用を検討した。SCF添加培養液へのVEGF-Cの添加により、CD34+細胞の細胞増殖に対してわずかな同時刺激作用を示し、この作用はVEGF-C濃度10ng/mlからすでに観察された。至適濃度10ng/mlのVEGF-Cの、GM-CSF+SCF添加培養液への添加は、培養7日目の細胞収量を明らかに増加させた。GM-CSF単独またはIL-3(rhIL-3、100U/ml、Behring AG、Marburg、Germany)単独いずれか;またはGM-CSF+IL-3の組み合わせを添加した血清フリーCB CD34+HPC細胞培養液の総細胞収量に対する、100ng/mlのVEGF-Cの同時刺激作用を分析するために、さらなる実験を行った。結果は下記の表に示されている;
表に示されたように、VEGF-Cは、試験される各増殖因子または増殖因子の組み合わせに添加物として加えられた場合、一貫した細胞増殖の増強をもたらした。
CD34+創始細胞の顆粒単球分化に対するVEGF-Cの作用
前記の血漿添加培養(7日)からの細胞を用いて免疫蛍光三重染色を行い、初期顆粒単球マーカー分子リソザイム(LZ)およびミエロペルオキシダーゼ(MPO)、ならびにリポ多糖類(LPS)受容体CD14の発現を解析した。下記の表はMPOおよび/またはLZを発現する細胞のパーセンテージと数を示している。
試験した顆粒単球のうち、VEGF-Cは、総ての培養条件下でLZ+細胞の割合を増加させた。これに対し、LZ+CD14+細胞は分化単球を示し、VEGF-Cの添加時の増加は極めてわずかであった(データは示さず)。細胞を同時にVEGF-Cで刺激すると、初期顆粒球マーカー分子であるMPOの発現は、GM-CSFおよびIL-3双方の組み合わせにおいてはMPO+細胞の増加がより著しかった以外は、わずかながら増加したに過ぎなかった。
VEGF-CはM-CSFとの併用において同時刺激効果を発揮する
別の一連の実験では、100ng/mlのVEGF-Cを含むまたは含まず、50ng/mlのM-CSFを添加した培地で7日間CD+細胞を培養した。M-CSFの存在下でのCD34+細胞の培養は、7日以内にCD+14単球の発生をもたらした。7日後、CD+14細胞のパーセンテージと平均蛍光強度を求めるために培養物を分析した。結果は下記の表に要約される。
表に示されたように、これら培養物へのVEGF-Cの添加はCD+4細胞の割合(37%CD14+細胞、対46%)とCD14発現の蛍光強度(MFI 23.3、対40.3)の双方を上昇させた。しかしながら、細胞数は、M-CSF添加培養物へVEGF-Cを添加した際には増加しなかった。従って、VEGF-Cは単球の分化に対しては小さな作用を有したが、それらの増殖には作用しないかった。
前記の実験では、VEGF-Cの存在は臍帯血CD34+細胞の培養における細胞数の増加に関連していた。試験した総ての条件下(GM-CSF、IL-3、GM-CSF+IL-3、GM-CSF+SCF)で、VEGF-Cとの同時培養は、骨髄細胞の割合に増加をもたらした。これらの結果は、in vitroまたはin vivoでのCD34+創始細胞の刺激および/または分化におけるVEGF-Cの適用を示唆している。さらに、VEGF-C単独の使用も、わずかながら生存細胞数を増加させた。従ってこの結果は、VEGF-Cなどの前記のまたはその他の増殖因子との混合物として調製されたVEGF-Cを含んでなる組成物、および前記のまたはその他の増殖因子とともに封入されるVEGF-Cを含んでなる一回量製剤としての使用を示唆する。このような組成物、一回量製剤、およびそれらの使用法は本発明のさらなる態様として意図されるものである。
生物学的材料の寄託:プラスミドFLT-Lは、ブタペスト条約の規定に準じ、American Type Culture Collection(ATCC), 12301 Paeklawn Dr., Rockvill MD 20952(USA)に寄託し、寄託日1995年6月24日およびATCC受託番号97231が指定された。
以上、具体例によって本発明を説明したが、変形や変更が可能であることは当業者にとっては明らかに理解できよう。従って、添付の請求の範囲において明らかであるように、かかる限定も本発明の範囲のものである。
配列表
配列番号:1:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 4416 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: cDNA
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:1:
配列番号:2:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 216 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: cDNA
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:2:
配列番号:3:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 4273 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: cDNA
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:3:
配列番号:4:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 40 アミノ酸
(B)配列の型: アミノ酸
(C)鎖の数: 関連なし
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: ペプチド
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:4:
配列番号:5:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 18 アミノ酸
(B)配列の型: アミノ酸
(C)鎖の数: 関連なし
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: ペプチド
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:5:
配列番号:6:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 219 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: cDNA
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:6:
配列番号:7:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 1997 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: cDNA
(ix)FEATURE:
(A)NAME/KEY: CDS
(B)LOCATION: 352..1608
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:7:
配列番号:8:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 419 アミノ酸
(B)配列の型: アミノ酸
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: タンパク質
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:8:
配列番号:9:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 17 アミノ酸
(B)配列の型: アミノ酸
(C)鎖の数: 関連なし
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: ペプチド
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:9:
配列番号:10:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 1836 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: cDNA
(ix)配列の特徴:
(A)特徴を表す記号: CDS
(B)存在位置: 168..1412
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:10:
配列番号:11:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 415 アミノ酸
(B)配列の型: アミノ酸
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: タンパク質
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:11:
配列番号:12:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 1741 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: cDNA
(ix)配列の特徴:
(A)特徴を表す記号: CDS
(B)存在位置: 453..1706
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:12:
配列番号:13:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 418 アミノ酸
(B)配列の型: アミノ酸
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: タンパク質
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:13:
配列番号:14:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 10 アミノ酸
(B)配列の型: アミノ酸
(C)鎖の数: 関連なし
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: ペプチド
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:14:
配列番号:15:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 22 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: cDNA
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:15:
配列番号:16:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 22 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: cDNA
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:16:
配列番号:17:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 65 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: cDNA
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:17:
配列番号:18:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 30 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: cDNA
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:18:
配列番号:19:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 84 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: cDNA
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:19:
配列番号:20:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 31 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: cDNA
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:20:
配列番号:21:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 93 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: cDNA
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:21:
配列番号:22:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 18 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: cDNA
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:22:
配列番号:23:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 20 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: cDNA
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:23:
配列番号:24:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 18 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: DNA(genomic)
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:24:
配列番号:25:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 18 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: DNA(genomic)
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:25:
配列番号:26:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 21 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: DNA(genomic)
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:26:
配列番号:27:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 20 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: DNA(genomic)
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:27:
配列番号:28:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 20 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: DNA(genomic)
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:28:
配列番号:29:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 22 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: DNA(genomic)
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:29:
配列番号:30:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 20 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: DNA(genomic)
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:30:
配列番号:31:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 18 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: DNA(genomic)
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:31:
配列番号:32:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 18 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: DNA(genomic)
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:32:
配列番号:33:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 23 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: DNA(genomic)
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:33:
配列番号:34:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 22 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: DNA(genomic)
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:34:
配列番号:35:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 21 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: DNA(genomic)
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:35:
配列番号:36:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 24 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: DNA(genomic)
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:36:
配列番号:37:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 26 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: DNA(genomic)
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:37:
配列番号:38:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 21 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: DNA(genomic)
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:38:
配列番号:39:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 24 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: DNA(genomic)
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:39:
配列番号:40:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 20 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: DNA(genomic)
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:40:
配列番号:41:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 25 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: DNA(genomic)
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:41:
配列番号:42:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 20 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: DNA(genomic)
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:42:
配列番号:43:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 26 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: DNA(genomic)
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:43:
配列番号:44:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 23 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: DNA(genomic)
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:44:
配列番号:45:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 16 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: DNA(genomic)
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:45:
配列番号:46:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 22 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: DNA(genomic)
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:46:
配列番号:47:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 24 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: DNA(genomic)
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:47:
配列番号:48:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 2991 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: DNA(genomic)
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:48:
配列番号:49:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 20 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: cDNA
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:49:
配列番号:50:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 20 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: cDNA
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:50:
配列番号:51:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 19 アミノ酸
(B)配列の型: アミノ酸
(C)鎖の数: 関連なし
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: ペプチド
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:51:
配列番号:52:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 25 塩基
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: cDNA
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:52:
配列番号:53:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 196 アミノ酸
(B)配列の型: アミノ酸
(C)鎖の数: 関連なし
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: タンパク質
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:53:
配列番号:54:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 241 アミノ酸
(B)配列の型: アミノ酸
(C)鎖の数: 関連なし
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: タンパク質
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:54:
配列番号:55:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 149 アミノ酸
(B)配列の型: アミノ酸
(C)鎖の数: 関連なし
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: タンパク質
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:55:
配列番号:56:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 191 アミノ酸
(B)配列の型: アミノ酸
(C)鎖の数: 関連なし
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: タンパク質
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:56:
配列番号:57:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 188 アミノ酸
(B)配列の型: アミノ酸
(C)鎖の数: 関連なし
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: タンパク質
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:57:
配列番号:58:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 419 アミノ酸
(B)配列の型: アミノ酸
(C)鎖の数: 関連なし
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: タンパク質
(ix)配列の特徴:
(A)特徴を表す記号: other
(B)存在位置: 156
(D)他の情報: コドン156はシステイン以外のアミノ酸残基であるか、あるいは存在しない。
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:58:
配列番号:59:
(i)特徴:
(A)配列の長さ: 160 アミノ酸
(B)配列の型: アミノ酸
(C)鎖の数: 関連なし
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類: タンパク質
(xi)配列の内容: SEQ ID NO:59:
Claims (44)
- VEGFR−2およびVEGFR−3からなる群から選択される少なくとも一つの受容体と結合する精製かつ単離されたポリペプチドであって、下記からなる群から選択されるものを含んでなる、ポリペプチド:
(a)配列番号8のアミノ酸配列を有するプレプロ−VEGF−Cと、または配列番号8の残基131〜211を含んでなるアミノ酸配列を有し、かつヒトVEGFR−3に結合する配列番号8の断片と、少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるVEGF−C△C156ポリペプチドであって、
配列番号8の156位の保存されたシステイン残基が、VEGF−C△C156ポリペプチドにおいて欠失しているか、または他のアミノ酸に置換しており、
VEGF−C△C156ポリペプチドがヒトVEGFR−3と結合し、かつ、プレプロ−VEGF−Cポリペプチドまたはその断片に比べ低いヒトVEGFR−2結合親和性を有するポリペプチド;および
(b)配列番号8のアミノ酸配列を有するプレプロ−VEGF−Cと、または配列番号8の残基131〜211を含んでなるアミノ酸配列を有し、かつヒトVEGFR−3に結合する配列番号8の断片と、少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるVEGF−Cbasicポリペプチドであって、
配列番号8の残基187、189、および191に対応するVEGF−Cbasicポリペプチドの1〜3残基が、アルギニン、リジン、およびヒスチジンからなる群から選択される塩基性アミノ酸で置換されているポリペプチド。 - 配列番号8のアミノ酸配列を有するプレプロ−VEGF−Cと、または配列番号8の残基131〜211を含んでなるアミノ酸配列を有し、かつヒトVEGFR−3に結合する配列番号8の断片と、少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるVEGF−C△C156ポリペプチドであって、
配列番号8の156位の保存されたシステイン残基が、VEGF−C△C156ポリペプチドにおいて欠失しているか、または他のアミノ酸に置換しており、
VEGF−C△C156ポリペプチドがヒトVEGFR−3と結合し、かつ、プレプロ−VEGF−Cポリペプチドまたはその断片に比べ低いヒトVEGFR−2結合親和性を有するポリペプチドである、請求項1に記載の精製かつ単離されたポリペプチド。 - 配列番号8のアミノ酸配列を有するプレプロ−VEGF−Cと、または配列番号8の残基131〜211を含んでなるアミノ酸配列を有し、かつヒトVEGFR−3に結合する配列番号8の断片と、少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるVEGF−C△C156ポリペプチドである、請求項1に記載の精製かつ単離されたポリペプチド。
- 配列番号8のアミノ酸131〜211を含んでなり、配列番号8の156位でシステイン残基が欠失しているか、または他のアミノ酸に置換している、請求項1記載の精製かつ単離されたポリペプチド。
- 配列番号8の連続部分を含んでなる請求項1に記載のVEGF−C△C156ポリペプチドであって、配列番号8の連続部分が下記からなる群から選択されるポリペプチド:
(a)配列番号8の残基102と114の間にアミノ末端残基としてのアミノ酸を有し、かつ、配列番号8の残基212と228の間にカルボキシ末端残基としてのアミノ酸を有する連続部分であって、配列番号8の156位のシステイン残基が欠失しているか、または他のアミノ酸に置換している、連続部分。 - 配列番号8のアミノ酸1〜419からなり、配列番号8の156位のシステイン残基が欠失しているか、または他のアミノ酸に置換している、請求項2〜5のいずれか1項に記載のポリペプチド。
- VEGFR−3と結合し、かつ、配列番号8のアミノ酸103〜227から構成されるアミノ酸配列を有するヒトVEGF−Cに比べ低いVEGFR−2結合親和性を有する、請求項2〜5のいずれか1項に記載のポリペプチド。
- 還元条件下でSDS−PAGEにより測定した際に約21〜23kDの分子量を有する、請求項2〜5のいずれか1項に記載のポリペプチド。
- 還元条件下でSDS−PAGEにより測定した際に約30〜32kDの分子量を有する、請求項2〜5のいずれか1項に記載のポリペプチド。
- 配列番号8の156位でシステイン残基が欠失しているか、またはセリン残基に置換している、請求項2〜9のいずれか1項に記載のVEGF−C△C156ポリペプチド。
- 脊椎動物のプレプロ−VEGF−Cポリペプチドまたはその断片と同一のアミノ酸配列を含んでなり、但し、配列番号8の156位に対応するシステイン残基が欠失しているか、または他のアミノ酸に置換している、請求項2または3に記載のVEGF−C△C156ポリペプチド。
- ヒトFlt4受容体チロシンキナーゼ(VEGFR−3)に結合するポリペプチドであって、下記からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチド:
(a)配列番号8のアミノ酸配列(配列番号8の156位でシステイン残基が欠失または他のアミノ酸残基に置換されている);
(b)配列番号11のアミノ酸配列(配列番号11の152位でシステイン残基が欠失しているか、または他のアミノ酸残基に置換されている);および
(c)配列番号13のアミノ酸配列(配列番号13の155位でシステイン残基が欠失しているか、または他のアミノ酸残基に置換されている)。 - 配列番号8のアミノ酸配列を有するプレプロ−VEGF−Cと、または配列番号8の残基131〜211を含んでなるアミノ酸配列を有し、かつヒトVEGFR−3に結合する配列番号8の断片と、少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるVEGF−Cbasicポリペプチドであって、
配列番号8の残基187、189、および191に対応するVEGF−Cbasicポリペプチドの1〜3残基が、アルギニン、リジン、およびヒスチジンからなる群から選択される塩基性アミノ酸で置換されているポリペプチドである、請求項1に記載の精製かつ単離されたポリペプチド。 - 配列番号8のアミノ酸配列を有するプレプロ−VEGF−Cと、または配列番号8の残基131〜211を含んでなるアミノ酸配列を有し、かつヒトVEGFR−3に結合する配列番号8の断片と、少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるVEGF−Cbasicポリペプチドである、請求項13に記載の精製かつ単離されたポリペプチド。
- 配列番号8のアミノ酸配列またはヒトVEGFR−3に結合する配列番号8の断片を含んでなるVEGF−Cbasicポリペプチドであり、但し、配列番号8の残基187、189、および191に対応するVEGF−Cbasicポリペプチドの1〜3残基が、アルギニン、リジン、およびヒスチジンからなる群から選択される塩基性アミノ酸で置換されているポリペプチドである、請求項13に記載の精製かつ単離されたポリペプチド。
- 配列番号8の残基131〜211を含んでなるアミノ酸配列を有するポリペプチドであって、配列番号8の187位のグルタミン酸残基、189位のトレオニン残基、および191位のプロリン残基が、アルギニン残基、リジン残基、およびヒスチジン残基で置換されたポリペプチドである、請求項15に記載の精製かつ単離されたポリペプチド。
- 精製かつ単離されたポリペプチドの多量体であって、その少なくとも1つの単量体が請求項1〜16のいずれか1項に記載のポリペプチドであり、VEGFR−2およびVEGFR−3のうちの少なくとも1つと結合できる、精製かつ単離されたポリペプチド多量体。
- 少なくとも1種の単量体が、血管内皮増殖因子(VEGF)ポリペプチド、血管内皮増殖因子B(VEGF−B)ポリペプチド、血小板由来増殖因子A(PDGF−A)ポリペプチド、血小板由来増殖因子B(PDGF−B)ポリペプチド、c−fos誘導性増殖因子(FIGF)ポリペプチドおよび胎盤増殖因子(PIGF)ポリペプチドからなる群より選択される、請求項17に記載の多量体。
- 二量体である、請求項17または18に記載の多量体。
- 請求項1〜16のいずれか1項に記載の2つのポリペプチドを含んでなる、二量体。
- 2つの単量体が互いに共有結合していない、請求項20に記載の二量体。
- 請求項1〜16のいずれか1項に記載のポリペプチドと、医薬上許容される希釈剤、アジュバント、賦形剤または担体とを含んでなる医薬組成物。
- 請求項1〜16のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでなる、精製かつ単離された核酸。
- ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が、下記からなる群から選択される配列を含んでなる、請求項23に記載の核酸:
(a)配列番号7のヌクレオチド352〜1611のヌクレオチド配列であって、817〜819位のシステインコドンが欠失しているか、またはシステイン以外のアミノ酸のコドンに置換されたヌクレオチド配列;
(b)配列番号10のヌクレオチド168〜1412のヌクレオチド配列であって、621〜623位のシステインコドンが欠失しているか、またはシステイン以外のアミノ酸のコドンに置換されたヌクレオチド配列;および
(c)配列番号12のヌクレオチド453〜1706のヌクレオチド配列であって、915〜917位のシステインコドンが欠失しているか、またはシステイン以外のアミノ酸のコドンに置換されたヌクレオチド配列。 - ヒトFlt4受容体チロシンキナーゼ(VEGFR−3)に結合し、かつヒトKDR受容体チロシンキナーゼ(VEGFR−2)と結合しないVEGF−C△C156ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでなる、精製かつ単離された核酸であって、該ポリペプチドが、VEGFR−3への結合を許容するのに有効な配列番号8の一部を含んでなるアミノ酸配列を有し、配列番号8の156位のシステイン残基が、欠失しているか、または他のアミノ酸に置換された、核酸。
- 請求項23〜25のいずれか1項に記載の核酸を含んでなるベクター。
- 請求項23〜25のいずれか1項に記載の核酸または請求項26に記載のベクターで形質転換またはトランスフェクトした宿主細胞。
- VEGFR−2およびVEGFR−3のうち少なくとも1つと特異的に結合できるポリペプチドを作製する方法であって、
(a)請求項27に記載の宿主細胞を、細胞が前記核酸によりコードされたポリペプチドを発現する条件下で培養し;次いで
(b)この宿主細胞から、またはこの宿主細胞の培養培地から、VEGFR−2およびVEGFR−3のうち少なくとも1つと特異的に結合できる発現されたポリペプチドを精製する
工程を含んでなる方法。 - VEGFR−3に結合するポリペプチドであって、該ポリペプチドが請求項28に記載の方法により作製されたものであり、該ポリペプチドが核酸によりコードされる発現されたものであるポリペプチド。
- 請求項29に記載のポリペプチドを、医薬上許容される希釈剤、アジュバント、賦形剤または担体とともに含んでなる、医薬組成物。
- 哺乳類内皮細胞の増殖を刺激するインビトロにおける方法であって、哺乳類内皮細胞を、請求項1〜16のいずれか1項に記載のポリペプチドを、哺乳類内皮細胞の増殖を刺激するのに有効な量で、接触させることを含んでなる方法。
- 内皮細胞がリンパ管内皮細胞である、請求項31に記載の方法。
- ポリペプチドがVEGF−C△C156ポリペプチドである、請求項31または32に記載の方法。
- 好中顆粒球の増殖を調節するインビトロにおける方法であって、哺乳類幹細胞を、好中顆粒球の増殖を刺激するのに有効な量の請求項1〜16のいずれか1項に記載のポリペプチドと接触させる工程を含んでなる方法。
- 幹細胞がCD34+幹細胞を含んでなる、請求項34に記載の方法。
- 細胞を、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、マクロファージ−CSF(M−CSF)、顆粒球−マクロファージ−CSF(GM−CSF)、インターロイキン−3(IL−3)、幹細胞因子(SCF)およびそれらの組み合わせからなる群より選択される骨髄形成増殖因子と、そのポリペプチドと併用する場合にその細胞の増殖を調整するのに有効な量で接触させることを含んでなる、請求項34または35記載の方法。
- 接触が、ポリペプチドおよび所望により骨髄形成増殖因子の存在下で哺乳類CD34+前駆細胞を培養することにより達成される、請求項34、35、または36に記載の方法。
- ポリペプチドが、還元条件下でSDS−PAGEにより測定した際に約21〜23kDまたは約30〜32kDの分子量を有する、請求項34〜37のいずれか1項に記載の方法。
- ポリペプチドが請求項1〜16のいずれか1項に記載のポリペプチドを含んでなる、請求項34〜38のいずれか1項に記載の方法。
- 請求項23〜25のいずれか1項に記載の核酸の、哺乳類の血液中の好中球数を増加させるための医薬の製造のための使用であって、該ポリヌクレオチドが、細胞において該ポリヌクレオチドの発現を促進する非VEGF−Cプロモーターまたは他の非VEGF−C制御配列と作動可能に連結されている、使用。
- Ftl4受容体チロシンキナーゼ(VEGFR−3)を含有することが疑われる組織においてVEGFR−3を画像形成するインビトロにおける方法であって、VEGFR−3を含有することが疑われる組織を、請求項2〜12のいずれか1項に記載のポリペプチドと接触させ、組織に結合したポリペプチドを検出することによってVEGFR−3を画像形成する工程を含んでなる、方法。
- 哺乳類内皮細胞の増殖を刺激するインビトロにおける方法であって、哺乳類内皮細胞を、KDR受容体チロシンキナーゼ(VEGFR−2)およびFlt4受容体チロシンキナーゼ(VEGFR−3)からなる群から選択される少なくとも一つの内皮細胞表面受容体と結合するポリペプチドと接触させ、該ポリペプチドが下記からなる群:
(a)Flt4受容体チロシンキナーゼ(VEGFR−3)への結合を許容するのに有効な配列番号8の一部を含んでなるアミノ酸配列を有し、配列番号8の156位のシステイン残基が、欠失しているか、または他のアミノ酸に置換された、VEGF−C△C156ポリペプチド;
(b)Flt4受容体チロシンキナーゼ(VEGFR−3)への結合を許容するのに有効な配列番号8の一部を含んでなるアミノ酸配列を有し、配列番号8の226および227位のアルギニン残基が、欠失しているか、または他のアミノ酸に置換された、VEGF−C△R226R227ポリペプチド;および
(c)配列番号8のアミノ酸131〜211を含んでなるアミノ酸配列を有し、但し、配列番号8の残基187、189、および191の1〜3残基が、アルギニン、リジン、およびヒスチジンからなる群から選択される塩基性アミノ酸で置換されている、VEGF−Cbasicポリペプチド;
から選択され、
前記哺乳類細胞が哺乳類内皮細胞の増殖を刺激するのに有効な量の前記ポリペプチドと接触させられる方法。 - 哺乳類内皮細胞がリンパ管内皮細胞である、請求項42に記載の方法。
- ポリペプチドがVEGF−C△C156ポリペプチドである、請求項42に記載の方法。
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