JP4449335B2 - 液晶表示装置および電子機器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示装置および電子機器に関し、特にプライバシーの保護に寄与することが可能な液晶表示装置と、これを表示部として備えた電子機器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置として反射モードと透過モードとを兼ね備えた半透過反射型液晶表示装置が知られている。このような半透過反射型液晶表示装置としては、上基板と下基板との間に液晶層が挟持されるとともに、例えばアルミニウム等の金属膜に光透過用の窓部を形成した反射膜を下基板の内面に備え、この反射膜を半透過反射板として機能させるものが提案されている。この場合、反射モードでは上基板側から入射した外光が、液晶層を通過した後に下基板の内面の反射膜で反射され、再び液晶層を通過して上基板側から出射され、表示に寄与する。一方、透過モードでは下基板側から入射したバックライトからの光が、反射膜の窓部から液晶層を通過した後、上基板側から外部に出射され、表示に寄与する。したがって、反射膜の形成領域のうち、窓部が形成された領域が透過表示領域、その他の領域が反射表示領域となる。
【0003】
ところが、従来の半透過反射型液晶装置には、透過表示での視角が狭いという課題があった。これは、視差が生じないよう液晶セルの内面に半透過反射板を設けている関係で、観察者側に備えた1枚の偏光板だけで反射表示を行わなければならないという制約があり、光学設計の自由度が小さいためである。そこで、この課題を解決するために、Jisakiらは、下記の非特許文献1において、垂直配向液晶を用いる新しい液晶表示装置を提案した。その特徴は、以下の3つである。
(1)誘電異方性が負の液晶を基板に垂直に配向させ、電圧印加によってこれを倒す「VA(Vertical Alignment)モード」を採用している点。
(2)透過表示領域と反射表示領域の液晶層厚(セルギャップ)が異なる「マルチギャップ構造」を採用している点。
(3)透過表示領域を正八角形とし、この領域内で液晶が8方向に倒れるように対向基板上の透過表示領域の中央に突起を設けている点。すなわち、「配向分割構造」を採用している点。
【0004】
【非特許文献1】
"Development of transflective LCD for high contrast and wide viewing angle by using homeotropic alignment", M.Jisaki et al., Asia Display/IDW'01, p.133-136(2001)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
非特許文献1においては、高コントラストで高視野角の表示を目指して、「VA(Vertical Alignment)モード」、「マルチギャップ構造」、「配向分割構造」を採用している。しかしながら、当該液晶表示装置のユーザーにとって、特に携帯電話用途等では、視角を制限してプライバシーを保護して欲しいという要求もある。すなわち、正面方向から見た場合には高コントラストの表示が得られる一方、横方向から見た場合には表示を視認困難な液晶表示装置が望まれている。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、高コントラストが得られ、中間調の色反転が少ない配向分割構造を採用しつつ、視野角を制限することが可能な液晶表示装置と、これを表示部として具備した電子機器を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の液晶表示装置は、一対の基板間に液晶層が挟持されてなる液晶表示装置であって、前記液晶層は、一つのドット領域内で液晶分子が複数の方向に配向制御可能に構成され、前記一対の基板の液晶層と異なる側には、該液晶層に円偏光を入射するための円偏光板が配設されてなり、前記円偏光板は位相差板を含み、該位相差板について、その面内屈折率の大きい方をnx、小さい方をnyとし、厚さ方向の屈折率をnzとして、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)と定義した場合に、Nz<1,1.5<Nz<4を満たすことを特徴とする。
【0008】
本発明の液晶表示装置は、一つのドット領域内で液晶分子が複数の方向に配向制御可能に構成された液晶層を備える配向分割構造を採用したもので、特に円偏光板を構成する位相差板について視角を制限するための好適な条件を規定したものである。すなわち、円偏光を液晶層に入射するための円偏光板を構成する位相差板について、上記定義したNzについて、Nz<1,1.5<Nz<4とすることで、当該液晶表示装置の表示面を横方向から見た場合に、コントラストを低下させ、視認性を低下させることが可能となったのである。したがって、本発明の液晶表示装置によると、表示面を正面方向から見た場合には、高コントラストの表示を視認可能で、視角を変えたときにも中間調の色反転が生じ難いものとなる一方、表示面を横方向(若しくは斜め方向)から見た場合には、視認性を低下させることが可能となる。その結果、携帯電話等に当該液晶表示装置を適用した場合には、他人からの覗き見を防止することができ、また配向分割構造を採用しているため観察者本人が見る範囲では反転の少ない良好な表示を提供することが可能となる。
【0009】
本発明の液晶表示装置では、前記液晶層と前記円偏光板との間に、厚さ方向に光軸を有する第2位相差板を更に設けることができる。そして、この第2位相差板について、その平面内において互いに直交する方位角方向の屈折率をnx2,ny2とし、厚さ方向の屈折率をnz2とした場合に、nz2<nx2=ny2を満たすことが好ましい。本発明の液晶表示装置では、円偏光板に用いる位相差板のNz値を上記の範囲に規定することで、このような第2位相差板を設けた場合にも視角を制限することが可能となる。
【0010】
次に、上記課題を解決するために、本発明の液晶表示装置は、一対の基板間に液晶層が挟持されてなる液晶表示装置であって、前記液晶層は、一つのドット領域内で液晶分子が複数の方向に配向制御可能に構成され、前記一対の基板の液晶層と異なる側には、該液晶層に円偏光を入射するための円偏光板が配設されてなり、前記円偏光板は位相差板を含む一方、前記液晶層と前記円偏光板との間に、厚さ方向に光軸を有する第2位相差板が更に設けられており、前記第2位相差板について、その平面内において互いに直交する方位角方向の屈折率をnx2,ny2とし、厚さ方向の屈折率をnz2とした場合に、nz2>nx2=ny2を満たすことを特徴とする。
【0011】
この場合の液晶表示装置も、一つのドット領域内で液晶分子が複数の方向に配向制御可能に構成された液晶層を備える配向分割構造を採用したものであって、高コントラストの表示を実現可能で、視角を変えたときにも中間調の色反転の生じ難い表示を実現したものである。そして、本発明では特に液晶層と円偏光板との間に厚さ方向の屈折率が面内方向の屈折率よりも大きい第2位相差板を設けることで、当該液晶表示装置の表示面を横方向から見た場合に、コントラストを低下させ、視認性を低下させることが可能となったのである。したがって、本発明の液晶表示装置によると、表示面を正面方向から見た場合には、高コントラストの表示を視認可能で、視角を変えたときにも中間調の色反転が生じ難いものとなる一方、表示面を横方向(若しくは斜め方向)から見た場合には、視認性を低下させることが可能となる。その結果、携帯電話等に当該液晶表示装置を適用した場合には、他人からの覗き見を防止することができ、また配向分割構造を採用しているため観察者本人が見る範囲では反転の少ない良好な表示を提供することが可能となる。
【0012】
本発明の液晶表示装置において、前記液晶層として、初期配向状態が垂直配向を呈する誘電異方性が負の液晶からなるものを採用することができる。この場合、上記配向分割構造を採用し易くなり、例えば液晶層の挟持面に配向規制用の凹凸を設けることにより該配向分割構造を具現化できる。また、特に垂直配向型の液晶を採用することで表示部を正面方向から眺めた場合のコントラストを高める効果を発現することもできる。
【0013】
前記円偏光板を偏光板とλ/4位相差板との組合せにて構成し、該λ/4位相差板が前記Nzの条件を満たすものとすることができる。また、前記円偏光板をλ/2位相差板とλ/4位相差板とを含んで構成し、該λ/2位相差板とλ/4位相差板が前記Nzの条件を満たすものとすることもできる。ここで、前記一対の基板の一方の側に設けられた第1偏光板の偏光軸と、他方の側に設けられた第2偏光板の偏光軸とが略直交し、さらに一対の基板の一方の側に設けられた位相差板の遅相軸(又は進相軸)と、他方の側に設けられた位相差板の遅相軸(又は進相軸)とが略直交する構成とすることもできる。このような構成によると表示部を正面方向から見た場合のコントラストを一層高めることが可能となる。
【0014】
また、本発明の液晶表示装置では、1つのドット領域内に透過表示を行う透過表示領域と反射表示を行う反射表示領域とを設けることができる。これにより透過モードと反射モードとを兼備した液晶表示装置において視角を制限しつつ、正面視した場合にはコントラストの高い透過表示及び反射表示を提供することが可能となる。
【0015】
また、このような透過モードと反射モードとを兼備した液晶表示装置において、前記一対の基板のうちの少なくとも一方の基板と前記液晶層との間に、前記反射表示領域の液晶層厚を前記透過表示領域の液晶層厚よりも小さくする液晶層厚調整層を少なくとも前記反射表示領域に設けることができる。具体的には、一対の基板として上基板と下基板とを含み、前記下基板の液晶層と反対側には透過表示用のバックライトを設けるとともに、該下基板の液晶層側には前記反射表示領域のみに選択的に形成された反射膜を設け、前記反射表示領域に、該反射表示領域における液晶層厚を透過表示領域における液晶層厚よりも小さく調整する液晶層厚調整層(例えば絶縁層等による)を設けることができる。この場合、液晶層厚調整層の存在によって反射表示領域の液晶層の厚みを透過表示領域の液晶層の厚みよりも小さくすることができるので、反射表示領域におけるリタデーションと透過表示領域におけるリタデーションを充分に近づける、もしくは略等しくすることができ、これにより一層のコントラスト向上を図ることができる。
【0016】
次に、一対の基板のうち観察者側の基板に配設された前記偏光板の透過軸が、表示面の上下方向と略平行に設定されているものとすることができる。この場合、例えば偏光サングラスを装着した観察者に対して明るい表示を選択的に提供することが可能となり、当該液晶表示装置の使用用途が一層広がるものとなる。
【0017】
次に、本発明の電子機器は、上記液晶表示装置を備えたことを特徴とする。このような電子機器によると、視野角の制限された表示部を備えた電子機器を提供することが可能となり、プライバシー保護の要求に応じた電子機器を提供することが可能となる。
【0018】
【発明の実施の形態】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の液晶表示装置の一実施の形態を図面を参照して説明する。
本実施の形態の液晶表示装置は、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor, 以下、TFTと略記する)を用いたアクティブマトリクス型の液晶表示装置の例である。
【0019】
図1は本実施の形態の液晶表示装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に配置された複数のドットの等価回路図、図2はTFTアレイ基板の相隣接する複数のドットの構造を示す平面図、図3は同、液晶装置の構造を示す平面図(上段)及び断面図(下段)である。なお、以下の各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0020】
本実施の形態の液晶表示装置において、図1に示すように、画像表示領域を構成するマトリクス状に配置された複数のドットには、画素電極9と当該画素電極9を制御するためのスイッチング素子であるTFT30がそれぞれ形成されており、画像信号が供給されるデータ線6aが当該TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次に供給されるか、あるいは相隣接する複数のデータ線6aに対してグループ毎に供給される。また、走査線3aがTFT30のゲートに電気的に接続されており、複数の走査線3aに対して走査信号G1、G2、…、Gmが所定のタイミングでパルス的に線順次で印加される。また、画素電極9はTFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけオンすることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、…、Snを所定のタイミングで書き込む。
【0021】
画素電極9を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、後述する共通電極との間で一定期間保持される。液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能にする。ここで、保持された画像信号がリークすることを防止するために、画素電極9と共通電極との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70が付加されている。なお、符号3bは容量線である。
【0022】
次に、図2に基づいて、本実施の形態の液晶装置を構成するTFTアレイ基板の平面構造について説明する。
図2に示すように、TFTアレイ基板上に、複数の矩形状の画素電極9(点線部9Aにより輪郭を示す)がマトリクス状に設けられており、画素電極9の縦横の境界に各々沿ってデータ線6a、走査線3aおよび容量線3bが設けられている。本実施の形態において、各画素電極9および各画素電極9を囲むように配設されたデータ線6a、走査線3a、容量線3b等が形成された領域の内側が一つのドット領域であり、マトリクス状に配置された各ドット領域毎に表示が可能な構造になっている。
【0023】
データ線6aは、TFT30を構成する、例えばポリシリコン膜からなる半導体層1aのうち、後述のソース領域にコンタクトホール5を介して電気的に接続されており、画素電極9は、半導体層1aのうち、後述のドレイン領域にコンタクトホール8を介して電気的に接続されている。また、半導体層1aのうち、チャネル領域(図中左上がりの斜線の領域)に対向するように走査線3aが配置されており、走査線3aはチャネル領域に対向する部分でゲート電極として機能する。
【0024】
容量線3bは、走査線3aに沿って略直線状に延びる本線部(すなわち、平面的に見て、走査線3aに沿って形成された第1領域)と、データ線6aと交差する箇所からデータ線6aに沿って前段側(図中上向き)に突出した突出部(すなわち、平面的に見て、データ線6aに沿って延設された第2領域)とを有する。そして、図2中、右上がりの斜線で示した領域には、複数の第1遮光膜11aが設けられている。
【0025】
より具体的には、第1遮光膜11aは、各々、半導体層1aのチャネル領域を含むTFT30をTFTアレイ基板側から見て覆う位置に設けられており、さらに、容量線3bの本線部に対向して走査線3aに沿って直線状に延びる本線部と、データ線6aと交差する箇所からデータ線6aに沿って隣接する後段側(すなわち、図中下向き)に突出した突出部とを有する。第1遮光膜11aの各段(画素行)における下向きの突出部の先端は、データ線6a下において次段における容量線3bの上向きの突出部の先端と重なっている。この重なった箇所には、第1遮光膜11aと容量線3bとを相互に電気的に接続するコンタクトホール13が設けられている。すなわち、本実施の形態では、第1遮光膜11aは、コンタクトホール13によって前段あるいは後段の容量線3bに電気的に接続されている。
【0026】
また、図2に示すように、一つのドット領域内には反射膜20が形成されており、この反射膜20が形成された領域が反射表示領域Rとなり、その反射膜20が形成されていない領域、すなわち反射膜20の開口部21内が透過表示領域Tとなる。
【0027】
次に、図3に基づいて本実施の形態の液晶表示装置の平面構造及び断面構造について説明する。図3(a)は本実施の形態の液晶表示装置に備えられたカラーフィルタ層の平面構造を示す平面模式図で、図3(b)は図3(a)の平面図のうち赤色の着色層に対応する部分の断面模式図である。
【0028】
本実施の形態の液晶表示装置は、図2に示したようにデータ線6a、走査線3a、容量線3b等にて囲まれた領域の内側に画素電極9を備えてなるドット領域を有している。このドット領域内には、図3(a)に示すように一のドット領域に対応して3原色のうちの一の着色層が配設され、3つのドット領域(D1,D2,D3)で各着色層22B(青色),22G(緑色),22R(赤色)を含む画素を形成している。
【0029】
一方、図3(b)に示すように、本実施の形態の液晶表示装置は、TFTアレイ基板10とこれに対向配置された対向基板25との間に初期配向状態が垂直配向をとる液晶、すなわち誘電率異方性が負の液晶材料からなる液晶層50が挟持されている。TFTアレイ基板10は、石英、ガラス等の透光性材料からなる基板本体10Aの表面にアルミニウム、銀等の反射率の高い金属膜からなる反射膜20が絶縁膜24を介して部分的に形成された構成をなしている。上述したように、反射膜20の形成領域が反射表示領域Rとなり、反射膜20の非形成領域、すなわち反射膜20の開口部21内が透過表示領域Tとなる。このように本実施の形態の液晶表示装置は、垂直配向型の液晶層50を備える垂直配向型液晶表示装置であって、反射表示及び透過表示を可能にした半透過反射型の液晶表示装置である。
【0030】
基板本体10A上に形成された絶縁膜24は、その表面に凹凸形状24aを具備してなり、その凹凸形状24aに倣って反射膜20の表面は凹凸部を有する。このような凹凸により反射光が散乱されるため、外部からの映り込みが防止され、広視野角の表示を得ることが可能とされている。
【0031】
また、反射膜20上には、反射表示領域Rに対応する位置に絶縁膜26が形成されている。すなわち、反射膜20の上方に位置するように選択的に絶縁膜26が形成され、該絶縁膜26の形成に伴って液晶層50の層厚を反射表示領域Rと透過表示領域Tとで異ならしめている。絶縁膜26は例えば膜厚が2〜3μm程度のアクリル樹脂等の有機膜からなり、反射表示領域Rと透過表示領域Tとの境界付近において、自身の層厚が連続的に変化するべく傾斜面26aを備えた傾斜領域を有している。絶縁膜26が存在しない部分の液晶層50の厚みが4〜6μm程度とされ、反射表示領域Rにおける液晶層50の厚みは透過表示領域Tにおける液晶層50の厚みの約半分とされている。
【0032】
このように絶縁膜26は、自身の膜厚によって反射表示領域Rと透過表示領域Tとの液晶層50の層厚を異ならせる液晶層厚調整層(液晶層厚制御層)として機能するものである。また、本実施の形態の場合、絶縁膜26の上部の平坦面の縁と反射膜20(反射表示領域)の縁とが略一致しており、絶縁膜26の傾斜領域は透過表示領域Tに含まれることになる。
【0033】
そして、絶縁膜26の表面を含むTFTアレイ基板10の表面には、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide, 以下、ITOと略記する)等の透明導電膜からなる画素電極9、ポリイミド等からなる配向膜27が形成されている。なお、本実施の形態では、反射膜20と画素電極9とを別個に設けて積層したが、反射表示領域Rにおいては金属膜からなる反射膜を画素電極として用いることも可能である。
【0034】
一方、透過表示領域Tにおいては、基板本体10A上に絶縁膜24が形成され、その表面には反射膜20及び絶縁膜26は形成されていない。すなわち、絶縁膜24上に画素電極9、及びポリイミド等からなる配向膜27が形成されている。
【0035】
次に、対向基板25側は、ガラスや石英等の透光性材料からなる基板本体25A上(基板本体25Aの液晶層側)に、カラーフィルタ22(図3(b)では赤色着色層22R)が設けられた構成を具備している。ここで、着色層22Rの周縁はブラックマトリクスBMにて囲まれ、ブラックマトリクスBMにより各ドット領域D1,D2、D3の境界が形成されている(図3(a)参照)。
【0036】
そして、カラーフィルタ22の液晶層側には、ITO等の透明導電膜からなる共通電極31、ポリイミド等からなる配向膜33が形成されている。ここで、共通電極31には、反射表示領域Rにおいて凹部32が形成され、配向膜33の表面、すなわち液晶層50の挟持面には凹部32に略沿って形成された凹部(段差部)が形成されている。この液晶層50の挟持面に形成された凹部(段差部)は基板平面(若しくは液晶分子の垂直配向方向)に対して所定角度の傾斜面を備え、該傾斜面の方向に沿って、液晶分子の配向、特に初期状態で垂直配向した液晶分子の倒れる方向が規制される構成となっている。すなわち、一つのドット内で液晶分子の倒れる方向を複数方向に規制した配向分割構造を採用している。なお、本実施の形態では、TFTアレイ基板10、対向基板25の双方の配向膜27,33に対して、ともに垂直配向処理が施されている。
【0037】
次に、TFTアレイ基板10の外面側(液晶層50を挟持する面とは異なる側)には位相差板18及び偏光板19が、対向基板25の外面側にも位相差板16及び偏光板17が形成されており、基板内面側(液晶層50側)に円偏光を入射可能に構成されており、これら位相差板18及び偏光板19が、又は位相差板16及び偏光板17が、それぞれ円偏光板を構成している。
【0038】
偏光板17(19)は、所定方向の偏光軸を備えた直線偏光のみを透過させる構成とされ、位相差板16(18)としてはλ/4位相差板が採用されている。なお、TFTアレイ基板10に形成された偏光板19の外側には透過表示用の光源たるバックライト15が設けられている。
【0039】
ここで、λ/4位相差板16(18)は、図4に示すように、その平面内において互いに直交する方位角方向の屈折率をnx,nyとし、厚さ方向の屈折率をnzとして、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)を定義した場合に、Nz<1,1.5<Nz<4を満たす構成とされ、具体的にはNz=0.5とされている。
【0040】
このような本実施の形態の液晶表示装置によれば、反射表示領域Rに絶縁膜26を設けたことによって反射表示領域Rの液晶層50の厚みを透過表示領域Tの液晶層50の厚みの略半分と小さくすることができるので、反射表示領域Rにおけるリタデーションと透過表示領域Tにおけるリタデーションを略等しくすることができ、これによりコントラストの向上を図ることができる。
【0041】
また、本実施の形態の液晶表示装置によれば、正面方向から当該液晶表示装置の表示面を見た場合には、高コントラストで反転表示の少ない表示を提供することが可能な一方、横方向から当該液晶表示装置の表示面を見た場合には、低コントラストで視認困難な表示を提供することが可能となる。
【0042】
図5(a)は、本実施の形態の液晶表示装置について、視認角度(極角度)に対して表示の明るさを印加電圧値毎にプロットしたグラフで、図中太線で示したグラフがコントラスト曲線である。このように正面方向(例えば極角度0°付近)から表示面を見た場合には、高コントラストで反転表示の少ない表示が供されていることが分かる。一方、例えば極角度30°付近から表示面を見た場合には、コントラストが10以下となり、横方向からは視認困難であることが分かる。したがって、本実施の形態の液晶表示装置を携帯電話等に適用した場合には、他人からの覗き見を防止することができ、また配向分割構造を採用しているため観察者本人が見る範囲では反転の少ない良好な表示を提供することが可能となる。
【0043】
なお、λ/4位相差板16(18)の光軸と、偏光板17(19)の偏光軸とが略45°の角度をなすように設定されており、対向基板25側に設けられた偏光板17の偏光軸と、TFTアレイ基板10側に設けられた偏光板19の偏光軸とは略直交するように配設されている。さらに、対向基板25側に設けられたλ/4位相差板16の遅相軸(又は進相軸)と、TFTアレイ基板10側に設けられたλ/4位相差板18の遅相軸(又は進相軸)とは略直交するように配設されている。このような構成により、正面方向(例えば極角度0°付近)から表示面を見た場合に、一層高コントラストの表示を提供することが可能となる。
【0044】
また、本実施の形態の液晶表示装置では、円偏光板として、偏光板17(19)と、λ/4位相差板16(18)とを組み合わせたものを採用したが、λ/4位相差板16(18)の液晶層50側に、さらにλ/2位相差板167(187)を配設し、偏光板17(19)と、λ/4位相差板16(18)と、λ/2位相差板167(187)とにより円偏光板を構成してもよい。この場合も、λ/2位相差板162(182)は、上記Nzの値が、Nz<1,1.5<Nz<4を満たすものを採用しており、具体的にはNz=0.5のものを採用した。このような構成によっても、正面方向(例えば極角度0°付近)から表示面を見た場合のコントラストを一層高めることが可能となる。
【0045】
次に本実施の形態の液晶表示装置の視角特性について詳細に説明する。上述したように図5(a)は本実施の形態の液晶表示装置、すなわちNz=0.5のλ/4位相差板16(18)を用いた場合について、視認角度(極角度)に対して表示の明るさを印加電圧値毎にプロットしたグラフである(図中太線で示したグラフはコントラスト曲線)。また、図5(b)はNz=2.0のλ/4位相差板を用いた場合、図5(c)はNz=4.0のλ/4位相差板を用いた場合のグラフで、さらに図6(a)はNz=1.0のλ/4位相差板を用いた場合、図6(b)はNz=1.5のλ/4位相差板を用いた場合のグラフである。
【0046】
図5(a)〜図5(c)は本発明の範囲内のNz値を具備したλ/4位相差板を用いたもので、正面方向(例えば極角度0°付近)から表示面を見た場合には、高コントラストで反転表示の少ない表示が供されている。一方、図5(a)〜図5(c)においてコントラストが10以下となるのは、Nz=0.5では極角度30°付近、Nz=2.0では極角度30°付近、Nz=4.0では極角度15°付近から表示面を見た場合であり、このように横方向から表示面を見た場合は視認が困難となることが分かる。なお、Nzが4.0以上では、視角を制限する効果が必要以上に顕著に現れ、正面方向の視認性も阻害される場合がある。
【0047】
一方、図6(a),図6(b)は本発明の範囲外のNz値を具備したλ/4位相差板を用いたもので、この場合、コントラストが10以下となるのは、Nz=1.0では極角度40°付近、Nz=1.5では極角度40°付近から表示面を見た場合であり、このように横方向から表示面を見た場合にも、ある程度の視認性が確保されることとなる。
【0048】
したがって、本実施の形態のように、λ/4位相差板についてNz<1.0、1.5<Nz<4.0とした場合には、他人からの覗き見を防止することができるようになり、また観察者本人が見る範囲では反転の少ない良好な表示を提供することが可能となる。一方、本発明の範囲外、すなわち1.0≦Nz≦1.5のλ/4位相差板を用いた場合には、横からの覗き見を防止することが困難となる場合があり、携帯電話等の表示部に当該液晶表示装置を適用した場合には、プライバシーを十分に保護できない惧れがある。
【0049】
[第2の実施の形態]
以下、本発明の第2の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図7は、第2の実施の形態の液晶表示装置について、平面図及び断面図を示すもので第1の実施の形態の図3に相当する模式図である。本実施の形態の液晶表示装置の基本構成は第1の実施の形態と同様であり、λ/4位相差板16(18)の液晶層50側にさらに膜厚方向に光軸を有する位相差板からなる視角補償板162(182)を配設した点が異なっている。したがって、図7においては図3と共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0050】
本実施の形態の場合、図7に示すように、視角補償板162(182)をλ/4位相差板16(18)の液晶層50側に配設した。ここでは、視角補償板162(182)として、その平面内において互いに直交する方位角方向の屈折率をnx2,ny2とし、厚さ方向の屈折率をnz2とした場合に、nz2>nx2=ny2を満たすものを採用した。このような面内方向の屈折率よりも厚さ方向の屈折率の方が大きい視角補償板を用いることにより、視角を制限することができた。
【0051】
図8(a)は、本実施の形態の液晶表示装置ついて、視認角度(極角度)に対して表示の明るさを印加電圧値毎にプロットしたグラフであり、第1の実施の形態の図5に相当するグラフである。なお、図中太線で示したグラフがコントラスト曲線である。このように第1の実施の形態と同様、Nz=0.5のλ/4位相差板を備え、さらに視角補償板162(182)を備えた第2の実施の形態の液晶表示装置は、図5(a)に示した第1の実施の形態の液晶表示装置に比べて、視角が一層制限され、特に極角度20°付近でコントラストが10以下となっていることが分かる。なお、正面方向から表示部を見た場合には、視角補償板162(182)を配設した影響は殆どなく、高コントラストで、反転のない表示が視認される。以上のことから、nz2>nx2=ny2を満たす視角補償板を液晶表示装置に具備させることにより、視角を一層制限できることが分かる。
【0052】
なお、このようなnz2>nx2=ny2を満たす視角補償板は、λ/4位相差板の構成に拘らず、すなわちNzの値が1.0≦Nz≦1.5となるλ/4位相差板を用いた場合にも、視角を制限する効果が発現される。例えば図8(b)に示すように、Nz=1.0のλ/4位相差板を用いた液晶表示装置に、上記nz2>nx2=ny2を満たす視角補償板を具備させた場合、図6(a)に比して視角が一層制限され、極角度25°付近でコントラストが10以下となっていることが分かる。また、例えば図8(c)に示すように、Nz=1.5のλ/4位相差板を用いた液晶表示装置に、上記nz2>nx2=ny2を満たす視角補償板を具備させた場合にも、図6(b)に比して視角が一層制限され、極角度30°付近でコントラストが10以下となっていることが分かる。
【0053】
また、図9はNz=2.0のλ/4位相差板に、さらにnz2<nx2=ny2を満たす視角補償板を具備させた液晶表示装置の視角特性を示すグラフで、図5と同様の特性を示したものである。このように、厚さ方向の屈折率が面内方向の屈折率よりも小さい視角補償板を用いた場合にも、Nzの値がNz<1.0、1.5<Nz<4.0を満たす場合には、正面方向からの視認性を向上させつつ、視角を制限して横方向からの視認性を低下させることが可能であることが分かる。
【0054】
以上、本発明の液晶表示装置について、その実施の形態を幾つか示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば上記実施の形態ではTFTをスイッチング素子としたアクティブマトリクス型液晶表示装置に本発明を適用した例を示したが、薄膜ダイオード(Thin Film Diode,TFD)をスイッチング素子としたアクティブマトリクス型液晶表示装置、パッシブマトリクス型液晶表示装置などに本発明を適用することも可能である。その他、各種構成要素の材料、寸法、形状等に関する具体的な記載は、適宜変更が可能である。
【0055】
また、例えば一対の基板のうち観察者側の基板25Aに配設された偏光板17の透過軸を、表示面の上下方向と略平行に設定することができる。この場合、例えば偏光サングラスを装着した観察者に対して明るい表示を選択的に提供することが可能となり、当該液晶表示装置の使用用途が一層広がるものとなり、例えばプライバシー保護を一層高めることも可能となる。
【0056】
なお、本実施の形態では、液晶層に垂直配向型の液晶を使用したが、平行配向型の液晶を使用した場合にも、配向分割構造を採用し、位相差板のNzについてNz<1.0、若しくは1.5<Nz<4.0を満たしているか、或いはnz2>nx2=ny2を満たす視角補償板を用いていれば本発明の効果を実現することができる。また、本実施の形態では、半透過反射型の液晶表示装置の例を示したが、透過型若しくは反射型の液晶表示装置についても、本発明の範囲に属するNz値の位相差板、或いはnz2>nx2=ny2を満たす視角補償板を用いていれば本発明の効果を実現することができる。さらに、本実施の形態では、液晶層厚調整層を具備するものを例示したが、この調整層も視角を制限する上では必須のものではない。
【0057】
[電子機器]
次に、本発明の上記実施の形態の液晶表示装置を備えた電子機器の具体例について説明する。図10は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図10において、符号1000は携帯電話本体を示し、符号1001は上記液晶表示装置を用いた表示部を示している。
【0058】
このような携帯電話等の電子機器の表示部に上記実施の形態の液晶表示装置を用いたため、正面方向から表示部を眺めた場合、高コントラストの表示が得られる一方、横方向から表示部を見た場合には低コントラストの表示を供し視認困難とした。したがって、使用者には視認性に優れた表示を供する一方、他人に覗き見をされ難い、プライバシーを重視した電子機器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態の液晶表示装置の等価回路図。
【図2】 同、液晶表示装置のドットの構造を示す平面図。
【図3】 同、液晶表示装置の要部を示す平面模式図及び断面模式図。
【図4】 位相差板の屈折率異方性を示すための説明図。
【図5】 本発明に属する位相差板を用いた液晶表示装置について極角度に対し表示の明るさをプロットしたグラフ。
【図6】 比較例の液晶表示装置について極角度に対し表示の明るさをプロットしたグラフ。
【図7】 第2の実施の形態の液晶表示装置の要部を示す平面模式図及び断面模式図。
【図8】 本発明に属する視角補償板を用いた液晶表示装置について極角度に対し表示の明るさをプロットしたグラフ。
【図9】 本発明に属する液晶表示装置について極角度に対し表示の明るさをプロットしたグラフ。
【図10】 本発明の電子機器の一例を示す斜視図。
【符号の説明】
9…画素電極、10…TFTアレイ基板、16,18…位相差板、17,19…偏光板、20…反射膜、22…カラーフィルタ層、24…絶縁膜、25…対向基板、50…液晶層、162,182…視角補償板、R…反射表示領域、T…透過表示領域
Claims (6)
- 一対の基板間に液晶層が挟持され、前記液晶層は、初期配向状態が垂直配向を呈する誘電異方性が負の液晶からなり、1つのドット領域内に透過表示を行う透過表示領域と反射表示を行う反射表示領域とが設けられ、前記一対の基板のうちの少なくとも一方の基板と前記液晶層との間には、前記反射表示領域の液晶層厚を前記透過表示領域の液晶層厚よりも薄くする液晶層厚調整層が少なくとも前記反射表示領域に設けられてなる液晶表示装置であって、
前記液晶層は、一つのドット領域内で液晶分子が複数の方向に配向制御可能に構成され、前記一対の基板の液晶層と異なる側には、該液晶層に円偏光を入射するための円偏光板が配設されてなり、
前記円偏光板は位相差板を含む一方、前記液晶層と前記円偏光板との間に、厚さ方向に光軸を有する第2位相差板が更に設けられており、
前記第2位相差板について、その平面内において互いに直交する方位角方向の屈折率をnx2,ny2とし、厚さ方向の屈折率をnz2とした場合に、nz2>nx2=ny2を満たすことを特徴とする液晶表示装置。 - 前記円偏光板は、偏光板とλ/4位相差板との組合せにて構成され、該λ/4位相差板が、その面内屈折率の大きい方をnx、小さい方をnyとし、厚さ方向の屈折率をnzとして、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)と定義した場合に、Nz<1,1.5<Nz<4を満たすことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
- 前記円偏光板は、λ/2位相差板とλ/4位相差板とを含んで構成され、該λ/2位相差板とλ/4位相差板との各々は、その面内屈折率の大きい方をnx、小さい方をnyとし、厚さ方向の屈折率をnzとして、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)と定義した場合に、Nz<1,1.5<Nz<4を満たすことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
- 前記一対の基板の一方の側に設けられた第1偏光板の偏光軸と、他方の側に設けられた第2偏光板の偏光軸とが略直交し、さらに一対の基板の一方の側に設けられたλ/4位相差板の遅相軸(又は進相軸)と、他方の側に設けられたλ/4位相差板の遅相軸(又は進相軸)とが略直交することを特徴とする請求項2又は3に記載の液晶表示装置。
- 前記一対の基板のうち観察者側の基板に配設された前記偏光板の透過軸が、表示面の上下方向と略平行に設定されていることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
- 請求項1ないし5のいずれか1項に記載の液晶表示装置を備えたことを特徴とする電子機器。
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