JP4507640B2 - 高強度薄鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車、機械部品を始めとする構造用加工材料として利用される熱延鋼板、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板等の高強度薄鋼板の製造方法に関するものであり、特に疲労強度と成形性に優れた高強度薄鋼板の製造方法に関するものである。
近年、自動車用途を中心に、車体重量の軽量化、燃費向上を目的に高強度薄鋼板の需要が増加している。現在、主として足回り部材として使用されている高強度熱延鋼板については、引張強さ780MPaクラスまでのものが実用化されており、冷延鋼板では1180MPa、表面処理鋼板では590MPaクラスまでのものが使用されるようになってきている。
一般的には、鋼板の強度が上昇すると、成形性が悪化するため、複雑な形状に加工することが困難となるという問題が生じる。そのため、複雑な形状を有する部材や、自動車の外板パネルのように成形後の耐デント性や面精度等が要求される部材においては、比較的軟質な材料が使用されているのが現状であり、引張強さ340MPaクラスのものが主流である。
一方、構造部材としての特性として、疲労強度については、高強度化によって疲労限が向上するものの、成形性の観点からは軟質材を適用せざるを得ない場合がある。すなわち、一般的には、成形性と疲労強度との両立は困難といえる。
従来、成形性に優れた比較的軟質の400MPaクラスの鋼板に対して、疲労強度を向上させる方法が、特開2000−294344号公報に開示されており、所定の成分系を有する鋼板に対して、熱延コイルの空冷後、板厚方向に7%以上の圧縮加工ひずみを付与することで疲労強度を向上させ得ることが示されている。
また、特開平8−35035号公報には、表層部と内層部との成分系を異なるものとする複層構造を備えた鋼板が、疲労特性及び加工性を両立し得るものとして開示されている。
特開2000−294344号公報 特開平8−35035号公報
しかしながら、特開2000−294344号公報に開示された発明のように、常温で板厚方向に7%以上の圧縮加工ひずみを付与すると、鋼板の加工硬化により、鋼板の伸びが低下するため、加工条件によっては、割れが発生しやすくなって、かえって成形性が劣化するという問題がある。
また、特開平8−35035号公報に開示された発明では、鋼板を複層構造にするために、ワイヤー添加法を始めとする鋳込み法、圧着法、爆着法などを用いる必要があり、また、製造工程を増加させると共に、表層材料として別途母材とは異なる鋼材を製造しておく必要があって、製造コストを上昇させることになる。
さらに、上記従来技術はいずれも、引張強度レベルが400MPa程度までの比較的軟質な鋼板に適用しようとするものであり、さらに高強度な鋼板の成形性を向上させようとするものではない。したがって、より広範囲の引張強度を有する高強度鋼板について、疲労特性と成形性とを、経済的な製造方法によって、両立させ得る技術が求められている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、高強度鋼板としては比較的軟質である350MPaクラスから、590MPaを超える強度レベルまでの広い範囲にわたって、疲労特性と成形性を両立しうる、疲労強度と成形性に優れた高強度薄鋼板の製造方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するための第1の参考手段は、表面の平均粗さがRaで0.3〜1.5μmであるディンプル状の表面形態を備えた高強度薄鋼板であって、圧縮残留応力の絶対値が100MPa以上となる領域を、板厚の2〜10%の範囲の表層部に有することを特徴とする高強度薄鋼板である。
本明細書及び特許請求の範囲において、「高強度鋼板」とは、熱延鋼板、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板を含む鋼板であって、引張強度レベルが340MPa以上の鋼板をいう。代表的なものとしては、固溶炭素を制御した焼付硬化型(BH)ハイテン、フェライト・マルテンサイトの複層組織(DP)ハイテン、加工誘起マルテンサイト変態を利用したいわゆるTRIP鋼、炭化物の微細分散やベイナイト層によって局部伸びを向上させた高バーリングハイテン、引張強度が980MPa以上となるような超ハイテン等を含むものである。
本手段においては、このような高強度鋼板の表面が、平均粗さRaが0.3〜1.5μmのディンプル状の表面形態となるようにしている。ここで、「ディンプル状」とは、表面の凹みの形状が、主として曲面から構成され、例えば球状の物体が表面に衝突して形成されるクレータ状の凹みが多数形成されている形態である。
高強度鋼板の表面にこのようなディンプル状の凹みが多数存在すると、その凹み部分がプレス成形における油のポケットの役割を果たし、金型と金属板との間の保油性を向上させることができ、圧力が付与された状態で摺動すると凹部から油が流出して、接触界面の摩擦係数を低減させる作用が生じる。これにより、鋼板自体を軟質化しなくても、成形性を向上させることが可能となる。
一方、平均粗さRaについては、0.3μm以上でないと、ディンプルの凹部に十分な保油性を確保できず、成形性を向上させる効果が低下してしまう。一方、Raが1.5μmを超えるとディンプルの凹部に油が満たされない場合があるため、接触界面での潤滑効果を発揮せず、摩擦係数が上昇して、逆に成形性が悪化する場合がある。したがって、鋼板と金型との界面での保油性を向上させ、成形性の向上を図るために、平均粗さRaが0.5〜1.0μmの範囲とするのがより好ましい。
なお、ディンプル状の凹みを金属板の表面から見た場合の大きさとしては、直径5〜200μmであることが好ましく、さらには5〜50μmであることが好ましい。金属板の上面から見た場合の形状は、完全な円でなくてもよく、楕円形状や多角形に近い形状となっていてもよい。ポケット状の凹部として油を保持しやすいような形状であれば同様の効果を発揮するからである。
さらに、本手段においては、圧縮残留応力の絶対値が100MPa以上となる領域を板厚の2〜10%の範囲で表層部に有するようにしている。高強度鋼板の表層部に圧縮残留応力を有することで、表層の疲労き裂の伝播を抑制することが可能となり、疲労寿命を向上させることができる。また、圧縮残留応力が表層部近傍にのみ存在することで、鋼板全体としての機械的性質をほとんど変化させることがなく、延性の低下による加工性劣化も生じさせない。
圧縮残留応力の絶対値を100MPa以上としているのは、圧縮残留応力の絶対値を100MPa以上にしなければ、疲労き裂進展を抑制する効果が小さいからである。また、残留応力が付与されている領域を、鋼板表面から板厚の2〜10%の範囲としているのは、板厚に対して2%未満の極表層のみに圧縮残留応力を付与していても、疲労き裂進展を抑制する効果が小さいためであり、10%を超えると、表層の硬化部分の影響が大きく、それによって鋼板全体としての延性が低下して、逆に加工性を劣化させてしまうからである。
なお、板厚の2〜10%の範囲とは、圧縮残留応力の絶対値が100MPa以上ある範囲が、表裏面の一方の面において、鋼板表面から板厚の2〜10%の範囲であることを意味し、表裏面両面に圧縮残留応力を有する場合には、表裏面それぞれについて2〜10%の範囲、表裏面合わせて4〜20%の範囲で圧縮残留応力の絶対値が100MPa以上となっていることをいう。
前記課題を解決するための第2の参考手段は、平均粒子径30〜300μmのほぼ球形の固体粒子を鋼板表面に投射することによって、鋼板表面の平均粗さRaを0.3〜1.5μmに調整すると共に、圧縮残留応力の絶対値が100MPa以上となる領域を、板厚の2〜10%の範囲の鋼板表層部に付与することを特徴とする前記第1の参考手段である高強度薄鋼板の製造方法である。
固体粒子を鋼板表面に投射すると、その運動エネルギーが鋼板表面への押込み仕事に変換されて、表面に圧痕(くぼみ)が生じる。このとき、ほぼ球形の固体粒子を投射することで、鋼板表面にはディンプル状の凹部が形成され、プレス成形において金型と鋼板との間での保油性を向上させ、成形性の向上を図ることができる。
また、固体粒子の衝突によって生じる鋼板表面の塑性変形によって、表層部の硬度が上昇し、表面には圧縮残留応力が生じることとなる。その結果、表層での疲労き裂の進展が抑制されて、疲労強度の上昇を図ることが可能となる。
ここで、投射する固体粒子の大きさは、平均粒子径30〜300μmのものが望ましい。鋼板への衝突によって形成されるディンプル状の凹部は、固体粒子の粒子径が小さいほど小さくなるため、平均粒子径が30μm未満の場合には、ディンプルの凹部が小さく、プレス成形時に十分な保油性を確保できない。また、粒子径が小さいほど、鋼板に付与される圧縮残留応力は鋼板の内部には付与されにくく、表層近傍にのみ限定されることから、十分な疲労き裂進展に対する抑制効果が得られない。
一方、平均粒子径が300μmを超えると、鋼板表面に形成される個々のディンプル状の凹部が大きくなり、2次加工時に鋼板の凹部に油が満たされず、十分な潤滑効果を発揮できない場合がある。また、粒子径が大きいほど、鋼板のより内部にまで塑性変形が生じ、鋼板の加工硬化によって、全体としての延性を低下させ、成形性が劣化する場合がある。
したがって、より良好な成形性と高い疲労特性を両立させるためには、適度なディンプル状の凹部の大きさと、圧縮残留応力の大きさ及び深さのバランスが重要であり、そのような観点からは平均粒子径として50〜150μm程度の固体粒子を投射するのがより好ましい。
ところで、投射する固体粒子としては、「ほぼ球形」のものを使用する。「ほぼ球形」とは、完全な球でなくても、社会通念上球とみなされるもの、および長径と短径の平均径からの差がそれぞれ平均径の20%以内の、楕円球状のものを含む意味である。鋼板表面に衝突してディンプル状の凹部を形成すると共に、表層に圧縮残留応力を付与する効果を得るためである。
固体粒子の投射手段としては、遠心ロータ式投射装置あるいは空気式投射装置を用いることができる。空気式投射装置は、圧縮空気を噴射ノズルによって加速させ、その抗力を利用して固体粒子を加速させるものである。特に、固体粒子の質量が小さい微細粒子の投射に適しており、粒子速度を非常に大きくすることができることを特徴とする。一方、遠心ロータ式投射装置は、回転するベーンによる遠心力を利用して固体粒子を投射するものであり、空気式投射装置に比べて大きな投射量を確保することができるので、広幅の鋼板を高速処理するのに適している。いずれの場合も、固体粒子の投射速度としては、高強度鋼板の表面に圧痕を形成し、十分な圧縮残留力を付与するために60m/s以上とし、好ましくは90m/s以上とする。
投射する固体粒子としては、鋼球、ステンレス鋼、ハイス、アルミナ、酸化けい素、ダイヤモンド、酸化ジルコニア、タングステンカーバイドなどが挙げられる。ただし、固体粒子を循環使用するのが経済的であるため、できるだけ耐久性が高く、破砕しにくい粒子として、金属系固体粒子が望ましい。
さらに、本手段では、圧縮残留応力の絶対値が100MPa以上となる領域を板厚の2〜10%の範囲で表層部に付与する。ほぼ球形の固体粒子を投射して、表層に圧縮残留応力を付与する場合に、鋼板内部への影響を抑えつつ、表層を伝播する疲労き裂の進展を抑制するためである。
このような硬度分布を付与するためには、鋼板に投射する固体粒子の粒子径、粒子の速度(以下「投射速度」とよぶ。)、鋼板の単位面積あたりに衝突させる粒子の重量(以下、「投射密度」とよぶ。)によって調整が可能であり、鋼板の硬度に応じて、これらの条件を変更する。
例えば、固体粒子の粒子径を小さくすると、表層の圧縮残留応力は、鋼板の内部にまでは付与されず、表層近傍にのみ集中するようになる一方で、粒子径が大きい場合に比べて、圧縮残留応力の絶対値は、その最大値を大きくすることができる。また、投射速度を大きくすると、表層部の圧縮残留応力の大きさが増加すると共に、より内部にまで圧縮残留応力が付与される。さらに、投射密度を大きくしても、同様に表層部の圧縮残留応力が増加すると共に、より内部まで圧縮残留応力が付与される。
このように、固体粒子の投射条件として、粒子径、投射速度、投射密度を変更することによって、圧縮残留応力の大きさと、その影響域の板厚に対する比率を調整することができる。
なお、このような圧縮残留応力の分布形態の調整によって、実部材に負荷される応力状態に応じた最適な圧縮残留応力の付与が可能となる。例えば、繰返し曲げを受ける高強度鋼板として、大きな曲げひずみによって表層から内部にまで高い繰返し応力を受けるような部材に対しては、圧縮残留応力をより内部にまで付与する投射条件を選択し、小さい繰返し応力のみを受ける部材については、表層部に限定して、より大きな圧縮残留応力を付与するような投射条件を選択し得る。
前記課題を解決するための第の手段は、平均粒子径100〜300μmの固体粒子を鋼板表面に投射することによって、圧縮残留応力の絶対値が100MPa以上となる領域を板厚の2〜10%の範囲で鋼板の表層部に付与する第1工程と、平均粒子径30〜100μmのほぼ球形の固体粒子を鋼板表面に投射することによって、鋼板表面の平均粗さRaを0.3〜1.5μmに調整する第2工程とを有することを特徴とする高強度薄鋼板の製造方法(請求項1)である。
高強度鋼板の強度レベルが高くなるほど、母材硬度が上昇するため、固体粒子の衝突によって表層部を塑性変形させ難くなる。そのため、表層に大きな圧縮残留応力を付与するためには、運動エネルギーを大きくするために質量の大きい固体粒子を使用し、投射速度を大きくする必要がある。しかし、投射方法によっては投射速度にも上限が存在するため、比較的大きい固体粒子を投射するのが簡便な手段である。ただし、この場合には成形性の観点からは、ディンプル状の凹部が大きくなりすぎて、成形性向上の効果が十分得られない場合もある。
そこで、大きな粒子の投射によって表層の圧縮残留応力を十分付与した後に、小さい固体粒子を投射することによって、大きい固体粒子によって形成された凹凸を変形させながら、鋼板表面に微細なディンプル状の凹部を形成させる。これによって、疲労特性を向上させる圧縮残留応力と成形性を向上させるディンプル状の凹部の形態とを、それぞれ最適な状態に調整することが可能となり、さらに優れた疲労特性とプレス成形性との両立が可能となる。
このような観点から、本手段においては、第1工程において、平均粒子径100〜300μmの固体粒子を投射することによって、圧縮残留応力の絶対値が100MPa以上となる領域を板厚の2〜10%の範囲で表層部に付与する。これによって、より強度レベルの高い鋼板に対しても、板厚内部にまで圧縮残留応力を付与することができる。
続いて、第2工程では、平均粒子径30〜100μmのほぼ球形の固体粒子を投射することによって、表面の平均粗さRaを0.3〜1.5μmに調整する。これによって、表面により微細なディンプル状の凹部を形成してプレス成形性を高めると共に、極表層部により大きな圧縮残留応力(ピーク値)を付与することができる。
このような手段によって、疲労特性とプレス成形性とを、ほぼ独立して調整することが可能となり、両特性をより高いレベルで両立させることが可能となる。特に強度レベル590MPa以上の高強度鋼板に対して有効な手段である。
なお、以上の第1の手段から第3の手段は、いわゆる高強度鋼板に適用することで、成形性と疲労強度の両立を図るものであるが、上記原理からは、軟鋼板に適用しても優れた疲労特性と成形性を両立し得る手段であることはいうまでもない。
以上説明したように、本発明によれば、高強度鋼板の表面にディンプル状の形態を付与しているので優れたプレス成形性を発揮する共に、表層部に圧縮残留応力を付与しているので疲労き裂の進展を抑え、疲労強度を向上させることができる。特に、ほぼ球形の固体粒子を鋼板表面に投射することで、ディンプル状の凹部の形態と圧縮残留応力の分布を調整できるので、高強度鋼板の成形条件や使用環境に対応した成形性と疲労特性の両立が可能となる。
以下、本発明の実施の形態として、遠心ロータ式投射装置を用いて、高強度鋼板の表面に固体粒子を投射することにより、本発明の実施の形態である高強度薄鋼板を製造する方法について、図を用いて説明する。
図2は、遠心ロータ式投射装置の概略図を示したものである。遠心ロータ式投射装置は、固体粒子を供給する供給管43、遠心力を利用して固体粒子を加速させるインペラー45及びベーン46、これらを駆動するモータ44を備えている。なお、遠心ロータ式投射装置のベーン部の外径は、300〜500mm程度が一般的である。また、インペラー45及びベーン46を含む回転部をロータと称するが、このロータ回転中心から鋼板1までの距離(投射距離と称する)が大きい場合には、固体粒子の空気中での速度減衰が大きくなってしまう。したがって、投射距離が700mm以下であることが好ましく、より好ましくはベーン部外径と同程度の投射距離とするのが好ましい。
タンク等に貯められた固体粒子は、粒子供給管43を通じて遠心ロータ式投射装置のインペラー45内に供給される。インペラー45及びベーン46はモータ44により回転駆動されており、インペラー45内に供給された固体粒子は遠心力により加速される。そして、インペラー45から飛び出した固体粒子は、ベーン46によりさらに加速されるとともに、鋼板1へ向けて投射される。
図1は、本発明の実施に供する固体粒子の投射工程の一例を示す構成図であり、図2に示した遠心ロータ式投射装置を用いたものである。図2に示した遠心ロータ式投射装置は、図1における遠心ロータ式投射装置3a〜3dに対応する。
図1において、遠心ロータ式投射装置3a〜3dは、投射した固体粒子が外部へ飛散しないように周囲が仕切られた投射室2内に収納され、鋼板1の上下面に配置されている。
なお、遠心ロータ式投射装置の全体が投射室2内にある必要は無く、少なくとも固体粒子が投射装置から飛び出す投射口を投射室2内に設け、モータ等は投射室2の外部に備えてもよい。また、投射室2内の出側には、鋼板1に対向してエアパージノズル7が設けられている。さらに、投射室2の下部には、粒子回収装置が設けられている。
投射室2の外部には、固体粒子の分級装置6及び固体粒子を貯蔵するストレージタンク5が備えられている。ストレージタンク5から各遠心ロータ式投射装置3a〜3dまでは粒子供給管により接続されており、その途中には粒子供給量調整装置4a〜4dが設けられている。粒子供給量調整装置4a〜4dは、ライン速度、目標とする鋼板表面の平均粗さ、ディンプル状凹部の大きさ、圧縮残留応力等の操業条件に応じて、ゲート開度を調整できる方式を用いる。
図1において、ストレージタンク5に貯蔵された固体粒子は、粒子供給管を通り、粒子供給量調整装置4a〜4dにより操業条件に応じた供給量に調整されて、投射室2内の遠心ロータ式投射装置3a〜3dに供給される。遠心ロータ式投射装置3a〜3dにより加速された固体粒子は、鋼板1に衝突し、ディンプル状の凹部を鋼板表面に残した後に反射して、周囲に飛散する。特にベーンの回転によって生じる風の流れにより固体粒子の大部分は鋼板1上から排除され、重力によって投射室2の下部に落下する。そして、投射室2の下部へ落下した固体粒子は、粒子回収装置によって回収される。回収された固体粒子は、分級装置6に送られ、破砕されて小さくなった固体粒子を循環系から除去し、残りの固体粒子をストレージタンク5へ再び貯蔵する。
一方、鋼板1上に残存したり、投射室2内で空中に浮遊した後に再び鋼板1の上に落下した固体粒子は、投射室2の出側に設置されたエアパージノズル7によりエアパージされて鋼板表面から取り除かれる。このようにして、投射室2の外部へ固体粒子が持ち出されるのを防止している。また、空中に浮遊する固体粒子を吸引する設備を設置することで、同様の効果を得ることもできる。
なお、鋼板1の板幅方向又は長手方向に、単体又は複数台の投射装置を配置してもよく、処理すべき鋼板の板幅、ライン速度、単体の遠心ロータ式投射装置によって投射できる固体粒子の量などに応じて配置すればよい。
ところで、本発明の固体粒子の投射工程において、遠心ロータ式投射装置による固体粒子の投射にあたっては、固体粒子の投射速度を60m/s以上とすることが望ましい。投射速度がこれよりも小さい場合には、鋼板の表面に十分な大きさのディンプル状の凹部を付与できないか、表層近傍に十分な圧縮残留応力を付与することができないからである。
また、固体粒子の投射密度は、2kg/mとすることが望ましい。投射密度が2kg/m未満では、鋼板に衝突する固体粒子数が少なく、圧痕がまばらとなるため、十分な凹部の形成と圧縮残留応力を得ることができないからである。
図1に示すような投射装置は、高強度鋼板の製造ラインとして連続焼鈍ライン内に配置しても、単独での専用ラインとしてもよい。連続焼鈍ラインに設置する場合には、焼鈍炉の下流側で調質圧延機の上流又は下流側に設置する。
さらに、図1に示す投射装置を2基配置して、上流側に配置した投射装置においては、平均粒子径100〜300μmの固体粒子を投射し、下流側に配置した投射装置においては、平均粒子径30〜100μmの固体粒子を投射することによって、より高い自由度の下で、優れた成形性と疲労特性との両立を図ることができる。ただし、単独の投射装置であっても、鋼板を2回(2パス)通過させ、1パス目に平均粒子径100〜300μmの固体粒子を投射し、2パス目に平均粒子径30〜100μmの固体粒子を投射しても同様の効果が得られる。
<実施例1>
引張強度600MPa及び440MPaの高強度鋼板に対して、固体粒子を投射することにより、本発明の参考例である鋼板と比較例としての鋼板を製造した。その方法を以下に述べる。
供試材は板厚1.8mmの熱延鋼板及び冷延鋼板であり、表面に平均粒子径85μm、150μmのガスアトマイズ法により製造したSUS304の球形粒子を投射した。固体粒子の投射は、図2に示す遠心ロータ式投射装置を用いて行いて、投射速度80〜105m/s、投射密度3〜40kg/mの条件で、平均粗さRaを調整した。
表1に本実施例で用いた固体粒子の平均粒子径と固体粒子投射後の鋼板表面の平均粗さRaを示す。また、図3に供試材の鋼板表層の残留応力分布を示す。図3においてA1、A2、A3として示されているものが、表1のA−1、A−2、A−3にそれぞれ対応する。図3からは、固体粒子の投射条件によって断面内の残留応力分布が変化していることがわかる。ここで、表層の圧縮残留応力の絶対値が100MPa以上となる領域(表面からの深さ)の鋼板板厚に対する比率を、残留応力板厚比と定義し、表1に各供試材の残留応力板厚比を記している。なお、固体粒子を投射する前の母材表層の残留応力はほぼゼロであった。
以上の供試材について、疲労特性を評価するために、平板の繰返し曲げ疲労試験を行った。実験は応力比0.1、繰返し周波数20Hzとし、100万回の繰返し曲げによって破壊しない最大応力を疲労強度とし、母材に比べて10%以上疲労強度が上昇していれば良好な特性を示すものとして判定した。一方、成形性を評価するために球頭張出試験を行い、限界張出し高さを指標として、母材に比べて10%以上の限界張出し高さの向上が得られれば、良好な特性を示すものとして判定した。
このような基準の下で評価した結果を、表1中に示す。表1から分かるように、残留応力板厚比が所定の範囲にあるものは、疲労強度の向上がみられ、残留応力板厚比が0.02より小さい場合には、母材と比較して疲労特性の向上がみられなかった。一方、残留応力板厚比が0.10を超える場合には、鋼板全体に加工歪が生じる結果となって、全体としての延性が低下するため、成形性の向上がみられなかった。なお、疲労強度が低下しているものもみられたが、表面粗さの増加によって表面の大きな凹凸が疲労き裂の発生起点となったためと考えられる。
一方、固体粒子の投射によってディンプル状の表面形態を付与しているものの中で、表面の平均粗さRaを所定の範囲で調整したものは、成形性の向上効果が得られている。ただし、平均粗さRaが1.5μmを超えると、金型と鋼板との間に保持された油が、接触界面において潤滑効果を発揮しなくなるため、逆に限界張出高さが低下した。
(表1)
Figure 0004507640
<実施例2>
前記実施例1と同様に、引張強度600MPaの高強度鋼板に対して、ガスアトマイズ法により製造した平均粒子径55、85、120、150、250、400μmの球形粒子を第1の工程及び第2の工程により投射した場合について述べる。
固体粒子の投射方法は、実施例1と同様であり、第1の工程と第2の工程とで異なる平均粒子径の固体粒子を用いて、平均粗さRaを調整した結果を表2に示す。
以上の供試材について、平板の繰返し曲げ疲労試験及び球頭張出試験を行い、前記と同様の評価を実施した。
表2から分かるように、第1工程で固体粒子を投射する場合に比較的平均粒子径が大きなものを用いることで、比較的内部の圧縮残留応力を大きくすることができると共に、第2工程で平均粒子径が小さな固体粒子を投射することで表面粗さを整えることが可能となり、疲労強度及び成形性の向上がみられる。
(表2)
Figure 0004507640
本発明の実施の形態である高強度鋼板の製造設備の例を示した図である。 固体粒子を投射するための遠心ロータ式投射装置の例を示した図である。 本発明の参考例における、板厚断面の残留応力分布の例を示した図である。
符号の説明
1…鋼板、2…投射室、3a〜3d…遠心式投射装置、4a〜4d…粒子供給量調整装置、5…ストレージタンク、6…分級機、7…エアパージノズル、43…粒子供給管、44…投射機モータ、45…インペラー、46…投射機ベーン

Claims (1)

  1. 平均粒子径100〜300μmの固体粒子を鋼板表面に投射することによって、圧縮残留応力の絶対値が100MPa以上となる領域を板厚の2〜10%の範囲で鋼板の表層部に付与する第1工程と、平均粒子径30〜100μmのほぼ球形の固体粒子を鋼板表面に投射することによって、鋼板表面の平均粗さRaを0.3〜1.5μmに調整する第2工程とを有することを特徴とする高強度薄鋼板の製造方法。
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