ところで、特許文献1、2に開示の構成では、フィルターを用いてエマルションの油水分離を行っている。これらフィルターは、繊維から構成されているので、当該フィルターの目の開口径を一定にすることができない。従って、例えば、フィルターの開口径が比較的大きい部分に、当該開口径よりも小さな液滴が流れてきた場合には、当該液滴はフィルターの開口部を素通りすることになり、他の液滴と合一することができない。つまり、エマルションに含まれる液滴は、フィルターの中を通過する流路によっては、合一することができない。
従って、上記特許文献1記載の構成では、エマルションに含まれている液滴のフィルター内を通過する流路の開口径を一定に制御することができないので、例えば、当該フィルターを通過した液滴の粒径を、所望の粒径以下に分級することができない。
また、上記特許文献1、2に開示の構成では、エマルションに含まれる液滴の流路を制御することができないので、効率よく油水分離を行うためには、流路に流すエマルションの流速を厳密に制御する必要がある。つまり、上記特許文献1、2に開示の構成では、エマルションの流速が早いまたは遅い場合には、当該エマルションに含まれる液滴が合一化せず、1つの連続相に形成されないので、エマルションは解乳化されないで排出されることとなる。
さらに、上記特許文献1、2に開示の構成では、フィルターの目の開口径を均一にすることができず、また、例えば、フィルターの目の開口径が小さくなればなるほど開口径の分布を一定にすることが困難であるため、例えば、上記非特許文献2に開示のマイクロミキサーを用いて生成された液滴の粒径が非常に小さいエマルションを分級することは非常に困難である。
また、上記特許文献1、2に開示のフィルターを用いた場合、長時間、油水分離を行うと、徐々にフィルターにふくらみが生じることとなり、当該フィルターの通液抵抗が増大するため、常に、一定の油水分離能を保持することは非常に困難である。
本発明は、上記の課題に鑑みなされてなされたものであり、その目的は、より簡単に、所望の粒径以下にエマルションに含まれている液滴を分級することができる分級装置および分級方法を提供することにある。
本発明にかかる分級装置は、上記の課題を解決するために、エマルションに含まれる液滴の最大粒径よりも小さい、所望の高さまたは幅を有する流路を備え、上記流路を形成する壁の少なくとも一部分は、当該エマルションに含まれる液滴と親和性を有している親和性材料からなることを特徴としている。
上記流路にエマルションを通過させることによって、当該エマルションに含まれる液滴のうち、上記流路のエマルションに含まれる液滴の最大粒径よりも小さい、所望の高さまたは幅(以下、最小間隔と称する)よりも大きい液滴は、上記最小間隔に合うように変形するとともに、親和性材料と濡れた状態になる。そして、上記流路にエマルションを連続的に供給した場合、液滴は親和性材料と濡れた状態であり、分散媒は親和性材料に濡れにくいので、流路を流れる分散媒と液滴との相対速度が異なることとなる。そして、流路上流の液滴が流路下流の液滴と比べて、その大きさが小さい場合には、当該上流の液滴は、下流の液滴に追いつくこととなる。このとき、液滴同士は、親和性材料に濡れた状態となっているので、自らを安定状態にするために、表面積をより小さくするように作用することになり、他の液滴と合一することとなる。これによって、流路の最小間隔よりも大きな液滴は、上記流路を通ることにより、合一されることとなる。一方、流路の最小間隔よりも小さな液滴は、親和性材料に濡れることなく、通過することになるので、他の液滴と合一されない。従って、流路を通過した後でも、その形状を保持している。
上記の構成によれば、エマルションに含まれる液滴を、最小間隔の流路を通過させる、より具体的には、当該流路内を濡れた状態で通過させることにより、上記最小間隔よりも大きな液滴をより大きな液滴にする(合一化する)ことができる。これにより上記液滴は、合一化されて連続相となり、エマルションから分離することができる。また、上記最小間隔よりも小さな液滴については、そのままの状態を維持することができる。
つまり、上記の構成とすることにより、エマルションに含まれる液滴を確実に上記最小間隔の流路に流すことができる。これにより、エマルションに含まれる液滴を所望の粒径以下に分級することができる。
また、本発明の分級装置は、上記高さまたは幅は、エマルションに含まれる液滴の体積平均粒径以下である構成がより好ましい。
上記の構成によれば、上記高さまたは幅を、エマルションに含まれる液滴の体積平均粒径以下とすることにより、粒度分布がより揃った液滴を得ることができる。
また、本発明の分級装置は、さらに、上記流路は、エマルションに含まれる少なくとも2個の液滴が当該流路内に存在することができる流路長を有している構成とすることがより好ましい。
上記の構成とすることにより、エマルションに含まれる液滴のうちの少なくとも2個の液滴が、上記流路内に存在することができるので、これら液滴をより確実に合一させることができる。
また、本発明の分級装置は、さらに、上記流路を形成する壁の少なくとも一部分には、当該エマルションに含まれる液滴よりも分散媒に対して親和性を有している非親和性材料が含まれている構成とすることがより好ましい。
上記非親和性材料とは、エマルションの分散媒が濡れやすい材料である。上記の構成とすることにより、流路の一部が非親和性材料で構成されていることにより、非親和性材料は、エマルションの分散媒に濡れやすいので、エマルションを流路に供給する際に発生する圧力損失を少なくすることができる。
また、本発明の分級装置は、さらに、上記エマルションは、水中油滴型であり、上記親和性材料は、油中の水の動的接触角が90°以上である親油性材料から構成されている構成とすることがより好ましい。
上記の構成によれば、親和性材料として、油中の水の動的接触角が90°以上である親油性材料を用いているので、エマルションとして水中油滴型のものを用いた場合に、流路内を流れる水中油滴型のエマルションに含まれる液滴を確実に濡れた状態とすることができる。これにより、水中油滴型のエマルションをより良好に分級することができる。なお、上記「油中」とは、上記エマルションに含まれる油滴(液滴)の成分(有機溶媒)と同じものである。
また、本発明の分級装置は、さらに、上記親油性材料は、フッ素樹脂である構成とすることがより好ましい。
フッ素樹脂は、耐薬品性に優れている。従って、上記の構成によれば、親油性材料としてフッ素樹脂を用いることにより、例えば、流路を構成している材料に対して反応性が高いエマルション等である場合にも好適に分級することができる。
また、本発明の分級装置は、さらに、上記エマルションは、油中水滴型であり、上記親和性材料は、油中の水の動的接触角が90°よりも小さい親水性材料から構成されている構成がより好ましい。
上記の構成によれば、親和性材料として、油中の水の動的接触角が90°よりも小さい親水性材料を用いているので、エマルションとして油中水滴型のものを用いた場合に、流路内を流れる油中水滴型のエマルションに含まれる液滴を確実に濡れた状態とすることができる。これにより、水中油滴型のエマルションをより良好に分級することができる。なお、上記「油中」とは、上記エマルションを構成している液体の成分(有機溶媒)と同じものである。
また、本発明の分級装置は、さらに、上記流路の断面形状は矩形であり、当該断面形状の最も狭い間隔が、上記エマルションに含まれる液滴の最大粒径よりも小さい距離であるとともに、上記流路の断面形状の最も広い間隔が、上記最も狭い間隔の10倍以上の距離である構成とすることがより好ましい。
上記の構成によれば、上記流路の断面形状は矩形となっており、当該形状の最も狭い(短い)間隔(高さまたは幅)が上記エマルションに含まれる液滴の最大粒径よりも小さい距離になっている。そして、上記流路の断面形状の最も広い間隔が、上記最も狭い間隔の10倍以上の距離になっている。これにより、エマルションに含まれている液滴を、流路を通過させる際、より簡単に変形させることができる。つまり、エマルションに含まれる液滴は、例えば、断面形状が円であり、その直径が上記液滴の最大粒径以下である流路の場合に比べて、上記液滴がより容易に、流路の最小間隔に変形するともに間隔が広いほうに逃げることができる。これにより、上記流路にエマルションを供給する場合における圧力損失をより少なくすることができる。また、上記断面形状が円である場合に比べて、流路の断面積を広くすることができるので、より多くのエマルションを流路に流すことができる。従って、生産性を高めることができる。
また、本発明の分級装置は、さらに、上記流路は、エマルションに含まれる液滴の最大粒径よりも小さい間隔で離間された少なくとも2枚の板状部材を含んでなる構成とすることがより好ましい。
上記の構成によれば、板状部材にて流路を形成するようになっているので、より簡単に流路を形成することができる。
また、本発明の分級装置は、さらに、エマルションは、マイクロミキサーで生成したものである構成とすることがより好ましい。
上記マイクロミキサーにて生成されたエマルションは、当該エマルションに含まれている液滴の大きさが非常に小さい。そして、液滴の大きさが非常に小さい場合には、安定性が高いため、当該液滴を合一させることが困難である。上記の構成によれば、マイクロミキサーによって生成された、液滴の大きさが非常に小さなエマルションであっても好適に分級することができる。
また、本発明の分級装置は、さらに、上記流路には、エマルションを排出する排出口が設けられており、当該排出口に分液装置が接続されてなる構成がより好ましい。
上記の構成によれば、流路の、エマルションの排出口に分液装置(セトラー)が設けられているので、分級されたエマルションを連続的にかつ迅速に分液することができる。
また、本発明の分級装置は、さらに、上記流路が複数設けられている構成とすることがより好ましい。
上記の構成によれば、上記流路が複数設けられているので、より多くのエマルションを一度に分級することができる。
本発明のエマルションの分級方法は、上記の課題を解決するために、エマルションに含まれる液滴の最大粒径よりも小さい、所望の高さまたは幅を有するとともに、少なくとも一部分が、当該エマルションに含まれる液滴と親和性を有している親和性材料から構成されている流路を備えた分級装置を用いて、上記流路に、エマルションを通過させることを特徴としている。
上記の構成によれば、エマルションに含まれる液滴を、最小間隔の流路を通過させる、より具体的には、当該流路内を濡れた状態で通過させることにより、上記最小間隔よりも大きな液滴をより大きな液滴にする(合一化する)ことができる。また、上記最小間隔よりも小さな液滴については、そのままの状態を維持することができる。
つまり、上記の構成とすることにより、エマルションに含まれる液滴を確実に上記最小間隔の流路に流すことができる。従って、上記最小間隔よりも大きな液滴を合一化させて、連続相としてエマルションから分離することができる。これにより、エマルションに含まれる液滴を所望の粒径以下に分級することができる。
本発明のエマルションの分級方法は、さらに、上記流路内におけるエマルションの滞留時間が0.001〜10秒の範囲内となるように、当該エマルションを流す構成とすることがより好ましい。
上記の構成とすることで、より確実にエマルションに含まれる液滴を分級することができる。
また、本発明のエマルションの解乳化方法は、エマルションに含まれる液滴の最大粒径よりも小さい、所望の高さまたは幅を有する流路を備え、上記流路を形成する壁の少なくとも一部分は、当該エマルションに含まれる液滴と親和性を有している親和性材料からなる分級装置における流路に、エマルションを通過させ、通過液を分液することを特徴とする。
上記の構成によれば、エマルションに含まれる液滴を、最小間隔の流路を通過させる、より具体的には、当該流路内を濡れた状態で通過させることにより、上記最小間隔よりも大きな液滴をより大きな液滴にする(合一化する)ことができるので、エマルションを容易に分液し、解乳化することができる。
本発明にかかる分級装置は、以上のように、エマルションに含まれる液滴の最大粒径よりも小さい、所望の高さまたは幅を有する流路を備え、上記流路を形成する壁の少なくとも一部分は、当該エマルションに含まれる液滴と親和性を有している親和性材料からなることを特徴としている。
それゆえ、エマルションに含まれる液滴を確実に上記最小間隔の流路に流すことができる。これにより、エマルションに含まれる液滴を所望の粒径以下に分級することができるという効果を奏する。
また、本発明の分級装置は、上記高さまたは幅は、エマルションに含まれる液滴の体積平均粒径以下である構成とすることにより、粒度分布がより揃った液滴を得ることができる。
また、本発明の分級装置は、さらに、上記流路は、エマルションに含まれる少なくとも2個の液滴が当該流路内に存在することができる流路長を有している構成とすることで、これら液滴をより確実に合一させることができる。
また、本発明の分級装置は、さらに、上記流路を形成する壁の少なくとも一部分には、当該エマルションに含まれる分散媒に対して親和性を有している非親和性材料が含まれている構成とすることにより、エマルションを流路に供給する際に発生する圧力損失を少なくすることができる。
また、本発明の分級装置は、さらに、上記エマルションは、水中油滴型であり、上記親和性材料は、油中の水の動的接触角が90°以上である親油性材料から構成されている構成とすることにより、水中油滴型のエマルションをより良好に分級することができる。
また、本発明の分級装置は、さらに、上記親油性材料は、フッ素樹脂である構成とすることにより、例えば、流路を構成している材料に対して反応性が高いエマルション等である場合にも好適に分級することができる。
また、本発明の分級装置は、さらに、上記エマルションは、油中水滴型であり、上記親和性材料は、油中の水の動的接触角が90°よりも小さい親水性材料から構成されていることにより、水中油滴型のエマルションをより良好に分級することができる。
また、本発明の分級装置は、さらに、上記流路の断面形状は矩形であり、当該断面形状の最も狭い間隔が、上記エマルションに含まれる液滴の最大粒径よりも小さい距離であるとともに、上記流路の断面形状の最も広い間隔が、上記最も狭い間隔の10倍以上の距離である構成とすることにより、より多くのエマルションを流路に流すことができる。
また、本発明の分級装置は、さらに、上記流路は、エマルションに含まれる液滴の最大粒径よりも小さい間隔で離間された少なくとも2枚の板状部材を含んでなる構成とすることで、より簡単に流路を形成することができる。
また、本発明の分級装置は、さらに、エマルションは、マイクロミキサーで生成したものである構成とすることで、液滴の大きさが非常に小さなエマルションであっても好適に分級することができる。
また、本発明の分級装置は、さらに、上記流路には、エマルションを排出する排出口が設けられており、当該排出口に分液装置が接続されてなる構成とすることにより、分級されたエマルションを連続的にかつ迅速に分液することができる。
また、本発明の分級装置は、さらに、上記流路が複数設けられている構成とすることにより、より多くのエマルションを一度に分級することができる。
本発明のエマルションの分級方法は、以上のように、エマルションに含まれる液滴の最大粒径よりも小さい、所望の高さまたは幅を有するとともに、少なくとも一部分が、当該エマルションに含まれる液滴と親和性を有している親和性材料から構成されている流路を備えた分級装置を用いて、上記流路に、エマルションを通過させる構成である。
それゆえ、エマルションに含まれる液滴を確実に上記最小間隔の流路に流すことができる。これにより、エマルションに含まれる液滴を所望の粒径以下に分級することができるという効果を奏する。
本発明のエマルションの分級方法は、さらに、上記エマルションを、当該エマルションが流路内を流れる滞留時間が0.001〜10秒の範囲内となるように流すことで、より確実にエマルションに含まれる液滴を分級することができる。
本発明のエマルションの解乳化方法は、エマルションに含まれる液滴の最大粒径よりも小さい、所望の高さまたは幅を有する流路を備え、上記流路を形成する壁の少なくとも一部分は、当該エマルションに含まれる液滴と親和性を有している親和性材料からなる分級装置における流路に、エマルションを通過させ、通過液を分液する構成である。
これにより、エマルションに含まれる液滴を、最小間隔の流路を通過させることにより、上記最小間隔よりも大きな液滴をより大きな液滴にする(合一化する)ことができるので、エマルションを容易に分液し、解乳化することができる。
本発明の実施の一形態について以下に説明する。本実施の形態にかかる分級装置は、エマルションに含まれる液滴の最大粒径よりも所望の高さまたは幅を有するとともに、当該エマルションが上記特定の高さまたは幅を通過する流路を備え、上記流路を形成する壁の少なくとも一部分は、当該エマルションに含まれる液滴と親和性を有している親和性材料からなるものである。
より具体的には、本実施の形態にかかる分級装置としては、例えば、エマルションに含まれる液滴の最大粒径よりも小さい幅で離間された少なくとも2枚の板の間に該エマルションを流動させる構造(流路)を有するもの等が挙げられる。
そして、上記の構成とすることで、上記流路にエマルションを流通させることにより、上記流路の最小高さまたは最小幅よりも大きな液滴が合一化して、大きな液滴と微小な液滴に分級される。また、大きな液滴が1つの連続相となる程度に十分に合一化すると、エマルションが解乳化され、液滴に由来する連続相と、エマルションの分散媒に由来する連続相との2つの相に分液されて排出される場合がある。また、例えば、上記「マイクロミキサー」などの装置によって生成されるような微小な粒径の液滴が分散されたエマルションや乳化剤(界面活性剤)が含まれているエマルションであっても、迅速に分級(解乳化)することができる。これについて以下に説明する。
まず、本実施の形態にかかる分級装置を用いて分級するエマルションについて説明する。
本実施の形態にかかるエマルションとは、液体の分散媒中に、該液体(分散媒)とは異なる液体の粒子がコロイド粒子またはそれよりも粗大な粒子として分散しているものである。なお、以下の説明では、液体の粒子を液滴として説明している。
本実施の形態にかかる分級装置によって分級(解乳化)される上記エマルションに含まれる液滴の粒径としては、1〜100μmの範囲内程度がより好ましく、10〜50μmの範囲内程度がさらに好ましい。
また、上記エマルションとしては、通常、水と有機相との分散系、つまり、液滴がそれを溶かさない他の液体中に分散した系であり、具体的には水(分散媒)の中に有機相(液滴)が分散している水中油滴型エマルション(O/W型)、有機相(分散媒)の中に水(液滴)が分散している油中水滴型エマルション(W/O型)などが挙げられる。
ここで、有機相を構成している有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ヘプタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、トリデカンなどの脂肪族炭化水素類、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、ドデカノールなどの炭素数6〜20程度のアルコール類(アルコール類を構成する炭化水素基は、直鎖状、分枝状、環状などのいずれであってもよい)、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル等が挙げられる。
上記例示の有機溶媒のうち、溶質(有機化合物)の分配係数(油相/水相)が大きく、溶質が油相に分配される割合が高い点で、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、脂環式炭化水素類およびアルコール類が好適に用いられる。従って、有機溶媒として、上記芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、脂環式炭化水素類およびアルコール類を用いる場合には、水相から溶質を抽出する際に生じるエマルションを、本実施の形態にかかる分級装置によって、容易に解乳化させることができるとともに、溶質を油相に迅速に抽出させることができる。
さらに、上記エマルションは、当該エマルションを安定化させるために、界面活性剤、保護コロイドなどの乳化剤を含有していてもよい。
ここで、界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸スルホン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルカリ硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステルなどのアニオン系界面活性剤;ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステルなどのノニオン系界面活性剤;テトラアルキルアンモニウムハライド、ベンジルトリアルキルアンモニウムハライドなどの第4級アンモニウム塩、アルキルアミン塩、などのカチオン性界面活性剤等が挙げられる。
また、保護コロイドとしては、部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、カルボキシル変性ポリビニルアルコール、シラノール基変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類;ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体等の保護コロイドが挙げられる。
また、上記乳化剤は、異なる複数の乳化剤を併用してもよく、例えば、界面活性剤と保護コロイドとを併用してもよい。
また、例えば、有機合成反応において、相間移動触媒として界面活性剤(具体的にはテトラアルキルアンモニウム塩、ベンジルトリアルキルアンモニウム塩等)を用いたり、有機合成反応の基質や反応生成物がアンモニウム塩、カルボン酸塩である場合には、上記有機合成反応によって得られた有機相を水洗した場合には、エマルションが生じることとなる。このエマルションに含まれる液滴の粒径は、10〜50μm程度なので、本実施の形態にかかる分級装置を用いることで、より好適に当該エマルションを分級(解乳化)することができる。
図1は、本実施の形態にかかる分級装置1の概略の構成を示す斜視図である。図1に示すように、分級装置1は、エマルションが流動する流路にあたる中空部を有する中板3(図3参照)を上板(板状部材)2(図2参照)と下板(板状部材)4(図4参照)とで挟みこんだ構造を有している。つまり、図3に示すように、中板3によって離間された上板2と下板4との間に形成されている中空部に、エマルションが流動する流路となっている。また、図1および図2に示すように、上板2には、エマルションを供給する供給口5と分級(解乳化)された液が排出される排出口6が設けられている。
本実施の形態にかかる分級装置1における上板2と下板4との最小間隔(離間幅)、すなわち、中板3の厚さは、流動させるエマルションに含まれる液滴の最大粒径以下であって、分級したい所望の距離、すなわち、分級したいエマルションに含まれる液滴が所望の粒径以下となるように設定されている。好ましくは、液滴の体積平均粒子径以下に設定する。例えば、液滴が油滴であり、水相に液滴が分散している水中油滴型のエマルションであって、水相に最大10μmの油滴が存在する場合であっても、10μmよりも大きな液滴が合一化されてできた油相が連続相として分液される場合、最小間隔、すなわち、中板3の厚さとしては、10μm以下に設定すればよい。
具体的には、上記最小間隔としては、分級(解乳化)されるエマルションの種類によっても異なるが、1〜100μmの範囲内であると、分液に要する滞留時間が短縮される傾向にあることから好ましい。中でもマイクロミキサーで生成するエマルションのように、迅速に液液抽出が可能なような微小な液滴を有するエマルションの場合には、上記最小間隔は、1〜50μmの範囲内であることが好ましい。なお、本実施の形態における「流路」とは、分級装置1のエマルションが流動する領域のうち、当該流動させるエマルションに含まれる液滴の最大粒径よりも小さい高さまたは幅を有している領域を示している。そして、本実施の形態の分級装置を用いることにより、粒径(体積平均粒子径)が、1〜100μmの範囲内程度、より好ましくは10〜50μmの範囲内程度の液滴を好適に分級することができる。 つまり、上記中板3の厚さ、すなわち、流路の最小幅または最小高さ(最小間隔)は、分級を行うエマルションに含まれる液滴の最大液滴よりも小さく、かつ、その中で操作者が所望する間隔に設定すればよい。換言すると、操作者が上記条件を満足する範囲内で所望する間隔に設定することにより、上記流路を通過した当該間隔よりも大きな粒径を有する液滴の大部分は合一されて、連続相になる。
そして、本実施の形態にかかる分級装置1においては、上板2と下板4との間がエマルションを流動させる流路となる。当該流路の断面において、流動方向に垂直な方向のエマルションと板とが接触する辺の長さ(流路断面における上板2または下板4の延伸方向の距離)としては、上板2と下板4との最小間隔の10倍以上であることがより好ましく、100倍以上であることがさらに好ましい。換言すると、上記流路の断面形状が矩形であり、上記流路の高さが最小間隔である場合には、当該高さに直交する方向すなわち幅(横幅)は、上記高さの10倍以上であることがより好ましく、100倍以上であることがさらに好ましい。例えば、図3を参照して説明すると、図中の矢印がエマルションの流れる方向としたの場合、当該流れる方向に垂直な面における、横幅(水平方向)kの長さ(距離)は、高さ(垂直方向)dの長さ(距離)の10倍以上であることがより好ましく、100倍以上であることがさらに好ましい。
エマルションと板が接触する辺の長さ(横幅)が、最小間隔の10倍以上であると、分級(解乳化)効果が優れる傾向にあることから好ましい。つまり、流路断面における、当該断面の最小幅に対する最大幅を10倍以上とすることにより、エマルションに含まれる液滴は、流路内において、最小幅に合うように変形するとともに、最大幅方向に広がることができる。従って、より簡単に、上記エマルションを供給することができるので、エマルションを分級装置1に供給する際の圧力損失をより低減させることができる。
上板2および下板4を離間せしめる方法、すなわち、流路を形成する方法としては、具体的には、例えば、図1に示すように、エマルションの流路となる中空部を有する中板3を異なる上板2と下板4とで挟みこむ方法;2つの板(上板2および下板4)の少なくとも一方の表面の内部を研磨して中空部(流路)を形成する方法;2つの板の少なくとも一方の板にレジスト材料を塗布し、当該レジスト材料の流路に相当する部分をエッチングして、このレジスト材料を硬化させたのち、2つの板の間に流路が形成されるように貼り合わせる方法などが挙げられる。
本発明の分級装置1において、エマルションが流動する流路の長さとしては、エマルションが分級(解乳化)されるのに十分な滞留時間を与える長さであれば、装置の構造上の制限、例えば、最小間隔を十分に与えるための構造上の条件等以外には、特に制限されない。
上記流路の長さ(流路長)としては、エマルションに含まれる少なくとも2個の液滴が当該流路内に存在することができる長さであることがより好ましく、それ以上の長さであることがさらに好ましい。上記流路長とすることにより、流路内で、エマルションに含まれる液滴をより確実に合一することができる。なお、2つの液滴が合一する機構については、後述する。
具体的には、上記流路長としては、1mm〜10cmの範囲内がより好ましく、2mm〜5cmの範囲内がさらに好ましい。上記流路長が、1mmよりも短い場合には、分級装置を作製することが困難になるとともに、エマルションに含まれる液滴を充分に分級することができない場合がある。一方、上記流路長が、10cmよりも長い場合には、エマルションを上記流路に流す際に発生する圧力損失が大きくなり効率が悪い場合がある。
ここで、エマルションが流動する流路の流路長について図3を参照して説明すると、上記流路の流路長は、中板3における中空部が形成されている領域における、エマルションが流れる方向の距離に相当する長さ(図中lに相当する長さ)である。なお、上記図3においては、流路のうち、最短の流路長は、上板2に設けられている供給口5から排出口6までの距離に相当する。
本実施の形態の分級装置1では、上記流路の少なくとも一部分は、当該エマルションに含まれる液滴と親和性を有している親和性材料から構成されている。
上記親和性とは、エマルションに含まれる液滴が濡れることができる性質である。一方、非親和性とは、エマルションに含まれる液滴をはじく性質である。例えば、上記エマルションが水中油滴型(O/W)である場合には、上記親和性材料は、親油性を示すものであり、非親和性材料は、親水性を示すものである。一方、上記エマルションが油中水滴型(W/O)である場合には、上記親和性材料は、親水性を示すものであり、非親和性材料は、親油性を示すものである。
具体的には、本実施の形態にかかる分級装置1において、板(上板2および下板4)の表面は、親水性であっても親油性(疎水性)であってもよいが、上記流路を形成する壁の少なくとも1部が、当該流路を流動するエマルションに含まれる液滴と親和性を有している材料で構成されている。具体的には、水中油滴型のエマルションを分級する場合、すなわち、分級装置1の流路に当該水中油滴型のエマルションを流す場合には、当該エマルションに接する上板2および下板4の少なくとも一方の表面が、親油性であることが好ましい。一方、油中水滴型のエマルションを分級する場合、すなわち、分級装置1の流路に当該油中水滴型のエマルションを流す場合には、当該エマルションに接する上板2および下板4の少なくとも一方の表面が、親水性であることが好ましい。
ここで、親水性とは、水に濡れ易い性質であり、親水性を有する材料(親水性材料)とは、油中の水の動的接触角が90°よりも小さい材料を示している。より具体的には、親水性材料としては、表面自由エネルギーが70mN/m(70dyne/cm)以上である材料がより好ましい。親水性材料の表面自由エネルギーが70mN/m(70dyne/cm)以上であると水に濡れ易い傾向にあることからより好ましい。
上記親水性材料としては、具体的には、例えば、ガラス、セルロース、イオン交換樹脂、ポバール、金属などが挙げられ、中でも、ガラスおよび金属が好適である。
一方、親油性(疎水性)とは、有機溶媒に濡れやすい性質であり、親油性を有する材料(親油性材料)とは、油中の水の動的接触角が90°以上である材料を示している。より具体的には、親油性材料としては、表面自由エネルギーが65mN/m(65dyne/cm)以下である材料がより好ましく、1〜50mN/m(1〜50dyne/cm)の範囲内である材料がさらに好ましい。親油性材料の表面自由エネルギーが65mN/m(65dyne/cm)以下であると、一層、有機溶媒に濡れ易い傾向にあることから好ましい。
上記親油性材料としては、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライドなどのフッ素樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどのオレフィン系樹脂、ポリジメチルシロキサンなどからなる表面が挙げられ、中でも、耐薬品性に優れるフッ素樹脂が好適である。
ここで、上記油中の水の動的接触角について図5(a),(B)を参照して説明する。なお、上記「油中」の「油」とは、上記エマルションの液滴を構成している材料(有機溶媒)と同じものである。
動的接触角は、接触角計を用いて測定すればよい。そして、エマルションに含まれる有機溶媒(有機相)を「油」として、当該「油」(例えば、ドデカンまたはオクタノール)中の、親水性材料または親油性材料(ガラスまたはフッ素樹脂)上での水の静的接触角および動的前進角、動的後退角の測定を行う。より具体的には、動的接触角の測定は、図5(a)に示すように、強制的に針先から液滴(水)を吐出して、このときの濡れ広がる液滴の接触角(動的前進角)を測定する。また、図5(b)に示すように、針先から上記液滴を吸引する際に、液滴が引くときの接触角(動的後退角)を測定することによって得られる。なお、上記動的接触角が90°よりも小さいとは、動的前進角および動的後退角の値のいずれもが90°よりも小さいことを示している。動的接触角が90°以上とは、動的前進角および動的後退角の値のいずれもが90°以上であることを示している。
次に、本実施の形態にかかる分級装置を用いて、エマルションを分級する際の、液滴が合一する機構について説明する。また、以下の説明では、具体例として、ガラスとフッ素樹脂とで構成された流路を水(分散媒)に油の液滴が分散したエマルションが通過する例について説明する。なお、ガラスは、油中の水の動的接触角が90°よりも小さい親水性材料である。また、フッ素樹脂は、油中の水の動的接触角が90°以上である親油性材料である。
i)流路の高さ(最小間隔)<エマルションに含まれる油滴(液滴)の粒径の場合
図6(a)〜図6(c)は、流路を通過する水中油滴型のエマルションが分級される機構を説明している断面図である。図6(a)に示すように、エマルションに含まれる油滴(以下、液滴と称する)の粒径が分級装置1の流路の断面における最小間隔(流路の高さ(最小間隔))よりも大きい場合、液滴は、流路内(マイクロチャネル内)に入る際に変形する。これにより、液滴の表面積は増大し、当該液滴の界面は不安定化することとなる。より具体的には、液滴と流路を形成している材料との親和性により、液滴は、フッ素樹脂の表面では、濡れた状態となっている。一方、エマルションに含まれる水は、ガラスに対する親和性が非常に高い(上記水のガラスに対する動的接触角が0°である)ことから、ガラスの表面上では、常に水が濡れ広がった状態になっている。
つまり、図6(a)に示すように、水は、油中の水の動的前進角(図中の角度(2))および動的後退角(図中の角度(4))がともに90°以上であるフッ素樹脂(PTFE)上では、弾かれ、当該水の流れに対してスリップ現象が起きる。一方、液滴は、フッ素樹脂上で濡れ広がっており、ガラス表面では弾かれている(図中の角度(1),(3))。そして、このフッ素樹脂上での水と液滴との濡れ性の違いが、流路内での水と液滴との速度差を発生させる。より具体的には、流路内では、液滴に比べて水のほうが早く流路を通過することになる。
次に、図6(b)に示すように、流路内に留まっている液滴よりも小さな小液滴(ただし、液滴の粒径は、流路の高さよりも大きい)が流路に入ると、当該小液滴は、上記液滴と同様に流路内で変形することとなる。このときの形状は、上記液滴と同様である。そして、これら液滴と小液滴とは、流路内を流れることとなる。このとき、小液滴は、壁面から水の流れと逆向きに受ける力が上記液滴よりも小さいため、上記液滴と比べて、流路内における速度が相対的に速い。従って、小液滴は、上記液滴に追いつくこととなる。これについて、以下に詳細に説明する。
例えば、マイクロミキサーにて生成された直後のエマルションには粒径分布が存在している。そして、上記エマルションが流路内に入った場合、当該エマルションに含まれる液滴に働く力Fは式(1)で示される。
F = F1+F2+F3 …(1)
なお、F1:液滴が水の流れ(水流)から受ける力,F2:液滴がフッ素樹脂面から受ける水の流れと反対向きの力,F3:液滴がガラス面上から受ける水の流れと反対向きの力を示している。
ここで、エマルション中の任意の大きい液滴の体積をVL、小さい液滴の体積をVSとする。このとき、大きい液滴と小さい液滴が壁面から受ける力は、式(2)で示される。
F2=−K2A2 F3 =−K3A3 …(2)
なお、A2:フッ素樹脂上で液滴が接する面積、A3:ガラス面上で液滴が接する面積、K2,K3:比例定数である。
また、液滴が流路の壁面と接触している面積は、式(3)で表される。
A2 ∝ V A3 ∝ V …(3)
そして、大きい液滴がフッ素樹脂面から受ける力をF2,L、ガラス面から受ける力をF3,L、および小さい液滴(小液滴)がフッ素樹脂面から受ける力をF2,S、ガラス面から受ける力をF3,Sとすると、式(4)が成り立つ。
(F2,L)/(F2,S)=VL/VS (F3,L)/(F3,S)=VL/VS …(4)
また、液滴が水の流れから受ける力F1は、水との相対速度および流れ方向への液滴の投影面積Sに比例する。ここで、投影面積Sは、式(5)の関係が成り立つ。
S∝V0.5 …(5)
ここで、大きい液滴が水の流れから受ける力をF1,L、および、小さい液滴が水の流れから受ける力F1,Sとすると、式(6)が成り立つ。
(F1,L)/(F1,S)=(VL/VS)0.5 …(6)
そして、大きい液滴、および小さい液滴に働く力を比較すると、式(1)、式(4)、式(6)より
(FL/FS)<(VL/VS) …(7)
ここで大きい液滴、小さい液滴の質量をそれぞれmL,mSとして、液滴の運動方程式を立てると、式(8),式(9)が成り立つ。
F=m・a …(8)
(mL/mS)=(VL/VS) …(9)
ここで、大きい液滴に働く加速度aL、および小さい液滴に働く加速度aSとすると、式(10)になる。
aL<aS …(10)
ここで、aL、aSは、水の流れに対して、反対側に働く加速度であり、ともに負の値である。
また、流路内に入った直後の液滴は、大きさに依らず水の流れの速度(v0)と等しく、液滴が流路内に入ってからの経過時間をt、流路内の大きい液滴の速度をvL、および流路内の小さい液滴の速度をvSとすると、vL、vSは式(11)、(12)と表すことができる。
vL=v0+aL×t …(11)
vS=v0+aS×t …(12)
そして、上記式(8)〜(12)から、vL>vSとなる。つまり、流路の内部に入ると、液滴の、壁面から受ける力の大きさの違いによって、大きい液滴と小さい液滴との間には速度に差が生まれることとなる。このようにして、図6(b)に示すように、大きい液滴に小さい液滴が追いつくこととなる。
そして、図6(c)に示すように、小さな液滴が大きな液滴に追いついた場合には、フッ素樹脂の表面上において、互いの液滴の濡れ広がりによって、2つの液滴が合一化して1つの液滴を形成することになる。
ii)流路の高さ(最小間隔)>エマルションに含まれる液滴の粒径の場合
図7に示すように、液滴は分級装置1の壁面からの影響を全く受けずに、水と同じ速度で、流路の出口に排出される。つまり、エマルションに含まれる液滴の粒径が流路の高さよりも小さい場合には、当該液滴は、フッ素樹脂に濡れることなく通過することになる、すなわち、流路を構成している材料の影響を受けることがないので、水と同じ速度で、排出されることとなる。従って、この場合には、流路の壁面の影響による液滴同士の合一は起きない。なお、慣性により液滴同士が衝突して、合一する場合はある。
また、例えば、図8に示すように、流路がガラスのみで形成されている場合であって、当該流路に水中油滴型のエマルションを流す場合には、エマルションに含まれる液滴の粒径に関わらず、当該液滴はガラス表面に濡れることはないので、流路の壁面の影響による液滴同士の合一は起きない。また、例えば、2つの液滴が流路内で接した場合でも、両者は、壁面で濡れた状態ではないので、合一は起こりにくい。
以上により、流路内で液滴が合一するためには、(ア)液滴の粒径が、流路の高さよりも大きい、(イ)液滴が流路を形成している材料に対して少なくとも1部で濡れた状態となっていることが必要である。
なお、上記の説明では、水中油滴型のエマルションに含まれる液滴が合一する機構について説明しているが、油中水滴型の場合でも上記同様にして、エマルションに含まれる液滴が合一する。
ここで、本実施の形態にかかる分級方法について説明する。
エマルションを分級(解乳化)するには、当該エマルションを上記分級装置1の供給口5から供給して、上記流路を通過させればよい。つまり、エマルションは、供給口5から供給され、当該エマルションが流路を流れて、流路中にて分級(解乳化)されて排出口6から排出されるようになっている。
上記流路内をエマルションが滞留する滞留時間としては、当該エマルションに含まれる液滴が分級(解乳化)するのに十分な時間を与える時間に設定すればよく、0.001〜10秒の範囲内に設定することがより好ましい。
上記エマルションの滞留時間が、0.001秒以上であると、装置の製作が容易になる傾向があり、10秒以下であると、装置が小型化する傾向にあることから好ましい。また、エマルションの滞留時間が、0.001秒よりも短い場合には、エマルションに含まれる液滴が合一する前に排出される場合があり、十分に分液できない場合がある。
本実施の形態の分級装置1における、流路を流れるエマルションの流速(エマルションの供給速度)としては、エマルションの種類によっても異なるが、通常、水/ドデカンのように、静置分液によって1m/分以上の分液速度を示すような分液性に優れるエマルションの場合、流路を流れるエマルションの流速は、1m/分以上、好ましくは、2〜10m/分程度であっても十分に分級させることができる。静置分液によって1m/分未満の分液速度を示すような分液性に劣るエマルションの場合、流路を流れるエマルションの流速は、1m/分未満にしなければ、本発明の分級装置を用いても分級することができない場合がある。例えば、水/ドデカンに界面活性剤が含まれるエマルションのように、1日では分液しない安定なエマルションの場合は、流路を流れるエマルションの流速を0.01〜1m/sの範囲内程度に調整することにより液滴が合一化して分級させることができる。
つまり、エマルションが上記範囲内の滞留時間となるように、当該エマルションを流路に供給すればよい。
以上のように、本実施の形態にかかる分級装置は、エマルションに含まれる液滴の最大粒径よりも小さい、所望の高さまたは幅を有する流路を備え、上記流路を形成する壁の少なくとも一部分は、当該エマルションに含まれる液滴と親和性を有している親和性材料からなる。
これにより、上記流路における液滴の最大粒径よりも小さい所望の高さまたは幅よりも、大きさが大きい液滴は、当該流路中を通過する際に変形されることになり、液液界面が不安定な状態となる。そして、不安定状態の液滴同士が、親和性材料に濡れた部分(状態)で接すると、互いに安定な状態をとるために合一する。
つまり、上記流路内を液滴が通過する際、上記所望の高さまたは幅よりも大きな液滴は他の液滴と合一し易くなっている。一方、上記所望の高さまたは幅よりも小さな液滴は、流路内を通過する際に当該流路の壁面からの力を受けることなく通過する。従って、上記所望の高さまたは幅よりも小さな液滴は、流路内で、他の液滴と殆ど合一することがない。
これにより、流路の最小間隔を所望の値に設定することにより、当該最小間隔よりも小さい液滴は、そのまま合一することなく流路から排出される。一方、当該最小間隔よりも大きな液滴は、他の液滴と合一して、より大きな液滴となって排出されることとなる。そして、上記より大きな液滴は排出された後、当該より大きな液滴同士でさらに合一することとなり、1つの相(連続相)を形成することとなる。また、上記最小間隔よりも小さな液滴は、流路から排出された後も、小さな液滴の状態を維持することになる。従って、上記の構成とすることで、エマルションに含まれる液滴のうち、所望の大きさ以下の液滴のみに分級することができる。
また、流路を形成する壁の少なくとも一部が、さらに非親和性材料から構成されていると、エマルションを供給する場合における圧力損失をより少なくすることができることから好ましい。
とりわけ、エマルションに含まれる液滴の最大粒径よりも小さい間隔で離間された2枚の板状部材で流路が構成されており、該板状部材が、親和性材料及び非親和性材料の2枚の板状材料であることが好ましい。
ここで、エマルション中の液体粒子(液滴)が水滴である場合には、親和性材料とは親水性材料であり、非親和性材料とは親油性材料に相当する。また、エマルション中の液体粒子が油滴である場合には、親和性材料とは親油性材料であり、非親和性材料とは親水性材料に相当する。
なお、上記分級装置1を、上板2と中空部を有する中板3と下板4との3つの板で流路を形成することにより、中板3の厚さを変えるだけで任意の流路の高さ(幅)を作り出すことができる。従って、従来と比べて、非常に安価で、メンテナンスが容易であり、微細加工を全く必要としないという利点を有する。
また、本実施の形態にかかる分級装置1では、所望の幅または高さを有するように断面が設定された流路を、エマルションが確実に通過するようになっているので、流路から排出される液滴の粒径を一定の大きさ以下に制御することができる。また、従来の構成と比べて、粒度分布がより狭い液滴を得ることができる。換言すると、従来と比べて、粒径がより均一な液滴を得ることができる。
また、本実施の形態にかかる分級装置1は、流路内を通過するエマルションに含まれる液滴の形状を不安定な形状に変化させて、当該液滴同士を合一しやすい状態にしている。つまり、流路内に存在する2つの液滴は、親和性材料と濡れている部分が接することにより、自身をより(自発的に表面積を小さくする力が働き)安定化させるために合一することとなる。従って、従来と比べて、当該分級装置1に供給するエマルションの流速(供給量)を多少変化させた場合であっても、流路内で液滴同士(形状が不安定化されている液滴同士)を接することができる流速であれば、好適に分級を行うことができる。
なお、本実施の形態の分級装置1に用いられる板(上板2、下板4)としては、少なくとも親水性及び/又は疎水性の表面を有するものであり、具体的には、親水性の材料、疎水性の材料、任意の材料のエマルションと接触する表面が親水性及び/又は疎水性の材料で被覆されたものなどが挙げられる。つまり、エマルションが接触する表面のみが親水性または親油性を示すものであればよく、例えば、ガラス基板等にフッ素樹脂加工等を施すことにより、ガラス基板表面を親油性に改質してもよい。
また、上記板は、エマルションに含まれる液滴の最大粒径よりも小さい幅に少なくとも1ヶ所が離間されていればよく、例えば、上記板の一部が屈曲していてもよい。なお、この場合には、上記「流路」とは、最大粒径よりも小さい幅である領域を示すものとする。
本発明の分級装置1の供給口5には、微小な液滴を有するエマルションを生成することができるマイクロミキサーに接続されていてもよい。つまり、図9に示すように、上記マイクロミキサーよって生じたエマルションを直接、上記流路に供給することができる構成としてもよい。ここでマイクロミキサーとは、サブミクロンオーダーの液滴を製造し得る装置であり、例えば、「Utilization of Micromixer for Extraction Processes」(Kurt Benz 他7名, Chem. Eng. Technol. 24, 1, 2001, p11-17)に記載のマイクロミキサーなどが例示される。なお、上記の場合には、マイクロミキサーに供給する水相(水)と油相(有機溶媒)との合計の供給量が、分級装置1に供給される供給量(供給速度)を決定する。
また、例えば、図10に示すように、上記マイクロミキサーで生成したエマルションを別の供給装置(マイクロシリンジ)等に入れて、当該供給装置から分級装置1にエマルションを供給するようにしてもよい。なお、この場合には、分級装置1に供給する供給量(供給速度)については、マイクロミキサーに供給する水相と油相との供給量に関わらず、任意に設定することができる。
さらに、分級装置1の排出口6から排出された溶液を連続的にかつ迅速に分液するために、セトラーと呼ばれる分液装置を、当該分級装置1の排出口6を接続してもよい。
また、供給口5および排出口6の向きとしては、図1および図2に示された向きの他に、例えば、上向き、下向きおよび横向きであってもよい。具体的には、例えば、分級装置1が、上板2、中板3、下板4の3つの板で構成されている場合、供給口5および/または排出口6は、上板2に取り付けてもよく、中板3に取り付けてもよく、下板4に取り付けてもよい。
また、供給口5および排出口5の数としては、それぞれ1つであってもよく、複数であってもよい。
また、図2において、流路(中空部)は長方形で示されているが、エマルションが流通する流路の形状については、例えば、供給口5側が狭く排出口6側が広い形状や排出口6側が狭く供給口5側が広い形状等であってもよい。
また、図1では流路が1つの分級装置1を示しているが、流路の数については、例えば、複数あってもよい。
分級装置1としては、具体的には、例えば、図1のような装置;図1の装置を複数個放射状に配置し供給口5は共通の1つで排出口6は複数個あるような装置;板(上板2、中板3、下板4)が円盤状であり円盤の中央からエマルションを供給し円周部から排出する装置;上板2と下板4と流路を有する中板3とを交互に積層した装置等が挙げられる。
また、上記の説明では、板(上板2、中板3、下板4)を用いて、分級装置1の流路を構成しているが、例えば、チューブで当該流路を形成してもよい。
また、本実施の形態にかかる分級装置1を用いることで、例えば、界面活性剤(乳化剤)が含まれている安定なエマルションであっても、分級を行うことができる。
また、本実施の形態にかかる分級装置は、エマルションに含まれる液滴の最大粒径よりも小さい幅で離間された少なくとも2枚の板の間に該エマルションを流動させる構造を有する構成であってもよい。
また、本実施の形態にかかる分級装置は、さらに、上記板の最小間隔が1〜100μmである構成としてもよい。
また、本実施の形態にかかる分級装置は、さらに、エマルションを流動させる構造の断面において、流動方向に垂直な方向のエマルションと板とが接触する辺の長さが、板の離間幅(最小間隔)の10倍以上である構成としてもよい。
また、本実施の形態にかかる分級装置は、さらに、エマルションに接する上記板の少なくとも一方の表面が、疎水性である構成としてもよい。
また、本実施の形態にかかる分級装置は、さらに、上記疎水性の表面がフッ素樹脂又はポリオレフィン樹脂である構成であってもよい。
また、本実施の形態にかかる分級装置は、さらに、エマルションが、マイクロミキサーで生成したエマルションである構成であってもよい。
また、本実施の形態にかかる分級装置は、さらに、排出口にセトラーが接続してなる構成としてもよい。
また、本実施の形態にかかる分級装置は、さらに、エマルションを流動させる構造が積層してなる構成であってもよい。
また、本実施の形態にかかる分級装置は、水中油滴型のエマルションに含まれる液滴の最大粒径よりも小さい間隔を有する流路を備え、水中油滴型のエマルションを分級するエマルションの分級装置であって、上記流路を形成する壁の少なくとも一部分は、油中の水の動的前進角および動的後退角が90°以上である材質の材料から構成されていてもよい。
また、本実施の形態にかかる分級装置は、油中水滴型のエマルションに含まれる液滴の最大粒径よりも小さい間隔を有する流路を備え、油中水滴型のエマルションを分級するエマルションの分級装置であって、上記流路を形成する壁の少なくとも一部分は、油中の水の動的前進角および動的後退角が90°よりも小さい材質の材料から構成されていてもよい。
また、本実施の形態にかかる分級装置を用いることにより、例えば、有機化合物の溶質を水相に抽出する際に生成するエマルションについても迅速に解乳化させることができる。このことにより、上記分級装置は、例えば、水に不安定な溶質の水洗、および、水相からの溶出の抽出等を好適に行うことができる。
さらに、本実施の形態にかかる分級装置を用いることで、例えば、極微小の粒径の液滴のみからなるエマルションを製造することができる。そして、この分級装置を用いて製造された極微小の粒径の液滴のみからなるエマルションは、例えば、食品、農薬、医薬等の分野において、粒径が小さいほうが体内への吸収がよい製品を製造する場合などに好適に用いることができる。
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
(エマルションに含まれる液滴の粒径)
製造直後のエマルションに含まれる液滴の粒径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(HORIBA LA-920)を用いて測定した。
具体的には、0.5重量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液中に、製造直後のエマルションを入れて、エマルションに含まれる液滴を安定化させた後に、粒径を測定している。
なお、製造直後のエマルションに含まれる液滴を、デジタルマイクロスコープ(VH-8000 Keyence社)により観察した観察結果と、上記レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(HORIBA LA-920)を用いて測定した測定結果とは、ほぼ同じであった。
(分級装置)
以下の実施例1〜4で使用した分級装置について説明する。
分級装置としては、図1に示すように、エマルションの供給口5と排出口6を具備した上板2と下板4とで、中空部が形成されている中板3を挟み込んだものを用いた。
具体的には、中板3には、エマルションの流路として、エマルションを流動させるための流路長5cm(エマルションの流動距離5cm、図3のlに相当)、横幅(エマルションの流路の断面における、最小間隔と直交する方向の距離、図3のkに相当)1cmを有する中空部が設けられている。より具体的には、中板3は、厚さが、上記上板2と下板4との離間幅(最小間隔)を所望の値にするために、中板3の厚さが、当該所望の厚さと同じ厚さである、厚さ(d)12μmのアルミホイル(サン・アルミニウム工業株式会社製)を用いた(図2参照)。
そして、上記分級装置1は、上板2(図2参照)、エマルションの流路を与える中板3(図3参照)および、下板4(図4参照)を順次積層した後に、その側面をシールして挟み込むことにより、作製した(図1参照)。
なお、上板2および下板4として使用した板は以下のものであり、表面処理は特に施されていない。
・ガラス:プレパラート((厚さ2mm、石英ガラス、英興株式会社製)
・PE:ポリエチレンシート(厚さ6mm、商品名 : サンクリック 一般耐磨耗グレード UE550、株式会社キョードー社製)
・PP:ポリプロピレンシート(厚さ6mm、商品名 : 神戸ポリシートPP、新神戸電機株式会社製)
・PTFE:ポリテトラフルオロエチレンシート(厚さ2mm、商品名 : PTFEシート 淀川化成株式会社製)
〔実施例1〕
マイクロミキサー(IMM社製、標準単一混合機)に水を2.7ml/分、ドデカンを0.3ml/分でそれぞれ供給し、エマルションを製造した。そして、製造直後のエマルションに含まれる液滴の粒径を、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(HORIBA LA-920)を用いて測定した。
次に、上板2としてガラス、下板4としてPEを用いた分級装置の供給口5にマイクロミキサー出口を接続し、上記エマルションを3ml/分の割合で供給した。そして、分級装置の排出口6から排出される液体をメスシリンダー(径7mm)に溜めて、生成した水相部と油相部とのうちの水相部を観察し、水相部が白濁していたらエマルションが解乳化されていないことから×、水相部が透明であれば解乳化されていることから○とした。その結果を表1に示す。
〔実施例2〕
上板2としてガラス、下板4としてPPを用いた分級装置を使用した以外は、実施例1と同様にして、得られた液体を観察した。その結果を表1に示す。
〔実施例3〕
上板2としてガラス、下板4としてPTFEを用いた分級装置を使用した以外は、実施例1と同様にして、得られた液体を観察した。その結果を表1に示す。
〔実施例4〕
上板2としてPTFE、下板4としてPTFEを用いた分級装置を使用した以外は、実施例1と同様にして、得られた液体を観察した。その結果を表1に示す。
〔比較例1〕
実施例1で用いたエマルション(5ml)をメスシリンダー(径7mm)に溜めて1時間静置した後で、観察したところ、水相部と油相部との界面に白濁相が残存していた。
(分級装置)
以下の実施例5〜9で使用した分級装置について説明する。
上板2が上記ガラスであり、下板4が上記PTFEである分級装置を用いた。詳細には、中板は、10mm×10mmの中空部を有する、厚さ12μmのアルミホイルを用いた。また、上板2に設けられている供給口と排出口との間の距離は5mmに設定した(エマルションの流動距離5mm、図3のlに相当)。そして、上記実施例1で使用した分級装置と同様に作製した。
また、実施例9で使用した分級装置は、上記アルミホイルの厚さが5μmのもの(株式会社ニラコ製)であり、実施例10で使用した分級装置は、上記アルミホイルの厚さが12μmのものであり、実施例11で使用した分級装置は、上記アルミホイルの厚さが24μmのものを使用した。他は実施例5で使用した分級装置の構成と同じである。
また、比較例2、3で使用した分級装置は、下板4として上記ガラスを用いた。他は実施例5で使用した分級装置の構成と同じである。
また、実施例7および比較例2、3では、上記分級装置の供給口にマイクロミキサーを直接接続したものを使用した。また、実施例8〜11では、マイクロミキサーで生成したエマルションを、シリンジに入れた後、当該シリンジからエマルションを供給した。
(動的接触角)
接触角計(協和界面科学株式会社製;CA-V)を用いて、油(ドデカンorオクタノール;測定するエマルションに含まれる有機溶媒)中の、ガラスおよびPTFE上での水の、静的接触角と動的前進角および動的後退角(動的接触角)との測定を行った。動的接触角の測定は、図5(a),(b)に示すように、強制的に針先から液を吐出し、濡れ広がる液の接触角(動的前進角)、また針先からの吸引により、液が引くときの接触角(動的後退角)を時系列で画像を取り込み、解析を行った。その結果を、表2に示す。
〔実施例5〕
実施例1のマイクロミキサーにドデシル硫酸ナトリウム1重量%を含む水を2ml/分、ドデカンを2ml/分供給し、エマルションを製造した。次に、上板2としてガラス、下板4としてPTFE、中板3としてアルミホイルを4枚重ねて流路幅を48μmとした分級装置にあらかじめ製造しておいたエマルションをマイクロシリンジポンプを用いて0.3ml/分の割合で供給し(Type2)、分級を行った。この結果を表3、4に示す。
〔実施例6〕
中板3としてアルミホイルを6枚重ねて流路幅を72μmとした以外は実施例5と同様にして分級を行い、結果を表3、4にまとめた。
〔実施例7〕
実施例1で使用したマイクロミキサーに、水を2.7ml/分、ドデカンを0.3ml/分で供給しエマルションを生成した。
そして、マイクロミキサー出口と分級装置の供給口をシリコンチューブでつなぎ、上記エマルションを3.0ml/分の割合で供給口から分級装置に供給して(Type1)分級を行った。その結果を、表3、4に示す。
また、分級前のエマルションに含まれる液滴と分級後の液体に含まれる液滴との粒度分布を、図11のグラフに示す。なお、図中、点線が分級後、実線は分級前の粒度分布を示している。
また、分級前と分級後のエマルションの状態を示すマイクロスコープによる画像を、図12、13に示す。
〔実施例8〕
マイクロミキサー(山武株式会社製;YM-1)に、水を20.0ml/分でオクタノールを5.0ml/分の条件で供給し、エマルションを生成した後、シリンジ内にエマルションを溜め置き、上記エマルションを0.3ml/分の割合でポンプを用いて供給した以外は、実施例7と同様にして、エマルションの分級を行った。その結果を、表3、4に示す。
〔比較例2〕
下板4の材質が異なる分級装置(下板;ガラス、上板;ガラス)を用いた以外は、実施例7と同様にして、エマルションの分級を行った。その結果を、表3、4に示す。
また、分級前のエマルションに含まれる液滴と分級後の液体に含まれる液滴との粒度分布を、図14のグラフに示す。なお、図中、点線が分級後、実線は分級前の粒度分布を示している。
〔比較例3〕
マイクロミキサー(実施例7と同じ)に、水を5.4ml/分ドデカンを0.6ml/分で供給し、エマルションを生成した後、分級装置に上記エマルションを6.0ml/分の割合で供給した以外は、比較例2と同様にして、エマルションの分級を行った。その結果を、表3、4に示す。
また、分級前のエマルションに含まれる液滴と分級後の液体に含まれる液滴との粒度分布を、図14のグラフに示す。なお、図中、点線が分級後、実線は分級前の粒度分布を示している。
〔実施例9〕
マイクロミキサー(実施例7と同じ)に、1.0重量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液を2.0ml/分でドデカンを2.0ml/分条件で供給しエマルションをあらかじめ生成した後、分級装置に上記エマルションを0.3ml/分の割合で供給して、エマルションの分級を行った。その結果を、表3、4に示す。
〔実施例10〕
マイクロミキサー(実施例7と同じ)に、1.0重量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液を2.0ml/分、ドデカンを2.0ml/分の条件で供給し、エマルションを生成した後、実施例7と同じ分級装置に上記エマルションを0.3ml/分の割合で供給して、エマルションの分級を行った。その結果を、表3、4に示す。
なお、分級前のエマルションに含まれる液滴と、流路高さがそれぞれ5μm(実施例9)、12μm(実施例10)である分級装置に上記エマルションを流動させた後(分級後)の液体に含まれるエマルションの粒度分布を、図15のグラフに示す。
〔実施例11〕
マイクロミキサー(実施例7と同じ)に、1.0重量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液を2.0ml/分、ドデカンを2.0ml/分の条件で供給し、エマルションを生成した後、分級装置(流路高さ24μm)に上記エマルションを0.3ml/分の割合で供給して、エマルションの分級を行った。その結果を、表3、4に示す。
また、上記の結果より、マイクロミキサー(実施例7と同じ)に、1.0重量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液を2.0ml/分、ドデカンを2.0ml/分の条件で供給し、エマルションを生成した後、流路高さがそれぞれ異なる分級装置に上記エマルションを0.3ml/分の割合で供給して、エマルションの分級を行った結果を表5に示す。
〔実施例12〕
マイクロミキサー(実施例7と同じ)に、1.0重量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液を2.0ml/分、ドデカンを2.0ml/分の条件で供給し、エマルションを生成した後、実施例10の分級装置を用いて、上記エマルションを分級装置に供給する供給速度を1.0ml/分の割合に設定して、エマルションの分級を行った。
〔実施例13〕
マイクロミキサー(実施例7と同じ)に、1.0重量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液を2.0ml/分、ドデカンを2.0ml/分の条件で供給し、エマルションを生成した後、実施例10の分級装置を用いて、上記エマルションを分級装置に供給する供給速度を0.6ml/分の割合に設定して、エマルションの分級を行った。
そして、供給速度以外は他の条件で分級を行った結果(実施例10、12、13)を表6に示す。
上記の結果により、流路高さを、エマルションに含まれる液滴の最大粒径よりも小さくし、かつ、流路を形成する壁の少なくとも一部を上記液滴と親和性を有する親和性材料とすることにより、好適に分級できることが分かる。
また、例えば、界面活性剤が含有したエマルションであっても、本発明にかかる分級装置によって、好適に液滴を分級することができる。