JP4505774B2 - 固体電解コンデンサ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
この出願は、米国法第111条(b)の規定に従い1999年5月24日に提出された米国出願第60/135,846号、1999年7月21日に提出された米国出願第60/144,817号及び1999年10月29日に提出された米国出願第60/162,235号の出願日の利益を米国法第119条(e)(i)により主張する米国法第111条(a)の規定に基づく出願である。
技術分野
本発明は、固体電解質層及び導電体層(金属粉末を含む導電体層、または導電性カーボン層とその上の金属粉末を含む層とからなる導電体層)の少なくとも一つの層にゴム状弾性体を含む固体電解コンデンサ及びその製造方法に関する。さらに詳しく言えば、小型化、高容量化、低インピーダンス化が可能で、外的応力緩和特性、生産性、耐熱性、耐湿性等に優れた固体電解コンデンサ及びその製造方法に関する。
また、本発明は、固体電解コンデンサ用の固体電解質、金属粉末含有導電性ペースト、及び導電性カーボンペーストに関する。
背景技術
固体電解コンデンサは、一般にエッチング処理された比表面積の大きな金属箔からなる陽極基体上に誘電体の酸化皮膜層が形成され、この外側に対向する電極として固体の半導電体層(以下、「固体電解質層」という。)が形成され、そして望ましくは更にその外面に、金属粉末を含む導電体層、または導電性カーボン層とその上の金属粉末を含む層とからなる導電体層が形成され、リード線に接続されてコンデンサの基本素子が作製される。次いで素子全体がエポキシ樹脂などで完全に封止される、コンデンサ部品として幅広く電気製品に使用されている。
近年、電気機器のデジタル化、パーソナルコンピュータの高速化などの要望に応えるべく、これら固体電解コンデンサに対して小型で大容量のコンデンサ、高周波領域において低インピーダンスのコンデンサが要求されてきている。
これらの固体電解コンデンサとしての要求に応えるべく、固体電解質、導電体等に様々な提案がなされている。
固体電解質としては、従来は例えば、二酸化マンガンや二酸化鉛等の無機系半導体材料、または有機系半導体材料としてTCNQ錯塩、もしくは電導度が10−3〜5×103S/cmの範囲にある真性導電性高分子(特開平1−169914号公報,米国特許第4803596号)やπ共役系のポリアニリン(特開昭61−239617号公報)、ポリピロール(特開昭61−240625号公報)、ポリチオフェン誘導体(特開平2−15611号公報,米国特許第4910645号)、ポリイソチアナフテン(特開昭62−118511号公報)等の導電性高分子(または、導電性重合体とも言う)の使用が知られている。
固体電解質として二酸化マンガンを用いたコンデンサは、硝酸マンガンを熱分解して二酸化マンガンを形成する時、いったん形成された陽極箔の誘電体酸化皮膜層が破壊されてしまう欠点があるだけでなく、インピーダンス特性も不十分である。
二酸化鉛を用いる場合は、更に環境上への配慮も必要である。
またTCNQ錯塩を固体電解質として使用するコンデンサは、熱溶融加工性や導電性に優れているが、TCNQ錯塩自体の耐熱性に問題があり、ハンダ接合時における耐熱性(ハンダ耐熱性)の信頼性が悪いと言われている。
これに対し、導電性重合体を固体電解質とするコンデンサは、誘電体皮膜の破壊の恐れがなくまたインピーダンス特性も高い。反面、耐熱性、耐熱衝撃性、耐震性に欠ける難点がある。
導電性重合体を用いた固体電解質の形成方法としては、例えば微細な空隙構造を有する弁作用金属表面の誘電体層上に前記のような導電性重合体(固体電解質)を融解して導電性重合体層を形成する方法、あるいは誘電体層上で前記の導電性重合体を析出させる方法等が知られている。
具体的には、例えばピロールやチオフェン等の複素五員環式化合物の重合体を固体電解質として使用する場合、誘電体皮膜を形成した陽極箔を複素五員環式化合物モノマーの低級アルコール及び/または水系溶液に浸漬した後取り出し、次いで酸化剤と電解質を溶かした水溶液に浸漬してモノマーを化学重合させ、これを反復して必要な膜厚を有する導電性重合体層を形成する方法(特開平5−175082号公報)、3,4−エチレンジオキシチオフェンモノマー及び酸化剤を好ましくは溶液の形態において、前後して別々にまたは一緒に金属箔の酸化皮膜層に塗布して導電性重合体層を形成する方法(特開平2−15611号公報(米国特許第4910645号)及び特開平10−32145号公報(欧州特許出願公開第820076号))等が知られている。
これらの従来技術においては、例えばチオフェン等の複素五員環式化合物を化学重合する際の酸化剤として塩化鉄(III)、Fe(ClO4)3や有機酸鉄(III)、無機酸鉄(III)、アルキル過硫酸塩、過硫酸アンモニウム(以下、APSと略することがある。)、過酸化水素、K2Cr2O7等(特開平2−15611号公報,米国特許第4910645号)や、第二銅化合物、銀化合物等(特開平10−32145号公報,欧州特許出願公開第820076号)が知られている。
最近では粉末ポリアニリンを導電性原料として、これにマトリックス原料としてゴム及び/または熱可塑性樹脂を用い、この中にポリアニリン粉末を分散、複合化することで機械的な強度、柔軟性のあるポリアニリン複合物形成することを特徴とするポリアニリン複合物の製造方法(特開昭64−69662号公報)が開示されている。
また、コンデンサ電極の金属酸化物の上に、1〜25重量%の高分子バインダーを含んだポリアニリン溶液から複合膜を形成させ、さらにその上にポリアニリンに陰イオンを添加した導電性重合体層を作成することを特徴とするコンデンサの製造方法(特開平5−3138号公報)が開示されている。
上記の方法では、絶縁体である酸化皮膜の上に、導電性重合体層を形成するためには予め化学重合で薄く導電層を形成する必要があった。さらに、個々のコンデンサに適用するには以下の問題があった。
第一に電解重合の場合、柔軟性に乏しい重合体においては、粘性を高めることが容量出現の低下につながることである。これは、表面をエッチングして得られた、表面に誘電体が形成されたアルミニウム箔へ酸化剤溶液を含浸し、乾燥することで多孔質体の表面に粘性の高い酸化剤被膜を形成するため、多孔質体の表面に存在する微細孔入り口が塞がれてしまう。さらにこの表面上で単量体との接触からポリマーが形成し、細孔内部へのポリマーの形成がされず、容量出現率が低下するためである。
第二に化学重合の場合、一回に重合する重合体の付着量が少ないため、一定の回数含浸する必要があり、生産性において、有利な方法が求められている。
第三に誘電体皮膜と固体電解質は密着性が良いことが必要であり、悪い場合には、生産における製品の劣化や均一性に問題が生じ、製造歩留りが低下したり、使用における耐久性に問題が生じてくる。
上記の方法はこれらの欠点を改善するために、前記ポリピロール等の導電性重合体を電解重合法または化学的重合法によって固体電解コンデンサの固体電解質に使用しているが、得られたコンデンサは導電性重合体皮膜の均一性や電解コンデンサとした時のハンダ耐熱性、インピーダンス特性等は充分とは言えない。
一方、陰極リード端子と固体電解質層を接合するために用いられる導電体層は通常導電性充填材と合成樹脂をバインダーとする導電性ペーストが用いられている。導電性充填材としては金、銀、銅等の金属粉末やカーボン粉末が一般的であり、コスト、性能の面から銀粉が広く用いられている。バインダーの合成樹脂はエポキシ樹脂、フェノール樹脂等が通常用いられているが、その他ポリアミド、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂(特開平5−152171号公報)やアクリル樹脂(特開平7−233298号公報)なども知られている。
また、導電性ペーストはシリコーンチップとリードフレームの接着剤、すなわちダイボンディング材料としても一般に使用されている。ダイボンディング材用の導電性ペーストとして、含フッ素ポリマーをバインダー樹脂とするもの(特開平2−5304号公報)が提案されている。ダイボンディング用の導電性ペーストは、導電性が高いこと、耐熱性が高いこと及びダイボンディング時に生じる収縮応力が小さくかつダイボンディング後の吸水率が小さいことが要求される。また加熱接合時においては、導電性ペーストはシリコンチップとリードフレーム間に生じる応力を低減する性能を有することが必要である。
しかし、バインダーに一般的な合成樹脂を使っている銀ペーストは、弾性率が高く、リフロー等で高い応力が発生しやすく、漏れ電流の増加や、ペースト界面での剥がれによるインピーダンスの熱劣化の原因となる。そして、この種のペーストは吸水率が高いため、高温高湿下での性能劣化を生じやすい。
バインダーとしてフッ素系樹脂を使用した銀ペーストもあるが、前記と同様弾性率が高く、リフロー等で高い応力が発生し不良の原因となる。
また、導電性材料として汎用されている銀はコスト、性能の面において優れているが、マイグレーションを起こすため、固体電解コンデンサの導電性ペーストによっては初めに導電性カーボンペーストを塗布しておいてからさらに導電性銀ペーストを使用することが多い。
導電性カーボンペーストの導電性材料、バインダー、溶媒には多くの提案がある。例えば導電性材料として天然黒鉛(10〜20μmの鱗片状黒鉛)とカーボンブラックの併用(特開平9−31402号公報)、突起付きカーボン粒(特開平5−7078号公報)、導電性材料とバインダーの組み合わせには20μm以下のカーボンブラックと合成樹脂(特開平4−181607号公報)、フレーク状黒鉛粉及び微小黒鉛粉(アスペクト比10以上、平均粒子径10μm以下)とエポキシ樹脂(特開平7−262822号公報)、黒鉛と含フッ系ポリマー、例えばPTFE微粒子(特開昭61−69853号公報)、導電性材料と溶媒の組み合わせには、カーボン粉末とグリシジルエーテル(特開平4−177802号公報)、その他バインダーとしての合成樹脂にはポリエチレン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などが数多く提案されている。
しかし、天然黒鉛を使用した導電性カーボンペーストは、天然黒鉛が鱗片状であり、充填性が悪く、不純物が多いために導電性が低い欠点があるほか、塗布後の表面の凹凸が少ないため界面での剥離が起きやすく、またインピーダンスの熱劣化を起こしやすい欠点を有していた。
カーボンブラックを用いた導電性カーボンペーストは粉末粒子が極めて小さいため充填性を高くすることができず、天然黒鉛と同じく導電性を高くすることが困難である。これら天然黒鉛やカーボンブラック系の導電性カーボンペーストでは、ペースト作製時に分散処理が必要となる問題もあった。
またバインダとしてのエポキシ樹脂の使用はコストが低く、取扱が容易という有利性があるが、剛性が高くチップの大型化にともないリフローなどの際の加熱時においてチップとリードフレーム間に生じる応力の低減に対する緩和能力が小さいこと、吸水性が高く耐湿劣化が起きやすいなどの問題を有していた。
発明の目的
本発明の目的は、小型、軽量、高容量、高周波特性、tanδ、漏洩電流、耐熱性(リフロー性)、耐熱衝撃性、耐久性等に優れた固体電解コンデンサを提供することにある。特に、本発明は、低インピーダンス特性に優れ、火花電圧試験に耐久性があり、また外的応力に緩和性のある耐熱性固体電解コンデンサを提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、リフロー時の熱応力が小さく、ペースト層界面での剥離等によるインピーダンスの熱劣化が少なく、かつ耐湿性にも優れた固体電解コンデンサ用導電性ペースト及びそれを用いた固体電解コンデンサを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、ダイボンディングあるいは固体電解コンデンサに使用可能な導電性カーボンペーストであって、導電性材料の充填密度を高く、導電性を高くした導電性ペースト、また加熱などの際の材料間の熱膨張係数の差による応力を低減することが可能な、また、吸水性を低減して製品の耐湿性を向上した導電性カーボンペースト並びに該導電性カーボンペーストを使用した固体電解コンデンサを提供することにある。
発明の概要
本発明は、以下の、固体電解質層、金属粉末を含む導電体層、及び所望により前記固体電解質層と金属粉末を含む導電体層との間に形成する導電性カーボン層の少なくとも一つの層にゴム状弾性体を含むことを特徴とする固体電解コンデンサ及びその製造方法、並びに固体電解コンデンサに使用する固体電解質、金属粉末含有導電性ペースト、導電性カーボンペーストに関する。
1)弁作用金属上に形成された誘電体皮膜上に、導電性重合体からなる固体電解質層及び導電体層を形成してなる固体電解コンデンサにおいて、前記固体電解質層及び導電体層の少なくとも一つの層にゴム状弾性体を含むことを特徴とする固体電解コンデンサ。
2)導電体層が、金属粉末を含む導電体層、または導電性カーボン層及びその層上に設けた金属粉末を含む導電体層からなる前記1に記載の固体電解コンデンサ。
3)固体電解質層にゴム状弾性体を含む前記1または2に記載の固体電解コンデンサ。
4)導電性カーボン層にゴム状弾性体を含む前記2に記載の固体電解コンデンサ。
5)金属粉末含有導電体層にゴム状弾性体を含む前記2に記載の固体電解コンデンサ。
6)固体電解質層及び導電性カーボン層にゴム状弾性体を含む前記2に記載の固体電解コンデンサ。
7)固体電解質層及び金属粉末含有導電体層にゴム状弾性体を含む前記2に記載の固体電解コンデンサ。
8)導電性カーボン層及び金属粉末含有導電体層にゴム状弾性体を含む前記2に記載の固体電解コンデンサ。
9)固体電解質層、導電性カーボン層及び金属粉末含有導電体層にゴム状弾性体を含む前記2に記載の固体電解コンデンサ。
10)固体電解コンデンサの固体電解質が膜状または層状構造を有している前記1乃至9のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
11)固体電解質層が、0.01〜25質量%の範囲でゴム状弾性体を含む膜状または層状の導電性重合体組成物からなる前記1、3、6、7または9に記載の固体電解コンデンサ。
12)ゴム状弾性体が天然ゴム及び合成ゴムの少なくとも1種である前記11に記載の固体電解コンデンサ。
13)ゴム状弾性体がフッ素系ゴムである前記11または12に記載の固体電解コンデンサ。
14)導電性重合体が、ピロール、チオフェン、アニリンまたはそれらの誘導体の二価基の繰り返し単位を少なくとも1種含む重合体である前記11に記載の固体電解コンデンサ。
15)金属粉末含有導電体層が、金属粉末からなる導電性充填材及びバインダーの主成分としてフッ素系ゴムを含む前記2,5,7,8または9に記載の固体電解コンデンサ。
16)バインダーの80質量%以上がフッ素系ゴムである前記15に記載の固体電解コンデンサ。
17)導電性充填材の80質量%以上が銀粉である前記15に記載の固体電解コンデンサ。
18)導電性充填材の平均粒径が1μm以上10μm以下である前記15または17に記載の固体電解コンデンサ。
19)導電性充填材が50〜95質量%、バインダーが5〜50質量%である前記15、17または18に記載の固体電解コンデンサ。
20)金属粉末含有導電体層が、導電性充填材、バインダー及び有機溶剤を含む導電性ペーストにて形成された層である前記15に記載の固体電解コンデンサ。
21)弁作用金属からなる陽極体の表面に誘電体酸化皮膜、固体電解質層、導電体層を形成したコンデンサ素子を陽極リード端子と陰極リード端子の露出部を残して絶縁性樹脂で封止した固体電解コンデンサにおいて、固体電解質層が導電性重合体層であり、導電体層が前記15または20に記載された金属粉末含有導電体層であることを特徴とする固体電解コンデンサ。
22)導電体層が、導電性重合体層上の導電性カーボン層及びその層上に積層された前記15乃至20のいずれかに記載の金属粉末含有導電体層からなる層である前記21に記載の固体電解コンデンサ。
23)導電性重合体層が、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である前記21または22に記載の固体電解コンデンサ。
24)導電性カーボン層が、導電性材料、バインダー及び溶媒を主たる構成成分とする導電性カーボンペーストを用いて形成された層であり、前記導電性材料の80質量%以上が人造黒鉛であり、前記人造黒鉛は固定炭素分97質量%以上、平均粒子径1〜13μm、アスペクト比10以下、粒子径32μm以上の粒子が12質量%以下である前記2、4、6、8、9または22に記載の固体電解コンデンサ。
25)バインダーとして、溶剤に膨潤または懸濁可能なゴム弾性を有する材料を用いた前記24に記載の固体電解コンデンサ。
26)溶剤に膨潤または懸濁可能なゴム弾性を有する材料が、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン/ブタジエンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン/プロピレン共重合体、アクリルゴム、多硫化系ゴム、フッ素系ポリマー、シリコーンゴム、熱可塑性エラストマーからなる群より選ばれた少なくとも1種の材料である前記25に記載の固体電解コンデンサ。
27)導電性カーボンペースト中の固形分のうち、導電性材料が30〜99質量%、バインダーが1〜70質量%である前記24に記載の固体電解コンデンサ。
28)弁作用金属上に形成された誘電体皮膜上に、固体電解質層及び導電体層を形成してなる固体電解コンデンサの製造方法において、表面に誘電体皮膜の形成された弁作用金属を、導電性重合体のモノマー溶液及び酸化剤溶液の少なくとも一方にゴム状弾性体を含有する前記導電性重合体のモノマー溶液及び酸化剤溶液を用いて交互に1回または複数回被覆を繰り返して誘電体皮膜上に導電性重合体組成物の膜または層を形成することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
29)導電性重合体組成物中に、ゴム状弾性体が0.01〜25質量%含まれている前記28に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
30)ゴム状弾性体がフッ素系ゴムである前記28または29に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
31)弁作用金属上に形成された誘電体皮膜上に、導電性重合体からなる固体電解質層及び導電体層を形成してなる固体電解コンデンサの製造方法において、固体電解質上に、導電性材料、ゴム弾性を有するバインダー及び溶媒を含む導電性ペーストを用いて導電体層を形成することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
32)導電体層が、金属粉末からなる導電性充填剤、ゴム弾性を有するバインダー及び溶媒を含む導電性ペーストを用いて形成された金属粉末含有導電体層である前記31に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
33)導電体層が、導電性材料、ゴム弾性を有するバインダー及び溶媒を含む導電性カーボンペーストを用いて導電性カーボン層を形成した後、金属粉末を含む導電体層を形成する前記31に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
34)導電体層が、導電性材料、ゴム弾性を有するバインダー及び溶媒を含む導電性カーボンペーストを用いて導電性カーボン層を形成した後、金属粉末からなる導電性充填剤、ゴム弾性を有するバインダー及び溶媒を含む導電性ペーストを用いて金属粉末含有導電体層を形成する前記31に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
35)固体電解質層が、誘電体皮膜上に、導電性重合体のモノマー溶液及び酸化剤溶液の少なくとも一方にゴム状弾性体を含有する前記導電性重合体のモノマー溶液及び酸化剤溶液を用いて交互に1回または複数回繰り返して被覆を行い、導電性重合体組成物の皮膜を形成する前記31乃至34のいずれかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
36)固体電解質が膜状または層状構造を有する前記31乃至35のいずれかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
37)層状構造を有する固体電解質が、膜状または層状構造層の膜または1層当たりの厚さが約0.1〜0.3μmの範囲であることを特徴とする前記36に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
38)0.01〜25質量%の範囲でゴム状弾性体を含む導電性重合体組成物が膜状または層状に構成された固体電解質。
39)ゴム状弾性体が天然ゴム及び合成ゴムの少なくとも1種である前記38に記載の固体電解質。
40)ゴム状弾性体がフッ素系ゴムである前記38または39に記載の固体電解質。
41)導電性重合体が、ピロール、チオフェン、アニリンまたはそれらの誘導体の二価基の繰り返し単位を少なくとも1種含む重合体である前記38に記載の固体電解質。
42)表面に導電性重合体組成物からなる固体電解質の形成を必要とする物体に対して、導電性重合体のモノマー溶液及び酸化剤溶液の少なくとも一方にゴム状弾性体を含有する前記導電性重合体のモノマー溶液及び酸化剤溶液により、交互に1回または複数回被覆を繰り返すことを特徴とする導電性重合体組成物が膜状または層状に形成された固体電解質を有する物体の製造方法。
43)被覆手段が、浸漬、塗布、吹き付けあるいは流延のいずれかの方法である前記42に記載の固体電解質を有する物体の製造方法。
44)ゴム状弾性体を溶解または分散の形で導電性重合体のモノマー及び/または酸化剤を含む溶液に添加する前記42に記載の固体電解質を有する物体の製造方法。
45)金属粉末からなる導電性充填材及びバインダーの主成分としてフッ素系ゴムを含む固体電解コンデンサ用導電性ペースト。
46)バインダーの80質量%以上がフッ素系ゴムである前記45に記載の導電性ペースト。
47)導電性充填材の80質量%以上が銀粉である前記45に記載の導電性ペースト。
48)導電性充填材の平均粒径が1μm以上10μm以下である前記45または47に記載の導電性ペースト。
49)導電性充填材が50〜95質量%、バインダーが5〜50質量%である前記45、47または48に記載の導電性ペースト。
50)有機溶剤を含む前記45乃至49のいずれかに記載の導電性ペースト。
51)導電性カーボン材料、バインダー及び溶媒を主たる構成成分とする固体電解コンデンサ用導電性カーボンペーストにおいて、導電性カーボン材料が、80質量%以上が人造黒鉛であり、前記人造黒鉛は固定炭素分97質量%以上、平均粒子径1〜13μm、アスペクト比が10以下、粒子径32μm以上の粒子が12質量%以下である固体電解コンデンサ用導電性カーボンペースト。
52)バインダーとして、溶剤に膨潤または懸濁可能なゴム弾性を有する材料を用いた前記51に記載の固体電解コンデンサ用導電性カーボンペースト。
53)溶剤に膨潤または懸濁可能なゴム弾性を有する材料が、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン/ブタジエンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン/プロピレン共重合体、アクリルゴム、多硫化系ゴム、フッ素系ポリマー、シリコーンゴム、熱可塑性エラストマーからなる群より選ばれた少なくとも1種の材料である前記52に記載の固体電解コンデンサ用導電性カーボンペースト。
54)導電性カーボンペースト中の固形分のうち、導電性材料が30〜99質量%、バインダーが1〜70質量%である前記51乃至53のいずれかに記載の固体電解コンデンサ用導電性カーボンペースト。
発明の詳細な説明
本発明の固体電解コンデンサは、弁作用金属上に形成された誘電体皮膜上に、固体電解質層と金属粉末を含む導電体層、または所望により前記固体電解質層と金属粉末を含む導電体層の間に導電性カーボン層を形成してなるものであって、固体電解質層、金属粉末を含む導電体層及び導電性カーボン層の少なくとも一つの層にゴム状弾性体を含むものである。
以下、(I)固体電解質層にゴム状弾性体を含む場合、(II)金属粉末含有導電体層にゴム状弾性体を含む場合、(III)導電性カーボン層にゴム状弾性体を含む場合に分けて具体的に説明するが、本発明は固体電解質層、金属粉末を含む導電体層及び導電性カーボン層のいずれか2つの層及び3つの層すべてにゴム状弾性体を含む場合をも含むものである。
(I)固体電解質層にゴム状弾性体を含む場合
固体電解質層にゴム状弾性体を含有させる場合、固体電解質層は、0.01〜25質量%の範囲でゴム状弾性体を含む膜状または層状の導電性重合体組成物から形成することが好ましい。
導電性重合体組成物中に、ゴム状弾性体から選ばれた少なくとも1種を含ませることにより、被覆回数を減少しても誘電体層上に必要な厚さの耐熱性のある導電性重合体組成物層(電荷移動錯体)を形成することができる。ゴム状弾性体の性質を加味することにより形成される固体電解質は応力緩和性を保有することができる。この結果、低インピーダンス特性に優れ、火花電圧試験などに耐久性のある高性能の固体電解質、及び固体電解コンデンサが得られる。
本発明のコンデンサに適する導電性重合体組成物中の導電性重合体は、ポリマー主鎖にπ電子共役構造を有する重合体で重合度2以上1000以下、好ましくは5以上500以下である。具体例としてはポリヘテロ5員環式重合体、ポリアニリン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン及びその置換誘導体が挙げられる。また、前記重合体を生成する単量体を少なくとも2種以上用いて共重合した共重合体であってもよい。
好ましい具体例として用いられるポリヘテロ5員環式重合体は、一般式(1)
(式中、R1及びR2は、各々独立に水素または炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基、もしくは炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリハロメチル基、フェニル基及び置換フェニル基等から選ばれるいずれかの一価基を表わす。また、R1及びR2が互いに任意の位置で結合して、少なくとも1つ以上の5〜7員環の飽和もしくは不飽和の環状構造を形成する二価鎖を少なくとも1つ以上形成してもよい。Xはヘテロ原子を表わしS、O、Se、TeまたはNR3である。R3はH、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基、フェニル基、もしくは炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルコキシ基を表わす。上記のR1、R2及びR3のアルキル基、アルコキシ基の鎖中には、カルボニル結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、イミノ結合を任意に含有してもよい。ただし、δは0〜1の範囲である。)で示される構造単位を含むπ電子共役重合体である。
さらに好ましくは一般式(2)
(式中、R4及びR5は、各々独立に水素または炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基、もしくは炭素数1〜6の炭化水素基が互いに任意の位置で結合して、式中記載の2つの酸素元素を含む少なくとも1つ以上の5乃至7員環の複素環状構造を形成する置換基を表わす。また前記環状構造を形成する範囲には、置換ビニレン基または置換O−フェニレン基等の化学構造が含まれる。δは0〜1の範囲である。)で示される構造単位を含むπ電子共役重合体である。
前記一般式(1)において、置換基R1、R2及びR3が表わす炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、アリル基、イソプロピル基、ブチル基、1−ブテニル基が挙げられる。また、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基が挙げられる。
さらに前記炭化水素基やアルコキシ基以外置換基の例としては、ニトロ基、シアノ基、フェニル基及び置換フェニル(Cl、Br、F等のハロゲン原子置換フェニル)基が挙げられる。前記R1、R2のアルキル基、アルコキシ基の鎖中には、カルボニル結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、イミノ結合を任意に含有してもよく、特に有用な例としてはメトキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基が挙げられる。
また、R1及びR2が、互いに任意の位置で結合して少なくとも1つ以上の5〜7員環の飽和もしくは不飽和の環状構造を形成する二価鎖を少なくとも1つ以上形成する一般式(1)の例としては、3,4−プロピレン構造[一般式(3)]、3,4−ブチレン構造[一般式(4)]、3,4−(2’−ブテニレン)構造[一般式(5)]、3,4−ブタジエニレン構造[一般式(6)]、ナフト[2,3−c]縮合構造[一般式(7)]などが挙げられる。
ここで、Xはヘテロ原子を表わし、例としては、S、O、Se、TeまたはNR3である。XがSである前記3,4−ブタジエニレン構造(一般式(6))は、一般式(1)の繰り返し構造単位では別名イソチアナフテニレン構造と呼ばれる。さらに、ナフト[2,3−c]縮合構造(一般式(7))は、一般式(1)の場合はナフト[2,3−c]チエニレン構造と呼ばれる。式中、δは繰り返し構造単位当りの荷電数を表わし、0〜1の範囲の値である。
一般式(2)中のR4及びR5の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ビニル基、アリル基が挙げられる。さらに、R4及びR5の炭素数1〜6の炭化水素基が互いに任意の位置で結合して、前記一般式(2)中記載の2つの酸素元素を含む、少なくとも1つ以上の5乃至7員環の複素環状構造を形成する置換基としては、1,2−エチレン、1,2−プロピレン、1,2−ジメチル−エチレンが好ましい。
また、R4及びR5は、前記、炭素数1〜6の炭化水素基が互いに任意の位置で結合して、置換ビニレン基または置換O−フェニレン基等の不飽和炭化水素の環状構造を形成する具体例としては、1,2−エチレン[一般式(8)]、1,2−シクロヘキシレン[一般式(9)]、1,2−ジメチル−o−フェニレン[一般式(10)]が挙げられる。
本発明の固体電解コンデンサ及びその製造方法において使用されるモノマー化合物のうち、例えばチオフェン、ピロールや3,4−エチレンジオキシチオフェンのモノマー化合物は公知であり、これらのモノマー化合物を重合し得る酸化剤も多くは公知である。
しかしながら、上記導電性重合体組成物中にゴム状弾性体を使用した固体電解質を具備したコンデンサはこれまで知られていない。
本発明においては固体電解質を構成しているゴム状弾性体は導電性重合体中に溶解しているかまたはマトリックスとしての導電性重合体中に分散していると考えられる。
本発明の固体電解コンデンサの固体電解質を構成している前記π共役系導電性重合体に対するゴム状弾性体の配合量は、0.01〜25質量%、好ましくは0.1〜10質量%である。ゴム状弾性体を含む固体電解質を具備した電解コンデンサは、特に低インピーダンス特性に優れ、火花電圧試験に耐久性があり、また外的応力に緩和性のある耐熱性固体電解コンデンサとなる。
ゴム状弾性体の配合量が0.01質量%に満たない時は、ゴム状弾性体を配合した効果がまったく期待できない。また配合量が25質量%を超える時は固体電解質の導電性が低下する。特にゴム状弾性体が多くなりマトリックスが逆転すると導電性は急激に低下するので配合量は25質量%以下にすることが必要である。したがって固体電解質の組成物全質量に対して0.01〜25質量%の範囲、好ましくは0.1〜10質量%の範囲である時には低インピーダンス特性に優れたコンデンサを提供できる。
通常、固体電解コンデンサの製造方法において、高容量の高周波特性並びにtanδ、漏洩電流、耐熱性(リフロー性)、インピーダンス特性、耐久性等を改善するためには、前記固体電解質の製造(形成)方法が重要である。そのためには固体電解質を構成する導電性重合体のπ電子共役構造、ゴム状弾性体との組み合わせによる導電性重合体組成物の構成、導電性重合体組成物層を微細な表面構造の誘電体層上に密に充填形成して導電パスの均一性を向上させることが重要であり、そのうちでも特に導電性重合体組成物の構成が非常にコンデンサ特性に影響を与える。
本発明の固体電解質の製造方法においては、前記π電子共役構造を有する重合体を形成する際に、モノマー及び/または酸化剤を含む溶液にゴム状弾性体を添加することにより上記溶液の付着量が増加し、必要含浸回数を減少することができる特徴がある。また、ゴム状弾性体を添加することで、導電性重合体組成物に応力緩和性を提供することができるためエージングや封止等による外的圧力に対し、弾力性が上がる。その結果、初期特性の漏洩電流の低下、高温、高湿下に長時間放置した際の容量、損失等の劣化が小さくなる等の特徴があらわれる。
具体的な例としては、モノマー化合物を含む溶液にゴム状弾性体の溶液または分散液を混合し、これを弁作用金属陽極箔の微細孔を有する誘電体皮膜上に被覆し、モノマーを酸化剤の作用によって酸化的重合を起こさせ、生じた該重合体組成物を固体電解質として誘電体表面上に形成させる。そして、前記工程を1つの陽極基板に対して1回以上、好ましくは3〜20回繰り返すことによって緻密な固体電解質層を容易に形成することができる。
例えば、好ましい製造工程の一つとして浸漬法を代表にして説明する。前記重合反応にあっては誘電体皮膜を形成した弁作用金属陽極箔を、酸化剤を含む溶液(溶液1)に浸漬する工程とモノマー化合物及びゴム状弾性体を含む溶液(溶液2)に浸漬する工程を含むものである。浸漬工程の順序としては前記溶液1に浸漬した後で前記溶液2に浸漬する工程で行ってもよく、また逆順に前記弁作用金属陽極箔を前記溶液2に浸漬した後で前記溶液1に浸漬する工程で行ってもよい。
あるいは別の実施形態として、該陽極箔を、酸化剤とゴム状弾性体を含む溶液(溶液3)に浸漬する工程とモノマー化合物を含む溶液(溶液4)に浸漬する工程を含むものであってもよい。この場合には前記溶液3に浸漬した後で前記溶液4に浸漬する工程で行うか、または逆順に該陽極箔を前記溶液4に浸漬した後で前記溶液3に浸漬する工程を含んだ製造方法を採用してもよい。前記溶液1乃至溶液4はそれぞれ懸濁状態のものでもよい。
さらには、前記浸漬工程を塗布法、吹きつけ法あるいは流延法など、陽極箔上において上記の重合反応を進行可能な被覆法に代えることもできる。
溶液1乃至4の溶媒は必要に応じて同じ溶媒でもよく、あるいは異なった溶媒系でもよく、溶媒の種類に応じて溶液1と溶液2の間あるいは溶液3と溶液4の被覆工程の間に乾燥工程を入れてもよい。
前記導電性重合体皮膜(固体電解質)を形成しコンデンサ素子とした後は、これを有機溶媒洗浄または水洗により洗浄する工程を加えてもよい。洗浄用有機溶媒には好ましくは溶液1乃至4で使用した溶媒で行うのが簡便で好ましいが、単にモノマー化合物やドーパント能を有するアニオンを保持する化合物を溶解する溶媒であれば何でもよい。
さらに前記酸化的重合の繰り返し処理により固体電解質層を厚くする時は、ハンダ耐熱性(熱安定性)に優れた固体電解質の生成を容易にする。従来既知のポリピロール等からなる固体電解質を用いたコンデンサでは、高温、高湿度でのコンデンサ特性が大きく変動し信頼性を悪くしていたが、本発明の導電性重合体組成物からなる固体電解質を使用した固体電解コンデンサは熱安定性に優れ、かつドープ状態の安定性がよい。
これは、前記ゴム状弾性体を配合した導電性重合体組成物は誘電体表面のみならずその細孔内部まで充填性よく段階的に析出させることができること及び該重合体組成物の薄い膜質を作ることができるためであり、特にそれが何層にも重なった状態を形成した時に上記特性が強く発揮され、該重合体が誘電体皮膜に対するダメージを与えず、熱安定性に優れ、ゴム弾性体の柔軟性により外的ダメージから誘電体皮膜及び導電性重合体皮膜を保護するため、この固体電解質を使用したコンデンサはその性能を十分に享受できる。
本発明において使用できるゴム状弾性体としては、弾性ゴム又はゴム類似物質の特異な弾性を有するもので、外力によってひずみを受けるとそのひずみをもとに戻そうとする性質を有するものである。具体例として一般的なゴム(天然ゴム、ウレタンゴム、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、シリコンゴム、フッ素系ゴムなどの合成ゴム)や熱可塑性エラストマー(スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、1,2−ポリブタジエン系、塩ビ系など)を用いることができる。
フッ素系ゴムは分子中にフッ素原子を含む合成ゴムの総称で、特殊ゴムとして用いられ、汎用ゴムとは区別されている。含フッ素アクリレートの重合体、フッ化ビニリデン系共重合体、四フッ化エチレン−パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体、含フッ素ホスファゼン系、含フッ素シリコーン系などがある。種類により性質が異なるが市販のゴムの中では抜群の耐熱性を有する。また、耐薬品性、耐候性などにも優れている。シリコンゴムは主鎖がシロキサン結合で構成され側鎖にメチル基、フェニル基等の置換基を持った線状重合体が相互に橋かけしたゴム状弾性体であり、耐熱性、電気絶縁性が良好である。導電性重合体の重合反応に対しては、好ましくは有機溶媒中に溶解できるもの、例えばポリエステルウレタン、ポリエーテルウレタン、フッ化ビニリデン−ヘキサプロピレン共重合体などが挙げられることができる。この時に使用する有機溶剤としては、エチルメチルケトン、アセトンなどのケトン系、酢酸イソプロピルなどの酢酸エステル系、ジオキサン、THFなどのエーテル系、メタノールなどのアルコール系が望ましい。また有機溶媒に不溶性のゴムである時は、モノマーまたは酸化剤を含む溶液の溶媒と同じ溶媒またはこれに混合可能な溶媒の分散液を使用すればよい。
固体電解質が耐熱性を特に必要とする時は、耐熱性の高いフッ素系ゴム、シリコンゴムなどを使用する。
本発明で使用される酸化剤としては、ピロールやチオフェン類の酸化重合に対して適する公知の酸化剤であればよく、例えば特開平2−15611号公報(米国特許第4910645号)記載の塩化鉄(III)、Fe(ClO4)3、有機酸鉄(III)、無機酸鉄(III)、アルキル過硫酸塩、過硫酸塩、過酸化水素、K2Cr2O7等が広範に使用できる。
前記有機酸鉄(III)の有機酸の例としては、メタンスルホン酸やドデシルベンゼンスルホン酸のような炭素数1〜20のアルカンスルホン酸や脂肪族カルボン酸が挙げられる。しかしながら、前記酸化剤の使用範囲はすべての組み合わせが可能ということではなく、モノマー化合物の化学構造において酸化剤及び反応条件等に制限を受けることがある。
例えば、チオフェン類の酸化(重合)は、Handbook of Conducting Polymers誌(Marcel Dekker,Inc.社発行、1987年、99頁、図5参照)の説明によると、置換基の種類により酸化電位(重合の起こり易さを示す1つの尺度)が大きくかわり、重合反応を左右する(酸化電位は約1.8〜約2.7Vの範囲に広範に広がっている)。従って具体的には使用するモノマー化合物と酸化剤には特定の組み合わせが必要であることが知られている。本発明ではこの制限の範囲内においてコンデンサ特性を改良できる製法上の組み合わせを見出し、前記課題の解決を行った。
本発明の導電性重合体では、必要に応じて共存させるドーパント能を有するアニオンとして前記酸化剤から産生される酸化剤アニオン(酸化剤の還元体)を対イオンに持つ電解質化合物または他のアニオン系電解質を使用することができる。具体的には、塩素イオン、ClO4イオン、炭素数1〜12の脂肪族有機カルボン酸アニオン、硫酸アニオン、リン酸アニオン、炭素数1〜12の脂肪族有機リン酸アニオン、ほう酸アニオンが挙げられる。またNO+,NO2 +塩(例えば、NOBF4、NOPF6、NOSbF6、NOAsF6、NOCH3SO3、NO2BF4、NO2PF6、NO2CH3SO3等)の電子受容体ドーパントを使用してもよい。
また、従来既知の分子アニオン(例えば、ClO4 −、BF4 −等)とはドーパント能力(電荷移動錯体の安定性、導電性等)及び化学的性質が異なり、また従来既知の前記分子アニオン(ClO4 −、BF4 −等)単独で使用する系に比べて優位な効果を示す。すなわち、複数のコンデンサ素子を製作した時のコンデンサ性能で比較した場合、特に優れた効果を引き出すことができる化合物として、本発明では、芳香族系化合物(スルホキノン、アントラセンモノスルホン酸、置換ナフタレンモノスルホン酸、置換ベンゼンスルホン酸)あるいは複素環式スルホン酸を用いてもよい。
本発明において使用するスルホキノンとは、分子内に一つ以上のスルホン酸基とキノン構造を有する化合物の総称であり、ドーパントとしてそのスルホン酸アニオンの形態で有効に働く化学構造であればよい。例えば、スルホキノンの基本骨格を例示すると、p−ベンゾキノン、o−ベンゾキノン、1,2−ナフトキノン、1,4−ナフトキノン、2,6−ナフトキノン、9,10−アントラキノン(以下、単にアントラキノンと略す。)、1,4−アントラキノン、1,2−アントラキノン、1,4−クリセンキノン、5,6−クリセンキノン、6,12−クリセンキノン、アセナフトキノン、アセナフテンキノン、カンホルキノン、2,3−ボルナンジオン、9,10−フエナントレンキノン、2,7−ピレンキノン等を挙げることができる。
さらにまた、前記スルホキノンにおけるスルホン酸基は、前記キノン化合物の水素が一つ以上、スルホン酸基で置換された芳香族スルホン酸構造、もしくはC1〜12の飽和または不飽和炭化水素基の2価基を介するスルホアルキレン基で置換された脂肪族スルホン酸構造を含むものである。さらに、前記スルホキノンの水素が一つ以上、C1〜12、好ましくはC1〜6の飽和または不飽和アルキル基、あるいは同アルコキシ基、またはF、Cl、Brから選ばれる置換基で置換された化学構造であってもよい。
中でも、本発明において使用するスルホキノンとしてはアントラキノン、1,4−ナフトキノン、2,6−ナフトキノンの骨格を有するスルホキノンが好ましく使用される。例えばアントラキノン類の場合、アントラキノン−1−スルホン酸、アントラキノン−2−スルホン酸、アントラキノン−1,5−ジスルホン酸、アントラキノン−1,4−ジスルホン酸、アントラキノン−1,3−ジスルホン酸、アントラキノン−1,6−ジスルホン酸、アントラキノン−1,7−ジスルホン酸、アントラキノン−1,8−ジスルホン酸、アントラキノン−2,6−ジスルホン酸、アントラキノン−2,3−ジスルホン酸、アントラキノン−2,7−ジスルホン酸、アントラキノン−1,4,5−トリスルホン酸、アントラキノン−2,3,6,7−テトラスルホン酸、これらのアルカリ金属塩、及びこれらのアンモニウム塩等が使用できる。
1,4−ナフトキノン類の場合は、1,4−ナフトキノン−5−スルホン酸、1,4−ナフトキノン−6−スルホン酸、1,4−ナフトキノン−5,7−ジスルホン酸、1,4−ナフトキノン−5,8−ジスルホン酸、これらのアルカリ金属塩、及びこれらのアンモニウム塩等が使用できる。
2,6−ナフトキノン類の場合は、2,6−ナフトキノン−1−スルホン酸、2,6−ナフトキノン−3−スルホン酸、2,6−ナフトキノン−4−スルホン酸、2,6−ナフトキノン−3,7−ジスルホン酸、2,6−ナフトキノン−4,8−ジスルホン酸、これらのアルカリ金属塩、及びこれらのアンモニウム塩等が使用できる。
また、前記スルホキノンとしては、工業的な染料として知られている、例えばアントラキノンアイリスR、アントラキノンバイオレットRN−3RNがあり、これらも同様に有用なスルホキノン系ドーパントとして前記塩の形態で使用できる。
本発明において使用するスルホキノンは、化合物によってはモノマー化合物の重合反応に関与して、1つの酸化的脱水素化剤として働き、その結果スルホキノンは還元されてキノン構造体のプロトン付加体、すなわちハイドロキノン構造、またはキンヒドロンのまま、ドーパントとして固体電解質内に含有されてもよい。
本発明において使用するアントラセンモノスルホン酸は、一つのスルホン酸基がアントラセン骨格に置換したアントラセンモノスルホン酸化合物の総称であり、好ましい化合物としては、無置換のアントラセンスルホン酸やアントラセンスルホン酸のアントラセン環の水素がC1〜12、好ましくは1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基またはアルコキシ基で一つ以上置換された置換化合物が挙げられる。
前記無置換のアントラセンモノスルホン酸アニオンを供出する化合物の具体例としてはアントラセン−1−スルホン酸、アントラセン−2−スルホン酸、アントラセン−9−スルホン酸及びそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。また、上記アントラセン環の水素がさらに置換されたアントラセンモノスルホン酸置換化合物の置換基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル等のアルキル基や、ビニル、アリル、3−ブテニル、5−ヘキセニル等の不飽和基、及びメトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ等が挙げられる。
本発明において使用する置換ナフタレンモノスルホン酸は、一つのスルホン酸基がナフタレン骨格に置換したナフタレンモノスルホン酸化合物及びアルコキシ置換ナフタレンモノスルホン酸化合物の総称であり、好ましい化合物としては、ナフタレンモノスルホン酸のナフタレン環の水素が炭素数1乃至12、好ましくは1乃至6の直鎖状または分岐状の飽和もしくは不飽和のアルコキシ基で少なくとも一つ以上置換されてもよい化合物である。
前記置換ナフタレンモノスルホン酸アニオンを供出する化合物の具体例としては、ナフタレン−1−スルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸及びそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機第4級アンモニウム塩等の化合物骨格を有し、これにナフタレン環の水素がアルコキシ基で1つ以上置換されていてもよい化学構造を有するものが挙げられる。
本発明において使用する置換ベンゼンスルホン酸は、1つ以上のスルホン酸基がベンゼン骨格に置換したベンゼンスルホン酸及びアルキル置換ベンゼンスルホン酸の総称であり、好ましい化合物としては、無置換のベンゼンスルホン酸やベンゼンスルホン酸のベンゼン環の水素がC1〜20、好ましくは1〜12の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基で1つ以上置換された化合物が挙げられる。
本発明において使用できる複素環式スルホン酸アニオンとしては、一つ以上のスルホン酸基が複素環に直接またはアルキレン基を介して間接的に置換した化学構造を有する複素環式スルホン酸化合物のアニオンの総称であり、好ましい複素環化合物の骨格としては、モルホリン、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾール、フラン、1,4−ジオキサン、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾリルチオ、ベンズイソオキサゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾフラン骨格が挙げられる。
前記複素環式スルホン酸アニオンを供出する化合物の具体例としては、2−イミダゾールスルホン酸、4−モルホリンプロパンスルホン酸、フラン−3−スルホン酸、2−ベンズイミダゾールスルホン酸、2−ベンズイミダゾールプロパンスルホン酸、4−メチル−1−ピペラジンメタンスルホン酸、2,3−ベンゾフラン−3−スルホン酸及びそれら化合物のナトリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩または第4級アンモニウム塩が挙げられる。
これらの中でも好ましいのは、芳香族系スルホン酸化合物(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウム、アントラキノン−2−スルホン酸ナトリウム、アントラキノン−2,6−ジスルホン酸アンモニウム、1,4−ナフトキノン−2−スルホン酸ナトリウム、3−メチル−2−アントラキノリルメタンスルホン酸ナトリウム、アントラセン−1−スルホン酸ナトリウム、アントラセン−2−スルホン酸ナトリウム、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホン酸テトラブチルアンモニウム塩、9,10−ジヘキシルアントラセン−2−スルホン酸テトラブチルアンモニウム塩、2−プロピルオキシナフタレン−6−スルホン酸ナトリウム、2−プロピルオキシナフタレン−6−スルホン酸テトラブチルアンモニウム塩、2−メトキシナフタレン−6−スルホン酸ナトリウム、2,3−ジメトキシナフタレン−6−スルホン酸テトラブチルアンモニウム塩等)、複素環式スルホン酸(4−モルホリンプロパンスルホン酸ナトリウム、2−ベンズイミダゾールプロパンスルホン酸ナトリウム、4−メチル−1−ピペラジンスタンスルホン酸ナトリウム、2,3−ベンゾフラン−3−スルホン酸ナトリウム等)である。
本発明において固体電解質を形成するための、チオフェン及びピロール類モノマー化合物の化学重合においては、酸化剤として過硫酸塩の使用が特に好適である。チオフェン類の化学重合に特に好適に使用できる過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムが挙げられる。これに対し鉄(III)塩系酸化剤の使用は、導電性重合体組成物中に鉄(元素)の残存が避けられず、コンデンサ特性に対して好ましくない。
しかし、上記のモノマー化合物に対して好適な過硫酸塩は、チオフェンモノマーには好適ではないというように、モノマーの種類によっては酸化剤として使用できない制限が存在する。
次に導電性重合体組成物層形成(重合反応)の好ましい条件について説明する。
重合反応に用いられるモノマー化合物、酸化剤、ドーパント、ゴム状弾性体のそれぞれの使用濃度は、モノマー、酸化剤、ドーパント及びゴム状弾性体の種類(置換基の種類も含む)や溶媒等との組合せによって異なるが、一般にはモノマー濃度として1×10−4〜10モル/リットルの範囲であり、1×10−3〜5モル/リットルの範囲がさらに好ましい。
また、反応温度は、反応組成物の種類、反応方法等によって変わるので特に限定できるものでないが、一般的には−70℃〜250℃の温度範囲、望ましくは−20℃〜150℃であり、さらに0℃〜100℃の温度範囲で行うことが好ましい。
前記重合反応において用いられる溶液または重合後の洗浄用溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル等のエステル類;クロロホルム、塩化メチレン等の非芳香族系塩素化炭化水素溶媒;ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;蟻酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸;該有機酸の酸無水物(例、無水酢酸等)及び水あるいはこれらの混合溶媒を用いることができる。好ましくは、水、アルコール類、ケトン類、酢酸エステル類及び/またはそれらの混合系が望ましい。
このようにして製造される固体電解質の電導度は、0.1〜200S/cmの範囲であるが、望ましい条件では1〜100S/cm、さらに好ましくは10〜100S/cmの範囲である。
図1を参照して本発明の固体電解コンデンサの構成の概要を示す。
接続用端子7に結合した細孔2が全面に設けられた一方の電極(陽極)1には、アルミニウム、チタン、タンタル、ニオブあるいはこれらを基質とする合金系等の弁作用を有する金属箔、棒あるいはこれらを主成分とする焼結体等の公知な材料が使用される。これらの金属電極表面は、誘電体層の形成と比表面積を大きくする目的で公知の方法によってエッチング処理や化成処理され、金属箔上に該金属系酸化皮膜層3を形成したものが用いられる。
固体電解質(導電性重合体組成物)4の形成は、弁作用金属電極箔の誘電体層上でモノマー化合物を重合する方法によることが好ましく、とりわけ該固体電解質においてはゴム状弾性体を含むことにより耐熱性、耐衝撃性の優れた導電性重合体組成物を上記誘電体皮膜細孔あるいは空隙構造を有する誘電体層上に化学的に析出する方法が好ましい。
このように形成した導電性重合体組成物層上にさらに電気的接触をよくするために他の導電体層5が設けられる。導電体層は、例えば導電ペースト層またはメッキ、金属蒸着、導電樹脂フィルム等により形成することができる。
このように、本発明の製造方法により製造される固体電解コンデンサは、更に上記導電体層の上を樹脂モールドするとか、樹脂ケース、金属製の外装ケース、樹脂ディッピング等による外装6を設け、これに接続用端子7を設けることにより各種の用途に適した固体電解コンデンサ製品とすることができる。
(II)金属粉末含有導電体層にゴム状弾性体を含む場合
金属粉末含有導電体層にゴム状弾性体を含有させる場合には、金属粉末からなる導電性充填材及びゴム状弾性体をバインダーの主成分とする金属粉末含有導電性ペーストを使用する。
ゴム状弾性体としては、一般的なゴム(天然ゴム、ウレタンゴム、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、シリコン系ゴム、フッ素系ゴムなどの合成ゴム)や熱可塑性エラストマー(スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、1,2−ポリブタジエン系、塩ビ系など)を用いることができる。
これらの中でも耐熱性に優れたフッ素系ゴム、シリコン系ゴムが好ましく、特にフッ素系ゴムが好ましい。
フッ素系ゴムは分子中にフッ素原子を含む合成ゴムの総称で、特殊ゴムとして用いられ、汎用ゴムとは区別されている。含フッ素アクリレートの重合体、フッ化ビニリデン系共重合体、四フッ化エチレン−パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体、含フッ素ホスファゼン系、含フッ素シリコーン系などがある。種類により性質が異なるが市販のゴムの中では抜群の耐熱性を有する。また、耐薬品性、耐候性などにも優れている。
導電性ペーストの溶剤としては、通常の導電性ペーストに使用する溶媒を同じもので良く、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、酢酸ブチルなどの溶媒を単独または混合して使用する。導電性ペーストに配合する溶媒量は、導電性ペーストの使用目的に応じた粘度となるように配合することが必要であるが、通常はペーストの固形分に対して等量ないし十倍の量を使用する。
導電性ペーストに用いられる導電性充填材としては、銀粉の他、金、銅等の金属粉末、カーボン粉末なども用いられるが、銀粉が好ましく、銀粉を充填材全体の80質量%以上含むものが特に好ましい。粉末の粒度は平均粒径で1〜10μmが好ましい。平均粒径が1μm未満では嵩密度が小さく、ペーストの体積が大きくなり、導電体層の形成に不利である。また平均粒径が10μmを超えると粗すぎて、陰極リード端子との接続不良が起こり易い。
以下、好ましいバインダーであるフッ素系ゴムを使用する場合について説明する。
好ましいバインダーはフッ素系ゴムが好ましくはバインダーの80〜100質量%がフッ素系ゴムからなるものである。残りの成分としては従来の樹脂等を混合することができる。フッ素系ゴムはゴム弾性を有するもので歪を受けるとその歪を元に戻そうとする性質があり、歪が戻らないフッ素系樹脂とは区別される。フッ素系ゴムとしては、例えば公知のフッ化ビニリデン系共重合体ゴム、6−フッ化プロピレン系共重合体ゴム、4−フッ化エチレン系共重合体ゴム、含フッ素アクリレートゴム、含フッ素シリコーンゴム等を用いることができる。これらのゴムは未加硫のものでガラス転移点(Tg)が室温より低い点でもフッ素樹脂と区別される。
上記の導電性充填材とバインダーの混合割合は導電性充填材50〜95質量%、バインダー5〜50質量%が好ましい。導電性充填材が50質量%より少ないと導電性が低下し、また95質量%より多いとバインダー(5質量%未満)の結合力が低下し、導電体層の形成が難しくなる。
以上の導電性充填材とバインダーの混合物(固形分)にペーストとしての適度な粘性を付与するために、通常有機溶媒を添加する。有機溶媒としては、好ましくはフッ素系ゴムが溶解するものである。溶媒としては、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸プロピルなどを用いることができる。有機溶媒の量は固形分100質量部に対し、一般的には40〜100質量部が適する。
次に、本発明のゴム弾性体を含有する導電性ペーストを用いた固体電解コンデンサについて説明する。
本発明の固体電解コンデンサの一例を図2に示す。
図2において、1はアルミニウム、タンタル等の弁作用金属箔(陽極)で、その表面に電解陽極酸化等で誘電体酸化皮膜3、細孔2が形成されている。陽極1には陽極リード端子7aが溶接等により接合される。4は酸化皮膜3上に形成されている固体電解質層(陰極)である。固体電解質層は無機半導体化合物も用いることができるが、本発明の導電性ペーストを用いた場合、固体電解質は特に導電性重合体が適する。
導電性重合体については、前記(I)の固体電解質層にゴム状弾性体を含む場合の項で詳しく説明したが、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリンなどを用いることができ、ポリピロールやポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が好ましい。これにドーパントとしてアントラキノンスルホン酸、アルキルアントラキノンスルホン酸、アルコキシアントラキノンスルホン酸、アントラセンスルホン酸、アルキルアントラセンスルホン酸、アルコキシアントラセンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルコキシナフタレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルコキシベンゼンスルホン酸のアニオンを含有させる。前記有機スルホン酸アニオンのスルホン酸置換基は、その骨格化合物に任意な結合可能な位置に結合された化学構造であればよく、またアルキル基またはアルコキシ基を有する前記化合物は、炭素数1〜10を有するアルキル基またはアルコキシ基がその骨格化合物に任意な結合可能な位置に結合された化学構造を有する。
導電性重合体の形成方法は、上記重合体を形成するモノマーの酸化剤(重合開始剤)による化学重合、あるいは電解重合、これらの併用など公知の方法が用いられる。例えば酸化皮膜層をモノマー溶液に浸漬し、次いで酸化剤溶液に浸漬し、加温して化学重合させ、この操作を複数回繰り返す。この繰り返し重合により導電性重合体層は多層積層構造となり、外装樹脂により封止する際の耐熱応力性に優れたものとなる。
また、固体電解質層として、前記したゴム状弾性体を含む導電性重合体組成物からなるものも好ましく用いられる。
導電性ペーストとしてフッ素系ゴムバインダーを使用することによる作用効果は次の通りである。導電性重合体層は多層積層構造をもち耐熱応力性に優れるが、これにエポキシ樹脂等の熱収縮の大きいバインダーを使用した導電性ペーストを塗布すると、導電性重合体の表層へ侵入する。このペーストは加熱時の応力発生が大きく、導電性重合体層の多層形状が影響を受ける。フッ素系ゴムバインダーを用いた場合には、導電性重合体表層に侵入したペーストの熱応力発生は小さく、生成された導電性重合体層形状を保持する。これによりコンデンサの耐熱性がより良好なものとなる。
化学重合の際の酸化剤としては過硫酸アンモニウム、有機スルホン酸鉄(III)、塩化鉄(III)などの無機酸鉄、Fe(ClO4)3、有機酸鉄(III)、過硫酸塩、アルキル過硫酸塩、過酸化水素、K2Cr2O7などが用いられる。
固体電解質層4の表面に導電体層5が形成される。導電体層5は固体電解質層と密着接合し、陰極として作用すると同時に陰極リード端子7bを接合するための接着剤となるものである。導電体層5の厚さは一般的には10〜50μm程度である。
導電体層5は上記した本発明の導電性ペーストのみでも形成することは可能であるが、好ましくは次項で詳しく説明するように導電性重合体層4の上にカーボンペーストにより形成された層を設け、その上に本発明の導電性ペーストにより形成された層を設ける。カーボンペーストは黒鉛粉末にバインダーの樹脂及び溶媒を加えた公知のカーボンペーストが使用できるが、好ましくはバインダーの樹脂としてフッ素系ゴムを用いる。カーボンペースト層の厚さは1〜2μm程度でよい。
導電体層5の外表面に陰極リード端子7bを接合する。そして陰極リード端子7bと陽極リード端子7aの露出部を残して絶縁性樹脂6により封止する。絶縁性樹脂には主としてエポキシ樹脂が用いられる。封止は例えばトランスファモールドにより行うことができる。
(III)導電性カーボン層にゴム状弾性体を含む場合
導電性カーボン層は、導電性材料、バインダー及び溶媒を主成分とする導電性カーボンペーストを用いて形成される。前記導電性材料は80質量%以上が人造黒鉛粉からなることが好ましい。人造黒鉛粉としては、好ましくは固定炭素分97質量%以上、平均粒子径が1〜13μm、アスペクト比が10以下であって、粒子径32μm以上の粒子が12質量%以下のものが用いられる。
鱗片状、あるいは葉片状の天然黒鉛はアスペクト比が常に10以上であるため、本発明で使用する導電性材料とは異なる。人造黒鉛のアスペクト比が高いほど導電性カーボンペーストとしての充填性が低下しペーストの抵抗性を高めるため、人造黒鉛粉のアスペクト比は10以下が必要である。このような人造黒鉛は天然黒鉛やカーボンブラックに比較して純度が高く、充填率を高くすることができ、熱による劣化も小さい特性を有している。
また該黒鉛粉の固定炭素分も同様にペーストの抵抗性に影響があり、人造黒鉛粉の固定炭素分が高いほど抵抗性を低くすることができる。したがって本発明の目的を達成するためには固定炭素分が97質量%以上の人造黒鉛粉を使用することが必要である。ここで、固定炭素分とは炭素含量の目安となる値で、JIS法(JISK2425)、炭素協会法、ASTM法、BS法がある。
該黒鉛粉の平均粒子径は、導電性カーボンペーストの均一な塗布性を得るためには1〜13μmの範囲が好ましい。人造黒鉛粉を使用しても平均粒子径が13μmを超える粉末を使用すると均一なペースト層が得られない場合があり、固体電解コンデンサに使用した時はコンデンサ特性におけるtanδ、等価直列抵抗(ESR)などが悪化する。また、平均粒子径がこの範囲内にあっても、粗い粒子を含有する時も均一な塗布を妨害するが、粒子径32μm以上の粒子の含有量を12質量%以下とした時にはこのような問題は生じない。
本発明の導電性カーボンペーストの導電性材料として、上記した人造黒鉛粉を少なくとも80質量%以上含む材料を使用することが必要である。天然黒鉛、カーボンブラックなどを併用して上記人造黒鉛粉が80質量%未満となる時は、得られる導電性カーボンペーストとして十分な電導度を確保できない。人造黒鉛粉の使用は、好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。導電性材料の残りの部分は、銀、金、銅などの金属粉、カーボンブラック、天然黒鉛、その他の粉末状導電性物質である。
本発明の固体電解コンデンサは人造黒鉛粉を80質量%以上含む導電性材料、バインダー及び溶媒を主たる成分とする導電性カーボンペーストを使用するものである。人造黒鉛粉としては上記したような固定炭素分、平均粒子径、アスペクト比等の限定がなくても使用可能であるが、好ましくは上記のように限定した人造黒鉛粉を使用したペーストである。
導電性カーボンペーストのバインダーとしては、ゴム弾性を有するもの(以下ゴム弾性体ともいう。)で歪みを受けるとその歪みを元に戻そうとする性質のある材料であり、好ましくはさらに実施形態において溶剤に膨潤又は懸濁可能な材料であり、またコンデンサ製造時のリフロー処理に対して優れた耐熱性を有するゴム弾性体が使用される。具体例として、前記特性を有する材料としては、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン/ブタジエンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン/プロピレン共重合体(EPM、EPDM等)、アクリルゴム、多硫化系ゴム、フッ素系ポリマー、シリコーンゴム、他の熱可塑性エラストマー等が挙げられる。その中で好ましくはEPM、EPDM、フッ素系ポリマーが使用される。フッ素系ポリマーは、フッ素元素を含むポリマーであれば特に制限はない。これらのゴム性ポリマーは一般に導電性カーボンペーストに使用されているエポキシ樹脂に比べて弾性率、吸水性が低く、接着部の応力の緩和に効果があるものである。
前記フッ素系ポリマーとしては、ポリテトラフロロエチレン、ポリ(クロロトリフロロエチレン)、フッ化ビニリデン(VDF)とヘキサフロロプロピレン(HFP)の二元共重合体、テトラフルオロエチレンを含む共重合体、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、含フッ素アクリレートゴム、含フッ素シリコーンゴム等を挙げることができる。
導電性カーボンペースト中の導電性材料とバインダー樹脂の配合比は、全固形分質量あたり導電性材料が30〜99質量%、好ましくは50〜90質量%、バインダー樹脂が1〜70質量%である。導電性材料が30質量%より少ないと導電性カーボンペーストの導電性が低くなり過ぎ、また99質量%を越えると導電性カーボンペーストの接着性や応力緩和能が失われる。
導電性カーボンペーストに使用する溶媒としては、通常の導電性カーボンペーストに使用する溶媒を同じもので良く、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、酢酸ブチルなどの溶媒を単独または混合して使用する。導電性カーボンペーストに配合する溶媒量は、導電性カーボンペーストの使用目的に応じた粘度となるように配合することが必要であるが、通常はペーストの固形分に対して等量ないし十倍の量を使用する。
本発明の導電性カーボンペーストを使用して固体電解コンデンサを作製する場合、陽極としては、弁作用を有するアルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ジルコニウムなどの単体金属またはこれらの合金の金属箔のエッチングしたもの、あるいは微粉焼結体など表面積を大きくしたものであればいずれも使用できる。
この金属表面に化成処理などにより誘電体層を形成し、その外側に固体の半導電体層(好ましくは、前述の導電性重合体からなる固体電解質層)を設け、更にその外側に本発明の導電性カーボンペースト層を形成し、その上に金属含有導電体層、好ましくは前記したゴム状弾性体を含む金属含有導電体層を形成し、リード線を接続して固体電解コンデンサとする。
本発明に係る導電性カーボンペーストを使用した固体電解コンデンサは、耐熱性が高く、ESR(等価直列抵抗)、インピーダンスが低く、またインピーダンスの熱劣化が小さく、更に耐湿性が優れた性能を有するものである。
発明を実施するための最良の形態
以下、実施例、比較例及び参考例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の記載により何等限定されるものではない。
実施例1
規定の面積に加工したアルミニウム化成箔を10質量%のアジピン酸アンモニウム水溶液で13Vの化成電圧にて化成し、箔表面に誘電体層を形成させた。このアルミニウム化成箔(基板)を、3,4−エチレンジオキシチオフェン5gを溶解した1.2モル/リットルのエチルメチルケトン溶液にポリエステルウレタンゴム0.05gを溶解させた溶液(溶液4)に浸漬し、次いで過硫酸アンモニウム(以下、APSと略する。):20質量%及び2−アントラキノンスルホン酸ナトリウム(東京化成社製):0.125質量%に調製した水溶液(溶液3)に浸漬した。
この基板を取り出して60℃の環境下で10分放置することで酸化的重合を完成させ、該基板を水で洗浄した。この重合反応処理及び洗浄工程をそれぞれ10回繰り返した。導電性重合体層は電子顕微鏡写真により層状構造を形成していることが確認された。
導電性重合体組成物中の硫酸イオン及び2−アントラキノンスルホン酸イオンの含量は、先ず該重合処理した基板を水/イソプロピルアルコール溶媒中でヒドラジン還元して注意深く抽出し、イオンクロマトグラフィー法で求めたところ、硫酸イオン含量は導電性重合体組成物中の重合体の全繰り返し構造単位当り1.5モル%、2−アントラキノンスルホン酸イオン含量は、14.0モル%であった。さらに、この基板の付着質量増加は、添加しないものに比べて15%の質量増加を示した。固体電解質層の電導度は73S/cmであった。
次に、ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン重合体組成物を蓄積させたアルミニウム箔基板を、10質量%アジピン酸アンモニウム水溶液中で処理して、火花電圧について調べた。試験は、素子特性を比較する上で、素子数を増やして行った(以下の実施例も同じ。)。すなわち、50℃環境下、電流密度10mA/cm2の条件でn=5回行ない表1の結果を得た。
次いで、固体電解コンデンサは陽極からの集電は基板のアルミニウム芯部をプラス側リード端子に溶接することによって行ない、また陰極からの集電は、カーボンペーストと銀ペーストを介してマイナス側リード端子に接続し、最後にエポキシ樹脂で封止してコンデンサ素子を作製した。このようにして得たコンデンサ素子を125℃で2時間エージングした後に初期特性を測定した。これらの結果を表2にまとめた。
ここで、表中初期特性のCは容量を表わし、DFは損失角の正接(tanδ)を意味する。いずれも120Hzで測定したものである。Z(インピーダンス)は、共振周波数での値を示した。LC(漏れ電流)は、定格電圧を印加して1分後に測定した。各測定値は、試料数が30個の平均値であり、LCについては1μA以上を不良品に、また10μA以上をショート品として表示し、これを除いてLC値の平均を算出した。
比較例1
実施例1においてポリエステルウレタンゴムを添加しないこと以外は実施例1の記載と同様に処理して得たコンデンサ素子を実施例1と同様に評価した。結果を表1及び表2に示す。
なお、重合体組成物中の硫酸イオン及び2−アントラキノンスルホン酸イオンの含量は、実施例1記載の方法で求めたところ、硫酸イオン含量は1.6モル%、2−アントラキノンスルホン酸イオン含量は、13.5モル%であった。固体電解質層の電導度は、70S/cmであった。
実施例2
実施例1で酸化重合の回数を10回から7回にした以外は、実施例1の記載と同様に処理して得たコンデンサ素子を実施例1と同様に評価した。結果を表1及び表2に示す。
なお重合体組成物中の硫酸イオン及び2−アントラキノンスルホン酸イオンの含量は、実施例1記載の方法で求めたところ、硫酸イオン含量は1.2モル%、2−アントラキノンスルホン酸イオン含量は、13.0モル%であった。付着質量はポリエステルウレタンゴムを入れない10回含浸とほぼ同程度であった。固体電解質層の電導度は、70S/cmであった。
実施例3
実施例1で使用したポリエステルウレタンゴムの代わりにテトラフロロエチレン−プロピレン共重合体の同濃度のアセトン溶液を用いた以外は、実施例1の記載と同様に処理して得たコンデンサ素子を実施例1と同様に評価した。結果を表1及び表2に示す。
なお、重合体組成物中の硫酸イオン及び2−アントラキノンスルホン酸イオンの含量は、実施例1記載の方法で求めたところ、硫酸イオン含量は1.8モル%、2−アントラキノンスルホン酸イオン含量は、15.8モル%であった。基板における質量増加は25%であった。固体電解質層の電導度は、65S/cmであった。
実施例4
実施例1で使用した2−アントラキノンスルホン酸ナトリウムの代わりにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの同濃度溶液を用いた以外は、実施例1の記載と同様に処理して得たコンデンサ素子を実施例1と同様に評価した。結果を表1及び表2に示す。
なお、重合体組成物中の硫酸イオン及びドデシルベンゼンスルホン酸イオンの含量は、実施例1記載の方法で求めたところ、硫酸イオン含量は1.3モル%、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン含量は、14.5モル%であった。基板における質量増加は20%であった。固体電解質層の電導度は、67S/cmであった。
実施例5
実施例1で使用したポリエステルウレタンゴムの代わりにフッ化ビニリデン−ヘキサプロピレン共重合体の同濃度のアセトン溶液を用いた以外は、実施例1の記載と同様に処理して得たコンデンサ素子を実施例1と同様に評価した。結果を表1及び表2に示す。
なお、重合体組成物中の硫酸イオン及び2−アントラキノンスルホン酸イオンの含量は、実施例1記載の方法で求めたところ、硫酸イオン含量は1.4モル%、2−アントラキノンスルホン酸イオン含量は、14.2モル%であった。基板における質量増加は24%であった。固体電解質層の電導度は、73S/cmであった。酸素フラスコ燃焼法とイオンクロマトグラフィー法を併用して、フッ素含量を求めたところ、0.5質量%になり、従ってフッ素ゴムは重合体組成物中約1質量%相当含有されている。
実施例6
実施例1で使用した3,4−エチレンジオキシチオフェンの代わりにピロールの同濃度溶液を用い、酸化的重合温度を5℃にした以外は、実施例1の記載と同様に処理して得たコンデンサ素子を実施例1と同様に評価した。結果を表1及び表2に示す。
なお重合体組成物中の硫酸イオン及び2−アントラキノンスルホン酸イオンの含量は、実施例1記載の方法で求めたところ、硫酸イオン含量は1.7モル%、2−アントラキノンスルホン酸イオン含量は、15.9モル%であった。基板における質量増加は21%であった。固体電解質層の電導度は、80S/cmであった。
参考例1
実施例1記載の3,4−エチレンジオキシチオフェンを4−メチルチオフェンに代えた以外は実施例1記載の条件と同じにして、コンデンサ素子を作製する処理を行った。しかし、黒青色のポリ−4−メチルチオフェン重合体は全く生成せず、4−メチルチオフェンの重合がAPSの作用では起こらなかった。
実施例1〜6において、コンデンサ素子の初期特性を測定した後、高温高湿下に500時間暴露し、再度120Hzでの容量と損失係数を測定した。結果を表3に示す。また、比較例1として、ポリエステルウレタンゴムを添加しない以外は実施例1と同条件でコンデンサ素子の同様な測定を行った。結果を表3に示す。表3から明らかなように、実施例1によるコンデンサ素子は、寿命加速試験後の特性と初期特性の差が比較例1に比べ著しく小さい優れた効果が得られる。
以上のように本実施例によれば、外的応力に緩和性のある、寿命特性の優れた高性能のコンデンサを実現させることができる。
実施例7:導電性ペーストの調製
導電性充填材として平均粒径5.5μmの銀粉を用い、バインダーにはフッ素系ゴムとしてバイトンゴム(フッ化ビニリデン−4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体)を用いた。そして銀粉85質量%とバイトンゴム粉末15質量%を混合し、ペーストの固形分とした。これに溶媒として酢酸ブチルを加え、混練して固形分60質量%の粘稠な銀ペーストを得た。
実施例8:固体電解コンデンサの作製
エッチング処理後陽極酸化したアルミニウム化成箔を3mm幅にスリットしたものを長さ10mmずつ切り取り、それぞれ13Vの化成電圧にて切口部の未化成部を化成し、アルミニウム箔全面に誘電体酸化皮膜を形成した。この化成箔の長さ方向の約50%の部分を3,4−ジオキシエチレンチオフェンの1モル/リットル濃度のエチルアルコール溶液に浸漬し、次いで酸化剤(重合開始剤)として過硫酸アンモニウムの1.5モル/リットル及びドーパントとしてナフタレン−2−スルホン酸ナトリウム0.12モル/リットル濃度の水溶液に浸漬し、40℃に保持して重合した。この重合操作を20回繰り返して行ない、箔の酸化皮膜上にポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)からなる導電性重合体層を形成した。20回の繰り返し重合により、導電性重合体層は図2の電子顕微鏡の拡大写真(5000倍)のように層状構造となった(図2において、上部が層状構造の導電性重合体層である。)。この導電性重合体層を有する部分をカーボンペーストに浸漬し、100℃、30分間熱処理した。カーボンペースト層は平均粒径3μmの黒鉛粉末60質量%と実施例1のフッ素系ゴム40質量%を混合し、ペーストの固形分とした。これに溶媒として酢酸ブチルを加え、混練して固形分16質量%の粘稠なカーボンペーストとしたものを用いた。
次にこのカーボンペーストにより形成された層の部分を実施例7の銀ペースト中に浸漬し、導電体層を形成して一単位のコンデンサ素子とした。この単位コンデンサ素子を導電性重合体のついていない側のアルミニウム箔部分を切断し、これらを4枚重ねて同じ銀ペーストを用いて接合し、リードフレーム(銅合金)に接合し、100℃、3時間乾燥させた。その後、導電性重合体のついていないアルミニウム箔部分をリードフレーム(銅合金)に溶接した。最後にこれらのフレームの一端部を露出させて、エポキシ樹脂(住友ベークライト社製EME−7320A)を用い、トランスファモールドにより封止してチップ型のコンデンサとした。このコンデンサの特性を表4に示す。
比較例2
実施例8において、銀ペーストのバインダーをエポキシ樹脂(油化シェルエポキシ(株)製エピコート828型)に変えた他は実施例8と同様にしてチップ型の固体電解コンデンサを作製した。その特性を表4に示す。
表4中、ESR(100KHzでの等価直列抵抗)は試料30個の平均値、リフロー不良率、耐湿不良率は以下の方法により測定した試料30個中の不良品数を表わす。
リフロー不良率:
リフロー炉(230℃、30秒)に通した後、定格電圧(13V)を印加し、1分後の漏れ電流値を測定する。12μA未満を合格(良品)、12μA以上を不良品とした。
耐湿不良率:
温度60℃/湿度90%雰囲気中にコンデンサを放置した。1000時間後これを取り出し定格電圧を印加し1分後の漏れ電流値を測定する。12μA未満を合格(良品)、12μA以上を不良品とした。
実施例9
導電性材料としてアスペクト比が3〜1.5、平均粒子径が3μm、粒子径が32μm以上である粒子が2質量%以下、固定炭素分が99質量%である人造黒鉛粉末(昭和電工(株)製:UFG−5)100質量部に、バインダー樹脂としてエチレン/プロピレン/ジエンターポリマー(EPDM)の酢酸ブチル懸濁液(懸濁液中のEPDM7質量%)を該樹脂固形分が人造黒鉛粉末100質量部に対して80質量%となるように投入して、これを24時間撹拌して導電性カーボンペーストを作製した。
次に、3mm×10mmに切り出したアルミニウム化成箔を、端から4mmと5mmの部分に区切るように、両面に渡って幅1mmのポリイミドテープを貼り付けて前記3mm×4mmの部分を、10質量%のアジピン酸アンモニウム水溶液中、13Vの電圧を印加して化成した。これにより、前記領域に誘電体酸化皮膜を形成した。さらにアルミニウム箔の前記3mm×4mmの部分を、3,4−ジオキシエチレン−チオフェン20質量%を含むイソプロパノール溶液(溶液1)に浸漬した後引き上げ、室温下で風乾させ、続いて前記誘電体酸化皮膜を形成した部分を、過硫酸アンモニウム(APS)30質量%とアントラキノン−2−スルホン酸ナトリウム1質量%を含む水溶液(溶液2)に浸漬した後、引き上げ60℃の雰囲気に10分放置することで酸化重合を行った。これを再び前記溶液1に浸漬し、さらに前記と同様な処理を行った。溶液1に浸漬してから酸化重合を行うまでの操作を25回繰り返した後、50℃の温水で10分洗浄を行い、100℃で30分乾燥を行うことにより導電性重合体層(固体電解質層)を形成した。
かくして、得られた導電性重合体層を形成したアルミニウム箔の断面を走査電子顕微鏡写真(2,000倍)で調べたところ、導電性重合体層が金属アルミニウム上の誘電体(アルミナ)の微細孔内の表面に層状構造をなして覆い尽くしており、また層状導電性重合体層間に空間部が存在することが確認された。ここで、微細孔構造の外部表面に形成された導電性重合体層の厚さは約5μmであり、層構造を形成する1層当りの厚さは約0.1〜0.3μmの範囲であった。
次に前記アルミニウム箔の導電性重合体層を形成した部分に、前記方法で作製した導電性カーボンペーストを塗布した後、100℃、30分間熱処理を行い、前記導電性重合体上にカーボンペーストによる導電層を形成した。次に、銀ペーストを付けて陰極リード端子を接続し、また導電性重合体層の形成されていない部分には陽極リード端子を溶接により接続した素子をエポキシ樹脂で封止した後、125℃で定格電圧を印加して2時間エージングを行い、合計30個のコンデンサを完成させた。
これら30個のコンデンサ素子について、等価直列抵抗(ESR)を通常の方法で測定し、リフロー処理をした。次いでリフロー後のESRを再度測定し、リフロー前後のESRの変化を見積もった。次に、コンデンサ素子全量に対して後述の耐湿不良率の試験をそれぞれ行った。結果を表5にまとめた。
実施例10
実施例9記載のEPDM・酢酸ブチル懸濁液をフッ素系ポリマー(フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロ共重合体)・酢酸ブチル懸濁液に、またEPDM固形分が人造黒鉛粉末100質量部に対して80質量部使用した条件を、フッ素系ポリマー固形分が人造黒鉛粉末100質量部に対して70質量%に代えた以外は、実施例9記載の方法に準じて合計30個のコンデンサ素子を完成させ、実施例9の記載と同様なコンデンサの特性評価を行った。結果を表5に併せてまとめた。
比較例3
導電性材料として、実施例9記載の人造黒鉛粉末を、平均粒子径4μm、粒子径が32μm以上の粒子が2質量%以下、固定炭素分が98.5質量%であり、アスペクト比が明らかに10以上の鱗片状天然黒鉛に代え、またバインダーとしてEPDMをエポキシ樹脂に替えた以外は、実施例9と同様にして合計30個のコンデンサを完成させ、コンデンサの特性評価を行った。結果を表5に併せてまとめた。
比較例4
導電性材料として、実施例10記載の人造黒鉛粉末を、平均粒子径4μm、粒子径が32μm以上の粒子が2質量%以下、固定炭素分が98.5質量%であり、アスペクト比が明らかに10以上の鱗片状天然黒鉛に代えた以外は、実施例10と同様にして合計30個のコンデンサを完成させ、コンデンサの特性評価を行った。結果を表5に併せてまとめた。
前記実施例9〜10及び比較例3〜4において、実施した各種評価試験は下記の測定方法、条件で行った。
[測定方法]
1.リフロー不良率
作製した30個の固体電解コンデンサをピーク温度230℃のリフロー炉に30秒通した後、定格電圧(6.3V)を印加し、1分後の漏れ電流を測定した。判定として3μA未満を合格品とした。
2.耐湿不良率
温度60℃、湿度90%の雰囲気中にリフロー試験で合格した固体電解コンデンサ全数を放置し、1000時間後これを取り出し、定格電圧(6.3V)を印加し、1分後の漏れ電流値を測定する。判定として12μA未満を合格品とした。
産業上の利用可能性
本発明は、固体電解質層及び金属粉末を含む導電体層、または導電性カーボン層およびその層上に設けた金属粉末を含む導電体層からなる少なくとも一つの層にゴム状弾性体を含む固体電解コンデンサ、その製造方法、その固体電解コンデンサに使用される固体電解質、固体電解質の製造方法、固体電解コンデンサ用導電性ペースト、及び固体電解コンデンサ用導電性カーボンペーストを提供したものである。
本発明の固体電解コンデンサは、固体電解質を形成する導電性重合体組成物中にゴム弾性体が含むことにより、含浸回数を大幅に少なくでき、生産性の向上に繋がり、小型でより低インピーダンスで、より高性能であり、外的応力に緩和性のある固体電解コンデンサ及びその製造方法を提供することができる。
また、固体電解質に特定のポリヘテロ5員環式化合物、特に導電性ポリチオフェンをπ電子共役重合体として使用することによって、耐電圧特性(火花電圧試験)、高周波特性、tanδ、インピーダンス特性、漏洩電流、耐熱性(リフロー性)等が大幅に向上する効果が得られる。
特に、前記導電性重合体組成物中には、1つのゴム状弾性体の含量がπ電子共役構造構造を有する重合体の繰り返し単位に対して、0.01〜25質量%の範囲であり、更に硫酸イオン含量が0.1〜10モル%の範囲で含まれていることによって、より高性能なコンデンサ特性を有する固体電解コンデンサとすることができる。
本発明の固体電解コンデンサは、導電体層(金属粉末を含む導電体層、または導電性カーボン層及びその層上に設けた金属粉末を含む導電体層)にゴム状弾性体を含む場合には、以下の効果が得られる。
(1)本発明の導電性ペーストはバインダーがフッ素系ゴムで弾性率が低く、かつ耐熱性、耐湿性に優れる。
(2)この導電性ペーストを導電体層に用いた固体電解コンデンサはリフロー等で発生する熱応力が小さく、導電体層界面での剥れが起らない。
(3)そのためリフロー前後のESRの変化が小さく、またリフロー不良、耐湿不良が発生しないなどの効果を有する。
さらに、本発明の固体電解コンデンサは、導電性カーボン層をゴム状弾性体、特にフッ素系ゴム状弾性体を使用することにより、耐湿性(撥水性)に優れ、さらに導電性カーボン層に特定の導電性材料(人造黒鉛粉)を使用することにより、充填密度を高くすることが可能で導電性、耐熱性に優れる。
このため、これを導電性カーボンペーストとして使用した固体電解コンデンサは、ESR(100KHzでの等価直列抵抗)が低くリフロー前後のESR変化が小さく、耐湿不良率が低い格別な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の固体電解コンデンサの一例を示す断面図である。
第2図は、本発明の固体電解コンデンサの他の一例を示す断面図である。
第3図は、本発明における導電性重合体層の電子顕微鏡写真である(倍率:5000倍)。
図中、1は弁作用金属、2は細孔、3は誘電体皮膜、4は固体電解質層、5は導電体層、6は外装体、7は接続用端子、7aは陽極端子、7bは陰極端子である。
Claims (41)
- 弁作用金属上に形成された誘電体皮膜上に、導電性重合体からなる固体電解質層及び導電体層を形成してなる固体電解コンデンサにおいて、前記固体電解質層及び導電体層の少なくとも一つの層にゴム状弾性体を含み、前記固体電解質層がフッ素系ゴムを含む膜状または層状の導電性重合体組成物であることを特徴とする固体電解コンデンサ。
- 導電体層が、金属粉末を含む導電体層、または導電性カーボン層及びその層上に設けた金属粉末を含む導電体層からなる請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
- 導電性カーボン層にゴム状弾性体を含む請求項2に記載の固体電解コンデンサ。
- 金属粉末含有導電体層にゴム状弾性体を含む請求項2に記載の固体電解コンデンサ。
- 導電性カーボン層及び金属粉末含有導電体層にゴム状弾性体を含む請求項2に記載の固体電解コンデンサ。
- 固体電解質層が、0.01〜25質量%の範囲でフッ素系ゴムを含む膜状または層状の導電性重合体組成物からなる請求項1乃至5のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
- 導電性重合体が、ピロール、チオフェン、アニリンまたはそれらの誘導体の二価基の繰り返し単位を少なくとも1種含む重合体である請求項1乃至6のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
- 金属粉末含有導電体層が、金属粉末からなる導電性充填材及びバインダーの主成分としてフッ素系ゴムを含む請求項2乃至5のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
- バインダーの80質量%以上がフッ素系ゴムである請求項8に記載の固体電解コンデンサ。
- 導電性充填材の80質量%以上が銀粉である請求項8または9に記載の固体電解コンデンサ。
- 導電性充填材の平均粒径が1μm以上10μm以下である請求項8乃至10のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
- 導電性充填材が50〜95質量%、バインダーが5〜50質量%である請求項8乃至11のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
- 金属粉末含有導電体層が、導電性充填材、バインダー及び有機溶剤を含む導電性ペーストにて形成された層である請求項8に記載の固体電解コンデンサ。
- 弁作用金属からなる陽極体の表面に誘電体酸化皮膜、固体電解質層、導電体層を形成したコンデンサ素子を陽極リード端子と陰極リード端子の露出部を残して絶縁性樹脂で封止した固体電解コンデンサにおいて、固体電解質層がフッ素系ゴムを含む導電性重合体層であり、導電体層が上記請求項8乃至13のいずれかに記載された金属粉末含有導電体層であることを特徴とする固体電解コンデンサ。
- 導電体層が、導電性重合体層上の導電性カーボン層及びその層上に積層された請求項8乃至13のいずれかに記載の金属粉末含有導電体層からなる層である請求項14に記載の固体電解コンデンサ。
- 導電性重合体層が、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である請求項14または15に記載の固体電解コンデンサ。
- 導電性カーボン層が、導電性材料、バインダー及び溶媒を主たる構成成分とする導電性カーボンペーストを用いて形成された層であり、前記導電性材料の80質量%以上が人造黒鉛であり、前記人造黒鉛は固定炭素分97質量%以上、平均粒子径1〜13μm、アスペクト比10以下、粒子径32μm以上の粒子が12質量%以下である請求項2乃至5および15のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
- バインダーとして、溶剤に膨潤または懸濁可能なゴム弾性を有する材料を用いた請求項17に記載の固体電解コンデンサ。
- 溶剤に膨潤または懸濁可能なゴム弾性を有する材料が、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン/ブタジエンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン/プロピレン共重合体、アクリルゴム、多硫化系ゴム、フッ素系ポリマー、シリコーンゴム、熱可塑性エラストマーからなる群より選ばれた少なくとも1種の材料である請求項18に記載の固体電解コンデンサ。
- 導電性カーボンペースト中の固形分のうち、導電性材料が30〜99質量%、バインダーが1〜70質量%である請求項17乃至19のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
- 弁作用金属上に形成された誘電体皮膜上に、固体電解質層及び導電体層を形成してなる固体電解コンデンサの製造方法において、表面に誘電体皮膜の形成された弁作用金属を、導電性重合体のモノマー溶液及び酸化剤溶液の少なくとも一方にゴム状弾性体としてのフッ素系ゴムを含有する前記導電性重合体のモノマー溶液及び酸化剤溶液を用いて交互に1回または複数回被覆を繰り返して誘電体皮膜上に導電性重合体組成物の膜または層を形成することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
- 導電性重合体組成物中に、ゴム状弾性体が0.01〜25質量%含まれている請求項21に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 弁作用金属上に形成された誘電体皮膜上に、導電性重合体からなるフッ素系ゴムを含む導電性重合体組成物が膜状または層状に構成された固体電解質層及び導電体層を形成してなる固体電解コンデンサの製造方法において、固体電解質上に、導電性材料、ゴム弾性を有するバインダー及び溶媒を含む導電性ペーストを用いて導電体層を形成することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
- 導電体層が、金属粉末からなる導電性充填剤、ゴム弾性を有するバインダー及び溶媒を含む導電性ペーストを用いて形成された金属粉末含有導電体層である請求項23に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 導電体層が、導電性材料、ゴム弾性を有するバインダー及び溶媒を含む導電性カーボンペーストを用いて導電性カーボン層を形成した後、金属粉末を含む導電体層を形成する請求項23に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 導電体層が、導電性材料、ゴム弾性を有するバインダー及び溶媒を含む導電性カーボンペーストを用いて導電性カーボン層を形成した後、金属粉末からなる導電性充填剤、ゴム弾性を有するバインダー及び溶媒を含む導電性ペーストを用いて金属粉末含有導電体層を形成する請求項23に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 固体電解質層が、誘電体皮膜上に、導電性重合体のモノマー溶液及び酸化剤溶液の少なくとも一方にゴム状弾性体としてのフッ素系ゴムを含有する前記導電性重合体のモノマー溶液及び酸化剤溶液を用いて交互に1回または複数回繰り返して被覆を行い、導電性重合体組成物の皮膜を形成する請求項23乃至26のいずれかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 層状構造を有する固体電解質が、膜状または層状構造層の膜または1層当たりの厚さが約0.1〜0.3μmの範囲であることを特徴とする請求項23乃至27に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 0.01〜25質量%の範囲でゴム状弾性体としてのフッ素系ゴムを含む導電性重合体組成物が膜状または層状に構成された固体電解質。
- 導電性重合体が、ピロール、チオフェン、アニリンまたはそれらの誘導体の二価基の繰り返し単位を少なくとも1種含む重合体である請求項29に記載の固体電解質。
- 表面に導電性重合体組成物からなる固体電解質の形成を必要とする物体に対して、導電性重合体のモノマー溶液及び酸化剤溶液の少なくとも一方にゴム状弾性体としてのフッ素系ゴムを含有する前記導電性重合体のモノマー溶液及び酸化剤溶液により、交互に1回または複数回被覆を繰り返すことを特徴とする導電性重合体組成物が膜状または層状に形成された固体電解質を有する物体の製造方法。
- 被覆手段が、浸漬、塗布、吹き付けあるいは流延のいずれかの方法である請求項31に記載の固体電解質を有する物体の製造方法。
- ゴム状弾性体を溶解または分散の形で導電性重合体のモノマー及び/または酸化剤を含む溶液に添加する請求項31に記載の固体電解質を有する物体の製造方法。
- 金属粉末からなる導電性充填材及びバインダーの主成分としてフッ素系ゴムを含み、バインダーの80質量%以上がフッ素系ゴムである固体電解コンデンサ用導電性ペースト。
- 導電性充填材の80質量%以上が銀粉である請求項34に記載の導電性ペースト。
- 導電性充填材の平均粒径が1μm以上10μm以下である請求項34または35に記載の導電性ペースト。
- 導電性充填材が50〜95質量%、バインダーが5〜50質量%である請求項34、35または36に記載の導電性ペースト。
- 有機溶剤を含む請求項34乃至37のいずれかに記載の導電性ペースト。
- 導電性カーボン材料、溶剤に膨潤または懸濁可能なゴム弾性を有する材料を用いたバインダー及び溶媒を主たる構成成分とする固体電解コンデンサ用導電性カーボンペーストにおいて、導電性カーボン材料が、80質量%以上が人造黒鉛であり、前記人造黒鉛は固定炭素分97質量%以上、平均粒子径1〜13μm、アスペクト比が10以下、粒子径32μm以上の粒子が12質量%以下である固体電解コンデンサ用導電性カーボンペースト。
- 溶剤に膨潤または懸濁可能なゴム弾性を有する材料が、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン/ブタジエンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン/プロピレン共重合体、アクリルゴム、多硫化系ゴム、フッ素系ポリマー、シリコーンゴム、熱可塑性エラストマーからなる群より選ばれた少なくとも1種の材料である請求項39に記載の固体電解コンデンサ用導電性カーボンペースト。
- 導電性カーボンペースト中の固形分のうち、導電性材料が30〜99質量%、バインダーが1〜70質量%である請求項39または40に記載の固体電解コンデンサ用導電性カーボンペースト。
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