JP4488392B2 - ポリウレタンエラストマー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は成形品表面の傷付き性(耐スクラッチ性)に優れ、また柔軟性、耐熱性、低温特性、耐候性、強度、成形加工性に優れた各種成形物の素材として利用できる熱可塑性エラストマー組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来は加硫ゴムが主流であった自動車部品、家電部品、医療部品、雑貨用途に、生産性の優れる熱可塑性エラストマーが多く利用されるようになってきている。これらの例としてはエチレン−プロピレン共重合体とポリプロピレンからなるオレフィン系エラストマー、ポリウレタンエラストマー、軟質ポリ塩化ビニル等が挙げられる。
【0003】
しかしながらこれらの成形材料は、耐スクラッチ性、柔軟性、加工性、経済性、リサイクル性の面でそれぞれ欠点を有しているのが現状である。すなわちオレフィン系エラストマーは比較的安価で耐候性、耐熱性に優れるものの柔軟性、耐スクラッチ性に劣る。また、ポリウレタンエラストマーは耐スクラッチ性に優れるものの、比重が大きくかつ高価であるという欠点を有している。また軟質塩化ビニルは、比較的安価であり耐候性、耐スクラッチ性に優れるものの、低温での柔軟性、リサイクル性に劣るという欠点を有している。
【0004】
また、ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加誘導体(以下、水添ブロック共重合体と略記する)を用いたエラストマー組成物についてもいくつかの提案がなされている。例えば特開昭50−14742号、特開昭52−65551号、特開昭58−206644号各公報には水添ブロック共重合体にゴム用軟化剤およびオレフィン系樹脂を配合した組成物が開示されている。しかしこれらの組成物もオレフィン系エラストマーと同様、耐スクラッチ性の劣るものであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来の技術課題を背景になされたもので、柔軟性、耐候性、耐熱性、低温特性、強度、成形加工性に優れた熱可塑性エラストマーおよび、該組成物よりなる表面の塗装の不要な耐スクラッチ性に優れるエラストマー部材を安価に提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明は、
次の(A)および(B)成分からなる熱可塑性エラストマー組成物であって、
(A)ポリウレタンエラストマー:100重量部
(B)アクリレート含量5重量%以上、30重量%以下のエチレン−アクリレート共重合体:10〜900重量部
前記(A)ポリウレタンエラストマーは次の(a)、(b)及び必要に応じて(c)成分を共重合してなるポリウレタンエラストマーであることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物。
(a)下記式(2)、及び(3)の繰り返し単位からなり、末端基が水酸基である脂肪族ポリカーボネートジオールを含み、上記(2)と(3)の割合が(2)/(3)=10/90〜90/10(モル比)であることを特徴とする高分子ポリオール(但し、式中nは4および/または5の整数)
【化1】
【化2】
(b)ポリイソシアネート
(c)ポリイソシアネートと反応しうる活性水素を2個有する鎖延長剤
【0007】
以下、本発明に関して詳細に説明する。
本発明の(A)成分であるポリウレタンエラストマー(以下TPUと略記)としては、使用する直鎖ポリオールに対応して分類され、ポリエステル系(カプロラクトン系、アジペート系)、ポリカーネート系、ポリエーテル系、のいずれも使用可能である。これらの内で、機械的強度が高く、耐熱老化性及び耐加水分解性のバランスのとれているポリカーボネート系が望ましい。
【0008】
ポリカーボネート系ポリウレタンエラストマーとしては、次の(a)、(b)及び必要に応じて(c)成分を共重合してなる、ショアD硬さ20〜70のポリウレタンエラストマーが好ましい。
【0009】
(a)下記式(1)の繰り返し単位からなり、末端基が水酸基であるポリカーボネートジオール(但し、式中Rは炭素数2〜10の脂肪族または脂環族炭化水素基を表す)。
【0010】
【化4】
【0011】
(b)ポリイソシアネート
(c)ポリイソシアネートと反応しうる活性水素を2個有する鎖延長剤
【0012】
本発明のポリウレタンエラストマーの(a)成分に使用されるポリカーボネートジオールは、Schell著、Polmer Review 第9巻、第9〜20ページ(1964年)に記載された種々の方法により脂肪族および/または脂環式ジオールから合成される。好ましいジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0013】
耐加水分解性(耐汗性)、耐候性、ソフト感のバランスに優れるステアリングホイールを得るためには、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールが好ましい。
【0014】
特に好適なポリカーボネートジオールとしては、1,4−ブタンジオールおよび/または1,5−ペンタンジオールと、1,6−ヘキサンジオールから合成される共重合ポリカーボネートジオールが、得られる熱可塑性エラストマー組成物の低温特性、反発弾性に優れるので好ましい。ポリマー中の繰り返し単位である、1,4−ブタンジオールおよび/または1,5−ペンタンジオールと、1,6−ヘキサンジオールの割合は、10/90〜90/10、好ましくは、20/80〜80/20、さらに好ましくは30/70〜70/30である。
【0015】
本発明に用いられるポリカーボネートジオールの平均分子量の範囲は、通常数平均分子量で500〜5000であり、好ましくは、1000〜3000、さらに好ましくは1500〜2500のものが使用され、そのポリマー末端は、実質的にすべてヒドロキシル基であることが望ましい。
【0016】
本発明においては、先に示したジオールの他に、1分子に3個以上のヒドロキシル基を持つ化合物、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、等の少量を用いる事により多官能化したポリカーボネートを用いたポリウレタンも含まれる。
【0017】
次に、本発明のポリウレタンエラストマーの(b)成分に使用されるポリイソシアネートとしては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、及びその混合物(TDI)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート(NDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、粗製TDI、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、粗製MDI等の公知の芳香族ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート(XDI)、フェニレンジイソシアネート等の公知の芳香脂環族ジイソシアネート;4,4’−メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート(水添MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキサンジイソシアネート(水添XDI)等の公知の脂肪族ジイソシアネート、及びこれらのイソシアネート類のイソシアヌレート化変性品、カルボジイミド化変性品、ビウレット化変性品等である。
【0018】
又、本発明のポリウレタンエラストマーの共重合成分(c)として必要により用いられる適当な鎖延長剤としては、ポリウレタン業界における、常用の鎖延長剤が包含される。岩田敬治監修最近ポリウレタン応用技術CMC1985年第25〜27ページ記載の、公知の水、低分子ポリオール、ポリアミン等が含まれる。本発明に用いられる脂肪族ポリカーボネートと共に、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリウレタンの用途に応じて、公知のポリオールを併用してもよい。公知のポリオールとして、今井嘉夫、ポリウレタンフオーム高分子刊行会1987年第12〜23ページに記載の公知のポリエステル、ポリエーテルカーボネート等のポリオールがある。
【0019】
具体的には、低分子ポリオールとしては通常分子量が300以下のジオールが用いられる。例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール等の脂肪族ジオールが挙げられる。
【0020】
また、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール等の脂環式ジオール、キシリレングリコール、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4(2−ヒドロキシ)フェニル]スルホン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン等、が挙げられる。好適には、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールが用いられる。
【0021】
本発明のポリウレタンエラストマーを製造する方法としては、ポリウレタン業界で公知のウレタン化反応の技術が用いられる。例えば、該ポリオールと有機ポリイソシアネートを常温から200℃で反応させることにより、NCO末端のポリウレタンプレポリマーが生成する。
【0022】
又、該ポリオールとポリイソシアネート及び必要に応じて鎖延長剤を用いて、熱可塑性のポリウレタンエラストマーを製造する事が出来る。これらの製造に於いては三級アミンや錫、チタンなどの有機金属塩等に代表される公知の重合触媒「例えば、吉田敬治著(ポリウレタン樹脂)日本工業新聞社刊第23−32頁(1969年)に記載」を用いる事も可能である。又、これらの反応を溶媒を用いておこなってもよく、好ましい溶剤として、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、メチルイソブチルケトン、ジオキサン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、エチルセルソルブ等がある。
【0023】
又、本発明のポリウレタンエラストマー製造に当り、イソシアネート基に反応する活性水素を一つだけ含有する化合物、例えばエチルアルコール、プロピルアルコール等の一価アルコール、及びジエチルアミン、ジnプロピルアミン等の二級アミン等を末端停止剤として使用することができる。
【0024】
本発明の、ポリカーボネートジオールを使用したポリウレタンエラストマーは、他のポリウレタンエラストマーに比べて、柔軟性、弾性回復に優れるばかりではなく、加水分解性が極めて良好であるため、常時手に触れるエラストマー部材に使用した場合、耐汗性が優れるのため好適である。
【0025】
次に、本発明の(B)成分として用いられるのエチレン−アクリレート共重合体、又はエチレン−ビニルエステル共重合体は、得られるエラストマー組成物の柔軟性を改良する効果を有する。また、これらの共重合体は前記ポリエステル系エラストマーと、高価な相容化剤を必要としないで相容化することができるため、安価なエラストマー組成物を得ることができる。
【0026】
本発明に用いるエチレン−ビニルエステル共重合としては、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−2−エチルヘキシルアクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体等が挙げられる。このなかでエチレン−エチルアクリレート共重合体が、得られるエラストマー組成物の柔軟性、強度に優れるので特に好ましい。
【0027】
これらエチレン−アクリレート共重合体のアクリレート含有量は5重量%以上、30重量%以下である。アクリレート含有量が5重量%未満では、得られるエラストマー組成物の相容性が不十分となり、結果として成形外観、機械的強度に劣るため好ましくない。アクリレート含有量が30重量%を越えると、得られるエラストマー組成物の機械的強度、耐スクラッチ性が低下し好ましくない。
【0028】
本発明に用いるエチレン−ビニルエステル共重合としては、エチレン−蟻酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン−酪酸ビニル共重合体、エチレン−ステアリン酸ビニル共重合体等が挙げられる。このなかでエチレン−酢酸ビニル共重合体が、得られるエラストマー組成物の柔軟性、強度に優れるので特に好ましい。
【0029】
これらエチレン−ビニルエステル共重合体のビニルエステル含有量は5重量%以上、30重量%以下である。ビニルエステル含有量が5重量%未満では、得られるエラストマー組成物の相容性が不十分となり、結果として成形外観、機械的強度に劣るため好ましくない。ビニルエステル含有量が30重量%を越えると、得られるエラストマー組成物の機械的強度、耐スクラッチ性が低下し好ましくない。
【0030】
また、該エチレン−アクリレート共重合体、又はエチレン−ビニルエステル共重合体のメルトインデックス(JIS K6720、190℃、2.16kgf荷重に従って測定した値。以下MIと略記する)は0.1〜100g/10分、好ましくは1〜50g/10分のものが用いられる。MIが0.1g/10分未満ではエラストマー組成物の成形性が悪化するので好ましくない。またMIが100g/10分を超えるとエラストマー組成物の強度、耐熱性が十分でなく好ましくない。
【0031】
これらエチレン−アクリレート共重合体、又はエチレン−ビニルエステル共重合体の重合方法は特に限定されないが、例えば、該エチレン−アクリレート共重合体、又はエチレン−ビニルエステル共重合体は、エチレンおよびアクリレートまたはビニルエステルを、チーグラー型触媒系の存在下で共重合することによって合成することができる。チーグラー型触媒系は、一つは有機金属活性化成分(周期律表のI〜III金属の水酸化物またはアルキル化合物)および他方はハロゲン化された遷移金属化合物より成り、場合によってはマグネシウムまたはマンガン等の無機化合物を含有してもよい。好適な組合わせとしては、アルミニウムの水酸化物及び/又はアルキル化合物とチタンのハロゲン化合物等があげられる。
【0032】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物中の成分(B)のエチレン−アクリレート共重合体、又はエチレン−ビニルエステル共重合体の配合量は、ポリウレタンエラストマー成分(A)100重量部に対し、10〜900重量部、好ましくは20〜500重量部、さらに好ましくは50〜200重量部である。成分(B)のエチレン−アクリレート共重合体、又はエチレン−ビニルエステル共重合体の配合量が900重量部を越えると耐スクラッチ性、耐熱性が低下し、また低温特性が悪化するので好ましくない。また、成分(B)のエチレン−アクリレート共重合体、又はエチレン−ビニルエステル共重合体の配合量が10重量部未満では、熱可塑性エラストマー組成物の成形外観が悪化し(フローマークが発生する)、また高比重となるので好ましくない。
【0033】
また、本発明のエラストマー組成物には、必要に応じてポリオレフィン系樹脂を添加することができる。具体的に添加できるポリオレフィン系樹脂としてはポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等があげられる。ポリエチレン樹脂としては低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンとの共重合体等があげられる。エチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンとの共重合体の場合、共重合体中のα−オレフィンとしてはプロピレン、ブテン−1、イソブテン、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1等があげられる。また、α−オレフィンの割合は30重量%以下のものが用いられる。
【0034】
ポリプロピレン樹脂としては、プロピレン単独重合体またはプロピレンと炭素数2〜8のα−オレフィンとの共重合体である(以下プロピレン系樹脂と略記する)。プロピレンと炭素数2〜8のα−オレフィンとの共重合体の場合、共重合体中のα−オレフィンとしてはエチレン、ブテン−1、イソブテン、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1等があげられる。また、α−オレフィンの割合は30重量%以下のものが用いられる。これらのプロピレン系樹脂は、従来公知の方法で合成することができ、例えばチーグラー・ナッタ型触媒を用いて合成されるプロピレン単独重合体、またはランダムあるいはブロックのプロピレンとα−オレフィンとの共重合体があげられる。
【0035】
本発明に用いられる添加剤としては少なくとも酸化防止剤、光安定剤及び熱安定剤が用いられることが望ましい。これらの酸化防止剤としては燐酸、亜燐酸、の脂肪族、芳香族又はアルキル基置換芳香族エステルや次亜燐酸誘導体、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、ジフェニルホスホン酸、ポリホスホネート、ジアルキルペンタエリスリトールジホスファイト、ジアルキルビスフェノールAジホスファイト等のリン化合物;フェノール系誘導体特にヒンダードフェノール化合物、チオエーテル系、ジチオ酸塩系、メルカプトベンズイミダゾール系、チオカルバニリド系、チオジプロピオン酸エステル等のイオウを含む化合物;スズマレート、ジブチルスズモノオキシド等のスズ系化合物を用いることができる。
【0036】
これらはこれらは単独で用いても2種以上組み合わせて用いても構わない。これら安定剤の添加量はポリエーテルエステルブロック共重合体100重量部に対し、0.01〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部、さらに好ましくは0.2〜2重量部が望ましい。通常、酸化防止剤は一次、二次、三次老化防止剤に分けることが出来る。特に一次老化防止剤としてのヒンダードフェノール化合物としてはIrganox1010(商品名:チバガイギー社製)、Irganox1520(商品名:チバガイギー社製)等が好ましい。二次老化防止剤としての燐系化合物はPEP−36、PEP−24G、HP−10(いずれも商品名:旭電化(株)製)Irgafos168(商品名:チバガイギー社製)が好ましい。さらに三次老化防止剤としての硫黄化合物としてはジラウリルチオプロピオネート(DLTP)、ジステアリルチオプロピオネート(DSTP)等のチオエーテル化合物が好ましい。
【0037】
また紫外線吸収剤・光安定剤としてはベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系化合物等が挙げられる。光安定剤としてはヒンダードアミン化合物のようなラジカル捕捉型光安定剤が好適に用いられる。
【0038】
さらに本発明の組成物は必要に応じて可塑剤の添加を行なっても良い。かかる可塑剤の例としてジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジエチルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジイソノニルフタレート等のフタル酸エステル類:トリクレジルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ−2−エチルヘキシルホスフェート、トリメチルヘキシルホスフェート、トリス−クロロエチルホスフェート、トリス−ジクロロプロピルホスフェート等の燐酸エステル類:トリメリット酸オクチルエステル、トリメリット酸イソデシルエステル、トリメリット酸エステル類、ジペンタエリスリトールエステル類、ジオクチルアジペート、ジメチルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート、ジオクチルアゼレート、ジオクチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、メチルアセチルリシノケート等の脂肪酸エステル類:ピロメリット酸オクチルエステル等のピロメリット酸エステル:エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化脂肪酸アルキルエステル等のエポキシ系可塑剤:アジピン酸エーテルエステル、ポリエーテル等のポリエーテル系可塑剤:液状NBR、液状アクリルゴム、液状ポリブタジエン等の液状ゴム:非芳香族系パラフィンオイル等を挙げることが出来る。
【0039】
これら可塑剤は単独、あるいは2種以上組み合わせて使用することが出来る。可塑剤の添加量は要求される硬度、物性に応じて適宜選択されるが、組成物100重量部当り0〜50重量部が好ましい。
【0040】
また、本エラストマー組成物には無機充填剤、滑剤、着色剤、シリコンオイル、発泡剤、難燃剤等を添加しても良い。無機充填剤としては、例えば炭酸カルシウム、タルク、水酸化マグネシウム、マイカ、硫酸バリウム、けい酸(ホワイトカーボン)、酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。
【0041】
本発明の熱可塑性エラストマーのショアD硬さは好ましくは20〜70、さらに好ましくは25〜50の範囲である。ショアD硬さが20未満では、耐熱性、耐スクラッチ性が劣るので好ましくない。また、ショアD硬さが70を越えると、得られる低温性能、ソフト感が不足するので好ましくない。
【0042】
また、本発明の熱可塑性エラストマーのメルトフローレート(230℃、2.16kg加重の値、以下MFRと略記)は0.5〜100g/10分、好ましくは5〜50g/10分、さらに好ましくは10〜30g/10分である。MFRが0.5g/10分未満では、射出成形性に劣り、ショートショットとなってしまうので好ましくない。また、MFRが100g/10分を越えると、機械物性(破断強度、破断伸び等)や摩耗性、等に劣るばかりではなく、低温性能も悪化するので好ましくない。
【0043】
一般に、本発明のエラストマー組成物を製造する方法としては、重合体成分をブレンドする為に従来技術で知られているいかなる方法を使用しても良い。最も均質なブレンド物を得るためには、通常使われているミキシングロール、ニーダー、バンバリーミキサーおよび押出機のような各種の混練機を使用して溶融混練する方法が望ましい。溶融混練する前に、これらの配合物をヘンシェルミキサー、タンブラー、リボンブレンダーのような混合機を用いて予めドライブレンドし、該混合物を溶融混練することにより均質なエラストマー組成物が得られる。
【0044】
本発明のエラストマー組成物の成形加工法としては、射出成形、押出成形、圧縮成形等が適応可能であるが、特に射出成形時の成形性に優れるという特長を有する。射出成形を行う場合は、通常のプラスチックの成形機を用いることができ、短時間で射出成形品を得ることができる。また、本エラストマー組成物は熱安定性に優れるため、スプルー部およびランナー部のリサイクルが可能であるという長所を有する。
【0045】
【発明の実施の形態】
実施例および比較例において、各種の評価方法に用いられた試験法は以下の通りである。
【0046】
(1)ショアD硬さ[−]:
ASTM D2240、Dタイプ、23℃で測定。
(2)メルトフローレイト(MFR)[g/10分]:
ASTM D1238、230℃、2.16kg荷重にて測定した。
(3)引張強さ[kgf/cm2]:
JIS K6251、3号ダンベル、試料は2mm厚のプレスシートを用いた。
(4)伸び[%]:
JIS K6251、3号ダンベル、試料は2mm厚のプレスシートを用いた。
(5)反撥弾性[%]:
JIS K6255、リュプケ振子式、23℃
(6)脆化温度[℃]:
JIS K6261、ゲーマンねじり試験、t100温度
【0047】
(7)耐傷付き性、光沢保持率[%]:
射出成形にて平滑な表面の平板を成形した。平板を水平に置き、荷重40g/cm2を加えた綿布を置き、200回往復させた。その摩擦面の光沢度をJISK7105の方法で測定し(E1)、摩擦前の光沢度(E0)からの保持率;(E1/E0)×100(%)を求めた。
【0048】
(8)シボ落ち試験:
射出成形にて表面シボ(梨地、エッジング深さ約20ミクロン)の平板を成形した。平板を100℃のオーブン中に168時間放置した。オーブンから取り出した後、目視にて表面状態を観察し、変化の無いものを○、若干光沢の出たものを△、光沢の出たものを×とした。
【0049】
(9)成形加工性:
射出成形機にて、長さ150mm、幅100mm、厚み2mmの平板を下記の条件にて成形した(ゲート;10×2mm断面のサイドゲート)。その成形体を目視にてフローマーク、艶等の外観を観察し、良好なものを○、やや不良なものを△、不良なものを×とした。シリンダー温度C1:200℃、C2:210℃、C3:210℃、ノズル温度:200℃、射出速度:低速、金型温度:40℃
【0050】
(10)剥離性の評価
上記射出成形条件にて射出速度を高速とした以外は同様に平板を成形した。目視にてゲート部に剥離現象が発生したものを不良、剥離現象が認められなかった場合を良好とした。
【0051】
(11)耐汗性試験
射出試験片を人工汗液(人工汗液組成;NaCl7g、メチルアルコール500cc、尿素1g、乳酸4g、蒸留水500cc)に常温にて30日間浸漬した。試験片を取り出し、磨耗試験を行った後の外観(JIS K7204磨耗輪による試験後の外観)を3等級で評価した。
3;磨耗輪による傷が全く認められない
2;磨耗輪による傷がわずかに認められる
1;磨耗輪による傷が明らかに認められる
【0052】
また、実施例および比較例で使用された各成分は以下のとおりである。
成分(A);ポリウレタンエラストマー
脂肪族コポリカーボネートジオールの合成方法を下記に参考例として示す。
【0053】
参考例1
デイクソンパッキン3φを充填した直径10mm、長さ300mmの蒸留塔及び温度計、攪拌機付きの3リットルフラスコに、エチレンカーボネート(EC)970g(11モル)、1,6−ヘキサンジオール(HDL)650g(5.5モル)、1,5−ペンタンンジオール(PDL)570g(5.5モル)を加え20torrの 減圧下に加熱攪拌し、内温が150℃になるようにコントロールした。蒸留塔の塔頂より共沸組成のECとエチレングリコール(以下EGと略す)を溜出させながら20時間反応を行った。次に蒸留塔を取り外して、減圧度を7torrにして、未反応のECとジオールを回収した。未反応物の溜出の終了後に内温を190℃にし、その温度を保ったままジオールを溜出させることにより自己縮合反応を行い分子量を上昇させた。4時間後、GPC分析により分子量2000のポリマーを得た。収量は740gであり水酸基価は56mgKOH/gであった。このポリマーをpc−aと略す。
【0054】
参考例2、3
ジオールとして1,4−ブタンジオール(BDL)、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールを用い、表1に示した各量とした以外は、参考例1と同様な方法で脂肪族コポリカーボネートジオール(pc−b、pc−c)を得た。各々の分子量を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
実施例および比較例にて使用した原材料、および評価方法は以下のとおりである。
A.ポリウレタンエラストマー(以下TPUと略記)成分
成分(A)−1(TPU−1):
参考例1で得たpc−a200g、ヘキサメチレンジイソシアネート67.2gを攪拌装置、温度計、冷却管の付いた反応器に仕込み、100℃で4時間反応し末端NCOのプレポリマーを得た。該プレポリマーに鎖延長剤の1,4−ブタンジオール30g、触媒としてジブチルスズジラウリレート0.006gを加えてニーダー内蔵のラボ用万能押出機((株)笠松化工研究所製LABO用万能押出機KR−35型)で140℃で60分反応後、押出し機にてペレットとした。ウレタンエラストマーのショアD硬さは39、MFRは24であった。
【0057】
成分(A)−2(TPU−2):
ポリカーボネートジオールとしてpc−bを用いた以外は、TPU−1の合成方法と同様に重合しウレタンエラストマーを得た。得られたウレタンエラストマーのショアD硬さは40、MFRは20であった。
【0058】
成分(A)−3(TPU−3):
ポリカーボネートジオールとしてpc−cを用いた以外は、TPU−1の合成方法と同様に重合しウレタンエラストマーを得た。得られたウレタンエラストマーのショアD硬さは43、MFRは23であった。
【0059】
成分(A)−4(TPU−4):
ポリカーボネートジオールの替わりに、ポリカプロラクトンポリオール(ダイセル製、プラクセル220、分子量2,000)を用いた以外は、TPU−1の合成方法と同様の方法で合成した。得られたウレタンエラストマーのショアD硬さは45、MFRは27であった。
【0060】
成分(A)−5(TPU−5):
ミラクトラン E190(日本ミラクトラン社製、MDI/アジペート系TPU)、ショアD硬さ45、MFR;28
【0061】
B.エチレン−アクリレート共重合体、又はエチレン−ビニルエステル共重合体
成分
成分(B)−1:
日本ユニカー製、エチレン−エチルアクリレート共重合体、NUC6220(エチルアクリレート含有量;7重量%、MI:4.0g/10分、ショアD硬さ;35)
【0062】
成分(B)−2:
日本ユニカー製、エチレン−エチルアクリレート共重合体、NUC6221(エチルアクリレート含有量;10重量%、MI:2.5g/10分、ショアD硬さ;34)
【0063】
成分(B)−3:
日本ユニカー製、エチレン−エチルアクリレート共重合体、DPDJ6169(エチルアクリレート含有量;18重量%、MI:6.0g/10分、ショアD硬さ;30)
【0064】
成分(B)−4:
三菱化学製、エチレン−メチルアクリレート共重合体、XG−400H(メチルアクリレート含有量;18重量%、MI:2.0g/10分、ショアD硬さ;36)
【0065】
成分(B)−5:
日本ユニカー製、エチレン−酢酸ビニル共重合体、NUC−3140N(酢酸ビニル含有量;10重量%、MI:20.0g/10分、ショアD硬さ;36)
【0066】
成分(B)−6:
日本ユニカー製、エチレン−酢酸ビニル共重合体、NUC−3460(酢酸ビニル含有量;20重量%、MI:15.0g/10分、ショアD硬さ;30)
【0067】
実施例1〜8、参考例4〜8、
ポリウレタンエラストマーとして(A)−1、(A)−2、(A)−3、(A)−4、(A)−5を用い、共重合メタロセンポリオレフィオンとして(B)−1、(B)−2、(B)−3、(B)−4、(B)−5、(B)−6を用い、表2、表3および表4に示した各割合にてヘンシェルミキサーでブレンドした後、45mm径の同方向二軸押出機にて220℃の条件で溶融混練しエラストマー組成物のペレットを得た。物性および成形加工性の結果を表2、表3および表4に示した。
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
【表4】
【0071】
比較例1〜4
ポリウレタンエラストマーとして(A)−1を用い、エチレン−α−オレフィン共重合体として(B)−1、および比較として旭化成工業製、低密度ポリエチレン、サンテック−LD、M6520( MI:20g/10分、ショアD硬さ;47)を用い表5に示した各割合にて、実施例1の方法と同様に混練し評価した。結果を表5に示した。この結果から本発明の範囲外の組成物はいずれかの物性が悪いことが明らかである。
【0072】
【表5】
【0073】
【発明の効果】
本発明によって得られるエラストマー組成物は、耐傷付き性、強度、耐熱性、柔軟性、成形加工性に優れるため、自動車部品、家電部品、玩具、雑貨等の分野で好適に利用することができるが、特に耐傷付き性に優れるため製品外観を必要とするインパネ、アームレスト、ハンドル、ホーンパッド等の自動車内装部品やウインドモール、バンパー等の自動車内、外装部品に好適に使用することができる。また、成形品表面の耐傷付き性、成形加工性に優れるため、従来必要であった塗装工程をなくすことができるので、高生産性、低コストが実現される。
Claims (1)
- 次の(A)および(B)成分からなる熱可塑性エラストマー組成物であって、
(A)ポリウレタンエラストマー:100重量部
(B)アクリレート含量5重量%以上、30重量%以下のエチレン−アクリレート共重合体:10〜900重量部
前記(A)ポリウレタンエラストマーは次の(a)、(b)及び必要に応じて(c)成分を共重合してなるポリウレタンエラストマーであることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物。
(a)下記式(2)、及び(3)の繰り返し単位からなり、末端基が水酸基である脂肪族ポリカーボネートジオールを含み、上記(2)と(3)の割合が(2)/(3)=10/90〜90/10(モル比)であることを特徴とする高分子ポリオール(但し、式中nは4および/または5の整数)
(c)ポリイソシアネートと反応しうる活性水素を2個有する鎖延長剤
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