JP4453160B2 - ペルオキシエステル基を有するポリジメチルシロキサン化合物及びその用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定構造のペルオキシエステル基を有するポリジメチルシロキサン化合物、それを有効成分とする重合開始剤およびビニル系重合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
分子の末端にペルオキシエステル基を有するポリジメチルシロキサン化合物は特開昭62−10137号公報や特開昭63−41536号公報に開示されている。
【0003】
また、特開昭63−57642号公報や特開昭63−57643号公報では分子の末端にペルオキシエステル基を有するポリジメチルシロキサン化合物をビニル系単量体の重合開始剤に用いてポリジメチルシロキサンを分子内に有する重合体(以下、ポリジメチルシロキサンブロック共重合体と略記)を得ている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これら従来技術で用いられている化合物はペルオキシエステル基とポリジメチルシロキサンとの間のメチレン鎖長が3〜10の範囲であり、かついずれもその分解温度が10時間半減期温度で92.8〜111.0℃と比較的高いものであった。
そのためにこれらを重合開始剤として用いて効率よく重合を行うには重合温度を高く設定する必要があり、エネルギー的に不利であった。
【0005】
また、例えば(メタ)アクリル系単量体などの重合のように比較的低い温度で重合を行う場合に、重合が完結するまでに長時間を要するという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、ポリジメチルシロキサンブロック共重合体を製造することが可能であって、かつ分解温度の比較的低いペルオキシエステル基を有するポリジメチルシロキサン化合物、さらにビニル系単量体の重合開始剤として用いたとき、重合の高速化、即ち、塩化ビニル系単量体などの重合のように比較的低温度で重合させる場合においても充分な重合速度を発現できる重合開始剤及びビニル系重合体の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の問題点を解決する方法を研究した結果、ペルオキシエステル基とポリジメチルシロキサンが特定の位置関係にある場合において、ペルオキシエステル基の分解温度を特異的に低下させるのに有効であることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、第1の発明は、下記一般式で示されるペルオキシエステル基を有するポリジメチルシロキサン化合物である。
【0008】
【化2】
【0009】
(式中、Rは炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐のアルキル基、シクロヘキシル基またはフェニル基である。nは2以上の整数である。)
【0010】
第2の発明は、第1の発明のペルオキシエステル基を有するポリジメチルシロキサン化合物を有効成分とする重合開始剤である。
【0011】
第3の発明は、重合開始剤を用いてビニル系単量体を重合させるビニル系重合体の製造方法において、重合開始剤が第1の発明のペルオキシエステル基を有するポリジメチルシロキサン化合物であり、重合させる温度が60〜160℃の温度範囲であることを特徴とするビニル系重合体の製造方法である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について更に詳細に説明する。
本発明のペルオキシエステル基を有するポリジメチルシロキサン化合物は、上記一般式において、Rが炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐のアルキル基、シクロヘキシル基またはフェニル基であり、平均重合度が2以上のポリジメチルシロキサン化合物である。Rは上記の置換基であれば好ましく、さらに合成上の観点と経済性から炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐のアルキル基とすることが好ましい。ペルオキシエステル基を有するポリジメチルシロキサン化合物として、具体的には、例えばα,ω−ビス(t−ブチルペルオキシカルボニルエチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(1,1−ジメチルプロピルペルオキシカルボニルエチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(1,1−ジメチルブチルペルオキシカルボニルエチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシカルボニルエチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(クミルペルオキシカルボニルエチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(1,1−ジメチル−1−シクロヘキシルメチルペルオキシカルボニルエチル)ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。
本発明のペルオキシエステル基を有するポリジメチルシロキサン化合物は、クロロアシル基を有するポリジメチルシロキサン化合物(A)と第3級ヒドロペルオキシド(B)との混合物を塩基性触媒下で反応させることにより得られる。
前記クロロアシル基を有するポリジメチルシロキサン化合物(A)は下記の一般式(A)で表される。
【0013】
【化3】
【0014】
(ここで、nは2以上の整数である。)
【0015】
そして、クロロアシル基を有するポリジメチルシロキサン化合物(A)は下記の一般式(C)の化合物で表されるカルボキシル基を有するポリジメチルシロキサン化合物(C)から誘導することができる。
【0016】
【化4】
【0017】
本発明のペルオキシエステル基を有するポリジメチルシロキサン化合物のペルオキシエステル基とポリジメチルシロキサンとの間のメチレン鎖長は2に限定されている。ペルオキシエステル基がポリジメチルシロキサンに特定鎖長のメチレン鎖を介して結合していることが、本発明の必須条件であり、これが分解温度の低い特性を有する原因となっている。
【0018】
本発明のペルオキシエステル基を有するポリジメチルシロキサン化合物はnの値によって、分解温度が低下するという効果が損なわれることはないため、nの値は特に限定されない。
しかしながら、ポリジメチルシロキサンとしての特有の機能を発揮させるためにはnは平均値で2以上が好ましい。一方、nの値が大きくなるほど粘度が増加するため、作業性や取り扱い上の観点からnの値は平均値で200以下であることが好ましい。
【0019】
次に本発明のペルオキシエステル基を有するポリジメチルシロキサン化合物の製造手順および製造条件をさらに詳細に説明する。
まず、カルボキシル基を有するポリジメチルシロキサン化合物(C)を、従来から知られている方法により塩素化剤を用いて塩素化し、クロロアシル基を有するポリジメチルシロキサン化合物(A)を製造する。塩素化反応は公知の酸塩化物の合成の場合とほぼ同様の反応条件で差し支えない。塩素化剤としては例えば塩化チオニル、三塩化リン、五塩化リンなどが挙げられる。作業性の面から塩化チオニルが好ましい。
【0020】
反応温度は20〜80℃が好ましく、40〜70℃がさらに好ましい。反応温度が20℃よりも低いと反応速度が遅くなるために製造に時間がかかり、80℃よりも高いと急激な反応が起こるために制御が困難となる傾向にある。
【0021】
反応時間は1〜5時間が好ましい。反応時間が1時間より短いと十分に反応が進行しない場合があり、5時間より長くなると生成物の着色が著しくなる傾向があり、品質上好ましくない。
【0022】
次いで、得られたクロロアシル基を有するポリジメチルシロキサン化合物(A)を塩基性触媒下で下記の一般式(B)に表される第3級ヒドロペルオキシド(B)と反応させることにより、ペルオキシエステル基を有するポリジメチルシロキサン化合物が得られる。
【0023】
【化5】
【0024】
(式中、Rは炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐のアルキル基、シクロヘキシル基またはフェニル基である。)
【0025】
塩基性触媒としては公知のペルオキシエステル基を有する化合物の合成に使用される塩基性触媒であれば特に差し支えない。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ピリジン等が挙げられる。反応性の良さから水酸化カリウムが好ましい。
【0026】
前記第3級ヒドロペルオキシド(B)としては、例えばt−ブチルヒドロペルオキシド、1,1−ジメチルプロピルヒドロペルオキシド、1,1−ジメチルブチルヒドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルヒドロペルオキシドなどが挙げられる。合成上の観点と経済性からt−ブチルヒドロペルオキシドや1,1−ジメチルブチルヒドロペルオキシドが好ましい。
【0027】
反応条件は公知のペルオキシエステル化合物の合成の場合と同等の条件で差し支えない。反応温度は通常−5〜20℃、好ましくは0〜15℃である。反応温度が−5℃より低いと反応速度が遅いため製造に時間がかかり、20℃を越えると反応を制御することが困難になる傾向にある。
反応時間は通常0.1〜3時間、好ましくは0.5〜2時間である。反応時間が0.1時間よりも短いと十分に反応が進行せず、3時間を越えると生成したペルオキシドが分解し易くなる傾向にある。
【0028】
クロロアシル基を有するポリジメチルシロキサン化合物(A)に対する第3級ヒドロペルオキシド(B)のモル比は2〜3が好ましい。モル比が2より小さいと充分に反応が進行せず、3より大きいと経済的に不利となる傾向にある。
【0029】
反応を行う際は作業性の改善を目的として、例えばジエチルエーテル、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラヒドロフラン、クロロホルム等の有機溶剤を用いることは差し支えない。
【0030】
反応条件によっては分子の片方だけにペルオキシエステル基が導入されるポリジメチルシロキサン化合物も生成する。これらは本発明の分解温度が低いという効果を損なうものではないため、含まれていても差し支えないが、それらの含有量はより少ない方が好ましい。
【0031】
第2の発明である重合開始剤は、第1の発明のペルオキシエステル基を有するポリジメチルシロキサン化合物を有効成分とするものである。
また第3の発明は、重合開始剤を用いてビニル系単量体を重合させるビニル系重合体の製造方法において、重合開始剤が第1の発明のペルオキシエステル基を有するポリジメチルシロキサン化合物であり、重合させる温度が特定の範囲であることを特徴とするビニル系重合体の製造方法である。
【0032】
重合に使用されるビニル系単量体としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系単量体、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等のアクリル系単量体、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリル系単量体、フマル酸エステル、マレイン酸エステル、アクリロニトリル、N−フェニルマレイミド、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル類等が挙げられる。これらは、一種または二種以上が適宜組み合わせて用いられる。
【0033】
また、それらのビニル系単量体にポリブタジエンゴム、スチレン/ブタジエンブロック共重合体ゴム、エチレン/プロピレン共重合体ゴム、エチレン/プロピレン/ジエン共重合体ゴム等のゴムを溶解させたものも使用される。ゴム成分と上記単量体から得られる樹脂としては、例えばスチレンとブタジエン含有ゴムとからなる耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)、スチレン/アクリロニトリルとブタジエン含有ゴムとからなる耐衝撃性スチレン・アクリロニトリル樹脂(ABS)等が挙げられる。
【0034】
本発明の重合開始剤を使用する際、公知の重合開始剤を併用することもできる。併用される公知の重合開始剤としては、例えば、ラウロイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド類、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジt−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパンなどのペルオキシケタール類、t−ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1−ジメチルブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルペルオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネートなどのペルオキシモノカーボネート類、t−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシラウレート、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、1,1−ジメチルブチルペルオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、ジt−ブチルペルオキシイソフタレート、ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサヒドロテレフタレート、
【0035】
α,ω−ビス(t−ブチルペルオキシカルボニルプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(t−ブチルペルオキシカルボニルデシル)ポリジメチルシロキサンなどのペルオキシエステル基を有するポリジメチルシロキサン化合物(特開昭62−10137号公報に記載などのペルオキシエステル類)、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジクミルペルオキシドなどのジアルキルペルオキシド類が挙げられる。
【0036】
さらに公知の連鎖移動剤を併用することもできる。併用される連鎖移動剤としては、例えばn−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、α−メチルスチレン二量体などが挙げられる。
【0037】
本発明の重合開始剤としての添加量は、ビニル系単量体100重量部に対して、ペルオキシエステル基を有するポリジメチルシロキサン化合物0.001〜50重量部が好ましく、目的とする用途及び重合方法に応じて適宜選択することができる。ペルオキシエステル基を有するポリジメチルシロキサン化合物が0.001重量部より少ないと十分に重合が進行しなくなり、50重量部を越えると得られる樹脂の強度が低下するなどの弊害が生じやすくなる傾向にある。
【0038】
重合温度は通常60〜160℃であり、80〜140℃が好ましい。重合温度が60℃未満では重合速度が低下する。160℃を越える温度では重合速度が大きくなり、その調節が困難になるとともに、非常に短時間で多量の重合開始ラジカルが生成するため、一次ラジカル停止等のラジカル同士の副反応が起こる結果、重合開始効率が低下する傾向にある。
【0039】
重合方法としては塊状重合法、溶液重合法または懸濁重合法が採用される。また、バッチ式重合法または連続式重合法のいずれの重合法であってもよい。
溶液重合法において用いられる溶剤としては、例えばエチルベンゼン、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、イソブタノール、n−ブタノール、エチルセロソルブ、シクロヘキシルアルコール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸n−ブチル等のエステル類、エーテル類が挙げられる。
【0040】
【実施例】
以下に本発明を参考例、実施例及び比較例によってさらに具体的に説明する。
なお、実施例、比較例における諸物性は次の方法により測定した。
(1)活性酸素量:ヨウ素滴定法により求めた。
(2)ペルオキシ結合の半減期10時間を得る温度(10時間半減期温度):ペルオキシ基の初期濃度を0.05モル・dm-3のベンゼン溶液とし、窒素雰囲気下で一定温度で熱分解させたのち、(1)の活性酸素量を測定することで、ペルオキシ基の分解量を求め、10時間半減期温度を計算した。
(3)数平均分子量・重量平均分子量:(株)島津製作所製LC−6Aに東ソー(株)製分離カラム TSKgel GMHXLを装着したゲルパーミエーションクロマトグラフ分析装置を用いて測定した。
【0041】
(4)赤外線吸収スペクトル:日本分光(株)製FT/IR−610を使用して吸収スペクトルを測定した。
(5)核磁気共鳴スペクトル:日本電子(株)製GSX FT NMR スペクトロメーター JNM−GSX270を使用し、重クロロホルム溶媒を用いてトリメチルシランを基準にしたプロトンNMRスペクトルを測定した。
【0042】
参考例(クロロアシル基を有するポリジメチルシロキサン化合物の合成)
撹拌機を備えた四ツ口フラスコにカルボキシル変性ポリジメチルシロキサン(信越化学工業(株)製、商品名:変性シリコーンオイル X−22−162C)290.0g(0.1mol)と塩化チオニル42.8g(0.36mol)を導入した。これに乾燥した窒素ガスを吹き込みながら、反応温度50℃で3時間反応させた。
次いで45〜50℃で300〜2000Paの減圧度に保って、3時間かけて反応系内に残存する塩化チオニルを除去したところ淡黄色透明液体のクロロアシル基を有するポリジメチルシロキサン化合物287.2g(純度98.7%、収率96.5%)を得た。
【0043】
実施例1(ペルオキシエステル基を有するポリジメチルシロキサン化合物の合成)
撹拌機を備えた四ツ口フラスコにt−ブチルヒドロペルオキシド(日本油脂(株)製、商品名:パーブチルH−69、69%水溶液)12.0g(0.092モル)と15%水酸化カリウム水溶液35.9g(0.096モル)とからt−ブチルヒドロペルオキシドのカリウム塩を調製した。参考例で得たクロロアシル基を有するポリジメチルシロキサン202.9g(0.04モル)を撹拌下で0〜10℃に保ちながら滴下した。同じ温度で1時間撹拌した後、テトラヒドロフラン250gを加えて、水層と油層に分離した。
【0044】
油層を取り出し、1%水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、さらに飽和食塩水で油層が中性になるまで洗浄した。無水硫酸マグネシウムで油層を乾燥させ、濾過によって固体を取り除き、減圧下でテトラヒドロフランを除去した。その結果175.6gの淡黄色粘性物を得た。
得られた淡黄色粘性物について、活性酸素量、10時間半減期温度、数平均分子量、赤外線吸収スペクトル、核磁気共鳴スペクトルの測定をしたところ、下記に示す特性値が得られ、下記構造式で表されるペルオキシエステル基を有するポリジメチルシロキサン化合物(以下、SiBPE2と略記)と確認された。
【0045】
【化6】
【0046】
(ここで、(a)から(d)は、核磁気共鳴スペクトル法にて帰属されるプロトンを示す。)
【0047】
活性酸素量:0.49%
10時間半減期温度:85.1℃
数平均分子量:4,760
赤外線吸収スペクトル(単位:cm-1):2984(C−H)、1790(C=O)、1270(Si−C)、1080(Si−O)
核磁気共鳴スペクトル(単位:ppm):0.07〜0.15(372H、d)、0.95(4H、c)、1.33(18H、a)、2.43(4H、b)。
【0048】
比較例1
ポリジメチルシロキサンとペルオキシエステル基の間のメチレン鎖長が10である以外は実施例1で得られた化合物と構造が同じであるペルオキシエステル基を有するポリジメチルシロキサン化合物(以下、SiBPE10と略記)の10時間半減期温度を測定したところ、98.0℃であった。
【0049】
実施例2(ペルオキシエステル基を有するポリジメチルシロキサン化合物の合成)
実施例1においてt−ブチルヒドロペルオキシド12.0gの代わりに1,1−ジメチルブチルヒドロペルオキシド(純度:97%)11.7gを用いた他は、実施例1に準じて合成を行った。その結果171.5gの淡黄色粘性物を得た。
得られた淡黄色粘性物について、活性酸素量、10時間半減期温度、数平均分子量、赤外線吸収スペクトル、核磁気共鳴スペクトルの測定をしたところ、下記に示す特性値が得られ、下記構造式で表されるペルオキシエステル基を有するポリジメチルシロキサン化合物(以下、SiHPE2と略記)と確認された。
【0050】
【化7】
【0051】
(ここで、(a)から(g)は、核磁気共鳴スペクトル法にて帰属されるプロトンを示す。)
【0052】
活性酸素量:0.47%
10時間半減期温度:81.6℃
数平均分子量:4,810
赤外線吸収スペクトル(単位:cm-1):2984(C−H)、1790(C=O)、1270(Si−C)、1080(Si−O)
核磁気共鳴スペクトル(単位:ppm):0.07〜0.15(372H、g)、0.92(6H、a)、0.95(4H、f)、1.28(12H、d)、1.55(4H、b)、1.59(4H、c)、2.43(4H、e)。
【0053】
比較例2
ポリジメチルシロキサンとペルオキシエステル基の間のメチレン鎖長が10である以外は実施例2で得られた化合物と構造が同じであるペルオキシエステル基を有するポリジメチルシロキサン化合物(SiHPE10と略記)の10時間半減期温度を測定したところ、94.6℃であった。
【0054】
実施例3(スチレンの塊状重合)
ペルオキシエステル基を有するポリジメチルシロキサン化合物(SiBPE2)を0.005mol・dm-3の濃度に溶解したスチレンを内径4mm、長さ300mmのガラスアンプルに2cm3入れ、窒素置換後封管した後、100℃の恒温槽に浸して8時間塊状重合を行った。重合後に重合転化率、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を求めた。その結果を表1に示した。
【0055】
実施例4(スチレンの塊状重合)
実施例3においてSiBPE2の代わりにペルオキシエステル基を有するポリジメチルシロキサン化合物(SiHPE2)を用いた他は、実施例3に準じて重合を行った。その結果を表1に示した。
【0056】
比較例3、4(スチレンの塊状重合)
実施例3においてSiBPE2の代わりにペルオキシエステル基を有するポリジメチルシロキサン化合物(比較例3:SiBPE10、比較例4:SiHPE10)を用いた他は、実施例3に準じて重合を行った。その結果を表1に示した。
【0057】
【表1】
【0058】
表1の実施例3、4と比較例3、4との比較からわかるように、実施例3、4の本発明のペルオキシエステル基を有するポリジメチルシロキサン化合物を重合開始剤として用いたものは、比較例3、4に比べて、分解温度が低いために重合転化率が高く、重合の高速化が達成されている。
【0059】
実施例5、6(メチルメタクリレートの溶液重合)
ペルオキシエステル基を有するポリジメチルシロキサン化合物(実施例5:SiBPE2、実施例6:SiHPE2)10重量部、ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサヒドロテレフタレート1重量部、メチルメタクリレート24重量部、トルエン65重量部を環流冷却器及び撹拌機を備えたフラスコに導入し、窒素雰囲気中95℃で3時間重合させた後、さらに105℃で4時間重合させた。得られた重合物の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)を求めた。その結果を表2に示した。
【0060】
比較例5、6(メチルメタクリレートの溶液重合)
実施例5においてSiBPE2の代わりにペルオキシエステル基を有するポリジメチルシロキサン化合物(比較例5:SiBPE10、比較例6:SiHPE10)を用いた他は、実施例5に準じて重合を行った。その結果を表2に示した。
【0061】
【表2】
【0062】
表2の実施例5、6と比較例5、6との比較からわかるように、実施例5、6の本発明のペルオキシエステル基を有するポリジメチルシロキサン化合物を重合開始剤として用いたものは、重合開始剤の分解温度が適切であるために、メチルメタクリレートの転化率が高く、重合開始剤が有効に機能していることがわかった。
【0063】
【発明の効果】
第1に、本発明によるペルオキシエステル基を有するポリジメチルシロキサン化合物は、従来のものに比較して分解温度が低く、ビニル系単量体のラジカル重合開始剤として機能するにふさわしい分解温度を有している。
第2に、この分解温度の低いペルオキシエステル基を有するポリジメチルシロキサン化合物を重合開始剤として用いてビニル系単量体の重合を行うと、速やかに重合を完結することができるため工業的に有利である。
第3に、従来まで困難とされていた(メタ)アクリル系単量体、塩化ビニル系単量体、酢酸ビニル系単量体の重合にも使用できる。
第4に、ペルオキシエステル基を有するポリジメチルシロキサン化合物を用いて重合を行うことで、工業的に有利にポリジメチルシロキサンブロック共重合体を得ることができる。即ち、重合開始剤がポリジメチルシロキサン構造を有しているため、それを用いてビニル系単量体を重合することにより、ポリジメチルシロキサンブロック共重合体が得られる。そしてこのポリジメチルシロキサンブロック共重合体はポリジメチルシロキサンが樹脂と化学結合しているため、ポリジメチルシロキサン基部分が有する特有の機能の持続性が良い。
第5に、ゴムの架橋や樹脂の硬化にも使用できる。
Claims (3)
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