以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る複合機1(画像記録装置)の外観構成を示すものである。本複合機1は、背面側にプリンタ部2を、正面側にスキャナ部3を一体的に備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device)であり、プリンタ機能とスキャナ機能とを併有するものである。複合機1のうちプリンタ部2が本発明に係る画像記録装置に相当し、プリンタ機能以外の機能は任意のものである。したがって、スキャナ部3がなく、スキャナ機能やコピー機能を有しない単機能のプリンタであっても、さらに通信部を備えてファクシミリ機能等を有するものであってもよい。
複合機1は、不図示のコンピュータと接続されて、プリンタ部2が、該コンピュータから送信された画像データや文書データに基づいて、記録用紙に画像や文書を記録し、スキャナ部3が、各種原稿の画像データを読み取って画像データに変換し、該画像データをコンピュータ等に出力することができ、また、複合機1単独で、デジタルカメラ等の外部機器と接続されてデジタルカメラ等から出力される画像データを記録用紙に記録したり、小型メモリカード等の各種記録媒体を装着して、該記録媒体に記録された画像データ等を記録用紙に記録することができる。
図に示すように、複合機1のプリンタ筐体20(装置筐体)は、その幅W及び高さTが、画像記録が可能な最大幅の記録用紙、例えばA4サイズの記録用紙に対応しており、該記録用紙を収容でき且つ装置内を搬送可能なように、A4サイズより幅W及び高さTが幾分大きいものである。これに対し、奥行きDは、幅W及び高さTのいずれよりも小さく、プリンタ筐体20の全体形状は扁平薄箱状である。本複合機1は、このようなプリンタ筐体20が、厚みの延びる方向、すなわちプリンタ筐体20の側面の長尺方向を縦方向(z軸方向)として設置される縦置き型のものである。このように、複合機1を縦置き型とすることにより、複合機1の小型化及び薄型化が実現され、複合機1を設置するための床面積が小さくなるとともに、可搬性が向上する。
上記プリンタ筐体20の背面側には不図示の記録用紙収容部21が形成されており、また、プリンタ筐体20の上面には排紙口22が上方へ向かって開口されている。詳細については後述するが、記録用紙収容部21から排紙口22へは、搬送路23が形成されており、該搬送路23に沿って搬送機構40により搬送されている記録用紙にインクジェット記録ヘッド24が画像記録を行い、画像記録済みの記録用紙が排紙口22から上方へ排出されるようになっている。
プリンタ筐体20の上面であって上記排紙口22の背面側には、本複合機1を操作するための操作パネル4が配設されている。操作パネル4は複合機1の各種設定等を行うための各種操作ボタンや液晶ディスプレイ等から構成されており、複合機1は、該操作パネル4からの操作指示によっても、コンピュータに接続されて該コンピュータからプリンタドライバ又はスキャナドライバを介して送信される指示によっても動作するようになっている。また、プリンタ筐体20の上面は正面側へ向かって下方へ傾斜しており、上記操作パネル4も該傾斜に対応して配設されている。これにより、操作パネル4の各種操作ボタンやディスプレイが正面側及び上面側のいずれの方向からも視認して操作できるので、複合機1を卓上又は床上のいずれに設置しても、視認性や操作性がよいという利点がある。
また、プリンタ筐体20の側面には、外部記録メディアである各種小型メモリカードを装着可能なメディア装着部5が設けられており、図1に示すように、使用しない際には開閉自在の扉により開口が封止されてゴミ等の異物の進入が防止されている。メディア装着部5の扉を開けると、図2に示すように、プリンタ筐体20の側面にスロット5a,5b,5cが露出される。これにより、各小型メモリカードを各スロット5a,5b,5cに対して側方から抜き差しできるようになる。なお、図2においてはメディア装着部5及びカートリッジ装着部6を閉止する扉を説明の便宜上省略している。
上記各スロット5a,5b,5cは、例えば、SDメモリカードやコンパクトフラッシュ(登録商標)、スマートメディア(登録商標)、メモリスティック(登録商標)と呼ばれる異なる規格の小型メモリカードを複合機1とデータの送受信可能に接続するためのものであり、3種の規格の小型メモリカードに対応した各スロット5a,5b,5cが、それぞれ側面に開口して縦方向に列設されている。なお、メディア装着部5のスロット数は増減可能である。
小型メモリカードには、例えばデジタルカメラで撮影された静止画像データやデジタルビデオカメラで撮影された動画像データが記録されており、該小型メモリカードを規格に応じてスロット5a,5b,5cのいずれかに装着することにより、複合機1は、該小型メモリカードに記録された画像データを読み出して、任意の画像をプリンタ部2により記録用紙に記録させることが可能となる。
このように、縦置き型の複合機1において、異なる規格の小型メモリカードに対応した複数のスロット5a,5b,5cを有するメディア装着部5をプリンタ筐体20の側面に配置することにより、複合機1の一方の側面において、各種すべての小型メモリカードの着脱作業を行うことができ、複合機1の操作性が向上する。また、プリンタ筐体20の上面及び正面に、スキャナ部3や操作パネル4等の他の操作部材を配置するためのスペースが空く。また、各スロット5a,5b,5cは、プリンタ筐体20の側面において縦方向に列設されているので、プリンタ筐体20の厚みを薄くして複合機1の薄型化が実現される。なお、本実施の形態においては、複合機1の左側面にメディア装着部5を配置しているが、右側面に配置することとしても同様の効果が得られることは当然である。
さらに、上記メディア装着部5が設けられた側面と同じプリンタ筐体20の側面には、シアン(C)・マゼンダ(M)・イエロー(Y)・ブラック(K)の各色インクのインクカートリッジが装填されるカートリッジ装着部6が設けられており、図1に示すように、上記メディア装着部5と同様に、インクカートリッジの交換を行わない場合には、開閉自在の扉により開口が封止されてゴミ等の異物の進入が防止されている。図2に示すように、カートリッジ装着部6の扉を開けると、CMYKの各インクカートリッジに対応して4つのカートリッジ装着部6y,6m,6c,6kが設けられており、各カートリッジ装着部6y,6m,6c,6kに対して各インクカートリッジを側方から抜き差ししてインクカートリッジ交換を行うようになっている。このように、カートリッジ装着部6と上記メディア装着部5とが、プリンタ筐体20の同一側面に配置されているので、複合機1の一方の側面において、すべてのインクカートリッジの交換作業及び小型メモリカードの着脱作業を行うことができ、複合機1の操作性が向上する。
なお、上記メディア装着部5とカートリッジ装着部6との位置関係は任意であるが、図に示すように、カートリッジ装着部6の上側にメディア装着部5を配置することにより、カートリッジ装着部6においてインク漏れ等が生じても、小型メモリカードやメディア装着部5の電子部品が、該インクにより汚染されることがないので好適である。
また、図1及び図2に示すように、プリンタ筐体20の上部には、上記操作パネル4と干渉しないようにU字状に形成された把手7が、プリンタ筐体20の上面に倒伏又は起立するように揺動可能に設けられている。該把手7は、複合機1を使用する際には、図に示すように、プリンタ筐体20の上面から起立する姿勢となって、装置を持ち運ぶ際の持ち手となり、不使用の際には、上面へ倒伏するように揺動されて排紙口22を閉塞し、ゴミや埃等の異物が装置内部に進入することを防止する。
スキャナ部3は、所謂フラットベッドスキャナとして構成されている。図に示すように、スキャナ部3のスキャナ筐体30は、その幅及び高さが、画像読取りが可能な最大原稿、例えばA4サイズの原稿に対応して、A4サイズより幅及び高さが幾分大きく、これに対し、厚み(奥行き)は、幅及び高さのいずれよりも小さく、スキャナ筐体30の全体形状は扁平薄箱状である。スキャナ部3の読取面は、スキャナ筐体30の一面として構成されており、図には表れていないが、上記プリンタ筐体20の正面側の外周面と対向している。また、スキャナ筐体30の下端側は上記プリンタ筐体20に枢着されており、スキャナ筐体30の上端側が正面側へ開閉可能となっている。
このようなスキャナ部3は、使用しない場合には、図に示すように、プリンタ筐体20の厚み方向とスキャナ筐体30の厚み方向とを同方向として、装置全体の外形が扁平薄箱状となり、該装置全体の厚みの延びる方向が縦方向となるように設置され、複合機1全体として縦置き型となっている。また、スキャナ部3を使用する際には、スキャナ筐体30の上端部に形成された掴持部31を掴んでスキャナ筐体30を正面側へ傾斜させ、読取面を構成するプラテンガラスに所望の原稿を位置せしめて、該原稿の画像をイメージセンサで読み取るようになっている。
図3は、複合機1の内部構成を示すものである。図に示すように、プリンタ部2は、上記プリンタ筐体20に内包されるようにして、記録用紙収容部21、搬送路23、インクジェット記録ヘッド24、プラテン25、電装部品26、排紙スタック27等を具備する。
記録用紙収容部21は、被記録媒体である記録用紙を貯蔵して搬送路23へ給送するためのものであり、A4サイズ以下の、B5サイズ、はがきサイズ等の各種サイズの記録用紙が収容可能である。詳細には、記録用紙収容部21は、プリンタ筐体20の背面側に凹設された空間を有し、該空間は、プリンタ筐体20の内部に設けられた区画板41と、プリンタ筐体20の背面を構成する蓋42とによって形成されている。蓋42は、図に示すように、装置背面側に傾動可能に設けられており、該蓋42を傾動して記録用紙収容部21を開放し、所望の記録用紙を装填できるようになっている。記録用紙収容部21に収容された複数枚の記録用紙Pは、図に示すように、記録面を装置内部側へ向けた立位姿勢で保持される。
図に示すように、記録用紙収容部21の下部は搬送路23へ続いており、区画板41の下部には、記録用紙収容部21に保持された記録用紙Pを1枚ずつ分離して搬送路23へ供給するための給紙ローラ43が設けられている。該給紙ローラ43は、複数のギアが噛合されてなる不図示の駆動伝達機構により、モータ(不図示)の駆動力が伝達されて回転するようになっている。一方、記録用紙収容部21の下部には、該給紙ローラ43に対向するようにして、記録用紙Pの下端部を給紙位置に保持するガイド44が配設されている。該ガイド44は、バネ等(不図示)により給紙ローラ43側へ付勢されて、記録用紙Pを立位姿勢で給紙ローラ43へ圧接するようになっている。したがって、記録用紙Pと圧接した状態で給紙ローラ43が回転することにより、給紙ローラ43との摩擦力により記録用紙Pが下方へ繰り出されて搬送路23へ給送される。
なお、本実施の形態では、記録用紙収容部21をプリンタ筐体20内に設けているが、プリンタ筐体20の外側の背面に沿って設けられたいわゆる給紙カセットとしてもよい。その際、給紙カセットが記録用紙を立位姿勢のまま搬送路23へ給送することとしても、使用の際に給紙カセットを若干傾斜させるようにしてもよい。
図3に示すように、搬送路23は、上記記録用紙収容部21の下部から下方へ向かって形成され、プリンタ筐体20の底部付近で反転した後、上方へ延びてプリンタ筐体20の上面に形成された排紙口22へ通じている。したがって、記録用紙収容部21から給送された記録用紙Pは、搬送路23により立位姿勢で下方へ搬送された後、Uターンするように反転して再び立位姿勢となり、上方へ搬送されて排紙口22から排出されることとなる。このように、搬送路23をプリンタ筐体20の厚み方向に沿ったU字状のパスとして、記録用紙Pを立位姿勢で搬送することにより、プリンタ筐体20の厚みを薄くして複合機1を小型化するとともに、複合機1の設置に必要な床面積を小さくすることができる。なお、本実施の形態では、排紙口22をプリンタ筐体20の上面に形成して搬送路23のパスをU字状としたが、本発明において搬送路のパスはU字状に限定されず、例えば、排紙口をプリンタ筐体20の正面に形成してL字状のパスとしてもよい。
搬送路23は、インクジェット記録ヘッド24及びプラテン25が配設されている箇所以外の主な箇所は、所定間隔で対向する外側ガイド面と内側ガイド面とから構成されている。このような外側ガイド面及び内側ガイド面は、例えばガイド部材をプリンタ筐体20内に適宜固定することとしても、外側ガイド面をプリンタ筐体20と一体に形成するようにしてもよい。また、図には示していないが、搬送路23が湾曲している箇所等に、搬送コロを適宜配設すれば、ガイド面に接触する記録用紙Pの搬送が円滑となる。
また、図に示すように、U字状に形成された搬送路23の最下部、すなわち搬送路23がUターンする箇所に、インクジェット記録ヘッド24が設けられている。該インクジェット記録ヘッド24は、搬送路23の内側において、その下面から下方へ向かってインク滴を吐出可能な姿勢で搬送路23の幅方向、すなわち図1のy軸方向に走査可能に配設されている。一方、該インクジェット記録ヘッド24の下方となる搬送路23の外側に、プラテン25が配設されている。
上記インクジェット記録ヘッド24は、プリンタ筐体20内に設置されたインクカートリッジ(不図示)からチューブ等の管路を通じて供給されるシアン(C)・マゼンダ(M)・イエロー(Y)・ブラック(K)の各色インクを吐出しながら走査されることにより、プラテン25上を搬送される記録用紙Pへ画像記録を行うものであり、図には示していないが、搬送路23の内側において、搬送路23の幅方向に延設されたガイド部材に摺動自在に設けられた走査キャリッジに搭載されており、該走査キャリッジがベルト駆動機構等によりガイド部材に沿って摺動されることにより、搬送路23の幅方向を主走査方向として走査可能となっている。
図3に示すように、プラテン25は、搬送路23を搬送される記録用紙Pを、上記インクジェット記録ヘッド24から所定のヘッドギャップの位置に水平に支持するものであり、インクジェット記録ヘッド24の画像記録範囲に渡って記録用紙Pを支持する水平面を有するものである。また、図には示していないが、インクジェット記録ヘッド24の画像記録範囲外となるプラテン25の側方には、インクの増粘防止や異物の除去のためにインクジェット記録ヘッド24がインクの空吐出をする際に、該インクを溜め受けるための廃インクトレイや、インクジェット記録ヘッド24から異物や気泡等を吸引除去するためのパージ機構が適宜設けられている。
また、搬送路23には、それぞれ一対の搬送ローラ45と押さえローラ46、搬送ローラ47と拍車ローラ48、及び排紙ローラ49と押さえローラ50等から構成される搬送機構40が設けられている。
搬送ローラ45及び押さえローラ46は、上記インクジェット記録ヘッド24の上流側において搬送路23の対向位置にそれぞれ設けられており、搬送路23を搬送されている記録前の記録用紙Pを狭持してプラテン25上へ搬送する。一方、搬送ローラ47及び拍車ローラ48は、上記インクジェット記録ヘッド24の下流側において搬送路23の対向位置にそれぞれ設けられており、記録済みの記録用紙Pを狭持して搬送する。さらに、搬送路23の下流側には、排紙ローラ49及び押さえローラ50が搬送路23の対向位置にそれぞれ設けられており、画像記録が行われた記録用紙Pを狭持して、該記録用紙Pの先端が排紙口22から突出するまで搬送する。なお、図には示していないが、これら搬送ローラ45,47及び排紙ローラ49には、不図示のモータから駆動力が伝達されて、回転駆動するようになっている。
押さえローラ46,50は搬送ローラ45又は排紙ローラ49に所定の押圧力で押圧するように付勢されて回転自在に設けられており、搬送ローラ45又は排紙ローラ49との間に記録用紙Pが進入した場合に該記録用紙Pの厚み分だけ退避して該記録用紙Pを搬送ローラ45又は排紙ローラ49とともに狭持し、搬送ローラ45又は排紙ローラ49の回転力を確実に記録用紙Pへ伝達するためのものである。拍車ローラ48も搬送ローラ47に対して同様に設けられたものであるが、記録済みの記録用紙Pの記録面と圧接するので、記録用紙Pに記録された画像を劣化させないようにローラ面が拍車状に凹凸したものとなっている。
したがって、記録用紙収容部21から搬送路23へ給送された記録用紙Pは、搬送ローラ45及び押さえローラ46に狭持されてプラテン25上に搬送され、記録用紙Pがプラテン25上に到達すると、所定の改行幅でプラテン25上を間欠して搬送され、その改行毎にインクジェット記録ヘッド24が走査されて、記録用紙Pの先端側から画像記録が行われる。画像記録が行われた記録用紙Pの先端側は、その後、搬送ローラ47及び拍車ローラ48に狭持され、該記録用紙Pは先端側を搬送ローラ47及び拍車ローラ48に、後端側を搬送ローラ45及び押さえローラ46に狭持された状態で所定の改行幅で間欠して搬送され、同様にインクジェット記録ヘッド24により画像記録が行われる。さらに記録用紙Pが搬送されると、記録用紙Pの後端が搬送ローラ45及び押さえローラ46を通過して、これらによる狭持が開放され、搬送ローラ47及び拍車ローラ48により所定の改行幅で間欠して搬送され、同様にインクジェット記録ヘッド24により画像記録が行われる。記録用紙Pの所定領域に画像記録を行った後は、搬送ローラ47及び排紙ローラ49が連続的に回転駆動され、搬送ローラ47と拍車ローラ48並びに排紙ローラ49と押さえローラ50により狭持された記録用紙Pは搬送路23を立位姿勢で上方へ搬送されて、その先端が排紙口22から突出する。
また、上記排紙ローラ49及び押さえローラ50の下流側には排紙スタック27が設けられている。排紙スタック27は、記録済みの記録用紙Pを、その先端側の一部を排紙口22から突出させた状態で貯蔵するためのものであり、プリンタ筐体20の内部に設けられた区画板51によって、複数枚の記録用紙Pを立位姿勢で保持可能な空間として形成されている。これにより、画像記録を終えた記録用紙Pはその先端側の一部を排紙口22から突出させた状態で順次排紙スタック27に貯蔵される。
一方、スキャナ部3は、図3に示すように、スキャナ筐体30及びプラテンガラス32に内包されるようにして、イメージスキャナ33、ガイドシャフト34、走査キャリッジ35等を具備する。
プラテンガラス32は、画像読取りを行う原稿が密着される透明部材であり、画像読取りを行う原稿の最大サイズ、ここではA4サイズより若干大きい矩形平板状のものである。前述したように、扁平薄箱状のスキャナ筐体30もA4サイズより大きなものであり、プラテンガラス32は、スキャナ筐体30がプリンタ筐体20の外周面と対向する側の面に設けられて読取面32aを構成するとともに、スキャナ筐体30の外周面の一部を構成している。
スキャナ筐体30及びプラテンガラス32により形成される内部空間には、該プラテンガラス32に対向してイメージスキャナ33が設けられている。イメージスキャナ33は所謂CIS(Contact Image Sensor)であり、プラテンガラス32の縦方向(図1のz軸方向)に延設されてプラテンガラス32の幅方向(図1のy軸方向)に走査可能となっている。詳細には、スキャナ筐体30内において幅方向に延設されたガイドシャフト34に、走査キャリッジ35がガイドシャフト34の軸方向へ摺動自在に設けられており、該走査キャリッジ35に上記イメージスキャナ33が搭載されている。該走査キャリッジ35がベルト駆動機構等によってガイドシャフト34に沿って摺動されることにより、イメージスキャナ33がプラテンガラス32の幅方向に走査可能となっている。
また、スキャナ筐体30の下端部の両端付近には、その幅方向を軸方向として軸36がそれぞれ設けられており、該軸36がプリンタ筐体20の軸受け部(不図示)に支持されて、スキャナ筐体30が、軸36を中心としてプリンタ筐体20の正面側へ開閉可能となっている。
なお、プリンタ部2及びスキャナ部3の構成は一例であり、プリンタ部2を所謂インクジェットプリンタからレーザプリンタへ変更することは勿論可能であり、また、スキャナ部3のイメージセンサをCCD(Charge Coupled Device)を用いた縮小光学系のスキャナとすることも可能であるが、一般に、インクジェットプリンタの方がプリンタ部2の小型軽量化が容易であり、また、CCDよりCISの方が焦点深度が浅く、CISを採用することによりスキャナ部3が薄型化されるので、複合機1を小型化・薄型化するには、これらを採用することが好適である。
本スキャナ部3のスキャナ筐体30は、図に示したように、プラテンガラス32により構成される読取面32aをプリンタ筐体20の正面側の外周面に閉止する閉姿勢から、該読取面32aが開放側へ垂直面から所定角度だけ傾斜した傾斜姿勢P1、さらには、該読取面32aが水平面となる位置からスキャナ筐体30の上端側が下方へ所定角度だけ傾斜した開放姿勢P2に開閉可能となっている。
スキャナ部3を使用しない場合、すなわち複合機1を使用しない場合やプリンタ部2のみ使用する場合には、図に示すように、スキャナ部3を閉姿勢とすることにより、縦置きされた複合機1の厚み方向のスペースを小さくして、オフィス空間等の省スペース化を図ることができる。また、プラテンガラス32の読取面32aがプリンタ筐体20の外周面により閉止されるので、該読取面32aに塵埃等が付着することが防止できる。
一方、スキャナ部3を使用する際にはスキャナ筐体30を開くが、スキャナ筐体30はプリンタ筐体20の正面側に配設されているので、スキャナ筐体30を開閉するために必要なスペースはプリンタ筐体20の正面側、すなわち本複合機1の正面側に集中される。したがって、複合機1の背面側には、設置面以外のスペースが不要となるので、本複合機1を壁際等に設置する際に必要な設置スペースを小さくすることができる。
本スキャナ部3を使用する際には、画像読取りを行う原稿(被読取媒体)の厚み等に応じて、傾斜姿勢P1又は開放姿勢P2のいずれかにスキャナ筐体30を開いて画像読取りを行う。スキャナ筐体30を傾斜姿勢P1又は開放姿勢P2のいずれにするかは、原稿の厚みにより決定され、普通紙1枚のように薄い原稿を読み取る場合には傾斜姿勢P1とし、本や冊子のように分厚い原稿や重い原稿を読み取る場合には開放姿勢P2とする。なお、スキャナ筐体30を一旦傾斜姿勢P1として原稿を読取面32aに位置せしめてから閉姿勢とした場合にも、スキャナ部3による画像読取りが可能である。
使用者は、スキャナ筐体30の掴持部31を掴んで、図に示した閉姿勢から正面側へスキャナ筐体30を開くと、該スキャナ筐体30は、傾斜姿勢P1となる所定角度で仮固定される。このようなスキャナ筐体30の仮固定は、例えば、軸36に径方向に出没可能に付勢されたピンを設け、プリンタ筐体20の軸受け部に該ピンと所定角度で係合するピン受け部を形成することにより実現できるが、その他の周知且つ任意の仮固定機構を採用することができる。
これにより、スキャナ筐体30の上端とプリンタ筐体20の外周面との間に隙間が生じるので、使用者は、複合機1の上方から、該隙間へ原稿を挿入することにより、該原稿を傾斜した読取面32a上に位置せしめることができる。読取面32aは開放側、すなわち正面側へ傾斜しているので、使用者は複合機1の正面側から原稿の先端を斜め下方へ落とし込むようにして、上記隙間へ原稿を挿入すれば、該原稿は自重により読取面32aに密着する。
なお、図には示していないが、上記読取面32aの下端には、幅方向に渡ってストッパが設けられており、前述したように、上記隙間から挿入された原稿は、自重により読取面32aに沿って滑り落ち、該原稿の先端がストッパに当接することにより、読取面32aの下端を基準として所定位置に固定される。このように、使用者は、スキャナ筐体30をプリンタ筐体20との隙間を覗き込んで原稿の位置決めを行う必要がなく、原稿の位置決め作業が容易である。また、該原稿は、自重により読取面32aに密着するので、読取面32aと原稿との間に浮き等が生じ難く、イメージスキャナ33による画像読取り精度が向上する。このような傾斜姿勢P1で、イメージスキャナ33を走査することにより、薄手の原稿の画像読取りを行う。
また、スキャナ筐体30を正面側へ開ききると、開放姿勢P2となる。この開放姿勢P2で、本等の厚手の原稿を読取面32a上に載置する。厚手の原稿は重量もあるが、開放姿勢P2ではスキャナ筐体30の上端が床面に接触しているので、厚手の原稿を読取面32a上に載置しても、縦置き型のプリンタ部2が不安定となることはない。また、開放姿勢P2では、読取面32aが複合機1の正面側を向くように傾斜しているので、複合機1の正面側から原稿を読取面32a上の所定位置に位置せしめることが容易である。このような開放姿勢P2で、イメージスキャナ33を走査することにより、厚手の原稿の画像読取りを行う。
なお、本実施の形態で示したスキャナ部3の開閉姿勢は一例であり、例えば、傾斜姿勢P1と開放姿勢P2との間でのみスキャナ筐体30が開閉するようにしても、閉姿勢と開放姿勢P2との姿勢変化のみで、傾斜姿勢P1で仮固定されないようにスキャナ筐体30が開閉されるようにしてもよい。
図4は、本複合機1の電装部品26による制御部8の構成を示すブロック図である。図に示すように、CPU(Central Processing Unit),ROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory)で構成された中央処理部80が、バス81及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)82を介して、プリンタ部2やスキャナ部3の各種センサ及びモータ、操作パネル4、メディア装着部5等とデータ送受信可能に接続されている。また、本複合機1は、操作パネル4からの入力の他、コンピュータ(PC)83と接続されて、該コンピュータ83から送信された画像データや文書データに基づいて、記録用紙に画像や文書を記録することができる。そのために、コンピュータ83とデータを送受信するためのインタフェース(I/F)も備えている。
本複合機1が、メディア装着部5に装着された小型メモリカード84に記録された画像データから画像記録を行う場合は、中央処理部60は、小型メモリカード84に記録された画像データをメディア装着部5を介して読み込み、該画像データをRAMに一時記憶する。ついで、予めROMに格納された制御プログラムに基づいて、RAMに一時記憶された画像データを操作パネル4の液晶ディスプレイにプレビュー表示する。そのプレビュー表示した画像のうち、使用者が選択して画像記録を指示した画像の画像データを印刷データに変換し、印刷処理プログラムに基づいてプリンタ部2の各モータや記録ヘッド等を駆動してプリンタ部2により画像記録を行う。なお、本実施の形態で示した制御部8の構成や、小型メモリカード84から画像データを読み取って印刷する制御方法は一例であり、本発明に係る画像記録装置の制御が本実施の形態に示した制御部8の構成や制御方法に限定されないことは当然である。
図5は、上記メディア装着部5の断面を示したものであり、スロット5bには対応する規格の小型メモリカード52が装着されている。図に示すように、メディア装着部5の各スロット5a,5b,5cは、プリンタ筐体20の側面にむいて開口しており、各スロット5a,5b,5cには、対応する規格の小型メモリカードが複合機1の側方へ抜き差し可能となっている。スロット5a,5b,5cの奥側にはそれぞれ接点53が設けられており、該接点53と小型メモリカードの接点(不図示)とが接触することにより、該小型メモリカードが制御部8と電気的に接続されて画像データを送受信可能となる。
各スロット5a,5b,5cの開口周りの面54は、図に示すように、各スロット5a,5b,5c毎にプリンタ筐体20の側方へ向かって頂部55が突出するようにして縦方向に沿って起伏する波形に形成されている。すなわち、各スロット5a,5b,5cは、その開口が縦長となるように設けられており、その各スロット5a,5b,5cの開口の縦方向の両端付近に頂部55がそれぞれ形成され、該開口の縦方向の略中央に凹陥部56がそれぞれ形成されている。該頂部55及び凹陥部56は、なだらかな曲面で連続しており、これにより、各スロット5a,5b,5cの開口周りの面54が縦方向に沿って連続して起伏する波形となっている。
このように波形に起伏した面54において、プリンタ筐体20の斜め上方へ向いた各上方傾斜面57に、図2に示すように、各スロット5a,5b,5cに装着可能な小型メモリカードの種類の表記58がされている。ここで、上記上方傾斜面57とは、相対的に上側に位置する凹陥部56から、その下側に位置する頂部55へ連続する曲面の一部である。また、表記58は、文字や記号、マーク等の使用者が視覚により認識可能な表示を上方傾斜面57に印字したものである。したがって、例えば、SDメモリカードであれば「SD」、コンパクトフラッシュ(登録商標)であれば「CF」、メモリスティック(登録商標)であれば「m」のような表記58を用いることができる。これにより、複合機1の斜め上方からも側方からも、各上方傾斜面57の表記58を容易に視認することができる。
特に、本複合機1のように縦置き型のものは、卓上のみでなく床上に載置して使用されることが想定されるが、仮に各スロット5a,5b,5cの開口周りの面54が垂直面であれば、各スロット5a,5b,5c付近に対応する小型メモリカードを表す表示があったとしても、使用者は、目の位置が各スロット5a,5b,5cの側方となるように屈み込んだり、頭を深く下げなければ、いずれのスロット5a,5b,5cが装着しようとしている小型メモリカードに対応したものであるかを判断することができない。本複合機1によれば、各スロット5a,5b,5cに対応してプリンタ筐体20の斜め上方へ向いた各上方傾斜面57に、各スロット5a,5b,5cに装着可能な小型メモリカードの種類の表記58がされているので、複合機1を床上に設置しても、目の位置が各スロット5a,5b,5cの側方となるように屈み込んだりすることなく、複合機1の斜め上方から上記表記58を視認して、装着しようとしている小型メモリカードに対応するスロットを各スロット5a,5b,5cから簡易且つ迅速に判断できる。
また、波形に起伏した面54において、各スロット5a,5b,5cの各開口の縦方向の略中央を凹陥部56とすることにより、小型メモリカードの略中央部を持って各スロット5a,5b,5cに挿抜することができる。詳細には、図5に示すように、スロット5bに装着された薄型平板状の小型メモリカード52は、プリンタ筐体20に対して縦長となるように開口したスロット5bに合致するように、その表裏面を縦方向とした姿勢で該スロット5b内に挿入されている。そして、小型メモリカード52がスロット5b内で接点53(不図示)と接続した状態では、該小型メモリカード52の開口側の端面は、スロット5bの開口周りの面54と略同一面となるが、上記凹陥部56により、小型メモリカード52の開口側の端部の略中央が、プリンタ筐体20の側方へ露出している。したがって、使用者は、その露出した小型メモリカード52の端部略中央を持って、該小型メモリカード52を側方へ引き抜くことができる。逆に、小型メモリカード52をスロット5bへ挿入する際にも、開口側の端部の略中央を持った状態でスロット5bへ押し入れることができる。このように、上記凹陥部56により、各スロット5a,5b,5cへの小型メモリカードの挿抜が容易となる。また、小型メモリカードを各スロット5a,5b,5cから引き抜くために、各スロット5a,5b,5c内に装着された小型メモリカードを開口から側方へ突出させるような付勢機構を設ける必要がないので、メディア装着部5の構造が簡易となり、装置の小型化に貢献する。
このように、本複合機1によれば、プリンタ筐体20の側面に設けられたメディア装着部5のスロット5a,5b,5cの開口周りの面54を、各スロット毎にプリンタ筐体20の側方へ向かって頂部56が突出するようにして縦方向に沿って起伏する波形に形成し、各上方傾斜面57に、各スロット5a,5b,5cに装着可能な小型メモリカードの種類の表記58をしたので、複合機1の斜め上方からも側方からも該表記58を容易に視認することができ、小型メモリカードを装着可能なスロットを各スロット5a,5b,5cから簡易且つ迅速に判断できるという利点がある。
なお、本実施の形態では、メディア装着部5がスロット5a,5b,5cの3種のスロットを有し、各スロット5a,5b,5cのすべてが、その開口が縦長となるように設けられたものとしたが、本発明に係るメディア装着部のスロット数は3種に限定されるものではなく増減可能であり、また、メディア装着部のすべてのスロットを、その開口が縦長となるように設ける必要はなく、例えば、幅の小さな小型メモリカードに対応する一部のスロットの開口を横長としてもよい。