JP4508342B2 - 積層型電子部品およびその製法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層型電子部品およびその製法に関するもので、特に、複数のセラミックグリーンシートを積み重ねて形成された積層セラミックコンデンサに好適に用いられる積層型電子部品およびその製法に関する。
【0002】
【従来技術】
従来の積層セラミックコンデンサは、図10乃至図12に示すように、複数のセラミック層1と、長辺3aと短辺3bを有する複数の長方形状の内部電極3を交互に積層してなる積層体5の上下面に、上側端面セラミック層6および下側端面セラミック層7が形成されて、電子部品本体8が形成されており、この電子部品本体8の両端部に外部電極9を設けて構成されていた。
【0003】
電子部品本体8は、異なる極性の内部電極3が重畳し、実質的に容量を発生させる容量発生部10と、その両側に形成された容量非発生部11とから構成され、電子部品本体8の両端部にそれぞれ形成された外部電極9は、内部電極3の短辺側が一層毎に容量非発生部11を介して接続されている。
【0004】
このような積層セラミックコンデンサは、例えば、先ず、PETフィルム上に、セラミック粉末、有機バインダーおよび溶剤を含むセラミックスラリーを塗布し、40〜80℃で10〜60秒間乾燥後、これをPETフィルムから剥離して複数のセラミックグリーンシートを形成し、これらを複数積層して下側と上側の端面セラミックグリーンシートを形成する。この下側端面セラミックグリーンシートを台板上に配置し、プレス機により圧着して貼り付ける。
【0005】
一方、PETフィルム上に、上記と同様のセラミックスラリーを塗布し、40〜80℃で10〜60秒間乾燥後、このセラミックグリーンシート上に、例えば、Ni、Cu、Ag−Pdのうち一種を含む内部電極ペーストを塗布して、セラミックグリーンシート上に長辺と短辺を有する長方形状の内部電極パターンを複数形成した後、この内部電極パターンが形成されたグリーンシートをPETフィルムから剥離する。
【0006】
この後、下側端面セラミックグリーンシートの上に、内部電極パターンが形成されたグリーンシートを積層し、プレス機により加圧して仮固定する工程を繰り返して内部電極パターンが形成されたグリーンシートを所定枚数積層し、次に、上側端面セラミックグリーンシートを積層し、複数のセラミックグリーンシートと、長辺と短辺を有する複数の長方形状の内部電極パターンを交互に積層してなる積層成形体の上下面に、端面セラミックグリーンシート層が積層された電子部品成形体を作製する。
【0007】
次に、図13に示すように、セラミックグリーンシート12と内部電極パターン13が交互に積層された電子部品成形体15を、セラミックグリーンシート12および内部電極パターン13が軟化する温度に一挙に加熱した状態で積層方向からプレス機により加圧して圧着し、さらに、この後、電子部品成形体15の上部にゴム型を配置し、上記と同様の温度に加熱した状態で静水圧成形する。
【0008】
この後、所定のチップ形状にカットし、そのチップ状成形体の両端面に外部電極ペーストを塗布して、焼成することにより、積層セラミックコンデンサが形成されていた。尚、外部電極については、焼成されたチップ状成形体の両端面に外部電極ペーストを塗布して焼き付けることによっても形成されていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、セラミックグリーンシート12および内部電極パターン13が軟化する温度に一挙に加熱した状態で、積層方向からプレス機により加圧して圧着していたため、図13に矢印で示したように、異なる極性の内部電極パターン13が重畳する部分(容量発生部)から、異なる極性の内部電極パターン13が重畳しない部分(容量非発生部)へ、セラミックグリーンシート12が押し出され、セラミックグリーンシート12が湾曲するとともに内部電極パターン13が湾曲し、また、セラミックグリーンシート12がプレス機の加圧力に応じて伸び、層厚が薄くなり、ショートの発生率が増加するという問題があった。特に、セラミックグリーンシート12を薄くすればする程、ショート発生率が増加するという問題があった。
【0010】
さらに、内部電極パターン13に、異なる極性の内部電極パターン13の湾曲部分が近づき、ショート不良が集中するという問題があった。また、ショートまで至らない製品であっても、信頼性評価にて著しく寿命が低下するという問題があった。
【0011】
また、内部電極パターンが形成されたグリーンシートを積層し、プレス機により加圧して仮固定する工程を繰り返して電子部品成形体15を形成していたため、下層のセラミックグリーンシート同士は加圧工程を受ける回数が多いため密着力は高いが、上層にいくほど加圧工程を受ける回数が少なくなり、セラミックグリーンシート同士の密着性が低下するという問題もあった。
【0012】
従って、セラミックグリーンシート12および内部電極パターン13が軟化する温度に一挙に加熱した状態で積層方向からプレス機により加圧して圧着すると、上層のセラミックグリーンシート12は接着強度が弱いため、容易に伸び、薄くなって、上記と同様、電子部品本体15の上層部においてショート不良が集中するという問題があった。この場合においても、小型薄型化のためにセラミック層の厚みを薄くすればする程、その傾向が大きくなるという問題があった。
【0013】
また、セラミックグリーンシート自体を薄く形成すると、シート作製時に発生するピンホール及びハンドリングによって生じるシート破れ等により、ショート不良が発生しやすくなるという問題があった。
【0014】
本発明は、セラミック層を薄くしても異なる極性の内部電極間のショートを抑制できる積層型電子部品およびその製法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の積層型電子部品は、複数のセラミック層と複数の長方形状の内部電極とを交互に積層してなり、容量を発生させる容量発生部とその両側に形成された容量非発生部とを有する電子部品本体と、該電子部品本体の両端面にそれぞれ形成され、前記内部電極が前記容量非発生部を介して交互に接続された外部電極とを具備する積層型電子部品において、前記容量非発生部の積層方向中央部における複数の前記内部電極に屈曲部を有するとともに、該屈曲部が前記容量非発生部の積層方向に対して所定角度を有する直線状に形成されており、かつ前記容量発生部における内部電極の一対の長辺と、該内部電極の一対の長辺間における電極中央部とがほぼ同一平面上に存在することを特徴とする。
【0016】
このような積層型電子部品は、セラミックグリーンシートに複数の長方形状の内部電極パターンを形成する工程と、該セラミックグリーンシートを複数積層して積層成形体を作製する工程と、該積層成形体を、前記セラミックグリーンシートが軟化する温度で、かつ前記内部電極パターンが軟化しない温度に加熱して加圧板により加圧した後、前記内部電極パターンが軟化する温度まで加熱して前記加圧板により加圧し、複数のチップ状成形体を有する電子部品成形体を作製する工程と、該電子部品成形体の隣設する内部電極パターンの長辺間におけるセラミックグリーンシートを切断除去して、前記内部電極パターンの長手方向に複数のチップ状成形体が形成された連結体を離間せしめる工程と、この状態で前記セラミックグリーンシートが軟化する温度で、かつ前記内部電極パターンが軟化しない温度に加熱して加圧板により加圧する工程と、前記連結体の隣設する内部電極パターンの短辺間におけるセラミックグリーンシートを切断してチップ状成形体を作製する工程とを具備する製法により作製される。
【0017】
このように、セラミックグリーンシートを複数積層した後、プレス設定温度をセラミックグリーンシートが軟化する温度であって、内部電極パターンが軟化しない温度に加熱して加圧板により加圧することにより、異なる極性の内部電極パターンが重畳する部分(容量発生部)から、異なる極性の内部電極パターンが重畳しない部分(容量非発生部)へ、セラミックグリーンシートが押し出されるが、内部電極パターンは軟化していないため、ある一定量グリーンシートが押し出されると、その部分で内部電極パターンが屈曲し、この内部電極パターンの屈曲部が防壁の役目をして、セラミックグリーンシートの押し出しが阻止される。
【0018】
屈曲部が形成される部位は、電子部品成形体は上下方向から加圧されるため、その積層方向中央部に形成される。また、セラミックグリーンシートが薄くなる程、一層の内部電極パターンに複数の屈曲部が形成され易く、また、内部電極パターンに形成された屈曲部は、積層方向に対して所定角度をなす直線状に形成され易い。
【0019】
この後、セラミックグリーンシートが軟化する温度よりも高く、かつ内部電極パターンが軟化する温度にまで加熱して加圧板により加圧することにより、セラミックグリーンシートと内部電極パターンとの密着性、セラミックグリーンシート相互間の密着性を向上でき、クラックやデラミネーションの発生を防止できる。
【0020】
従って、一部の層厚が異常に薄くなることを抑制でき、異なる極性の内部電極間の近接を抑制でき、ショートの発生を抑制できる。
【0021】
また、上層にいくほどセラミックグリーンシート同士の密着性が低下したとしても、セラミックグリーンシートおよび内部電極パターンが軟化する温度に一挙に加熱することなく、先ず、セラミックグリーンシートが軟化する温度に加熱して加圧板により加圧することにより、内部電極パターンに屈曲部が形成され、それ以降のセラミックグリーンシートの押し出しが阻止されるため、上層のセラミックグリーンシートが異常に薄くなることがなく、下層部から上層部まで均一な厚みになり、上層部に集中していたショート不良の発生を抑制できる。
【0022】
さらに、加圧板を用いて加圧しており、しかも、内部電極が屈曲しているため、容量非発生部における上下部分における内部電極はほぼ平坦となる。
【0023】
また、電子部品成形体の作製工程において、セラミックグリーンシートの軟化温度から、内部電極パターンの軟化温度までに、段階的に加圧力を大きくして加圧することが望ましい。このように段階的に加圧力を大きくすることにより、各セラミックグリーンシートをより均一厚みとすることができる。
【0024】
そして、本発明では、内部電極パターンの長辺間におけるセラミックグリーンシートを切断除去して、内部電極パターンの長手方向に複数のチップ状成形体が形成された複数の連結体を離間せしめる工程と、この状態でセラミックグリーンシートが軟化する温度で、かつ内部電極パターンが軟化しない温度に加熱して加圧板により加圧する工程と、連結体の隣設する内部電極パターンの短辺間におけるセラミックグリーンシートを切断してチップ状成形体を作製する。
【0025】
これにより、複数の連結体間には、例えば、ダイシングソーにより切断除去されて形成された溝が形成されており、この状態で、再度セラミックグリーンシートの軟化温度以上で且つ内部電極パターンの軟化温度よりも低い温度で加圧することにより、セラミックグリーンシートが、内部電極パターンの長辺方向に、即ち、連結体間の溝へ向けて流動し、セラミックグリーンシートが薄くなり、より一層の誘電体層の薄層化が実現できる。
【0026】
このため、セラミックグリーンシートを作製時に薄層化することなく、セラミックグリーンシートを積層した後に所定条件で加圧することにより薄層化できるため、薄いシートの作製時に生じるピンホール、及び搬送時のハンドリングによるシート破れ等を防止でき、より高信頼性の薄層積層体を得ることができる。
【0027】
また、セラミックグリーンシートが連結体間の溝へ向けて流動することにより、湾曲していた内部電極パターンの長辺側がほぼ平坦に修正され、内部電極の長辺側端と電極中央部がほぼ平坦となる。
【0028】
さらに、本発明の積層型電子部品では、容量非発生部の積層方向中央部における複数の内部電極の屈曲部として、上方向に向いた屈曲部と、下方向に向いた屈曲部とを有することが望ましい。このように屈曲部を同一平面に分散して形成することにより、その屈曲部での異なる極性の内部電極の近接を防止し、また内部応力の集中を抑制でき、高信頼性を確保できる。
【0029】
また、本発明の積層型電子部品では、屈曲部のうち同一方向に向いた前記屈曲部同士が、前記容量非発生部の積層方向に対して所定角度を有する直線状に形成されていることが望ましい。このように屈曲部の形成位置が積層方向に対してずれていることにより、容量発生部、容量非発生部に該当する電子部品本体の表面を平坦とすることができるとともに、容量非発生部における応力集中が抑制され、焼成時におけるクラックやデラミネーションの発生を抑制できる。
【0030】
【発明の実施の形態】
本発明の積層型電子部品を、例えば、積層セラミックコンデンサを例にして説明する。本発明の積層セラミックコンデンサは、図1乃至図3に示すように、複数のセラミック層31と、長辺33aと短辺33bを有する複数の長方形状の内部電極33を交互に積層してなる積層体35の上下面に、上側端面セラミック層36および下側端面セラミック層37が形成されて、電子部品本体38が形成されており、この電子部品本体38の両端部に外部電極39を設けて構成されている。
【0031】
電子部品本体38は、異なる極性の内部電極33が交互に重畳し、実質的に容量を発生させる容量発生部40と、その両側に形成された容量非発生部41とから構成され、電子部品本体38の両端面にそれぞれ形成された外部電極39には、内部電極33短辺側が一層毎に容量非発生部41を介して接続されている。
【0032】
内部電極33の短辺33bは、図1に示したように、容量非発生部41を介して電子部品本体38の両端面に交互に露出しており、これらの短辺33bが外部電極39に接続されている。
【0033】
そして、容量発生部40における内部電極33の一対の長辺33aと、該内部電極33の一対の長辺33a間における電極中央部33cとがほぼ同一平面上に存在している。即ち、内部電極33の幅方向(一対の長辺33a間)はほぼ平坦とされている。ほぼ平坦とは、平坦であることが最も望ましいが、電極中央部33cの平面を長辺まで延設した場合に、その延長線と長辺との距離が3μm以下ならば差し支えない。尚、通常、セラミックコンデンサの内部電極の短辺長さは1mm程度である。
【0034】
また、容量非発生部41における積層方向中央部(セラミック層31の厚み方向中央部)の内部電極33には、図1に示したように、それぞれ屈曲部Aが形成されており、容量非発生部41の上下部分における内部電極33は、略平坦とされている。容量非発生部41における内部電極33の屈曲部Aは、図4に示すように、積層方向xに対して(セラミック層31の厚み方向に対して)所定角度θを有する直線状に形成されている。尚、図1では、便宜上、屈曲部を同じ位置に記載した。
【0035】
積層体35の積層方向中央部における内部電極33の長辺33aは、上下端の内部電極33の長辺33aよりも30μm以下外方に突出する場合もある。
【0036】
複数のセラミック層31の厚みは、3μm以下、特には2μm以下とされており、その厚み差は0.2μm以内であることが望ましい。このように、セラミック層31の厚みが薄くなればなるほど、異なる極性の内部電極が近づき、ショートや絶縁抵抗の低下が発生し易くなる。また、厚み差を0.2μm以内とすることにより、ショート不良および絶縁不良を抑制することができる。
【0037】
積層セラミックコンデンサは、例えば、先ず、PETフィルム上に、セラミック粉末、有機バインダーおよび溶剤を含むセラミックスラリーを塗布し、乾燥器内で乾燥後、これを剥離して複数のセラミックグリーンシートを形成し、これらを複数積層して端面セラミックグリーンシートを形成する。
【0038】
そして、端面セラミックグリーンシートを、上記グリーンシートの乾燥温度よりも高く、かつ長時間乾燥させ、例えば、60〜120℃で10〜60分間乾燥することにより、十分に乾燥させて収縮させ、硬化させる。この端面セラミックグリーンシートの厚みは、50〜150μmとされており、図5に示すように、このような端面セラミックグリーンシート42を、台板43上に配置し、プレス機により圧着して台板43上に貼り付ける。
【0039】
セラミック粉末としては、例えば、BaTiO3粉末にMgCO3、MnCO3、Y2O3粉末、ガラス形成材料を混合したものが用いられ、有機バインダーとしては、例えば、ブチラール樹脂が用いられ、溶剤としてはトルエンが用いられる。尚、本発明では、セラミックとは、ガラスセラミックも含む概念である。
【0040】
一方、PETフィルム上に、上記と同一のセラミックスラリーを塗布し、乾燥器内で乾燥後、この厚み2〜10μmのセラミックグリーンシートに、例えば、Ni粒子、BaTiO3粉末、有機バインダーとして、例えば、エチルセルロースを用い、溶剤として炭化水素系溶剤を含む内部電極ペーストを塗布して乾燥し、グリーンシート上に長辺と短辺を有する長方形状の内部電極パターンを複数形成し、乾燥後、剥離する。尚、セラミックスラリーは、端面セラミックグリーンシートと同一である必要はなく、異なる組成であっても良い。
【0041】
この後、図5に示すように、端面セラミックグリーンシート42の上に、内部電極パターンが形成されたグリーンシートを積層し、プレス機の加圧板により仮固定し、これらの工程を複数回繰り返し、この後、端面セラミックグリーンシート44を積層し、複数のセラミックグリーンシートと、長辺と短辺を有する複数の長方形状の内部電極パターンを交互に積層してなる積層物45の上下面に、端面セラミックグリーンシート層42、44が積層された積層成形体47を作製する。
【0042】
次に、図6(a)に示すように、積層成形体47が形成された台板43を金型51に載置し、所定温度に加熱した状態で、積層方向からプレス機の加圧板53により加圧して圧着する。
【0043】
特に、本発明では、積層体47を、図7に示すように、セラミックグリーンシートが軟化する温度に加熱して加圧板により加圧した後、このセラミックグリーンシート軟化温度よりも高く、かつ内部電極パターンが軟化する温度まで加熱して加圧板により加圧し、複数のチップ状成形体を有する電子部品成形体を作製することが重要である。このセラミックグリーンシートや内部電極パターンの軟化温度は、一般に有機バインダーの種類、量によって決定されるため、内部電極パターンの軟化温度がセラミックグリーンシートの軟化温度よりも高くなるように設定する必要がある。尚、セラミックグリーンシートが軟化する温度とは、セラミックグリーンシートの軟化温度以上の温度をいい、内部電極パターンが軟化する温度とは、内部電極パターンの軟化温度以上の温度をいう。
【0044】
加圧は、台板43および積層成形体47に均等に温度が行き渡ってから昇圧するように一定時間をおき、また各昇圧スピードは、緩やかにすることが望ましい。
【0045】
この後、図6(b)に示すように、さらに電子部品成形体55の上部にゴム型58を配置し、所定温度に加熱した状態で、静水圧成形する。尚、電子部品成形体55を上下からゴム型により静水圧成形しても良い。静水圧成形時の加熱温度は、内部電極の軟化温度よりも高くなるように設定する。ゴム型による静水圧成形により、内部電極パターンの長辺近傍は中央側に向けて湾曲している。
【0046】
この後に、図8に示すように、電子部品成形体55の隣接する内部電極パターンの長辺間におけるセラミックグリーンシートを切断して、内部電極パターンの長手方向に複数のチップ状成形体54が整列した複数の連結体56を離間せしめる。
【0047】
即ち、複数の連結体56間には、例えば、ダイシングソーにより切断されて形成された溝57が形成されており、この状態で、再度セラミックグリーンシートが軟化する温度以上で且つ内部電極が軟化する温度よりも低い温度で、図6(a)に示す加圧板53で加圧することにより、セラミックグリーンシートが、内部電極パターンの長辺方向に、即ち、連結体56間の溝57へ向けて(図8(c)の矢印方向に)流動し、セラミックグリーンシートが薄くなり、より一層の誘電体層の薄層化が実現できる。溝57の幅は、ダイシングソーの精度という点から75〜200μmとされている。
【0048】
そして、湾曲していた内部電極の長辺近傍は、セラミックグリーンシートが連結体56間の溝57へ向けて流動することに伴い、湾曲が修正されて、電極中央部とほぼ同一平面となる。
【0049】
次に、連結体56の隣接する内部電極パターンの短辺間におけるセラミックグリーンシートを切断して(例えば、図8(b)に示す一点鎖線で示す部分を切断して)、チップ状成形体54を作製する。
【0050】
この後、そのチップ状成形体の両端面に、例えばNiを含有する外部電極ペーストを塗布して、焼成することにより、積層セラミックコンデンサが形成される。尚、外部電極については、焼成されたチップ状成形体の両端面に外部電極ペーストを塗布して焼き付けることによっても形成できる。
【0051】
以上のように構成された積層セラミックコンデンサでは、図7に示すように、プレス設定温度をセラミックグリーンシート軟化温度以上に加熱して加圧板53により加圧することにより、図9(a)に示すように、異なる極性の内部電極パターンが重畳する部分(容量発生部)から、異なる極性の内部電極パターンが重畳しない部分(容量非発生部)へ、セラミックグリーンシートが押し出されるが、内部電極パターンは軟化していないため、ある一定量グリーンシートが押し出されると、その部分で内部電極パターンが屈曲し、この内部電極パターンの屈曲部が防壁の役目をして、セラミックグリーンシートの押し出しが阻止される。
【0052】
この後、図7に示したように、セラミックグリーンシート軟化温度よりも高く、かつ内部電極パターンが軟化する温度にまで加熱して加圧板により加圧することにより、セラミックグリーンシートと内部電極パターンとの密着性を向上でき、デラミネーションやクラックの発生を防止できる。
【0053】
従って、一部分においてセラミック層の層厚が異常に薄くなることを抑制でき、異なる極性の内部電極間の近接を抑制でき、ショートの発生を抑制できる。
【0054】
また、上層にいくほどセラミックグリーンシート同士の密着性が低下したとしても、セラミックグリーンシートおよび内部電極パターンが軟化する温度に一挙に加熱することなく、先ず、セラミックグリーンシート軟化温度に加熱して加圧板により加圧することにより、内部電極パターンに屈曲部が形成され、それ以降のセラミックグリーンシートの押し出しが阻止されるため、上層のセラミックグリーンシートが異常に薄くなることがなく、下層部から上層部にいたるまで均一な厚みになり、上層部に集中していたショート不良の発生を抑制できる。
【0055】
さらに、加圧板を用いて加圧しているので、容量非発生部における上下部分における内部電極はほぼ平坦となる。
【0056】
また、積層方向からプレス機の加圧板53により加圧すると、図9(b)に示すように、積層方向中央部では内部電極パターンの長辺近傍が横方向に延びるものの、端面セラミックグリーンシート層42、44が乾燥され硬化されているため延びにくく、これらの端面セラミックグリーンシート層42、44に引きずられて上下端部の内部電極パターンの長辺の延びが抑制され、積層方向中央部では内部電極パターンの長辺が、上下端の内部電極パターンの長辺よりも突出した状態となる。
【0057】
また、積層方向中央部では内部電極パターンの長辺近傍が横方向に延びるものの、端面セラミックグリーンシート層42、44が延びにくいため、この端面セラミックグリーンシート層42、44に引きずられて電子部品成形体47の横方向への延びが抑制され、セラミックグリーンシート間の剥離やクラックを防止でき、これにより、積層型電子部品のデラミネーションおよびクラックの発生を抑制することができる。
【0058】
そして、サイドマージンをカットして溝を開けた後に再度セラミックグリーンシートの軟化温度以上で、内部電極の軟化温度より低い温度で加圧することにより、図9(b)に示すように、セラミックグリーンシートをサイドマージン部の溝に流動させることができ、より均一で薄層のセラミック層を得ることができる。
【0059】
尚、上記例では、本発明の積層型電子部品を積層セラミックコンデンサに適用した例について説明したが、本発明では上記例に限定されるものではなく、例えば、積層型インダクタ、圧電トランス、圧電アクチュエータ等に用いても良いことは勿論である。
【0060】
【実施例】
先ず、PETフィルム上に、BaTiO3、MgCO3、MnCO3およびY2O3粉末、ブチラール樹脂、およびトルエンからなるセラミックスラリーを作製し、これをドクターブレード法により塗布し、乾燥器内で60℃で15秒間乾燥後、これを剥離して厚み9μmのセラミックグリーンシートを10枚形成し、これらを積層して端面セラミックグリーンシートを形成した。そして、これらの端面セラミックグリーンシートを、90℃で30分間乾燥させた。
【0061】
この端面セラミックグリーンシートを台板43上に配置し、プレス機により圧して台板43上に貼り付けた。
【0062】
一方、PETフィルム上に、上記と同一のセラミックスラリーをドクターブレード法により塗布し、60℃で15秒間乾燥後、厚み3μmのセラミックグリーンシートを多数作製した。このセラミックグリーンシートの軟化温度は60℃であった。
【0063】
このPETフィルム上のセラミックグリーンシートに、Ni粉末、BaTiO3末、エチルセルロース、炭化水素系溶剤からなる内部電極ペーストを塗布し、グリーンシート上に長辺と短辺を有する長方形状の内部電極パターンを複数形成し、乾燥後、剥離した。内部電極パターンの軟化温度は80℃であった。
【0064】
この後、図5に示すように、端面セラミックグリーンシート42の上に、内部電極パターンが形成されたグリーンシートを積層し、プレス機の加圧板53により仮固定し、この工程を繰り返して内部電極パターンが形成されたグリーンシートを361枚積層し、この後、端面セラミックグリーンシート44を積層し、積層成形体47を作製した。
【0065】
次に、積層成形体47を、図6(a)に示すように、金型51上に載置し、図7に示すように、セラミックグリーンシートが軟化する温度の65℃に加熱して、段階的に加圧力を増加させて加圧板53により加圧した後、セラミックグリーンシート軟化温度よりも高く、かつ内部電極パターンが軟化する温度の90℃に加熱して、セラミックグリーンシート軟化温度での加圧力よりも大きい圧力で加圧し、電子部品成形体55を作製した。
【0066】
この後、図6(b)に示すように、さらに電子部品成形体55の上部にゴム型58を配置し、静水圧成形した。
【0067】
この後、この電子部品成形体55をダイシングソーで厚み125μmのブレードで、図8に示すように、サイドマージンをカットし、幅125μmの溝57を有し、チップ状成形体54が長手方向に連結した連結体56をもつ電子部品成形体55を得た。その電子部品成形体55を再度金型51上に載置し、図7に示すように、セラミックグリーンシートが軟化する温度の65℃に加熱して、段階的に加圧力を増加させて加圧板53により加圧した。
【0068】
その後所定の連結体56をチップ形状にカットし、そのチップ状成形体54の両端面に、Niを含有する外部電極ペーストを塗布して、焼成し、積層セラミックコンデンサを作製した。
【0069】
そして、作製された積層セラミックコンデンサの横断面を光学顕微鏡により観察したところ、図4に示すように、容量非発生部における積層方向中央部の内部電極に複数の屈曲部が形成され、複数の屈曲部が、積層方向に対して所定角度を有する直線状に形成されており、電子部品本体の上面は略平坦であった。
【0070】
さらに、作製された積層セラミックコンデンサについて、LCRメーターにより、1KHz、1Vrmsの条件で測定し、容量およびショート不良の発生を測定し、また、容量値が得られた製品について絶縁抵抗を測定し、絶縁抵抗が100KΩ以下である場合に絶縁不良とした。
【0071】
さらに、作製された積層セラミックコンデンサの横断面を光学顕微鏡により観察して、デラミネーションやクラックの発生を確認した。これらの結果を表1に記載した。
【0072】
さらに、得られた積層セラミックコンデンサの側面端面を研磨し内部を観察することにより、セラミック層の厚みを測定し、その平均厚みを算出するとともに、その厚みバラツキを測定した。その結果も表1に記載した。
【0073】
また、図2に示すような横断面において、電極中央部33cの平面を長辺まで延設した場合に、その延長線と長辺が同一面上にあるか、あるいは延長線と長辺との距離が3μm以下であるかにより、容量発生部40における内部電極33の一対の長辺33aと、該内部電極33の一対の長辺33a間における電極中央部とが同一平面上に存在するかどうかを確認した。
【0074】
また、本発明者は、上記実施例において、図6(a)に示すように、金型51上に載置し、一挙にセラミックグリーンシートおよび内部電極パターンが軟化する温度の90℃まで加熱して、最終加圧力を上記実施例と同じように段階的に加圧し、また溝57を形成せず、その後の加熱、加圧を行なった以外は、上記と同様にして比較例の積層セラミックコンデンサを作製した。
【0075】
また、上記実施例において、ラバープレス後において、電子部品成形体55に溝57を形成せず、その後の加熱、加圧を行わない以外は、上記と同様にして比較例の積層セラミックコンデンサを作製した。これらの積層セラミックコンデンサについても、上記と同様の特性を評価し、表1に記載した。
【0076】
【表1】
【0077】
この表1から、本発明の試料No.1〜4では、厚みバラツキが0.15μm以下であり、ショート、絶縁不良、デラミネーション、クラックの発生がないことが判る。また、一挙に最終加圧状態まで印加した試料No.5では、厚みバラツキが0.17μmとやや大きいことが判る。また、本発明の試料では、セラミック層の厚みが2μm以下であり、容量も13μF以上であることが判る。
【0078】
一方、一挙に内部電極パターンが軟化する温度まで上げて段階的に加圧したが、溝57を形成せず、その後の加熱、加圧を行わない比較例の試料No.6では、セラミック層の厚みが2.75μmであり、また、屈曲部は形成されず、しかも、厚みバラツキが0.25μmと大きく、また、ショートや絶縁不良が発生することが判る。
【0079】
さらに、電子部品成形体に溝を形成せず、その後の加熱、加圧も行わなかった試料No.7では、屈曲部が形成され、厚みバラツキも小さく、ショートや絶縁不良も発生しないものの、セラミック層の厚みが厚く、容量が9.1μFと小さいことが判る。
【0080】
【発明の効果】
本発明の積層型電子部品およびその製法によれば、セラミックグリーンシートと内部電極パターンとの密着性、セラミックグリーンシート相互間の密着性を向上でき、クラックやデラミネーションの発生を防止でき、異なる極性の内部電極間の近接を抑制でき、ショートの発生を抑制できる。
【0081】
さらに、複数の連結体間に、例えば、ダイシングソーにより切断されて形成された溝が形成されており、この状態で、再度セラミックグリーンシートの軟化温度以上で且つ内部電極の軟化温度よりも低い温度で加圧することにより、セラミックグリーンシートが、内部電極パターンの長辺方向に、即ち、連結体間の溝へ向けて流動し、セラミックグリーンシートが薄くなり、より一層の誘電体層の薄層化が実現できる。これにより、セラミックグリーンシートを作製時に薄層化することなく、セラミックグリーンシートを積層した後に所定条件で加圧することにより薄層化できるため、薄いシートの作製時に生じるピンホール、及び搬送時のハンドリングによるシート破れ等を防止でき、より高信頼性で、高容量の積層型セラミックコンデンサを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層型電子部品の縦断面模式図である。
【図2】図1のa−a線に沿った横断面図である。
【図3】セラミック層上の内部電極を説明するための斜視図である。
【図4】複数の屈曲部が直線状に配列している状態を示す断面図である。
【図5】台板上に電子部品成形体を形成した状態を示す側面図である。
【図6】本発明の製法を説明するための説明図であり、(a)は加圧成形する状態を示す断面図、(b)はゴム型により静水圧成形する状態を示す断面図である。
【図7】時間に対する加熱温度と加圧力との関係を示すグラフである。
【図8】電子部品成形体を示すもので、(a)は斜視図、(b)は(a)の平面図、(c)は加圧する状態を示す側面図である。
【図9】電子部品成形体の断面図であり、(a)は縦断面図、(b)は(a)のc−c線に沿った横断面図である。
【図10】従来の積層型電子部品を示す断面図である。
【図11】図10のb−b線に沿った横断面図である。
【図12】従来のセラミック層上の内部電極を説明する斜視図である。
【図13】従来の電子部品成形体を示す断面図である。
【符号の説明】
31・・・セラミック層
33・・・内部電極
33a・・・長辺
33b・・・短辺
33c・・・電極中央部
38・・・電子部品本体
39・・・外部電極
40・・・容量発生部
41・・・容量非発生部
54・・・チップ状成形体
55・・・電子部品成形体
56・・・連結体
A・・・屈曲部
Claims (5)
- 複数のセラミック層と複数の長方形状の内部電極とを交互に積層してなり、容量を発生させる容量発生部とその両側に形成された容量非発生部とを有する電子部品本体と、該電子部品本体の両端面にそれぞれ形成され、前記内部電極が前記容量非発生部を介して交互に接続された外部電極とを具備する積層型電子部品において、前記容量非発生部の積層方向中央部における複数の前記内部電極に屈曲部を有するとともに、該屈曲部が前記容量非発生部の積層方向に対して所定角度を有する直線状に形成されており、かつ前記容量発生部における内部電極の一対の長辺と、該内部電極の一対の長辺間における電極中央部とがほぼ同一平面上に存在することを特徴とする積層型電子部品。
- 前記容量非発生部の積層方向中央部における複数の前記内部電極の前記屈曲部として、上方向に向いた屈曲部と、下方向に向いた屈曲部とを有することを特徴とする請求項1に記載の積層型電子部品。
- 前記屈曲部のうち同一方向に向いた前記屈曲部同士が、前記容量非発生部の積層方向に対して所定角度を有する直線状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の積層型電子部品。
- セラミックグリーンシートに複数の長方形状の内部電極パターンを形成する工程と、該内部電極パターンを形成したセラミックグリーンシートを複数積層して積層成形体を作製する工程と、該積層成形体を、前記セラミックグリーンシートが軟化する温度で、かつ前記内部電極パターンが軟化しない温度に加熱して加圧板により加圧した後、前記内部電極パターンが軟化する温度まで加熱して前記加圧板により加圧し、複数のチップ状成形体を有する電子部品成形体を作製する工程と、該電子部品成形体の隣設する前記内部電極パターンの長辺間における前記セラミックグリーンシートを切断除去して、前記内部電極パターンの長手方向に複数のチップ状成形体が形成された連結体を離間せしめる工程と、この状態で前記セラミックグリーンシートが軟化する温度で、かつ前記内部電極パターンが軟化しない温度に加熱して加圧板により加圧する工程と、前記連結体の隣設する前記内部電極パターンの短辺間における前記セラミックグリーンシートを切断して前記チップ状成形体を作製する工程とを具備することを特徴とする積層型電子部品の製法。
- 前記電子部品成形体を作製する工程において、前記セラミックグリーンシートの軟化温度から、前記内部電極パターンの軟化温度までの加圧力を段階的に大きくすることを特徴とする請求項4に記載の積層型電子部品の製法。
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