JP4490597B2 - 配管フランジ接続診断装置およびその方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、原子力プラント、火力プラント等の発電プラント、または配管を多数使用する工業プラント等の配管の接続の健全性を診断する装置およびその診断方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、配管の締結部であるフランジは、パッキンやガスケットなどのシール材を介して締結される。締結部の適正さを維持・管理する手法として、フランジ締結ボルトのトルク管理、フランジ締結時のフランジ間隔の管理、使用時または使用時以上の圧力をかけた状態での漏洩検査、定期的な増し締めによる維持などが行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
プラント設備の信頼性や安全性を維持しつつ、経済性を向上する手段として、機器点検周期の延長、保守の合理化が進められている。機器点検周期の延長においては、従来の信頼性を損なわずに長時間にわたり機器の健全性が保たれること、すなわち運転中の機器診断が求められる。保守の合理化においては、保守・点検の作業を減らし、効率の良い保守・定検を計画できること、すなわち運転中の機器診断による、保守・点検作業の削減が求められる。
【0004】
また、経済性を向上するためには、プラントの主要機器である配管系の点検合理化と点検周期の延長が必要である。特に、配管のつなぎめであるフランジ廻りの分解点検はプラント維持のために重要な要素でかつ数も多く、取り付けた状態のままフランジ・シール部の劣化状態を検知・診断することは、プラントの経済性向上への効果が大きい。
【0005】
しかし、従来の技術は、主にフランジ締結作業時からプラント運転前の確認を対象とし、運転状態における劣化の兆候を検知・診断するには至っていない。 そこで、本発明は、配管のフランジ接続部の劣化状態を効率的に検知・診断し、分解点検作業の省力化・経済性向上を図ることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するものであって、請求項1の発明は、二つの配管のそれぞれの端部に取り付けられた二つのフランジ同士を対向させてそれらフランジの間にパッキンを挟んでそれらフランジ同士を締め付けてなる配管フランジ接続の健全性を診断する診断装置において、前記パッキンは環状のパッキンシール部と前記パッキンシール部の外側と内側に配置された環状のパッキン外輪及びパッキン内輪からなるとともに、前記パッキンシール部の外周であって前記パッキン外輪の内側に劣化要因検出手段を円周状に取り付け、この劣化要因検出手段から出る信号を前記フランジの外側で監視する手段と、を有すること、を特徴とする。
請求項1の発明によれば、フランジ部を分解せずに、パッキンのシール部に何らの影響を与えることなしに、パッキンのシール部の劣化検出・診断を行なうことができる。
【0007】
また請求項2の発明は、二つの配管のそれぞれの端部に取り付けられた二つのフランジ同士を対向させてそれらフランジの間にパッキンを挟んでそれらフランジ同士を締め付けてなる配管フランジ接続の健全性を診断する診断装置において、前記パッキンは環状のパッキンシール部と前記パッキンシール部の外側と内側に配置された環状のパッキン外輪及びパッキン内輪からなるとともに、前記環状のパッキン外輪及び/又はパッキン内輪と前記二つのフランジとの間に複数の劣化要因検出手段を取り付け、この劣化要因検出手段から出る信号を前記フランジの外側で監視する手段と、を有すること、を特徴とする。
【0008】
請求項2の発明によれば、フランジ部を分解せずに、パッキンのシール部に何らの影響を与えることなしに、パッキンのシール部の状態観測を行なうことができる。
【0009】
また請求項3の発明は、請求項1に記載の配管フランジ接続診断装置において、前記劣化要因検出手段はセンサであり、前記パッキンのシール部と前記二つのフランジとの間にかかる圧力、前記パッキンのシール部の水分および前記パッキンのシール部のひずみのうちの少なくとも一つを測定するものであること、を特徴とする。
請求項3の発明によれば、請求項1の作用・効果が得られるほかに、パッキンのシール部の劣化を具体的に把握できる。
【0010】
また請求項4の発明は、請求項1又は2に記載の配管フランジ接続診断装置において、前記劣化要因検出手段は試験片であり、前記パッキンのシール部と同質材料を有すること、を特徴とする。
請求項4の発明によれば、パッキンのシール部の劣化検出・診断を、さらに高い信頼性で確実に行なうことができる。
【0011】
また請求項5の発明は、請求項1乃至4いずれかに記載の配管フランジ接続診断装置を用いた配管フランジ接続診断方法である。
【0012】
請求項5の発明によれば、フランジ部を分解せずに、パッキンのシール部に何らの影響を与えることなしに、パッキンのシール部の劣化検出・診断を行なうことができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。ここで、各実施の形態に共通あるいは類似する部分には共通の符号を付すものとし、重複する説明は適宜省略する。
【0017】
[第1の実施の形態]
図1に、本発明に係る配管フランジ接続診断装置の第1の実施の形態を示す。図1で、開口部を対向する二つの配管10には、それぞれにフランジ1が溶接されている。二つのフランジ1の間に環状のパッキン30が挟まれ、二つのフランジを互いに複数のボルト等(図示せず)で締め付けることによって二つの配管10が接続されるようになっている。
【0018】
パッキンの形状にはいくつかの種類があり、図1に示すパッキン30は、弾性材料からなる環状のパッキンシール部4と、パッキンシール部4の外側と内側にそれぞれ張り出した環状のパッキン外輪2とパッキン内輪3を有する。パッキン外輪2とパッキン内輪3はパッキンシール部4の締め過ぎを防止するためのもので、パッキンシール部4よりも薄くできている。
【0019】
なお、パッキン外輪2やパッキン内輪3を持たず、パッキンシール部4だけのパッキンもあるが、この場合、パッキンシール部4をパッキンと呼ぶ。パッキンのことをガスケットと呼ぶこともあるが、ここでは総称してパッキンと呼ぶことにする。
【0020】
図1の配管フランジ接続診断装置は、パッキンシール部4の内部、好ましくは最外周部にシール内センサ5が取り付けられた構造になっており、センサ5の出力であるセンサ出力信号6と、センサ出力信号6をフランジ1の外側で計測する状態計測装置7により構成される。この図1の例では、シール内センサ5は、シール部4の厚さ全体にわたっていて、両方のフランジ1に接している。
【0021】
シール内センサ5は、パッキンシール部4の劣化要因を検出するもので、例えば、パッキンシール部4の面圧、側面圧を検出する圧力センサ、応力やひずみを検出するひずみセンサ、パッキンシール部4が劣化するときに発生する水分や有機物や臭いを検出する水分センサ、有機物センサ、臭いセンサ、パッキンシール部4の温度履歴を検出する温度センサなどがありうる。
【0022】
シール内センサ5で検出した劣化パラメータをセンサ出力信号6として外部に出力し、状態計測装置7で計測する。これらの計測結果によりフランジシール部の劣化状態を診断する。
【0023】
シール内センサ5を、シールの役割をするパッキンシール部4の最外周に用いることにより、シール部の信頼性・安全性を損なうことなく各種劣化要因の検出が可能になる。また、パッキンシール部4の最外周は、シール部として作用しているパッキンと同じ温度・圧力などの履歴を受けており、パッキンシール部4の状態を観測することになり、パッキンシール部の劣化状態を推定することができる。
【0024】
これにより、従来は分解しないと診断できないとされていたシール部の劣化診断が可能になり、劣化の予測により定検周期の延長および保守の合理化につながる。
図2は、図1(a)の変形例を示すもので、シール内センサ5は、シール部4の厚さ全体にわたらず、フランジ1の対向面に接する薄い部分だけを占めている。
【0025】
[第2の実施の形態]
図3に、本発明にかかる配管フランジ接続診断装置の第2の実施の形態を示す。図3に示す配管フランジ接続診断装置は、フランジ1の締結時にシール部として作用するパッキンシール部4と、パッキンシール部4の外側に設置された一つまたは複数のシール外側センサ8またはパッキンシール部4の内側に設置された一つまたは複数のシール内側センサ9を有する。各シール外側センサ8は、一方のフランジ1とパッキン外輪2に挟まれており、各シール内側センサ9は、一方のフランジ1とパッキン内輪3に挟まれている。
【0026】
シール外側センサ8は、パッキンシール部4の劣化要因を検出するもので、例えば、パッキンシール部4が劣化するときに発生する水分や有機物や臭いを検出する水分センサ、有機物センサ、臭いセンサ、パッキンシール部4の温度履歴を検出する温度センサなどである。シール外側センサ8で検出した劣化パラメータをセンサ出力信号6として外部に出力し、状態計測装置7で計測する。これらの計測結果によりフランジシール部の劣化状態を診断する。
【0027】
シール外側センサ8を、シールの役割をするパッキンシール部4の外側に用いることにより、シール部の信頼性・安全性を全く損なうことなく各種劣化要因の検出が可能になる。また、パッキンシール部4の外側は、シール部として作用しているパッキンと同じ温度・圧力などの履歴を受けており、パッキンシール部4の状態を間接的に観測することになり、パッキンシール部の劣化状態を推定することができる。
【0028】
フランジ1に超音波送受信器11を設置する。特に液体を流体として配管10に流す場合は、シール内側センサ9では超音波の透過度が高くなり、形状変化やセンサとフランジ面との接触状態を観測することができる。
【0029】
シール内側センサ9を、シールの役割をするパッキンシール部4の内側に用いることにより、シール部の信頼性・安全性を全く損なうことなく取り付け状態の観測が可能になる。また、パッキンシール部4の内側は、シール部として作用しているパッキンと同じ流体・温度・圧力などの履歴を受けており、パッキンシール部4の状態を間接的に観測することになり、パッキンシール部の劣化状態を推定することができる。
【0030】
また、シール外側センサ8とシール材料とを組み合わせて、第1の実施の形態に加えてさらに、応力、ひずみ、電気抵抗、誘電率などを測定することにより、パッキンシール部4に用いられているシール材料を直接観測することと同様の効果を得ることができる。
【0031】
図4に、図3(a)の変形例を示す。この場合は、シール内側センサ9およびシール外側センサ8が、それぞれ、パッキン内輪3、パッキン外輪2に設けられた貫通孔を貫通して配置され、それぞれが、両方のフランジ1に接している。
【0032】
[第3の実施の形態]
図5に、本発明に係る配管フランジ接続診断装置の第3の実施の形態を示す。図5に示す配管フランジ接続診断装置は、フランジ1の締結時にシール部として作用するパッキンシール部4と、パッキンシール部4の外側に設置された一つまたは複数のシール外側試験片12、または、パッキンシール部4の内側に設置された一つまたは複数のシール内側試験片13を有する。
【0033】
シール外側試験片12またはシール内側試験片13は、パッキンシール部4と同じ材料の試験片であれば、取り出すことにより種々の分析方法を用いて観測することにより、劣化状態を診断することができる。ただし、シール外側試験片12は、運転中に自由に取り出すことができるが、シール内側試験片13は、フランジ1の分解点検のときに限られる。
【0034】
シール外側試験片12を、シールの役割をするパッキンシール部4の外側に用いることにより、シール部の信頼性・安全性を全く損なうことなく各種劣化要因の検出が可能になる。また、パッキンシール部4の外側は、シール部として作用しているパッキンと同じ温度・圧力などの履歴を受けており、パッキンシール部4の状態を間接的に観測することになり、パッキンシール部の劣化状態を推定することができる。
【0035】
シール内側試験片13を、シールの役割をするパッキンシール部4の内側に用いることにより、シール部の信頼性・安全性を全く損なうことなく各種劣化要因履歴を試験片に記録することが可能になる。また、パッキンシール部4の内側は、シール部として作用しているパッキンと同じ流体・温度・圧力などの履歴を受けており、パッキンシール部4の状態を間接的に観測することになり、パッキンシール部の劣化状態を推定することができる。シール内側試験片13は、運転中に自由に取り出すことはできないが、分解点検間の履歴を蓄積しており、取り出して劣化要因を分析することにより、パッキンの信頼性につなげることができる。また、パッキンシール部4の信頼性を低下させない範囲で、シール内側試験片13として適当な材質を選択することにより、広範囲の材質劣化パラメータの取得も可能となる。
【0036】
[第4の実施の形態]
この発明の第4の実施の形態では、図1〜図5に示す、一部またはすべてのシール内センサ5、シール外側センサ8、シール外側試験片12が、配管10内を流れる流体の漏洩により、化学反応等により組成が変化し、点検員が認識し得る情報を発生する材料により構成する。
【0037】
たとえば、配管10内を流れる水分がパッキンシール部4から微少漏洩した場合、その水分を吸収して煙または臭いまたは音などを発生する材料により構成する。これにより、点検員は微少漏洩を容易に見つけることができる。
【0038】
従来、配管からの微少漏洩は、漏洩がある程度貯まった部位を観測するため、検出に時間を要し、検出できても漏洩規模および部位を特定するのが困難なため対策が遅れるという問題があった。
【0039】
本発明により、パッキンシール部4の微少漏洩を早期に検出可能になり、微少漏洩であることや部位によってはプラントの運転継続も可能になり、効率的な保守計画も立案でき、定検周期の延長および保守の合理化につながる。
【0040】
第4の実施の形態の変形例として、たとえば、配管10内を流れる水分がパッキンシール部4から微少漏洩した場合、その水分を吸収して変色または亀裂などの表面状態が変化する材料により構成してもよい。これにより、点検員は微少漏洩を容易に見つけることができる。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、シール部の劣化診断が容易になる。したがって、定検周期の延長および保守に合理化につながる。また、本発明では、シール部として作用するパッキンの信頼性・安全性を損なうことなく劣化のセンシングが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る配管フランジ接続診断装置の第1の実施の形態を示すもので、(a)は配管軸に沿う断面図、(b)は(a)のB−B線矢視断面図。
【図2】図1(a)の変形例を示す断面図。
【図3】本発明に係る配管フランジ接続診断装置の第2の実施の形態を示すもので、(a)は配管軸に沿う断面図であって(b)のA−A線矢視断面図、(b)は(a)のB−B線矢視断面図。
【図4】図3(a)の変形例を示す断面図。
【図5】本発明に係る配管フランジ接続診断装置の第3の実施の形態を示すもので、図3(b)に相当する配管軸方向断面図。
【符号の説明】
1…フランジ、2…パッキン外輪、3…パッキン内輪、4…シール部、5…最外周センサ、6…センサ出力信号、7…状態計測装置、8…シール外側センサ、9…シール内側センサ、10…配管、11…超音波送受信器、12…シール外側試験片、13…シール内側試験片、30…パッキン。
Claims (5)
- 二つの配管のそれぞれの端部に取り付けられた二つのフランジ同士を対向させてそれらフランジの間にパッキンを挟んでそれらフランジ同士を締め付けてなる配管フランジ接続の健全性を診断する診断装置において、
前記パッキンは環状のパッキンシール部と前記パッキンシール部の外側と内側に配置された環状のパッキン外輪及びパッキン内輪からなるとともに、前記パッキンシール部の外周であって前記パッキン外輪の内側に劣化要因検出手段を円周状に取り付け、この劣化要因検出手段から出る信号を前記フランジの外側で監視する手段と、を有すること、を特徴とする配管フランジ接続診断装置。 - 二つの配管のそれぞれの端部に取り付けられた二つのフランジ同士を対向させてそれらフランジの間にパッキンを挟んでそれらフランジ同士を締め付けてなる配管フランジ接続の健全性を診断する診断装置において、
前記パッキンは環状のパッキンシール部と前記パッキンシール部の外側と内側に配置された環状のパッキン外輪及びパッキン内輪からなるとともに、前記環状のパッキン外輪及び/又はパッキン内輪と前記二つのフランジとの間に複数の劣化要因検出手段を取り付け、この劣化要因検出手段から出る信号を前記フランジの外側で監視する手段と、を有すること、を特徴とする配管フランジ接続診断装置。 - 前記劣化要因検出手段はセンサであり、前記パッキンのシール部と前記二つのフランジとの間にかかる圧力、前記パッキンのシール部の水分および前記パッキンのシール部のひずみのうちの少なくとも一つを測定するものであること、を特徴とする請求項1又は2に記載の配管フランジ接続診断装置。
- 前記劣化要因検出手段は試験片であり、前記パッキンのシール部と同質材料を有すること、を特徴とする請求項2に記載の配管フランジ接続診断装置。
- 請求項1乃至4いずれかに記載の配管フランジ接続診断装置を用いた配管フランジ接続診断方法。
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