JP4469025B2 - 細胞の抗原による免疫調整 - Google Patents
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Description
本発明は一般に細胞の抗原による免疫調整(antigenic modulation)に関し、さらに詳しくは非免疫原性化合物によって変性された細胞から成る非免疫原性細胞組成物およびそのような非免疫原性細胞の使用に関する。
発明の背景
本出願を通じて、種々の刊行物が、多くは括弧内に引用されている。これらの刊行物の完全な引用が詳細な説明の末尾に示されている。
急性の組織拒絶反応は二つの主な臨床状況:1)輸血および2)組織移植で観察される。両方の情況において、後にさらに詳細に説明するが、抗体結合と補体の固定が提供者組織(提供者組織とは血液または組織を言う)の破壊のもととなる二つの主な機構である。急性の拒否反応を抑制するための従前の手段は、組織の整合と薬理学的な介入に集中した。これらの手段に係わらず、かなりの数のしばしば生命を脅かす急性の組織拒絶反応が起こり続けた。
輸血は、多数の急性および慢性の医療問題の処置における重大な構成要素である。それは、外傷性の損傷による多量の失血から、サラセミアおよび鎌状赤血球貧血のような疾病を治療する長期の輸血に亘る。大抵の急性の損傷では、簡単な血液型分類(ABO/rh)が適切な提供者の確認に充分である。しかし、時により稀な血液型に遭遇することがあり、この場合適切な整合が急速には見つからず、生命を脅かし得る状況である。普通少数派ではあるが、長期の輸血を受ける個体(例えば鎌状赤血球貧血およびサラセミアの場合)においてもっとしばしば問題が起こる。簡単な血液型分類では適切な整合を決定するのに不充分なことが多い。これらの個体は少数の赤血球抗原に輸血反応を発生させるからである。これらの少数の赤血球抗原への輸血反応は、適切な血液提供者を確認するのをほとんど不可能にする(ビシンスキーら、1990)。
現在まで、上記の状況に対する唯一の解決法は自己由来の血液(冷凍または4℃)を貯蔵し、稀な血液型の潜在提供者の血液銀行登録を保有し、少数の血液提供を奨励することである。これらの段階のすべては賢明であり、種々の面で有効であるが、それでも適切な(または満足な)血液の整合が得られない状況が起こる。従って、そうでなければ免疫原性の(または直接免疫学的に認められる)赤血球を偽装する方法および薬剤に対する需要が存在する。
同様に、一人のヒトから他のヒトへの臓器(例えば腎臓および肝臓)の移植は、提供者と受領者の間の正確な免疫学的一致の欠如により困難になることが多い。時に、二次免疫学的応答が起こる前にさえ、移植された臓器が受領者の免疫システムによる直接の攻撃に曝されることもある。このいわゆる「過敏性拒絶反応」はしばしば生命を脅かし、明らかに受領者への移植の有効な統合を妨げる。従って、臓器移植の内皮表面の即時の認識を防止して、急性の移植拒絶反応の過程を和らげまたは停止する方法および薬剤に対する需要が存在する。同様の状況において、一つの種から他の種への移植(「異種移植」)はもっと恐ろしい免疫学的傷害に直面し、外来の内皮表面の免疫学的認識を妨害する方法によって大いに助けられる。
蛋白質は、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(ミッツ及びサマリア、1961)およびポリビニルピロリドン(フォンスペクトら、1973)のような可溶性ポリマーの共有結合によって変性されてきた。種々の精製された抗原性蛋白質が、ポリエチレングリコールの共有結合によって変性され、出来た蛋白質を非免疫原性にした。アブチョウスキーら(1977a)は、メトキシポリエチレングリコールの共有結合によって純ウシ血清アルブミン(BSA)を変性し、BSAを非免疫原性にすることを開示している。アブチョウスキーら(1977b)は、メトキシポリエチレングリコールの共有結合によって純ウシ肝臓カタラーゼを変性し、カタラーゼを非免疫原性にすることを開示している。ジャクソンら(1987)は、結合剤として塩化シアヌルを使ってモノメトキシポリエチレングリコールで純オボアルブミンを変性することを開示している。出来たオボアルブミンは非免疫原性である。種々の報告がポリエチレングリコール(PEG)でコートしたリポソームが改善された循環時間をもつことを示している(クリバノフら、1991;シニアら、1991;マルヤマら、1992;およびラシック、1992)。
移植されたランゲルハンス島の免疫原性を低下させるために、ランゲルハンス島を半透膜のなかにマイクロカプセル化した(レイシら、1991;リム、1980)。ソウニーら(1994)はポリエチレングリコールテトラアリレートのハイドロゲルでラットのランゲルハンス島をコートした。重要なのは、PEGはランゲルハンス島の細胞膜に直接配合されたのではなく、細胞をPEG含有のハイドロゲルで囲んだことである。
ザリプスキーおよびリー(1992)は、ポリペプチドの変性に官能基をつけたポリエチレングリコールの使用を論じ、メリル(1992)およびパークおよびワンキム(1992)は、いずれもポリエチレンオキシドによる蛋白質の変性を開示している。
デイビスらの米国特許第4,179,337号は、500ないし20,000ダルトンの分子量をもつポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールに結合した酵素およびインシュリンのような純ポリペプチドを開示し、生理学的に活性な非免疫原性の水溶性ポリペプチド組成物を提供している。このポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールは、活性の損失からポリペプチドを守り、この組成物はほとんど免疫原性応答なしに哺乳類の循環系に注射できる。
サイファーらの米国特許第5,006,333号は、ポリアルキレングリコールが約35,000ないし1,000,000の平均分子量をもつポリエチレングリコールまたはポリエチレン−ポリプロピレングリコール共重合物であるポリアルキレングリコールの1ないし5個の鎖に純スーパーオキシドジムスターゼを結合させて製造した、生物学的に持続性で、水溶性で、ほとんど非免疫原性で、ほとんど非抗原性のスーパーオキシドジムスターゼの結合体を開示している。
ウードルらの米国特許第5,013,556号は、ポリエチレングリコールで誘導体化したホスファチジルエタノールアミンで例示されるようなポリアルキルエーテルで誘導体化した両親和性の脂質を1ないし20モルパーセント含むリポソーム組成物を開示している。
サノらの米国特許第5,214,131号は、ポリエチレングリコール誘導体、そのポリエチレングリコール誘導体で変性した純ペプチド、およびその製法を開示している。このポリエチレングリコール誘導体はペプチド中のグアニジン基を変性する能力がある。ポリエチレングリコール誘導体で変性されたペプチドは極端に安定であり、生物学的クリアランスがかなり遅延し、長期にわたってその生理学的活性を保持する。
純蛋白質またはペプチドでなく、全細胞と組織と臓器を非免疫原性にする方法に対する需要が継続して存在している。
発明の要約
本発明は哺乳類、好ましくはヒトの細胞の抗原性および凝集を調整する方法を提供する。この目的のために、本発明はもとの細胞への非免疫原性化合物の共有結合を与える。本発明に従って有効に変性される細胞には、無核細胞(血小板および赤血球)および有核細胞(上皮細胞、内皮細胞、およびリンパ球)が含まれる。非免疫原性化合物は、その細胞に共有結合して細胞を抗原的に静かにさせ得る無毒性または生理学的に受容可能な高分子物質であればなんでもよい。非免疫原性化合物または物質は、抗原決定基に直接結合してもよく、架橋部分を介して結合してもよく、または抗原決定基を介して細胞表面に結合することなく、抗原決定基を単にマスクしてもよく、また非免疫原性化合物の一部が抗原決定基に直接、または架橋部分を介して結合し、その他の部分が抗原決定基を介して細胞表面に結合することなしに細胞表面に直接、または架橋部分を介して結合してもよい。或る実施態様では、非免疫原性化合物はポリエチレングリコール(PEG)またはその誘導体である。細胞のPEG変性の潜在的な応用には下記が含まれる:1)(少数の血液型に対する既存の抗体をもつため)整合しにくい人への輸血を含む、不適合血液から来る輸血反応または長期の輸血による少数の血液型抗原への感作を減らすためのPEG−誘導体化赤血球(RBC);2)急性の組織拒絶反応を防ぎ/減らすための移植前の提供者組織の血管内皮のPEG−誘導体化;3)酵素欠陥、他の先天性の代謝の過誤、または他の種類の不完全細胞機能を補正するためのPEG−誘導体化細胞の移植;4)付随する急性の貧血を治し、輸血した細胞の感染を防ぐためのマラリア感染個体への誘導体化RBCの輸血;および5)主要(例えばABO)血液型で提供者と異なる未知の血液型の人への輸血。意外にも、PEGで変性した赤血球は、対照細胞に比べてインビトロおよびインビボで正常な生存率を有する。
細胞の膜蛋白質への直接または間接の非免疫原性化合物(例えば、PEGまたはメトキシポリエチレングリコールのようなPEG誘導体、またはポリエチレンオキシドのようなPEG−類似化合物)の共有結合は、これらの細胞の抗原性認識を減少させる。これを達成するための入手可能な反応および試薬の二三を図1に要約する。同様に、細胞膜へのPEG−変性の燐脂質/遊離脂肪酸の挿入は、同様の目的に役立つ。下記の実施例の示すところでは、意外にも(1)正常な赤血球および他の細胞を溶血なしにPEGを用いて誘導体化することが可能であり、(2)誘導体化された赤血球はもとのままであり、正常な形態を示し、(3)細胞表面のPEG変性は、事実、組織/臓器の拒絶反応のもととなるABO血液型のような抗原決定基、上皮細胞−特異性の抗原(ESA)およびMHC抗原を「隠し」、(4)誘導体化された細胞は実験動物の循環中に正常に生存し、(5)一つの種からのPEG−誘導体化赤血球は動物の循環において他の種よりずっと優れた生存率をもつ。
上述のように、(主要および少数の両方の赤血球抗原に対する)輸血反応は、重大な臨床上の問題を示す。大抵の場合、これらの輸血反応は実際には血液銀行では日常測定されない少数の表面抗原から生ずる。適切な血液型の整合が見つからない状況、または少数の赤血球抗原への感作が起こった場合、PEG−変性の赤血球は赤血球抗原決定基の認識を減少させ/妨害するのに使用できる。本発明の応用は、ヒト、または同種または他種の動物への輸血に使用できる動物の赤血球の変性のための方法にも導くことができる。本発明の応用はさらに、マラリアの侵入または補体のような因子によるオプソニン処理を防ぐための赤血球の変性のための方法にも導くことができる。
さらに、本開示に含まれるデータに基づいて、本発明の範囲は、外来の組織がインビトロまたはインビボで処理され、または導入される他の領域への血液銀行業務を越えて広がる。主な関心のある一つの分野は、組織移植へのPEG−変性組織(特に血管内皮の共有変性)の使用である。適切なHLA−整合にも係わらず、多くの臓器移植は即時の組織拒絶反応の結果として失敗に終わる。この拒絶反応は、主に血管内皮の水準で起こり、血管閉塞、組織低酸素症/虚血および臓器移植の最終的損失を招く。ここに開示したPEG−細胞の誘導体化の化学に基づけば、活性化されたPEGの溶液で組織の血管を灌流することが可能になる。これが血管壁(すなわち内皮細胞)を変性し、上記の即時の組織拒絶反応を防ぐかまたは減少させる。すなわち、この技術は組織移植の成功率を向上させることができる。
すなわち本発明は、細胞表面および細胞表面に抗原決定基をもつ細胞、および直接か、または下記の架橋分子から誘導される架橋部分によって細胞表面に共有結合した非免疫原性化合物から成る非免疫原性細胞組成物を提供する。この非免疫原性化合物は、細胞表面での抗原決定基の認識を防ぐ働きをする。或る実施態様では、架橋部分は細胞表面の抗原決定基に直接共有結合している。別の実施態様では、架橋部分は細胞表面の非抗原部位に共有結合してもよく、この非抗原部位はその非免疫原性化合物の長鎖長のおかげでカムフラージされ、またはマスクされる。
本発明はさらに、非免疫原性細胞の製造法を提供する。この方法は、直接または架橋部分の手段によって細胞の表面に非免疫原性化合物を共有結合させて、非免疫原性化合物が細胞表面の抗原決定基の認識を阻害して非免疫原性細胞を形成するようにすることから成る。この方法によって製造された非免疫原性細胞も本発明によって提供される。
本発明の概念は、また食菌作用または補体の仲介するまたは細胞の仲介する細胞の破壊を減少させる方法も提供することができる。この方法は、対象への導入のための細胞を選択し、その細胞は細胞表面および細胞表面に抗原決定基を有しており、或る量の非免疫原性化合物を直接または架橋部分の手段によって細胞の表面に共有結合させ、結合した非免疫原性化合物が細胞表面の抗原決定基の認識を阻止して非免疫原性細胞を作り、対象内に非免疫原性細胞を導入し、変性の前の食菌作用または補体の仲介するまたは細胞の仲介する細胞の破壊に比べて、非免疫原性細胞の食菌作用または補体の仲介するまたは細胞の仲介する破壊が減少することから成る。
細胞の破壊は、食菌作用(phagocytosis)の結果起こるか、または細胞上の抗原決定基への特定の免疫グロブリンの結合の後、食菌細胞の関与なしでの補体の介入する溶菌(lysis)の結果起こる。非免疫原性化合物または物質の共有結合を通じて抗体の結合を阻止することによって、食菌作用が阻止されるだけでなく、補体の介入する溶菌および他の種類の細胞の介入する破壊も阻止される。
さらに提供されるのは、輸血への逆反応を減少させる方法であり、この方法は対象への輸血のための赤血球を選択し、この赤血球は細胞表面および細胞表面に血液型抗原決定基を有しており、細胞表面の血液型抗原決定基を封鎖する能力のある非免疫原性化合物を細胞表面に直接または架橋部分の手段によって共有結合させて非免疫原性赤血球を作り、対象を非免疫原性赤血球で輸血し、非免疫原性赤血球の輸血への逆反応を、変性の前の赤血球の輸血に比べて減少させることから成る。
さらにまた提供されるのは、移植された細胞の拒絶反応を減少させる方法であり、この方法は対象への移植のための細胞を選択し、この細胞は細胞表面および細胞表面に抗原決定基をもち、細胞表面の抗原決定基の認識を阻止する能力のある非免疫原性化合物を細胞表面に直接または架橋部分の手段によって共有結合させて非免疫原性細胞を作り、対象内に非免疫原性細胞を移植し、移植された細胞の拒絶反応を変性の前の細胞の拒絶反応に比べて減少させることから成る。
本発明は抗体によってまたは他の細胞間相互作用によって誘起されるような有核および無核の細胞の凝集を減少させる方法を提供する。この方法は、細胞表面の抗原決定基の認識を阻止する能力のある非免疫原性化合物を細胞表面に直接または架橋部分の手段によって共有結合させて非凝集細胞を作り、非凝集細胞の抗体誘起の凝集を、変性の前の細胞の抗体誘起の凝集に比べて減少させることから成る。
ここに使用される「架橋部分(linking moiety)」または「架橋体(linker)」という語は、非免疫原性分子および細胞表面の両方に共有結合、錯体化またはキレート化によって結合して、少なくとも一つの非免疫原性化合物を少なくとも一つの細胞表面の官能基または構造に結合させる少なくとも二価の有機基を言う。架橋部分は以下に説明するような反応性の架橋体分子から誘導できる。
【図面の簡単な説明】
本発明のこれらのおよび他の特徴および長所は、添付の図面と関連させて読んだ際に、好ましい実施態様の下記の説明から明白となろう。
図1は、本発明による非免疫原性細胞組成物の或る実施態様の調製の図解である。
図2は、本発明による非免疫原性細胞組成物の別の実施態様の図解である。この実施態様では、非免疫原性化合物はポリエチレングリコールまたはその誘導体であり、活性化されたPEG(PEG−架橋体)は細胞表面の抗原決定基に共有結合して(直接抗原部位を閉鎖し)、また細胞表面の非抗原部位に共有結合して(その長鎖長によって抗原部位を間接に閉鎖する)。
図3は、赤血球のモノメトキシポリ(エチレングリコール)(mPEG)変性が濁度測定で定義された抗−A抗体誘起のRBC凝集の投与量依存の阻止を起こすことを示すグラフである。
図4は、赤血球のmPEG変性が赤血球の溶菌をほんの少ししか増加させないことを示す棒グラフである。
図5は、赤血球のmPEG変性が赤血球の浸透圧に対する脆さに影響を与えないことを示すグラフである。
図6は、mPEG変性のA型赤血球がかなり少ない抗−A抗体を結合することを示す棒グラフである。
図7は、mPEG変性のヒツジ赤血球がヒト末梢血単球による食菌作用をかなり起こし難いことを示す棒グラフである。
図8は、対照のマウス赤血球と活性化されたPEGで変性されたマウス赤血球のインビボの生存率に有意差のないことを示すグラフである。
図9は、ヒツジ赤血球(ベタ印)はマウスの循環系に入って生存するが、変性されていないヒツジ赤血球(空き印)はそうならないことを示すグラフである。
図10は、対照およびmPEGで誘導体化したPBMC(末梢血単球細胞)のMLC分析において、ドナーAのPBMCが抗原的に外来のドナーBのPBMC(パネルA)に応答し、ドナーBのPBMCはドナーA(パネルB)に応答することを示すグラフである。
図11は、血小板の凝集がmPEGで血小板の表面を共有結合的に変性することによって防止されることを示すグラフである。
図12は、上皮細胞のmPEG変性が表面抗原の抗体認識を阻止することを示す棒グラフである。
図13は、無変性の赤血球およびmPEG変性の赤血球の酸素解離曲線を示すグラフである。
図14ないし16は、血清誘起の赤血球の凝集の種別に対する官能化されたポリエチレングリコールまたはその誘導体の効果を示すグラフである。
詳細な説明
本発明は、細胞表面および細胞表面に抗原決定基をもつ細胞、細胞表面に共有結合した架橋部分、および架橋部分に共有結合して細胞表面の抗原決定基の認識を阻止できる非免疫原性化合物から成る非免疫原性細胞組成物を提供する。別の方法として、非免疫原性化合物が細胞表面のNH2またはSH基と反応性のあるカルボン酸、アルデヒド、ケタールまたはアセタールのような基を含む場合、直接細胞の表面に結合できる。
細胞は、細胞表面に近接できる抗原決定基を有した適切な細胞ならなんでもよい。適した細胞には、無核細胞、例えば造血細胞、すなわち赤血球または血小板、または有核細胞、例えば血管内皮細胞、PBMC、肝細胞、神経細胞、膵臓細胞、または上皮細胞が含まれる。
細胞表面の抗原決定基は、抗原蛋白質、抗原炭水化物、抗原糖、抗原脂質、抗原糖蛋白質などの存在によることができる。「抗原」決定基は、細胞のマラリア侵入または細胞のオプソニン化にも含まれ得る。例えば、赤血球はその表面に抗原をもち、これがABO/rhの血液型を決める。これらの抗原はしばしば血液型抗原決定基と呼ばれる。これらの抗原は不和合宿主によって認識され、提供者の細胞は急速に破壊される。これは(マクロファージ、好中球、および天然のキラー細胞のような食細胞による)自然免疫の強化または(抗体およびTリンパ球による細胞の介入による免疫による体液の免疫を含む)特定および後天性免疫の刺激を含むことができる。いずれにしても、細胞は外来として認識され、免疫応答を誘い出す。
この免疫応答を細胞の破壊から守るために、本発明は細胞の抗原性の変性を含む。この変性は細胞に非免疫原性化合物を結合させることによって達成される。本発明に使用するのに適切な非免疫原性化合物は、細胞表面の抗原決定基の認識を阻止できる非免疫原性化合物である。この化合物は一般に長鎖化合物であり、この長鎖が抗原決定基を立体的に封鎖できる。そのような非免疫原性化合物には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、混合ポリプロピレン−ポリエチレングリコールのようなポリアルキレングリコール、その誘導体(メトキシポリエチレングリコールを含む)、デキストラン、セルロース化合物、フィコール、およびアラビノガラクタンのような或る種の多糖類、およびポリウレタンを含む無毒性、親水性の合成ポリマーが含まれる。これらの化合物の有用な分子量は、約100〜500から100,000〜200,000またはそれ以上の範囲とすることができる。
本発明による現在好ましい非免疫原性化合物は、ポリエチレングリコールまたはその誘導体である。ポリエチレングリコールまたはその誘導体は非常に長い鎖長をもつ分子である。この非免疫原性化合物(例えばポリエチレングリコールまたはその誘導体)は、架橋部分を介して細胞表面の抗原部位(例えば抗原決定基)に直接結合させることができ(抗原性の直接変性)(図1および図2参照)、または架橋部分を介して細胞表面の非抗原部位に結合させることができる。いずれの場合も、非免疫原性化合物(例えばポリエチレングリコールまたはその誘導体)の長鎖は、細胞表面の抗原部位を有効に封鎖する(抗原性の間接変性)(図2)。いずれの実施態様でも、非免疫原性化合物(例えばポリエチレングリコールまたはその誘導体)は架橋部分によって細胞表面に結合し、架橋部分はPEGと反応し得る架橋体分子から誘導される。ポリエチレングリコールまたはその誘導体と架橋体分子との組み合わせは一般に「活性化された」ポリエチレングリコールまたはその誘導体と呼ぶ。
ポリエチレングリコール(PEG)およびその誘導体は公知である。ポリエチレングリコールは式:
H(OCH2CH2)nOH
を有し、nは4より大きいかまたは等しく、約20,000ダルトンまでの分子量をもつ。しかし、約200,000までまたはそれ以上の分子量をもつポリエチレングリコールおよびその誘導体も市販されており、これも単独または低分子量の物質と組み合わせて本発明の実施に使用できる。ポリエチレングリコールの種々の誘導体は、HまたはOH末端基の置換体を含み、例えばポリエチレングリコールエーテル(例えばPEG−O−R;PEG−O−CH3;CH3−PEG−OHまたは「mPEG」;PEGの2,4−ジニトロフェニルエーテル)、ポリエチレングリコールエステル(例えばPEG−O2C(CH2)14CH3;PEG−O2CCH2CH2CO2−アトロピン)、ポリエチレングリコールアミド(例えばPEG−O2C(CH2)7CONHR;mPEG−O2CCH2CH2CONH(CH3)CHCH2C6H5;PEG−O2CCH2CH2CONHCH2CH2−NAD+)、ポリエチレングリコールアミン(例えばPEG−NH2;PEG−NH(CH2)6NH2;PEG−OCH2CH2NH2;mPEG−NH2)、ポリエチレングリコール酸(例えばPEG−O2C(CH2)2CO2H;PEG−OCH2CO2H;PEG−O2C(CH2)7CO2H)、ポリエチレングリコールアルデヒド(例えばPEG−O−CH2−CHO)、および求電子性誘導体(例えばPEG−Br;PET−OSO2CH3;PEG−OTs)が生成できる。種々のフェニル部分もPEGのHやOHを置換でき、例えば上記のPEGの2,4−ジニトロフェニルエーテルができる。メトキシポリエチレングリコール(分子量2,000〜8,000)は本発明に使用するのに好ましいPEG誘導体である。
誘導体の合成を含むポリエチレングリコールおよび活性化されたその誘導体の完全な説明のためには、下記の文献を参照されたい。ハリスら、1984;ハリス、1985;ザリプスキーおよびリー、1992;パークおよびキム、1992;メリル、1992;および米国特許第4,179,337号および第5,214,131号。その各々の内容は本明細書に添付されている。上記に表示したポリエチレングリコール誘導体を含む個々の非免疫原性化合物は、単に例示のためのものであって、本発明はそれらの個々の例に限定されることを意図したものではない。
本発明によれば、これらの非免疫原性化合物(例えばポリエチレングリコール分子またはその誘導体)は架橋部分の手段によって細胞表面に共有結合される。これらの架橋部分はポリエチレングリコールまたはその誘導体を公知の適切な架橋体分子、例えば塩化シアヌル、蟻酸イミダゾリル、コハク酸スクシンイミジル、グルタール酸スクシンイミジル、N−ヒドロキシスクシンイミド、4−ニトロフェノール、および2,4,5−トリクロロフェノールと反応させることによって調製できる。これらの架橋体分子はPEGを「活性化(activate)」するが、この語も公知である。公知の架橋部分および分子の例をともなうPEGの活性化の説明については、ハリス、1985を参照されたい。上記に表示した架橋体分子は単に例示のためのものであって、本発明はそれらの個々の例に限定されることを意図したものではない。当業者が認めるように、上記および図1に開示した架橋体分子は非免疫原性化合物、例えばPEGまたはMPEGの水酸基のような反応性基と反応し、細胞表面のペプチジルまたは他のアミノ酸残基のNH2、または場合によりSH基とも反応して、それらを共有結合させ、この場合、架橋体分子は一段階または数段階で、下記の表1に示すような二価の架橋部分に変換される。
多数の「活性化された」メトキシポリエチレングリコールが市販されており、そのmPEG(分子量5000)はヒドロキシル末端基のところで架橋体分子に結合している。これらにはメトキシポリエチレングリコール(mPEG)パラ−ニトロフェニルカーボネート、mPEG塩化シアヌル、mPEGコハク酸スクシンイミジル、mPEGトレシレート、およびmPEGイミダゾリルカルボニルが含まれる。例えば、I.ジャクソンら、Anal.Biochem.565、114頁(1987年);A.アブチョウスキーら、J.Biol.Chem.252、3578頁(1977年);F.M.ベロニーズら、Appl.Biochem.Biotech.11、141頁(1985年);C.デルガドら、Biotech.Appl.Biochem.12、119頁(1990年);C.O.ビーブチェンプら、Anal.Biochem.131、25頁(1983年)を参照されたい。
架橋部分の手段によって細胞表面の蛋白質やペプチドのような反応性基に非免疫原性化合物(例えばポリエチレングリコールまたはその誘導体)を共有結合させること(すなわち、非免疫原性化合物の細胞表面への共有結合)に含まれる化学は公知であり、ハリス、1985;ハリスら、1984;およびザリプスキーおよびリー、1992に詳細に説明されている。
好ましくは、赤血球の化学的変性のためには、mPEGの一端の遊離の水酸基を塩化シアヌルで活性化し、ヘモグロビンと反応させて活性化を確認した。つぎに、ヒトまたは動物起源の赤血球を0.9%NaCl水溶液で、好ましくは約2%(v/v)に希釈し、pH滴定を使って、pHを約9ないし10、好ましくは9.2に保持しながら、NaOH溶液を徐々に添加した。上記に開示したように活性化した1mMないし10mMのmPEGを2%(v/v)の赤血球溶液に添加し、これをつぎにゆっくり混合しながら室温で反応させた。反応終了の後、赤血球を遠心分離で沈澱させ、PBS(燐酸塩緩衝塩溶液、pH7.4)に懸濁させ、再び遠心分離した。この沈澱および懸濁を繰り返すことによって最終の赤血球が得られた。この方法は、たとえ貯蔵期限が切れていてもヒトまたは動物起源の赤血球に使用できる。従来のmPEG化学変性に使用されるpH9.2の硼酸塩緩衝液は使用しなかった。その代わりに、0.9%NaCl水溶液で希釈した赤血球溶液のpHを調節するのにpH滴定を使用した。
この方法で化学変性した赤血球が血液型の如何にかかわらず輸血に使用できるかどうかを確かめるために、血液型抗原−抗体反応スライド試験およびマイクロウエル沈澱試験を行った。スライド試験は輸血の前に血液型を確かめるのに一般に使用される方法である。この方法では、赤血球および抗−A、抗−B及び抗−D(Rh)抗体、赤血球の血液型抗体がスライド上で混合され、凝集が観察された。この方法を使った結果、mPEGで化学変性した赤血球で凝集の減少が観察された。
さらに、凝集の減少を定量的に確かめるためにマイクロウエルプレート上での赤血球の凝集および血液型抗体との結合を試験した。マイクロウエルプレートの各ウエルを異なった濃度の血液型抗体と一定の濃度の化学変性した赤血球で満たしたとき、赤血球は血液型抗体と反応して徐々にそれを沈澱させた。赤血球の凝集の程度は、ウエルの中心で赤血球の凝集を示さない血液型抗体の最終濃度として定量化した。種々の濃度のnPEGで処理した赤血球を先ず血液型抗体と反応させ、つぎに遠心分離して上澄液を得た。これをつぎに化学変性していない赤血球と反応させて上澄液に残存する血液型抗体の数を定量した。結果として、化学変性した赤血球は凝集の減少を示し、血液型抗体との結合が抑制されたことが分かった。
血液型抗体の結合と凝集の減少との関係を示す上記の結果から、赤血球の凝集がmPEGで減少し、赤血球と血液型抗体との結合を阻害することがわかった。この凝集の減少が赤血球の表面でどのように誘発されるかを決定するために、化学変性した赤血球の膜を分離し、12%SDS−PAGEおよびクーマシーブルーまたは過沃素酸による染色に供した。ABH抗原群、バンド3,4.5、PAS−1およびPAS−2の膜蛋白質が分析された。結果として、処理されたmPEGの濃度が増すに従い、バンド3および4.5およびバンドPAS−1およびPAS−2が徐々に消失し、ゲルの上部での少しずつの堆積を示した。このバンドの移動はmPEGと赤血球の膜蛋白質との直接の結合の結果である。従って、これらの膜蛋白質の抗原部分またはそのまわりの領域への共有結合によって、抗体の接近を妨害することで赤血球抗原の凝集性をmPEGが減少させることがわかる。
化学変性した赤血球がその輸血への使用に充分な酸素輸送活性を有するかどうかを確かめるために、酸素解離曲線を計算し、酸素分圧に基づいて赤血球中での酸素とのヘモグロビン結合の程度を分析した。化学変性した赤血球は一つの酸素解離曲線の形、酸素親和性、P50値、n値(協同効果を示すヒル係数)および非変性の赤血球のそれに類似の組織への酸素の輸送を示す。従って、赤血球へのmPEGの結合は酸素輸送活性の変化を起こさないことがわかった。
従って、本発明によって化学変性した赤血球は血液型の如何にかかわらず使用でき、充分な酸素輸送活性をもつ。結果としてそれは、救急輸血および移植臓器貯蔵のような目的のために、赤血球が使用されるすべての医療分野で使用できる。本発明によって化学変性した赤血球を製造する方法は、血液型の如何にかかわらずすべての血液型抗原に適用できる。この方法は非常に簡単で経済的であり、将来の大量生産のための反応器の設計に極めて有利である。
すなわち、本発明は非免疫原性細胞の製造法を提供する。この方法は、細胞表面の抗原決定基の認識を阻止できる非免疫原性化合物を細胞表面に直接または架橋部分の手段によって共有結合させ、非免疫原性細胞を作ることから成る。細胞が赤血球の場合は、この方法にはさらに対象を非免疫原性細胞で輸血することが含まれる。赤血球の上の血液型抗原決定基のような抗原決定基は非免疫原性化合物で遮蔽されるので、輸血された免疫原性赤血球は免疫応答を起こさない。上述のように、この方法は完全な血液型決定または交差整合の利用の可能性なしに迅速に赤血球を輸血する必要がある場合、または対象からの非整合の血液だけが入手できる場合非常に有用である。
細胞が組織または臓器の一部である場合、この方法はさらに対象への非免疫原性の組織または臓器の移植を含むことができる。組織または臓器の露出した抗原表面を形成する血管内皮細胞のような組織または臓器上の抗原決定基は非免疫原性化合物で遮蔽されるので、移植された非免疫原性の組織または臓器は免疫応答を誘発しない。上記のように、この方法は組織または臓器が移植されたとき酷い拒絶反応または対宿主移植片疾病を避けるのに極めて有用である。
本発明はさらに上記の方法で生産される非免疫原性の細胞を提供する。
本発明の概念はまた細胞の食菌作用を減少させる方法を提供する。この方法は対象へ非免疫原性の細胞を導入し、この際、非免疫原性の細胞の食菌作用は変性の前の細胞の食菌作用に比べて減少することから成る。非免疫原性の細胞は、対象へ導入する細胞を選択し、その細胞は細胞表面および細胞表面に抗原決定基をもち、細胞表面の抗原決定基の認識を阻止する非免疫原性化合物を、直接または架橋部分の手段によって細胞表面に結合させて、非免疫原性の細胞を産出することから成る方法によって調製される。細胞が赤血球である場合は、この方法は赤血球を非免疫原性にすることによって「外来の」赤血球の食菌作用を防ぐことができる。「外来の」赤血球は他のヒトからでもよく、他のヒト以外の対象からでもよい。どちらの場合も、食菌作用で包含される「外来の」赤血球を消去するために身体の応答が企てられるべきである。
さらに輸血への逆反応を減少させる方法が提供され、この方法は非免疫原性赤血球で対象を輸血し、この場合非免疫原性赤血球の輸血への逆反応は変性の前の赤血球の輸血に比べて減少することから成る。非免疫原性赤血球は、対象への輸血のための赤血球を選択し、その赤血球は細胞表面および細胞表面に血液型抗原決定基をもち、細胞表面の血液型抗原決定基を封鎖することができる量の非免疫原性化合物を細胞表面に共有結合させ、この場合その化合物は直接または架橋部分の手段によって細胞表面に共有結合させて、非免疫原性赤血球を製造することによって調製される。上記のように、赤血球は他のヒトからでも、ヒト以外の動物からでもよい。
また移植された細胞の拒絶反応を減少させる方法も提供され、この方法は対象に非免疫原性の変性された細胞を移植し、この場合移植された変性された細胞の拒絶反応は変性の前の細胞の拒絶反応に比べて減少することから成る。この細胞は、対象への輸血のための細胞を選択し、その細胞は細胞表面および細胞表面に血液型抗原決定基をもち、直接または架橋部分の手段によって細胞表面に非免疫原性化合物を共有結合させて、その非免疫原性化合物が細胞表面の抗原決定基の認識を阻止するようにして、非免疫原性細胞を製造することから成る方法によって調製される。細胞が対象に移植されるべき組織または臓器の一部である場合、共有結合を行う好ましい方法は活性化されたポリエチレングリコールまたはその誘導体の溶液で組織または臓器を灌流することである(すなわち、ポリエチレングリコールまたはその誘導体を先ず架橋体分子と結合させて活性化されたPEGを生成し、つぎにこれを組織または臓器上で灌流する)。灌流の間に、活性化されたPEGは架橋部分を介して細胞表面に共有結合する。
本発明は、抗体誘起の細胞の凝集の方法を提供し、この方法は細胞表面の抗原決定基の認識を阻止できる非免疫原性化合物を細胞表面に共有結合させ、この場合この化合物は多数の細胞の各々の細胞表面に直接または架橋部分によって共有結合して、非凝集性の細胞を製造し、この場合非凝集性の細胞の抗体誘起の凝集は、化合物の結合の前の細胞の抗体誘起の凝集に比べて減少することから成る。この方法は特に細胞が赤血球である場合および細胞表面の抗原決定基が血液型抗原決定基を含む場合に適用できる。
上記の方法のそれぞれにおいて、架橋体分子を先ず非免疫原性化合物と反応させて(「活性化された」化合物を形成し)、つぎに架橋体分子を細胞表面と反応させることができる。これらの過程の順番は逆にすることもでき、この二つの段階へのどんな参照も両方の順番の二つの段階をカバーできる。従って、請求の範囲および本明細書の開示に従って、架橋体分子を先ず細胞表面に結合させ、つぎに非免疫原性化合物を架橋体分子と反応させて、できた架橋部分を介してそれを細胞表面に結合させることができる。
後述の実施例において、赤血球の外因的観点のPEG変性はABO血液型のような主な抗原決定基を有効に「隠す」。これは、(1)甚だしい抗体誘起の凝集の欠如、(2)抗体誘起の凝集のかなりの減少および(3)異種起源のマクロファージによる食菌作用の減少において明白である。処理された赤血球はもとのままであり、自然発生の溶血は少ししか示さず、少なくとも48時間のインビトロの培養の後も正常な浸透圧に対する脆弱性をしめす。変性されたマウスの赤血球の「正常な」性質は、さらに正常なインビボの生存率でも示される。
PEG変性の方法は細胞によって驚くほど良く許容され、循環中に正常に生存する生成物を得る。誘導体化された細胞は抗原的に偽装され、血液型抗体によってまたは食細胞によって認識されない。多分最も驚くべきことに、一つの種からの処理された細胞は他の種の循環における未処理の赤血球よりもずっと長く生存する。
すなわち本発明は、(1)(少数派の血液型への既存の抗体をもつため)整合の困難な人への輸血を可能にするためのヒト赤血球の誘導体化、(2)提供者からの主要(例えばABO)血液型とも異なる未知の血液型の人への輸血を可能にするためのヒト赤血球の誘導体化、(3)予期しない過敏性拒絶反応のエピソードを防止するためのヒト臓器移植物の−活性化mPEG溶液の灌流による−誘導体化、(4)過敏性拒絶反応を防ぎ、ヒトでの移植の最終的な成功の機会を増加させるためのヒト以外の動物からの臓器の−活性化mPEG溶液の灌流による−誘導体化を提供する。
実施例I
赤血球凝集反応の抑制:
正常なヒト赤血球(赤血球)を等張性食塩水で3回洗浄した。約12%のヘマトクリットの赤血球懸濁液を、等張性のアルカリホスフェート緩衝液(PBS;50mMのK2HPO4及び105mMのNaCl、pH約9.2)中において調製した。塩化シアヌル−活性化されたメトキシポリエチレングリコール(シグマ ケミカル社)を添加し、この赤血球を4℃にて30分間培養する。細胞誘導体化もまた、異なったpH及び温度条件下において実施することができ、存在する条件について比較可能な結果が得られる。例えば、22℃において60分間pH8.0において誘導体化された赤血球は、実際には、4℃で30分間pH9.2において誘導体化されたものと同様の特性を示した。pH及び温度条件の極端な範囲によって、この方法は、広範囲な細胞及び組織に対してはば広く適用可能なものとなる。外部蛋白質及び他の膜成分との共有結合反応の提案された機構が、以下に概説されている。使用された典型的な活性化されたmPEG濃度は、赤血球懸濁液1ml当たり0から8mgの範囲である。他の無核(すなわち、血小板)及び種々の有核細胞(例えば、血管内皮、肝臓、造血、ニューロナール、膵臓細胞、上皮細胞など)について、使用されるべき典型的な活性化されたmPEG濃度は、ここに記載された教示を考慮して容易に決定することができる。
図3に示されるように、無傷赤血球の膜蛋白質に対するmPEGの共有結合は、赤血球凝集反応を防止する。このことは、ABO抗体によって誘導される凝集反応を使用した肉眼レベルにおいて、及び赤血球凝集を測定するために改良された血小板凝集計を使用した微細なレベルにおいて明らかである(図3)。A型の赤血球を血液1ml当たり0、3又は6mgの塩化シアヌル−活性化されたmPEG(分子量5000)を用いて処理し、4℃で30分間培養した。これらの細胞を等張性の食塩水を用いて3回洗浄し、食塩水中に40%ヘマトクリットとなるように再懸濁した。
肉眼凝集反応については、ヘマトクリット40%と市販の抗A血液型検査抗体(カロリナバイオロジカルサプライ)とのRBC懸濁液の等量を混合し、写真撮影した。結合したmPEGの量が増えるにつれて効果的に凝集反応が抑制された。誘導体化が無い場合においては、典型的な血液型検査反応が観測された。対照的に、共有結合したmPEGの量が増加するにつれてRBCの凝集を誘導する血清中に投与量依存減少が観察された。事実、6mgのmPEG/ml RBCにおいては、肉眼レベルでの検出可能な凝集は観察されなかった。
図3には、血小板凝集計における37℃で測定された赤血球微細凝集が示されている。これに示されるように、抗A抗体の投与量依存抑制を引き起こしたmPEG変性は、赤血球凝集を誘導した。さらに、対応参照と微量のRBC抗原を選択するmPEG誘導されたRBCの試験もまた、mPEG変異されたRBCの抗原性における著しい減少を示した(表2)。
凝集応答は顕微鏡により測定し、最も強い凝集反応を4+sとし、最も弱い凝集反応を1+Wで表す。示されるように、微量のRBC抗原が検出されたすべての場合において、mPEG変性は実際にその検出(例えば、4+から1+w)を見えなくした。重要なこととして、この実験において使用した活性化mPEG誘導体化の程度は、(約30mgのmPEG/ml RBCまで)使用することのできるレベルに比べて相対的低いが(6mg/ml)、RBCについての副作用は全く示さなかった。実際に、図3に示されているmPEG投与依存性に基づくと、恐らくより高い誘導体化の程度はさらに抗原検出を抑制するものと思われる。
実施例II
赤血球の安定性についての影響:
赤血球のmPEG変性は、赤血球溶解をわずかに増加させるが、この溶解は全赤血球量の5%未満である(図4)。さらに、mPEG結合は赤血球浸透圧脆弱性に対して全く影響を示さないことがわかった(図5)。赤血球の安定性はmPEGの共有結合によって最小限に改良された。図4に示されるように、赤血球溶解はmPEG結合によってわずかに増加された。しかしながら、mPEG変性の間、それに引き続く4℃での24時間の貯蔵又は37℃での培養の後のRBCの赤血球溶解は5%未満であった。図5に示されるように、mPEG処理された赤血球の浸透圧脆弱性もまた、影響を受けなかった。対照及びmPEG変性された(3及び6mg/ml)の赤血球の、37℃にて48時間培養後の浸透圧脆弱性プロフィールが示されている。また、自然溶解における非常に小さな増加が観察されたが、浸透圧溶解プロフィールにおける有意な差異は観察されなかった。対照及びmPEG誘導されたRBCの電子顕微鏡分析もまた、明らかな構造上の変化を示していない。
実施例III
抗体結合の抑制:
mPEG変性された赤血球は、抗A抗体よりもかなり小量しか結合しない(図6)。図6に示されるように、mPEG処理されたヒトの血液型Aの赤血球のELISA分析は、mPEG変性された赤血球による抗体結合よりも著しく少ないことを示している。対照及びmPEG赤血球は、30分間培養されたIgG抗A抗体と混合した。これらのサンプルを十分に洗浄し、二次抗体(アルカリホスファターゼと共役した抗ヒトIgG)を、結合した抗血液型A抗体を定量化するために添加した。
実施例IV
異種細胞の食作用の抑制:
mPEG変性されたヒツジ赤血球は、ヒト末梢血単球による食作用を著しく小さくする傾向がある(図7)。減少した抗体結合によって示されるように(図6)、mPEG変性ヒツジ赤血球は、ヒト末梢血単球によるIgG媒介された食作用に極めて影響を受けにくい。mPEG変性されたヒツジ赤血球をヒト末梢血単球と30分間培養した。未摂取の赤血球を低張性溶解によって取り除き、ヒツジ赤血球を含有する単球の数を、摂取されたヒツジ赤血球の数と同様に顕微鏡により測定した。
実施例V
mPEG誘導体化されたマウス赤血球は正常なインビボ生存率を有する:
図8に示されるように、対照赤血球及び3又は6mg/mlの活性化されたmPEGを用いて変性された赤血球のインビボ生存においては、顕著な違いが見られなかった。対照及びmPEG変性されたマウス赤血球のインビボ生存率は、蛍光脂肪酸ラベル(PKH−26;シグマ ケミカル社)を用いて測定した。血液は0、3又は6mg/mlの活性化されたmPEGを用いて処理したドナーBALB/Cマウスから採取し、3回洗浄した。洗浄した細胞をその後、PKH−26を用いてラベルし、i.p.にて在来BALB/Cマウスの中へ注入した。血液サンプルは示された時点において尾を切断することにより採取し、FACSキャンにより分析した。
実施例VI
ヒツジ赤血球のmPEG誘導体化は、マウスにおいてインビボ生存率を高める結果をもたらす:
mPEG変性されたヒツジ赤血球(mPEG−sRBC)の比較可能な数をi.p.にてBALB/Cマウスの中に注入した。図9に示されるように、mPEG−sRBCは末梢循環の中へ非常に大きな割合で入ることを示し、マウスにおけるインビボ生存率が長くなることを示した。マウスにおけるmPEG−sRBCのインビボ生存率は、蛍光脂肪酸ラベル(PKH−26;シグマ ケミカル社)を用いて測定した。血液はドナーヒツジから採取し、0又は6mg/mlの活性化されたmPEGを用いて処理し、3回洗浄した。このようにして洗浄したヒツジ赤血球をPKH−26を用いてラベルし、i.p.にて在来BALB/Cマウスの中へ注入した。血液サンプルは示された時点において尾を切断することにより採取し、FACSキャンにより分析した。
実施例VII
mPEG変調されたリンパ球:
混合リンパ球培養(MLC)は、ドナーとレシピエントの間の組織適合性を非常に感度よく測定するものである。実際、時間はかかるが、この方法は、恐らく器官レシピエントにおける組織移植生存の可能性を最もよく示すものである。まず最初に、MLCにおいては2つの個体の間のHLA錯体(移植における組織適合性の原因となる一次抗原)の間の抗原的変動を測定する。図10に示されるように、一方のドナーからのリンパ球のmPEGを用いた共有結合変性は、抗原的に異なる種類のリンパ球の認識を実際に完全に抑制する結果をもたらす。DNAへの3H−チミジン吸収によって測定されたキラー細胞の増殖であって、刺激物質(すなわち、細胞複製を予防するために照射された細胞)の所定濃度(2.5×105PBMC)に応じたものが示されている。パネルAは、抗原的に異なった種類のドナーB PBMCに対するPBMCドナーAの応答を示すものである。パネルBはドナーAに対するドナーBの応答を示すものである。対照的に、キラー細胞(すなわち、照射されていない細胞)の個体群は、照射されたPBMC(末梢血単核細胞)の制御に応じて非常大きく膨張する。
これらの結果はさらに、混合リンパ球培養の顕微鏡写真によっても確かめられる。広範囲な増殖、細胞の伸展及びキラー細胞の膨張したフォーカスが、刺激物質細胞の制御に応じて観察される。これとは対照的に、キラー細胞の同様の個体群は、mPEG処理された刺激物質細胞を認識せず、形態学的に不活性なまま残り、増殖を止める。
実施例VIII
血小板の変性:
他の血液細胞もまた、mPEG変性に左右され易い。血小板は、実施例Iの方法によって室温で60分間pH8.0にて変性された。点状の線はADP(すなわち、対照非活性化血小板)が存在しない場合における血小板を多く含む血漿(PRP)を示している。図12に示されるように、mPEG誘導体化された血小板は、ADP(5μM)による活性化に応じて凝集しない。対照血小板は約2分以内に完全に凝集するが、mPEG変性された血小板はADPに7分曝された後においても、凝集しないままの状態である。凝集の損失は、細胞−細胞相互作用の破壊(すなわち、血小板相互作用と微細凝集塊の形成の防止すること)によって媒介される。実際に、細胞−細胞相互作用における変質は、非免疫原性の物質を含んだ細胞表面の共有結合変性によって最初に起こる出来事である。
非血液学細胞がmPEG誘導体化によって抗原的に変性され得るかどうかを決定するために、胸部癌上皮細胞株(MCF7)を試験した。上皮特異抗原(ESA;40kD糖蛋白質)に対して向けられたマウスモノクローナル抗体を選択した。マウス抗ヒトESA結合はBD−FACSキャンを用いて定量化した。FITC共役されたヤギ抗マウス抗体を、結合したESAを検出するために使用した。上皮細胞濃度は、抗ESA抗体の1:6000タイターを含む5×105細胞/mlであった。上皮細胞はRBC誘導体化プロトコルの変性を用いて誘導体化した。特異的に、MCF7細胞の合流性単層を組織培養フラスコから掻き集め、RPMI媒質中で懸濁させた。この細胞懸濁液をpH8.0にて活性化されたmPEGの濃度を増加させながら培養し、室温にて60分間培養した。その後、これら細胞を抗体結合分析を行う前に、培地を用いて3回洗浄した。
図12に示されるように、ESA特異抗体結合におけるmPEG投与依存減少が観察された。使用されたmPEG投与量が最も高い時点では(8mg/ml細胞)、抗ESA結合における70%以上の減少が観察された。
実施例IX
ヒト及び動物の血液からの赤血球の分離:
ヒツジの血液(コリア メディカル、大韓民国)で、その種類が、ヒトのAB型血液(韓国赤十字、大韓民国)から区別されなかったものを集め、1,100×gにて5分間遠心分離した。血漿と白血球を分離し、その後、得られた沈殿物を0.9%NaCl等張性溶液(以下、食塩水と呼ぶ)中で再懸濁し、120×gにて5分間遠心分離した。この赤血球をこの方法を5回繰り返すことにより洗浄した。最後には、溶液を1,100×gにて5分間遠心分離し、この上澄み液を取り除き、このようにして得られた濃縮された赤血球細胞(100%の食塩水(v/v))を4℃にて貯蔵した。
実施例X
mPEGによる赤血球の化学的変性:
分離した赤血球を化学的に変性させるために、mPEGのフリーな水酸基を、活性化剤として塩化シアヌルを用いて、以下のようにして活性化させた。20gのmPEGを、70℃まで加熱した160mlの無水ベンゼン中に溶解させ、その後、5.6gの塩化シアヌルと4gの無水炭酸カリウムを添加し、そして、この溶液をゆっくりと混合し、真空デジケーター中で常温にて16時間反応させた。その後、この溶液をガラス濾過器を用いて濾過し、200mlの石油エーテルをこの濾液に添加し、mPEGを沈澱させた。このようにして得られた白い沈澱を、再びガラス濾過器を用いて濾過し、150mlの無水ベンゼンを添加することによって溶解させた。この操作を6回以上繰り返し、未反応の塩化シアヌルを完全に除去した後、活性化したmPEGを最後に沈澱させ、真空下で乾燥させ、1gずつに分け、湿気による浸透を防止するために密封し、−10℃にて貯蔵した。
実施例Xの合成の活性化されたmPEGを用いて赤血球を化学的に変性させるために、実施例IXに記載されるようにして製造されたヒト又はヒツジ由来の濃縮された赤血球を、食塩水を用いて希釈し、2%(v/v)に調節した。pH滴定法を用いて0.5MのNaOH溶液をゆっくりと添加し、pH9.2に維持した。活性化されたmPEGを0、0.5、1、2、3、4及び5mMの濃度で添加して、この溶液をゆっくりと混合し、常温にて1時間反応させた。反応が終了した時点で、この溶液を遠心分離し、赤血球を沈澱させ、この赤血球をその後、PBS(食塩加リン酸緩衝液、pH7.4)中で懸濁させ、再び遠心分離した。最終的に赤血球は、このような沈澱−懸濁処理を3回繰り返すことによって得られた。その後、この細胞を食塩水を用いて20%(v/v)の濃度になるよう希釈し、4℃にて貯蔵した。
実施例XI
化学的に変性された赤血球の凝集能における減少の確認:
化学的に変性された赤血球が血液型に関係なく輸血に使用できるかどうかを決定するために、以下のスライド試験及びマイクロウェル沈澱試験法を使用して、血液型抗原−抗体反応についての実験を行った。このスライド試験というのは、抗A、抗B及び抗D(Rh)血液型抗体のそれぞれ100μlをスライド上に置き、引き続き実施例Xに記載されるようにして、化学的に変性された20%(v/v)のヒト又はヒツジ赤血球サンプルのそれぞれ50μlを加え、その後、約1分間の間、凝集が観察されるまで手でゆっくりと揺り動かすという方法である。これらの結果を、視覚的に認識できたらすぐに写真撮影を行った。凝集能の減少は3mMのmPEGを用いて処理された赤血球において観察された。ヒツジの赤血球を用いた凝集試験は、同様の結果をもたらした。
凝集を定量化するためにマイクロウェル凝集試験を用いた。この試験によって抗体トリガリング凝集の最少濃度を決めることができる。なぜならば、血液型抗体を連続希釈を用いて試験するからである。この試験において使用した96マイクロウェルの底はV型形状になっており、これにより沈澱の間、凝集が存在するのを容易に確かめることができる。
抗A、抗B及び抗D(Rh)血液型抗体を連続的に1/2ずつ希釈し、それぞれの70μlをウェルに添加した。1%(v/v)に希釈されたヒト赤血球の試験サンプル20μlをそれぞれのウェルに添加し、約2時間放置した。このマイクロウェルプレートをその後、倒立顕微鏡で20倍の倍率で調査した。赤血球の凝集の程度は、抗体の最終濃度(希釈比率)として定量化され、これは沈澱の状態を示すものであって、この状態においては、凝集は全く形成されておらず、赤血球は壁面にころがり落ち、マイクロウェルの底部分に集められる(表3参照)。
また、マイクロウェル沈澱試験(抗体結合試験)を、赤血球の表面に結合した血液型抗体の数を測定するために用いた。血液型抗体抗A、抗B及び抗D(Rh)のそれぞれを150μl含む試験管の中に、1%(v/v)に希釈された赤血球の試験サンプル40μlを添加した。これらを十分に混合し、その後、抗A及び抗B血液型抗体の場合には常温で、抗D(Rh)血液型抗体の場合には37℃において、1時間反応させた。次に、最初に反応した抗体を遠心分離によって取り除き、この上澄み液を残してマイクロウェル中で1/2階段希釈を行った。変異していない赤血球をこの液(1%(v/v))に添加し、反応させた。変性していない赤血球を用いることにより、血液型抗体と赤血球との初期反応において反応した残存抗体の量を測定することが可能であった(表3参照)。以下の表3に示されているデータは、ヒト赤血球を使用することによって測定された血液型抗体の量を示している。ヒツジ赤血球を使用したこれらの凝集試験からのデータは示されてはいないが、これは同様の結果が得られたためである。
表3においてわかるように、mPEGを用いて化学的に変性された赤血球は、未変性の対照に比べて著しく低い最終凝集濃度を有している。上澄み液に残った血液型抗体の数が非常に多くなかったことから、mPEGを用いて化学的に変性された赤血球は、低下された凝集能及び血液型抗体の抑制された結合を示すことがわかった。このことは、凝集能の減少が、mPEGに基づき赤血球と結合するための血液型抗体の能力がないことによって引き起こされたものであることを意味している。
実施例XII
化学的に変性された赤血球における凝集能減少の機構の検討:
実施例XIに記載した化学的に変性された赤血球の膜を分離するために浸透圧性ショックを使用し、膜蛋白質を12%SDS−PAGEを用いて分析した。ABH抗原基、血液型抗原性を与える赤血球の膜蛋白質の場合には、抗原はバンド3、バンド4.5、PAS−1及びPAS−2のグリコホリンのような炭水化物中に存在していることが、一般的に報告されている。Rh抗原基の場合には、抗原は蛋白質中に存在していることが報告されている。糖蛋白質、ABH抗原は、蛋白質染色の一般的な方法を用いて、すなわちクーマシーブルーを用いては十分には染色されないので、PAS(過ヨウ素酸染色)を使用した。
変性されたmPEGの濃度が増加するにつれて、バンド3及び4.5及びバンドPAS−1及びPAS−2は徐々に消滅し、これはゲルの上部において徐々に析出があることを示している。このようなバンドのシフトは、赤血球の膜蛋白質とのmPEG結合の結果である。mPEG結合は膜の表面の位置でのみ起こり、それ故、膜内部からの蛋白質であるスペクトリンを含んだバンド1及び2とは反応しない。これらのバンドのシフトは全く観察されなかった。それ故、mPEGは、赤血球抗原の凝集能における減少を引き起こしているこれら膜蛋白質とは直接的に結合していることがわかった。上記同様の結果がヒツジ赤血球を用いて行った分析においても観察された。
実施例XIII
化学的に変性された赤血球の酸素運搬能の確認:
酸素と結合している場合には、赤血球中のヘモグロビンの560nmの吸収能ピークは540nmと576nmのピークに分かれる。本発明においては、吸収能のこのような変化を自動的に測定するヘモックスアナライザー(TSC メディカル社、USA)を、ステットラー等のBio/Technology、9、57頁(1991年)において使用された方法に従い、酸素解離曲線を得るために使用した。分析用のサンプルは4mlのヘモックス緩衝溶液、10μlの消泡剤及び20μlの添加物B、及び200μlの20%(v/v)の赤血球溶液を加えることによって調製した。この分析サンプルを37℃の水浴中に5分間置き、その後、37℃に保たれたヘモックスアナライザーの中に注入した。このサンプルは、装置に連結したアダプターを通して窒素を添加することにより完全に脱酸素化された。次に、20%酸素をゆっくりと注入しながら、酸素解離曲線を計算した(図13参照)。
この酸素解離曲線は、溶解された酸素の部分圧(pO2)に基づく、赤血球中のヘモグロビン酸素の結合又は溶解の程度を示すものである。図13には、組織への酸素輸送の程度(%)、n値、又は共同効果を示すヒル係数、及び酸素との親和性を示すP50値を示されており、これらはいずれも図13における酸素解離曲線から計算されたものである。図13にみられるように、化学的に変性された赤血球は、変性されていない赤血球と同様の酸素解離曲線形状、P50値、n値及び組織の酸素輸送を示している。それ故、赤血球に結合したmPEGは酸素輸送能において実質的な変化をもたらさないということがわかった。
以下の実施例において使用した方法は、上述の実施例Iに使用したものと同じであるが、異なる官能化されたポリエチレングリコール(又はそれらの誘導体)が使用されている。
この実施例は、非免疫原性物質の共有結合による細胞の抗原変質の一般原則を与えている。
使用された化合物は以下の通りである。
実施例XIV
赤血球の誘導体化:
全血(ヒト、マウス、ヒツジ、ラットなど)を採取し、等張性食塩水中で3回洗浄した。赤血球懸濁液(ヘマトクリット12%)を、等張性アルカリホスフェート緩衝液(PBS;50mMのK2HPO4及び105mMのNaCl、pH9.2)中において調製した。ポリエチレンオキシド又はポリオキシエチレンのいずれか一方の官能化された誘導体を添加し、この赤血球を30分間4℃において培養した。この官能化された誘導体の3mgをPBS(上記のもの)中で12%のヘマトクリットの1mlに添加した。誘導体化に引き続いて、共有結合的に変性された赤血球を3回洗浄し、赤血球微細凝集を血小板凝集計(メトキシポリエチレングリコール−塩化シアヌル変性された細胞を用いたもの)を用いて測定した。また、より低いpH(例えば、pH8.0)ではあるが、同様の方法を有核(上皮及び内皮)細胞を変性するために使用した。実際には、(リンカー、例えば、塩化シアヌル対ニトロフェニルカーボネートに基づいて)変性反応が行なわれるpH、時間及び温度条件は非常に融通性のあるものであり、よって、本発明は、非常にはば広い細胞の種類に適用することが可能となる。
重要なこととして、上記の場合のすべてにおいて、はば広い種々の結合を用いて種々の大きさ(分子量3350、5000及び20000)の非免疫原性物質を用いた無傷RBCの共有結合変性は、(血液型検査血清に応じた減少したRBC凝集によって示されるように)細胞の抗原識別が減少することを示している。
これまでに詳細に記載し、説明してきたように、本発明は、赤血球の製造方法を提供するものであり、この方法においては、抗原−抗体反応によって引き起こされる凝集が抑制される。血液型と組織特異的抗体の接近は、赤血球の表面上での血液型及び組織特異抗原の周囲にある部分におけるmPEGの非毒性のポリマーの共有結合による化学的変異によって、立体的に妨害される。本発明による化学的に変性された赤血球はそれ故、血液型とは関係なく使用することができ、十分な酸素輸送能を有している。結果として、これらは緊急の輸血や移植臓器貯蔵のような目的において赤血球が使用されるすべての医療分野において使用することができる。本発明による化学的に変性された赤血球の製造方法は、血液型とは関係なく、あらゆる血液型抗原に適用することができる。この方法は、非常に簡単であり、しかも経済的であり、将来の大量生産用の反応器を設計するのに非常に好都合である。
非免疫原性物質(例えば、mPEG)を用いた外部細胞膜の共有結合変性は、多種の有核及び無核細胞についての主要な抗原決定基と重要でない抗原決定基の両方を効果的に「隠遮する」。無傷細胞(例えば、RBC、内皮細胞、上皮細胞、膵臓β細胞など)への非免疫原性物質の共有結合はまた、(1)mPEG溶液の環流による予期しない超急性拒絶エピソードを予防するためにヒトの器官移植の誘導体化、及び(2)超急性拒絶を予防するため、及び最終的な移植がうまくいく機会を高めるために、mPEG溶液の灌流による、ヒト以外の動物からの器官の誘導体化にも使用することができる。
好ましい具体例をここに詳細に示し、かつ記載してきたが、種々の変更、追加、置換などが本発明の精神から逸脱することなく可能であり、それ故、これらは以下の請求の範囲において規定されている本発明の範囲内にあるものと考えられることは、当業者には明らかである。
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Claims (13)
- 細胞表面と該細胞表面上の抗原決定基を有する哺乳類又はその他の細胞を含み;非免疫原性化合物が上記細胞表面に、直接又は連結部分を介して、共有結合的に取り付けられており、その結果、上記細胞表面上の抗原決定基(又は細胞表面の抗原的性質)の認識が上記非免疫原性化合物によってブロックされること、及び、上記非免疫原性化合物がメトキシポリエチレングリコールであることを特徴とする非免疫原性細胞組成物又は細胞(以下、細胞組成物と称する)。
- 上記細胞が無核細胞であることを特徴とする請求項1の細胞組成物。
- 上記無核細胞が赤血球であることを特徴とする請求項2の細胞組成物。
- 上記抗原決定基が血液型抗原決定基を含むことを特徴とする請求項1の細胞組成物。
- 上記無核細胞が血小板であることを特徴とする請求項2の細胞組成物。
- 上記細胞が有核細胞であることを特徴とする請求項1の細胞組成物。
- 上記有核細胞が血管内皮細胞、肝細胞、神経細胞、膵細胞又は上皮細胞であることを特徴とする請求項6の細胞組成物。
- 免疫原性表面を有する哺乳類又はその他の細胞を非免疫原性にする方法であって、上記細胞表面に、直接又は連結部分を介して、非免疫原性化合物を共有結合的に取り付け、上記非免疫原性化合物が上記細胞表面上の抗原決定基(又は細胞表面の抗原的性質)の認識をブロックすること、及び、上記非免疫原性化合物がメトキシポリエチレングリコールであることを特徴とする方法。
- 上記連結部分が上記細胞表面上の抗原決定基に、又は、上記抗原決定基によることなく細胞表面に、共有結合的に取り付けられることを特徴とする請求項8の方法。
- 上記細胞が赤血球であることを特徴とする請求項8又は9の方法。
- 哺乳類に導入するための哺乳類細胞であって、上記細胞が細胞表面と該細胞表面上の抗原決定基を有しており、上記細胞が、
当該細胞表面に非免疫原性化合物を、直接に又は連結部分を介して共有結合的に取り付け、上記非免疫原性化合物が上記細胞表面上の抗原決定基(又は細胞表面の抗原的性質)の認識をブロックし、上記細胞を非免疫原性にすることを含む方法によって処理され、
上記哺乳類に導入された際に、生成した非免疫原性細胞の食作用、補体媒介破壊又は細胞媒介破壊が減少されること、及び、上記非免疫原性化合物がメトキシポリエチレングリコールであることを特徴とする哺乳類細胞。 - 哺乳類に輸血するための赤血球であって、上記赤血球が細胞表面と該細胞表面上の抗原決定基を有しており、上記細胞が、
当該細胞表面に非免疫原性化合物を、直接に又は連結部分を介して共有結合的に取り付け、上記非免疫原性化合物が上記細胞表面上の抗原決定基(又は細胞表面の抗原的性質)の認識をブロックし、非免疫原性の赤血球を生産することを含む方法によって処理され、
上記哺乳類に導入された際に、上記非免疫原性の赤血球の輸血に対する有害な反応が減少されること、及び、上記非免疫原性化合物がメトキシポリエチレングリコールであることを特徴とする赤血球。 - 哺乳類に移植するための哺乳類細胞であって、上記細胞が細胞表面と該細胞表面上の抗原決定基を有しており、上記細胞が、
当該細胞表面に非免疫原性化合物の一定量を、直接に又は連結部分を介して共有結合的に取り付け、上記非免疫原性化合物が上記細胞表面上の抗原決定基(又は細胞表面の抗原的性質)の認識をブロックすることを含む方法によって処理され、
上記哺乳類に移植された際に、生成した非免疫原性細胞の拒絶が減少されること、及び、上記非免疫原性化合物がメトキシポリエチレングリコールであることを特徴とする哺乳類細胞。
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