JP4491876B2 - 異方性導電フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、相対峙する回路間に介装し、回路間を加熱、加圧することによりこれら回路間を導電性粒子を介して導通すると共に、これら回路同士を接着固定する目的に使用される厚み方向にのみ導電性を付与する異方性導電フィルムに係り、特に、接着剤の硬化反応速度を容易に制御することができ、低温、低圧の接着条件で高い導通信頼性と接着力を得ることができる異方性導電フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
異方性導電フィルムは、接着剤に導電性粒子が分散され、厚さ方向に加圧することにより厚さ方向に導電性が付与されるものであり、相対峙する回路間に介装し、回路間を加圧、加熱することにより回路間を導電性粒子を介して接続すると共に、これら回路間を接着固定する目的に使用され、厚み方向にのみ導電性を与えるものである。
【0003】
このような異方性導電フィルムは、フレキシブルプリント基板(FPC)やTABと液晶パネルのガラス基板上に形成されたITO(スズインジウム酸化物)端子とを接続する場合をはじめとして、種々の端子間に異方性導電膜を形成し、それにより該端子間を接着すると共に電気的に接合する場合に使用されている。
【0004】
従来の異方性導電フィルムは、一般にエポキシ系又はフェノール系樹脂と硬化剤を主成分とする接着剤に導電性粒子を分散させたもので構成され、中でも使用上の便宜等の点から接着剤としては1液型の熱硬化型のものが主流になっている。また、異方性導電フィルムとしては、高温高湿下でも安定した接続信頼性が得られるようにするため、種々の方法により接着強度の強化が図られているが、従来のエポキシ系又はフェノール系樹脂を用いた異方性導電フィルムは、接着力が低く、作業性が悪く、耐湿耐熱性に問題があった。
【0005】
特に、近年、より高密度実装を実現するために、電極のファィンピッチ化が進み、異方性導電フィルム実装の際の熱や圧力による基材の伸びが問題となっている。また、軽量化、コストダウンのために基材の材質も、従来よりも耐熱性、耐圧力性の低い材料が使用されつつあり、異方性導電フィルム実装の際の熱や圧力による基材の損傷も問題となっている。このため、異方性導電フィルムとしては、より低温、低圧での接着が要求されることから、エポキシ系、フェノール系では実現し得ない低温、低圧条件での接着を可能とすべく、ラジカル反応を用いた材料系を用いた開発が進められ、本出願人は、先にポリビニルアルコールをアセタール化して得られるポリアセタール化樹脂を主成分とする熱又は光硬化性接着剤からなる異方性導電フィルム(特開平10−338860号公報)、或いは、アクリル系モノマー及び/又はメタクリル系モノマーを重合して得られる(メタ)アクリル系樹脂を主成分とする熱又は光硬化性接着剤からなる異方性導電フィルム(特開平10−338844号公報)を提案した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ラジカル反応系の接着剤において、低温化、低圧力化を目指して反応速度を極端に上げてしまうと、接着剤の流動性が損なわれ、接着剤に含有される導電性粒子が電極間にコンタクトして導通が図れる前に接着剤が硬化してしまい、導通信頼性が低くなる。また、基材に対して十分に濡れる前に接着剤が硬化してしまうと、接着力が極端に低くなってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は上記従来の問題点を解決し、接着剤の硬化反応速度を容易に制御することができ、低温、低圧の接着条件で高い導通信頼性と接着力を得ることができる異方性導電フィルムを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の異方性導電フィルムは、導電性粒子が接着剤層中に分散された異方性導電フィルムにおいて、該接着剤が、ベース樹脂と重合禁止剤とを含む熱硬化性又は光硬化性樹脂組成物に、導電性粒子を配合してなるものであり、該ベース樹脂が、ポリビニルアルコールをアセタール化して得られるポリアセタール化樹脂、或いは、アクリル系モノマー及び/又はメタクリル系モノマーを重合して得られる(メタ)アクリル系樹脂であり、該樹脂組成物がベース樹脂100重量部に対して有機過酸化物又は光増感剤を0.1〜10重量部含有する異方性導電フィルムであって、該樹脂組成物中に重合禁止剤が100〜1000ppm含有されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の異方性導電フィルムでは、接着剤中に重合禁止剤を含むため、この重合禁止剤の配合量を調整することにより、当該接着条件に好適な硬化開始時間を確保することができ、高い導通信頼性と接着性を得ることができるようになる。
【0010】
本発明において、ベース樹脂としては一般にポリビニルアルコールをアセタール化して得られるポリアセタール化樹脂、或いは、アクリル系モノマー及び/又はメタクリル系モノマーを重合して得られる(メタ)アクリル系樹脂が用いられる。
【0011】
本発明の異方性導電フィルムの樹脂組成物は重合禁止剤を100〜1000ppm含有することが好ましい。
【0012】
本発明の異方性導電フィルムは、ベース樹脂100重量部に対して有機過酸化物又は光増感剤を0.1〜10重量部、アクリロキシ基含有化合物、メタクリロキシ基含有化合物及びエポキシ基含有化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の反応性化合物を0.5〜80重量部、シランカップリング剤を0.01〜5重量部、炭化水素樹脂を1〜200重量部含有することが好ましい。
【0013】
また、導電性粒子の配合量はベース樹脂に対して0.1〜15容量%であることが好ましく、その好適な平均粒径は0.1〜100μmである。
【0014】
このような本発明の異方性導電フィルムは、更に下記の特長を有することができる。
1) 耐湿耐熱性に優れ、高温高湿下で長時間保持した後においても、異方性導電フィルムの特性を有効に発揮し、耐久性に優れている。
2) リペア性が良好である。
3) 透明性が良好である。
4) 従来品に比べ、安定して高い接着性を発揮する。
5) 透明なポリマーを原料としたフィルムを使用することにより、電極位置決めの際の光透過性がよく、作業性が良好となる。
6) エポキシ系等の従来品は、150℃以上の加熱が必要であったが、本発明によれば、130℃以下、特に100℃以下で硬化接着も可能であり、またUV硬化性とすることもできるため、更に低温での硬化接着も可能である。
7) 従来用いられているエポキシ系、フェノール系の異方性導電フィルムは、粘着性がなく、フィルムが電極に粘着力で仮止めしにくく、剥がれ易く、作業性が悪いが、本発明の異方性導電フィルムは、仮止め時の粘着力が高いため、作業性が良好である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
本発明において、接着剤を構成する樹脂組成物のベース樹脂は、ポリビニルアルコールをアセタール化して得られるポリアセタール化樹脂、或いは、アクリル系モノマー及び/又はメタクリル系モノマーを重合して得られる(メタ)アクリル系樹脂である。
【0017】
ポリアセタール化樹脂としては、アセタール基の割合が30モル%以上であるものが好ましい。アセタール基の割合が30モル%より少ないと耐湿性が悪くなる恐れが生じる。このポリアセタール化樹脂としては、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等が挙げられるが、特にはポリビニルブチラールが好ましい。このようなポリアセタール化樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば電気化学工業社製「デンカPVB3000−1」「デンカPVB2000−L」などを用いることができる。
【0018】
一方、アクリル系モノマー及びメタクリル系モノマーの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて重合して得られる(メタ)アクリル系樹脂を構成するモノマーとしては、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル系モノマーの中から選ばれるモノマーが挙げられ、例えば、アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数1〜20、特に1〜18の非置換又はエポキシ基等の置換基を有する置換脂肪族アルコールなどとのエステルが好適に使用される。
【0019】
ここで、アクリル系モノマーとして具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソアミルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、1−ヒドロキシエチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、2−エチルヘキシルジグリコールアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、EO変性トリメチロールプロパンアクリレート、パーフロロオクチルエチルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ネオペンチルグリコールアクリル酸安息香酸エステル、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートなどが挙げられる。
【0020】
また、メタクリル系モノマーとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート、C12・C13混合アルキルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、C12〜C15混合アルキルメタクリレート、n−ステアリルメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、イソステアリルメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、n−ブトキシエチルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリフロロエチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフロロプロピルメタクリレート、2,2,3,4,4,4−ヘキサフロロブチルメタクリレート、パーフロロオクチルエチルメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、ジブロモネオペンチルグリコールジメタクリレート、グリシジルメタクリレートなどが挙げられる。
【0021】
アクリル系モノマー、メタクリル系モノマーとしては、特にアクリル酸又はメタクリル酸と一価アルコール、とりわけ脂肪族系一価アルコールとのエステルが好ましい。なお、脂肪族系一価アルコールとは、アルコール性水酸基がフェニル基等の芳香族環に結合していないものを意味する。
【0022】
本発明において、硬化開始時間の調整のために用いられる重合禁止剤としては、有機過酸化物又は光増感剤による架橋反応を抑制し得るものであれば良く、特に制限はないが、具体的にはp−ベンゾキノン、ナフトキノン、フェナンスラキノン、p−キシロキノン、p−トルキノン、2,6−ジクロロキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、2,5−ジアセトキシ−p−ベンゾキノン、ヒドロキノン、p−t−ブチルカテコール、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、モノ−t−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ヒドロキノンモノメチルエーテル、α−ナフトール、アセトアミジンアセテート、アセトアミジンサルフェート、フェニルヒドラジン塩酸塩、ヒドラジン塩酸塩、トリメチルベンジルアンモニウムクロリド、ラウリルピリジウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、フェニルトリメチルアンモニウムクロリド、トリメチルベンジルアンモニウムオキザレート、トロメチルベンジルアンモニウムマレエート、フェニル−β−ナフチルアミン、p−ベンジルアミノフェノール、ジニトロベンゼン、トリニトロトルエン、ピクリン酸、キノンジオキシム、シクロヘキサノンオキシム、ピロガロール、タンニン酸、レゾルシン、トリエチルアミン塩酸塩、ジメチルアニリン塩酸塩、ジブチルアミン塩酸塩などが挙げられる。
【0023】
重合禁止剤としては、これらのうちの少なくとも1種が単独で或いは混合して用いられ、通常、樹脂組成物中に100〜1000ppm配合される。この配合量が100ppm未満では硬化開始時間の制御が困難であり、50000ppmを超えると架橋反応が阻害され、十分な接着力が得られない場合がある。重合禁止剤の好適な配合量は200〜1000ppmである。
【0024】
本発明においては、異方性導電フィルムの物性(機械的強度、接着性、光学的特性、耐熱性、耐湿性、耐候性、架橋速度等)の改良や調節のために、樹脂組成物にアクリロキシ基、メタクリロキシ基又はエポキシ基を有する反応性化合物(モノマー)を配合することが好ましい。この反応性化合物としては、アクリル酸又はメタクリル酸誘導体、例えばそのエステル及びアミドが最も一般的であり、エステル残基としてはメチル、エチル、ドデシル、ステアリル、ラウリルのようなアルキル基のほかに、シクロヘキシル基、テトラヒドロフルフリル基、アミノエチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。また、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多官能アルコールとのエステルも同様に用いられる。アミドとしては、ダイアセトンアクリルアミドが代表的である。多官能架橋助剤としては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン等のアクリル酸又はメタクリル酸エステル等が挙げられる。また、エポキシ基含有化合物としては、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、フェノール(EO)5グリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、グリシジルメタクリレート、ブチルグリシジルエーテル等が挙げられる。また、エポキシ基を含有するポリマーをアロイ化することによって同様の効果を得ることができる。
【0025】
これらの反応性化合物は1種又は2種以上の混合物として、前記ベース樹脂100重量部に対し、通常0.5〜80重量部、好ましくは0.5〜70重量部添加して用いられる。この配合量が80重量部を超えると接着剤の調製時の作業性や成膜性を低下させることがある。
【0026】
本発明においては、樹脂組成物の熱硬化のための硬化剤として有機過酸化物を配合するが、この有機過酸化物としては、70℃以上の温度で分解してラジカルを発生するものであればいずれも使用可能であるが、半減期10時間の分解温度が50℃以上のものが好ましく、成膜温度、調製条件、硬化(貼り合わせ)温度、被着体の耐熱性、貯蔵安定性を考慮して選択される。
【0027】
使用可能な有機過酸化物としては、例えば2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、n−ブチル−4,4’−ビス (t−ブチルパーオキシ)バレレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、メチルエチルケトンパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ビスパーオキシベンゾエート、ブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、ヒドロキシヘプチルパーオキサイド、クロロヘキサノンパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、クミルパーオキシオクトエート、サクシニックアシッドパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)、m−トルオイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。これらの有機過酸化物は1種を単独で用いても2種以上を併用しても良い。
【0028】
このような有機過酸化物はベース樹脂100重量部に対して好ましくは0.1〜10重量部配合される。
【0029】
また、本発明においては、樹脂組成物の光硬化のために、光によってラジカルを発生する光増感剤を配合するが、この光増感剤(光重合開始剤)としては、ラジカル光重合開始剤が好適に用いられる。ラジカル光重合開始剤のうち、水素引き抜き型開始剤としてベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、4−(ジエチルアミノ)安息香酸エチル等が使用可能である。また、ラジカル光重合開始剤のうち、分子内開裂型開始剤としてベンゾインエーテル、ベンゾイルプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、α―ヒドロキシアルキルフェノン型として、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、アルキルフェニルグリオキシレート、ジエトキシアセトフェノンが、また、α―アミノアルキルフェノン型として、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1が、またアシルフォスフィンオキサイド等が用いられる。これらの光増感剤は1種を単独で用いても2種以上を併用しても良い。
【0030】
このような光増感剤はベース樹脂100重量部に対して好ましくは0.1〜10重量部配合される。
【0031】
本発明に係る樹脂組成物には、接着促進剤としてシランカップリング剤を添加することが好ましい。シランカップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等の1種又は2種以上の混合物が用いられる。
【0032】
これらのシランカップリング剤の添加量は、ベース樹脂100重量部に対し通常0.01〜5重量部で充分である。
【0033】
また、本発明に係る樹脂組成物には、加工性や貼り合わせ性等の向上の目的で炭化水素樹脂を添加することができる。この場合、添加される炭化水素樹脂は天然樹脂系、合成樹脂系のいずれでもよい。天然樹脂系では、ロジン、ロジン誘導体、テルペン系樹脂が好適に用いられる。ロジンではガム系樹脂、トール油系樹脂、ウッド系樹脂を用いることができる。ロジン誘導体としてはロジンをそれぞれ水素化、不均一化、重合、エステル化、金属塩化したものを用いることができる。テルペン系樹脂ではα−ピネン、β−ピネン等のテルペン系樹脂の他、テルペンフェノール樹脂を用いることができる。また、その他の天然樹脂としてダンマル、コバル、シェラックを用いてもよい。一方、合成樹脂系では石油系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂が好適に用いられる。石油系樹脂では脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、水素化石油樹脂、純モノマー系石油樹脂、クマロンインデン樹脂を用いることができる。フェノール系樹脂ではアルキルフェノール樹脂、変性フェノール樹脂を用いることができる。キシレン系樹脂ではキシレン樹脂、変性キシレン樹脂を用いることができる。
【0034】
このような炭化水素樹脂の添加量は適宜選択されるが、ベース樹脂100重量部に対して1〜200重量部が好ましく、更に好ましくは5〜150重量部である。
【0035】
以上の添加剤のほか、本発明に係る樹脂組成物には、老化防止剤、紫外線吸収剤、染料、加工助剤等を本発明の目的に支障をきたさない範囲で用いてもよい。
【0036】
導電性粒子としては、電気的に良好な導体であれば良く、種々のものを使用することができる。例えば、銅、銀、ニッケル等の金属ないし合金粉末、このような金属又は合金で被覆された樹脂又はセラミック粉体等を使用することができる。また、その形状についても特に制限はなく、りん片状、樹枝状、粒状、ペレット状等の任意の形状をとることができる。
【0037】
なお、導電性粒子は、弾性率が1.0×107〜1.0×1010Paであるものが好ましい。即ち、プラスチックフィルムを基材とする液晶フィルムなどの被接着体の接続で異方性導電フィルムを使用する場合、導電性粒子として弾性率の高いものを用いると、被接着体にクラックが生じるなどの破壊や圧着後の粒子の弾性変形回復によるスプリングバックなどが発生し、安定した導通性能を得ることができない恐れがあるため、上記弾性率範囲の導電性粒子を用いることが推奨される。これにより、被接着体の破壊を防止し、圧着後の粒子の弾性変形回復によるスプリングバックの発生を抑制し、導電性粒子の接触面積を広くすることが可能になって、より安定した信頼性の高い導通性能を得ることができる。なお、弾性率が1.0×107Paより小さいと、粒子自身の損傷が生じ、導通特性が低下する場合があり、1.0×1010Paより大きいと、スプリングバックの発生が生じる恐れがある。このような導電性粒子としては、上記のような弾性率を有するプラスチック粒子の表面を前述の金属又は合金で被覆したものが好適に用いられる。
【0038】
本発明において、このような導電性粒子の配合量は、前記ベース樹脂に対して0.1〜15容量%であることが好ましく、また、この導電性粒子の平均粒径は0.1〜100μmであることが好ましい。このように、配合量及び粒径を規定することにより、隣接した回路間で導電性粒子が凝縮し、短絡し難くなり、良好な導電性を得ることができるようになる。
【0039】
本発明の異方性導電フィルムは、このような導電性粒子を接着剤中に分散させてなるものであるが、この接着剤としては、メルトインデックス(MFR)が1〜3000、特に1〜1000、とりわけ1〜800であることが好ましく、また、70℃における流動性が105Pa・s以下であることが好ましく、従って、このようなMFR及び流動性が得られるように前記ベース樹脂を適宜選択使用することが望ましい。
【0040】
本発明の異方性導電フィルムは、前記ベース樹脂を前述の添加剤、導電性粒子と所定の配合で均一に混合し、押出機、ロール等で混練した後、カレンダーロール、Tダイ押出、インフレーション等の成膜法により所定の形状に成膜することにより製造される。なお、成膜に際しては、ブロッキング防止、被着体との圧着を容易にするため等の目的で、エンボス加工を施してもよい。
【0041】
このようにして得られた異方性導電フィルムを被着体と貼り合わせるには、常法、例えば、熱プレスによる貼り合わせ法や、押出機、カレンダーによる直接ラミネート法、フィルムラミネーターによる加熱圧着法等の手法を用いることができる。
【0042】
また、各構成成分を部材(セパレーター)に何ら影響を及ぼさない溶媒に均一に溶解させ、部材(セパレーター)の表面に均一に塗布し、他の被着体(ポリイミド・銅箔等)を仮圧着した後、熱硬化又は光硬化させることにより接着することもできる。
【0043】
本発明の異方性導電フィルムにおける硬化条件としては、熱硬化の場合は、用いる有機過酸化物の種類に依存するが、通常70〜170℃、好ましくは70〜150℃で、通常10秒〜120分、好ましくは20秒〜60分である。
【0044】
また、光増感剤を用いる光硬化の場合は、光源として紫外〜可視領域に発光する多くのものが採用でき、例えば超高圧、高圧、低圧水銀灯、ケミカルランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、マーキュリーハロゲンランプ、カーボンアーク灯、白熱灯、レーザー光等が挙げられる。照射時間は、ランプの種類、光源の強さによって一概には決められないが、数十秒〜数十分程度である。
【0045】
また、硬化促進のために、予め積層体を40〜120℃に加温し、これに紫外線を照射しても良い。
【0046】
この場合、上記接着時の加圧で、加圧方向(フィルム厚さ方向)に導電性が生じるが、この加圧力は適宜選定され、通常3MPa、特に2〜3MPaの加圧力とすることが好ましい。
【0047】
なお、本発明の異方性導電フィルムは、フィルム厚さ方向に10Ω以下、特に5Ω以下の導電性を有し、面方向の抵抗は106Ω以上、特に109Ω以上であることが好ましい。
【0048】
本発明の異方性導電フィルムは、例えばFPCやTABと液晶パネルのガラス基板上のITO端子との接続など、種々の端子間の接続に使用されるなど従来の異方性導電フィルムと同様の用途に用いられ、硬化時に架橋構造が形成されると共に、高い接着性、特に金属との優れた密着性と、優れた耐久性、耐熱性が得られる。
【0049】
特に、本発明の異方性導電フィルムは、100〜130℃、2〜3MPaの低温、低圧条件での接続に有効である。
【0050】
【実施例】
以下、実施例、比較例及び参考例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0051】
実施例1〜5、比較例1
ポリビニルブチラール(電気化学工業社製「デンカPVB3000−1」)のトルエン25重量%溶液を調製し、ポリビニルブチラール100重量部に対して表1に示す成分を表1に示す量で混合し、これをバーコーターによりセパレーターであるポリテレフタル酸エチレン上に塗布し、幅5mm、厚さ15μmのフィルムを得た。
【0052】
前記のサンプルを、FPCと透明電極基板との接着用として、セパレーターを剥離してモニターで位置決めをし、熱硬化(実施例1〜3)の場合は130℃で20秒間、3MPaにおいて加熱圧着した。また、光硬化(実施例4,5)の場合は、加熱の代りにハロゲンランプで30秒間照射を行った。得られたサンプルについて、引張試験機による90°剥離試験(50mm/min)により接着力を測定すると共に、デジタルマルチメータにより厚み方向の導通抵抗と面方向の絶縁抵抗を測定し、結果を表1に示した。
【0053】
【表1】
【0054】
表1より本発明の異方性導電フィルムは著しく接着性と導通信頼性に優れることがわかる。
【0055】
参考例1
重合禁止剤の配合量を表2に示す量としたこと以外は実施例1と同様にしてサンプルを作製し、同様に基板の接着を行って接着力を測定し、結果を実施例1の結果(No.2)と共に表2に示した。
【0056】
【表2】
【0057】
表2より重合禁止剤の配合量が過度に多いと130℃、20秒の接着条件では反応が十分に進行せず、接着力が低下することがわかる。
【0058】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明によれば、接着剤の硬化反応速度を容易に制御することができ、低温、低圧の接着条件で高い導通信頼性と接着力を得ることができる異方性導電フィルムが提供される。
Claims (6)
- 導電性粒子が接着剤層中に分散された異方性導電フィルムにおいて、
該接着剤が、ベース樹脂と重合禁止剤とを含む熱硬化性又は光硬化性樹脂組成物に、導電性粒子を配合してなるものであり、
該ベース樹脂が、ポリビニルアルコールをアセタール化して得られるポリアセタール化樹脂、或いは、アクリル系モノマー及び/又はメタクリル系モノマーを重合して得られる(メタ)アクリル系樹脂であり、
該樹脂組成物がベース樹脂100重量部に対して有機過酸化物又は光増感剤を0.1〜10重量部含有する異方性導電フィルムであって、
該樹脂組成物中に重合禁止剤が100〜1000ppm含有されていることを特徴とする異方性導電フィルム。 - 請求項1において、該樹脂組成物がベース樹脂100重量部に対して、アクリロキシ基含有化合物、メタクリロキシ基含有化合物及びエポキシ基含有化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の反応性化合物を0.5〜80重量部含有することを特徴とする異方性導電フィルム。
- 請求項1又は2において、該樹脂組成物がベース樹脂100重量部に対してシランカップリング剤を0.01〜5重量部含有することを特徴とする異方性導電フィルム。
- 請求項1ないし3のいずれか1項において、該樹脂組成物がベース樹脂100重量部に対して炭化水素樹脂1〜200重量部含有することを特徴とする異方性導電フィルム。
- 請求項1ないし4のいずれか1項において、該導電性粒子の配合量がベース樹脂に対して0.1〜15容量%であることを特徴とする異方性導電フィルム。
- 請求項1ないし5のいずれか1項において、該導電性粒子の平均粒径が0.1〜100μmであることを特徴とする異方性導電フィルム。
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