JP4506920B2 - ゴルフボール - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は耐久性に優れ、反発性を比較的低く抑えたゴルフボールに関するものである。
【０００２】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
ゴルフボールは用途によって、ゴルフコースで使用されるコースボールと、練習場で使用される練習ボールに大別することができる。コースボールに対しては、耐久性よりも、通常、飛距離と打球感が重視され、一方、練習ボールに対しては、練習場が一般に街中のあまり広くない場所に設営される関係上、安全の面から飛距離を抑えた耐久性の高いボールが重視される。
【０００３】
飛距離を抑えた、低反発性練習ボールについては、基材ゴムとしてのポリブタジエンゴムに、ブチルゴム、塩素化ブチルゴムのような低反発性ゴムを配合した組成物よりなる、ワンピース構造のものが提案されている。しかしこのようなボールは、低反発化のために低反発性ゴムの配合量を多くすると、製造時の練り工程においてロールへの付着が生じたり、押出し機内のスクリューへの付着、裁断の難しさ、加硫時における金型に対する離型悪化等、作業性に問題が生じる。
【０００４】
本発明は、このような問題点に鑑みなされたもので、耐久性に優れ、練習場のような比較的狭い場所での使用に好適な、しかも製造コストの面でも有利なゴルフボールを提供することを目的とする。
【０００５】
【問題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明は、ゴルフボールの少なくとも一部を構成する球状のゴム質部分の含水量を、予め吸湿処理を施した粉末ゴムを添加することにより、少なくとも６００PPMとして、反発性を抑制したことを特徴とするゴルフボールである。
【０００６】
含水したゴム質部分の含水量は、少なくとも６００PPM有することが好ましい。含水量の上限は、７０００PPM程度が適当である.含水量が６００PPMに満たないときは、本発明の目的とする低反発性が得られないことがあり、一方７０００PPMを超えると,ボールの耐久性の面で好ましくない。
【０００７】
球状ゴム質部分の含水量を高めるに当たっては、吸湿した粉末ゴムを添加することによって行うことができ、その場合、予め吸湿処理を施した粉末ゴムを使用することが出来る。
【０００８】
粉末ゴムの添加量については、ゴム質部分におけるベースゴムに対し０．１〜５０質量 %の範囲が好適である。添加量が０．１質量 %に満たないときは、粉末ゴムの添加を通じて含水量を高める場合、必要とする含水量を得難く、また５０質量 %を超えると、ボールの耐久性の面から好ましくない。なお、添加量が３０質量 %を超過すると、それにつれ製造時におけるゴム練り作業が漸次悪化する傾向がある。
【０００９】
本発明において球状をなすゴム質部分は、ボール全体が実質上単一ゴムによって形成されたワンピースボールであってもよいが、周囲を１層、または複数層の、例えば、樹脂カバーで被覆した、複数ピース構造における中心部分のコアであることがこのましい。
【００１０】
粉末ゴムの平均粒径は、１mm以下が好ましく、０．８５mm以下が一層好ましい。粒径が１mmを越えると、練りゴムをスラグ化し、金型を用いて（２分割金型）行う加硫成形時において、スラグ軟化後余分のゴムが型外（キャビティ外）へ排出されるとき、カバーの粒子がゴムと共にスム−ズに流れ出難くなり好ましくない。ここで粒径１mm以下とは、便宜上、１mmメッシュの篩を通過する大きさを云う。
【００１１】
粉末ゴムを準備するに当たってゴルフボールを用いるときは、例えば、ツーピースソリッドゴルフボールにおけるゴム質のコアの部分、ワンピースゴルフボールにおけるボール本体を用いることが好ましいことは勿論であるが、コアの周囲に被覆された樹脂カバー及びカバー表面に形成された塗装塗膜もろとも粉砕し、これらゴム以外の成分を含む粉末ゴムを用いることも、目的を損なわない限り可能である。
【００１２】
本発明においてコア上にカバーを被覆した構造を適用する場合、カバー材としては、例えばアイオノマー樹脂、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【００１３】
【実施例】
以下図面を用いて実施例を説明する。
図1はツーピースゴルフボールの断面図である。本発明におけるゴルフボールについて、飛び性能としての初速と飛距離、及び打撃耐久性としての割れ特性を確かめるため、吸湿処理を施した、コアと同一配合内容のゴム粉（コア粉）を種々配合することによって吸湿量を変化させたコアを有する５種類の実施例と、ゴム粉を配合せず、従って吸湿量を高めない通常のコアを使用した比較例との間で比較テストを行い評価した。
【００１４】
実施例につき、より具体的には、ゴルフボール1のコア2を構成するベースゴム（シス-1,4-ポリブタジエン）１００質量 %に対し、含水量３０４２PPMのゴム粉を１０質量 %、含水量４１２９PPMのゴム粉を１０質量 %、含水量６２５５PPMのゴム粉を１０質量 %それぞれ配合したコアを有する実施例１、２、３、及び含水量４１２９PPMのゴム粉を３０質量 %、同じく５０質量 %それぞれ配合した実施例４、５である。
【００１５】
コア2の基本配合は、実施例、比較例共下記の内容のものを共通して使用した。
シス-1,4-ポリブタジエン １００質量 %
酸化亜鉛 ３０質量 %
アクリル酸亜鉛 ２５質量 %
老化防止剤 ０．１質量 %
ジクミルパーオキサイド ０．６質量 %
ゴム粉は、上記配合よりなるコアを粉砕し、１mmメッシュの篩にかけて篩を通過した粉末に対し吸湿処理を施し使用した。
カバー 3の材料には、アイオノマー樹脂としてハイミラン1706、同1605（三井・デュポンポリケミカル社製）を各々５０質量部混合したものを共通して使用した。なお、図面上の符号4はディンプルである。
配合及びコア含水量等の詳細とテスト結果を表１に示す。
【００１６】

【００１７】
表１においてゴム粉の添加量は、上記ポリブタジエンゴムに対する質量 %で表示している。
同表の飛行性欄における初速は、USGA型初速計を用い、ドラム回転速度が１３７６rpmで測定した値を示し、また、同欄のキャリー及びトータルは、＃１ウッドクラブ（ドライバー）をスイングロボットにセットし４５m/sのヘッドスピードで測定した値である。
そして耐久性としての割れの測定も同様に、＃１ウッドクラブをスイングロボットにセットし４５m/sのヘッドスピードで実施例、比較例共それぞれ１０個のボールを用い、割れが発生してボール表面に現れるまで繰り返し打ち続け、最初に割れが現れたボールの打撃回数を割れ開始とし、割れが現れた打撃回数の１０個の平均値を割れ平均として示している。
【００１８】
【発明の効果】
表１のテスト結果によると、比較例１に対しコア2の含水量を高めた実施例は何れも、飛行性が減少し、また含水量が増加するに従って飛行性の減少が大きく現れている。一方、耐久性について実施例は、全体に比較例１対比低下してはいるが、テスト結果の上で、平均割れ回数が最も小さい実施例５でも３８９回と大きい数値であり、実用性に照らし問題ないと云える。
【００１９】
なお、コア2への含水を高めるための手段として、吸湿処理を施したゴム粉の添加を通じておこなったものであるが、ゴム粉の添加量を固定し（１０質量 %）、ゴム粉の含水量を変化させコアの含水量を変えても（実施例１、２、３）、含水量を固定し（４１２９ PPM）、ゴム粉添加量を変化させコアの含水量を変えても（実施例２、４、５）、コアの含水量が増加しさえすれば、それにつれ飛行性、就中キャリーの減少が顕著に現れることが表１を通じ理解できる。
【００２０】
このように、ゴルフボールの少なくとも一部を構成する球状のゴム質部分の含水量を高めることによって、耐久性を維持しながら反発性を抑制しているので、ゴルフ練習場のような比較的狭い場所での繰り返し使用にに対し適していると云える。
【図面の簡単な説明】
【図１】実施例としてのゴルフボールの断面図である。
【符号の説明】
１ ゴルフボール
２ コア
３ カバー
４ ディンプル

Claims (5)

1. ゴルフボールの少なくとも一部を構成する球状のゴム質部分の含水量を、予め吸湿処理を施した粉末ゴムを添加することにより、少なくとも６００PPMとして、反発性を抑制したことを特徴とするゴルフボール。
2. 粉末ゴムの平均粒径が１mm以下である請求項１記載のゴルフボール。
3. 粉末ゴムの含水量が３０４２〜６２５５PPMの範囲である請求項１又は２記載のゴルフボール。
4. ゴム質部分におけるベースゴムに対し０．１〜５０質量 ％の粉末ゴムを添加した請求項１〜３のいずれか１項に記載のゴルフボール。
5. ゴム質部分が樹脂カバーによって被覆されたコア部である請求項１〜４のいずれか１項に記載のゴルフボール。

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