JP4470056B2 - パルスフォトメータに用いられる信号処理方法及びそれを用いたパルスフォトメータ - Google Patents
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Description
それらは、一般的には周波数領域や時間領域による処理が行われている。
医療現場でも、光電脈波計と言われる脈波波形や脈拍数を測定する装置、血液に含まれる吸光物質の濃度測定として、酸素飽和度SpO2の測定装置、一酸化炭素ヘモグロビンやMetヘモグロビン等の特殊ヘモグロビンの濃度の測定装置、注入色素濃度の測定装置などがパルスフォトメータとして知られている。
中でも酸素飽和度SpO2の測定装置を特にパルスオキシメータと呼んでいる。
そしてその脈波データに雑音が混入すると、正しい濃度の計算が出来ず、誤処置につながる危険が生じる。
パルスフォトメータにおいても従来より雑音を低減するために周波数帯域を分割して信号成分に着目したり、2つの信号の相関を取るなどの方法が提案されてきた。
しかし、これらの方法は解析に時間がかかるなどの問題があった。
この発明により、測定精度を高め、低消費電力化することができた。
しかし、各波長の脈波信号についての多くのサンプリングデータを用いて回帰直線ないしその傾きを求めるためには、なお多くの計算処理を要していた。
その解析においては従来技術のように脈波信号そのものを抽出するのではなく、脈波信号の基本周波数を求め、さらには精度を高めるためにその高調波周波数を用いたフィルタを用いて脈波信号をフィルタリングする方法を提案している。
しかし、基本周波数を求める点に関しては更なる改善が望まれていた。
また、上記信号処理方法を適用して、前記媒体の体動によるノイズが脈波信号に生じた場合であっても、対象物質の濃度を精度よく測定することにある。
また、体動によるノイズが脈波データ信号に生じた場合であっても、脈波信号からノイズを除去し、精度よく脈拍を求めることにある。
同一の媒体から抽出される2つの測定信号O1,O2から、2つの信号源S1,S2を分離マトリクスにより分離するパルスフォトメータに用いられる信号処理方法であって、
前記2つの信号源S1,S2と前記2つの測定信号O1,O2との関係を伝達マトリクス
[A]=[1 1;S N]とし,
但し、S及びNは、それぞれ信号成分及びノイズ成分の伝達係数とする。
前記分離マトリクスが前記伝達マトリクスの逆マトリクス
[B]=(1/Δ)*[N −1;−S 1]であるとして、
(a)前記Sは既知であるとして既知の値を代入すると共に、前記Nに仮値nを代入して、[Se]=[B]*[O]によって推定信号源ベクトル[Se]=[Se1;Se2]を求めると共に、分散・共分散マトリクス[σ]=[Se]*[Se]’を作成するステップと、
但し,測定信号ベクトル[O]=[O1;O2]とする。
(b)前記分散・共分散マトリクス[σ]の2列目の傾斜m2を、m2=[σ(2,2)]/[σ(1,2)]式から求めるステップと、
(c)N=(S+n*m2)/(1+m2)からNを求めるステップと、
但し、nはNの仮値とする。
を含むパルスフォトメータに用いられる信号処理方法。(請求項1)
(d)前記測定信号O1をX軸に、前記測定信号O2をY軸にして、リサージュ波形を描くステップと、
(e)前記リサージュ波形で描かれた平行四辺形の原点に近い2つの辺の傾斜n1及びn2を求めるステップと、
(f)該2つの辺の傾斜は、n1=SorN,n2=NorSと、SとNの関係S<N、またはS>Nの関係と、n1とn2の大小関係とからS及びNを求めるステップと、
を含むパルスフォトメータに用いられる信号処理方法。(請求項2)
(e-1)前記リサージュ波形で描かれた平行四辺形の原点に最も近い頂点P1及び原点に最も遠い頂点P2を求めるステップと、
(e-2)前記平行四辺形の前記両頂点P1及びP2を結ぶ線分を、X軸に平行となるまで回転させるステップと、
(e-3)回転後の平行四辺形から、他の頂点P3及びP4を求めるステップと、
(e-4)前記求めたP1〜P4により、前記2つの辺の傾斜n1及びn2を求めるステップとを含むパルスフォトメータに用いられる信号処理方法。(請求項3)
また、前記S及びNを求めるステップ(f)は、前記Sを既知の値として前記Nだけを求めるパルスフォトメータに用いられる信号処理方法。(請求項4)
また、前記求めたS及びNを利用して、前記分離マトリクス[B]を求め、[Se]=[B]*[O]式から推定信号源ベクトル[Se]を求めるステップ(g)を更に含むパルスフォトメータに用いられる信号処理方法。(請求項5)
また、前記処理部によって信号処理されてノイズ成分の除去された信号成分を用いて、動脈血中の酸素飽和度、特殊ヘモグロビン濃度又は注入色素濃度のうち少なくとも1つを演算するパルスフォトメータ。(請求項7)
また、この様な信号処理方法をパルスフォトメータに用いればノイズの混合された測定信号からノイズを簡単な処理で除去することができる。
なお、本発明の技術は、パルスオキシメータに限られず、特殊ヘモグロビン(一酸化炭素ヘモグロビン、Metヘモグロビンなど)、血中に注入された色素などの血中吸光物質をパルスフォトメトリーの原理を用いて測定する装置(パルスフォトメトリー)に適用できる。
異なる波長の光を発光する発光素子1、2は、交互に発光するように駆動回路3により駆動される。
発光素子1、2に採用する光はそれぞれ動脈血酸素飽和度による影響が少ない赤外光(例えば940[nm])、動脈血酸素飽和度の変化に対する感度が高い赤色光(例えば660[nm])がよい。
なお、図1では透過光を受光しているが反射光を受光するようにしてもよい。
そして、これらの変換された信号は増幅器6で増幅され、マルチプレクサ7によりそれぞれの光波長に対応したフィルタ8−1、8−2に振り分けられる。
各フィルターに振り分けられた信号はフィルタ8−1、8−2によりフィルタリングされてノイズ成分が低減され、A/D変換器9によりデジタル化される。
デジタル化された各信号列は処理部10に入力され、ROM12に格納されているプログラムにより処理され、酸素飽和度SpO2が測定され、その値が表示部11に表示される。
図2の(a)及び(b)は、前記発光素子1、2からの発光された光が生体組織4を透過してフォトダイオード5で受光して電気信号に変換された脈波データで、(a)は赤色光の場合を、(b)は赤外光を示している。
図2の(a)では、横軸を時間、縦軸を受光出力とすると、フォトダイオード5での受光出力は、赤色光の直流成分(R’)と脈動成分(ΔR’)が重畳された波形となっている。
また、図2の(b)では、横軸を時間、縦軸を受光出力とすると、フォトダイオード5での受光出力は、赤外光の直流成分(IR’)と脈動成分(ΔIR’)が重畳された波形となっている。
図3は、信号源(S)と出力(O)のモデルをMix-Matrixで示したものである。
図3において、S1及びS2は二つの信号源であって、S1は信号(脈波成分),S2はノイズ(雑音成分)とすると、その信号源ベクトルSiは、
[Si]=[S1; S2]で表すことができる。
また、測定信号として、O1及びO2が得られる。
この測定信号のベクトル[O]は、
[O]=[O1; O2]で表すことができる。
S1→O1 への伝達係数=M11=1:即ちS1はO1にそのまま現れる。
S2→O2 への伝達係数=M22=N :(ノイズ成分の比(φ))
S1→O2 への伝達係数=M21=S:(信号成分の比(φ))
S2→O1 への伝達係数=M12=1:即ちS2はO2にそのまま現れる。
O1=S1+S2(信号S1+ノイズS2)
O2=S1*S+S2*N
即ち、各伝達係数は行列で次のように表すことができる。
[A]=[1 1;S N ]
[Se]=[B]*[O]ここで,[B]が[A]の逆マトリクスであれば,[Se]=[Si]となる。
[Se]を求めるためには、測定信号Oは既知であるから、[B]の要素を推定すれば良い。
図4は、観測(測定)信号から信号源の推定を行うための分離マトリクス[B]の信号関係を示す図である。
信号と出力間の伝達マトリクス[A]は、
[A]=[1 1;S N ]であるから、逆マトリクス[A]-1=[B]は、
[B]=(1/△)*[N −1;−S 1]であり、図4に示す。
これは2*2行列である。
上記[B]は分離マトリクスであり分離マトリクス内のSとNを推定する。
・[B]マトリクスのSにSを既知として既知の値sを代入する。
・分離マトリクス[B]のNに仮値nを定める。
この操作によって、Sは既知の値を代入したので、図5に示す如く、Se1とSe2が描く平行四辺形の一辺はX軸に平行となる。
[B][A]=(1/Δ)*[n −1;−s 1]*[1 1;S N]
=(1/Δ)*[n−S n−N;S−s N−s]
ここでは、既知の値sが正しく代入され、Nは仮の値であるnが代入されているので、
真の値Nと仮の値nの差だけ、Y軸に沿う傾斜は傾くことになる。
一方、Sは真の値が代入されているので、単位マトリクスの1列目が(1 0)’となるため、X軸上に平行四辺形の一辺が重なることになる。
上式右辺マトリクスの2列目の比をmとする。
m=(N−s)/(n−N)
ここで,仮値nを1とすると,m=(N−s)/(1−N) (1式)
となり,未知数Nは次のようになる。
N=(s+m)/(1+m)
mが得られれば,Nを知ることができる。そしてmは次のように求められる。
[Se]=[Se1;Se2]を求め、その[Se]から分散・共分散マトリクス[σ]を作る。
[σ]=[Se]*[Se]’
ここで,その係数にのみ着目すると次のように表される。
[σ]=1/Δ2*[1−s 1−N;s−s N−s]*[1−s s−s;1−N N−s]となる。展開すると次のようになる。
[σ]=1/Δ2*[(1−s)2+(1−N)2 (1−N)*(N−s);
(N−s)*(1−N) (N−s)2]
・分散・共分散マトリクス[σ]の2列目の傾斜を下記の式で求める。
m2=[σ(2,2)]/[σ(1,2)]
=(N−s)2/(1−N)*(N−s)
=(N−s)/(1−N) (2式)
m2は、図5のY軸に対する傾斜に等しく、したがって,m2が分かると下式にm2を代入することでNが計算できる。
N=(s+m2)/(1+m2)
・これで、既知のSに加えNが確定したから、分離マトリクス[B]が決定し、
[Se]=[B]*[O]によって信号源ベクトル[Se]が計算できる。
次に図6及び図7を用いて本発明の第2の実施形態である回転法によるSとNの推定法の説明を行う。
二つの信号源S1とS2の混合からなる測定信号O1をX軸、測定信号O2をY軸にしてリサージュ波形を描くと、図6に示す如く平行四辺形が描かれる。
そして、この平行四辺形は、二つの傾斜を有しており、各々の傾斜をn1とn2とする。
この傾斜n1はS又はNに、n2はN又はSに一致している。
仮に、S>Nであれば、傾斜が大きいn2の方がSであり、N>Sであれば、傾斜が大きいn2の方がNになる。
しかし、他の二頂点P3とP4の座標は容易には分からない。
そこで、平行四辺形を両頂点P1、P2を結ぶ線分と、X軸の成す角度で回転させて、
図7に示す図形とする。
回転によって、他の二頂点P3及びP4がY軸方向の最大値P3と最小値P4となるので、その最大値と最大位置が分かる。
また、両頂点P1とP2はX軸上にあるので、その座標は分かり、これらの情報から傾斜n1とn2を知ることができる。
SとNが確定したら、上記の分離マトリクス[B]が決まるので、[Se]=[B]*[O]で、信号源[Se]が計算できる。
なお、上記の回転法によるSとNの推定法では、SとNの両方を未知の値として推定を行っているが、Sの値が既知であれば、より簡単な操作でNの値が求められる。
そして、SとNが確定したら、上記の分離マトリクス[B]が決まるので、[Se]=[B]*[O]で、信号源[Se]が計算できる。
図8の(a)において、a-2は信号波形(図3におけるS1に相当する。)であり、a-1はノイズ波形(図3におけるS2に相当する。)である。
図8の(b)におけるb-2は第1の測定波形(図3のO1に相当する。)であり、b-1は第2の測定波形(図3のO2に相当する。)である。
b-2には信号波形a-2にノイズ波形成分が重畳されており、b-1にはノイズ波形a-1に信号波形成分重畳されている。
図8の(c)におけるc-1はノイズ波形a-1のリサージュ波形であり、c-2は信号波形のリサージュ波形でり、c-3は二つの信号源S1とS2の混合からなる測定信号O1をX軸、測定信号O2をY軸にしてリサージュ波形を描いた状態を示す図である。
また、図8の(d)は、信号処理結果を示すもので、d-2は信号波形でり、d-1はノイズ波形である。
図1の発光素子1、2から交互に発光される光を時間的に連続させて、図2の信号S1とし、生体組織4を透過してフォトダイオード5で受光して電気信号に変換された脈波データの内、赤色光を測定信号O1とし、赤外光を測定信号O2とする。(この関係は逆でも良い。)
この場合、信号成分は、赤色光と赤外光とでは異なった値であるが、測定時がほぼ同時になるのでノイズ成分は両者に共通であるので、赤色光による測定信号O1及び赤外光による測定信号O2からノイズ成分の除去が可能である。
また、同一の媒体からほぼ同時に抽出される2つの同種の信号を処理して共通の信号成分を抽出する計算処理負担を軽減した信号処理が実現できる。
また、体動によるノイズが脈波データ信号に生じた場合であっても、脈波信号からノイズを除去し、精度よく脈拍や血中の吸光物質の濃度を求めることができるので、産業上の利用可能性は極めて大きい。
2 発光素子
3 駆動回路
4 生体組織
5 フォトダイオード
6 変換器
7 マルチプレクサ
8 フィルタ
9 A/D変換器
10 処理部
11 表示部
12 ROM
13 RAM
Claims (7)
- 同一の媒体から抽出される2つの測定信号O1,O2から、2つの信号源S1,S2を分離マトリクスにより分離するパルスフォトメータに用いられる信号処理方法であって、
前記2つの信号源S1,S2と前記2つの測定信号O1,O2との関係を伝達マトリクス
[A]=[1 1;S N]とし,
但し、S及びNは、それぞれ信号成分及びノイズ成分の伝達係数とする。
前記分離マトリクスが前記伝達マトリクスの逆マトリクス
[B]=(1/Δ)*[N −1;−S 1]であるとして、
(a)前記Sは既知であるとして既知の値を代入すると共に、前記Nに仮値nを代入して、[Se]=[B]*[O]によって推定信号源ベクトル[Se]=[Se1;Se2]を求めると共に、分散・共分散マトリクス[σ]=[Se]*[Se]’を作成するステップと、
但し,測定信号ベクトル[O]=[O1;O2]とする。
(b)前記分散・共分散マトリクス[σ]の2列目の傾斜m2を、m2=[σ(2,2)]/[σ(1,2)]式から求めるステップと、
(c)N=(S+n*m2)/(1+m2)からNを求めるステップと、
但し、nはNの仮値とする。
を含むことを特徴とするパルスフォトメータに用いられる信号処理方法。 - 請求項1に記載のパルスフォトメータに用いられる信号処理方法におけるステップ(a)〜(c)に代えて、
(d)前記測定信号O1をX軸に、前記測定信号O2をY軸にして、リサージュ波形を描くステップと、
(e)前記リサージュ波形で描かれた平行四辺形の原点に近い2つの辺の傾斜n1及びn2を求めるステップと、
(f)前記2つの辺の傾斜は、n1=SorN,n2=NorSと、SとNの関係S<N、またはS>Nの関係と、n1とn2の大小関係とからS及びNを求めるステップと、
を含むことを特徴とするパルスフォトメータに用いられる信号処理方法。 - 前記2つの辺の傾斜n1及びn2を求めるステップ(e)は、
(e-1)前記リサージュ波形で描かれた平行四辺形の原点に最も近い頂点P1及び原点に最も遠い頂点P2を求めるステップと、
(e-2)前記平行四辺形の前記両頂点P1及びP2を結ぶ線分を、X軸に平行となるまで回転させるステップと、
(e-3)回転後の平行四辺形から、他の頂点P3及びP4を求めるステップと、
(e-4)前記求めたP1〜P4により、前記2つの辺の傾斜n1及びn2を求めるステップと、
を含むことを特徴とする請求項2に記載のパルスフォトメータに用いられる信号処理方法。 - 前記S及びNを求めるステップ(f)は、前記Sを既知の値として前記Nだけを求めることを特徴とする請求項2又は3に記載のパルスフォトメータに用いられる信号処理方法。
- 前記求めたS及びNを利用して、前記分離マトリクス[B]を求め、[Se]=[B]*[O]式から推定信号源ベクトル[Se]を求めるステップ(g)を更に含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のパルスフォトメータに用いられる信号処理方法。
- 異なる2つの波長の光を生体組織に照射する発光手段と、
前記発光手段から発生し生体組織を透過又は反射した各波長の光を電気信号に変換する第1及び第2の受光手段と、
請求項1〜5のいずれか1項に記載のパルスフォトメータに用いられる信号処理方法による処理を行う処理部であって、
前記第1及び第2の受光手段で変換された前記電気信号を前記2つの測定信号O1,O2として使用する処理部と、
を備えることを特徴とするパルスフォトメータ。 - 前記処理部によって信号処理されてノイズ成分の除去された信号成分を用いて、動脈血中の酸素飽和度、特殊ヘモグロビン濃度又は注入色素濃度のうち少なくとも1つを演算することを特徴とする請求項6に記載のパルスフォトメータ。
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