JP4459933B2 - タンディッシュ内湯溜めによる、鋼の連続鋳造の再開方法 - Google Patents

タンディッシュ内湯溜めによる、鋼の連続鋳造の再開方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4459933B2
JP4459933B2 JP2006213514A JP2006213514A JP4459933B2 JP 4459933 B2 JP4459933 B2 JP 4459933B2 JP 2006213514 A JP2006213514 A JP 2006213514A JP 2006213514 A JP2006213514 A JP 2006213514A JP 4459933 B2 JP4459933 B2 JP 4459933B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
molten steel
tundish
steel
continuous casting
flow path
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2006213514A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2008036670A (ja
Inventor
高 小林
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kobe Steel Ltd filed Critical Kobe Steel Ltd
Priority to JP2006213514A priority Critical patent/JP4459933B2/ja
Publication of JP2008036670A publication Critical patent/JP2008036670A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4459933B2 publication Critical patent/JP4459933B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Continuous Casting (AREA)

Description

本発明は、タンディッシュ内湯溜めによる、鋼の連続鋳造の再開方法に関する。
一般に、鉄鋼の製造工程は、高炉から出銑される溶銑を受ける転炉内において該溶銑の成分を調整する一次精錬工程と、該転炉から出鋼した溶鋼を連続鋳造機へ搬送するために用いられる取鍋内において該溶鋼の成分を調整する二次精錬工程と、該取鍋によって上記連続鋳造機に搬送されてきた溶鋼を連続的に鋳造する連続鋳造工程と、から構成されている。より具体的には該取鍋によって転炉から連続鋳造機へ搬送されてくる溶鋼は、この連続鋳造機に備えられているタンディッシュ内に一時的に収容され、所定の流量で、溶鋼を冷却して所定形状の凝固シェルを形成するための鋳型へ注湯されるように構成されている。
従来、上記の連続鋳造は、鋳造する鋳片の鋼種を変更することを目的として一時的に中断され、前記タンディッシュの内壁を構成する耐火物の張替えが其の都度行われていた。しかし、近年は、経費削減を目的として、鋳造する鋳片の鋼種を変更することを目的として一時的に中断したときでも、前記タンディッシュの内壁を構成する耐火物の張替えを行わない所謂タンディッシュ再利用操業が一般的である。
このタンディッシュ再利用操業は、具体的には以下の如くである。即ち、上記中断後において前記タンディッシュを傾け又は該タンディッシュの底部に形成されている溶鋼流路を利用して、該タンディッシュ内に残っているスラグや残鋼を該タンディッシュから外部へ積極的に排出しようとするものである。これらのスラグや残鋼は、連続鋳造の再開の際に該タンディッシュへ注湯される溶鋼と混ざると、再開される連続鋳造によって鋳造される鋳片(特にボトム鋳片(鋳造初期の鋳片のこと))の品質を著しく低下させて(例えば介在物を増加させて)しまうとされる。しかし、これらのスラグや残鋼はその性質上、該タンディッシュから外部へ容易には排出できず、もし完全に排出しようとするならば相当の時間を要してしまう。従って、経費削減のために導入する該タンディッシュ再利用操業を実施する場合は、完全には排出し切れないこれらスラグや残鋼を如何に扱うかが大きな課題となっていた。
この課題に対しては、所謂タンディッシュ内湯溜め操業という技術が公知となっている。この技術は、具体的には以下のようなものである。即ち、(p)溶鋼を冷却して所定形状の凝固シェルを形成するための鋳型と、該鋳型に所定の流量で溶鋼を注湯するために、その底部に溶鋼流路を有するタンディッシュと、を備える連続鋳造機と、転炉内で適宜に処理された溶鋼を該連続鋳造機へ所定量ずつ搬送するための取鍋と、を用いた鋼の連続鋳造を中断して前記タンディッシュを略空の状態とする。(q)そして、所定の時間の経過後に、鋼の連続鋳造を再開することを目的として再び溶鋼を該タンディッシュへ注湯する。(r)この場合において、上記所定の時間においては前記タンディッシュは加熱しないものとし、略空の状態とした前記タンディッシュに対する溶鋼の前記注湯の開始前に前記の溶鋼流路を予め閉状態としておき、略空の状態とした前記タンディッシュへ所定量だけ溶鋼を注湯した時点で該溶鋼流路を開状態とする、という(p)〜(r)の技術がそれである。
これによれば、略空の状態とした前記タンディッシュに溶鋼を注湯し始めた直後/当初においては、前記の溶鋼流路が閉状態となっているので、該タンディッシュの底部に残っているスラグや残鋼などが鋳型内へ注湯されてしまうことを防止できる。一方、前記の溶鋼流路を開状態として前記鋳型への溶鋼の注湯を開始した時点においては、既に前記タンディッシュ内において溶鋼が所定量収容されており、しかも前記のスラグや残鋼は溶鋼に対する比重の違いによって該溶鋼の上層に浮遊する状態となっているから、これらスラグや残鋼が鋳型内へ意に反して注湯されてしまうことなく、所定の成分である溶鋼だけを鋳型内へ注湯できることとなる。
しかし、このタンディッシュ内湯溜め操業という技術は、前記のタンディッシュに溶鋼を注湯し始めてから該溶鋼が所定量だけ溜まるまで前記の溶鋼流路の閉状態を継続するものなので、該閉状態の継続の間は常に該溶鋼流路の近傍の溶鋼が、該溶鋼流路に設けられる所謂スライディングノズルとの接触によって冷却され続け、その結果、該溶鋼流路を閉塞するように溶鋼が凝固してしまう場合がある。
このように溶鋼が前記溶鋼流路内で凝固してしまうと勿論連続鋳造を再開することはできず、しかも、タンディッシュや該タンディッシュ内に所定量収容されている溶鋼は廃却処分せざるを得ず、甚大な損失を被ることとなる。
上述したような溶鋼流路の閉塞を防止しようとした技術として、例えば特許文献1には連続鋳造用タンディッシュの溶鋼注入開始方法が記載されている。これは、高さ方向の中間部位に薄肉部が設けられる鋼製のスタートパイプを注入ノズル上に設置するものである。
これによれば、「スラグ等の介在物が十分浮上させるのに必要な溶鋼レベルが確保できるばかりでなく鋼製スタートパイプ2の上端からのスラグあふれによるモールド3へのスラグ混入を防止することができる」とされる。
特開平1−266951号公報(特許請求の範囲、第7カラム第13〜18行)
しかし、上記特許文献1の第5カラムに「内径270mmφ、長さ1000mmのものを使用し」や「そして下側の厚肉部11及び上層の厚肉部13の各厚みは15mmとする」などと記載されているように、本技術に用いられる鋼製スタートパイプは極めて大型であり取り扱いが容易ではなく、更には鋼製スタートパイプ自体の熱容量が極めて大きいため、タンディッシュ内に注湯した溶鋼が思いのほか冷えてしまい、結果として注入ノズルの詰まりを招来してしまうだろう。
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、所謂タンディッシュ内湯溜め操業を採用しつつ、該タンディッシュの底部に形成される溶鋼流路の閉塞を防止できる、鋼の連続鋳造の再開方法を提供することにある。
課題を解決するための手段及び効果
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
本願発明の観点によれば、鋼の連続鋳造の再開は、以下のような方法で行われる。
即ち、本願発明が対象とする鋼の連続鋳造の再開方法は、「溶鋼を冷却して所定形状の凝固シェルを形成するための鋳型と、該鋳型に所定の流量で溶鋼を注湯するために、その底部に溶鋼流路を有するタンディッシュと、を備える連続鋳造機と、転炉内で適宜に処理された溶鋼を該連続鋳造機へ所定量ずつ搬送するための取鍋と、を用いた鋼の連続鋳造を中断して前記タンディッシュを略空の状態とし、所定の時間の経過後に、鋼の連続鋳造を再開することを目的として再び溶鋼を該タンディッシュへ注湯するに際し、上記所定の時間においては前記タンディッシュは加熱しないものとし、略空の状態とした前記タンディッシュに対する溶鋼の前記注湯の開始前に前記の溶鋼流路を予め閉状態としておき、略空の状態とした前記タンディッシュへ所定量だけ溶鋼を注湯した時点で該溶鋼流路を開状態とする」ものである。
(a)前記タンディッシュの溶鋼流路には、該タンディッシュに固着される第一スライディングノズルと、該第一スライディングノズルに対して滑動可能な第二スライディングノズルと、から成るスライディングノズルを設ける。
(b)前記第二スライディングノズルを前記の第一スライディングノズルに対して滑動させることで前記の溶鋼流路を開状態又は閉状態へと切り替えることとする。
(c)前記第一スライディングノズルは、その内周面から前記の溶鋼流路に対してArガスを供給可能に構成する。
更に、以下(1)〜(5)の工程上の特徴を有する。
まず、(1)中断する鋼の前記連続鋳造に用いられるタンディッシュ内には、少なくとも3時間以上は溶鋼を収容するものとする。
次に、(2)略空の状態とした前記タンディッシュの底部には、肉厚t[mm]は4~7とし・延在長さL[mm]は350〜550とし・質量M[kg]は8以下とし・内径Dは前記タンディッシュの内壁面における前記溶鋼流路の開口端の孔径dよりも大とする円筒鋼管を該溶鋼流路の該開口端を囲繞するように立設する。
次に、(3)鋼の前記連続鋳造を中断して前記タンディッシュを略空の状態とした時点から、再び溶鋼を該タンディッシュへ注湯し始める時点迄の、前記所定の時間は長くても3時間以内とする。
次に、(4)溶鋼過熱度ΔT[℃]を25〜50とする溶鋼を前記タンディッシュへ注湯し始めると共に、前記第一スライディングノズルの内周面から前記の溶鋼流路に対して180〜250の供給量QAr[NL/min]でArガスを供給する。
最後に、(5)前記タンディッシュ内における溶鋼の湯深さY[mm]が、前記円筒鋼管の延在長さL[mm]を少なくとも50[mm]以上上回った時点において前記溶鋼流路を開状態とする。
これによれば、前記溶鋼流路が閉塞されることがないから、問題なく、鋼の連続鋳造を再開できる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を説明する。
先ず、本実施形態において鋼の連続鋳造に供される連続鋳造機100について図1を参照しつつ概説する。図1は、鋼の連続鋳造に用いられるタンディッシュの部分断面図である(なお、該部分断面図において本来は描かれるべき輪郭線は、説明の都合上、適宜に割愛されている。)。本実施形態において前記連続鋳造機100は、溶鋼を冷却して所定形状の凝固シェルを形成するための略示の鋳型2と、該鋳型2に所定の流量で溶鋼を注湯するために、その底部に溶鋼流路4を有するタンディッシュ3と、該鋳型2の直下を起点として所定の鋳造経路に沿うように並設される複数のロール対(図略)と、から構成されている。
上記のタンディッシュ3の構成を同じく図1を参照しつつ詳細に説明する。本実施形態において前記のタンディッシュ3は、鉛直上方に向かって開口する断面コ字状の有底容器として構成されている。このタンディッシュ3の側壁や底部は、内壁側の耐火物9及び外壁側の鉄皮10から成る二層構造となっている。
前記タンディッシュ3の底部には、前述の如く、該タンディッシュ3内に収容される溶鋼を鋳型2へ注湯するための断面略鼓状の溶鋼流路4が形成されている。
この溶鋼流路4には、該タンディッシュ3に固着される第一スライディングノズル5と、該第一スライディングノズル5に対して滑動可能な第二スライディングノズル6と、から成るスライディングノズル7が設けられている。より詳しくは以下の如くである。
即ち、前記の第一スライディングノズル5は、略鼓状の前記溶鋼流路4の下部へ、該タンディッシュ3の下側(鉄皮側)から挿入され、適宜の締結手段などによって締結などされることにより、該タンディッシュ3へ固着されている。
この第一スライディングノズル5は、該第一スライディングノズル5の前記溶鋼流路4に対する挿入方向へ向かって薄肉となる上ノズル5aと、該上ノズル5aに対して前記挿入方向の反対側から取り付けられる有孔円盤状の上スライドプレート5bと、から構成されている。
一方、第二スライディングノズル6は、前記の鋳型2内へ溶鋼を穏やかに注湯するための図略の浸漬ノズルを取り付け可能な下ノズル6bと、該下ノズル6bに対して、溶鋼の流れる方向と反対側に取り付けられる有孔円盤状の下スライドプレート6aと、から構成されている。
以上の構成により、前記の上スライドプレート5bと下スライドプレート6aとは対面することとなり、これら両スライドプレート6a・5bは相対滑動可能に構成されている。それ故、前記の第一スライディングノズル5に対して前記第二スライディングノズル6は相対滑動可能となっており、この第二スライディングノズル6を該第一スライディングノズル5に対して滑動させることで、前記の溶鋼流路4を開状態又は閉状態へと切り替えられるようになっている。勿論、前記第二スライディングノズル6の第一スライディングノズル5に対する相対的な移動量を適宜に調整することで、前記溶鋼流路4の開度を自由に調整できることとなる。
本実施形態において前記の第一スライディングノズル5(上ノズル5a)の内周面には、多数のポーラス(微小空洞)5cが、全面に亘って満遍なく形成されている。これにより、前記の第一スライディングノズル5は、その内周面から前記の溶鋼流路4に対してArガスを供給できるようになっている。
本実施形態においては、後述する如く、所定寸法の円筒状の鋼管8が、前記タンディッシュ3の内壁面における前記溶鋼流路4の開口端を囲繞するように立設/載置される。
ここで、本実施形態における該鋼管8の形状を、図2を参照しつつ詳細に説明する。図2は、図1のA部拡大図である(なお、該A部拡大図においても、本来は描かれるべき輪郭線は、説明の都合上、適宜に割愛されている。)。本実施形態において前記の鋼管8は中空円筒状に形成されており、その内径Dは少なくとも前記タンディッシュ3の内壁面における前記溶鋼流路4の開口端の孔径dよりも大としている。これにより、該鋼管8をタンディッシュ3の底部上に安定して立設できるようになっている。また、該鋼管8の肉厚t[mm]は4~7とし、その延在長さ(筒長さ)L[mm]は350〜550とし、その質量M[kg]は8以下としている。
次に、図1及び図3〜7を参照しながら、本発明の一実施形態における鋼の連続鋳造の再開方法を詳細に説明する。図3〜図6は何れも図1に類似する図であって、本発明の一実施形態に係る鋼の連続鋳造の再開の様子を連続的に説明するためのものである。図7は、本発明の一実施形態における鋼の連続鋳造の再開を時系列的に表現した図である。以下、鋼の連続鋳造の再開方法は、図7を主として参照しつつ適宜に図1及び図3〜6を参照しながら説明する。
なお、図7において、時刻T(1)の直後が図示の如く「鋼の連続鋳造の開始」に相当し、時刻T(3)の直後が図示の如く「鋼の連続鋳造の再開」に相当するものとする。即ち、「再開」とは、耐火物の張替えがされていないタンディッシュを用いて「鋼の連続鋳造」を「開始」することを言う。また、「鋼の連続鋳造(略称:CC)」とは、鋳型に対して溶鋼を注湯することに相当するものとする。(従って、「鋼の連続鋳造を開始する」と「鋳型に対して溶鋼を注湯し始める」とは同義とも言える。)
<〜時刻T(0)>
鋼の連続鋳造に用いられるタンディッシュ3は、前述の如く、耐火物9及び鉄皮10とから成る二層構造となっており(図1も併せて参照)、このうち耐火物9は使用するに連れて溶損し消耗する部分である。従って、周知の如く該耐火物9はその溶損の程度に応じて定期的に張替えをする必要がある。そこで、説明の都合上、図7において時刻T(0)を、該タンディッシュ3の耐火物の張替えの作業が完了した時点とする。
なお、耐火物の張替えとは具体的には、内壁が溶損により削られたタンディッシュ3の該内壁に対して所定の(固体状又は液体状の)耐火物を吹き付け、所定の時間だけ乾燥させることである。従って、上記時刻T(0)では、上記タンディッシュ3は略室温(25℃)に至るまで自然放熱された状態となっている。
<時刻T(0)〜時刻T(1)>
このように略室温に至るまで冷却されたタンディッシュ3に溶鋼を注湯すると、注湯された溶鋼が該タンディッシュ3との接触により急冷され凝固してしまうので、このような注湯は回避する必要がある。そこで、本実施形態では図7に示す如く上記の張替えが完了した時刻T(0)から所定の時間だけ該タンディッシュ3を所定のバーナーにより加熱することとする。具体的には、前記タンディッシュ3の温度が900〜1000℃に至るまで該タンディッシュ3をバーナーにより加熱する。このバーナー加熱が必要十分に完了した時点を、説明の都合上、時刻T(1)とした。
なお、前記「所定のバーナー」とは、例えば、製鉄所で発生する副生ガスとしてのCOと酸素を、相互に反応させながら、タンディッシュ3の蓋に穿孔した所定の孔から、タンディッシュ3内部へ吹き込み、この反応により生じる反応熱を利用してタンディッシュ3の内部を加熱する装置のことである。
また、前記「タンディッシュ3の温度」とは、例えば放射型の表面温度計などをタンディッシュ3の蓋に穿孔した所定の孔より内部へ挿入し、該タンディッシュ3の底部の温度を測定して得られる値とする。
<時刻T(1)〜時刻T(2)>
上記の如く所定の温度に至るまで前記タンディッシュ3に対してバーナー加熱を施したら、前記の溶鋼流路4を閉状態とし、転炉内で適宜に処理された溶鋼を該連続鋳造機100へ所定量ずつ搬送するための図略の取鍋内に収容されている溶鋼を、該タンディッシュ3へ注湯し始める(時刻T(1))。そして、該タンディッシュ3内に所定量の溶鋼が該取鍋から注湯されたら、前記の溶鋼流路4を開状態として溶鋼を鋳型2へ注湯し始める。これにより、鋼の連続鋳造が開始される。
なお、上記の鋼の連続鋳造においては、前記第一スライディングノズル5の内周面から前記の溶鋼流路4に対して約250の供給量QAr[NL/min]でArガスを供給することとする。これによれば、前述した図略の浸漬ノズルの内周壁面に、溶鋼に溶存しているAl2O3などの介在物が付着して堆積することにより該浸漬ノズルが閉塞してしまうのを防止できる。
本実施形態においては、鋼の連続鋳造に用いられる前記タンディッシュ3内には、少なくとも3時間以上は溶鋼を収容するものとする。
この鋼の連続鋳造は、前記鋳型2への溶鋼の注湯を終了した時点で中断される。これと同時に、前記のArガスの供給も終了する。なお、この時点で前記タンディッシュ3は略空の状態となり、説明の都合上、この時点を図7中、符号T(2)で示す。(勿論、前記のタンディッシュ3が略空の状態となるから、鋳型2への溶鋼の注湯が終了されるのである。)
なお、この符号T(2)を用いれば、上述の「本実施形態において、鋼の連続鋳造に用いられる前記タンディッシュ3内には、少なくとも3時間以上は溶鋼を収容するものとする。」は、「図7において時刻T(1)〜T(2)の間の時間帯としてのΔT(1-2)は少なくとも3時間以上とするものとする。」と換言できる。
その後は、前記連続鋳造機100内に残った鋳片を適宜の手段により引き抜いて排出する。
<時刻T(2)〜時刻T(3)>
上記の「引き抜き」が完了した後に、又はそれと並行して、略空の状態の前記タンディッシュを清掃する。具体的には図1に示す如く該タンディッシュ3の底部上に若干残っているスラグや残鋼(地金)を前記の溶鋼流路4などを介して外部へ極力、排出する。なお、このとき、該タンディッシュ3の底部上に残っているスラグや残鋼を完全に排出できることが望ましいが、技術上、完全には排出することができないとされる。
そして、図1に示す如く前記溶鋼流路4の前記の開口端を囲繞するように前述した鋼管8を該タンディッシュ3の底部上に立設(載置)する(図2も併せて参照)。これによれば、『上記タンディッシュ3の底部上に残っているスラグが、前記の第一スライディングノズル5内に流入して、該第一スライディングノズル5の構成要素としての前記上ノズル5aの内周面に付着し、該内周面に形成されている多数のポーラス5cを閉塞してしまう』、という問題を防止できる。
さて、上記の立設と同時に又はこれに前後して、前記の溶鋼流路4を閉状態とする。その後、前記の時刻T(2)から所定の時間の経過後に、鋼の連続鋳造を再開することを目的として再び溶鋼を該タンディッシュ3へ注湯し始めると共に、前記第一スライディングノズル5の内周面から前記の溶鋼流路4に対して180〜250の供給量QAr[NL/min]でArガスを供給し始める。この注湯開始時点を図7中、時刻T(3)とする。
なお、本実施形態において、前記の時刻T(2)から時刻T(3)に至るまでの時間としてのΔT(2-3)を3時間以内とする。換言すれば、鋼の前記連続鋳造を中断して前記タンディッシュ3を略空の状態とした時点から、再び溶鋼を該タンディッシュ3へ注湯し始める時点迄の、前記所定の時間(ΔT(2-3))は、長くても3時間以内とする。
また、上記所定の時間(ΔT(2-3))においては前記タンディッシュ3は加熱しないこととする。また、該タンディッシュ3へ注湯する溶鋼の所謂溶鋼過熱度ΔT[℃]は25〜50とする。なお、この溶鋼過熱度ΔT[℃]は、その先端に熱電対を備える温度測定装置を溶鋼の中に少なくとも50mm以上浸漬させる(温度測定装置の先端と溶鋼湯面との距離を50mm以上にする)ことで測定するものとする。
<時刻T(3)〜時刻T(4)>
以上の如く前記のタンディッシュ3の底部上に前記の鋼管8を適宜に立設してから取鍋に収容されている溶鋼を該タンディッシュ3へ注湯することで、図3に示す如く、溶鋼の該注湯の初期の段階においては、注湯される溶鋼が前記の溶鋼流路4へ流入することがない。なお、本図に示す如く、タンディッシュ3内に若干残っているスラグなどの不純物は比重の差に起因して溶鋼の上層に浮遊することとなる。
図3において溶鋼の上記注湯を継続すると、図4に示されるように、立設された前記鋼管8を避けつつ湯面が上昇した溶鋼は、やがて、前記の鋼管8の上端を跨ぐように(上端から溢れるように)前記の溶鋼流路4へ向かって流れ込む。
本実施形態においては前述の如く、また図5に示すように、前記の第一スライディングノズル5の内周面から前記の溶鋼流路4に対してArガスが供給されているので、該溶鋼流路4内に流入し蓄えられる溶鋼は適宜に攪拌されるようになっている。より具体的には、該第一スライディングノズル5の内周面から吐出されるArガスの上昇に伴って該内周面近傍の溶鋼が持ち上げられ、一方、該溶鋼流路4の流路中央付近の高温な溶鋼が入れ替わりで下降され、その結果、該溶鋼流路4内の溶鋼が適宜に還流して攪拌されるようになっている。このような攪拌作用により、『該溶鋼流路4内の溶鋼が前記スライディングノズル7との接触によって冷却され続けた結果として該溶鋼流路4を閉塞するように溶鋼が凝固してしまう』、という問題を未然に防止できるようになっている。
なお、上記の還流/攪拌は、以下の理由により確保できるものである。即ち、(a)前記タンディッシュ3の底面上に残存するスラグの、前記の第一スライディングノズル5内への流入が、前述の如く立設された鋼管8により確実に阻止され、(b)該第一スライディングノズル5の内周面に形成されている多数のポーラス5cの閉塞が防止され、(c)その結果、前記の溶鋼流路4へ該ポーラス5cを介して問題なく攪拌用ガスとしてのArガスを供給できたからである。
そして、略空の状態とした前記タンディッシュ3へ溶鋼を所定量だけ注湯した時点で前記の溶鋼流路4を開状態とする。より具体的には以下の如くである。即ち、図5に示す如く該タンディッシュ3内における溶鋼の湯深さY[mm]が前記鋼管8の延在長さL[mm]を少なくとも50[mm]以上上回った時点で、図6に示す如く前記の溶鋼流路4を開状態とする。即ち、この時点で鋳型2への注湯を始める。更に換言すれば、この時点で鋼の連続鋳造(略称:CC)を開始する(図7参照)。
なお、本図に示す如く前記の溶鋼流路4を開状態とした時点以降は、約250の供給量QAr[NL/min]でArガスを該溶鋼流路4へ供給することとする。この供給は、主として、上述したAl2O3などの浸漬ノズルに対する付着/堆積を防止することを目的とするものである。
<時刻T(4)〜>
なお、図7において、鋼の上記連続鋳造が終了した時点(即ち、タンディッシュ3が略空の状態となった時点(換言すれば、鋳型2への注湯が終了した時点))は、符号T(4)で図示されている。
以下、本実施形態に係る鋼の連続鋳造の再開方法の技術的効果を確認するための試験(第一・第二・第三)に関して説明する。上述した各数値範囲などは、下記の確認試験により合理的に裏付けられている。
<第一確認試験>
この第一確認試験は、主として前記の鋼管8の形状と、上記技術的効果と、の関連を確認するためのものである。以下、第一確認試験の評価の方法について説明する。
即ち、下記表1〜4の「ノズル閉塞」列において評価が「○」であるのは前記の溶鋼流路4を開状態とできたことを意味し、同じく評価が「×」であるのは前記の溶鋼流路4を開状態とはできなかったことを意味する。ここで、該溶鋼流路4を開状態とはできなかった理由として例えば以下のような点を例示できる。即ち、(a)図5に示す状態で前記の上スライドプレート5bと下スライドプレート6aを連結するように溶鋼が凝固してしまった結果、前記の下スライドプレート6aを上スライドプレート5bに対して相対滑動できなかった場合、(b)(a)に記載の相対滑動は可能であったが、該上スライドプレート5bの内周面近傍において溶鋼が凝固し、例えば袋状などの閉塞要因を形成してしまった場合、である。
一方、下記表1〜4の「変形倒れ」列において評価が「○」であるのは図1の状態から図5の状態に至るまで前記の鋼管8が変形して傾いたり倒れたりせずに立設状態を維持できたことを意味し、同じく評価が「×」であるのは図1の状態から図5の状態に至るまで立設状態を維持できなかったことを意味する。この立設状態の判断時点は、より具体的に言うと図5の状態に至る直前とする。即ち、立設された鋼管8が、タンディッシュ3内に収容される溶鋼に完全に浸り切る時点とする。
なお、該「変形倒れ」を評価項目としたのは、以下の理由による。即ち、必要十分に前記鋼管8の立設状態が継続されないと、該鋼管8の有する機能が十分に発揮され得ないからである。
次に、本試験に用いたタンディッシュの一部の寸法と、該タンディッシュに装着したスライディングノズルの寸法を図8に例示する。図8は、鋼の連続鋳造に用いられるタンディッシュの一部の寸法を例示する図である。
上記確認試験の試験条件とその試験結果を下記表1〜表4に示す。なお、下記各表において、「内径D mm」・「肉厚t mm」・「延在長さL mm」については図2を参照されたい。また、「質量M kg」は同一行に記載の前記鋼管8の寸法に基づいて計算したものである。その際、鋼管の比重は7.61g/cm3とした。
上記確認試験の他の試験条件は以下の通りである。即ち、前記のArガスの供給量QAr[NL/min]は150とし、該タンディッシュ3へ注湯する溶鋼の溶鋼過熱度ΔT[℃]は30とし、時刻T(3)の直後であって鋳型2へ溶鋼を注湯し始める時点における「湯深さ−鋼管の延在長さY-L[mm]」は400とした(これら他の試験条件は、第二確認試験において後ほど検討する。)。
Figure 0004459933
Figure 0004459933
Figure 0004459933
Figure 0004459933
上記各表には記載がないが、前記鋼管8の内径Dを前記タンディッシュ3の内壁面における前記溶鋼流路4の開口端の孔径d(95mm)よりも大としたことで(図2を併せて参照)、該鋼管8を該タンディッシュ3の底面上に安定して(即ち、傾いたり倒れることなく)載置することができた。
また上記各表に記載の如く肉厚t[mm]を4未満とすると、「変形倒れ」に関する評価が良好ではなかった。これは、前記の鋼管8が前記タンディッシュ3によって加熱されて強度が低下し、その自重に耐えられなかったからだと考えられる。
一方、上記各表に記載の如く肉厚t[mm]を8以上としても、「変形倒れ」に関する評価が良好ではなかった。これは、肉厚t[mm]が過大であった故、タンディッシュ3の底部の凹凸の影響を比して受け易かったためだと考えられる。
また上記各表に記載の如く延在長さL[mm]を350未満とすると、「ノズル閉塞」に関する評価が良好ではなかった。これは、前記鋼管8の立設状態における堰としての高さが十分ではなかったために、該タンディッシュ3内に残存していたスラグが前記のスライディングノズル7へ流入してしまい、該スラグがスライディングノズル7の内周面に付着・固化し、その結果として、前記溶鋼流路4への溶鋼の流通が確保できなかったためだと考えられる。
一方、上記各表に記載の如く延在長さL[mm]を550よりも大とすると、「変形倒れ」に関する評価が良好ではなかった。これは、前記鋼管8の下部に、前記タンディッシュ3による加熱と、それ自身の自重と、が重畳的に作用した結果、該タンディッシュ3への溶鋼の注入の有無に関わらず、変形し易い/倒れ易い状況となっていたからだと考えられる。
また上記各表に記載の如く質量M[kg]を8よりも大とすると、「ノズル閉塞」に関する評価が良好ではなかった。これは、前記タンディッシュ4の内面における前記溶鋼流路4の開口端の近傍の耐火物が、該耐火物上に載置された鋼管8との接触により相当に抜熱されたので、冷却された該耐火物に接触した溶鋼が凝固してしまい、その結果、前記の溶鋼流路4を開状態とできなかったからだと考えられる。
<第二確認試験>
次に、第二確認試験について説明する。この第二確認試験は、主として、上記他の試験条件と、技術的効果と、の関連を確認するためのものである。以下に、第二確認試験の評価の方法について説明する。
即ち、下記表5の「ノズル閉塞」列において評価が「○」や「×」であるのは、上記第一確認試験における評価の方法と同一である。
一方、下記表5の「気泡性欠陥」列において評価が「○」であるのは、『(1)該当する行に記載の条件で連続鋳造し、(2)鋳造された鋳片を次の工程としての分塊圧延工程にて断面155×155mm・長さ10mの鋼片とし、(3)該鋼片の表面(外面:4面)を目視して、(4)圧延方向長さが5mm以上の線状欠陥が1面あたり1個も観測されなかった』、ことを意味する。一方、評価が「×」であるのは、『(4)圧延方向長さが5mm以上の線状欠陥が1面あたり1個以上観測された』、ことを意味する。
上記確認試験の試験条件とその試験結果を下記表5に示す。なお、下記表において「溶鋼過熱度ΔT℃」は、時刻T(3)に前記タンディッシュ3へ注湯され始める溶鋼の溶鋼過熱度ΔTのことであり、その測定方法は前述の如くである。また、「湯深さ−鋼管の延在長さY-Lmm」は、図5の状態において、前記の溶鋼流路4を開状態とする時点における前記タンディッシュ3内の溶鋼の湯深さY[mm]から、該タンディッシュ3の所定の場所に立設される前記鋼管8の延在長さL[mm]を差し引いた値のことである。また、「Arガスの供給量QAr[NL/min]」は、図7において時刻T(3)から、前記の溶鋼流路4を開状態とする時点まで、において第一スライディングノズル5の内周面から前記の溶鋼流路4に対して供給したArガスの供給量QAr[NL/min]のことである。
Figure 0004459933
なお、上記表5において、他の試験条件は下記の通りである。
即ち、前記鋼管8の内径D[mm]は100とし、肉厚t[mm]は4とし、延在長さL[mm]は400とし、質量M[kg]は3.84とした。
上記表5によれば、「溶鋼過熱度ΔT[℃]」を25未満とすると、「ノズル閉塞」に関する評価が良好ではなかった。これは、溶鋼過熱度ΔTが十分には確保されていなかったので、前記の溶鋼流路4内又はその周辺において溶鋼が凝固し易かったからだと考えられる。
一方、上記表5には記載してないが、溶鋼加熱度ΔT[℃]が50よりも高くなると、鋳型2内での溶鋼の凝固が滞り、鋳型2の下流側にて、厚みの十分でない凝固シェルが破けて該凝固シェル内の溶鋼が外部へ流出する所謂ブレークアウトという別の問題が発生してしまった。
また上記表5によれば、「湯深さ−鋼管の延在長さY-L[mm]」を50未満とすると、「ノズル閉塞」に関する評価が良好ではなかった。これは、以下の理由によるものと考えられる。
即ち、前記の第二スライディングノズル6を前記第一スライディングノズル5に対して相対滑動させて前記の溶鋼流路4を開状態とし、前記のタンディッシュ3から前記鋳型2への溶鋼の注湯を開始しようとするとき、該相対滑動面(前記の上スライディングプレート5b及び下スライディングプレート6aの境界面)において薄い凝固膜が発生している場合が想定される。
斯かる場合、上記の相対滑動によっても該溶鋼流路4が該凝固膜によって閉塞され閉状態が維持されてしまうから、前記タンディッシュ3から前記鋳型2への溶鋼の注湯を開始できないだろう。しかし、この凝固膜は、該凝固膜に作用する溶鋼の静圧によって裂開できるものと考えられる。
そして、前記の第二スライディングノズル6を相対滑動させる時点において、該タンディッシュ3内に収容されている溶鋼の量が多いほど(湯深さY[mm]が大きく確保されているほど)、上記静圧が大となるから、上記の凝固膜が形成されていたとしても、該凝固膜が溶鋼静圧の作用により裂開されて、問題なく前記の溶鋼流路4を完全に開状態とできると推定できる。
以上の考察を踏まえ、上記表5において「湯深さ−鋼管の延在長さY-L[mm]」を50未満としたときに「ノズル閉塞」に関する評価が良好ではなかったのは、上記相対滑動の際に上述の凝固膜が形成されてしまっており、上記の溶鋼静圧が十分ではなかったために該凝固膜を開裂することができず、そのため、前記の溶鋼流路4の閉状態が維持されてしまったからだと考えられる。
また上記表5によれば、「Arガスの供給量QAr[NL/min]」を180以下とすると、「ノズル閉塞」に関する評価が良好ではなかった。これは、以下の理由によるものと考えられる。
即ち、図5に示す如く前記溶鋼流路4に対するArガスの供給により、該溶鋼流路4内には前述の還流が形成されることで高温の溶鋼が絶え間なく該溶鋼流路4へ導かれ、該溶鋼流路4内の溶鋼が適宜に攪拌されるようになっている。これによれば、前記の第一スライディングノズル5の内周面近傍における溶鋼の凝固を防止できる。しかし、上記「Arガスの供給量QAr[NL/min]」が180以下である場合は、前記の還流が十分には形成されないので、該溶鋼流路4内における攪拌の程度が弱く、その結果、前記の第一スライディングノズル5の内周面近傍において溶鋼が凝固してしまったからだと考えられる。換言すれば、前記第一スライディングノズル5の内周面に対する熱の供給が前記の還流によっては十分に成し得なかったのだろう。
一方、上記表5によれば、「Arガスの供給量QAr[NL/min]」を250よりも大とすると、「気泡性欠陥」に関する評価が良好ではなかった。これは、溶鋼中にArガスの気泡が多量に捕捉され、その捕捉されたArガスの気泡が鋳型2内へ流入し、溶鋼が該Arガスの気泡を含んだまま凝固し、それが次工程である圧延工程における鋳片の表面疵の原因となってしまったからだと考えられる。
<第三確認試験>
この第三確認試験は、前記のΔT(1-2)及びΔT(2-3)の設定に関する特徴と、技術的効果と、の関連を確認するものである。以下、第三確認試験の評価の方法について説明する。
図9は、第三確認試験の試験条件とその試験結果を示す図である。本図において、前記の「ノズル閉塞」に関する評価が「×」である(即ち「◆:黒菱形」で示された)プロットが意味するところ、同じく評価が「○」である(即ち「◇:白抜菱形」で示された)プロットが意味するところ、は上記表1〜5におけるそれと同じである。
なお、この第三確認試験の他の試験条件は以下の通りである。即ち、前記鋼管8の内径D[mm]は100とし、肉厚t[mm]は4とし、延在長さL[mm]は400とし、質量M[kg]は3.84とした。
図9によれば、前記のΔT(1-2)は少なくとも180分(3時間)以上とすることが、「ノズル閉塞」に関する評価の観点から好ましいことが判る。これは、以下の理由によるものと考えられる。
即ち、上記実施形態のように前記のタンディッシュ3を(その耐火物9の張替えをすることなく)繰り返し使用する場合において、該タンディッシュ3による溶鋼の収容を安定して問題なく実現するためには、溶鋼の凝固を防止する観点から、該タンディッシュ3の有する熱量を十分に確保することが肝要と言える。これに対して上記実施形態においては、耐火物9の張替えが施されたタンディッシュ3は鋳造前に予め所定のバーナーにて加熱することとしている。それでも、該タンディッシュ3の熱量を大きく確保するためには、実際に溶鋼を収容することが最も効果的である。以上を踏まえて考察するに、鋼の連続鋳造の再開前に前記のタンディッシュ3が溶鋼を実際に収容している時間としての前記のΔT(1-2)が180分以上であれば「ノズル閉塞」に関する評価を良好とでき、未満であれば良好とはできなかったのは、溶鋼の収容によって該タンディッシュ3に蓄えられた熱量の多寡が主因であると合理的に説明することができよう。
また本図によれば、前記のΔT(2-3)は長くても180分(3時間)以内とすることが、「ノズル閉塞」に関する評価の観点から好ましいことが判る。これは、以下の理由によるものと考えられる。
即ち、せっかく前記タンディッシュ3が溶鋼の収容により大きな熱量を確保できたとしても、再び溶鋼を該タンディッシュ3へ注湯し始めるまでに時間を要してしまうと(換言すれば、該タンディッシュ3の略空の状態を長時間維持してしまうと)、蓄えられた該熱量が大気へ放出されてしまうからである。
以上説明したように上記実施形態において、鋼の連続鋳造の再開方法は、以下のような方法で行われる。
即ち、上記実施形態が対象とする鋼の連続鋳造の再開方法は、「溶鋼を冷却して所定形状の凝固シェルを形成するための鋳型2と、該鋳型2に所定の流量で溶鋼を注湯するために、その底部に溶鋼流路4を有するタンディッシュ3と、を備える連続鋳造機100と、転炉内で適宜に処理された溶鋼を該連続鋳造機100へ所定量ずつ搬送するための取鍋と、を用いた鋼の連続鋳造を中断して前記タンディッシュ3を略空の状態とし、所定の時間の経過後に、鋼の連続鋳造を再開することを目的として再び溶鋼を該タンディッシュ3へ注湯するに際し、上記所定の時間においては前記タンディッシュ3は加熱しないものとし、略空の状態とした前記タンディッシュ3に対する溶鋼の前記注湯の開始前に前記の溶鋼流路4を予め閉状態としておき、略空の状態とした前記タンディッシュ3へ所定量だけ溶鋼を注湯した時点で該溶鋼流路4を開状態とする」ものである。
(a)前記タンディッシュ3の溶鋼流路4には、該タンディッシュ3に固着される第一スライディングノズル5と、該第一スライディングノズル5に対して滑動可能な第二スライディングノズル6と、から成るスライディングノズル7を設ける。
(b)前記第二スライディングノズル6を前記の第一スライディングノズル5に対して滑動させることで前記の溶鋼流路4を開状態又は閉状態へと切り替えることとする。
(c)前記第一スライディングノズル5は、その内周面から前記の溶鋼流路4に対してArガスを供給可能に構成する。
更に、以下(1)〜(5)の工程上の特徴を有する。
まず、(1)中断する鋼の前記連続鋳造に用いられるタンディッシュ3内には、少なくとも3時間以上は溶鋼を収容するものとする(ΔT(1-2)に相当、図7参照)。
次に、(2)略空の状態とした前記タンディッシュ3の底部には、肉厚t[mm]は4~7とし・延在長さL[mm]は350〜550とし・質量M[kg]は8以下とし・内径Dは前記タンディッシュ3の内壁面における前記溶鋼流路4の開口端の孔径dよりも大とする円筒の鋼管8を該溶鋼流路4の該開口端を囲繞するように立設する。
次に、(3)鋼の前記連続鋳造を中断して前記タンディッシュ3を略空の状態とした時点から、再び溶鋼を該タンディッシュ3へ注湯し始める時点迄の、前記所定の時間ΔT(2-3)は長くても3時間以内とする。
次に、(4)溶鋼過熱度ΔT[℃]を25〜50とする溶鋼を前記タンディッシュ3へ注湯し始めると共に、前記第一スライディングノズル5の内周面から前記の溶鋼流路4に対して180〜250の供給量QAr[NL/min]でArガスを供給する。
最後に、(5)前記タンディッシュ3内における溶鋼の湯深さY[mm]が、前記円筒の鋼管8の延在長さL[mm]を少なくとも50[mm]以上上回った時点において前記溶鋼流路4を開状態とする。
これによれば、前記溶鋼流路4が閉塞されることがないから、問題なく、鋼の連続鋳造を再開できる。また、別の観点から言えば、前記の鋼管8を安定して、前記タンディッシュ3の底部上に立設できる。更には、気泡性欠陥のない鋳片の鋳造を実現できる。
鋼の連続鋳造に用いられるタンディッシュの部分断面図 図1のA部拡大図 図1に類似する図 図1に類似する図 図1に類似する図 図1に類似する図 本発明の一実施形態における鋼の連続鋳造の再開を時系列的に表現した図 鋼の連続鋳造に用いられるタンディッシュの一部の寸法を例示する図 第三確認試験の試験条件とその試験結果を示す図
符号の説明
2 鋳型
3 タンディッシュ
4 溶鋼流路
5 第一スライディングノズル
5a 上ノズル
5b 上スライドプレート
6 第二スライディングノズル
6a 下スライドプレート
6b 下ノズル
7 スライディングノズル
8 鋼管
9 耐火物
10 鉄皮
100 連続鋳造機

Claims (1)

  1. 溶鋼を冷却して所定形状の凝固シェルを形成するための鋳型と、該鋳型に所定の流量で溶鋼を注湯するために、その底部に溶鋼流路を有するタンディッシュと、を備える連続鋳造機と、
    転炉内で適宜に処理された溶鋼を該連続鋳造機へ所定量ずつ搬送するための取鍋と、
    を用いた鋼の連続鋳造を中断して前記タンディッシュを略空の状態とし、所定の時間の経過後に、鋼の連続鋳造を再開することを目的として再び溶鋼を該タンディッシュへ注湯するに際し、
    上記所定の時間においては前記タンディッシュは加熱しないものとし、略空の状態とした前記タンディッシュに対する溶鋼の前記注湯の開始前に前記の溶鋼流路を予め閉状態としておき、略空の状態とした前記タンディッシュへ所定量だけ溶鋼を注湯した時点で該溶鋼流路を開状態とする、鋼の連続鋳造の再開方法において、
    (a)前記タンディッシュの溶鋼流路には、該タンディッシュに固着される第一スライディングノズルと、該第一スライディングノズルに対して滑動可能な第二スライディングノズルと、から成るスライディングノズルを設け、
    (b)前記第二スライディングノズルを前記の第一スライディングノズルに対して滑動させることで前記の溶鋼流路を開状態又は閉状態へと切り替えることとし、
    (c)前記第一スライディングノズルは、その内周面から前記の溶鋼流路に対してArガスを供給可能に構成し、
    (1)中断する鋼の前記連続鋳造に用いられるタンディッシュ内には、少なくとも3時間以上は溶鋼を収容するものとし、
    (2)略空の状態とした前記タンディッシュの底部には、肉厚t[mm]は4~7とし・延在長さL[mm]は350〜550とし・質量M[kg]は8以下とし・内径Dは前記タンディッシュの内壁面における前記溶鋼流路の開口端の孔径dよりも大とする円筒鋼管を該溶鋼流路の該開口端を囲繞するように立設し、
    (3)鋼の前記連続鋳造を中断して前記タンディッシュを略空の状態とした時点から、再び溶鋼を該タンディッシュへ注湯し始める時点迄の、前記所定の時間は長くても3時間以内として、
    (4)溶鋼過熱度ΔT[℃]を25〜50とする溶鋼を前記タンディッシュへ注湯し始めると共に、前記第一スライディングノズルの内周面から前記の溶鋼流路に対して180〜250の供給量QAr[NL/min]でArガスを供給し、
    (5)前記タンディッシュ内における溶鋼の湯深さY[mm]が、前記円筒鋼管の延在長さL[mm]を少なくとも50[mm]以上上回った時点において前記溶鋼流路を開状態とする、
    ことを特徴とする鋼の連続鋳造の再開方法
JP2006213514A 2006-08-04 2006-08-04 タンディッシュ内湯溜めによる、鋼の連続鋳造の再開方法 Expired - Fee Related JP4459933B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006213514A JP4459933B2 (ja) 2006-08-04 2006-08-04 タンディッシュ内湯溜めによる、鋼の連続鋳造の再開方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006213514A JP4459933B2 (ja) 2006-08-04 2006-08-04 タンディッシュ内湯溜めによる、鋼の連続鋳造の再開方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2008036670A JP2008036670A (ja) 2008-02-21
JP4459933B2 true JP4459933B2 (ja) 2010-04-28

Family

ID=39172281

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006213514A Expired - Fee Related JP4459933B2 (ja) 2006-08-04 2006-08-04 タンディッシュ内湯溜めによる、鋼の連続鋳造の再開方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4459933B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010269359A (ja) * 2009-05-25 2010-12-02 Kobe Steel Ltd 前チャージと次チャージの温度差に着目した、タンディッシュの熱間再使用方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2008036670A (ja) 2008-02-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Mills et al. A review of slag splashing
JP2009541062A (ja) 溶融モールドフラックスを用いた連続鋳造装置及び方法
JP4459933B2 (ja) タンディッシュ内湯溜めによる、鋼の連続鋳造の再開方法
JP4102352B2 (ja) 熱間再使用タンディッシュを用いたステンレス溶鋼の連続鋳造方法
JP2019013950A (ja) タンディッシュ注入管のシール方法およびシール装置
JP4815821B2 (ja) アルミキルド鋼の連続鋳造方法
JP2012020333A (ja) 汚染源のタンディッシュへの混入を防止する連続鋳造方法
JP2009148788A (ja) 鋼管を用いたタンディッシュ内湯溜めによる鋼の連続鋳造の再開方法
JPH0857600A (ja) 連続鋳造のタンディッシュノズル開孔方法,連続鋳造方法および浮子式スラグストッパー装置
JP2744439B2 (ja) 溶鋼の連続鋳造におけるノズル詰り防止方法
JP2014131811A (ja) 真空鋳造方法
JP7397323B2 (ja) 双ドラム式連続鋳造装置用浸漬ノズル
JP2010269359A (ja) 前チャージと次チャージの温度差に着目した、タンディッシュの熱間再使用方法
JP5076693B2 (ja) 連続鋳造用タンディッシュ及び鋼の連続鋳造方法
JPH02188435A (ja) ロックウール溶融物の定量出湯装置
JP6837179B1 (ja) 鋼の連続鋳造用タンディシュノズル
JP3864698B2 (ja) 連続鋳造方法
JP3612198B2 (ja) 連続鋳造タンディッシュ
JPH09276996A (ja) タンディッシュ再使用スタート時におけるデッケル防止方法
JP2011110561A (ja) 鋼の連続鋳造方法
JPH0355488A (ja) 底注ぎ式容器および底注ぎ式容器のノズル内閉塞方法
JP5437945B2 (ja) 熱間繰り返しタンディッシュの付着物抑制方法
JP4600095B2 (ja) タンディッシュの熱間再使用方法
JP2005125403A (ja) 連続鋳造に用いるロングノズル及びこれを用いた連続鋳造方法
JP3093617B2 (ja) タンディッシュの熱間連続使用方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20080926

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20090205

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20100209

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20100210

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4459933

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130219

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140219

Year of fee payment: 4

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees