JP4520772B2 - 湿度センサの使用方法 - Google Patents
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つまり、アイドリングが所定時間経過した時のみにヒータ通電を行っても、加熱温度が低いので、湿度センサに結露した水分の蒸発等には適用できるが、感湿素子に付着した汚れを完全に除去できず、長期に渡り高精度な湿度検出ができないという問題があった。
従って、本発明によれば、長期に渡り高精度な湿度検出ができる湿度センサを実現することができる。
・前記酸化物からなる結晶相の材料としては、湿度によりインピーダンスが変化する(例えば湿度が上昇するとインピーダンスが低下する)材料、例えばAl 2 O 3 、TiO 2 、SnO 2 のうちの少なくとも1種から選ばれた酸化物セラミックス系材料、具体的には、例えばAl 2 O 3 、Al 2 O 3 −TiO 2 、Al 2 O 3 −TiO 2 −SnO 2 などの酸化物セラミックス系材料が挙げられる。また、ガラス相としても、湿度によりインピーダンスが変化する材料が挙げられる。
・前記感湿体の表面には、感湿体にデポジット等の汚れ物質が付着することを防止するために、多孔質の保護層を設けることが好適である。
・前記湿度の計測は、内燃機関の作動直後から排気ガスの温度が100℃に達するまでの期間、又は、内燃機関の停止後であって、排気ガスの温度が100℃以下になったときに行うことができる。
・前記感湿体としては、結晶相とガラス相とからなる多孔質体であって、結晶相により多孔質体の骨格部が形成され、その骨格部の表面にガラス相がコーティングされた構造を採用できる。
つまり、酸化物からなる結晶相(例えば粒子状の酸化物からなる結晶相やそれらが互いに接合した結晶相等)により、多孔質体の骨格部を形成し、その骨格部の表面を、ガラス相にてコーティングした構成を採用できる。
これにより、長時間使用してもインピーダンスが上昇し難く、耐久性に優れているという顕著な効果が得られる。
・前記検知電極としては、主成分を白金とした白金電極を採用できる。
この白金は、自動車の内燃機関等から排出される排気ガス成分雰囲気下や高温雰囲気下において、耐久性に優れている。尚、白金の含有量は検知電極全体の80wt%以上であることが好ましい。
検知電極を構成する他の成分としては、酸化物(例えば、ZrO 2 又はAl 2 O 3 )等が挙げられる。
また、検知電極としては、例えば感湿体の表面等に設けられた少なくとも1対の電極の構成を採用できる。
・前記ガラス相のガラス成分としては、ケイ酸塩ガラス、リン酸塩ガラス、及びホウ酸塩ガラスのうちの少なくとも1種を含む構成を採用できる。
・前記ガラス相の軟化点としては、800〜1200℃の範囲を採用できる。
・前記ガラス相の含有量としては、感湿体に対して、10〜56mol%の範囲を採用できる。
つまり、ガラス相の含有量が10mol%以上であると、デポジット等による影響を受けにくく、よって、湿度センサのインピーダンスの変化が少なく、耐久性が高いという効果がある。また、ガラス相の含有量が56mol%以下であると、湿度センサの初期のインピーダンスを低く抑えることができ、よって、回路設計が容易になる。尚、これらの効果の点で、より好ましい範囲は、12.5〜50mol%の範囲である。
・前記アルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物としては、Li 2 O、Na 2 O、K 2 O、Rb 2 O、Cs 2 O、BeO、MgO、CaO、SrO、BaOを採用できる。尚、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びこれらの酸化物の割合としては、ガラス相全体に対し、合計0.5〜30mol%を採用できる。
・なお、本発明は、内燃機関の排気ガス中以外に、排煙装置や排気ダクトなどの雰囲気中の湿度を検出するために用いることができる。また、例えば低酸素濃度や還元性ガスが含まれる雰囲気の湿度を検出する際に用いることができる。
・また、本発明は、内燃機関の排気ガス浄化用付帯装置(炭化水素及び水分を吸着可能な吸着材、三元触媒等の排気ガスの浄化材、ゼオライト等を用いたHCトラップ材等)の状態を、排気ガスの湿度変化から検出する際に用いることができる。
(2)請求項2の発明は、前記湿度センサは内燃機関の排気ガス中で用いるものであり、前記内燃機関の作動中において、500〜800℃の温度範囲で加熱することを特
徴とする請求項1に記載の湿度センサの使用方法を要旨とする。
あり、前記内燃機関の停止後において、500〜1200℃の温度範囲で加熱することを
特徴とする請求項1に記載の湿度センサの使用方法を要旨とする。
(実施例)
a)まず、本実施例における湿度センサの構成について説明する。尚、図1は湿度センサの全体及びその分解した状態を示す斜視図、図2は図1のA−A’断面図である。
つまり、絶縁基板5上には、一対のリード部7、9が配置され、一方のリード部7と接するように下部電極11が配置され、この下部電極11の上に感湿材料からなる感湿層(感湿体)13が配置され、感湿層13の上に他方のリード部9と接触して上部電極15が配置され、更に、上部電極15の上に下部電極11及び感湿層13及び上部電極15の全てを覆うように、保護層16が配置されている。
このうち、前記下部電極11及び上部電極15は、厚膜印刷により形成された膜厚約15μmの層であり、主として白金からなる多孔質の検知電極である。
前記保護層16は、デポジット等が下部電極11及び感湿層13及び上部電極15に付着することを防止するために、厚膜印刷により形成された膜厚約30μmの層であり、主としてMgAl2O4からなる多孔質の保護膜である。
(1)感湿層13の結晶相となる粉末の製造方法
まず、純度99.0重量%以上のブトキシAl、ブトキシTi、ブトキシSnを、所定の配合比(例えば6:2:2の重量比)となる様に秤量する。これを、ブタノールに溶解し、温度120℃以上に加熱する。
つまり、前記アルコキシドの加水分解を行う。
その後、沈殿物を回収し、乾燥した後に仮焼成する。これにより、Al2O3−SnO2−TiO2の混合粉末が得られる。
まず、Al2O3からなる絶縁基板5上に、下部電極11を形成する。具体的には、絶縁基板5上にPt系ペーストを印刷し、120℃にて15分間乾燥し、1200℃で10分間焼成する。
次に、感湿層13の上に、上部電極15を形成する。具体的には、感湿層13の上にPt系ペーストを印刷し、120℃にて15分間乾燥し、1200℃で10分間焼成する。
これにより、焼結体である湿度センサ1が完成する。
図5に湿度を測定するための回路構成を示す様に、湿度センサ1の感湿素子部3は、マイコン21に接続されて、その出力が取り出されるように構成されている。尚、この出力とは、感湿素子部3のインピーダンスに対応した値であり、インピーダンスが増加するとセンサ出力が増加するように設定されている。
本実施例では、上述した湿度センサ1の制御装置を駆動して、内燃機関の作動中において、湿度の計測を行わない時間帯(即ち、内燃機関の作動中であって、且つ、排気ガス温度が100℃を超える時間帯)に、感湿素子部3を500〜800℃の温度範囲で加熱するように、ヒータ17に通電する。また、内燃機関の停止後、感湿素子部に付着した汚れ物質を十分に除去するために、感湿素子部を500〜1200℃の温度範囲で加熱するように、ヒータ17に通電する。
これにより、湿度センサ1(特に感湿素子部3)の温度を適切な範囲に保つことができるので、感湿素子部3に付着したデポジット等の汚れ物質を十分に除去することができる。
(実験例1)
次に、本実施例の効果を確認するために行った実験例について説明する。
具体的には、前記実施例と同様な構造の本発明の範囲の湿度センサ(但し感湿体の結晶相の成分を変えた複数の湿度センサ)を製造し、その実施例サンプルの湿度センサに対して、下記(1)〜(3)の手順で、その感湿特性を調べた。
この分流式評価法を、図7に模式的に示す。ここでは、評価ガスのAirを5L/分供給し、加える水分量を調節して、測定湿度を、20RH%に設定するとともに、測定温度を20℃に設定し、湿度センサのインピーダンスを測定した。
そして、前記走行試験を行った湿度センサに対して、測定前加熱クリーニング(750℃で2分間加熱)を行った後に、前記(1)と同様な分流式評価法を用いて、耐久後の感湿特性を計測した。
一方、前記(1)〜(3)の測定方法と同様にして、本発明の範囲外の比較例の湿度センサ(ガラス成分が入っていないこと以外は、前記実施例1と同様な構造の湿度センサ)を製造し、初期及び走行試験後(耐久後)において、その比較例サンプルの湿度センサの感湿特性を計測した。その結果を、同じく下記表1に示す。
この表1から明らかな様に、比較例の(ガラス成分の入っていない感湿層を備えた試料No.1、3、5)湿度センサの場合には、自動車の排気管内に湿度センサを装着し、約300km走行した後では、試験前のインピーダンスと比べて、大幅なインピーダンスの増加が認められた。
従って、ガラス相の存在が、自動車の排気ガス中での湿度センサのインピーダンスの変化の抑制に大きく寄与していることが分かる。
(実験例2)
次に、実験例2について説明する。
具体的には、下記表2に示す様に、実験例1と結晶相の組成を同じにして、ガラス相の含有量が異なった各種の湿度センサを製造し、前記実験例1と同様にして、「JIS Z 8806 1981年」の規定による分流式評価法を用いて、初期の感湿特性(インピーダンス)を計測した。
この表2から明らかな様に、実施例サンプル4〜10のうち、ガラス相が11.1〜55.6mol%の範囲のもの(試料No.10〜13)は、インピーダンス変化率が小さく(従って耐久性が高く)、好適であることが分かる。
従って、感湿層におけるガラス相の含有量を10〜56mol%とすることにより、自動車の排気ガス中での湿度センサのインピーダンスの変化の抑制に大きく寄与していることが分かる。
(実験例3)
次に、実験例3について説明する。
具体的には、前記実施例サンプル1の湿度センサに対して、前記実験例1と同様な手順で、「JIS Z 8806 1981年」の規定による分流式評価法を用いて、初期及び耐久後の感湿特性(インピーダンス)を計測した。
尚、各測定においては、測定前加熱クリーニングを750℃にて2分間加熱により行った。また、測定においては、測定湿度を、10、20、40、60、80、90RH%に設定した。
このうち、図9に示す比較例(2)は、実車走行中、湿度センサに内蔵された温度センサの温度が一定になるようにして450℃で常時ヒータ制御を行ったものである。同図から明らかな様に、450℃にヒータ制御を行う場合には、湿度が20RH%時の耐久後のインピーダンスを初期値と比較すると、約10倍以上高インピーダンス化しており、好ましくない。
これは、ヒータにより感湿層を加熱することで、ガラス相が軟化し、デポジットのガラス相への固溶、デポジットの感湿層内への拡散を促す効果、及びデポジット成分のセンサへの付着を抑制する効果が作用したものと推定される。
更に、内燃機関の作動中に、感湿層を500〜800℃(例えば、750℃)の範囲で常時加熱し、且つ、内燃機関の停止後に、感湿層を500〜1200℃の範囲で加熱することがより好ましい。内燃機関の作動中に感湿層を常時加熱することで、感湿層表面への汚れ物質の付着を防止することができるとともに、内燃機関の停止後に500〜1200℃の範囲で加熱することで、常時加熱期間に付着してこの期間では取り除くことができなかった汚れ物質を十分に除去することができる。
この様に、本実施例では、上述した構造の感湿層を有する湿度センサをヒータで加熱するとともに、その加熱温度を所定の温度範囲に制御することにより、自動車の排気管内等の非常に過酷な環境に晒された場合であっても、高精度で、長期安定性に優れた性能を発揮することができるという顕著な効果を奏する。
(1)例えば、前記実施例では、ヒータのフィードバック制御を行ったが、(感湿素子部の温度が過度に上昇しない様に実験等で求めた)予め規定された期間又は所定のデューティ比などで、定電圧を印加してもよい。
(3)更に、ヒータの加熱のタイミングとしては、湿度計測を行わない時間に常時加熱する方法が考えられるが、それ以外にも、例えば、内燃機関の停止後に、例えば500〜1200℃にて所定時間加熱する方法も考えられる。
3…感湿素子部
5…絶縁基板
7、9…リード部
11…下部電極
13…感湿層
15…上部電極
16…保護層
17…ヒータ
19…測温抵抗体(温度センサ)
Claims (3)
- 感湿体及び検知電極を有する感湿素子部と、該感湿素子部を加熱するヒータと、を備えた湿度センサの使用方法であって、
前記感湿体は、酸化物からなる結晶相と、アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物のうちの少なくともいずれかを含むガラス成分を主成分とするガラス相と、を有し、
内燃機関の作動中において、湿度の計測を行わない時間に、前記ヒータにより、前記感湿素子部を常時加熱することを特徴とする湿度センサの使用方法。 - 前記湿度センサは内燃機関の排気ガス中で用いるものであり、
前記内燃機関の作動中において、500〜800℃の温度範囲で加熱することを特徴とする請求項1に記載の湿度センサの使用方法。 - 前記湿度センサは内燃機関の排気ガス中で用いるものであり、
前記内燃機関の停止後において、500〜1200℃の温度範囲で加熱することを特徴とする請求項1に記載の湿度センサの使用方法。
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