JP4457691B2 - GaN系半導体素子の製造方法 - Google Patents

GaN系半導体素子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、GaN系半導体素子の製造方法に関する。
近年、青色から紫外域にかけての短波長領域の発光ダイオード(以下、LEDともいう)や半導体レーザ用の材料として窒化物半導体が用いられるようになっている。窒化物系半導体は、一般式InAlGaN(ただし、x+y+z=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1)で表される化合物半導体であって、例えば、GaN、InGaN、AlGaN、AlInGaN、AlN、InNなど、任意の組成のものが例示される。以下、窒化物系半導体をGaN系半導体ともいう。
GaN系半導体材料を用いたこの種の発光素子では、電流注入層や電極とのコンタクト層として、p型層及びn型層を必要とするが、p型のGaN系半導体は、今のところ、n型のものに比べて導電率の低いものしか得られていない。そこで、基板上にp型およびn型のGaN系半導体が積層されてなる発光素子では、通常、p側電極の形成されるp型コンタクト層が積層体の最上層とされ、そのp型コンタクト層の上面全面を覆うようにp側電極が形成される。このような構成にすることで、素子に電圧を印加したときにp型層内を流れる電流の向きを層の厚み方向とすることができ、素子の直列抵抗が低く抑えられるためである。また、導電性が低いp型層内では電流キャリアが拡散し難いが、このようなp型層から活性層に注入されるキャリアの量が、活性層の面内で均一になるようにするためである。
p型コンタクト層に関しては、電極とのオーミック接触を得るために、p型不純物をマグネシウム(Mg)とし、組成はインジウム(In)、アルミニウム(Al)を含まない二元混晶の窒化ガリウム(GaN)とする必要があるといわれている(特許文献1)。特許文献2には、Mgを高濃度にドープしたGaNをp型コンタクト層に用いることで、金属電極に対する良好なオーミック性が得られた例が開示されている。
GaN系半導体の成長方法としては、高品質の結晶を実用的な成長速度で作製することができる有機金属気相成長(MOVPE)法が一般的に用いられているが、p型伝導性のものは、MOVPE法によってGaN系半導体を成長する際に、単に2族元素を添加しただけでは得られないという問題がある。GaNの場合、約600℃以上では結晶から窒素原子が脱離する可能性があるために、高温での成長終了後、600℃以下となるまでアンモニア(NH)を流しながら降温すると良いことが知られており(特許文献3)、このことはMOVPE法を用いた場合も同様であるが、アンモニアを流しながら室温まで降温すると、GaN系半導体におけるp型不純物であるMgや亜鉛(Zn)などの2族元素を添加して成長したGaNはp型伝導性を示さず、高抵抗なものとなってしまうのである。その理由は、MgやZnの周辺で、窒素原子と原子状水素との結合が安定化されることによって、これらMgやZnのアクセプターとしての活性が失われるためといわれている。この原子状水素の働きによるp型伝導性の発現阻害現象は、水素パッシベーションと呼ばれている。
この問題を解決し、低抵抗のp型GaN系半導体を得る方法として、MOVPE法によってp型不純物を添加しながらGaN系半導体を成長し、成長終了後、アンモニアを流しながら室温まで降温した後に、窒素ガス(N)雰囲気中、大気圧下または加圧下で600℃〜800℃程度の加熱処理を施す方法が知られている(特許文献4)。
また、別の方法として、特許文献5では、MOVPE法によってp型不純物を添加しながらGaN系半導体を成長した後、成長温度から、900〜700℃程度の温度まではアンモニア等の窒素含有雰囲気中で冷却し、それ以下の温度では不活性ガス中で冷却する方法が提案されており、この方法によれば、有害な窒素原子の脱離と水素パッシベーションとを同時に防止できるといわれている。この特許文献5には、冷却時の水素の取り込まれを抑制する場合として、GaAlInNの成長後、800℃ないし850℃の温度まではアンモニア中で冷却し、その後、アルゴン中にて冷却した例が記載されている。特許文献6には、p型不純物を添加してGaNの成長を行った後、アンモニアを1.3リットル/分、水素を2.5リットル/分の割合で成長炉内に供給しながら冷却を行い、600℃以上の温度でアンモニアの供給を停止することで、冷却後に熱処理等の処理を施すことなく、p型のGaNを得た例が記載されている。
特開平6−268259号公報 特開平8−97471号公報 特開昭56−45899号公報 特開平5−183189号公報 特開平6−326416号公報 特開平8−115880号公報
しかしながら、特許文献4記載の方法でp型GaN系半導体を含むGaN系半導体素子を得ようとすると、半導体層の積層工程に加えて、別途の熱処理工程が必要となるため、製造工程の数が多くなり、ひいては生産性の低下もしくはコストの上昇を招く問題があると共に、処理工程の増加による歩留り低下という問題がある。
また、本発明者らが、特許文献5および6記載の方法を用いて、p型GaNをp型コンタクト層としたLEDを試作したところ、動作電圧が高くなるという問題があることが見出された。発光素子は、実用上の点からは、単に出力が高ければ良いというものではなく、素子が組み込まれる装置・機器の側からの低消費電力化に対する要求がある。また、動作電圧は素子の発熱量に直接関係するため、素子の寿命に大きく影響する。発熱が大きい程、放熱を優先する実装構造が必要となることから、設計上の様々な制約が発生してくるという問題もある。特に、GaN系半導体発光素子では、短波長光を発生するために原理的に駆動電圧が高くならざるを得ないことに加え、結晶成長用基板として現在のところ最適とされるサファイアの熱伝導性が極めて低く、放熱性が悪いという問題もある。これらの事情から、GaN系半導体発光素子の動作電圧、例えば、LEDにおける順方向電圧(Vf)や、レーザダイオードにおける発振のしきい値電圧の低減に関しては、極めて強い要求があり、たとえ0.1Vでも低減することが望ましいとされている。
本発明は、上記問題を解消する、すなわち、半導体層の積層工程後に別途の熱処理工程を行うことなくp型GaN系半導体を作製することで、生産性の向上およびコストの低下を図りつつ、素子の動作電圧を低くすることが可能な、GaN系半導体素子の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は下記の特徴を有する。
(1)基板上に形成されたn型GaN系半導体層の上に、pn接合構造の形成が起こるようにp型GaN系半導体層を形成する工程を有し、
該工程においては、
前記基板が設置された成長炉内に原料およびキャリアガスを導入して、MOVPE法によりAlGa1−aN(0<a≦1)からなるp型コンタクト層を前記p型GaN系半導体層の最上層として成長するとともに、
前記p型コンタクト層の降温を行うときには、
前記成長炉内に導入するガスを、アンモニアと、窒素ガスおよび希ガス類から選ばれる1種類以上のガスのみとし、かつ、その成長炉内に導入されるガスの全流量に占めるアンモニアの流量の比率fを0<f<0.025とし、
更に、降温の途中、基板温度t(ただし、650℃<t)のときに、前記成長炉内へのアンモニアの導入を停止し、以後は、前記成長炉内にアンモニアを導入することなく降温を継続する、
ことを特徴とするGaN系半導体発光素子の製造方法。
(2)前記比率fを、f≦0.01とする、前記(1)に記載の製造方法。
(3)前記比率fを、f≦0.005とする、前記(2)に記載の製造方法。
(4)前記p型コンタクト層を成長するときに前記成長炉内に導入されるキャリアガスが、窒素ガスおよび希ガス類の中から選ばれる1種類以上のガスと、水素ガスのみであり、かつ、水素ガス以外のガスの流量が水素ガスの流量と同じであるかそれよりも大きい、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)LEDの製造方法である、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
本発明者らは、前記特許文献5および6に記載されたp型GaN系半導体の作製方法を用いて、p型のGaNをp型コンタクト層に用いたLEDを試作したところ、動作電圧が高くなることを見出し、その原因について検討を重ねた結果、GaNは分解温度が比較的低いために、MOVPE法で成長した後の降温過程において、p型コンタクト層表面で著しい窒素原子の脱離が起こり、p型コンタクト層とp側電極との接触抵抗が大きくなったのではないかと考えた。つまり、窒素原子の脱離によって生じた窒素空孔がもたらすn型伝導性の影響で、p型コンタクト層の表面でのp型伝導性の発現が阻害され、接触抵抗が増加したという推定である。
そこで、本発明では、まず、GaN系半導体素子の製造工程において、GaN系半導体の積層構造を基板上に形成するにあたり、最上層として成長する層、すなわち最後に成長する層を、AlGa1−nN(ただし、0<n≦1)(以下、AlGaNともいう)からなるp型コンタクト層とすることにより、成長後の降温過程におけるp型コンタクト層表面での窒素原子の脱離抑制を図っている。AlGaNは、Alと窒素原子との結合解離エネルギーが、GaNと窒素原子との結合解離エネルギーよりも大きいために、p型コンタクト層をGaNで形成した場合に比べ、高温での窒素原子の脱離が生じ難いと考えられるためである。これによって、n型伝導性を示す窒素空孔の発生を抑制し、p型コンタクト層の表面領域におけるp型伝導性の発現を促進する。また、このp型コンタクト層を、高品質の結晶を成長するのに適したMOVPE法で成長することによっても、p側電極との接触抵抗の低下を図っている。
次に、本発明では、p型コンタクト層を成長した後、降温過程で成長炉に導入するアンモニアの量を従来よりも極端に少なくする。これによって水素パッシベーションを抑制することと、上述の、p型コンタクト層の材料をAlGaNとすることとの相乗効果により、p型コンタクト層の表面でのp型伝導性の発現が著しく促進され、p側電極との接触抵抗の低減が達成される。
更に、本発明では、水素パッシベーションをより効果的に抑制するために、p型コンタクト層を成長した後、降温過程で成長炉に導入するアンモニアを室温よりもかなり高い温度で停止する。この場合も、上述のように、p型コンタクト層の材料をAlGaNとすることで表面での窒素原子の脱離を抑制しているため、水素パッシベーションを抑制することによる効果の方が優勢となって、p型コンタクト層とp側電極の接触抵抗の更なる低下が図られる。
このような本発明によれば、GaN系半導体の積層構造を基板上に形成する工程を行うだけで、抵抗の低いp型GaN系半導体が得られるために、別途の熱処理工程が不要となり、生産性の向上やコストの低下が可能となる。
また、本発明によれば、従来の発想ではp型コンタクト層の材料として最適とは考えられていなかった、AlGaNをp型コンタクト層の材料として用いるにもかかわらず、p型コンタクト層をGaNで形成した従来のGaN系半導体素子よりも動作電圧が低くなる。これによって、素子の消費電力が低下するとともに、発熱量が低減されるので、劣化が抑制され、素子の動作寿命や信頼性が向上する。
本発明は、GaN系半導体の積層構造の形成に用いられた基板を含む形でチップ化される素子のみならず、基板上に積層構造が形成された後、基板が研磨除去される工程を経て、あるいは、積層構造が基板から剥離される工程を経て、チップ化される素子の製造においても有効である。なぜなら、このような素子の製造においても、基板上にGaN系半導体の積層構造を形成する工程で最後に成長する層をp型コンタクト層とし、この層にp側電極を形成することが望ましいからである。基板上にGaN系半導体層の積層構造を形成するにあたり、先にp型層を成長し、その後でn型層を成長し、積層構造の形成後、基板を研磨除去したり、半導体層を基板から剥離して、露出されたp型層にp側電極を形成する方法も可能性としては考えられるが、実際にこの方法を採用することは難しい。というのは、基板の研磨除去や、半導体層を基板から剥離することによって得られる研磨面や剥離面は、面荒れが激しいために、そのまま電極形成に供すことはできず、エッチングを施して平滑化する必要がある。しかし、p型GaN系半導体の表面にエッチングを行うと接触抵抗が大きくなり、電極形成に適さなくなる傾向があるためである。
以下、本発明の実施の形態を、図を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るLEDの構造を模式的に示す断面図である。このLEDは、サファイア基板11上に、図示しないバッファ層を介し、アンドープGaN下地層12、n型GaNコンタクト層13、InGaNを主たる構成要素とする活性層14、p型AlGaNクラッド層15、p型GaN高キャリア濃度層16およびp型AlGaNコンタクト層17が、順次、成長された多層構造を有している。
多層構造は、その一部がp型AlGaNコンタクト層17の最表面から、n型GaNコンタクト層13に達する深さまでドライエッチング法により除去され、これにより露出されたn型GaNコンタクト層13上には、n側電極21が形成されている。また、p型AlGaNコンタクト層17が除去されていない部分の上には、p側電極22が形成されている。
本発明の実施に係る図1のLEDでは、サファイア基板11の上にGaN系半導体の積層構造が形成されるにあたり、最上層としてAlGa1−nN(0<n≦1)からなるp型AlGaNコンタクト層17が成長される。このp型AlGaNコンタクト層17を形成するAlGaNのAlN混晶比nは、高温での窒素原子の脱離を抑制する効果を十分とするためには1%以上とすることが好ましく、3%以上とすることがより好ましい。AlN混晶比nが20%を超えるとバンドギャップが大きくなって、添加されたp型不純物の活性化率が低下し、p側電極との接触抵抗が増加する傾向がある。また、Mgの添加量を増やしたときに、クラックが発生し易くなる。AlN混晶比nを10%以下とすると、p型不純物の活性化率が高くなるとともに、結晶品質が向上するので、接触抵抗を低下させるうえでより好ましい。
p型AlGaNコンタクト層17の好ましい厚さは、1nm以上である。1nmより薄くすると、p側電極との接触抵抗が増加する傾向がある。p型AlGaNコンタクト層17の厚さには、特に上限はないが、必要以上に厚く形成すると直列抵抗が増加するため、好ましくは50nm以下、より好ましくは10nm以下である。
p型AlGaNコンタクト層17に添加されるp型不純物は、GaN系半導体に添加することで正孔を生ぜしめるものであればよく、Mg、Zn、Be等、当業界で公知のものを任意に用いることができる。中でも、Mgが、不純物準位が浅いため活性化し易いこと、制御が容易であること、毒性の問題がないことから好ましい。p型AlGaNコンタクト層17にp型不純物としてMgを添加する場合、p側電極との接触抵抗を低くするために、1×1019cm−3以上、より好ましくは5×1019cm−3以上の高濃度で添加することが好ましい。Mgの濃度が1×1021cm−3以上となると、p型AlGaNコンタクト層17の結晶性が低下して、接触抵抗が増加する傾向がある。
一般に、p型GaN系半導体においては、p型不純物の添加量を多くしていくと、キャリア濃度が不純物濃度に比例して増加せず、あるところで飽和した後、むしろ減少する傾向を示す。また、p型不純物の濃度が高くなると結晶性が低下する傾向がある。従って、高キャリア濃度のp型層を得ようとする場合には、AlGaNよりも、p型不純物の活性化率が高くなるGaNの方が適している。そこで、p型伝導層側における電流拡散の促進により素子の動作電圧を低下させるには、p型AlGaNコンタクト層17の直下に、キャリア濃度が1×1017cm−3〜2×1018cm−3のp型GaN高キャリア濃度層16を設けることが好ましい。このようなキャリア濃度のp型GaN高キャリア濃度層16は、Mgを濃度が5×1018cm−3〜5×1020cm−3となるよう添加しながらGaNを成長し、成長後、本発明の方法で降温することにより得ることができる。このような高キャリア濃度層を設けることは、発光素子の場合には、活性層に注入されるキャリアの量を多くするうえでも好ましい。また、p型AlGaNコンタクト層17に5×1019cm−3以上の濃度でMgを添加する場合、p型AlGaNコンタクト層17の直列抵抗が上昇する傾向があるため、p型AlGaNコンタクト層17の厚さを10nm以下として、その直下に厚さ10nm〜150nmのp型GaN高キャリア濃度層16を設けることが好ましい。
GaN系半導体の積層構造の形成に用いる基板として、図1ではサファイア基板11を例示したが、サファイアに限定されるものではなく、GaN系半導体が成長可能なものであれば、適宜使用することができ、SiC(6H、4H、3C)、GaN、AlN、Si、スピネル、ZnO、GaAs、NGO(NdGaO3)などからなるものが使用できる。サファイア基板についても、C面、A面、R面等を表面とする基板を用いることができる。これらの材料からなる結晶が、表層として形成された基板を用いることもできる。
サファイア基板11の表面には、凹凸形状を加工形成してもよい。基板の表面にドライエッチング等の方法で凹凸形状を加工形成し、その上にGaN系半導体の成長を行うと、上方の半導体層に伝播する転位欠陥を低減したり、転位欠陥の密度の低い領域を形成することができる(例えば、特開2000−106455号公報、特開2000−331947号公報、特開2001−210598号公報、特開2002−164296号公報参照)。従って、サファイア基板11の表面に凹凸形状を加工形成し、その上に、バッファ層を介して、または直接、アンドープGaN下地層12以降の成長を行うと、活性層における発光効率の向上、pn接合部の耐圧特性の向上や、素子の動作電圧低減に係わる、コンタクト層の導電率の向上、コンタクト層と電極との接触抵抗の低減等の、好ましい効果が期待できる。また、この場合に、凹部が埋め込まれるようにアンドープGaN下地層12を成長すると、LEDの光取り出し効率を向上させることもできる(例えば、特開2002−280611号公報参照)。
サファイア基板11上にバッファ層(図示せず)を設けることは、サファイアと格子定数の異なるGaN系半導体をサファイア基板11上に平坦に成長させるうえで効果的である。また、アンドープGaN下地層12にも、その上に形成されるGaN系半導体層中の結晶品質を向上させる作用がある。従って、これらのバッファ層やアンドープGaN下地層12を形成することによって、活性層における発光効率の向上、pn接合部の耐圧特性の向上や、素子の動作電圧低減に係わる、コンタクト層の導電率の向上、コンタクト層と電極との接触抵抗の低減等の、好ましい効果が期待できる。
n型GaNコンタクト層13、活性層14、p型AlGaNクラッド層15は、高効率の発光素子に必須のpn接合構造を構成している。
次に、図1のLEDの製造方法について、実施例を用いて説明する。
このLEDを構成するGaN系半導体は、周知のMOVPE法により成長される。具体的には、例えば、有機金属原料として、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルインジウム(TMI)、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(CpMg)が使用される。ガス原料としては、アンモニア、シラン(SiH)が使用される。キャリアガスとしては水素ガス(H)及び窒素ガス(N)が使用される。装置としては、常圧に保持された成長炉内に、これらの原料およびキャリアガスが横方向(略水平に設置される基板の主面に平行な方向)から供給される、常圧横型のMOVPE装置が好適に使用できる。
サファイア基板11として、本実施例および比較例では、表面に凹凸形状が加工形成されたC面サファイア基板11が用いられる。まず、フォトリソグラフィの方法を用いて、基板表面上に幅3μmのストライプ状のエッチングマスクが、間隔3μmで周期的に平行に配列したパターンが形成される。ストライプの長手方向は、サファイアの<1 −1 0 0>方向に平行とされる。次に、ドライエッチング法によって、エッチングマスクの形成されていない、基板表面が露出した部分に、深さ1μmの断面略矩形状の溝が形成される。その後、エッチングマスクが除去され、有機洗浄および酸洗浄される。
表面に凹凸形状が加工された後、サファイア基板11は、MOVPE装置の成長炉内の、ヒータ加熱されるサセプタ上に設置される。次に、常圧にて、水素ガスが25L/分の流量で導入される雰囲気中で、基板温度が1100℃に上昇され、約10分間の気相エッチングが行われる。これによって、サファイア基板11の表面の自然酸化膜が除去される。この後、基板温度が400℃まで降温され、TMGとTMAとアンモニアが導入されて、AlGaNからなるバッファ層が形成される。
続いて、TMG、TMAの供給が停止され、アンモニアのみ流されたまま、基板温度が1000℃まで昇温される。その後、キャリアガスとして水素ガスおよび窒素ガス、原料としてアンモニアとTMGが供給され、アンドープGaN下地層12が成長される。アンドープGaN下地層12の厚さは、サファイア基板11の表面の凸部上面から約2μmとされる。
アンドープGaN下地層12の成長初期過程では、基板面に対して傾斜したファセット面を表面とする三次元形状のGaN結晶体が、サファイア基板11の表面に形成された凸部上と凹部底のそれぞれで別個に形成される。このような過程を経てアンドープGaN下地層12が成長すると、サファイア基板11の表面に形成された凹部は、殆ど空洞を残すことなくアンドープGaN下地層12によって埋め込まれる。
アンドープGaN下地層12の成長後、成長炉内にシランが導入されることにより、厚さ約4μmのn型GaNコンタクト層13が形成される。その後、TMG及びシランの供給が停止され、基板温度が700℃まで降温される。基板温度が700℃となった時点で、キャリアガスが水素ガスと窒素ガスの両方から、窒素ガスのみに切替えられ、アンモニアとTMGが導入されて、GaNからなるバリア層(障壁層)が成長される。次に、TMIが導入され、InGaNからなる井戸層が成長される。TMGとTMIの供給量は、LEDの設計発光波長に合わせて、InGaNのInN混晶比が適当な値となるように調節される。本実施例では、中心発光波長が405nmとなるようにした。バリア層と井戸層の成長は、多重量子井戸の設計繰返し数に合わせて繰り返す。これにより、多重量子井戸構造の活性層14が形成される。
多重量子井戸活性層14の形成後、基板温度が再び1000℃に昇温され、1000℃に達したところでキャリアガスが再び水素ガスと窒素ガスに切替えられ、TMG、TMA、CpMgが導入されて、厚さ50nmのp型AlGaNクラッド層15が成長される。続いて、TMAの供給が停止されるとともに、CpMgの流量が増加されて、厚さ100nmのp型GaN高キャリア濃度層16が成長される。
以降のp型コンタクト層成長過程および降温過程を変化させて、本発明に係る実施例と、従来技術に係る比較例のLEDを作製し、特性を比較した。
[p型コンタクト層の成長]
(実施例1〜11/比較例1〜3)
p型GaN高キャリア濃度層16の形成後、再びTMAが導入されるとともに、CpMgの流量が更に増加されて、p型AlGaNコンタクト層17が10nm成長される。このとき、p型AlGaNコンタクト層17を構成するAlGaNの組成がAl0.03Ga0.97Nとなるように、TMGとTMAの流量が調節される。また、p型AlGaNコンタクト層17のMg濃度が1×1020cm−3となるように、CpMgと3族元素の流量比が調節される。
(比較例4〜7)
p型GaN高キャリア濃度層16の形成後、CpMgの流量が更に増加されて、p型GaNコンタクト層が10nm成長される。このとき、p型GaNコンタクト層のMg濃度が1×1020cm−3となるように、CpMgと3族元素の流量比が調節される。このように、比較例4〜7のp型コンタクト層は、組成をGaNとすること以外は、実施例のp型AlGaNコンタクト層17と同様に成長される。
[降温]
(実施例1〜6/比較例1〜7)
p型AlGaNコンタクト層17(実施例1〜6および比較例1〜3)またはp型GaNコンタクト層(比較例4〜7)の成長終了後、TMG、TMA、CpMg、水素ガスの供給が停止されるとともに、基板の加熱が停止され、基板とその上に成長されたGaN系半導体の自然降温が始まる。この自然降温の開始とともに、成長炉内に導入されるガスが、アンモニアと窒素ガスのみとされる。このとき成長炉内に導入されるアンモニアと窒素ガスの流量を、表1に示す実施例1〜6および比較例1〜7のようにした。表1には、成長炉内に導入されるガスの全流量に占めるアンモニアの流量の比率(以下、アンモニアの比率ともいう)も併せて示している。なお、実施例6だけは、アンモニアを導入せず、窒素ガスのみを成長炉内に導入した。いずれの実施例および比較例においても、基板温度が室温に下がるまで、各ガスの流量を一定に維持して成長炉内に流し続けた。
Figure 0004457691
(実施例7〜11)
p型AlGaNコンタクト層17の成長終了後、TMG、TMA、CpMg、水素ガスの供給が停止されるとともに、基板の加熱が停止され、基板とその上に成長されたGaN系半導体の自然降温が始まる。この自然降温の開始とともに、成長炉内に導入されるガスが、アンモニアと窒素ガスのみとされる。このときアンモニアの流量は0.02L/分、窒素ガスの流量は19.98L/分とされる。従って、アンモニアの比率は0.1%である。その後、基板温度が低下し、所定の温度に達した時点で、アンモニアの導入が停止される。以下、このアンモニアの導入が停止される温度を、アンモニア停止温度ともいう。アンモニアが停止された後は、基板温度が室温に達するまで、窒素が流量20L/分で導入される。実施例7〜11で用いたアンモニア停止温度を表2に示す。
Figure 0004457691
[素子化]
基板温度が室温まで低下したところで、基板上にGaN系半導体の積層構造が形成されたエピウェハが成長炉から取り出され、電極形成と素子分離(エピウェハをチップに分断すること)が行われる。電極形成は、まず、p側電極としてニッケル(Ni)および金(Au)が積層されてなる透光性のオーミック電極22がp型AlGaNコンタクト層17の上面に形成される。なお、図1には図示していないが、このp側電極上には、後に、給電用のパッド電極が形成される。
次に、部分的にドライエッチングが施されて、p型AlGaNコンタクト層17、p型GaN高キャリア濃度層16、p型AlGaNクラッド層15、活性層14の一部が除去され、n型GaNコンタクト層13が露出される。露出されたn型GaNコンタクト層13に、n側電極として、チタン(Ti)およびアルミニウム(Al)が積層されてなるオーミック電極が21が形成される。更に、上記給電用のパッド電極がp側電極上に部分的に形成された後、素子分離が行われ、一辺350μmの正方形状のチップとされる。
[評価]
このようにして作製された図1の構造を有するLEDについて、オートプローバを用いて、n側電極21と、p側電極22上に形成されたパッド電極とから通電して、各素子の出力(任意単位)、順方向電圧Vf(V)、逆耐圧Vr(V)の測定を行った。出力およびVfは、LEDに流す電流を20mAとして、また、VrはLEDに流す電流を10μAとして、測定した。
図2に、実施例1〜6と比較例1〜3に係るLEDの出力を測定した結果を示す。図の横軸はアンモニアの比率である。この図からわかるように、LEDの出力は、アンモニアの比率が25%のときと2.5%のときとで、あまり変わっていないが、アンモニアの比率が2.5%から1%に減じられたとき、1桁以上の大幅な上昇を示している。アンモニアの比率を2.5%より小さくしたところで、水素パッシベーションの抑制によってp型不純物を添加したGaN系半導体層が十分なp型伝導性を示すようになり、発光効率を飛躍的に向上させるpn接合構造の形成が起こったものと推定される。一方、アンモニアの比率を1%から更に減じても、実質的な出力の変化は見られない。従って、LEDの出力向上の目的のためには、アンモニアの比率を2.5%より小さくすることが好ましく、1%以下にすることがより好ましい。
図3は、実施例1〜6と比較例1〜3に係るLEDのVfを測定した結果を示す。図2と同様に、図の横軸はアンモニアの比率である。この図からわかるように、Vfはアンモニアの比率を25%から2.5%まで低下させてもあまり変化していないが、アンモニアの比率が2.5%を下回ったところで低下し始め、更にアンモニアの比率が1%以下でも、出力の場合とは異なり、アンモニアの比率の低下とともに低下する傾向を示している。なお、図3で、Vfが最低値を示しているのは、アンモニアの比率が0.1%である実施例5であり、アンモニアを全く導入しなかった実施例6では、Vfは増加に転じ、4V以上となっている。従って、LEDのVf低下の目的のためには、アンモニアの比率を2.5%より小さくすることが好ましい。また、アンモニアを全く導入しないよりも、僅かな量のアンモニアを導入する方が好ましい。
図4は、実施例1〜6と比較例1〜3に係るLEDのVrを測定した結果を示す。図2、図3と同様、図の横軸はアンモニアの比率である。この図からわかるように、Vrもまた、出力やVfと同様に、アンモニアの比率を25%から2.5%まで低下させてもあまり変化していないが、2.5%を下回ったところで低下が始まり、アンモニアの比率の低下とともに、値が低下している。Vrは、アンモニアの比率を0.1%まで低くした実施例5でも、25V程度の値に維持されているが、アンモニアを全く流さない実施例6に係るLEDでは5V程度まで低下している。従って、Vrの観点からは、アンモニアを全く導入しないよりも、僅かな量のアンモニアを導入する方が好ましい。ただし、Vrが低くても問題とならない用途のためであれば、アンモニアを全く導入しなくてもかまわない。
一方、比較例4〜7に係るLEDについては、次のような結果となった。
まず、出力については、比較例1〜3と似た傾向が見られ、アンモニアの比率を25%とした比較例4、アンモニアの比率を4%とした比較例5、アンモニアの比率を2.5%とした比較例6のそれぞれに係るLEDの間で、出力には殆ど変化がなく、その値は比較例1〜3に係るLEDと同程度であった。一方、アンモニアの比率を1%とした比較例7に係るLEDの出力は、比較例3に係るLEDより1桁以上高い値となり、実施例1〜6のLEDと同程度であった。従って、出力に関しては、p型コンタクト層をGaNで形成した比較例4〜7と、AlGaNで形成した比較例1〜3および実施例4とで、似たような傾向となった。しかし、Vfについてみると、比較例4〜7に係るLEDのVfはいずれも約6.5Vであり、アンモニアの比率を25%から1%まで低下させても、有意な変化は観察されなかった。また、比較例4〜7に係るLEDのVrは、p型コンタクト層をAlGaNで形成した以外は同じガス流量条件で降温した、実施例や他の比較例のLEDよりも、やや低い値であった。
ここで、比較例1〜3および実施例1と、比較例4〜7とを対比すると、アンモニアの比率が同じであっても、p型コンタクト層の半導体組成をAlGaNとしたときと、GaNとしたときとではLEDのVfが異なり、p型コンタクト層をAlGaNで形成したときの方が、Vfは低くなっている。また、実施例1からわかるように、p型コンタクト層をAlGaNで形成した場合、アンモニアの比率を1%まで低下させたとき、LEDのVfが明らかな低下傾向を示すが、p型コンタクト層をGaNで形成した場合には、このような傾向は見られない。p型コンタクト層をAlGaNで形成した場合には表面での窒素原子の脱離が抑制され、水素パッシベーション抑制の効果が顕在化して、Vfの低下が現れた可能性が考えられる。
次に、実施例7〜11に係るLEDに関する測定結果について記す。
図5は、実施例6〜10に係るLEDの出力を測定した結果を示す。図の横軸はアンモニア停止温度である。図5からわかるように、LEDの出力はアンモニア停止温度を400℃〜950℃の間で変化させても、実質的に変化していない。前述の実施例1〜6の結果と合わせて、降温過程で成長炉に導入するアンモニアの量を低減することによる効果は、アンモニアの量をある程度まで低減したところで飽和する傾向があるように見える。
図6は、実施例6〜10に係るLEDのVfを測定した結果を示す。図の横軸は、図5と同様に、アンモニア停止温度である。図6に示すように、アンモニアの停止温度を上昇させて、650℃より高温とすると、Vfの低下が生じている。従って、LEDのVfを低下させる目的のためには、アンモニア停止温度を650℃より高温にすることが好ましい。なお、このようにアンモニア停止温度を高くすることで、LEDのVfが低下する原因の詳細は不明であるが、可能性として、水素パッシベーションを引き起こす原子状水素の種類または状態は一様ではなく、その中には、基板温度が650℃となるまでは不安定であるが、650℃以下になると安定化するものが存在していることが考えられる。仮にこのような原子状水素が存在すると、650℃より高い温度でアンモニアの供給を停止した場合には、この原子状水素が結晶外に脱出していくために、水素パッシベーションが抑制される。本発明ではGaN系半導体層の最表面のp型コンタクト層をAlGaNで形成するために、窒素原子の脱離が抑えられる結果、このような水素パッシベーションの抑止効果が顕在化している可能性がある。実施例6ではp型AlGaNコンタクト層17の成長終了後、直ちにアンモニアの導入を停止しているが、この実施例6に係るLEDのVfは実施例8〜10に係るLEDよりも高い。これは、半導体の成長終了後にアンモニアを全く供給しない条件では、窒素原子の脱離による悪影響が大きくなってくるためではないかと考えられる。従って、基板温度が950℃に下がるまでは、アンモニアを供給しながら降温することが好ましい。
図7は、実施例7〜11に係るLEDのVrを測定した結果を示す。図の横軸は、図5、図6と同様にアンモニア停止温度である。図7から明らかなように、アンモニア停止温度が400℃〜800℃の間では、Vrは24V〜25V程度の値を保っているが、アンモニア停止温度が800℃以上になると、急激に低下する。従って、Vrの低下を防止する目的のためには、アンモニア停止温度は800℃以下とすることが好ましい。
ところで、図7からわかるように、Vrの大きな低下は、p型AlGaNコンタクト層17の成長後、基板温度が800℃以下に下がるまでアンモニアを供給したときには発生していない。一方、図6に示されるように、アンモニア停止温度を650℃以上にすることでVfの低下が起こるため、アンモニアの停止を基板温度が650℃〜800℃のときに行えば、Vrの低下を防ぎつつ、Vfの低下を図ることができる。
また、Vrの大きな低下を防ぎながら、Vfの低下を促進するには、アンモニアの導入が停止された状態で、基板温度が650℃〜800℃の間にあるときに、降温速度を遅くしてもよい。ここで、降温速度を遅くするとは、降温を一時中断し、一定温度に保持することを含み、また、温度制御上の要因等により、800℃を超えない範囲で、基板温度が一時的に昇温することも含み得る。図6に示したように、基板温度が650℃以上でアンモニアを停止するとVfが低下する傾向が見られることから、降温速度を遅くして、基板温度が650℃以上の状態に置かれる時間を長くすると、この傾向が促進される。なお、このように降温速度を変化させた場合には、基板温度が高いときには降温速度が相対的に速いため、半導体層が高温に曝される時間が長くなることはなく、また、650℃〜800℃程度では、InGaN層を初めとする半導体層の熱劣化や、p型不純物として添加されたMgの他の層への拡散による問題はそれ程大きくない。むしろ、基板温度が650℃〜800℃にあるときに降温速度を遅くすると、基板上に成長されるGaN系半導体と熱膨張係数の異なる材料からなる基板を用いた場合には、基板とGaN系半導体層との間の歪が緩和され、クラックや欠陥の発生を抑制する効果がもたらされる。特に、上記実施例のように、基板の表面に凹凸形状を加工形成した場合には、基板とGaN系半導体層とが接する界面の面積が、表面の平坦な基板の場合よりも広くなるので、より効果がある。一方、図6から、基板温度が650℃よりも低くなった後は、アンモニアの導入が停止されていても、Vfの大きな低下が見込めないことから、製造効率の観点からは、基板温度が650℃以下に下がったところで降温速度を速くしてもよい。
GaN系半導体の成長時および成長後の降温過程における基板温度は、数百℃以上と高いために、基板の降温は、基板の加熱を単に停止するだけでも自然に生じる。この降温速度を更に大きくするためには、サセプタに冷却回路を設けて強制冷却を行えばよい。逆に、基板の降温速度を遅くするには、ヒータ加熱、高周波加熱等、装置所定のサセプタ加熱手段を動作させることによってもよいし、成長炉に導入するガスの流量を少なくしたり、あるいは一時的にガスの導入を停止することによってもよい。これら基板の降温速度を遅くするための操作を解除すれば、基板の降温速度が再び速くなることは、いうまでもない。
[他の実施例]
(実施例12〜14)
実施例12〜14は、p型AlGaNコンタクト層17を成長する時に、キャリアガスとして成長炉に導入される窒素ガスと水素ガスの流量を次の表3のようにした以外は、実施例11と同様の方法で、GaN系半導体層の成長から素子化までを行ったものである。この実施例12〜14に係るLEDについて、実施例11と同様の方法でVfを測定した。表3には、このVfの測定結果も合わせて示す。
Figure 0004457691
表3に示すように、p型AlGaNコンタクト層17を成長する時の、キャリアガスとして成長炉に導入される窒素ガスと水素ガスの流量の比率([窒素ガスの流量]/[水素ガスの流量])(以下N/H比ともいう)が増加するにつれ、Vfが低下する傾向が見られた。そして、キャリアガスに水素が全く含まれない場合に、最も低い値となった。従って、好ましいN/H比は1以上であり、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上である。表3からわかるように、キャリアガスに水素を使用しない場合も、好ましい結果が得られている。
/H比がLEDのVfに与える効果については、推測であるが、p型層の成長時にキャリアガスとして導入される水素が水素パッシベーションの一因となっているために、この供給量を少なくすることで、水素パッシベーションの発生が抑えられるためではないかと考えられる。なお、本実施例ではp型AlGaNコンタクト層17の成長時のキャリアガスとして窒素と水素を用いたが、窒素の代わりに、他の化学的に安定なガスを用いることもできる。化学的に安定であるとは、p型AlGaNコンタクト層17の成長時に、成長炉に導入される原料ガスや他のキャリアガス、基板、成長中または成長済の窒化物半導体との間で化学反応を実質的に生じないことを意味する。このようなガスとしては、窒素の他に、アルゴン、ネオン、ヘリウム等のいわゆる希ガス類が例示される。また、これらのガスは、複数のものを同時に使用することもできる。製造コスト低下の観点からは、安価な窒素ガスを用いることが好ましい。
以上、本発明の実施形態を実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではない。
上記実施例では、p型AlGaNコンタクト層17を基板温度1000℃で成長したが、これより高い温度で成長してもよいし、これより低い温度で成長してもよい。高い温度で成長する程、p型AlGaNコンタクト層17の結晶性が向上するため、電気特性が向上すると考えられる。低い温度で成長した場合、結晶性の点では不利であるが、InGaN層の劣化や、Mgの拡散による悪影響が抑制される利点がある。
上記実施例では、p型AlGaNコンタクト層17の成長終了後の降温過程でアンモニアと窒素ガスを成長炉に導入しているが、この窒素ガスの全部、または一部を、GaN系半導体に対して不活性である、他のガスに置き換えてもよい。GaN系半導体に対して不活性であるとは、GaN系半導体層の内部または表面における水素パッシベーションや窒素原子の脱離に実質的に影響しないという意味である。このようなガスとしては、窒素ガスの他に、アルゴン、ネオン、ヘリウム等のいわゆる希ガス類が挙げられる。水素ガスも、例えば、基板温度が十分に低下したとき等、水素パッシベーションや窒素原子の脱離に実質的に影響を与えない条件では、GaN系半導体に対して不活性なガスとして使用することができる。本発明では、降温過程で流すこれらのガスの種類を一定とする必要はなく、途中で変化させてもよい。また、これらのガスは、複数のものを同時に使用することもできる。製造コスト低下の観点からは、安価な窒素ガスを用いることが好ましい。
GaN系半導体の成長終了後、基板とGaN系半導体の降温を行う方法については特に限定されず、単に基板の加熱を停止することによって起こる自然降温のみによってもよいし、サセプタの強制冷却を併用してもよい。逆に、装置所定のサセプタ加熱手段を動作させれば、自然降温よりも遅い降温速度で降温を行うこともできる。降温速度を変化させる場合については、前述した通りである。
MOVPE法によるGaN系半導体の成長に用いる有機金属原料、ガス原料、キャリアガスの種類、成長時に成長炉内に導入する原料やキャリアガスの流量、成長時の基板温度、成長時間、これらのプログラムや調節の方法等については、従来公知の方法を参照してよい。
本発明は、基板上にGaN系半導体の積層構造を形成するにあたり、最上層とするp型AlGaNコンタクト層をMOVPE法により成長することを特徴としているが、他のGaN系半導体層の成長方法は特に限定されるものではなく、MOVPE法の他、ハイドライド気相成長(HVPE)法、分子ビーム蒸着(MBE)法等、従来公知の方法を適宜使用することができる。製造効率の点からは、基板上に積層されるGaN系半導体層の成長を、最上層のp型コンタクト層まで全て、MOVPE法により、ひとつの成長炉内で一貫して行うことが好ましい。
本発明の実施に係るLEDの構造については、図1の構造に限定されるものではなく、図1の構造に省略を行った構造、あるいは、図1の構造に更に付加的な構造を追加したものであってもよい。LED構造を構成する各GaN系半導体層の結晶組成、ドーパントとその濃度、厚さ等の設計、電極の材料や、形状、形成方法、素子分離の方法等についても、従来公知の技術を参照してよい。
本発明は、LEDだけでなく、p型GaN系半導体を有する全てのGaN系半導体素子(LED以外の発光素子、受光素子、電子デバイスなど)の製造方法として有用である。その場合、素子の構造や、その製造のために必要となる技術(GaN系半導体の積層構造の形成技術、パターニング技術、電極材料技術、素子分離技術など)については、公知の技術を参照してよい。
本発明の実施例に係るLEDの構造の模式図である。 本発明の実施例および比較例に係るLEDの出力とアンモニアの比率との関係を示す図である。 本発明の実施例および比較例に係るLEDのVfとアンモニアの比率との関係を示す図である。 本発明の実施例および比較例に係るLEDのVrとアンモニアの比率との関係を示す図である。 本発明の実施例に係るLEDの出力とアンモニア停止温度との関係を示す図である。 本発明の実施例に係るLEDのVfとアンモニア停止温度との関係を示す図である。 本発明の実施例に係るLEDのVrとアンモニア停止温度との関係を示す図である。
符号の説明
11 サファイア基板
12 アンドープGaN下地層
13 n型GaNコンタクト層
14 活性層
15 p型AlGaNクラッド層
16 p型GaN高キャリア濃度層
17 p型AlGaNコンタクト層
21 n側電極
22 p側電極

Claims (5)

  1. 基板上に形成されたn型GaN系半導体層の上に、pn接合構造の形成が起こるようにp型GaN系半導体層を形成する工程を有し、
    該工程においては、
    前記基板が設置された成長炉内に原料およびキャリアガスを導入して、MOVPE法によりAlGa1−aN(0<a≦1)からなるp型コンタクト層を前記p型GaN系半導体層の最上層として成長するとともに、
    前記p型コンタクト層の降温を行うときには、
    前記成長炉内に導入するガスを、アンモニアと、窒素ガスおよび希ガス類から選ばれる1種類以上のガスのみとし、かつ、その成長炉内に導入されるガスの全流量に占めるアンモニアの流量の比率fを0<f<0.025とし、
    更に、降温の途中、基板温度t(ただし、650℃<t)のときに、前記成長炉内へのアンモニアの導入を停止し、以後は、前記成長炉内にアンモニアを導入することなく降温を継続する、
    ことを特徴とするGaN系半導体発光素子の製造方法。
  2. 前記比率fを、f≦0.01とする、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記比率fを、f≦0.005とする、請求項2に記載の製造方法。
  4. 前記p型コンタクト層を成長するときに前記成長炉内に導入されるキャリアガスが、窒素ガスおよび希ガス類の中から選ばれる1種類以上のガスと、水素ガスのみであり、かつ、水素ガス以外のガスの流量が水素ガスの流量と同じであるかそれよりも大きい、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. LEDの製造方法である、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
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