JP4479067B2 - ポリアミド繊維の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポリアミド繊維を直接紡糸延伸する製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ナイロン6、ナイロン66をはじめとするポリアミド繊維の製造方法には、紡糸した糸条を一旦巻き取り、次行程で延伸を行う二行程法と、紡糸後一旦巻き取ることなく直ちにゴデーローラの速度差を利用するなどした機械的な延伸をする直接紡糸延伸法や、高速で引き取ることにより延伸工程を省略した直接紡糸法等の一工程法とがあり、近年ではこれらの一工程法が衣料用、産業資材用を問わず多種の分野で採用されている。この一工程法の中で糸条を延伸する手段として、表面速度の異なるローラ上を通過させることにより糸条を機械的に延伸させる方法と、糸条に応力を付与した状態で空気や水蒸気等の熱媒により糸条を加熱、軟化させ、糸の応力により延伸させる方法が一般的に用いられている。
【0003】
これらの方法で高強度な繊維を得ようとした場合、以下に挙げるような様々な問題点が発生する。前者の方法で高強度繊維を得ようとした場合、ローラ間で高倍率で延伸する必要がある。この場合、ローラ表面と糸条とのスリップを防ぐために、長尺ネルソンローラを用いて複数回数ローラへ巻き付けたり、ローラを大径化することで、糸条とローラ表面との接触長を長くしたり、ローラを追加して延伸を多段化することで倍率を各々の延伸ローラ間で分散し、延伸張力を低下させているが、これらのいずれの方法を用いてもゴデローラの長尺化、大径化、ローラの追加等による生産設備の大型化を招く。
【0004】
また、後者の方法を用いた場合、延伸糸の糸条間、フィラメント間での糸物性ばらつきを小さくするためにヒータ内での全糸条、全フィラメントを均一に加熱する必要があり、水蒸気等の熱容量の大きい熱媒を用い、更に糸条が集束する以前に加熱する必要がある。この場合、糸条の集束位置がヒータの出口以降になるため、単糸繊度が細い品種や高速紡糸条件では糸条の随伴気流により紡糸応力が高くなり、糸切れによる収率低下を招いたり、同一伸度に調整した際の糸条の強度が低下してしまうという問題があった。さらに、水蒸気を用いた場合は蒸気配管やドレン配管等により生産設備の大型化を招く。
【0005】
別の方法としてフィラメント間での糸物性ばらつきを小さくするために、糸条が集束する以前、すなわち油剤付与装置通過以前に糸条を熱処理する方法が特開平10-292221号公報、特開平10-121320号公報等で提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この方法においてもフィラメント内での硬度差を解消できないのみでなく、糸条の集束位置がより下流側に移動するため、単糸繊度が細い品種や高速紡糸条件下では糸条の随伴気流により紡糸応力が高くなり、糸切れによる収率低下や、同一伸度に調整した際の糸条の強度が低下してしまうという問題を招く。
【0007】
本発明者らは輻射式熱処理方式などの非接触の乾熱方式での糸条加熱では、輻射波の透過性により糸条束の中心部に位置するフィラメント、またフィラメントの内層にまで輻射波が届き、均一に加熱されるため、先に述べたフィラメント間、もしくはフィラメント内での物性差が実質的に生じず均整度に優れた高強度なフィラメントを得ることができることを見いだした。
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決し、ポリアミド繊維を一工程の多糸条取りかつ省スペースで製造する方法であって、高強度な繊維を得ることができる製造方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明はポリアミドを紡糸冷却後、給油しその後第1ゴデローラで一周未満巻き付けて引き取り、続いて加熱した第2ゴデローラに1周未満巻き付け前記第1ゴデローラと前記第2ゴデローラの間で延伸した後に巻き取る方法であって、前記第1ゴデローラと前記第2ゴデローラの間に非接触の輻射熱処理ヒーターを設け、200℃以上の温度で各糸条を加熱することを特徴とするポリアミド繊維の製造方法を要旨とするものである。
【0010】
なお、本発明においては、ゴデローラは引き取りの単一の第1ゴデローラとそれに続いて糸道の方向を下向きに転換する単一の第2ゴデローラとからなり両ローラとも巻き付け角度が一周未満でさらに第2ゴデローラの表面温度が110℃以上とすることがより好ましい。また、本発明においては、第1ゴデローラの表面速度をV1(m/分)とし第2ゴデローラの速度をV2(m/分)としたとき次式の範囲を満たしたほうがより好ましい。
1<V2/V1<3
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態の一例として本発明の直接紡糸延伸方法に多糸条用の非接触輻射式熱処理装置を使用して模式的に表したポリアミド繊維の製糸工程の概略図である。
【0012】
まず、ポリアミドを紡糸口金1から溶融紡糸し、紡出した糸条Yを、冷却風を吹き付けて冷却する冷却装置2によって冷却固化し、油剤付与装置3により油剤を付与する。
油剤付与装置を通過してフィラメントが集束した糸条を第1ゴデローラである引き取りローラ4で引き取った後、糸条を非接触式の輻射式熱処理装置5で加熱する。引き続いて第2ゴデローラ6等を介した後、巻き取り装置7で巻き取る。
【0013】
まず、本発明では、溶融紡糸した糸条を冷却装置で一旦冷却固化し、引き続いて油剤付与装置により油剤を付与、フィラメントを収束させ第1ゴデローラで引き取った後、第1ゴデローラと第2ゴデローラとの間にて非接触の輻射式熱処理装置内で加熱する。この熱処理を輻射式熱処理方式で行うことにより、フィラメントが収束した状態においてでもフィラメント間差無く均一に各フィラメントを加熱することができ、これによって熱処理装置内もしくは熱処理通過前後の安定性が向上し、フィラメント間、糸条間物性差の少ない均整度に優れた繊維を得ることができる。
【0014】
熱処理装置においては糸条加熱方式として非接触の乾式加熱ヒーターを使用することが必要であり、輻射式熱処理方ヒーターを使用する。従来方式である加熱空気、水蒸気等の熱媒による加熱方式では、フィラメントが収束した状態で熱処理した場合、外側に面したフィラメントから優先的に昇温、軟化してしまい、結果未昇温で軟化していない内側のフィラメントに応力が集中する。その結果、昇温されたフィラメントと未昇温のフィラメントで物性に差が生じ、糸条としての強度が低下してしまう。
【0015】
また、同様のことがフィラメント内でも発生する。すなわち、熱媒による接触方式でフィラメントを加熱することにより、フィラメントの外側から昇温されるため、フィラメントの表層と内層とで温度差、硬度差が生じる。この状態で延伸することにより、硬度の高い中心部に集中的に応力が掛かり、フィラメント内でのポリアミド分子の配向状態が断面方向に不均一となり、結果としてフィラメントの強度低下を招く。
【0016】
これに対して非接触の輻射式熱処理方式での糸条加熱では、輻射波の透過性により糸条束の中心部に位置するフィラメント、またフィラメントの内層にまで輻射波が届き、均一に加熱されるため、先に述べたフィラメント間、もしくはフィラメント内での物性差が実質的に生じず均整度に優れた高強度なフィラメントを得ることができる。しかし接触式の熱処理装置を用いた場合、糸条には熱処理装置との接触部とそれ以外の部分とで温度差が生じ、フィラメント内、フィラメント間での物性差が発現し、強度低下の原因となる。
【0017】
熱処理においては加熱温度を200℃以上1000℃未満とすることが好ましい。温度が200℃以上1000℃未満であるとフィラメントの硬度及び紡糸応力を延伸可能なレベルにまで低下させることができ、熱処理装置による延伸効果が発現する。また生産性の安定化からもこの温度範囲であることが好ましい。
【0018】
また、第2ゴデーローラの表面温度が110℃以上であることが好ましい。
【0019】
熱処理装置を適応する繊維製造プロセスについては特に限定するものではないが、生産効率の観点から一工程法であることが好ましく、更に延伸装置の省スペース多糸条化、小型化の観点から引き取りの単一の第1ゴデローラとそれに続いて糸道の方向を下向きに転換する単一の第2ゴデローラとからなり両ローラとも巻き付け角度が一周未満である片掛け延伸法であることがより好ましい。また生産性の安定化から第1ゴデローラの表面速度V1(m/分)と第2ゴデローラの速度V2(m/分)との比V2/V1については1を越えて3未満であることが好ましい。
【0020】
【実施例】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、実施例中の特性値の測定は、次のとおりに行った。
(1)破断伸度
引張試験機(ORIENTEC社製TENSILON RTM-100)を用い、資料長50cm、引張速度100cm/分の条件で応力歪み曲線を求め、この曲線から求めた。
【0021】
(2)糸斑
ウースター糸斑測定装置(ZELLWGER社製USTER TESTERII)を用いて測定した。
【0022】
(3)糸速度、スリップ量
糸速度についてはレーザードップラー糸速度計(MALVERN社製TYPE6200)を用いて測定した。また、スリップ量については、上記測定により求めたゴデローラ上での糸速度とゴデローラ表面速度との差から以下の式により求め、5m/分以上をスリップ有りと判定した。
スリップ量=(ゴデローラ上での糸速度)−(ゴデローラ表面速度) (m/分)。
【0023】
実施例1〜2、比較例1〜2
図1に示す工程に従ってポリアミド繊維を製造した。相対粘度(96%硫酸を溶媒とし、試料濃度1g/l、室温25℃で測定)が2.62のナイロン6チップを溶融押出機に供給し、紡糸温度270℃で溶融し、孔径が0.25mmの紡糸孔を20個有する紡糸口金1より吐出させた。これを冷却装置2より風温20℃、風速30m/分の冷却風を吹き付けて糸条Yを冷却し、油剤付与装置3により油剤を付与、糸条を収束させ、糸条を第1ゴデローラ4で引き取った後、非接触輻射式熱処理装置5を通過させ、輻射波により熱処理した。熱処理装置を出た糸条を第2ゴデローラ6(表面温度140℃)を介して4000m/分で引き取り、巻き取り装置7で4000m/分で巻き取って17dT/5fの繊維を得た。このときローラ間機械延伸倍率(V2/V1)を表1に示すように1<V2/V1<3の範囲で変更して行った。また、測定により得られた第1ゴデローラ上での糸速度、スリップ量、破断伸度、糸班波形異常の結果を表1に示す。
【0024】
表1から明らかなように、実施例1〜2では第1ゴデローラ上での糸条のスリップもなく、その結果得られた繊維の糸斑にも異常な波形は見られなかった。また、熱処理装置内での延伸効果を有効に発現させることができ、高強度でかつ高伸度糸を得ることができた。
【0025】
比較のため、熱処理装置内を通過させない以外は実施例1〜12と同様にポリアミド繊維を製造し、特性値をを測定し結果を表1に示した。。比較例1〜2では、第1ゴデローラ上で糸条のスリップが発生しており、また得られた繊維の糸斑に異常な波形が見られた。
【0026】
【表1】
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、一工程法の多糸条取りかつ省スペースで、高強度でかつ糸斑異常のない繊維を製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリアミド繊維を製造するための紡糸延伸工程の一態様を示す概略図である。
【符号の説明】
1.紡糸口金
2.冷却装置
3.油剤付与装置
4.第1ゴデローラ
5.輻射式熱処理装置
6.第2ゴデローラ
7.巻き取り装置
Y.糸条
Claims (3)
- ポリアミドを紡糸冷却後、給油しその後第1ゴデローラで一周未満巻き付けて引き取り、続いて加熱した第2ゴデローラに1周未満巻き付け前記第1ゴデローラと前記第2ゴデローラの間で延伸した後に巻き取る方法であって、前記第1ゴデローラと前記第2ゴデローラの間に非接触の輻射熱処理ヒーターを設け、200℃以上の温度で各糸条を加熱することを特徴とするポリアミド繊維の製造方法。
- 第1ゴデローラと第2ゴデローラが、引き取りの単一の第1ゴデローラとそれに続いて糸道の方向を下向きに転換する単一の第2ゴデローラでありさらに第2ゴデローラの表面温度が110℃以上である請求項1記載のポリアミド繊維の製造方法。
- 第1ゴデローラの表面速度をV1(m/分)とし第2ゴデローラの速度をV2(m/分)としたときV1およびV2が次式の範囲を満たす請求項2記載のポリアミド繊維の製造方法。
1<V2/V1<3
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- 2000-06-28 JP JP2000195339A patent/JP4479067B2/ja not_active Expired - Lifetime
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