JP4518629B2 - キャップオフ性能に優れた筆記具 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、長期間、ペン先を大気中に放置しても良好な筆記性能を有するキャップオフ性能に優れた筆記具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、マーキングペン、サインペン、筆ペン等のように繊維芯又はプラスチック芯からなるペン先にインキを浸透させて筆記するようにした筆記具が多用されている。
しかしながら、キャップを外してペン先部分を長時間大気中に放置した場合には、ペン先部分が乾燥して筆記不良が発生するという問題を有している。
【0003】
従来において、ペン先における乾燥を抑制するキャップオフ性能に優れるマーキングペン、ボールペン、サインペン、筆ペン等の筆記具としては、例えば、インキ中にポリグリセリンの高級脂肪酸エステル等を添加したり(特公昭62−34352号公報)、ペン先表面において析出して薄いフィルムを形成し得るパラフィンワックスをインキ中に添加したり(特公平1−35028号公報)、インキ中にヘキサグリセリルトリステアレートを添加したり(特開平2−232277号公報)、インキ中にレシチンを添加したり(特許第2594457号公報)することが行われている。
【0004】
しかしながら、蒸発抑制効果の高い添加剤は、インキ溶媒に対する溶解度が低い(10重量%以下の)ものが多く、溶解度が低い点に課題があり、特に、0℃での溶解度は更に低い(5重量%以下の)ものであり、低温で保存したり、低高温の繰り返しによりインキ中で上記添加剤の沈殿を生じ、インキ流路内で目詰まりを起こして筆記性を低下させたり、キャップオフ性能が経時的に劣化してしまうなどの課題があり、未だ有効な蒸発抑制効果を有するものでないものである。
【0005】
他方、特開平7−242094号公報には、筆記具を製造後、最初に筆記されるまでの期間における筆記部からのインキ溶媒の揮発を効果的に抑制して未使用状態での筆記不良が発生することを長期にわたって防止するために、多孔芯材による筆記芯の一端部が、溶媒に染料を溶解してなるインキを吸蔵したインキ吸蔵体に挿入され、他端部が筆記部に形成された筆記具において、前記筆記芯の筆記部にインキ溶媒のうち揮発速度が遅いベンジルアルコールなど高沸点溶媒を予め塗布または含浸させておくことを特徴とする筆記具の乾燥防止方法が開示されている。
しかしながら、この公報に開示の筆記具の乾燥防止方法は、筆記具の製造後から最初に筆記されるまでの期間における乾燥防止を目的とするものであり、また、インキ溶媒のうち揮発速度が遅いベンジルアルコールなど高沸点溶媒を対象とするものであるので、筆記した後の筆記部の乾燥防止を果たすものではなく、本発明とはその目的、作用及びその構成(技術思想)が異なるものである。また、上記筆記具の乾燥防止方法に用いるベンジルアルコールなどは、常温で液体であり、溶媒とは任意に混合するものであり、長期間放置すると溶液の拡散によりインキ吸蔵体中に取り込まれて効果が殆どなくなる点に課題があり、また、一度の筆記でベンジルアルコールなどが流出してしまうため、インキがなくなるまで効果を示すものでないものである。
【0006】
以上のように、従来の繊維芯又はプラスチック芯からなるペン先を有するマーキングペン、サインペン、筆ペン等の筆記具にあっては、未だペン先における充分な乾燥抑制が施されていないのが現状であり、現在でも、キャップオフ性能に優れた筆記具が提供されていないのが現状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の課題等に鑑み、これを解消しようとするものであり、繊維芯又はプラスチック芯からなるペン先を有する筆記具において、ペン先からのインキ溶剤の蒸発抑制に優れるキャップオフ性能に優れた筆記具を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記従来技術の課題等について鋭意検討を重ねた結果、繊維芯又はプラスチック芯からなるペン先を備えるマーキングペン、サインペン、筆ペンなどの筆記具においてキャップオフ性能に優れた筆記具を実現するために、これらの筆記具に使用される、インキと接触する部位となるインキ吸蔵体、中継芯、インキタンク部内壁面、コレクター部材等に蒸発抑制作用を有する物質をコーティングすることにより、上記目的の筆記具が得られることを見いだし、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明のキャップオフ性能に優れた筆記具は、次の(1)〜(6)に存する。
(1) インキを直接貯溜する軸体となるインキタンク部を有すると共に、一時的にインキを保溜するコレクター部材を有し、インキタンク部からペン先へのインキの導出が直接又は中継芯を介して行われる筆記具において、上記インキタンク部内壁面、コレクター部材及び中継芯の少なくとも一つに蒸発抑制作用を有する物質がコーティングされていることを特徴とする筆記具。
(2) インキを直接貯溜する軸体となるインキタンク部を有すると共に、インキタンク部からペン先へのインキの導出がバルブ機構部を介して直接又は中継芯を介して行われる筆記具において、上記インキタンク部内壁面及び/又は中継芯に蒸発抑制作用を有する物質がコーティングされていることを特徴とする筆記具。
(3) 軸体内にインキを吸蔵したインキ吸蔵体を有し、該インキ吸蔵体からペン先へのインキ導出が直接又は中継芯を介して行われる筆記具において、上記インキ吸蔵体及び/又は中継芯に蒸発抑制作用を有する物質がコーティングされていることを特徴とする筆記具。
(4) 上記(1)〜(3)の何れか一つに記載のペン先が繊維芯又はプラスチック芯からなり、該ペン先に、蒸発抑制作用を有する物質がコーティングされていることを特徴とする筆記具。
(5) 蒸発抑制作用を有する物質が、グリセリン誘導体、アルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、p−トルイル酸、ペンタエリスリトール誘導体、レシチン、パラフィンワックス、マイクロスタリンワックス、ポリオレフィンロウから選択される少なくとも1種であり、かつ、これらの物質はインキ溶媒に対する溶解度(25℃)が5%以下となる上記(1)〜(4)の何れか一つに記載の筆記具。
(6) 蒸発抑制作用を有する物質のコーティング量が各コーティング材に対して、重量比で、0.01〜20重量%である上記(1)〜(5)の何れか一つに記載の筆記具。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳しく説明する。
本発明の第1発明となる筆記具は、インキを直接貯溜する軸体となるインキタンク部を有すると共に、一時的にインキを保溜するコレクター部材を有し、インキタンク部からペン先へのインキの導出が直接又は中継芯を介して行われる直液筆記具にあって、上記インキタンク部内壁面、コレクター部材及び中継芯の少なくとも一つに蒸発抑制作用を有する物質がコーティングされていることを特徴とするものであり、また、第2発明となる筆記具は、インキを直接貯溜する軸体となるインキタンク部を有すると共に、インキタンク部からペン先へのインキの導出がバルブ機構部を介して直接又は中継芯を介して行われる筆記具において、上記インキタンク部内壁面及び/又は中継芯に蒸発抑制作用を有する物質がコーティングされていることを特徴とするものであり、更に、第3発明となる筆記具は、軸体内にインキを吸蔵したインキ吸蔵体を有し、該インキ吸蔵体からペン先へのインキ導出が直接又は中継芯を介して行われる筆記具において、上記インキ吸蔵体及び/又は中継芯に蒸発抑制作用を有する物質がコーティングされていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の筆記具の具体的構造としては、例えば、図1〜図5に示される筆記具用キャップを有する筆記具の構造、並びに、図6に示される筆記具用キャップが不要となるノック式の筆記具の構造が挙げられる。
図1は、第1発明となる筆記具の実施形態の一例であり、該直液式筆記具10は、インキを中綿等に吸蔵させないで直接貯溜する軸体となるインキタンク部11を有し、また、インキタンク部11の前部には、インキタンク部11内の空気が温度上昇等によって膨張した場合にインキタンクから押し出されるインキをペン先や空気孔からボタ落ちさせないために一時的に保溜するインキ保溜体(コレクター部材)12が内蔵され、コレクター部材12の先端部には繊維芯からなるペン先13が設けられた構成となっている。
インキタンク部11からペン先13へのインキ導出は、コレクター部材12の中心孔に付設されたインキ流路12aを設けた中継芯14を介してインキタンク部11からインキをペン先13に導出することにより行われる。
なお、図1中の15はホルダー部材であり、16はインキタンク部11の後部に固着される後部軸体であり、17はキャップである。また、中継芯14を介在させることなく、ペン先13の後部をインキタンク部11内に直接配置してインキの導出を行ってもよい。
この筆記具10では、インキタンク部内壁面11a、コレクター部材12及び中継芯14の少なくとも一つ、すなわち、これらの何れか一つ、または、これらの二種の組み合わせ、並びに、全てに(以上、合計7種の何れか一つ)に後述する蒸発抑制作用を有する物質をコーティングすることができ、本実施形態では繊維からなる中継芯14に後述する蒸発抑制作用を有する物質がコーティングされているものである。
【0011】
図2の筆記具20は、第2発明となる筆記具の実施形態の一例であり、撹拌ボールとなる硬球21を内蔵したバルブ機構部を有する弁式筆記具である。
この筆記具20は、インキを中綿等に吸蔵させないで直接貯溜する軸体となるインキタンク部22を有し、バルブ機構部23を介在して繊維芯からなるペン先24へインキが供給される構成となっている。なお、図2中の25はホルダー部材であり、26はバルブ機構部23とホルダー部材25間に介在し、ペン先24の後部を保持する保持部材であり、27はキャップである。
この筆記具20では、インキタンク部内壁面22aに後述する蒸発抑制作用を有する物質がコーティングされているものである。
なお、本実施形態では、中継芯を介さないでインキをペン先へ供給するものであるが、中継芯を設け、インキタンク部22からバルブ機構部23、中継芯を介在して繊維芯からなるペン先24へインキを供給する構成にしてもよく、この場合には上記インキタンク部内壁面22a及び/又は中継芯に蒸発抑制作用を有する物質をコーティングすることができる。
【0012】
図3〜図6は、夫々第3発明となる筆記具の実施形態の例示である。
図3及び図4は、共にインキを中綿等のインキ吸蔵体に吸蔵させたタイプの筆記具である。該各々の筆記具30a,30bは、軸体となる軸本体31a,31b内にインキを中綿等の繊維体に吸蔵したインキ吸蔵体32a,32bを有し、インキ吸蔵体32a,32bの前部には繊維芯からなるペン先33a,33bの後端部34a,34bが当接されることにより、インキ吸蔵体32a,32bのインキがペン先34a,34bへ供給される構成となっている。35a,35bは、軸本体31a,31bの後端部に固着された尾栓であり、36a,36bは、キャップである。なお、図3及び図4の相違点は、軸本体31a,31b、ペン先33a,33bの形状及び尾栓35a,35bの構造が若干相違するものである。
【0013】
図5は、上記図3と同様に、インキを中綿等のインキ吸蔵体に吸蔵させたサインペンタイプの筆記具である。該筆記具40は、軸体となる軸本体41内にインキを中綿等の繊維体に吸蔵したインキ吸蔵体42を有し、インキ吸蔵体42の前部にはプラスチック芯からなるペン先43の後端部43aが当接されることにより、インキ吸蔵体42のインキがペン先43へ供給される構成となっている。44は、軸本体41の後端部に固着された尾栓であり、45はホルダー部材であり、46はキャップである。
【0014】
図6は、インキを中綿等のインキ吸蔵体に吸蔵させたサインペンタイプのキャップ不要となるノック式筆記具である。該筆記具50は、軸体51内にインキを中綿等の繊維体に吸蔵したインキ吸蔵体52を有するリフィール式の内軸(中芯)53を備え、インキ吸蔵体52の前部には繊維芯からなるペン先54の後端部54aが当接されることにより、インキ吸蔵体52のインキがペン先54へ供給される構成となっている。55は、軸本体51の後端部に取り付けられたノック部であり、該ノック部55を前方へ押し出すことによりペン先54が軸体51外に出て筆記状態となり、解除釦55aを操作することによりペン先54が軸体51内に収容される構造となっている。なお、51aは、軸本体51を分割するための螺合部であり、この螺合部の螺合を解くことにより、内軸53を簡単に交換することができる構造となっている。
【0015】
図3〜図6の夫々の筆記具30a,30b,40,50において、インキ吸蔵体32a,32b,42,52に後述する蒸発抑制作用を有する物質がコーティングされているものである。なお、これらの実施形態では、中継芯を介さないでインキをペン先へ供給するものであるが、中継芯を設け、各インキ吸蔵体から中継芯を介在して繊維芯又はプラスチック芯からなる各ペン先へインキを供給する構成にしてもよく、この場合には上記インキ吸蔵体及び/又は中継芯に蒸発抑制作用を有する物質をコーティングすることができる。
【0016】
上記第1発明〜第3発明の筆記具において用いる繊維芯又はプラスチック芯からなるペン先、中継芯、インキ吸蔵体の材質、構造、製法等は、特に限定されるものではなく、例えば、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの1種又は2種以上の組み合わせからなる平行繊維束、フェルト等の繊維束を加工又はこれらの繊維束を樹脂加工した繊維芯、中継芯又はインキ吸蔵体、上記各種のプラスチック材の軸方向にインキ溝を形成したプラスチック芯、上記各種のプラスチック粉末などを融結したポーラス体などからなるペン先が挙げられ、その形態も板状体、繊維集束体、焼結体、発泡体等任意である。
【0017】
使用する繊維芯からなるペン先の具体的な形状としては、例えば、図7(a)〜(n)に示されるものなどが挙げられる。また、上記各種のプラスチック材の軸方向にインキ溝を形成した図8(a)のプラスチック芯からなるペン先のインキ溝の態様としては、例えば、図8(b)〜(j)に示される構成のものなどが挙げられる。
好ましくは、ペン先として繊維芯を使用した場合又は中継芯は、気孔率で30〜75%、スリット径で概ね1〜20μmのものが望ましく、また、ペン先としてプラスチック芯を使用した場合は、好ましく、平均スリット径で20〜40μmのものが望ましい。
なお、上記気孔率及びスリット径は、各方式の筆記具に応じて、変動することができ、上記数値範囲に限定されるものではない。
更に、上記スリット径は、下記式により算出したものである。
スリット径=気孔率×糸の半径/(1−気孔率)
【0018】
本発明に用いる蒸発抑制作用を有する物質は、繊維芯又はプラスチック芯からなるペン先の乾燥抑制を発揮することができる物質であり、常温(25℃、以下同様)で固体であり、かつ、インキ溶媒に対する溶解度が常温で5%以下、好ましくは、1%以下となるものであり、これらの溶解度の下限値は、好ましくは、0.01%以上、更に好ましくは0.1%以上である。
ペン先の乾燥抑制を発揮する物質の中で常温で液体のもの、または、インキ溶媒に対する溶解度が常温で5%を越えるものでは、溶解、拡散作用によってインキ溶媒中に溶出してしまい、長期間の保存により効果が低下したり、ペンを使用してインキが減少するにしたがって効果が無くなり、本発明の効果を達成できるものではない。
なお、上記インキ溶媒に対する溶解度が常温で5%以下とは、蒸発抑制作用を有する物質が本発明に使用するインキ溶媒(後述するインキ成分となる有機溶剤からなる溶媒)に対して、その溶解度が常温で5%以下であることを意味するものである。
【0019】
更に好ましい蒸発抑制作用を有する物質は、上記特性を有するものであって、かつ、ペン先の蒸発抑制を付与する物質の中で融点(mp)が40〜95℃、好ましくは、50〜85℃、更に好ましくは60〜75℃であるものが望ましい。
融点が40〜95℃の蒸発抑制作用を有する物質を用いることにより、低温での保存性が更に良好であり、インキ流路内で中綿などのインキ吸蔵体、中継芯などの目詰まりなどもなく、更に良好な筆記性能を発揮することができると共に、インキ中に必要以上の蒸発抑制作用を有する物質が溶け出さないためガラス等の非吸収面に筆記した際の筆記描線の乾燥時間が早くなることとなる。
【0020】
本発明に用いる蒸発抑制作用を有する物質は、上記特性、すなわち、常温で固体であること、かつ、インキ溶媒に対する溶解度が常温で5%以下となる特性を有することが必要であり、更に好ましくは融点が40〜95℃である特性を有するものが望ましく、例えば、上記特性を有するジグリセリンモノステアレート、トリグリセリンモノステアレート、ペンタグリセリルトリステアレート、ヘキサグリセリルトリステアレート、デカグリセリンジステアレートなどのグリセリン誘導体、ポリオキシエチレンステアリルリン酸エステルなどのアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビットヘキサステアレートなどのポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレートなどのペンタエリスリトール誘導体、レシチン、ノルマルパラフィンワックス、イソパラフィンワックスなどのパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリオレフィンロウなどから選択される1種又は2種以上の混合物が挙げられる。
特に好ましくは、常温で固体、融点が40〜95℃、かつ、インキ溶媒に対する溶解度が常温では5%以下であり、更に筆記によるペン先へ物理的摩擦やインキの流出などによる乾燥抑制性能を付与する物質の脱離し難くする面から、より硬い性状であり溶解性もより低い方が耐久性や効果も向上することから、ヘキサグリセリルトリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリオレフィンロウが望ましい。
なお、上記特性を有する各種蒸発抑制作用を有する物質の具体例を上述の如く(ジグリセリンモノステアレートからポリオレフィンロウまで)例示したが、これらの各種物質において、更に好ましくは、これらの中から融点(mp)が40〜95℃の範囲内に入るものが選択されることとなる。
【0021】
本発明において、図1〜図6に示した各筆記具において、インキタンク部内壁面、コレクター部材、中継芯及びインキ吸蔵体の少なくとも一つにペン先の乾燥抑制作用を付与する上記特性を有する物質のコーティング方法としては、例えば、上記特性を有する物質を溶解する溶媒に溶解せしめ、これをインキタンク部内壁面、コレクター部材の表面部位、中継芯及びインキ吸蔵体にデッピング処理又は噴霧処理した後、加温又は室温にて乾燥させることにより行うことができる。また、溶解度が極端に低い場合には、加温溶解液にディッピングし、冷却によりコーティングすることもできる。
これらのコーティング方法は、手軽で安価な方法として優れたものである。
また、上記特性を有する物質を溶解する溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール(i−プロピルアルコール)などのアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなどのエーテル類、ヘキサン、イソへキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素類、クロロホルム、メチレンクロライドなどの塩素化合物などが挙げられる。
【0022】
上記特性を有する物質の各コーティング材(インキタンク部内壁面、コレクター部材の表面部位、中継芯及びインキ吸蔵体の何れか一つ)へのコーティング量は、各コーティング材に対して、重量比で0.01〜20重量%、好ましくは、0.1〜10重量%、更に好ましくは、0.3〜5重量%である。
コーティング量が0.01重量%未満であると、本発明の効果を達成することができず、また、20重量%を越えると、各コーティング材に対して蒸発抑制作用を有する物質が付き過ぎ、本来各コーティング材が発揮すべき機能が損なわれ、例えば、インキが出難くなり、カスレを生じたり、筆記が進むにしたがってペン先の崩れが生じたりするようになり、インキの貯溜量が十分でなくなるなど、好ましくない。
【0023】
本発明において中芯に充填するインキ成分としては、着色剤、溶剤、該溶剤に可溶な樹脂、その他筆記具用添加剤などが挙げられる。
着色剤としては、油溶性染料及び顔料等が挙げられ、油溶性染料としては、有機溶剤に可溶な一般の油溶性染料であればほとんど使用可能である。
例えば、染料としては、オラゾールエロー2GLN、オラゾールレッド3GL、オラゾールブルー2GLN、ネオンザポンブルーFLE、スピリットブラックSP、パリファストレッド1308、オイルブルーBA、オイルエロー185、オイルレッドTR71、オイルブラックS、Victoria Blue、Rhodamine 6JHSA、Flex Yellow 105等、また、顔料としては、特に限定されることなく、例えば、アゾ系顔料、縮合ポリアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、金属錯塩顔料、チオインジゴ顔料、染料レーキ顔料、蛍光顔料等の有機顔料及びカーボンブラック、酸化チタン等の無機顔料が挙げられ、更に、表面を樹脂コーティングで加工した加工顔料、例えば、マイクロリスAタイプ各種、ASブラック、ASブルー、IKレッド等も使用することができる。これらの染料及び/又は顔料は、単独又は2種以上混合して使用することもでき、その使用量は着色剤の種類や他のインキ成分により異なるが、インキ全量に対して、1〜30重量%、好ましくは、2〜15重量%が望ましい。
【0024】
用いることができる溶剤としては、例えば、エチルアルコ−ル、プロピルアルコ−ル、イソプロピルアルコ−ル等の低級アルコールや、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素や、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の低級脂肪族ケトンや、酢酸エチル、酢酸ブチル等の低級脂肪酸の低級アルコールエステルや、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪酸炭化水素や、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素やグリコールのアルキルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル等が挙げられる。
これらの特性を有する溶剤は、夫々単独で又は2種以上混合して使用することが可能であり、その使用量は、インキ全量に対して、50〜90重量%、好ましくは、70〜85重量%が望ましい。
【0025】
樹脂は、被膜形成剤、被塗布面への付着剤、インキの粘度調整剤、更に、着色剤の分散剤として使用するものであり、従来より使用されている各種の天然樹脂、合成樹脂が使用でき、例えば、ロジン、エステルガム、マレイン酸変成ロジン、フェノール変成ロジン等のロジン系樹脂、エチルセルローズ、ニトロセルローズ等のセルローズ系樹脂、ポリビニルブチラール、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂等のビニル系樹脂、石油系樹脂、ケトン系樹脂、アクリル系樹脂、アルデヒドと尿素の縮合物、マレイン酸樹脂等が挙げられ、これらは単独又は2種以上混合して使用することが可能であり、その使用量は、インキ全量に対して、0.1〜30重量%、好ましくは、1〜20重量%が望ましい。
その他の筆記具用添加剤としては、例えば、アニオン系、ノニオン系、カチオン系などの界面活性剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤、潤滑剤、pH調製剤などが挙げられる。
【0026】
このように構成される各発明となる筆記具では、インキタンク部内壁面、コレクター部材、中継芯及びインキ吸蔵体の少なくとも一つにペン先の乾燥抑制作用を発揮する上述の蒸発抑制作用を有する物質、すなわち、常温で固体、かつ、インキ溶媒に対する溶解度が常温で5%以下となる上述の蒸発抑制作用を有する物質をコーティングすることにより、各コーティング材(インキタンク部内壁面、コレクター部材、中継芯及びインキ吸蔵体の少なくとも一つ)からインキ中に徐々に溶け出し、該インキ中に溶け出した蒸発抑制作用を有する物質がペン先の表面部に行くと、ペン先の表面部に非常に脆い皮膜を形成でき、この皮膜によりインキ成分に含まれる揮発成分となる溶剤などの蒸発が防止され、また、該皮膜は筆記時の筆圧によって破れ、筆記が可能となるものであり、しかも、該皮膜の形成は上記コーティング量により若干相違もあるが、各コーティング材(インキタンク部内壁面、コレクター部材、中継芯及びインキ吸蔵体の少なくとも一つ)から蒸発抑制作用を有する物質が再度必要量だけインキ中に溶け出し、次にペン先が空気中にさらされたとき、インキ溶媒との相互作用でペン先表面に新たな皮膜を形成し、この皮膜形成→筆記→皮膜形成→筆記……は何回も繰り返し効果を示すものである。この効果はインキタンク部に充填した又はインキ吸蔵体に吸蔵させたインキ成分を使い果たすまで繰り返すこととなる。
また、インキ中に溶解度が低い蒸発抑制作用を有する物質を直接インキ中に含有させる従来のインキ組成物とは全く相違するものであるので、蒸発抑制作用を有する物質が各コーティング材からインキ中に徐々に溶け出すものとなるため、低温での保存性が良好であり、インキ流路内で目詰まりなども起こすことがなく、経時的にも安定な品質を有する筆記具が提供されるものとなる。
【0027】
本発明では、図1〜図6の各形式の筆記具であっても、ペン先からのインキ溶剤の蒸発抑制に優れる筆記具、すなわち、キャップオフ性能に優れる筆記具が提供されることとなる。
特に、図6に示されるキャップ体を有しないノック式筆記具において、ペン先をシールしない構造であっても良好な筆記性能を実現するものとなり、また、インキ中に溶解度が低い蒸発抑制作用を有する物質を直接含有させるものでなく、各コーティング材(インキタンク部内壁面、コレクター部材、中継芯及びインキ吸蔵体の少なくとも一つ)に蒸発抑制作用を有する物質をコーティングするので、これにより、各コーティング材からインキ中に徐々に溶け出すものとなるため、低温での保存性が良好であり、インキ流路内で目詰まりなども起こすことがないものとなる。
更に、常温で固体で、融点が40〜95℃であり、かつ、インキ溶媒に対する溶解度が常温では5%以下となる上記各々の蒸発抑制作用を有する物質を各コーティング材にコーティングしてなる筆記具では、更にインキ中に必要以上の蒸発抑制作用を付与する物質が溶け出さないため、ガラス等の非吸収面に筆記した際の筆記描線の乾燥時間が早くなる。
【0028】
本発明において、更に好ましくは、上述の蒸発抑制作用を有する物質を、上述の如く各コーティング材(インキタンク部内壁面、コレクター部材、中継芯及びインキ吸蔵体の少なくとも一つ)にコーティングすると共に、更に上述の特性を有する蒸発抑制作用を有する物質を図1〜図6に示す各筆記具の各ペン先に上述のデッピング処理又は噴霧処理等によるコーティング方法によりコーティングすることが望ましい。
なお、蒸発抑制作用を有する物質は、上述のコーティング物質と基本的に同じ特性のものを使用することができる。
【0029】
上記特性を有する蒸発抑制作用を有する物質のペン先へのコーティング量は、ペン先に対して、重量比で0.01〜20重量%、好ましくは、0.1〜10重量%、更に好ましくは、0.3〜5重量%である。
コーティング量が0.01重量%未満であると、本発明の効果を達成することができず、また、20重量%を越えると、ペン先のインキ流路とペン先の強度(耐久性)のバランスがとれなくなり、インキが出難くなり、カスレを生じたり、筆記が進むにしたがってペン先の崩れが生じたりするようになり、好ましくない。
【0030】
この形態の筆記具では、ペン先に蒸発抑制作用を有する物質をコーティングすると共に、更に各コーティング材に蒸発抑制作用を有する物質をコーティングすることとなるので、更に優れた本発明の効果を発揮せしめることができることとなる。
特に好ましくは、ペン先へ蒸発抑制作用を有する物質のコーティング量が、ペン先に対して、重量比で0.3〜5重量%で、かつ、該蒸発抑制作用を有する物質の各コーティング材へのコーティング量が、各コーティング材に対して、重量比で0.02〜10重量%とすることにより、本発明の効果を更に優れたものとすることができる。
【0031】
本発明の筆記具は、上記実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の形態に変更できることはいうまでもない。例えば、化粧品等の塗布具などにも適用できるものである。
特に、本発明では、図6に示すように、キャップ体がない状態で、筆記具本体内にペン先を収容しておいても良好な筆記性能を実現する筆記具を達成できるものであるので、筆記具用キャップ体のいらないノック式リフィールマーキングペン、サインペン、筆ペンなどの構造の筆記具に好適に用いることができる。
【0032】
【実施例】
次に、本発明を実施例及び比較例に基づき更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0033】
〔製造例1、コーティングインキ吸蔵体(中綿)の作製〕
インキ吸蔵体として、図9(a)及び(b)に示すインキ吸蔵体を使用した。
インキ吸蔵体は、ポリプロピレン繊維のスライバーからなるものであり、重量2.0g、長さ70mm、直径13mm(気孔率80%)のものを使用した。
コーティング物質(剤)として、▲1▼ヘキサグリセリルトリステアレート(融点57℃)、▲2▼パラフィンワックス(融点61℃、日本精蝋社製「パラフィンワックス140」、▲3▼ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(融点53℃)の3種を使用した。
また、インキ溶媒〔n−プロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルからなる溶媒〕に対する上記▲1▼〜▲3▼の溶解度は常温で▲1▼は2%、▲2▼は0.1%、▲3▼は0.6%であった。
コーティング方法は、上記所定量となるコーティング物質を溶媒となるイソへキサンに溶解し、該調製液に上記インキ吸蔵体を浸漬せしめ、50℃で2時間浸漬した後、メッシュ状容器に引き上げて溶剤を50℃で一昼夜(24時間)乾燥させたものを使用した。
コーティング物質(剤)のインキ吸蔵体(中綿)への付着量は、処理前後のインキ吸蔵体の重量差でとらえ、処理前のインキ吸蔵体重量に対する重量%で示した。製造例1は、上記処理率で3種とも5%を使用した。
【0034】
中継芯として、図10に示す中継芯を使用した。
中継芯は、アクリル繊維のスライバーからなるものであり、重量0.05g、長さ22mm、直径1.5mm(気孔率50%)のものを使用した。
コーティング物質(剤)は、上記製造例1の▲1▼〜▲3▼を使用し、コーティング方法も上記製造例1と同様にして作製した。
なお、コーティング量は、製造例1と同様に、上記処理率で3種とも1%の中継芯を使用した。
【0035】
〔製造例3、コーティングペン先の作製〕
ペン先として、図7(a)に示すペン先を使用した。
ペン先は、アクリル繊維のスライバーからなるものであり、重量0.17g、長さ33mm、直径4.0mm(気孔率55%)のものを使用した。
コーティング物質(剤)は、上記製造例1の▲1▼〜▲3▼を使用し、コーティング方法も上記製造例1と同様にして作製した。
なお、コーティング量は、製造例1と同様に、上記処理率で3種とも1%のペン先(ペン芯)を使用した。
また、インキは、下記表1に示される組成からなるインキ▲1▼〜▲3▼を使用した。
【0036】
【表1】
Figure 0004518629
【0037】
〔実施例1〜6及び比較例1〜4〕
(実施例1)
製造例1で得たコーティングインキ吸蔵体(中綿)を使用した図3に示す筆記具に上記表1の▲1▼のインキ(5g)を充填し0℃で1日放置し、室温下に戻しキャップオフ後のノンドライ性を評価した。
(実施例2)
製造例2で得たコーティング中継芯を使用した図1に示す筆記具に上記表1の▲2▼のインキ(2g)を充填し0℃で1日放置し、室温下に戻しキャップオフ後のノンドライ性を評価した。
(実施例3)
上記実施例1の筆記具において製造例3で得たペン先を使用して上記実施例1と同様にキャップオフ後のノンドライ性を評価した。
(実施例4)
上記実施例2の筆記具において製造例3で得たペン先を使用して上記実施例1と同様にキャップオフ後のノンドライ性を評価した。
(実施例5)
図2に示す筆記具20のインキ内壁面部22aの全面にコーティング物質▲2▼を製造例1と同様の方法で処理した(処理率0.5%)。インキは、▲1▼のインキ(7g)を充填し、0℃で1日放置し、室温下に戻しキャップオフ後のノンドライ性を評価した。
(実施例6)
上記実施例5の筆記具において、製造例3で得たペン先を使用して、上記実施例1と同様にキャップオフ後のノンドライ性を評価した。
【0038】
(比較例1)
コーティング処理しないインキ吸蔵体(中綿)、ペン先を使用した図3に示す筆記具に上記表1の▲1▼のインキ(5g)を充填し0℃で1日放置し、室温下に戻しキャップオフ後のノンドライ性を評価した。
(比較例2)
コーティング処理しない中継芯、ペン先を使用した図1に示す筆記具に上記表1の▲2▼のインキ(2g)を充填し0℃で1日放置し、室温下に戻しキャップオフ後のノンドライ性を評価した。
(比較例3)
コーティング処理しないインキ吸蔵体(中綿)、ペン先を使用した図4に示す筆記具に上記表1の▲3▼のインキ(5.5g)を充填し0℃で1日放置し、室温下に戻しキャップオフ後のノンドライ性を評価した。
(比較例4)
コーティング処理しないインキ吸蔵体(中綿)、ペン先を使用した図3に示す筆記具に上記表1の▲3▼のインキ(5g)を充填し0℃で1日放置し、室温下に戻しキャップオフ後のノンドライ性を評価した。
上記実施例1〜6及び比較例1〜4で得られた筆記具のキャップオフ後のノンドライ性(キャップオフ後に掠れずに筆記できる日数)の結果を下記表2に示す。
【0039】
【表2】
Figure 0004518629
【0040】
上記表2の結果から明らかなように、本発明となる実施例1のインキ吸蔵体に蒸発抑制作用を有する物質を夫々3種コーティングしてなる筆記具、実施例2の中継芯に蒸発抑制作用を有する物質を夫々3種コーティングしてなる筆記具、実施例3のインキ吸蔵体及びペン先に蒸発抑制作用を有する物質を夫々3種コーティングしてなる筆記具、実施例4の中継芯及びペン先に蒸発抑制作用を有する物質を夫々3種コーティングしてなる筆記具、実施例5のインキ内壁面部にコーティング物質を夫々3種コーティングしてなる筆記具、実施例6のインキ内壁面部及びペン先にコーティング物質を夫々3種コーティングしてなる筆記具は、蒸発抑制作用を有する物質をコーティングしていない比較例1〜4の筆記具に対して、キャップオフ後のノンドライ性にきわめて優れていることが判った。
殊に、比較例3及び4は、蒸発抑制作用を有する物質をインキ中に含有せしめたものであるが、蒸発抑制作用を有する物質の溶解性が悪く、キャップオフ性能が経時的に劣化してしまうことなどにより、キャップオフ後のノンドライ性も、実施例1〜6のコーティング物質をコーティングしてなる筆記具に較べ、劣ることが判った。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、長時間ペン先を大気中に放置しても良好な筆記性能及び優れたキャップオフ性能を発揮すると共に、経時的にも安定な品質を有する筆記具が提供される。
更に、ペン先に蒸発抑制作用を有する物質をコーティングする筆記具では、上記効果に更に長時間、良好なキャップオフ性能を実現する筆記具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の筆記具を直液式筆記具に適用した一例を断面態様で示す説明図である。
【図2】本発明の筆記具をバルブ機構を備えた筆記具に適用した一例を断面態様で示す説明図である。
【図3】本発明の筆記具をインキを中綿等のインキ吸蔵体に吸蔵させたタイプの一例を断面態様で示す説明図である。
【図4】本発明の筆記具をインキを中綿等のインキ吸蔵体に吸蔵させたタイプの他例を断面態様で示す説明図である。
【図5】本発明の筆記具をインキを中綿等のインキ吸蔵体に吸蔵させたタイプの他例を断面態様で示す説明図である。
【図6】(a)及び(b)は、本発明の筆記具をノック式の筆記具に適用した使用状態の一例を断面態様で示す説明図である。
【図7】(a)〜(n)は、本発明の筆記具に用いる繊維芯からなるペン先の構成を説明する説明図である。
【図8】(a)〜(j)は、本発明の筆記具に用いるプラスチック芯からなるペン先の構成を説明する説明図である。
【図9】(a)及び(b)は、実施例及び比較例で用いたインキ吸蔵体(中綿)の正面図及び横断面図である。
【図10】実施例及び比較例で用いた中継芯の正面図である。
【符号の説明】
10 筆記具
13 ペン先
14 中継芯

Claims (6)

  1. インキを直接貯溜する軸体となるインキタンク部を有すると共に、一時的にインキを保溜するコレクター部材を有し、インキタンク部からペン先へのインキの導出が直接又は中継芯を介して行われる筆記具において、上記インキタンク部内壁面、コレクター部材及び中継芯の少なくとも一つに、下記A群から選ばれるインキ溶媒に対する溶解度(25℃)が5%以下である蒸発抑制作用を有する物質がコーティングされていることを特徴とする筆記具。
    A群:エチルアルコ−ル、プロピルアルコ−ル、イソプロピルアルコ−ル、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテル
  2. インキを直接貯溜する軸体となるインキタンク部を有すると共に、インキタンク部からペン先へのインキの導出がバルブ機構部を介して直接又は中継芯を介して行われる筆記具において、上記インキタンク部内壁面及び/又は中継芯に、下記A群から選ばれるインキ溶媒に対する溶解度(25℃)が5%以下である蒸発抑制作用を有する物質がコーティングされていることを特徴とする筆記具。
    A群:エチルアルコ−ル、プロピルアルコ−ル、イソプロピルアルコ−ル、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテル
  3. 軸体内にインキを吸蔵したインキ吸蔵体を有し、該インキ吸蔵体からペン先へのインキ導出が直接又は中継芯を介して行われる筆記具において、上記インキ吸蔵体及び/又は中継芯に、下記A群から選ばれるインキ溶媒に対する溶解度(25℃)が5%以下である蒸発抑制作用を有する物質がコーティングされていることを特徴とする筆記具。
    A群:エチルアルコ−ル、プロピルアルコ−ル、イソプロピルアルコ−ル、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテル
  4. 請求項1〜3の何れか一つに記載のペン先が繊維芯又はプラスチック芯からなり、該ペン先に、前記蒸発抑制作用を有する物質がコーティングされていることを特徴とする筆記具。
  5. 前記蒸発抑制作用を有する物質が、グリセリン誘導体、アルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、p−トルイル酸、ペンタエリスリトール誘導体、レシチン、パラフィンワックス、マイクロスタリンワックス、ポリオレフィンロウから選択される少なくとも1種であ請求項1〜4の何れか一つに記載の筆記具。
  6. 前記蒸発抑制作用を有する物質のコーティング量が前記コーティング材に対して、重量比で、0.01〜20重量%である請求項1〜5の何れか一つに記載の筆記具。
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