JP4450480B2 - 累進多焦点レンズシリーズ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は累進多焦点レンズに関し、さらに詳細には、眼の調節力の補助として使用する累進多焦点レンズに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
老視の矯正には、単焦点レンズや、バイフォーカルレンズや、累進多焦点レンズなどが用いられている。これらのレンズの中でも特に累進多焦点レンズでは、遠方視時と近方視時とで眼鏡の掛け替えや掛け外しを必要とせず、また外観的にもバイフォーカルレンズのような境目がない。従って、近年では、累進多焦点レンズに対する需要がかなり高まっている。
【0003】
累進多焦点レンズは、眼の調節力が衰退して近方視が困難になった場合の調節力の補助用眼鏡レンズである。一般に、累進多焦点レンズでは、装用時においてレンズの上方に位置する遠用視矯正領域(以下、「遠用部」と言う)と、下方に位置する近用視矯正領域(以下、「近用部」と言う)と、双方の領域の間において連続的に屈折力が変化する累進領域(以下、「中間部」と言う)とを備えている。なお、本発明において「上方」、「下方」、「水平」および「垂直」等といった表記は、装用時のレンズにおける位置関係を示すものであって、例えば遠用部の下方とは遠用部の領域内にあって中間部に近い領域を示す。
【0004】
図1は、対称に設計された累進多焦点レンズの領域区分の概要を示す図である。図1に示す累進多焦点レンズは、装用時において上方に位置する遠用部Fと、下方の近用部Nと、双方の領域の間において連続的に屈折力が変化する中間部Pとを備えている。レンズ面の形状に関しては、レンズ面のほぼ中央を上方から下方にかけて鉛直に走る子午線に沿った断面と物体側(眼とは反対側)レンズ面との交線MM’がレンズの加入度などの仕様を表すための基準線として用いられ、レンズの設計においても重要な基準線として用いられている。このように対称に設計された累進多焦点レンズでは、遠用部Fの遠用中心OF、フィッティングポイントである遠用アイポイントE、レンズ面の幾何中心OGおよび近用中心ONは、基準となる中心線MM’上にある。
【0005】
図2は、レンズの装用状態において近用中心ONが鼻側に寄ることを考慮して、近用部Nを非対称に配置した累進多焦点レンズ(以下、「非対称型累進多焦点レンズ」と言う)の領域区分の概要図である。図2に示すような非対称型累進多焦点レンズにおいても、遠用部Fの遠用中心OF、遠用アイポイントE、レンズ面の幾何中心OGおよび近用中心ONを通る断面と物体側レンズ面との交線からなる中心線MM’が基準線として用いられる。
【0006】
本発明においては、これらの基準線を総称して「主子午線曲線」という。遠用部Fの中心および近用部Nの中心は、レンズ度数を測定する際に基準になる位置であり、遠用測定基準点を遠用中心OFと呼び、近用測定基準点を近用中心ONと呼ぶ。さらに、遠用中心OFにおける面平均屈折力をベースカーブとし、遠用中心OFを通る透過光線の平均球面度数を、遠用部における基準の平均球面度数(以下、「遠用度数」と言う)とする。通常、近用中心ONは、近用アイポイントに一致する。ただし、ここで言う遠用中心、近用中心とは、各領域における幾何的な中心ではなく、レンズの測定時及び装用時における機能的な中心を意味する。
【0007】
本発明において、面平均屈折力(以下、「面屈折力」と言う)および面非点隔差(以下、「非点隔差」と言う)は、累進多焦点面上の任意の点における最大主曲率をψmaxとし、最小主曲率をψminとし、レンズの屈折率をnとしたとき、次の式(a)および(b)でそれぞれ表される。
面屈折力=(ψmax+ψmin)×(n−1)/2 (a)
非点隔差=(ψmax−ψmin)×(n−1) (b)
【0008】
また、本発明において、平均球面度数および非点収差は、累進多焦点面上の任意の点を透過した光線における最大の球面度数をDmaxとし、最小の球面度数をDminとしたとき、次の式(c)および(d)でそれぞれ表される。
球面度数=(Dmax+Dmin)/2 (c)
非点収差=(Dmax−Dmin) (d)
【0009】
なお、本発明では、平均球面度数を、以下、「球面度数」と言う。また、累進多焦点レンズでは、レンズのほぼ幾何中心を通る主子午線曲線MM’上で、遠用中心OFから近用中心ONに向かって連続的にプラスの面屈折力(または球面度数)が付加され、この付加面屈折力(または付加球面度数)がほぼ最大になる近用中心ONの面屈折力(または球面度数)から遠用中心OFの面屈折力(または球面度数)を引いた値を、累進多焦点レンズの加入度と呼ぶ。累進多焦点レンズでは、遠用部F、中間部Pおよび近用部Nのすべての領域において、明視域が広く、ゆれ、ゆがみ等が少なく、装用し易いレンズが理想的である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の累進多焦点レンズでは、一般に、累進多焦点面(屈折面)の光学的な特性に関して主に議論されてきた。即ち、累進多焦点レンズの性能は、例えば累進多焦点面における面屈折力の分布や非点隔差の分布等で評価されることが多かった。そのため、設計者は、累進多焦点面において、用途に合わせた面屈折力の分布を得ること、所定の値以下の非点隔差を有する領域、いわゆる明視域と呼ばれる領域を広く確保すること、さらに眼を動かして見た時の像の流れやゆれ、歪みなどを考慮して、非点隔差の最大値を極力小さくすること等を、主な目的としてきた。
【0011】
しかしながら、実際の眼鏡レンズでは、レンズの累進多焦点面の光学的な特性と、装用者がレンズを使用した時のレンズの光学的な特性とは、必ずしも一致しない。そのため、近年では、装用者が実際にレンズを使用した時の光学性能をより向上させるために、累進多焦点面の光学的な特性だけでなく、装用状態により近い状態での光学性能の評価、即ちレンズを透過した光線による光学性能の評価が行われるようになってきている。
【0012】
一般に、レンズを透過した光線の非点収差が最小になるようなレンズ曲率とレンズ度数との関係は、例えばチェルニングの楕円等から得ることができる。即ち、レンズの両面の曲率として、このチェルニングの楕円によって得られる最適な曲率の組み合わせを選択することによって、レンズの周辺部における非点収差の発生を抑えることができることはよく知られている。しかしながら、このチェルニングの楕円によって得られる最適な曲率の組み合わせを用いた場合、ベースカーブの曲率が大きく、レンズの厚さも大きくなる傾向がある。このため、近年の累進多焦点レンズでは、レンズの薄肉化や外観上および製造上の都合から、上述の最適な曲率の組み合わせによって得られる曲率よりも小さい曲率をベースカーブとして選択することが主流となっている。
【0013】
そのため、累進多焦点面における面屈折力の分布や非点隔差の分布と、レンズを透過して装用者の眼に入射する光線の球面度数の分布や非点収差の分布との間で傾向が等しくなるのは、多くの場合、物体からの光線がレンズ面に対して垂直に近い角度で入射する領域、すなわちレンズのフィッティングポイント付近など、レンズの光軸近傍の領域に限られる。それに対し、レンズの光軸から離れた位置を介して装用者の眼に入射する光線はレンズ面に対して斜めに入射することになるため、レンズ面における非点隔差がほぼ零である位置を通る光線についてもレンズを透過する時には非点収差が発生し、且つ基準となる遠用度数に対して度数がずれた状態で装用者の眼に入射することになる。この傾向は、レンズの処方面の曲率や中心厚等によって異なる上、レンズの周辺部へ向かうに従ってより大きくなる。
【0014】
つまり、複数のベースカーブを有する累進多焦点レンズでは、各ベースカーブに対して累進多焦点面の面屈折力や非点隔差の分布を等しく設計した場合、透過光線の球面度数の分布や非点収差の分布は、それぞれのベースカーブで実質的に異なったものとなってしまう。従って、複数のベースカーブを有し、装用状態における球面度数分布や非点収差分布等の透過光線の光学的な特性が複数のベースカーブに対して等しい一連の累進多焦点レンズを得るためには、それぞれのベースカーブにおける製作範囲を考慮して累進多焦点面を最適化した設計が必要となってくる。
【0015】
最近では、累進多焦点レンズにおいて、これら透過光による光学性能の評価がなされた従来技術が提案されている。しかしながら、それらの従来技術では、非点収差が所定の量以下の領域、具体的には非点収差が0.50ディオプター以下である領域を明視域と規定し、この明視域を広く確保することのみが議論されているのがほとんどである。すなわち、従来技術では、球面度数の分布に関する最適化がほとんど議論されていない。
【0016】
明視域を定義する基準として、非点収差を小さい量に抑えることは、重要且つ必要である。しかしながら、日常生活において特に広い視野を要求される遠用部に関しては、非点収差の大小のみで明視域を定義するのは十分であるとは言えない。即ち、処方による遠用度数から大きく球面度数がズレた領域では、例え非点収差が一般に明視域と定義されている所定量以下であっても、度数ズレによる像のボケが生じるため、装用者は遠方視において対象物をはっきりと見ることができなくなる。遠方視を行うための遠用部における度数ズレによる影響は、近方視を行うための近用部における度数ズレによる影響よりも大きい。このため、遠用部では、近用部におけるよりも、所定の遠用度数からの度数ズレを考慮して設計を行うことは非常に重要である。
【0017】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたものであり、レンズの基本的な仕様がほぼ等しくなるように設計された、複数のベースカーブを有する一連の累進多焦点レンズにおいて、すべてのベースカーブに対して装用上での光学的な特性をほぼ等しくすることができ、装用状態における光学性能を良好に設定することのできる累進多焦点レンズを提供することを目的とする。本発明は、特に遠用部において、非点収差が小さく且つ度数ズレによる像ボケの少ない明視域を広く確保することのできる累進多焦点レンズを提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明の第1発明では、少なくともレンズの一方の面に、レンズの屈折面を鼻側領域と耳側領域とに分割する主子午線曲線に沿って、遠景に対応する遠用視矯正領域と、近景に対応する近用視矯正領域と、前記遠用視矯正領域と前記近用視矯正領域との間において両領域の面の屈折力を連続的に接続する累進領域とを備え、レンズの基本的な仕様がほぼ等しくなるように設計された、複数のベースカーブを有する一連の累進多焦点レンズであって、
前記複数のベースカーブから選択された第1ベースカーブBCLを有する第1累進多焦点レンズにおいて、前記遠用視矯正領域における累進多焦点面上の任意の点の面平均屈折力をPfLとし、PfL−BCL≦0.50ディオプターを満足する領域の面積をSpLとし、
前記第1ベースカーブBCLよりも曲率が実質的に小さく且つ前記複数のベースカーブから選択された第2ベースカーブBCSを有し、前記第1累進多焦点レンズの加入度と実質的に同じ加入度を有する第2累進多焦点レンズにおいて、前記遠用視矯正領域における累進多焦点面上の任意の点の面平均屈折力をPfSとし、PfS−BCS≦0.50ディオプターを満足する領域の面積をSpSとしたとき、
SpL>SpS (1)
の条件を満足することを特徴とする累進多焦点レンズを提供する。
【0019】
本発明の第2発明では、少なくともレンズの一方の面に、レンズの屈折面を鼻側領域と耳側領域とに分割する主子午線曲線に沿って、遠景に対応する遠用視矯正領域と、近景に対応する近用視矯正領域と、前記遠用視矯正領域と前記近用視矯正領域との間において両領域の面の屈折力を連続的に接続する累進領域とを備え、レンズの基本的な仕様がほぼ等しくなるように設計された、複数のベースカーブを有する一連の累進多焦点レンズであって、
前記複数のベースカーブから選択された第1ベースカーブBCLを有する第1累進多焦点レンズにおいて、前記遠用視矯正領域における面非点隔差が0.50ディオプター以下である領域の面積をSaLとし、
前記第1ベースカーブBCLよりも曲率が実質的に小さく且つ前記複数のベースカーブから選択された第2ベースカーブBCSを有し、前記第1累進多焦点レンズの加入度と実質的に同じ加入度を有する第2累進多焦点レンズにおいて、前記遠用視矯正領域における面非点隔差が0.50ディオプター以下である領域の面積をSaSとしたとき、
SaL<SaS (2)
の条件を満足することを特徴とする累進多焦点レンズを提供する。
【0020】
本発明の第3発明では、少なくともレンズの一方の面に、レンズの屈折面を鼻側領域と耳側領域とに分割する主子午線曲線に沿って、遠景に対応する遠用視矯正領域と、近景に対応する近用視矯正領域と、前記遠用視矯正領域と前記近用視矯正領域との間において両領域の面の屈折力を連続的に接続する累進領域とを備え、レンズの基本的な仕様がほぼ等しくなるように設計された、複数のベースカーブを有する一連の累進多焦点レンズであって、
前記複数のベースカーブから選択された第1ベースカーブBCLを有する第1累進多焦点レンズにおいて、前記遠用視矯正領域における累進多焦点面上の任意の点の面平均屈折力をPfLとし、PfL−BCL≦0.50ディオプターを満足する領域の面積をSpLとし、前記遠用視矯正領域における面非点隔差が0.50ディオプター以下である領域の面積をSaLとし、
前記第1ベースカーブBCLよりも曲率が実質的に小さく且つ前記複数のベースカーブから選択された第2ベースカーブBCSを有し、前記第1累進多焦点レンズの加入度と実質的に同じ加入度を有する第2累進多焦点レンズにおいて、前記遠用視矯正領域における累進多焦点面上の任意の点の面平均屈折力をPfSとし、PfS−BCS≦0.50ディオプターを満足する領域の面積をSpSとし、前記遠用視矯正領域における面非点隔差が0.50ディオプター以下である領域の面積をSaSとしたとき、
SpL>SpS (1)
SaL<SaS (2)
の条件を満足することを特徴とする累進多焦点レンズを提供する。
【0021】
第1発明〜第3発明の好ましい態様によれば、前記累進多焦点レンズの幾何中心OGよりも上方に位置する領域において、
前記第1ベースカーブBCLを有する第1累進多焦点レンズの面非点隔差が0.50ディオプターである等面非点隔差曲線上の任意の点をMLとし、前記主子午線曲線から前記任意の点MLまでの水平方向の距離がx(mm)のときの前記幾何中心OGから前記任意の点MLまでの鉛直方向の高さをhLとし、
前記第2ベースカーブBCSを有する第2累進多焦点レンズの面非点隔差が0.50ディオプターである等面非点隔差曲線上の任意の点をMSとし、前記主子午線曲線から前記任意の点MSまでの水平方向の距離がx(mm)のときの前記幾何中心OGから前記任意の点MSまでの鉛直方向の高さをhSとしたとき、
15≦|x|を満足する領域において、
L>hS (3)
の条件を常に満足する。
【0022】
【発明の実施の形態】
前述のように、従来技術では、非点収差が所定の量よりも小さい領域、具体的には非点隔差もしくは非点収差が0.50ディオプター以内である領域をもって明視域と定義しているが、特に遠用部においてはこのような条件によって明視域を定義することは十分ではない。そこで、本発明では、遠用度数からの球面度数のズレ量に関しても広い範囲で小さい値に抑えることが重要であると考え、非点収差が所定の量よりも小さく且つ球面度数の遠用度数からのズレ量が所定の量よりも小さい領域、すなわち非点収差および球面度数の両方の条件を満たす領域を明視域と定義している。従来技術では、遠用部の広い範囲でこれら2つの条件を同時に満足するために最適化された累進多焦点レンズは提案されていない。
【0023】
一般的な累進多焦点レンズは、プラスの強度数からマイナスの強度数に至る製作範囲内において複数のベースカーブを有する。本来ならば、各遠用度数毎に最適な累進多焦点面を有することができれば装用者にとって最も好ましいが、製造上の都合やコスト面での利点を配慮して、通常は所定の遠用度数の範囲内において同じ累進多焦点面が共用されている。
【0024】
また一般に、複数のベースカーブのうち、遠用度数がよりプラスの強度となる製作範囲においてベースカーブはより大きい曲率が必要となり、それに対して遠用度数がよりマイナスの強度である製作範囲においてはベースカーブの曲率はより小さくなる。従って、これら等しい累進多焦点面を用いて製作される製作範囲内において、等しい設計仕様に合った透過光線の光学性能を得るためには、複数のベースカーブを有する累進多焦点レンズの屈折面の光学的な特性を、それぞれの製作範囲やベースカーブの曲率に合わせて最適化することが必要である。
【0025】
本発明においては、遠用度数が0.00ディオプターを含む製作範囲に対応するベースカーブを基準ベースカーブとし、この基準ベースカーブにおける累進多焦点面を基準設計とし、この基準設計における球面度数分布や非点収差分布等の装用上の光学的な性能を、全てのベースカーブの累進多焦点レンズにおける光学的な性能の目標としている。
【0026】
遠用度数がより強度である製作範囲のベースカーブにおいて、累進多焦点面(屈折面)の光学的な特性、例えば面屈折力分布や非点隔差分布を基準設計と等しく設計すると、透過光線による球面度数分布や非点収差分布は、基準設計における球面度数分布や非点収差分布と大きく異なってしまう。つまり、面屈折力や非点隔差等の屈折面の光学的な特性から見ると、これら複数のベースカーブのレンズはそれぞれ同一の設計に基づく累進多焦点レンズに見えるが、透過光線の球面度数分布や非点収差分布等の装用状態における光学的な特性上では、異なるレンズとなってしまう。
【0027】
そこで、本発明においては、累進多焦点面での面屈折力の分布や非点隔差の分布を、それぞれの遠用度数の製作範囲に対応するベースカーブに依存してある一定の法則で変化させている。この構成により、それぞれのベースカーブの累進多焦点レンズにおいて、透過光線の球面度数分布や非点収差分布等の装用状態における光学的な特性を等しくし、遠用部において非点収差が小さく且つ度数ズレによる像ボケの少ない明視域を広く確保することが可能となっている。
【0028】
尚、本発明においては、眼鏡レンズの装用者が少なくとも2mの距離にある物体を像のボケを感じることなく見えることが、遠方視における明視域の球面度数における最低限の条件であると考えている。従って、遠用部の累進多焦点面上の任意の点における球面度数の遠用度数からのズレ量の絶対値が、0.50ディオプター以内であることを本発明の明視域の球面度数に関する条件(すなわち度数ズレに関する条件)としている。また、非点収差に関しては、遠方視において像の流れを感じることなく見ることができる非点収差の量は、一般に0.50ディオプターまでとされていることから、非点収差が0.50ディオプター以下であることを本発明の明視域の非点収差に関する条件としている。
【0029】
ところで、選択可能な複数のベースカーブを有する一連の累進多焦点レンズにおいて、曲率の異なるベースカーブをそれぞれ有する2つのレンズの面屈折力分布をほぼ等しくすると、ベースカーブの曲率が大きくなるほど、遠用部における球面度数が所定の値以下の領域の面積が狭くなるため、遠用部の明視域は狭くなる。一方、ベースカーブの曲率が小さくなるほど、遠用部における球面度数が所定の量以下の面積は大きくなるが、遠用部の周辺部で負の球面度数が付加されて、負の過矯正の領域ができる。その結果、遠用部における明視域が狭くなったり、処方による球面度数を満たす領域が中間部まで広がることにより、中間部や近用部に本来付加されるべき球面度数の領域が狭くなるため、実用上の中間部や近用部が狭くなる等の問題が生じる。
【0030】
従って、第1発明では、累進多焦点面上の遠用部における面屈折力PfとベースカーブBCとの差が0.50ディオプター以下である領域の面積Spが、条件式(1)を満たすように構成することによって、遠用部における光学性能を改善し、明視域を広く確保しつつ、ベースカーブの異なる累進多焦点レンズ間において、ひいてはすべてのベースカーブに対して装用上での光学的な特性をほぼ等しくすることができる。
【0031】
また、選択可能な複数のベースカーブを有する一連の累進多焦点レンズにおいて、曲率の異なるベースカーブをそれぞれ有する2つのレンズの非点隔差分布をほぼ等しくすると、ベースカーブの曲率がより大きくなってもより小さくなっても、いずれの場合にも、遠用部における非点収差が所定の値以下の面積は狭くなるため、遠用部の明視域は狭くなる。このとき、ベースカーブの曲率がより大きい第1累進多焦点レンズでは、遠用部における累進多焦点面の非点隔差が0.50ディオプター以下である領域の面積SaLを、基準設計の累進多焦点面の非点隔差が0.50ディオプター以下である領域の面積Sa0よりも狭くすると、透過光線における非点収差が0.50ディオプター以下である領域を広く確保することができる。
【0032】
これに対して、第1累進多焦点レンズよりもベースカーブの曲率が小さい第2累進多焦点レンズの場合、累進多焦点面の非点隔差が0.50ディオプター以下である領域の面積SaSを広げることによって、遠用部の透過光線における非点収差が0.50ディオプター以下である領域を広く確保することができる。従って、第2発明では、累進多焦点面上の遠用部における非点隔差が0.50ディオプター以下である領域の面積Saが、条件式(2)を満たすように構成することによって、遠用部における光学性能を改善し、明視域を広く確保しつつ、ベースカーブの異なる累進多焦点レンズ間において、ひいてはすべてのベースカーブに対して装用上での光学的な特性をほぼ等しくすることができる。
【0033】
さらに、第3発明では、上述の第1発明と第2発明との組み合わせにより、累進多焦点面上の遠用部における面屈折力PfとベースカーブBCとの差が0.50ディオプター以下である領域の面積Sp、および累進多焦点面上の遠用部における非点隔差が0.50ディオプター以下である領域の面積Saが、条件式(1)および(2)をそれぞれ満たすように構成することによって、遠用部における光学性能を改善し、明視域を広く確保しつつ、ベースカーブの異なる累進多焦点レンズ間において、ひいてはすべてのベースカーブに対して装用上での光学的な特性をほぼ等しくすることができる。
【0034】
また、第1発明〜第3発明において、主子午線曲線から水平方向に15mm以上離れた領域において条件式(3)を満足するように構成することによって、遠用側方部における明視域を広く確保しつつ、ベースカーブの異なる累進多焦点レンズ間において非点収差分布をほぼ等しくすることでがきる。この条件式(3)の範囲を逸脱すると、特にベースカーブの曲率が小さい累進多焦点レンズにおいて、遠用側方部の非点収差が悪化する。その結果、ベースカーブの曲率が小さい累進多焦点レンズでは、ベースカーブが大きい累進多焦点レンズと比べて、明視域が狭くなってしまうので好ましくない。
【0035】
なお、主子午線曲線から水平方向に15mm以内の遠用アイポイントに近い領域では、面非点隔差分布の傾向と非点収差分布の傾向とが近くなる。このため、本発明の条件式(3)は、主子午線曲線から水平方向に少なくとも15mm以上離れた領域において満足することが望ましい。しかしながら、本発明では、水平方向に10mm以上離れた領域において条件式(3)を満足することがさらに好ましいことはいうまでもない。
【0036】
本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。
図3は、本発明の実施形態において基準設計となる累進多焦点レンズの面付加平均屈折力(以下、「面付加屈折力」と言う)の分布図である。また、図4は、本実施形態の基準設計にかかる累進多焦点レンズの非点隔差分布図である。
【0037】
本実施形態の基準設計となる累進多焦点レンズにおいて、外径φ=70mmであり、ベースカーブBC=3.10ディオプターであり、遠用度数Df=0.00ディオプターであり、加入度Ad=2.00ディオプターであり、レンズの屈折率ne=1.50であり、遠用アイポイントEの位置はレンズの幾何中心OGの2mm上方に位置し、遠用中心OFはレンズの幾何中心OGの8mm上方に位置している。
【0038】
ここで、面付加屈折力とは、累進多焦点面上の任意の点において面平均屈折力からベースカーブを減じた面屈折力である。本実施形態では、説明の簡単のために、この面付加屈折力分布をもって面屈折力分布を論じるが、面付加屈折力と面平均屈折力とで本質的な意味は等しい。
【0039】
一方、図5は、本実施形態の基準設計にかかる累進多焦点レンズの透過光線における付加平均球面度数(以下、「付加球面度数」と言う)の分布図である。また、図6は、本実施形態の基準設計にかかる累進多焦点レンズの透過光線における非点収差分布図である。ここで、付加球面度数とは、累進多焦点面上の任意の点を通る光線の球面度数から遠用中心OFを通る光線の遠用度数を減じた球面度数である。本実施形態では、説明の簡単のために、この付加球面度数分布をもって球面度数分布を論じるが、付加球面度数と球面度数とで本質的な意味は等しい。
【0040】
本実施形態にかかる累進多焦点レンズでは、基準ベースカーブBC=3.10ディオプターの基準設計における透過光線の光学性能をもって基本的な光学性能としている。このため、本実施形態では、他のベースカーブを有する累進多焦点レンズにおいても、その付加球面度数分布および非点収差分布を、図5および図6に示すような基準設計の累進多焦点レンズにおける付加球面度数分布および非点収差分布に近づけることが設計の目標となる。
【0041】
図7は、本実施形態の基準設計に対する第1比較例としての累進多焦点レンズの面付加屈折力分布図である。また、図8は、第1比較例にかかる累進多焦点レンズの非点隔差分布図である。第1比較例にかかる累進多焦点レンズでは、その面付加屈折力分布および非点隔差分布が、本実施形態の基準設計にかかる累進多焦点レンズの面付加屈折力分布および非点隔差分布とほぼ等しくなるように設計している。
【0042】
第1比較例にかかる累進多焦点レンズでは、外径φ=70mmであり、ベースカーブBC=5.60ディオプターであり、遠用度数Df=+3.50ディオプターであり、加入度Ad=2.00ディオプターであり、レンズの屈折率ne=1.50であり、遠用アイポイントEの位置はレンズの幾何中心OGの2mm上方に位置し、遠用中心OFはレンズの幾何中心OGの8mm上方に位置している。このように、本実施形態の基準設計と第1比較例とでは、ベースカーブおよび遠用度数が異なっている。しかしながら、図3および図4と図7および図8とを比較参照すると、ベースカーブの曲率は異なっていても、面付加屈折力分布および非点隔差分布はほぼ等しくなっていることがわかる。
【0043】
図9は、第1比較例にかかる累進多焦点レンズの透過光線における付加球面度数分布図である。上述したように、第1比較例では、その面付加屈折力分布が本実施形態の基準設計とほぼ等しいが、図5と図9とを比較参照すると、遠用部において付加球面度数が0.50ディオプター以下である領域が、特に遠用側方領域で本実施形態の基準設計よりも狭くなっていることがわかる。そのため、第1比較例では、遠用アイポイントEの付近で、装用者は特に水平方向においてこの狭い領域でしか遠方視することができない。換言すると、第1比較例では、遠用部における明視域が狭くなっている。
【0044】
図10は、第1比較例にかかる累進多焦点レンズの透過光線における非点収差分布図である。上述したように、第1比較例では、その非点隔差分布が本実施形態の基準設計とほぼ等しいが、図6と図10とを比較参照すると、遠用部において非点収差が0.50ディオプター以下の領域が、本実施形態の基準設計よりも狭く、特に遠用部上方においては非点収差の劣化が著しくなっていることがわかる。このため第1比較例では、遠用部における明視域が狭くなっている。
【0045】
以上のように、図9および図10を参照すると、本実施形態の基準設計よりも曲率の大きいベースカーブを有する第1比較例の累進多焦点レンズにおいて、累進多焦点面の面付加屈折力分布および非点隔差分布を本実施形態の基準設計とほぼ等しくした場合、透過光線における付加球面度数が0.50ディオプター以下で且つ非点収差が0.50ディオプター以下の領域が本実施形態の基準設計よりも非常に狭くなることがわかる。そのため、第1比較例の累進多焦点レンズでは、遠用部における明視域が非常に狭く、本実施形態の基準設計とは異なる光学性能の劣ったレンズとなっている。
【0046】
図11は、本実施形態にかかる累進多焦点レンズであって、基準設計よりも曲率の大きいベースカーブを有する第1累進多焦点レンズの面付加屈折力分布図である。本実施形態にかかる第1累進多焦点レンズでは、第1比較例と同様に、外径φ=70mmであり、ベースカーブBC=5.60ディオプターであり、遠用度数Df=+3.50ディオプターであり、加入度Ad=2.00ディオプターであり、レンズの屈折率ne=1.50であり、遠用アイポイントEの位置はレンズの幾何中心OGの2mm上方に位置し、遠用中心OFはレンズの幾何中心OGの8mm上方に位置している。
【0047】
図3と図11との比較から分かるように、本実施形態の第1累進多焦点レンズでは、遠用部における面付加屈折力が0.50ディオプター以下の領域の面積が基準設計の場合よりも広くなっている。さらに、本実施形態の第1累進多焦点レンズにおいて、遠用部の遠用中心OFよりも上方におけるレンズの周辺部では、ベースカーブに対して負の面屈折力が付加されている。
【0048】
図12は、本実施形態にかかる第1累進多焦点レンズの非点隔差分布図である。図4と図12との比較から分かるように、本実施形態の第1累進多焦点レンズでは、遠用部において非点隔差が0.50ディオプター以下の領域の面積が基準設計の場合よりも狭くなっており、特に遠用側方領域において狭くなっている。
【0049】
図13は、本実施形態にかかる第1累進多焦点レンズの透過光線における付加球面度数分布図である。図9と図13との比較から分かるように、本実施形態の第1累進多焦点レンズでは、遠用部において付加球面度数が0.50ディオプター以下である領域が、累進多焦点面の面屈折力分布を本実施形態の基準設計とほぼ等しくした第1比較例の場合よりも非常に広くなっており、特に遠用側方部において広くなっている。その結果、図5と図13との比較から分かるように、本実施形態の第1累進多焦点レンズは、本実施形態の基準設計にかかる累進多焦点レンズの付加球面度数分布により近い付加球面度数分布のレンズとなっている。
【0050】
図14は、本実施形態にかかる第1累進多焦点レンズの透過光線における非点収差分布図である。図10と図14との比較から分かるように、本実施形態の第1累進多焦点レンズでは、遠用部において非点収差が0.50ディオプター以下である領域が、累進多焦点面の非点隔差分布を本実施形態の基準設計とほぼ等しくした第1比較例の場合よりも、特にレンズ上方部において非常に広くなっている。その結果、図6と図14との比較から分かるように、本実施形態の第1累進多焦点レンズは、本実施形態の基準設計にかかる累進多焦点レンズの非点収差分布により近い非点収差分布のレンズとなっている。
【0051】
以上のように、図13および図14を参照すると、本実施形態の基準設計よりも曲率の大きいベースカーブを有し、遠用度数がよりプラスの強度の製作範囲に対応する本実施形態の第1累進多焦点レンズでは、遠用部において付加球面度数が0.50ディオプター以下で且つ非点収差が0.50ディオプター以下の明視域を広く確保し、本実施形態の基準設計における装用上の光学性能に近づけることができる。
【0052】
図15は、本実施形態の基準設計に対する第2比較例としての累進多焦点レンズの面付加屈折力分布図である。また、図16は、第2比較例にかかる累進多焦点レンズの非点隔差分布図である。第2比較例にかかる累進多焦点レンズでは、その面付加屈折力分布および非点隔差分布が、本実施形態の基準設計にかかる累進多焦点レンズの面付加屈折力分布および非点隔差分布とほぼ等しくなるように設計している。
【0053】
第2比較例にかかる累進多焦点レンズでは、外径φ=70mmであり、ベースカーブBC=2.00ディオプターであり、遠用度数Df=−2.50ディオプターであり、加入度Ad=2.00ディオプターであり、レンズの屈折率ne=1.50であり、遠用アイポイントEの位置はレンズの幾何中心OGの2mm上方に位置し、遠用中心OFはレンズの幾何中心OGの8mm上方に位置している。このように、本実施形態の基準設計と第2比較例とでは、ベースカーブおよび遠用度数が異なっている。しかしながら、図3および図4と図15および図16とを比較参照すると、ベースカーブの曲率は異なっていても、面付加屈折力分布および非点隔差分布はほぼ等しくなっていることがわかる。
【0054】
図17は、第2比較例にかかる累進多焦点レンズの透過光線における付加球面度数分布図である。上述したように、第2比較例では、その面付加屈折力分布が本実施形態の基準設計とほぼ等しくなっており、遠用部において付加球面度数が0.50ディオプター以下の領域が本実施形態の基準設計よりも広くなっている。しかしながら、図5と図17とを比較参照すると、第2比較例では、中間部や近用部の側方部に本来付加されるべき球面度数の領域が、本実施形態の基準設計よりも狭くなっていることがわかる。
【0055】
図18は、第2比較例にかかる累進多焦点レンズの透過光線における非点収差分布図である。上述したように、第2比較例では、その非点隔差分布が本実施形態の基準設計とほぼ等しいが、図6と図18とを比較参照すると、遠用部において非点収差が0.50ディオプター以下の領域が、遠用中心OF近傍のみの狭いものとなっていることがわかる。また、第2比較例では、遠用部の周辺部において非点収差が大きくなっているため、像の流れやボケ、ゆれ、歪み等が大きくなる原因となることがわかる。
【0056】
以上のように、図17および図18を参照すると、本実施形態の基準設計よりも曲率の小さいベースカーブを有する第2比較例の累進多焦点レンズにおいて、累進多焦点面の面付加屈折力分布および非点隔差分布を本実施形態の基準設計とほぼ等しくした場合、透過光線における付加球面度数が0.50ディオプター以下で且つ非点収差が0.50ディオプター以下の領域が本実施形態の基準設計よりも非常に狭くなることがわかる。そのため、第2比較例の累進多焦点レンズでは、遠用部における明視域が非常に狭く、本実施形態の基準設計とは異なる光学性能の劣ったレンズとなっている。
【0057】
図19は、本実施形態にかかる累進多焦点レンズであって、基準設計よりも曲率の小さいベースカーブを有する第2累進多焦点レンズの面付加屈折力分布図である。本実施形態にかかる第2累進多焦点レンズでは、第2比較例と同様に、外径φ=70mmであり、ベースカーブBC=2.00ディオプターであり、遠用度数Df=−2.50ディオプターであり、加入度Ad=2.00ディオプターであり、レンズの屈折率ne=1.50であり、遠用アイポイントEの位置はレンズの幾何中心OGの2mm上方に位置し、遠用中心OFはレンズの幾何中心OGの8mm上方に位置している。
【0058】
図3と図19との比較から分かるように、本実施形態の第2累進多焦点レンズでは、遠用中心OFにおける面付加屈折力に対して0.50ディオプター以上のプラスの面付加屈折力が、遠用側方部に付加されている。さらに、本実施形態の第2累進多焦点レンズでは、遠用部において面付加屈折力が0.50ディオプター以下の領域の面積が、本実施形態の基準設計の場合よりも狭くなっている。
【0059】
図20は、本実施形態にかかる第2累進多焦点レンズの非点隔差分布図である。図4と図20との比較から分かるように、本実施形態の第2累進多焦点レンズでは、遠用部において非点隔差が0.50ディオプター以下の領域の面積が基準設計の場合よりも広くなっており、特に中間部に近い遠用側方部の下方で広くなっている。
【0060】
図21は、本実施形態にかかる第2累進多焦点レンズの透過光線における付加球面度数分布図である。図17と図21との比較から分かるように、本実施形態の第2累進多焦点レンズでは、遠用部において付加球面度数が0.50ディオプター以下である領域が、累進多焦点面の面屈折力分布を本実施形態の基準設計とほぼ等しくした第2比較例の場合よりも非常に広くなっており、中間部から近用部側方における球面度数分布も改善されている。その結果、図5と図21との比較から分かるように、本実施形態の第2累進多焦点レンズは、本実施形態の基準設計にかかる累進多焦点レンズの付加球面度数分布により近い付加球面度数分布のレンズとなっている。
【0061】
図22は、本実施形態にかかる第2累進多焦点レンズの透過光線における非点収差分布図である。図18と図22との比較から分かるように、本実施形態の第2累進多焦点レンズでは、遠用部において非点収差が0.50ディオプター以下である領域が、累進多焦点面の非点隔差分布を本実施形態の基準設計とほぼ等しくした第2比較例の場合よりも、特にレンズ上方部において非常に広くなっている。その結果、図6と図22との比較から分かるように、本実施形態の第2累進多焦点レンズは、本実施形態の基準設計にかかる累進多焦点レンズの非点収差分布により近い非点収差分布のレンズとなっている。
【0062】
以上のように、図21および図22を参照すると、本実施形態の基準設計よりも曲率の小さいベースカーブを有し、遠用度数がよりマイナスの強度の製作範囲に対応する本実施形態の第2累進多焦点レンズでは、遠用部において付加球面度数が0.50ディオプター以下で且つ非点収差が0.50ディオプター以下の明視域を広く確保し、本実施形態の基準設計における装用上の光学性能に近づけることができる。
【0063】
尚、上述の実施形態に限定されることなく、様々な仕様や素材の累進多焦点レンズに対して本発明を適用することができることは明らかである。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、レンズの基本的な仕様がほぼ等しくなるように設計された、複数のベースカーブを有する一連の累進多焦点レンズにおいて、すべてのベースカーブに対して装用上での光学的な特性をほぼ等しくすることができ、装用状態における光学性能を良好に設定することのできる累進多焦点レンズを実現することができる。また、特に遠用部において、非点収差が小さく且つ度数ズレによる像ボケの少ない明視域を広く確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】対称に設計された累進多焦点レンズの領域区分の概要を示す図である。
【図2】レンズの装用状態において近用中心ONが鼻側に寄ることを考慮して、近用部Nを非対称に配置した非対称型累進多焦点レンズの領域区分の概要図である。
【図3】本発明の実施形態において基準設計となる累進多焦点レンズの面付加屈折力の分布図である。
【図4】本実施形態の基準設計にかかる累進多焦点レンズの非点隔差分布図である。
【図5】本実施形態の基準設計にかかる累進多焦点レンズの透過光線における付加球面度数の分布図である。
【図6】本実施形態の基準設計にかかる累進多焦点レンズの透過光線における非点収差分布図である。
【図7】本実施形態の基準設計に対する第1比較例としての累進多焦点レンズの面付加屈折力分布図である。
【図8】第1比較例にかかる累進多焦点レンズの非点隔差分布図である。
【図9】第1比較例にかかる累進多焦点レンズの透過光線における付加球面度数分布図である。
【図10】第1比較例にかかる累進多焦点レンズの透過光線における非点収差分布図である。
【図11】本実施形態にかかる累進多焦点レンズであって、基準設計よりも曲率の大きいベースカーブを有する第1累進多焦点レンズの面付加屈折力分布図である。
【図12】本実施形態にかかる第1累進多焦点レンズの非点隔差分布図である。
【図13】本実施形態にかかる第1累進多焦点レンズの透過光線における付加球面度数分布図である。
【図14】本実施形態にかかる第1累進多焦点レンズの透過光線における非点収差分布図である。
【図15】本実施形態の基準設計に対する第2比較例としての累進多焦点レンズの面付加屈折力分布図である。
【図16】第2比較例にかかる累進多焦点レンズの非点隔差分布図である。
【図17】第2比較例にかかる累進多焦点レンズの透過光線における付加球面度数分布図である。
【図18】第2比較例にかかる累進多焦点レンズの透過光線における非点収差分布図である。
【図19】本実施形態にかかる累進多焦点レンズであって、基準設計よりも曲率の小さいベースカーブを有する第2累進多焦点レンズの面付加屈折力分布図である。
【図20】本実施形態にかかる第2累進多焦点レンズの非点隔差分布図である。
【図21】本実施形態にかかる第2累進多焦点レンズの透過光線における付加球面度数分布図である。
【図22】本実施形態にかかる第2累進多焦点レンズの透過光線における非点収差分布図である。
【符号の説明】
F 遠用部
N 近用部
P 中間部
MM’ 主子午線曲線
OF 遠用中心
E 遠用アイポイント
OG 幾何中心
ON 近用中心

Claims (4)

  1. 少なくともレンズの一方の面に、レンズの屈折面を鼻側領域と耳側領域とに分割する主子午線曲線に沿って、遠景に対応する遠用視矯正領域と、近景に対応する近用視矯正領域と、前記遠用視矯正領域と前記近用視矯正領域との間において両領域の面の屈折力を連続的に接続する累進領域とを備え、複数のベースカーブを有し、透過光線の光学的な特性である装用状態における球面度数分布あるいは非点収差分布が複数のベースカーブに対して等しい一連の累進多焦点レンズであって、
    前記複数のベースカーブから選択された第1ベースカーブBCLを有する第1累進多焦点レンズにおいて、前記遠用視矯正領域における累進多焦点面上の任意の点の面平均屈折力をPfLとし、PfL−BCL≦0.50ディオプターを満足する領域の面積をSpLとし、
    前記第1ベースカーブBCLよりも曲率が実質的に小さく且つ前記複数のベースカーブから選択された第2ベースカーブBCSを有し、前記第1累進多焦点レンズの加入度と実質的に同じ加入度を有する第2累進多焦点レンズにおいて、前記遠用視矯正領域における累進多焦点面上の任意の点の面平均屈折力をPfSとし、PfS−BCS≦0.50ディオプターを満足する領域の面積をSpSとしたとき、
    SpL>SpS (1)
    の条件を満足することを特徴とする累進多焦点レンズシリーズ。
  2. 少なくともレンズの一方の面に、レンズの屈折面を鼻側領域と耳側領域とに分割する主子午線曲線に沿って、遠景に対応する遠用視矯正領域と、近景に対応する近用視矯正領域と、前記遠用視矯正領域と前記近用視矯正領域との間において両領域の面の屈折力を連続的に接続する累進領域とを備え、複数のベースカーブを有し、透過光線の光学的な特性である装用状態における球面度数分布あるいは非点収差分布が複数のベースカーブに対して等しい一連の累進多焦点レンズであって、
    前記複数のベースカーブから選択された第1ベースカーブBCLを有する第1累進多焦点レンズにおいて、前記遠用視矯正領域における面非点隔差が0.50ディオプター以下である領域の面積をSaLとし、
    前記第1ベースカーブBCLよりも曲率が実質的に小さく且つ前記複数のベースカーブから選択された第2ベースカーブBCSを有し、前記第1累進多焦点レンズの加入度と実質的に同じ加入度を有する第2累進多焦点レンズにおいて、前記遠用視矯正領域における面非点隔差が0.50ディオプター以下である領域の面積をSaSとしたとき、
    SaL<SaS (2)
    の条件を満足することを特徴とする累進多焦点レンズシリーズ。
  3. 少なくともレンズの一方の面に、レンズの屈折面を鼻側領域と耳側領域とに分割する主子午線曲線に沿って、遠景に対応する遠用視矯正領域と、近景に対応する近用視矯正領域と、前記遠用視矯正領域と前記近用視矯正領域との間において両領域の面の屈折力を連続的に接続する累進領域とを備え、複数のベースカーブを有し、透過光線の光学的な特性である装用状態における球面度数分布あるいは非点収差分布が複数のベースカーブに対して等しい一連の累進多焦点レンズであって、
    前記複数のベースカーブから選択された第1ベースカーブBCLを有する第1累進多焦点レンズにおいて、前記遠用視矯正領域における累進多焦点面上の任意の点の面平均屈折力をPfLとし、PfL−BCL≦0.50ディオプターを満足する領域の面積をSpLとし、前記遠用視矯正領域における面非点隔差が0.50ディオプター以下である領域の面積をSaLとし、
    前記第1ベースカーブBCLよりも曲率が実質的に小さく且つ前記複数のベースカーブから選択された第2ベースカーブBCSを有し、前記第1累進多焦点レンズの加入度と実質的に同じ加入度を有する第2累進多焦点レンズにおいて、前記遠用視矯正領域における累進多焦点面上の任意の点の面平均屈折力をPfSとし、PfS−BCS≦0.50ディオプターを満足する領域の面積をSpSとし、前記遠用視矯正領域における面非点隔差が0.50ディオプター以下である領域の面積をSaSとしたとき、
    SpL>SpS (1)
    SaL<SaS (2)
    の条件を満足することを特徴とする累進多焦点レンズシリーズ。
  4. 前記累進多焦点レンズの幾何中心OGよりも上方に位置する領域において、
    前記第1ベースカーブBCLを有する第1累進多焦点レンズの面非点隔差が0.50ディオプターである等面非点隔差曲線上の任意の点をMLとし、前記主子午線曲線から前記任意の点MLまでの水平方向の距離がx(mm)のときの前記幾何中心OGから前記任意の点MLまでの鉛直方向の高さをhLとし、
    前記第2ベースカーブBCSを有する第2累進多焦点レンズの面非点隔差が0.50ディオプターである等面非点隔差曲線上の任意の点をMSとし、前記主子午線曲線から前記任意の点MSまでの水平方向の距離がx(mm)のときの前記幾何中心OGから前記任意の点MSまでの鉛直方向の高さをhSとしたとき、
    15≦|x|を満足する領域において、
    L>hS (3)
    の条件を常に満足することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の累進多焦点レンズシリーズ。
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