以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本実施形態における例示が本発明を限定することはない。
本発明の一実施形態による球状粒子の製造方法としては、隔壁で区画された流路中を0.3〜10m/sの流速で流れる連続相液体に、隔壁に形成した微小孔部を通して、球状粒子前駆体を含む分散相液体を1孔当たり0.1〜5m/sの流速で押し出して、エマルションを作製する工程、球状粒子前駆体を含むエマルション液滴を固形化して球状粒子を形成する工程、及び球状粒子を回収する工程を含むことを特徴とする。
これによれば、粒子径の均一な球状粒子を高い生産性で得ることができる。
従来、膜乳化では、特許文献2にあるようにレイノルズ数が小さな(文献値=約213)層流領域で、かつ分散相液体の1孔当たりの流速が遅い(文献値=2×10−3m/s)条件でしか均一な球状粒子が得られないことが知られている。しかし、本発明では、分散相液体および連続相液体ともに高流速で供給することで、高レイノルズ数条件下でも粒子径の均一な球状粒子を高い生産性で得ることができるという知見を得た。
作製されるエマルションでは、隔壁で区画された流路中を流れる連続相液体が連続相となり、微小孔部を通して押し出される分散相液体が分散相となる。本実施形態では、エマルションの連続相及び分散相は互いに相溶性が低くエマルションを作製すればよく、W/O(油中水型)エマルション及びO/W(水中油型)エマルションのいずれの形態であってもよい。連続相液体に有機液体、分散相液体に水性液体を用いる場合はW/Oエマルションを得ることができ、また、連続相液体に水性液体、分散相液体に有機液体を用いる場合はO/Wエマルションを得ることができる。
分散相液体と連続相液体との室温(20〜23℃)における体積比は、得られるエマルション中の連続相/分散相の体積比として、例えば1〜100であり、より好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜5である。
(連続相液体及び分散相液体)
「W/Oエマルション」
W/Oエマルションを作製する場合の連続相液体としては、分散相液体に対して溶解性の低い、好ましくは不溶性の有機液体を用いることができる。有機液体の例としては、脂肪族炭化水素類、脂環式炭化水素類、芳香族炭化水素類、エーテル類、エステル類、含フッ素化合物類等を挙げることができる。
有機液体としては、具体的には、下記に示す炭素数9〜12の飽和炭化水素、n−ヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン、イソヘプタン、n−オクテン、イソオクテン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘキセン等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、クメン、メシチレン、テトラリン、スチレン等の芳香族炭化水素類;プロピルエーテル、イソプロピルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−プチル、酢酸イソプチル、酢酸−n−アミル、酢酸イソアミル、乳酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル等のエステル類;1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル等の含フッ素化合物類等を挙げることができる。これらは、単独で、または組み合わせて用いてもよい。
有機液体としては、炭素数9〜12の飽和炭化水素が好ましく、操作性、火気への安全性、固形化した粒子と有機液体との分離性、水への有機液体の溶解性などを総合的に考慮して選定される。炭素数が9〜12の飽和炭化水素は、単独で使用してもよいし、このうちの二種以上を混合して使用してもよい。また、炭素数が9〜12の飽和炭化水素は、その化学的安定性が良好であれば、直鎖状炭化水素であってもよいし、側鎖を有する炭化水素であってもよい。
炭素数9〜12の飽和直鎖炭化水素としては、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカンを挙げることができ、炭素数9〜12の飽和分岐鎖炭化水素としては、イソノナン、イソデカン、イソウンデカン、イソドデカン等を挙げることができる。
有機液体の引火点としては、20〜80℃のものが好ましく、より好ましくは30〜60℃のものが好ましい。また、不燃性または難燃性の有機液体を好ましく用いることができる。
引火点が20℃未満の飽和炭化水素を有機液体とした場合、引火点が低すぎるため、防火上、作業環境上の対策が必要である。有機液体の引火点が20℃以上であることで、防火性を高めて作業環境を改善することができる。一方、80℃以下であることで、揮発性を十分に得て、球状粒子を有機液体から回収する際に、球状粒子に有機液体が付着して混入することを防止することができる。
このような引火点の有機液体としては、炭素数9〜12の飽和炭化水素の中から選択することがより好ましい。
本実施形態では、連続相液体及び分散相液体からエマルションを作製し、エマルション液滴を固形化して球状粒子を形成した後に、球状粒子と連続相液体とは通常固液分離される。分離後の球状粒子に連続相液体が付着又は吸着する場合は、濾過操作、洗浄操作、乾燥操作などにより分離することが好ましい。
連続相液体には、乳化剤として界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の中から選択したものを用いることが出来る。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸ナトリウム、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩等を挙げることができる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩等を挙げることができる。
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタイン等を挙げることができる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等を挙げることができる。
これらの界面活性剤は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
界面活性剤の使用量は、界面活性剤の種類、界面活性剤の親水性あるいは疎水性の程度を表す指標であるHLB(Hydrophile−lipophile balance)、目的とする球状粒子の粒子径などの条件により異なるが、上記連続相液体中に0.01〜2質量%、好ましくは0.1〜0.5質量%で含有させることが好ましい。
0.01質量%以上であることで、均一に乳化することができ、エマルションをより安定化することができる。一方、2質量%以下であることで、最終製品である球状粒子に界面活性剤が付着して混入することを防止することができる。分散相液体の粘度が低い場合、均一に乳化するためには界面活性剤の濃度がより低い方が好ましい。
本実施形態においては、連続相液体の流速が速いことで、連続相液体の流れの剪断力によって、分散相液体が微小孔部の出口側で切り離されてエマルション液滴になる作用をより強く得ることができる。界面活性剤の作用による乳化とともに、この剪断力による作用が働くため、エマルション液滴の生成において界面活性剤の依存度が低下する。すなわち、分散相液体および連続相液体の流量条件が同じ場合、生成する球状粒子の粒子径が界面活性剤の濃度の影響をほとんど受けず、球状粒子の粒子径(例えば平均粒子径D50)をより一定にすることができる。
また、界面活性剤の濃度の影響をほとんど受けずに、球状粒子の粒子径をより一定値にすることができるため、連続相液体をリサイクルして循環して用いても、球状粒子の粒子径をより一定に保つことが容易となる。
一方、連続相液体の流速が遅い場合では、剪断力による作用が小さく、乳化の進行が界面活性剤の作用に依存して、球状粒子の粒子径が界面活性剤の濃度によって変動することがある。この場合、連続相液体をリサイクルして循環して用いると、系内で界面活性剤の作用が低下することがあり、これによって、球状粒子の粒子径が循環回数にしたがって大きくなり、粒子径分布が広がることがある。
連続相液体には、増粘剤等のその他の任意成分を添加してもよい。増粘剤としては、例えば、親油性スクメタイトや流動パラフィン等が挙げられる。増粘剤は、連続相液体全体に対し、0.1〜10質量%で配合することができる。
W/Oエマルションを作製する場合の分散相液体としては、連続相液体に対して溶解性の低い、好ましくは不溶性の水性液体を用いることができ、また、固形化によって球状粒子前駆体の沈殿物を形成することができる水性液体であることが好ましい。水性液体の主成分は水とすることができ、水溶性の有機液体が任意に含まれてもよい。
分散相液体に含まれる球状粒子前駆体としては、無機化合物及び有機化合物のいずれであってもよく、両者のハイブリッド体であってもよい。球状粒子前駆体として、2種以上の無機化合物及び/または有機化合物を用いることで、複合材料の球状粒子を得ることができる。
具体的には、無機化合物を含む水性液体としては、アルカリ金属(主にリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム)のケイ酸塩、アルミン酸塩;ケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、セリウムまたは錫の酸化物;アルカリ土類金属(主にカルシウム、ストロンチウム、バリウム)のハロゲン化物;銅の酸化物、硫酸塩、塩酸塩及び硝酸塩;鉄、コバルトまたはニッケルの酸化物、硫酸塩、塩酸塩及び硝酸塩等を含む水性液体を挙げることができる。これらは、単独で、または組み合わせて用いてもよい。
また、シリカゾル、アルミナゾル等のコロイド溶液を用いることができる。
有機化合物としては、ポリビニルアルコール、キトサン、キチン等を挙げることができる。これらは、単独で、または組み合わせて用いてもよい。
本実施形態では、球状粒子前駆体を含む分散相液体として、ケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム及びシリカからなる群より選ばれる1種以上を含む水性液体を用いることが好ましい。
具体的には、水溶性シリカが溶解した水溶液、有機ケイ素化合物を加水分解して得られたシリカゾル及び市販のシリカゾルなどの固体シリカが分散した水性分散液(コロイド状シリカ)や、ケイ酸カリウム又はケイ酸ナトリウムの水溶液等を挙げることができる。
なかでも入手の容易さ、経済的理由により、ケイ酸ナトリウムが特に好ましい。ナトリウムとケイ酸の割合は、SiO2/Na2O(モル比)で2.0〜3.8が好ましく、さらには2.0〜3.5が好ましい。また、水性液体中のケイ酸アルカリ又はシリカの濃度は、SiO2濃度として1〜30質量%が好ましく、さらには5〜25質量%が好ましい。
「O/Wエマルション」
O/Wエマルションを作製する場合の連続相液体には、分散相液体に対して溶解性の低い、好ましくは不溶性の水性液体を用いることができる。水性液体の主成分は水とすることができ、水溶性の有機液体が任意に含まれてもよい。
連続相液体として水性液体を用いる場合は、界面活性剤、増粘剤等の任意成分を適宜添加することができる。界面活性剤としては、上記したW/Oエマルションと共通するものを用いることができる。また、増粘剤としては、例えば、セルロース、エチルセルロース、アラビアガム等を挙げることができる。界面活性剤と増粘剤の配合量は、上記したW/Oエマルションの場合と共通する。
O/Wエマルションを作製する場合の分散相液体としては、連続相液体に対して溶解性の低い、好ましくは不溶性の有機液体を用いることができ、また、固形化によって球状粒子前駆体の沈殿物を形成することができる有機液体であることが好ましい。
O/Wエマルションの分散相液体の一例としては、球状粒子前駆体として重合性モノマーを含み、固形化によってこれが重合して球状の樹脂粒子を生成するものがある。重合性モノマーは分散相液体に主成分として配合されて有機液体を構成してもよい。また、重合性のない希釈溶剤を任意で配合してもよい。このような重合性モノマーとしては、具体的には、テトラエトキシシラン、シロキサンオリゴマー、アルミニウムイソプロポキシド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル等を挙げることができる。シロキサンオリゴマーとしては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラフェノキシシラン等の加水分解物を挙げることができる。
重合性モノマーを分散相液体に用いる場合は、分散相液体にあらかじめ反応触媒や重合開始剤を含有させておいても良いし、後から添加してもよい。具体的には、1種または2種以上の酸触媒、塩基触媒、過酸化物系重合開始剤、アゾ系重合開始剤等の公知のラジカル重合用重合開始剤を使用することができる。具体的には、酸触媒としては塩酸、硝酸等、塩基触媒としては水酸化ナトリウム、アンモニア等、過酸化物系重合開始剤としては過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド等、アゾ系重合開始剤としては2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等を挙げることができる。
(エマルション作製工程)
本実施形態では、隔壁で区画された流路中を流れる連続相液体に、隔壁に形成した微小孔部を通して、球状粒子前駆体を含む分散相液体を押し出して、エマルションを作製する。これによって、連続相中に球状粒子前駆体を含む液滴、すなわちエマルション液滴が分散相となったエマルションを作製することができる。
連続相液体が流れる隔壁で区画された流路の形状は特に制限されない。例えば、連続相液体の流れ方向に直交する流路の断面形状(以下、単に「流路の断面形状」と称することがある)が円形、だ円、ドーナツ形、矩形、三角形、多角形等であってよいが、好ましくは矩形である。
ドーナツ形状の流路の断面形状を図2に示す。このドーナツ形状の流路30aでは、外側の円筒状の隔壁30と、内側の円筒状の隔壁40とによって、連続相液体の流路30aが形成される。内側の円筒状の隔壁40の全周にわたって微小孔部40aが形成される。微小孔部40aは内側の円筒状の隔壁の軸方向に複数個形成されてもよい。分散相液体は、内側の円筒状の隔壁40内に供給され、微小孔部40aから流路30aに押し出される。
隔壁で区画された流路は1本でもよいが、高い生産性を得るためには複数本設けることが好ましい。
流路を区画する隔壁としては、連続相液体と分散相液体とを隔離する部材であって、隔壁の厚み方向に貫通した微小孔部を有する板状や膜状の部材である。隔壁の材質としては、分散相液体及び連続相液体に対して耐性を有するものが好ましい。例えば、ガラスやセラミックス等の無機材料、ニッケルやニッケル合金、ステンレス鋼等の金属材料、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミドイミド、アクリル、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂材料等を挙げることができる。中でも、比較的安価で入手しやすく、優れた耐性や加工性を有する点からステンレス鋼のシートを用いることが好ましい。
微小孔部の全体的な形状としては、特に制限されず、例えば、平板、円盤、円筒、角筒等であってよい。分散相液体の流れ方向に直交する微小孔部の断面形状(以下、単に「微小孔部の断面形状」と称することがある)としては、特に制限されず、例えば、円形、楕円、矩形、三角形、多角形等であってよい。これに限定されないが、微小孔部の出口部分、すなわち連続相の流路側の断面形状の短手方向長さとしては例えば0.1〜100μmとすることができ、長手方向長さとしては0.1〜100μmとすることができる。
隔壁には、微小孔部を1個または複数個で設けることができる。流路が複数本ある場合には、それぞれの流路に対して1個または複数個の微小孔を設けることができる。
本実施形態では、隔壁で区画された流路を流れる連続相液体の流速を0.3〜10m/sとすることにより、粒子径分布の狭いエマルション液滴が得られ、それを固形化した球状粒子の粒子径分布も狭くすることができる。連続相液体の流速としては、好ましくは1.0m/s以上であり、より好ましくは2.0m/s以上であり、一方、好ましくは9.0m/s以下であり、より好ましくは8.0m/s以下である。ここで、連続相液体の流速とは、単位時間当たりに隔壁で区画された流路に流れる連続相液体の流量(m3/s)を流路の断面積(m2)で割った値のことである。
隔壁で区画された流路の高さとしては、200μm〜1mmであることが好ましい。
流路の高さが200μm以上であることで、高い生産性となるように微小孔部から分散相液体を高流速で圧入しても、より均一なエマルション液滴の生成が可能となる。また、流路の高さが200μm未満であると、分散相液体が高流速で圧入される場合に、連続相液体の流れによって切り離される前に、微小孔部が形成された隔壁に対向する隔壁に到達してしまい、目視で確認できる程の粗大なエマルション液滴が生成し、均一なエマルション液滴の生成ができなくなるため、生産性を高めることができないことがある。
一方、流路の高さが1mm以下であることで、連続相液体の過剰な消費をより防止することができる。また、流路の高さが1mmを超えると、微小孔部の出口側でせん断力を十分に与えることができなくなり、目的とする粒子径や粒子径分布が得られないことがある。
流路の高さとしては、好ましくは300μm以上であり、より好ましくは400μm以上であり、一方、好ましくは900μm以下であり、より好ましくは800μm以下である。
ここで、流路の高さとしては、微小孔部が形成された隔壁とこの隔壁に対向する隔壁との間の距離である。また、流路の幅としては連続相の流れ方向に対し直交し、かつ流路の高さと直交する方向の隔壁の間の距離である。流路の幅としては、特に制限されないが、例えば0.1〜10mmの範囲とすることができる。
例えば、流路の断面形状が矩形の場合は、微小孔部が形成されている隔壁とこの隔壁と対向する隔壁との間の距離が流路の高さとなる。図2に示すドーナツ形も同様である。また、流路の断面形状が円形である場合は、流路の高さ及び幅が円の直径となる。
流路の長さとしては、特に制限されないが、例えば1〜500mmの範囲とすることができる。500mmを超えると圧力損失が大きくなるため、流路外への漏洩が起きる可能性が高まり好ましくない。また、1mm未満だと隔壁に形成できる微小孔の数が少なくなるため生産性が低くなり好ましくない。流路の全長を通して、流路の断面形状が変化する構成では、流路の高さとしては、流路全長を通して最小の部分の高さとし、また、流路の幅としては、流路全長を通して最小の部分の幅とする。
本実施形態では、連続相液体の流速が0.3〜10m/sであることで、分散相液体を微小孔部の1孔当たり0.1〜5m/sの流速で押し出すことにより、粒子径分布の狭いエマルション液滴を得ることができ、それを固形化した球状粒子の粒子径分布を狭くすることができる。ここで、分散相液体の流速は、1孔の微小孔に単位時間当たりに流れる分散相液体の流量(m3/s)を微小孔の断面積(m2)で割った値のことである。
分散相液体の流速が0.1m/s未満の場合、粒子径分布の広いエマルション液滴が生成することがある。一方、5m/s超過の場合、粗大なエマルルション液滴が生成することがあり、粒子径分布の狭い球状粒子を得ることができないことがある。
微小孔部の1孔当たりの流速は、好ましくは0.5m/s以上であり、より好ましくは1.0m/s以上である。
流路中を流れる連続相液体のレイノルズ数は500〜10000であることが好ましい。ここで、流路の断面が円形である場合のレイノルズ数は下記式1で計算され、流路の内径Dは流路の断面における最小径を使用する。ここで、D(流路の内径:m)、u(平均流速:m/s)、ρ(流体密度:kg/m3)、μ(流体粘度:Pa・s)である。
レイノルズ数(−)=D・u・ρ/μ・・・式1。
また、流路の断面が円形でない場合のレイノルズ数は下記式2で計算される。ここで、rは流路動水半径(m)=流路の断面積(m2)/流路断面の流体に接する周長(m)であり、u、ρ、μは式1と同様である。
レイノルズ数(−)=4×r・u・ρ/μ・・・式2。
レイノルズ数が500以上であることで、微小孔部から高流速で押し出される分散相液体を切り離すのに十分なせん断力を与えることができ、連続相液体中で分散相液体をエマルション液滴に形成することを促進することができる。
一方、レイノルズ数が10000以下であることで、流路での液体の流れの乱れを防止して、粒子径の均一なエマルション液滴を形成することができ、均一な粒子径の球状粒子を得ることができる。
レイノルズ数は、好ましくは700以上であり、より好ましくは1000以上であり、一方、好ましくは7000以下であり、より好ましくは5000以下である。
(乳化装置)
以下、本実施形態に用いられる乳化装置の一例について図1を参照して説明する。以下の説明では、分散相液体に水性液体を用い、連続相液体に有機液体を用い、W/Oエマルションを作製する方法について説明する。なお、同様の乳化装置及び方法を用いて、分散相液体に有機液体を用い、連続相液体に水性液体を用い、O/Wエマルションを作製することも可能である。
図1において、1及び2はアクリル樹脂製部材、3は流路3aが形成されたステンレス鋼板、4は複数の微小孔部4aが形成されたステンレス鋼板である。ステンレス鋼板3の流路3aにステンレス鋼板4の微小孔部4aが対向するようにステンレス鋼板3及びステンレス鋼板4を重ね合わせ、ステンレス鋼板3側にアクリル樹脂製部材1が配置され、ステンレス鋼板4側にアクリル樹脂製部材2が配置される。ステンレス鋼板3及び4は、アクリル樹脂製部材1及び2によって挟み込まれ、液体の流路3aを形成する。
アクリル樹脂製部材1には、連続相入口部5及びエマルション出口部6が設けられ、連続相液体が連続相入口部5から供給されエマルション出口部6方向に流れる。アクリル樹脂製部材2には、分散相供給部7が設けられ、分散相液体が分散相供給部から供給され、微小孔部4aを通して、流路3aに押し出される。流路3aにおいて、連続相及び分散相からエマルションが作製されて、エマルション出口部6から排出される。
なお、微小孔部4aより押し出される分散相液体は、界面張力に起因して、微小孔部4aの出口においてその孔径よりも大きく成長する。その後、分散相液体は、連続相液体の流れにより切り離され、連続相液体中でエマルション液滴を形成する。
ステンレス鋼板3の流路3aは、複数本の流路3aが連続相液体の流れ方向に沿って形成されていてもよい。また、ステンレス鋼板4の微小孔部4aは、それぞれの流路3aに対し複数個の微小孔部4aが形成されていてもよい。
本実施形態では、連続相液体が流れる流路3aを形成するステンレス鋼板3の厚さを200μm〜1mmにすることで、流路3aの高さを200μm〜1mmにすることができる。ステンレス鋼板3の厚さは、より好ましくは400〜800μmである。
ステンレス鋼板4の厚さは、特に制限されず、例えば10〜500μmとすることができる。10μm以上であることで、鋼板の強度を確保して折れ曲がりを防止して、鋼板の平面性を保つことができ、また、複数の微小孔部4aから流路3aに圧入される分散相液体の液滴が合一することを防止して、より均一な粒子径の液滴を形成することができる。一方、500μm以下であることで、鋼板の加工性に優れ、低コストで加工精度を高めることができる。ステンレス鋼板4の厚さは、好ましくは30〜200μmである。
流路3a及び微小孔部4aの形成方法にとしては、特に制限されず、レーザー加工、エッチング加工、エレクトロフォーミング加工、プレス加工など種々の加工法が適用できるが、加工の簡便さやコストの点からエキシマレーザー、UV−YAGレーザー、フェムト秒レーザー、ピコ秒レーザーなどのレーザー加工法を用いることが好ましい。
分散相液体が水性液体である場合、ステンレス鋼板4は、少なくとも微小孔部4aの流路3a側の表面が撥水処理してあることが好ましい。この撥水処理は、ステンレス鋼板4の表面のうち、少なくとも連続相液体としての有機液体と接触する部分に対して行うことが好ましい。例えば、ステンレス鋼板4に微小孔部4aを形成した後に、ステンレス鋼板4の表面全体を撥水処理することができる。
これによって、分散相液体が微小孔部4aの出口部分で切り離される作用を促進して、より均一な粒子径のエマルション液滴を形成することができる。ステンレス鋼板4が親水性の場合、分散相液体である水性液体が微小孔部4aから押し出された後に、ステンレス鋼板4の表面に沿って流れてしまい、エマルション液滴の粒子径が不均一になる現象がある。この現象は、高速度カメラでの観察により確認されている。
撥水処理は、疎水性樹脂又はシランカップリング剤を溶剤に溶解した撥水処理剤を用いて、ステンレス鋼板4の表面をコーティングすることで行うことができる。疎水性樹脂としては、熱可塑性樹脂を用いると好ましい。これは、コーティングの際に微小孔部4aが閉塞した場合であっても、加熱処理により孔を貫通させられるためである。また、疎水性樹脂として、耐久性の観点から、溶媒可溶型のフッ素樹脂を用いることが好ましい。コーティングには任意の方法を用いることができるが、撥水処理剤をディップコートすることで、薄く均一にコーティングできる。
撥水処理では、ステンレス鋼板4表面に0.001〜5μmの膜厚を有する撥水性の処理膜を形成することが好ましい。0.001μm以上であることで、耐久性及び機械的強度を高めることができ、また、ピンホールの発生を防ぐことができる。一方、5μm以下であることで、微小孔部4aが撥水処理剤によって被覆されて閉塞されることを防止することができる。
微小孔部4aの断面形状としては、内側に凸面を有さない形状であることが好ましく、例えば、円形、楕円、矩形、三角形、多角形等を挙げることができる。中でも円形が好ましい。このような形状であることで、加工性に優れ、また、より均一な粒子径のエマルション液滴を形成することができる。
また、微小孔部4aは、ステンレス鋼板4の流路3a側の開口部を反対面側の開口部よりも小さくして、ステンレス鋼板4の厚み方向に傾斜を有する形状としてもよい。これによって、分散相液体を、微小孔部4aを通して流路3aに押し出す際の圧力を低減することができる。
微小孔部4aの断面形状が円形以外である場合、微小孔部4aの流路3a側の開口部で、分散相液体がエマルション液滴となった時点でエマルション液滴は曲率分布を有し、比較的早期に分散相液体から自発的に切り離され連続相液体中でエマルション液滴になるものと推定される。そのため、円形状の微小孔部4aの場合と比べ、比較的エマルション液滴の粒子径が小さいものが得られやすいという利点を有する。
微小孔部4aの断面の動水半径rの4倍値は、0.1〜100μmであることが好ましい。より好ましくは1〜80μmである。この微小孔部4aの断面の動水半径rは、微小孔部4aの流路3a側の開口部での値である。
ここで、動水半径rは、上記式2で定義した「流路動水半径(m)」と同様に、微小孔部の断面の動水半径r(m)=微小孔部の断面積(m2)/微小孔部断面の流体に接する周長(m)である。したがって、微小孔部4aの断面形状が円形の場合、動水半径r=円の内径D/4となるから、動水半径rの4倍値は円の内径Dに相当する。
微小孔部4aの断面の動水半径rの4倍値が0.1μm以上であることで、分散相液体の供給量を増加させて、生産性を高めることができる。一方、100μm以下であることで、エマルション液滴の粒子径が過剰に増大することを防止して、より均一な粒子径のエマルション液滴を形成することができる。
球状粒子前駆体を含む分散相液体を供給する微小孔部4aは、生産性の観点から、ステンレス鋼板4の厚さ方向に貫通するように、複数個設けることが好ましい。1つの流路3aに対する微小孔部4aの個数としては、例えば1000個以上とすることができ、より好ましくは5000個以上であり、さらに好ましくは20000個以上であり、50000個以上としてもよい。
ステンレス鋼板4に流路3aに対向して形成される微小孔部4aの配列としては、特に限定されないが、生産性及び加工性の観点から、ステンレス鋼板4の幅方向(流路3aの幅方向)及び/または長さ方向(連続相液体の流れ方向)に複数個の微小孔部4aを一定間隔またはランダムに形成することができる。
例えば、ステンレス鋼板4の幅方向及び長さ方向に一定のピッチで複数個の微小孔部4aを並列配列で形成することができる。また、ステンレス鋼板4の幅方向及び長さ方向に並列配列した微小孔部4aのうち、幅方向に隣接する2つの微小孔部4aと、長さ方向に隣接する2つの微小孔部4aとを選び、これらの微小孔部4aの中心を結んで形成される長方形の対角線の中心にもう1個の微小孔部4aを形成して千鳥配列で形成することができる。この千鳥配列では、微小孔部4aを密に配列することができ、ステンレス鋼板4aの開口率を高くして、生産性をより高めることができる。
複数の微小孔部4aを形成する際の隣接する微小孔部4aの間隔(ピッチ)としては、特に制限されないが、微小孔部4aの断面形状に外接する円の直径の1/2以上の間隔を設けて、隣接する微小孔部4aをステンレス鋼板4に形成することが好ましい。より好ましくは、微小孔部4aの断面形状に外接する円の直径以上の間隔を設ける。
隣接する微小孔部4aの間隔が上記した範囲であることで、エマルション液滴が形成された後に、複数のエマルション液滴が合一することを防いで、エマルション液滴の粒子径をより均一にすることができる。一方、エマルション液滴の合一を防げる範囲で複数の微少孔部4aを密接して配置することで、生産性を高めることができる。
本実施形態に用いることが可能な乳化装置としては、図1に示す乳化装置のように、ステンレス鋼板4が水平面に対して平行、もしくは垂直になるように設置することができる。水平面に対して垂直に置く場合、連続相の流れが上方から下方になっても、下方から上方になってもどちらでもよい。
ステンレス鋼板4が水平面に対して角度を有するように設置した場合、高さ方向の所定水平面においては、分散相液体側及び連続相液体側それぞれにおいて液深に起因する圧力が印加される。特定水平面において、分散相液体、連続相液体の液深がほぼ同等と仮定すると、分散相液体と連続相液体との密度差に起因し、((分散相液体密度−連続相液体密度)×液深)に相当する圧力が加わる。そのため、連続相液体の密度が分散相液体の密度より小さい場合は連続相液体を下方から上方へ、反対の場合は上方から下方へ流せば、連続相液体の流路3aを水平面に対して平行に形成した場合と比較して、全流路における分散相液体側と連続相液体側の圧力差の変化を相対的に狭くできる。その結果、ステンレス鋼板4に形成された各微小孔部4aからの分散相液体の供給量を安定化して、エマルション液滴の粒子径をより均一化して、得られる球状粒子の粒子径をより均一化することができる。
エマルション液滴の粒子径としては、微小孔部4aの設置条件の他、分散相液体の流れ方向の流速に対する連続相液体の流れ方向の流速の比によっても影響を受ける。
この流速の比は、0.1〜100であることが好ましい。より好ましくは0.5〜50であり、さらに好ましくは1〜10である。
この比が100以下であることで、連続相液体が過剰に消費されないようにして、その供給量を調整することができる。一方、0.5以上であることで、分散相液体が連続相液体の流れによって切り離されてエマルション液滴を形成することを促進して、エマルション液滴の粒子径をより均一にすることができる。
球状粒子の生産性が高いことは、微小孔部形成領域の単位面積当たりの分散相液体の供給量が多いことからわかる。また、この供給量を多くすることは装置の小型化にもつながる。
ここで、微小孔部形成領域の単位面積当たりの分散相液体の供給量としては、単位時間当たりに微小孔部4aへと供給される分散相液体の供給量を、微小孔部形成領域の面積で割った値である。微小孔部形成領域としては、隔壁の微小孔部4aの出口側の面で、微小孔部4aの外周部と接する直線で囲まれる矩形の領域である。例えば、複数の微小孔部4aが配列して全体的に四角形に形成される場合は、外側の微小孔部4aの外周部と接する直線で囲まれた矩形の領域が微小孔部形成領域となる。また、複数の微小孔部4aが配列して全体的に円形や三角形に形成される場合では、同様にして矩形の領域が最小面積となるようにして微小孔部形成領域を決定する。
微小孔部形成領域の単位面積当たりの分散相液体の供給量としては、3m3/m2・hr以上とすることができる。好ましくは20m3/m2・hr以上であり、より好ましくは40m3/m2・hr以上である。本実施形態では、連続相液体の流速が0.3〜10m/sであるため、分散相液体の供給量を増加させて生産性を高めても、乳化安定性を高めてエマルションの液滴径を均一化し、結果としてより均一な粒子径の球状粒子を得ることができる。
微小孔部形成領域の単位面積当たりの分散相液体の供給量の上限値としては、均一な粒子径の球状粒子を得るためには、300m3/m2・hr以下であることが好ましく、より好ましくは250m3/m2・hr以下である。
(固形化工程)
次に、球状粒子前駆体を含むエマルション液滴を固形化して球状粒子を形成する。この固形化工程では、エマルション液滴1個から球状粒子1個を形成することが好ましい。例えば、球状粒子前駆体を含むエマルション液滴をゲル化して、球状粒子を得る方法がある。
この固形化工程としては、沈殿剤を添加して球状粒子前駆体を沈殿させる方法を用いることができる。沈殿剤としては、例えば、アルカリ金属のハロゲン化物あるいは炭酸塩、無機酸、有機酸、無機酸のアンモニウム塩、有機酸のアンモニウム塩、アルカリ土類金属のハロゲン化物等を挙げることができる。具体的には、炭酸水素アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化カリウム、炭酸水素カリウム等の水溶液が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
分散相液体中の球状粒子前駆体がケイ酸アルカリ又はシリカの場合は、エマルションをゲル化することにより、球状であるエマルション液滴はこの形状を保持したままゲル化され、球状のシリカヒドロゲルが得られる。ゲル化には、エマルション中にゲル化剤を導入するのが好ましい。ゲル化剤としては、無機酸や有機酸などの酸が用いられ、特に無機酸である硫酸、塩酸、硝酸、炭酸などが好ましい。操作の容易性などの点で、最も簡便で好ましいのは、炭酸ガスを用いる方法である。炭酸ガスは、100%濃度の純炭酸ガスを導入してもよいし、空気や不活性ガスで希釈した炭酸ガスを導入してもよい。ゲル化に要する時間は、通常1〜30分が好ましく、ゲル化時の温度は5〜30℃が好ましい。
(回収工程)
次に、球状粒子を回収する。この回収工程では、固形化された球状粒子を連続相から分離することで球状粒子を回収することができる。好ましくは、球状粒子と連続相とを固液分離する。
分散相液体中の球状粒子前駆体がケイ酸アルカリ又はシリカの場合は、ゲル化終了後に反応系を静置して、連続相とシリカヒドロゲルを含む分散相とに2相分離させてシリカヒドロゲルを分離するのが好ましい。連続相液体として飽和炭化水素を用いて分散相液体として水を用いた場合は、上層に連続相が、下層にシリカヒドロゲルを含む水性液状体相が分離するので、両者を公知の手段により分離する。その際には分離装置を用いて分離すると好ましい。
シリカヒドロゲルの水スラリーは熟成処理することが好ましい。熟成処理では、所望により、硫酸などの酸を添加してpHを1〜5程度に調整してゲル化を完結させ、次に、60〜150℃、好ましくは80〜120℃の温度で水蒸気蒸留して当該水スラリー中に残留している僅かの飽和炭化水素を留出して除去し、さらにはpH7〜9程度の適当なpHで加温してシリカヒドロゲルの熟成を行う。
必要に応じて、上記の熟成処理を行った後、水スラリーをろ過してシリカヒドロゲルを得、これを100〜150℃程度の温度で、1〜30h程度乾燥することにより、シリカ球状粒子を得ることができる。
なお、分散相液体の水性液体としてケイ酸アルカリ水溶液を用い、ゲル化剤として酸を用いた場合、アルカリ金属塩(例えばゲル化剤が炭酸であれば炭酸ナトリウムなど)を副生するので、この塩がシリカ球状粒子へ混入することを防止するため、ろ過した際のウエットケーキ(水分を含むシリカヒドロゲル)は十分水洗することが好ましい。場合によっては、水洗後のウエットケーキに再度水を添加してスラリーとして、再度ろ過、水洗を繰り返してもよい。なお、この際、所望により当該スラリーのpHを1〜5程度に調整して再度熟成する操作を行ってもよい。
O/Wエマルションの場合では、例えば、重合性モノマーを含む分散相液滴であるエマルション液滴を重合して固形化し、連続相である水性液体から回収することで、樹脂球状粒子を得ることができる。
(球状粒子の物性等)
得られる球状粒子の形状としては、球状であれば特に限定されず、真球体及び楕円体を含めた球状とすることができる。球状粒子の形状は、走査型電子顕微鏡等を用いて形状観察することで確認することができる。
得られる球状粒子は、D90/D10が1.8以下であることが好ましく、より好ましくは1.75以下であり、さらに好ましくは1.70以下である。ここで、D90は、90%体積換算粒子径であって、粒子の体積を粒子径の小さな側から積算していった場合に合計体積の90%となるときの粒子径であり、D10は、10%体積換算粒子径であって、同様に積算体積が10%となる粒子径である。球状粒子のD90及びD10は、ベックマンコールター社製のコールターカウンタを用いて測定した値である。
本実施形態によれば、分散相液体の供給量を増加させて生産性を高めた場合でも、球状粒子のD90/D10を1.8以下として、粒子径分布が狭くより均一な粒子径の球状粒子を提供することができる。
本実施形態による製造方法は、球状シリカの体積換算平均粒子径(D50:50%体積換算粒子径)に制限なく、その効果を得ることができる。球状粒子のD50は、粒子の体積を粒子径の小さな側から積算していった場合に合計体積の50%となるときの粒子径であり、上記したD90及びD10と同様にして求めることができる。
本実施形態による製造方法に適した球状粒子の体積換算平均粒子径(D50)としては、10μm以上であり、より好ましくは15μm以上であり、さらに好ましくは20μm以上である。
また、本実施形態による製造方法に適した球状粒子の体積換算平均粒子径(D50)としては、100μm以下であり、より好ましくは80μm以下であり、さらに好ましくは50μm以下である。
また、本実施形態の製造方法に適した球状粒子の細孔容積としては、特に制限されないが、0.1〜5cm3/gであり、より好ましくは0.5〜4cm3/gである。特に、本実施形態による製造方法は、多孔質シリカ球状粒子の製造に適している。
上記した製造方法によって得られる球状粒子は、例えば、トナー、断熱材、食品添加剤、医療用診断剤、塗料用フィラー、化粧品用フィラー、樹脂フィルム用フィラー、液晶用スペーサー、クロマトグラフィー用充填剤、触媒、触媒担体、樹脂充填剤、吸着剤、乾燥剤等に広く用いることができる。
本実施形態による球状粒子は、ほぼ真球状で粒子径が均一であるため、触媒担体の形状を反映したポリマー形状となるポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂を製造する際に、触媒担体として好ましく用いることができる。
(その他の実施形態)
本発明の他の実施形態による球状粒子の製造方法としては、隔壁で区画された流路中を流れる連続相液体に、隔壁に形成した微小孔部を通して、球状粒子前駆体を含む分散相液体を1孔当たり0.1〜5m/sの流速で押し出してエマルションを作製し、球状粒子前駆体を含むエマルション液滴を固形化し球状粒子を形成し、球状粒子を回収する球状粒子の製造方法であって、流路中を流れる連続相液体のレイノルズ数が500〜10000であることを特徴とする。
本実施形態では、連続相液体の流速に制限されないで、流路中を流れる連続相液体のレイノルズ数を500〜10000とすることで、均一な球状粒子を高い生産性で得ることができる。
この場合、隔壁で区画された流路中を流れる連続相液体の流速が0.3〜10m/sであることが好ましい。さらに、隔壁で区画された流路の高さが200μm〜1mmであることが好ましい。
上記した各条件の詳細、原料、得られる球状粒子の特性等は、上記した実施形態と共通する。
以下、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<分散相及び連続相の供給量及び界面活性剤濃度の試験>
以下の試験を通じて、分散相であるケイ酸ソーダ及び連続相であるn−デカンの供給量並びに界面活性剤濃度に関して、得られる球状粒子であるシリカ粒子の平均粒子径(D50)及びD90/D10を評価した。シリカ粒子の製造条件及び評価結果を表1に示す。
なお、以下の実施例等に使用した各乳化装置の設定条件を表4にまとめて示す。
(実施例1)
「1.分散相及び連続相の調製」
分散相として、3号ケイ酸ソーダ(AGCエスアイテック株式会社製、ケイ酸ナトリウム水溶液、Na2O/SiO2(モル比)=3.09)を水で薄めて、SiO2濃度を24質量%としたものを使用した。このときの密度は1315kg/m3であった。連続相の有機液体としてn−デカン(C10H22、密度730kg/m3)を使用した。また、あらかじめ、このn−デカンに界面活性剤としてモノオレイン酸ソルビタン(三洋化成工業株式会社製、イオネットS80)を0.3質量%溶解したものを準備した。
「2.乳化装置A作製」
実施例1では、乳化装置Aを用いて乳化を行った。乳化装置Aの断面模式図は図1に示す通りである。また、乳化装置Aの設定条件を表4に示す。
乳化装置Aにおいて、ステンレス鋼板3は、厚さ600μmのSUS304製のシートに対し、流路(マイクロチャネル)に相当する幅3.0mm×長さ74mmの1本の貫通加工部(3a)がエッチング加工されたものであり、すなわち幅3.0mm×高さ600μmの流路3aが形成されている。
ステンレス鋼板4は、厚さ50μmのSUS304製のシートに対し、ステンレス鋼板3と重ね合わせた際に流路3aの中央部に微小孔部4aが重なるような位置に微小孔部4aが加工されたものである。微小孔部4aは流路の中央部の2.61mm×37.9mmの面積(9.89×10−5m2)に、出口側(下側、すなわちステンレス鋼板3側)の孔径が8μmである円形の貫通孔部4bが65μmピッチで23944個加工してある。
ステンレス鋼板3の流路aが形成された面及びステンレス鋼板4の微小孔部4aが形成された面に撥水処理を施した。撥水処理は、溶媒可溶型フッ素樹脂(旭硝子株式会社製「サイトップ」)を溶媒(旭硝子株式会社製「CT−Solv100」)に溶解した溶液を、乾燥後の被覆厚が0.1μmになるようにディップコート法により被覆した。
このステンレス鋼板3とステンレス鋼板4とを図1のように重ね、分散相入口部7を有する分散相流路形成用のアクリル製部材2と、連続相入口部5及びエマルション出口部6のそれぞれの流路を有するアクリル製部材1とで挟み込み、乳化装置Aを作製した。乳化装置Aの4辺をクランプにて均等な力で締め付けて固定し、事前に水を供給することで漏洩がないことを確認した。
「3.エマルション作製」
上記「2」で作製した乳化装置Aを流路が水平方向になるように置いて使用し、連続相入口部5より上記「1」で調製した界面活性剤を溶解したn−デカンを、分散相入口部7より微小孔部4aを通して上記「1」で調製した3号ケイ酸ソーダを供給することで、3号ケイ酸ソーダが界面活性剤を溶解したn−デカン中に分散したW/O型エマルションを連続的に製造した。
このとき、n−デカンの供給量は1流路あたり16.2L/hであり、流路における流れ方向の線速(流速)は2.5m/sであった。実験は常温で行い、このとき、n−デカンの流れのレイノルズ数は、下記式2aより、流路の動水半径:250μm、粘度:9.28×10−4Pa・sから計算したところ1967であった。また、3号ケイ酸ソーダの供給量は微小孔部形成領域(乳化装置Aでは9.89×10−5m2)の単位面積あたり3.99L/h(40.3m3/m2・h)であり、微小孔部4aの1孔(4b)あたりの流れ方向の線速(流速)は0.92m/sであった。
レイノルズ数(−)=4×r・u・ρ/μ・・・式2a。
ここで、rは流路動水半径(m)=流路の断面積(m2)/流路断面の流体に接する周長(m)であり、u(平均流速:m/s)、ρ(流体密度:kg/m3)、μ(流体粘度:Pa・s)である。平均流速uは、連続相の流路における流れ方向の流速である。
このとき、微小孔部4aから供給されるケイ酸ソーダの微小孔部4aでの流れ方向の流速に対する、n−デカンの流れ方向の流速の比は2.7であった。
「4.ゲル化及び回収」
上記「3」で作製したW/O型エマルションを採取した後、撹拌しながら100質量%濃度の炭酸ガスを300mL/分の供給速度で15分間吹き込んでゲル化を行った。生成したシリカヒドロゲルに対し、水200mLを加えて10分間静置させた後、比重差により2相分離してシリカヒドロゲルの水スラリー(水相)を得た。次いで、得られたシリカヒドロゲルの水スラリーに0.1規定の硫酸水溶液を加え、25℃でpH2に調整して30分間静置した。次いで、ろ過及び水洗を行い、120℃で20時間乾燥することでシリカ多孔質球状体を得た。
「5.形状確認」
得られたシリカ多孔質球状体は走査型電子顕微鏡写真よりほぼ真球状であることが確認された。
また、このシリカ多孔質球状体をコールターカウンタ(ベックマンコールター社製、以下同じ)にて測定したところ、50%体積換算粒子径(D50:平均粒子径)は36.1μm、90%体積換算粒子径(D90)と10%体積換算粒子径(D10)の比(D90/D10)は1.45であった。また、窒素吸着法により測定した細孔容積は1.0cm3/gであった。
(実施例2)
界面活性剤の濃度を0.7質量%に変更した以外は、上記実施例1と同様にしてW/Oエマルションの作製、ゲル化及び回収を行った。
得られたシリカ多孔質球状体は走査型電子顕微鏡写真よりほぼ真球状であることが確認された。
また、このシリカ多孔質球状体をコールターカウンタにて測定したところ、50%体積換算粒子径(D50)は36.2μm、90%体積換算粒子径(D90)と10%体積換算粒子径(D10)の比(D90/D10)は1.43であった。また、窒素吸着法により測定した細孔容積は1.0cm3/gであった。
(実施例3)
界面活性剤の濃度を1.0質量%とした以外は、上記実施例1と同様にしてW/Oエマルションの作製、ゲル化及び回収を行った。
得られたシリカ多孔質球状体は走査型電子顕微鏡写真よりほぼ真球状であることが確認された。
また、このシリカ多孔質球状体をコールターカウンタにて測定したところ、50%体積換算粒子径(D50)は36.0μm、90%体積換算粒子径(D90)と10%体積換算粒子径(D10)の比(D90/D10)は1.42であった。また、窒素吸着法により測定した細孔容積は1.0cm3/gであった。
(参考例1)
「1.分散相及び連続相の調製」
上記実施例1と同様にして分散相及び連続相を調製した。
「2.乳化装置B作製」
参考例1では、乳化装置Bを用いて乳化を行った。乳化装置Bの断面模式図は図1に示す通りである。また、乳化装置Bの設定条件を表4に示す。
乳化装置Bにおいて、ステンレス鋼板3は、厚さ200μmのSUS304製のシートに対し、流路(マイクロチャネル)に相当する幅3.0mmの1本の貫通孔(3a)がエッチング加工されたものであり、すなわち幅3.0mm×高さ200μmの流路3aが形成されている。
ステンレス鋼板4は、厚さ50μmのSUS304製のシートに対し、ステンレス鋼板3と重ね合わせた際に流路3aの中央部に微小孔部4aが重なるような位置に微小孔部4aを有し、表面が疎水化処理されている。微小孔部4aは流路の中央部の2.72mm×22.9mmの面積(6.23×10−5m2)に、出口側(下側、すなわちステンレス鋼板3側)の孔径が20μmである円形の貫通孔が100μmピッチで6440個加工してある。また、スレンレス鋼板3及び4は、上記乳化装置Aと同様に撥水処理を施した。
このステンレス鋼板3とステンレス鋼板4とを図1のように重ね、分散相入口部7を有する分散相流路形成用のアクリル製部材2と、連続相入口部5及びエマルション出口部6のそれぞれの流路を有するアクリル製部材1とで挟み込み、乳化装置Bを作製した。乳化装置Bの4辺をクランプにて均等な力で締め付けて固定し、事前に水を供給することで漏洩がないことを確認した。
「3.エマルション作製」
上記「2」で作製した乳化装置Bを流路が水平方向になるように置いて使用し、連続相入口部5より上記「1」で調製した界面活性剤を溶解したn−デカンを、分散相入口部7より微小孔部4aを通して上記「1」で調製した3号ケイ酸ソーダを供給することで、3号ケイ酸ソーダが界面活性剤を溶解したn−デカン中に分散したW/O型エマルションを連続的に製造した。
このとき、n−デカンの供給量は1流路あたり0.432L/hであり、流路における流れ方向の流速は0.20m/sであった。実験は常温で行い、このとき、n−デカンの流れのレイノルズ数は、上記式2aより、流路の動水半径:93.8μm、粘度:9.28×10−4Pa・sから計算したところ59であった。また、3号ケイ酸ソーダの供給量は微小孔部形成領域(乳化装置Bでは6.23×10−5m2)の単位面積あたり0.0142L/h(0.228m3/m2・h)であり、微小孔部4aの1孔(4b)あたりの流れ方向の流速は0.0020m/sであった。
このとき、微小孔部4aから供給されるケイ酸ソーダの微小孔部4aでの流れ方向の流速に対する、n−デカンの流れ方向の流速の比は103であった。
「4.ゲル化及び回収」
上記実施例1と同様にしてゲル化及び回収を行った。
「5.形状確認」
得られたシリカ多孔質球状体は走査型電子顕微鏡写真よりほぼ真球状であることが確認された。
また、このシリカ多孔質球状体をコールターカウンタにて測定したところ、50%体積換算粒子径(D50)は39.7μm、90%体積換算粒子径(D90)と10%体積換算粒子径(D10)の比(D90/D10)は1.40であった。また、窒素吸着法により測定した細孔容積は1.0cm3/gであった。
(参考例2)
界面活性剤の濃度を0.7質量%に変更した以外は、参考例1と同様にしてW/Oエマルションの作製、ゲル化及び回収を行った。
得られたシリカ多孔質球状体は走査型電子顕微鏡写真よりほぼ真球状であることが確認された。
また、このシリカ多孔質球状体をコールターカウンタにて測定したところ、50%体積換算粒子径(D50)は36.3μm、90%体積換算粒子径(D90)と10%体積換算粒子径(D10)の比(D90/D10)は1.41であった。また、窒素吸着法により測定した細孔容積は1.0cm3/gであった。
(参考例3)
界面活性剤の濃度を1.0質量%とした以外は、参考例1と同様にしてW/Oエマルションの作製、ゲル化及び回収を行った。
得られたシリカ多孔質球状体は走査型電子顕微鏡写真よりほぼ真球状であることが確認された。
また、このシリカ多孔質球状体をコールターカウンタにて測定したところ、50%体積換算粒子径(D50)は34.6μm、90%体積換算粒子径(D90)と10%体積換算粒子径(D10)の比(D90/D10)は1.40であった。また、窒素吸着法により測定した細孔容積は1.0cm3/gであった。
(比較例1)
比較例1では、以下の点を除いて、参考例1と同様にしてW/Oエマルションの作製、ゲル化及び回収を行った。
n−デカンの供給量は1流路あたり4.32L/hであり、流路における流れ方向の流速は2.0m/sであった。実験は常温で行い、このとき、n−デカンの流れのレイノルズ数の計算値は590であった。また、3号ケイ酸ソーダの供給量は微小孔部形成領域(乳化装置Bでは6.23×10−5m2)の単位面積あたり0.0142L/h(0.228m3/m2・h)であり、微小孔部4aの1孔(4b)あたりの流れ方向の流速は0.0020m/sであった。
このとき、微小孔部4aから供給されるケイ酸ソーダの微小孔部4aでの流れ方向の流速に対する、n−デカンの流れ方向の流速の比は1025であった。
得られたシリカ多孔質球状体は走査型電子顕微鏡写真よりほぼ真球状であることが確認された。
また、このシリカ多孔質球状体をコールターカウンタにて測定したところ、50%体積換算粒子径(D50)は10.2μm、90%体積換算粒子径(D90)と10%体積換算粒子径(D10)の比(D90/D10)は1.92であった。また、窒素吸着法により測定した細孔容積は1.0cm3/gであった。
表1に示すとおり、実施例1〜3によれば、連続相の流速を増加させてレイノルズ数を大きくすることで、分散相の供給量を増加させて生産量を高めても、ほぼ真球状のシリカ粒子を得ることができた。また、このシリカ粒子は、D90/D10が小さく均一であった。参考例1〜3のように、連続相の流速が遅くレイノルズ数が小さい条件では、均一なシリカ粒子を得るためには分散相の供給量を少なくしなければならず、生産性を十分に高めることができなかった。また、比較例1のように連続相の流速が速く、レイノルズ数が大きい条件でも、分散相の供給量が少ないと均一なシリカ粒子は得られなかった。
実施例1〜3から、界面活性剤の濃度が変化しても50%体積換算粒子径(D50)が一定であることがわかった。これは、連続相であるn−デカンの流速が速いため、分散相であるケイ酸ソーダを液滴化するためのせん断力が強く、界面活性剤の濃度の差異は、液滴化に対する影響が小さいためと考えられる。
参考例1〜3から、界面活性剤の濃度が減少すると50%体積換算粒子径(D50)が増大することが明らかとなった。これは、実施例1〜3とは逆に、n−デカンの流速が遅いためケイ酸ソーダを液滴化するためのせん断力が弱く、微小孔部4aから圧入されたケイ酸ソーダへの界面活性剤の濃度が液滴化に影響を及ぼす因子であるためと考えられる。
<分散相及び連続相の供給量の試験>
以下の試験を通じて、分散相であるケイ酸ソーダ及び連続相であるn−デカンの供給量に関して、得られる球状粒子であるシリカ粒子の平均粒子径(D50)及びD90/D10を評価した。シリカ粒子の製造条件及び評価結果を表2に示す。
(実施例4)
「1.分散相及び連続相の調製」
分散相は、3号ケイ酸ソーダを水で薄めて、SiO2濃度を17質量%とした以外は実施例1と同様に調製した。このときの3号ケイ酸ソーダの密度は1215kg/m3であった。連続相は、実施例1と同様に調製した。
「2.乳化装置C作製」
実施例4では、乳化装置Cを用いて乳化を行った。乳化装置Cの断面模式図は図1に示す通りである。また、乳化装置Cの設定条件を表4に示す。
乳化装置Cにおいて、ステンレス鋼板3は、厚さ600μmのSUS304製のシートに対し、流路(マイクロチャネル)に相当する幅1.7mm×長さ74mmの1本の貫通加工部(3a)がエッチング加工されたものであり、すなわち幅1.7mm×高さ600μmの流路3aが形成されている。
ステンレス鋼板4は、厚さ50μmのSUS304製のシートに対し、ステンレス鋼板3と重ね合わせた際に流路3aの中央部に微小孔部4aが重なるような位置に微小孔部4aを有し、表面が疎水化処理されたものである。微小孔部4aは流路の中央部の1.31mm×37.9mmの面積(4.96×10−5m2)に、出口側(下側、すなわちステンレス鋼板3側)の孔径が12.7μmである円形の貫通孔部4bが100μmピッチで5320個加工してある。また、スレンレス鋼板3及び4は、上記乳化装置Aと同様に撥水処理を施した。
このステンレス鋼板3とステンレス鋼板4とを図1のように重ね、分散相入口部7を有する分散相流路形成用のアクリル製部材2と、連続相入口部5及びエマルション出口部6のそれぞれの流路を有するアクリル製部材1とで挟み込み、乳化装置Cを作製した。乳化装置Cの4辺をクランプにて均等な力で締め付けて固定し、事前に水を供給することで漏洩がないことを確認した。
「3.エマルション作製」
上記「2」で作製した乳化装置Cを流路が水平方向になるようにに置いて使用し、連続相入口部5より上記「1」で調製した界面活性剤を溶解したn−デカンを、分散相入口部7より微小孔部4aを通して上記「1」で調製した3号ケイ酸ソーダを供給することで、3号ケイ酸ソーダが界面活性剤を溶解したn−デカン中に分散したW/O型エマルションを連続的に製造した。
このときn−デカンの供給量は1流路あたり9.21L/hであり、流路における流れ方向の流速は2.5m/sであった。実験は常温で行い、このとき、n−デカンの流れのレイノルズ数は、上記式2aより、流路の動水半径:222μm、粘度:9.28×10−4Pa・sから計算したところ1752であった。また、3号ケイ酸ソーダの供給量は微小孔部形成領域(乳化装置Cでは4.96×10−5m2)の単位面積あたり2.37L/h(47.7m3/m2・h)であり、微小孔部4aの1孔(4b)あたりの流れ方向の流速は1.0m/sであった。
このとき、微小孔部4aから供給されるケイ酸ソーダの微小孔部4aでの流れ方向の流速に対する、n−デカンの流れ方向の流速の比は2.6であった。
「4.ゲル化及び回収」
上記実施例1と同様にしてゲル化及び回収を行った。
「5.形状確認」
得られたシリカ多孔質球状体は走査型電子顕微鏡写真よりほぼ真球状であることが確認された。
また、このシリカ多孔質球状体をコールターカウンタにて測定したところ、50%体積換算粒子径(D50)は30.4μm、90%体積換算粒子径(D90)と10%体積換算粒子径(D10)の比(D90/D10)は1.42であった。また、窒素吸着法により測定した細孔容積は1.0cm3/gであった。
(実施例5)
実施例5では、以下の点を除いて、実施例4と同様にしてW/Oエマルションの作製、ゲル化及び回収を行った。
このときn−デカンの供給量は1流路あたり4.19L/hであり、流路における流れ方向の流速は1.1m/sであった。実験は常温で行い、このとき、n−デカンの流れのレイノルズ数の計算値は768であった。また、3号ケイ酸ソーダの供給量は微小孔部形成領域の単位面積あたり2.47L/h(49.7m3/m2・h)であり、微小孔部4aの1孔(4b)あたりの流れ方向の流速は1.0m/sであった。
このとき、微小孔部4aから供給されるケイ酸ソーダの微小孔部4aでの流れ方向の流速に対する、n−デカンの流れ方向の流速の比は1.1であった。
得られたシリカ多孔質球状体は走査型電子顕微鏡写真よりほぼ真球状であることが確認された。
また、このシリカ多孔質球状体をコールターカウンタにて測定したところ、50%体積換算粒子径(D50)は43.8μm、90%体積換算粒子径(D90)と10%体積換算粒子径(D10)の比(D90/D10)は1.77であった。また、窒素吸着法により測定した細孔容積は0.9cm3/gであった。
(実施例6)
実施例6では、以下の点を除いて、実施例4と同様にしてW/Oエマルションの作製、ゲル化及び回収を行った。
このときn−デカンの供給量は1流路あたり18.4L/hであり、流路における流れ方向の流速は5.0m/sであった。実験は常温で行い、このとき、n−デカンの流れのレイノルズ数の計算値は3500であった。また、3号ケイ酸ソーダの供給量は微小孔部形成領域の単位面積あたり2.47L/h(49.7m3/m2・h)であり、微小孔部4aの1孔(4b)あたりの流れ方向の流速は1.0m/sであった。
このとき、微小孔部4aから供給されるケイ酸ソーダの微小孔部4aでの流れ方向の流速に対する、n−デカンの流れ方向の流速の比は4.9であった。
得られたシリカ多孔質球状体は走査型電子顕微鏡写真よりほぼ真球状であることが確認された。
また、このシリカ多孔質球状体をコールターカウンタにて測定したところ、50%体積換算粒子径(D50)は20.9μm、90%体積換算粒子径(D90)と10%体積換算粒子径(D10)の比(D90/D10)は1.57であった。また、窒素吸着法により測定した細孔容積は1.0cm3/gであった。
(実施例7)
実施例7では、以下の点を除いて、実施例4と同様にしてW/Oエマルションの作製、ゲル化及び回収を行った。
このとき、n−デカンの供給量は1流路あたり22.2L/hであり、流路における流れ方向の流速は6.0m/sであった。実験は常温で行い、このとき、n−デカンの流れのレイノルズ数の計算値は4223であった。また、3号ケイ酸ソーダの供給量は微小孔部形成領域の単位面積あたり2.45L/h(49.3m3/m2・h)であり、微小孔部4aの1孔(4b)あたりの流れ方向の流速は1.0m/sであった。
このとき、微小孔部4aから供給されるケイ酸ソーダの微小孔部4aでの流れ方向の流速に対する、n−デカンの流れ方向の流速の比は6.0であった。
得られたシリカ多孔質球状体は走査型電子顕微鏡写真よりほぼ真球状であることが確認された。
また、このシリカ多孔質球状体をコールターカウンタにて測定したところ、50%体積換算粒子径(D50)は16.8μm、90%体積換算粒子径(D90)と10%体積換算粒子径(D10)の比(D90/D10)は1.74であった。また、窒素吸着法により測定した細孔容積は0.9cm3/gであった。
(実施例8)
実施例8では、以下の点を除いて、実施例4と同様にしてW/Oエマルションの作製、ゲル化及び回収を行った。
このとき、n−デカンの供給量は1流路あたり10.9L/hであり、流路における流れ方向の流速は3.0m/sであった。実験は常温で行い、このとき、n−デカンの流れのレイノルズ数の計算値は2074であった。また、3号ケイ酸ソーダの供給量は微小孔部形成領域の単位面積あたり5.98L/h(120m3/m2・h)であり、微小孔部4aの1孔(4b)あたりの流れ方向の流速は2.5m/sであった。
このとき、微小孔部4aから供給されるケイ酸ソーダの微小孔部4aでの流れ方向の流速に対する、n−デカンの流れ方向の流速の比は1.2であった。
得られたシリカ多孔質球状体は走査型電子顕微鏡写真よりほぼ真球状であることが確認された。
また、このシリカ多孔質球状体をコールターカウンタにて測定したところ、50%体積換算粒子径(D50)は30.9μm、90%体積換算粒子径(D90)と10%体積換算粒子径(D10)の比(D90/D10)は1.60であった。また、窒素吸着法により測定した細孔容積は1.0cm3/gであった。
(参考例4)
「1.分散相及び連続相調製」
分散相として、3号ケイ酸ソーダ(AGCエスアイテック株式会社製、Na2O/SiO2(モル比)=3.09)を水で薄めて、SiO2濃度を24.4質量%としたものを使用した。このときの密度は1320kg/m3であった。連続相の有機液体としてイソノナン(C9H20、密度730kg/m3)を使用した。また、あらかじめ、このイソノナンに界面活性剤としてモノオレイン酸ソルビタン(三洋化成工業株式会社製、イオネットS80)を0.5質量%溶解したものを準備した。
「2.乳化装置D作製」
参考例4では、乳化装置Dを用いて乳化を行った。乳化装置Dの断面模式図は図1に示す通りである。また、乳化装置Dの設定条件を表4に示す。
乳化装置Dにおいて、ステンレス鋼板3は、厚さ400μmのSUS304製のシートに対し、流路(マイクロチャネル)に相当する幅3.0mm×長さ74mmの1本の貫通加工部(3a)がエッチング加工されたものであり、すなわち幅3.0mm×高さ600μmの流路3aが形成されている。
ステンレス鋼板4は、厚さ50μmのSUS304製のシートに対し、ステンレス鋼板3と重ね合わせた際に流路3aの中央部に微小孔部4aが重なるような位置に微小孔部4aを有し、表面が疎水化処理されたものである。微小孔部4aは流路の中央部の2.73mm×22.9mmの面積(6.25×10−5m2)に、出口側(下側、すなわちステンレス鋼板3側)の孔径が30μmである円形の貫通孔部4bが100μmピッチで6440個加工してある。また、スレンレス鋼板3及び4は、上記乳化装置Aと同様に撥水処理を施した。
このステンレス鋼板3とステンレス鋼板4とを図1のように重ね、分散相入口部7を有する分散相流路形成用のアクリル製部材2と、連続相入口部5及びエマルション出口部6のそれぞれの流路を有するアクリル製部材1とで挟み込み、乳化装置Dを作製した。乳化装置Dの4辺をクランプにて均等な力で締め付けて固定し、事前に水を供給することで漏洩がないことを確認した。
「3.エマルション作製」
上記「2」で作製した乳化装置Dを流路が水平方向になるように置いて使用し、連続相入口部5より上記「1」で調製した界面活性剤を溶解したイソノナンを、分散相入口部7より微小孔部4aを通して上記「1」で調製した3号ケイ酸ソーダを供給することで、3号ケイ酸ソーダが界面活性剤を溶解したイソノナン中に分散したW/O型エマルションを連続的に製造した。
このときイソノナンの供給量は1流路あたり1.35L/hであり、流路における流れ方向の流速は0.31m/sであった。実験は常温で行い、このとき、イソノナンの流れのレイノルズ数は、上記式2aより、流路の動水半径:176μm、粘度:7.5×10−4Pa・sから計算したところ214であった。また、3号ケイ酸ソーダの供給量は微小孔部形成領域(乳化装置Dでは6.25×10−5m2)の単位面積あたり0.0322L/h(0.515m3/m2・h)であり、微小孔部4aの1孔(4b)あたりの流れ方向の流速は0.0020m/sであった。
このとき、微小孔部4aから供給されるケイ酸ソーダの微小孔部4aでの流れ方向の流速に対する、イソノナンの流れ方向の流速の比は159であった。
「4.ゲル化及び回収」
上記実施例1と同様にしてゲル化及び回収を行った。
「5.形状確認」
得られたシリカ多孔質球状体は走査型電子顕微鏡写真よりほぼ真球状であることが確認された。
また、このシリカ多孔質球状体をコールターカウンタにて測定したところ、50%体積換算粒子径(D50)は49.8μm、90%体積換算粒子径(D90)と10%体積換算粒子径(D10)の比(D90/D10)は1.40であった。また、窒素吸着法により測定した細孔容積は1.0cm3/gであった。
(比較例2)
比較例2では、以下の点を除いて、実施例4と同様にしてW/Oエマルションの作製を行った。
このとき、n−デカンの供給量は1流路あたり0.730L/hであり、流路における流れ方向の流速は0.20m/sであった。実験は常温で行い、このとき、n−デカンの流れのレイノルズ数の計算値は139であった。また、3号ケイ酸ソーダの供給量は微小孔部形成領域の単位面積あたり2.47L/h(49.7m3/m2・h)であり、微小孔部4aの1孔(4b)あたりの流れ方向の流速は1.0m/sであった。
このとき、微小孔部4aから供給されるケイ酸ソーダの微小孔部4aでの流れ方向の流速に対する、n−デカンの流れ方向の流速の比は0.19であった。
上記した条件では、目視で確認できるほどの粗大なエマルションが生成したため、乳化不良と判断し、ゲル化及び回収を行わなかった。
表2に示すとおり、実施例4〜8によれば、連続相であるn−デカンの流速を1.1〜6.0m/sとし、分散相であるケイ酸ソーダの流速を1.0〜2.5として、レイノルズ数が768〜4223の条件化においても、ほぼ真球状で、D90/D10が小さく粒子径が均一なシリカ粒子を得ることができた。
実施例6及び7のような高レイノルズ数条件下でも、D90/D10が1.8以下を満たす均一な粒子径のシリカ粒子を高い生産性で得ることができた。また、実施例8のように、分散相の流速をさらに高めても、D90/D10が小さく粒子径が均一なシリカ粒子を得ることができた。
参考例4では、D90/D10が小さく粒子径が均一なシリカ粒子が得られているが、連続相及び分散相の流速が低く、また、レイノルズ数が小さく、分散相の供給量が少なく、生産性が低下した。
比較例2では、エマルション液滴が粗大化して乳化不良となった。これは、連続相であるn−デカンの流速が低く、微小孔部4aの出口側でせん断力を十分に得られなかったため、微小孔部4aから圧入されたケイ酸ソーダが液滴になる前に、微小孔部4aが形成された隔壁とこの隔壁に対向する隔壁に到達し、粗大なエマルション液滴が生成したと考えられる。
<流路の高さの試験>
以下の実施例9〜10の試験を通じて、流路の高さに関して、得られる球状粒子であるシリカ粒子の平均粒子径(D50)及びD90/D10を評価した。シリカ粒子の製造条件及び評価結果を実施例1および後述の実施例11の評価結果と合わせて表3に示す。
(実施例9)
実施例9では、上記乳化装置Aにおいて流路(マイクロチャネル)に相当する幅3.0mm×長さ74mmの1本の貫通加工部(3a)をエッチング加工してあるステンレス鋼板3を、厚さ400μmのSUS304製のシートに変更した乳化装置A*を用いて、以下の点を除いては、実施例1と同様にしてW/Oエマルションの作製、ゲル化及び回収を行った。すなわち、実施例9では、実施例1で用いた乳化装置Aにおいて流路の高さを400μmとした。乳化装置A*の設定条件を表4に示す。
このとき、n−デカンの供給量は1流路あたり10.7L/hであり、流路における流れ方向の流速は2.5m/sであった。実験は常温で行い、このとき、n−デカンの流れのレイノルズ数は、上記式2aより、流路の動水半径:176μm、粘度:9.28×10−4Pa・sから計算したところ1372であった。また、3号ケイ酸ソーダの供給量は微小孔部形成領域(乳化装置A*では9.89×10−5m2)の単位面積あたり3.94L/h(39.8m3/m2・h)であり、微小孔部4aの1孔(4b)あたりの流れ方向の流速は0.91m/sであった。
このとき、微小孔部4aから供給されるケイ酸ソーダの微小孔部4aでの流れ方向の流速に対する、n−デカンの流れ方向の流速の比は2.7であった。
得られたシリカ多孔質球状体は走査型電子顕微鏡写真よりほぼ真球状であることが確認された。
また、このシリカ多孔質球状体をコールターカウンタにて測定したところ、50%体積換算粒子径(D50)は28.4μm、90%体積換算粒子径(D90)と10%体積換算粒子径(D10)の比(D90/D10)は1.48であった。また、窒素吸着法により測定した細孔容積は1.0cm3/gであった。
(実施例10)
実施例10では、上記乳化装置Aにおいて流路(マイクロチャネル)に相当する幅3.0mmの1本の貫通孔(3a)をエッチング加工してあるステンレス鋼板3を、厚さ800μmのSUS304製のシートに変更した乳化装置A**を用いて、以下の点を除いては、実施例1と同様にしてW/Oエマルションの作製、ゲル化及び回収を行った。すなわち、実施例10では、実施例1で用いた乳化装置Aにおいて流路の高さを800μmとした。乳化装置A**の設定条件を表4に示す。
このときn−デカンの供給量は1流路あたり21.3L/hであり、流路における流れ方向の流速は2.5m/sであった。実験は常温で行い、このとき、n−デカンの流れのレイノルズ数は、上記式2aより、流路の動水半径:316μm、粘度:9.28×10−4Pa・sから計算したところ2451であった。また、3号ケイ酸ソーダの供給量は微小孔部形成領域(乳化装置A**では9.89×10−5m2)の単位面積あたり4.03L/h(40.7m3/m2・h)であり、微小孔部4aの1孔(4b)あたりの流れ方向の流速は0.93m/sであった。
このとき、微小孔部4aから供給されるケイ酸ソーダの微小孔部4aでの流れ方向の流速に対する、n−デカンの流れ方向の流速の比は2.6であった。
得られたシリカ多孔質球状体は走査型電子顕微鏡写真よりほぼ真球状であることが確認された。
また、このシリカ多孔質球状体をコールターカウンタにて測定したところ、50%体積換算粒子径(D50)は39.3μm、90%体積換算粒子径(D90)と10%体積換算粒子径(D10)の比(D90/D10)は1.46であった。また、窒素吸着法により測定した細孔容積は1.0cm3/gであった。
表3に示すとおり、実施例1、9及び10によれば、流路の高さを変更しても、ほぼ真球状で、D90/D10が小さく粒子径が均一なシリカ粒子を得ることができた。
<循環回数の試験>
以下の試験を通じて、連続相の循環回数に関して、得られる球状粒子であるシリカ粒子の平均粒子径(D50)及びD90/D10を評価した。シリカ粒子の製造条件及び評価結果を表3に併せて示す。
(実施例11)
「1.分散相及び連続相の調製」
実施例1と同様に分散相及び連続相を調製した。
「2−1.乳化装置作製」
実施例1と同様に乳化装置Aを作製した。
「2−2.試験設備作製」
連続相を循環させるための試験設備の概略図を図3に示す。
図3に示す試験設備では、上記「2」で作製した乳化装置8を流路が水平方向になるように置き、エマルション出口部6の垂直下方にエマルション受槽9を配置した。エマルション受槽9の側面に備え付けたノズルと連続相供給槽11の側面に備え付けたノズルをフッ素樹脂チューブで連結した。連続相供給槽11の底面近くまでフッ素樹脂チューブを差し込み、ギアポンプを介して乳化装置8と接続した。また分散相供給槽12を設置し、こちらも底面近くまでフッ素樹脂チューブを差し込み、ギアポンプを介して乳化装置8と接続した。
「3.エマルション作製」
連続相供給槽11に上記「1」で調製した界面活性剤入りn−デカンを8L張り込んだ。n−デカンの供給量は実施例1と同様に1流路あたり16.2L/hであり、流路における流れ方向の流速は2.5m/sであった。また、3号ケイ酸ソーダの供給量は微小孔部形成領域(乳化装置Aでは9.89×10−5m2)の単位面積あたり3.99L/h(40.3m3/m2・h)であり、微小孔部4aの1孔(4b)あたりの流れ方向の流速は0.92m/sであった。実験は常温で行い、このときのn−デカンの流れのレイノルズ数の計算値は1967であった。エマルション出口部6から排出されたエマルションはエマルション受槽9に溜めて、静置させることでエマルションとn−デカンに二相分離させた。上澄みのn−デカンは連続相供給槽11に送られ、再度乳化のための連続相として使用した。エマルション受槽9で二相分離されたエマルションは随時エマルション抜出し出口部10から抜出した。
n−デカン、3号ケイ酸ソーダの供給は合計で12時間行った。このときn−デカンは約24回繰り返し使用した。
「4.ゲル化及び回収」
エマルション出口部6から抜き出したエマルションについて、上記実施例1と同様にしてゲル化及び回収を行った。
「5.形状確認」
12時間経過時のエマルションを採取し、ゲル化後に形状確認を行ったところ、真球状であることが確認された。
また、このシリカ多孔質球状体をコールターカウンタにて測定したところ、50%体積換算粒子径(D50)は36.5μm、90%体積換算粒子径(D90)と10%体積換算粒子径(D10)の比(D90/D10)は1.43であった。また、窒素吸着法により測定した細孔容積は1.0cm3/gであった。
表3に示すとおり、実施例1及び11から、連続相であるn−デカンを繰り返し使用してもD50やD90/D10にほとんど変化がないことがわかった。
<シリカ球状粒子の微小化試験>
(実施例12)
実施例12では、上記乳化装置Aにおいて流路(マイクロチャネル)に相当する幅3.0mmの1本の貫通孔(3a)をエッチング加工してあるステンレス鋼板3を、厚さ200μmのSUS304製のシートに変更した乳化装置Eを用いて、以下の点を除いては、実施例1と同様にしてW/Oエマルションの作製、ゲル化及び回収を行った。分散相は、SiO2濃度が21.5質量%となるように3号珪酸ソーダを水で薄めて調製した。また、ステンレス鋼板4は、厚さ50μmのSUS304製のシートに対し、ステンレス鋼板3と重ね合わせた際に流路3aの中央部に微小孔部4aが重なるような位置に微小孔部4aを有し、表面が疎水化処理されている。微小孔部4aは流路の中央部の2.63mm×38.3mmの面積(1.01×10−4m2)に、出口側(下側、すなわちステンレス鋼板3側)の孔径が7μmである円形の貫通孔が57μmピッチで31584個加工してある。乳化装置Eの設定条件を表4に示す。
このときn−デカンの供給量は1流路あたり13.2L/hであり、流路における流れ方向の流速は6.1m/sであった。実験は常温で行い、このとき、n−デカンの流れのレイノルズ数は、上記式2aより、流路の動水半径:93.8μm、粘度:9.28×10−4Pa・sから計算したところ1804であった。また、3号ケイ酸ソーダの供給量は微小孔部形成領域(乳化装置Eでは1.01×10−4m2)の単位面積あたり2.40L/h(23.8m3/m2・h)であり、微小孔部4aの1孔(4b)あたりの流れ方向の流速は0.55m/sであった。
このとき、微小孔部4aから供給されるケイ酸ソーダの微小孔部4aでの流れ方向の流速に対する、n−デカンの流れ方向の流速の比は11.1であった。
得られたシリカ多孔質球状体は走査型電子顕微鏡写真よりほぼ真球状であることが確認された。
また、このシリカ多孔質球状体をコールターカウンタにて測定したところ、50%体積換算粒子径(D50)は10.1μm、90%体積換算粒子径(D90)と10%体積換算粒子径(D10)の比(D90/D10)は1.66であった。また、窒素吸着法により測定した細孔容積は1.0cm3/gであった。
<高細孔容積シリカ多孔質球状体作製の試験>
以下の試験を通じて、高細孔容積シリカ多孔質球状体作製に関して、得られる球状粒子であるシリカ粒子の平均粒子径(D50)及びD90/D10を評価した。
(実施例13)
「1.分散相及び連続相の調製」
分散相は、SiO2濃度が10質量%、硫酸ナトリウム濃度が8.5%となるように3号珪酸ソーダと硫酸ナトリウム水溶液を混合して調製した。このときの3号ケイ酸ソーダの密度は1150kg/m3であった。連続相は、実施例1と同様に調製した。
「2.乳化装置F作製」
実施例13では、乳化装置Fを用いて乳化を行った。乳化装置Fの断面模式図は図1に示す通りである。また、乳化装置Fの設定条件を表4に示す。
乳化装置Fにおいて、ステンレス鋼板3は、厚さ600μmのSUS304製のシートに対し、流路(マイクロチャネル)に相当する幅3.0mm×長さ74mmの1本の貫通加工部(3a)がエッチング加工されたものであり、すなわち幅3.0mm×高さ600μmの流路3aが形成されている。
ステンレス鋼板4は、厚さ50μmのSUS304製のシートに対し、ステンレス鋼板3と重ね合わせた際に流路3aの中央部に微小孔部4aが重なるような位置に微小孔部4aを有し、表面が疎水化処理されたものである。微小孔部4aは流路の中央部の2.61mm×37.9mmの面積(9.89×10−5m2)に、出口側(下側、すなわちステンレス鋼板3側)の孔径が12.7μmである円形の貫通孔部4bが100μmピッチで10260個加工してある。また、スレンレス鋼板3及び4は、上記乳化装置Aと同様に撥水処理を施した。
このステンレス鋼板3とステンレス鋼板4とを図1のように重ね、分散相入口部7を有する分散相流路形成用のアクリル製部材2と、連続相入口部5及びエマルション出口部6のそれぞれの流路を有するアクリル製部材1とで挟み込み、乳化装置Fを作製した。乳化装置Fの4辺をクランプにて均等な力で締め付けて固定し、事前に水を供給することで漏洩がないことを確認した。
「3.エマルション作製」
上記「2」で作製した乳化装置Fを流路が水平方向になるようにに置いて使用し、連続相入口部5より上記「1」で調製した界面活性剤を溶解したn−デカンを、分散相入口部7より微小孔部4aを通して上記「1」で調製した3号ケイ酸ソーダを供給することで、3号ケイ酸ソーダが界面活性剤を溶解したn−デカン中に分散したW/O型エマルションを連続的に製造した。
このときn−デカンの供給量は1流路あたり14.8L/hであり、流路における流れ方向の流速は2.3m/sであった。実験は常温で行い、このとき、n−デカンの流れのレイノルズ数は、上記式2aより、流路の動水半径:250μm、粘度:9.28×10−4Pa・sから計算したところ1797であった。また、3号ケイ酸ソーダの供給量は微小孔部形成領域(乳化装置Fでは9.89×10−5m2)の単位面積あたり5.01L/h(50.6m3/m2・h)であり、微小孔部4aの1孔(4b)あたりの流れ方向の流速は1.1m/sであった。
このとき、微小孔部4aから供給されるケイ酸ソーダの微小孔部4aでの流れ方向の流速に対する、n−デカンの流れ方向の流速の比は2.1であった。
「4.ゲル化及び熟成」
上記「3」で作製したW/O型エマルションを300ml採取した後、液温度を10℃になるまで冷却し、撹拌しながら100質量%濃度の炭酸ガスを100mL/分の供給速度で25分間吹き込んでゲル化を行った。生成したシリカヒドロゲルに対し、水200mLを加えて10分間静置させた後、比重差により2相分離してシリカヒドロゲルの水スラリー(水相)を得た。得られたシリカヒドロゲルの水スラリーをろ過して、イオン交換水2Lで洗浄した後、1規定の水酸化ナトリウム水溶液を添加し、pH9とした。次いで、熟成工程として93℃に昇温後、1時間攪拌した。
「5.洗浄および回収」
上記「4」で熟成をかけた水スラリーに0.1既定の硫酸を添加し、pH2とした。次いで水スラリーをろ過して、イオン交換水2Lで洗浄した後、最終的にイオン交換水を加えて10%スラリーとした。このシリカスラリーをスプレードライ乾燥機(日本ビュッヒ製ミニスプレードライヤーB290)にて200℃で乾燥し、球状シリカ粉体を得た。
「6.形状確認」
得られたシリカ多孔質球状体は走査型電子顕微鏡写真よりほぼ真球状であることが確認された。
また、このシリカ多孔質球状体をコールターカウンタにて測定したところ、50%体積換算粒子径(D50)は27.4μm、90%体積換算粒子径(D90)と10%体積換算粒子径(D10)の比(D90/D10)は1.37であった。また、窒素吸着法により測定した細孔容積は2.6cm3/gであった。
表4に、上記試験に用いた乳化装置A〜F、A*、A**の詳細をまとめて示す。