JP4475490B2 - 椅子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、座部を座受に対し前後移動可能とされた椅子に係り、特に座部に対し所望の前後位置において的確な固定、解除操作ができるようにした椅子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近時の椅子は、執務時に適正な姿勢をとることができ、安息姿勢やリフレッシュ姿勢も選択的にとることができるように、背もたれ傾動機構やロッキング機構を始め、座の前後位置調整機構など種々の機構を実装したものが実用に供されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このうち前後位置調整機構に着目すると、従来のものは座受に対して座部を前後移動可能に構成し、その座部を任意の位置に固定するために、その操作部をロッキング機構等を操作する操作部と共に座受側に設けているのが通例である。
【0004】
しかしながら、座部が前後動すると、座部に対する操作部の相対位置が変化する。このため、着座姿勢のままで操作を行おうとする場合、座部に手をついていると操作部に指を適切にかけ難くなり、操作部に手を掛けていると体の支えが不安定になって体勢を崩し易いといった不具合が生じる場合がある。特に、座部に手を掛け、人為的な操作力によって座部の前後動を行うような椅子では、手でしっかりと座を掴んでおかなければならないため、操作部に指が掛かり難くなり、一層困難な操作を余儀なくされる。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような課題を解決するために、次のような手段を講じたものである。
【0006】
すなわち、本発明の椅子は、ベース脚に背もたれ部及び座部を支持させてなり、前記ベース脚に取り付けた支基と座部を支持する座受との間を前後のリンク要素により連結することによって背もたれ部及び座部を連動させてロッキングさせるロッキング機構を構成してなり、前記座受に座部を前後移動可能に取り付けて構成されるものであって、前側のリンク要素が、一端を支基の前方に回転軸を介して回転可能に取り付け、他端を座受に支軸を介して回転可能に取り付けたものであるとともに、前記座部を前後方向の所望位置に選択的に固定する固定機構を備え、その固定機構を操作するレバーを、座部に手をつき、前記レバーに指を掛けた状態を維持して、座部の前後位置調整を行うことができるように、該座部の側端部に設けたレバー保持部に取り付けられて該座部と共に一体的に前後移動し得る位置に設けていることを特徴とする。
【0007】
このようなものであれば、レバーは常に座部の前後移動に伴って移動し、座部に対する相対位置が変化することがない。このため、座部に的確に手をつき、レバーに適切に指を掛けた操作状態を確保することができ、良好な操作性と着座姿勢の安定性とを好適に両立させることができる。
【0008】
【0009】
【0010】
【0011】
本発明は、以上のような構成であるから、座受に対する座部の前後移動動作が、前記座部についた手から与えられる操作力によって生じるような椅子に適用して特に有用なものとなる。
【0012】
【0013】
レバーの好適な具体例としては、非操作時に略水平な姿勢をとるものが挙げられる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1及び図2は本発明の一実施形態を示す椅子1の側面図及び正面図であり、図3は一部の機構部分を示す部分分解斜視図、図4〜図6はこの椅子の作用説明図である。
【0015】
この椅子1は、ベース脚2に背もたれ部5及び座部6を支持させてなるもので、執務等に適した使用姿勢をとることができるのみならず、安息やリフレッシュに適した姿勢等を適宜選択的にとることをも可能にするために、ベース脚2に、あるいはベース脚2と背もたれ部5、座部6等との間に、背座の高さ調整を行う昇降機構P、背もたれ部5及び座部6を連動させてロッキングさせるロッキング機構Q、ストレッチ等のために背もたれ部5の上方部分のみを後傾させる背もたれ上部傾動機構R、並びに、腰骨を選択的に押圧するため等に利用される背もたれ下部傾動機構Sを設けている。
【0016】
具体的に説明すると、ベース脚2は、脚羽根20の中心から上方に向けて回転軸21を突出させたもので、その上に支持される座部6及び背もたれ部5を回転軸21周りに旋回動作させ得るようにしている。昇降機構Pは、前記ベース脚2の回転軸21にガススプリング22を組み込み、このガススプリング22を適宜作動させることによって背座を作動範囲の任意の昇降位置にロックできるようにしているものである。
【0017】
背もたれ部5は、背もたれ下部フレーム50と、背もたれ上部フレーム55と、これら両フレーム50,55の間に図示しない弾性部材を介して架け渡した張り部材8とを具備してなるもので、両フレーム50、55は、ともにリンク要素7bの内側部分に設けられた回転軸72に回転可能に取り付けられている。
【0018】
座部6は、着座者の大腿部に対応する窪みを有するクッション体60と、そのクッション体60の下方を支持するシェル61とを備えている。
【0019】
一方、ロッキング機構Qは、ベース脚2に取り付けた支基3と、座部6を支持する座受4と、これら支基3と座受4との間を連結するリンク要素7a、7bとからなる不等辺の四辺リンク機構を主体とし、これにリンク要素7aを適宜位置に固定するガススプリング31を付帯させて構成されている。本発明の座Zは、これら座部6と座受4によって構成されるものである。
【0020】
支基3は、アルミダイキャスト等の剛性部材により構成されたV字状をなすもので、その基端を前記回転軸21に固定し、先端を斜め上方に突出させている。この支基3の斜辺中央部の下面には、図示しない回転軸を通じてねじり方向の弾性力の蓄積、放出が可能なトーションバー70が設けてある。
【0021】
座受4は、前記座部6のシェル61を支持すべく、アルミなどの金属部材によって面状に成形されたもので、この座受4の左右両側部に、肘桿9を取り付けるための肘桿取付部44(図7参照)を設けている。
【0022】
リンク要素7aは、一端を支基3の前方に回転軸30を介して回転可能に取り付け、他端を座受4の前方裏面に支軸74を介して回転可能に取り付けた板状のものである。
【0023】
リンク要素7bは、一端を支基3の斜辺中央部に設けた前記トーションバー70の回転軸に固定し、他端を座受4の後端側に設けた回転軸79に回転可能に連結したもので、通常、このリンク要素7bには上述した背もたれ下部フレーム50及び背もたれ上部フレーム55が回転軸72回りの回転機能を停止させられた状態で一体的に固定され、リンク要素7bと共にトーションバー70の回転軸回りに回転し得るものである。
【0024】
ガススプリング31は、リンク要素7aと支基3との間に設けられたもので、選択的にリンク要素7aを固定することによって、四辺リンク機構全体をロックするようにしている。
【0025】
また、背もたれ上部傾動機構Rは、前記背もたれ上部フレーム55の回転軸72回りの回転を許容されることによって機能するもので、具体的にはロック機構rと、バネ部材73とから構成されている。
【0026】
ロック機構rは、図3に示すように、リンク要素7bの上方に設けた孔部77と、背もたれ上部フレーム55に取り付けた側面視略ひし形のブラケット550に設けた孔部551と、通常はこれら両孔部77に跨る位置に配置され選択的に前記孔部551から引き抜くことによって背もたれ上部フレーム55とリンク要素7bとの拘束を解除するピン76とから構成されるものである。背もたれ上部フレーム55の下端部内側に位置するブラケット550の内側には、リンク7bと一体をなすように同形状のブラケット7b1が設けてあり、これらブラケット550,7b1を重ね合わせて、孔部551の内側に孔部77を位置させて、ピン76を挿入するようにしている。しかして、ピン76が両孔部77、551に挿入されている状態においてはリンク要素7bと背もたれ上部フレーム55とは拘束されて一体的に動き、また、このピン76を孔部551から引き抜くことによって、上記の拘束を解除して背もたれ上部フレーム55のみが回転軸72を中心として独自に回転し得るようにしている。
【0027】
バネ部材73は、背もたれ上部フレーム55に傾動時に弾性を付与するためのもので、背もたれ上部フレーム55を起立方向に押圧している。
【0028】
さらに、背もたれ下部傾動機構Sは、前記背もたれ下部フレーム50を利用したもので、この背もたれ下部フレーム50を回転軸72を支点にして前方に押し付け得る位置に図示しないガススプリングを設けている。
【0029】
しかして、座受4の前方側端部には、座部6を取り付けた状態で以上の諸機構P〜Sを選択的に活用すべく、図7に示すようにレバー43a、43b、43cが設けてある。レバー43aは図4に示すように座部6を昇降させるためのものであり、レバー43bは図6に示すように背もたれ下部フレーム50のみを後傾させるものであり、レバー43cは図5に示すように座部6及び背もたれ上部フレーム55,背もたれ下部フレーム50全体を連動させてロッキングさせるためのものである。なお、背もたれ上部フレーム55のみの傾動は、非ロッキング時においてのみ可能であり、かつレバー操作なしで行うことができるものである。
【0030】
以上のような構成において、本実施形態は、座部6を座受4に対して前後移動可能に取り付けるとともに、座部6を前後移動させる座前後調整機構Tを設けている。
【0031】
座部6は前述したようにクッション体60とシェル61からなるものであり、このシェル61を座受4に着脱可能に取り付けることを可能にするために、図8に示すようにシェル61の下面の前端側及び後端側に突出部62f、62bが設けてある。一方、座受4は、その平面部分であって前記突出部62f、62bの対応位置に、図7に示すように前後方向に延びる長孔部40f、40bが設けてある。そして、この長孔部40f、40bに前記シェル61の突出部62f、62bを挿入し、その挿入端側に適宜の抜け止め構造を採用することによって、座受4に対する座部6の前後移動を許容しつつ、上方への離脱を規制している。
【0032】
これに対して、座前後移動機構Tは、座受4の上面にラック41を設けるとともに、座部6を構成するシェル61の下面にピニオン63を設け、これらラック41とピニオン63を噛み合わせることによって、座受4に対する座部6の前後スライド移動を案内するようにしている。ラック41は、座受4の幅方向中心部から左右方向へ離間した位置に一対に設けられており、ピニオン63は、座部6の下面側に成形された軸保持部64によって保持された軸65の両端部分に形成されている。すなわち、この座前後移動機構Tは、人為的な操作力を加えることによって、座部6を座受4に対して前後動させるようにしたものである。
【0033】
そして、座部6を前後方向の所望位置に選択的に固定するために、図8〜図10に示す固定機構100を備え、その固定機構100を操作する操作部たるレバー110を図8に示すように座部6と共に一体的に前後移動し得る位置に設けている。
【0034】
固定機構100は、ピニオン63に対する接離動作を通じ選択的にピニオン63に噛み合ってロックする規制片101を具備している。この規制片101は、座部6の下面側に成形されたガイド溝102にスライド可能に取り付けられているもので、基端がワイヤチューブ103の一端に接続され、ワイヤ操作を通じピニオン63に対して水平方向から接離して、先端に形成した歯104を選択的にピニオン63に噛み合わせることができるものである。規制片101は、前記ガイド溝102内に設けたバネ105によってピニオン63に噛み合う方向に弾性的に押し付けられている。
【0035】
一方、レバー110は、座部6の前端側の右側端部下面に設けたレバー保持部110aに取り付けられ、その位置で前記ワイヤチューブ103の他端側を操作可能に接続したもので、非操作時に前述した各レバー43a、43b、43cと共に水平をなし、かつ座部6が後端側へスライドした際の前後位置において各レバー43a、43b、43cと共にほぼ一定ピッチの規則性ある配列をなすように設けられている。そして、このレバー110を操作したときのみ、前記バネ105に抗して規制片101を後退させ、当該規制片101をピニオン63から離脱させて座部6の前後動を許容し、レバー110をレバー43aから前方へ離反させつつ図6に想像線で示すように座部6を前方へ移動させ得るようにしている。
【0036】
以上のように、本実施形態の椅子は、座受4に座部6を前後移動可能に取り付けるように構成されたものである。そして、座部6を前後方向の所望位置に選択的に固定する固定機構100を備え、その固定機構100を操作する操作部たるレバー110を座部6と共に一体的に前後移動し得る位置に設けたものである。
【0037】
このため、レバー110は常に座部6の前後移動に伴って移動し、座部6に対する相対位置を変化させることがない。したがって、座部6に的確に手をつき、レバー110に適切に指を掛けた操作状態を維持することができ、良好な操作性と着座姿勢の安定性とを好適に両立させることが可能となる。
【0038】
具体的には、座部6を、ラックピニオン機構を介して座受4に支持しているものであり、ラック41を座受4側に設け、ピニオン63を固定機構100及びレバー110と共に座部6側に設けているので、前後方向への動作を確実なものにすることができると同時に、座部6を足場にして固定機構100にピニオン63の回転を確実にロックさせて、ラック41に対して動かないようにすることができ、これらの部品の座部6や座受4への組み込みも比較的簡易に行うことが可能となる。
【0039】
特に、固定機構100に、ピニオン63に対する接離動作を通じ選択的にピニオン63に噛み合ってその回転をロックする規制片101を採用しているだけなので、コンパクトな組み込み状態を実現することができる。
【0040】
そして、上記規制片101の接離動作が、水平方向に沿ってなされるものであるため、座受4と座部6との間に厚み方向の動作スペースを確保する必要がなく、固定機構100の存在によって座受4と座部6との間が嵩張ることを有効に防止することができる。
【0041】
とりわけ、この実施形態は、座受4に対する座部6の前後移動動作が、外部から人為的に与える操作力によって生じるようなものであるため、着座した状態で座部6を前後方向へ操作しながら同時にレバー110を操作するといった態様も極めて自然に行うことができる。
【0042】
さらに、上記固定機構100を操作するレバー110が、座受4側に設けられるロッキング機構Q等の操作部であるレバー43a、43b、43cと共に、座部6の後方移動位置において規則正しく配列するように構成されているため、これらレバー43a、43b、43cの操作と関連づけてレバー110を有効に操作することができ、使い勝手と見栄えの向上とを図ることができる。
【0043】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0044】
【発明の効果】
本発明は、以上説明した構成であるから、座部に的確に手をつき、固定機構を操作するレバーに適切に指を掛けた状態を維持して、座部の前後位置調整を有効に行うことができ、これにより良好な操作性と着座姿勢の安定性とを好適に両立させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す側面図。
【図2】同正面図。
【図3】同部分分解斜視図。
【図4】同作用説明図。
【図5】同作用説明図。
【図6】同作用説明図。
【図7】同実施形態を座部を取り除いて示す平面図。
【図8】同実施形態の座部を示す底面図。
【図9】同実施形態の要部である固定機構を示す図。
【図10】図9の側面図。
【符号の説明】
4…座受
6…座部
41…ラック
43a、43b、43c…レバー(他の機構の操作部)
63…ピニオン
100…固定機構
101…規制片
110…操作部(レバー)
P…昇降機構(他の機構)
Q…ロッキング機構(他の機構)
R…背もたれ上部傾動機構(他の機構)
S…背もたれ下部傾動機構(他の機構)
Claims (3)
- ベース脚に背もたれ部及び座部を支持させてなり、前記ベース脚に取り付けた支基と座部を支持する座受との間を前後のリンク要素により連結することによって背もたれ部及び座部を連動させてロッキングさせるロッキング機構を構成してなり、前記座受に座部を前後移動可能に取り付けて構成されるものであって、
前側のリンク要素が、一端を支基の前方に回転軸を介して回転可能に取り付け、他端を座受に支軸を介して回転可能に取り付けたものであるとともに、
前記座部を前後方向の所望位置に選択的に固定する固定機構を備え、
その固定機構を操作するレバーを、座部に手をつき、前記レバーに指を掛けた状態を維持して、座部の前後位置調整を行うことができるように、該座部の側端部に設けたレバー保持部に取り付けられて該座部と共に一体的に前後移動し得る位置に設けていることを特徴とする椅子。 - 座受に対する座部の前後移動動作が、前記座部についた手から与えられる操作力によって生じるものである請求項1記載の椅子。
- 前記レバーが、非操作時に略水平な姿勢をとるものである請求項1又は2記載の椅子。
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