JP4484437B2 - 車両用補強部材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の車両のボディ等を強化するために取付けられる補強部材構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
図8及び図9は、補強部材が配設されている自動車ドア21を示す。ドア21は、車体外側に配設したアウターパネル22と内側に配設したインナーパネル23とを備え、それらのパネル22,23間には、車体の前後方向にかつドア2の前端側から後端側にわたって、補強部材24が配設されている。図10は、その補強部材24の斜視図であり、図11は図10のB−B線方向における補強部材の断面図である。補強部材24は、プレス成形により平板を一体成形して形成し、その長手方向の両端部にパネル22,23への取付部25を形成している。これらの左右取付部25の間は、図11に示すように、中央部をU字断面形状に形成したビーム部26が設けられ、そのU字形断面の開口側の両端部から外側へ延びるフランジ部27を設けている。このような補強部材は、車両の側面衝突に対する安全面の観点から、ドアの圧壊抵抗を設けるために配設されている。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−19559号公報 (要約、図1参照)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、そのようなU字断面を有する補強部材は、フランジ部27の基準面から、頂部までの長さが大きくなり、ドアにスペースがないような場合は、十分な役割を果たすことができない。補強部材の肉厚を厚くすることが考えられるが、製品重量が重くなり、車体の軽量化の要請に反するのみならず材料コストも高くなる。また、補強部材をプレスにより一体成形する場合に、材料として高張力鋼材を用いると、加工性が悪くなり、コスト高となる。さらに、プレス機の金型構造が複雑になるうえ、大型のプレス機を必要とする。また、補強部材として円形パイプを用いるものもあるが、コストが高く製品重量が重くなってしまう。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、コストが安く成形が容易であって、しかもビーム部に剛性の大きな高張力鋼材を用いても小型のプレス機により成形できる車両用補強部材を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために、車体外面に沿った2部位間に架設され、前記2部位間に車体外部から作用する衝撃荷重に対する圧壊抵抗を補強するための車両用補強部材であって、前記2部位間に延在するビーム(5)と、前記ビームの両端部(5d)に溶接接合され、前記ビームを前記2部位に取付けるための一対の取付金具(6,7)とを備え、前記ビームが、高張力鋼板をプレス成形してなる長手方向に一様な断面形状を有する成形材で構成され、中央頂壁部(5a)と、該中央頂壁部の両側に断面円弧状の第1曲げ部(r)を介して連続する一対の側壁部(5b,5b)と、該各側壁部の前記中央頂壁部と反対側に断面円弧状の第2曲げ部(R)を介して連続し相互に離反する方向に延出した一対のフランジ部(5c,5c)とを有し、前記中央頂壁部と直交する方向のプレス成形によって、前記中央頂壁部(5a)を、長手方向に一様な断面凹円弧形状(10a)とし、かつその両側の前記第1曲げ部から前記側壁部および前記第2曲げ部を経て前記フランジ部に至る幅方向各側部分を、相互に内向きに傾倒した長手方向に一様な断面S字形状部分および断面逆S字形状部分としてから、前記中央頂壁部の断面凹円弧形状(10a)を前記中央頂壁部と直交する方向のプレス成形で平坦にすることにより、前記第2曲げ部間の間隔(L2)が、前記第1曲げ部間の間隔(L1)より狭く、前記一対の側壁部が、前記第1曲げ部から前記第2曲げ部に向かうにつれて相互に近接する逆傾斜を有するように形成されている。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明にかかる補強部材構造を採用している自動車の斜視図である。
自動車1には、フロントドア2とリアドア3が設けられ、各ドア2,3には、ドアの前端側から後端側にわたって、ほぼ水平方向に配設した補強部材4を取付けている。図2に示すフロントドア2の断面図のように、補強部材はドア2のアウターパネル2aとインナーパネル2bとで形成されている閉断面空間に配設されている。各ドア2,3に配設した補強部材4の形状は、ドアの取付部の形状が異なるのみで基本的には同じである。よって、一方のフロント側のドア2に配設した図3及び図4に示す補強部材4について詳細に説明する。
【0008】
補強部材4は、一方向に長いビーム5と、ビーム5の両端部に溶接により固定されている取付金具6,7とから構成されている。図5は、ビーム5の長手方向に対して直角に交差する方向の断面形状である。ビーム5は、平たい形状の頂部5aと、頂部5aの両端部からビーム5の内側に湾曲するr部を介して隣接する一対の線対称形の壁部(胴部)5bを備えている。そして、これらの壁部5bの両端部からは、ビーム5の外側に湾曲するR部を介して頂部5aの面と平行に延びるフランジ部5cを設けている。よって、頂部5aからフランジ部5cまでの形状は、S字形状となる。図5に示すように、壁部5bの頂部5a側の間隔L1は、壁部5bのフランジ部5c側の間隔L2よりも大きくなるように形成している。ビーム5の両端部には、フランジ部5cよりもさらに外側に延びる平板状の取付板5dを形成している。
【0009】
ビーム5は、高張力鋼材をプレス成形したものであって、両端部に取付板5dを形成したことを除けば、図5に示すように長手方向に一様な断面形状である。また、本実施の形態では、曲率r、Rは、ほぼ同じ曲率に形成したが、曲率が異なる場合もある。このようなビーム5は、図6A〜Dに示すような成形手順により、高張力鋼材を使用しても300トン以下のプレス機で成形が可能である。
【0010】
先ず、図6のAに示すように、高張力鋼材で形成されている平板10を、図6のBに示すダイ11上に載置し、パンチ12によりプレスする。ダイ11の凹部の底部両端側のR形湾曲凹部11aと、これに対応するパンチ12の先端両側のR形湾曲凸部12aにより、平板(以下、成形材とする)10に曲率Rを形成するとともに、ダイ11の凹部11bと、パンチ12の凸部12bとにより、成形材10の中央部に下向きのへこみ部10aを形成する。次いで、図6のCに示すように、ダイ13のr形湾曲凸部13aと、これに対応するパンチ14のr形湾曲凹部14aにより、前工程で形成した成形材10のへこみ部10aの両側に曲率rを形成する。このプレスの際に、r−R間においてビーム5の胴部5bが形成され、フランジ部5cがやや傾斜して形成される。
【0011】
図6のDに示すように、プレスの最終工程では、ダイ15の凸部15aと、パンチ16の凹部16aで成形材10のへこみ部10aをプレスする。パンチ16の凹部16aの湾曲により、へこみ部10aが逆側に突出するように成形されるが、成形材10のスプリング効果により突出部10aが平らになって頂部10b(5a)が形成される。なお、成形材10全体がスプリング効果により縮まるので、プレスの際にはパンチ16から成形材10を容易に抜くことができる。
【0012】
図4に示す補強部材4の取付金具6,7はいずれも平板をプレス加工して形成したものである。取付金具6,7は、ビーム5の取付板5dに対応した平板部6a,7aを含みビーム5と略同一断面形状をなす接合部と、フロントドア2の取付部位に対応した取付部とを備え、高張力鋼材であれば加工が困難であるが、取付金具6,7の材質に低張力鋼材を使用することで300トン以下のプレス機で成形が可能となる。そして、取付金具6,7の平板部6a,7aと、ビーム5の取付板5dを溶接により接合して補強部材4が作製される。補強部材4は、図2に示すように、ビーム5の頂部5aを車体の外側に向けて、フロントドア2の前端側に取付金具6を、後端側に取付金具7を、それぞれ溶接又はボルトで固定することにより、フロントドア2の内部に配設される。
【0013】
図7は、補強部材4の両端部を固定し、ビーム5の中心位置に荷重を付加した場合に、ビーム5の撓みを測定した結果を示す。実線aは本実施の形態における補強部材4であり、点線bはU字形材料であり、両者ともに材質は同じである。縦軸に荷重(kN)を示し、横軸にビーム5の中心部の撓み量(mm)を示している。試料としての補強部材4と従来例の補強部材は、各々の高さを一致させている。図に示すように、本実施の形態の補強部材4の方が、U字形状のものより荷重に対して撓みが少ないのが分かる。したがって、自動車の側部衝突に対する変形抵抗が大きくなる。
【0014】
補強部材4は、ビーム5の頂部5aを平らに形成しているので、高さの割に大きな変形エネルギを吸収することができ、厚みの薄いドアに適用可能である。また、厚いドアであっても、他の構造部品との兼ね合いによるレイアウトの幅が広くなる利点がある。補強部材4は、強度を必要とするビーム5を高張力鋼材で形成し、加工が困難である取付金具6,7をそれよりも強度の小さい張力鋼材を用いて形成した。このように、ビーム5と取付金具6,7を分割して形成したので、成形作業の全てを、小型プレス機を用いて補強部材4を製作することができ、設備の安価とコストの低減を図ることができる。
【0015】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、勿論、本発明はこれに限定されることなく本発明の技術的思想に基づいて種々の変形及び変更が可能である。例えば、本実施の形態では、フロント及びリアドア2,3に補強部材4を配設したが、その他、フロントバンパー、リアバンパー等にも適用することができる。
【0016】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、車体外面に沿った2部位間に架設され、前記2部位間に車体外部から作用する衝撃荷重に対する圧壊抵抗を補強するための車両用補強部材であって、前記2部位間に延在するビーム(5)と、前記ビームの両端部(5d)に溶接接合され、前記ビームを前記2部位に取付けるための一対の取付金具(6,7)とを備え、前記ビームが、高張力鋼板をプレス成形してなる長手方向に一様な断面形状を有する成形材で構成され、中央頂壁部(5a)と、該中央頂壁部の両側に断面円弧状の第1曲げ部(r)を介して連続する一対の側壁部(5b,5b)と、該各側壁部の前記中央頂壁部と反対側に断面円弧状の第2曲げ部(R)を介して連続し相互に離反する方向に延出した一対のフランジ部(5c,5c)とを有し、前記中央頂壁部と直交する方向のプレス成形によって、前記中央頂壁部(5a)を、長手方向に一様な断面凹円弧形状(10a)とし、かつその両側の前記第1曲げ部から前記側壁部および前記第2曲げ部を経て前記フランジ部に至る幅方向各側部分を、相互に内向きに傾倒した長手方向に一様な断面S字形状部分および断面逆S字形状部分としてから、前記中央頂壁部の断面凹円弧形状(10a)を前記中央頂壁部と直交する方向のプレス成形で平坦にすることにより、前記第2曲げ部間の間隔(L2)が、前記第1曲げ部間の間隔(L1)より狭く、前記一対の側壁部が、前記第1曲げ部から前記第2曲げ部に向かうにつれて相互に近接する逆傾斜を有するように形成されているので、補強部材の曲げ剛性が大きくなり、ビームに荷重が負荷した時に、大きな変形抵抗を得ることができる。また、上記頂部をほぼ平坦な形状に形成して自動車ドアの補強部材として用いると、高さが小さくなり、ドアの狭い箇所にも容易に取付けることができる。また、上記補強部材は、上記中央頂壁部からフランジ部に至る形状がS字形状に形成されているので、大きな圧壊抵抗を得ることができる。さらに、上記補強部材は、上記ビームを上記取付金具の材質よりも硬い高張力鋼材で成形するにもかかわらず、補強部材全体を小型のプレス機(300トン)で作製できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における補強部材構造をドアに採用している自動車の斜視図である。
【図2】図1の矢印C−C線方向のフロントドアの断面図である。
【図3】図1の自動車のフロントドアに配設されている補強部材の斜視図である。
【図4】図3の補強部材の拡大分解斜視図である。
【図5】図3の矢印D−D線方向における補強部材の拡大断面図である。
【図6】図3の補強部材のビームの成形手順を示す図であり、Aは成形前の平板を示す断面図であり、Bは第1段階の金型による成形を示す断面図であり、CはBの次の段階の成形を示す断面図であり、Dは最終段階の成形を示す断面図である。
【図7】本実施の形態の補強部材と従来品の補強部材の荷重とたわみ試験結果の線図である。
【図8】従来例における補強部材構造を採用しているドアを自動車の側面方向から見た図である。
【図9】図8の矢印A−A線方向のフロントドアの断面図である。
【図10】図8のドアに配設している一体成形ものの補強部材の斜視図である。
【図11】図10の矢印B−B線方向における補強部材の拡大断面図である。
【符号の説明】
1 自動車
2,3 ドア
4 補強部材
5 ビーム
5a 頂部
5b 壁部
5c フランジ部
5d 取付板
6,7 取付金具
6a,7a 平板部
Claims (1)
- 車体外面に沿った2部位間に架設され、前記2部位間に車体外部から作用する衝撃荷重に対する圧壊抵抗を補強するための車両用補強部材であって、前記2部位間に延在するビームと、前記ビームの両端部に溶接接合され、前記ビームを前記2部位に取付けるための一対の取付金具とを備え、
前記ビームが、高張力鋼板をプレス成形してなる長手方向に一様な断面形状を有する成形材で構成され、中央頂壁部と、該中央頂壁部の両側に断面円弧状の第1曲げ部を介して連続する一対の側壁部と、該各側壁部の前記中央頂壁部と反対側に断面円弧状の第2曲げ部を介して連続し相互に離反する方向に延出した一対のフランジ部とを有し、前記中央頂壁部と直交する方向のプレス成形によって、前記中央頂壁部を、長手方向に一様な断面凹円弧形状とし、かつその両側の前記第1曲げ部から前記側壁部および前記第2曲げ部を経て前記フランジ部に至る幅方向各側部分を、相互に内向きに傾倒した長手方向に一様な断面S字形状部分および断面逆S字形状部分としてから、前記中央頂壁部の断面凹円弧形状を前記中央頂壁部と直交する方向のプレス成形で平坦にすることにより、前記第2曲げ部間の間隔が、前記第1曲げ部間の間隔より狭く、前記一対の側壁部が、前記第1曲げ部から前記第2曲げ部に向かうにつれて相互に近接する逆傾斜を有するように形成されていることを特徴とする車両用補強部材。
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