JP4444496B2 - 低温コーティング - Google Patents
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Description
本発明は制御放出、通常は遅放性配合物、特には活性成分を大腸に送達するのに適する組成物に関する。
【0002】
アミロースを含む組成物が、活性成分を大腸に送達するのに用いることができる剤形の調製において用いられている。このような剤形の調製はUS5,294,448に記載されており、それには活性成分を水性アミロース−ブタノール複合体から形成されるアミロースの溶液又は分散液と60℃を超える温度で接触させて膜を形成し、その膜を乾燥させることを含んでいる。60℃を超える温度は、膜形成組成物を含む溶液又は分散液中でそれぞれアミロースを維持又は溶融するために必須であるものと考えられる。組成物が冷却されたとき、そこから形成される膜中のアミロースはガラス状態である。
【0003】
ガラス状アミロースはアミロースの非晶質形態の1つであり、他方はゴム状アミロースである。アミロース膜の冷却及び乾燥速度はアミロース膜の調製において重要であると考えられる。冷却速度が遅すぎる場合、アミロースの結晶領域が形成される。膜中の水の量が特定の量を超えている場合、アミロースはゴム形態で形成されることがある。結晶性及びゴム状アミロースの両者は胃腸(GI)管で消化することができず、大腸への活性物質の送達において用いるための配合物を調製するのに適切であるものとは考えられない。対照的に、ガラス状アミロースは小腸に存在するα−アミラーゼによる攻撃に対しては耐性であるものの、大腸に存在するミクロフローラによって分解されることが見出されている。これらの特性は、それが大腸に活性成分を送達するのに用いることができる剤形の調製に特に適することを意味する。
【0004】
しかしながら、純粋にガラス状のアミロースを含む外被又は膜は水性環境において膨潤することが見出されており、これらの膨潤した膜は剤形がGI管を通過することで受けるもののような機械的応力を受けたときにそれらの構造的一体性を保持することができない。したがって、アミロースのみを含む膜又は外被は大腸送達において用いるための剤形の調製には不適切である。
【0005】
アミロースのみを含む膜に関連する不利益を克服するため、アミロース及び膜形成ポリマーを含む混合組成物が調製されている。例えば、US5,294,488を参照。膜形成ポリマーが存在することでアミロースが膨潤する程度が妨がれ、もしくは制限され、GI管を通過する間の幾らかの構造的一体性が膜に付与される。水溶性可塑剤のようなさらなる成分をこの組成物に添加して最終的な膜又は外被の形成を補助することができる。
【0006】
「アミロースのみ」の膜の調製と同様に、この混合膜形成組成物からの膜の調製は、その組成物を活性成分と60℃を超える温度で接触させることを必要とする。前と同様に、これは、コーティング工程に先立って組成物中に存在するアミロースが完全に溶媒和しているか、又は溶融形態にあることを確実なものとするためである。膜を乾燥させたとき、アミロースは好ましくはガラス状態で存在する。ゴム状アミロースを含む外被又は膜が形成されることもあるが、活性物質の放出を促進するためには多孔性の存在を高める必要がある。
【0007】
US5,294,448に記載される方法に従う剤形の形成は活性成分が温度感受性ではない剤形の調製を完全に満足するものであることが見出されているが、60℃未満の温度で熱不安定性である活性物質に用いることはできない。したがって、活性物質が60℃未満で熱不安定性である剤形の調製に用いることができるコーティング方法が必要とされている。本発明は、少なくとも部分的には、この問題に取り組む。
【0008】
本発明者らは、驚いたことに、60℃未満の温度で剤形の調製に用いることができる膜形成組成物を調製可能であることを見出した。驚いたことに、形成される膜の構造的一体性はそれらがGI管を通過する間も実質的に保持される。構造的一体性が保持されるため、外被又は膜は実質的に膨潤せず、それがGI管を通過する際に活性物質によって保持されることを意味することが理解されるはずである。しかしながら、以下に記述するように、膜の一部はGI管の特定の点で失われ、弱められ、又は分解する可能性がある。これらの膜は、予期せぬことに、胃及び小腸の両者における消化に対しても耐性であるが、大腸に存在するミクロフローラによって分解される。
【0009】
本発明の第1の局面は、活性物質をコーティングし、それによって剤形を調製する方法であって、活性物質をアミロース−アルコール複合体、不溶性膜形成ポリマー及び可塑剤からなる水性分散液を含む膜形成組成物と60℃未満の温度で接触させる工程を包含する方法を提供する。このコーティング工程は5ないし50℃、好ましくは20ないし40℃、より好ましくは30ないし40℃、特には35ないし37℃の温度で適切に行うことができる。上に示されるように、この本発明の第1局面に従って被膜された剤形は、驚いたことに、それらがGI管を通過する間、それらの構造的一体性を保持することが可能である。これらは胃及び小腸の両者における消化に対して実質的に耐性であるが、大腸に存在するミクロフローラによって分解される。
【0010】
「膜形成」という用語によっては、その組成物が活性物質(又は活性物質を含む配合物)と接触した際に乾燥によって固化する外被又は膜を形成することが可能であることが理解される。この膜の構造的一体性はそれがGI管を通過する間実質的に保持される。この膜又は外被は胃及び小腸における消化に対して実質的に耐性であり得るが、大腸のミクロフローラによって分解される。
【0011】
また、本発明の方法を用いて形成された膜又は外被はアミロース及び不溶性セルロース系ポリマーもしくはアクリル系ポリマーの実質的に均一な混合物を含むものと信じられる。均一という用語には、不溶性セルロース系ポリマーマトリックス中にランダムに分散するアミロースの明確な領域を含む膜に加えて、その分散が、例えば、アミロースの領域を不溶性セルロース系ポリマーマトリックス材料と区別することができないようなものである膜が含まれる。
【0012】
「活性物質」という用語は、低周囲温度を上回る温度、例えば20ないし40℃に感受性であり、又は感受性であり得るあらゆる物質を意味するが、この範囲外の温度では分解しない物質をも含むことが理解される。活性成分は、制限されることなく、例えば、食品、医薬又は電気的に導電性の成分であり得る。しかしながら、特には、治療又は診断においてヒト又は獣医学的医薬に有用であるあらゆる化合物又は組成物が含まれる。
【0013】
好ましい活性成分には、大腸の疾患又はその治療管理が大腸経由で最良に達成される疾患の治療に用途が見出される治療上活性の成分が含まれる。そのような疾患には大腸癌、過敏性腸症候群(IBS)及びクローン病が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
活性化合物を特定用途に適する他の担体材料と混合できることは理解されるであろう。したがって、特に治療用途には、しばしば活性化合物を1種類以上の増量剤及び潤滑剤、例えば、それぞれ乳糖及びステアリン酸マグネシウムと混合する。治療用の活性化合物の投与量は文献、例えば、ABPIデータシート概要に開示される通りであり、又は、時には、化合物のより効率的な送達のためにより少ないものであり得る。活性成分は1種類以上の追加活性成分と共に用いることができる。
【0015】
「活性物質」という用語には、コートもしくは非コート活性化合物又は成分を収容することができるカプセルも含まれる。したがって、活性物質には、限定されることなく、ペレット、カプセル又は錠剤が含まれる。
【0016】
活性物質は、単独で、又は担体と混合して、コーティング材料を用いてその物質の一体性を破壊することはないがその組成物の最小膜形成温度を上回る温度でコートする。
【0017】
「剤形」という用語は、限定されることなく、ヒト又は動物の患者に投与することができ、又は農業又は工業用途に用いることができるあらゆる固形剤形が含まれるものと理解されるべきである。適切な剤形の例には錠剤、ペレット及びカプセルが含まれる。
【0018】
治療薬の遅放の達成、特には上に論じられるようなそれらの大腸への送達におけるそれらの価値に加えて、本発明の組成物は診断において、例えば、X線及びNMR画像診断技術に関連する造影剤のような薬剤の大腸への送達において有用である。他の診断領域としては、アレルギーを診断するために潜在的にアレルゲン性の食品成分を大腸に送達することがある。
【0019】
「不溶性ポリマー」という用語は、膜形成組成物中に存在するポリマーが水不溶性であることに加えて、水性酸性及びアルカリ性媒体に不溶性でなければならないことを意味するものと理解される。したがって、室温での水に対する膜形成ポリマーの溶解度は10%w/v未満でなければならない。溶解度のレベルはpH1での水性酸性媒体中では1%w/v未満でなければならず、pH7.2での水性アルカリ性媒体中では1%w/v未満でなければならない。あらゆる薬学的又は農学的に許容し得る不溶性ポリマーを本発明の膜形成組成物の調製において用いることができる。好ましい膜形成ポリマーには水不溶性セルロース系ポリマー又はアクリル系ポリマーが含まれる。セラックも用いることができる。異なるポリマーの混合物を用いることができる。エチルセルロースを膜形成ポリマーとして用いることが特に好ましい。
【0020】
「アクリル系ポリマー」という用語にはアクリレート及びメタクリレートポリマーの両者、特にはそれらのコポリマーが含まれ、これらのポリマーにおけるエステル化基は様々な型のもの、例えば、C1−18アルキル基である。好ましい形態のアクリレートポリマーは、分解がpHには依存しないEudragit、特にはEudragit RL及びRSの商標で市販されているものである。
【0021】
好ましい分子量範囲は、膜形成セルロース材料については42,000ないし280,000g/モル(すなわち、ダルトン)であり、膜形成アクリル系ポリマー材料については150,000ないし250,000g/モル(すなわち、ダルトン)であるが、適切である場合には、これらの範囲外の分子量、例えばより大きい分子量を有する材料を用いることができる。
【0022】
イン・ビボでのセルロース材料の分解は一般にはpH依存性ではなく、アクリレート材料にもこれが当てはまることが好ましい。これは、主ポリマー鎖の側鎖の適切な形態、特には、陽電荷を有するものとは反対に低陰電荷を有し、好ましくは無電荷の側鎖を選択することによって達成される。アクリレート系ポリマーの好ましい形態は、タンブリッジウェルズのDumas(UK) LimitedによってEudragitの商標で販売されているもの、特には分解がpHに無関係である材料Eudragit Lである。好ましいセルロースポリマー、エチルセルロースは、Dow Chemical Company及びShinetsu Chemical ProductsによってEthocelの商標で販売されている。
【0023】
セルロース系ポリマーの他の好ましい形態にはエチルセルロース・シュードラテックス(ethyl cellulose pseudolatex)溶液が含まれ、これはSurelease(登録商標)及びAquacoat(登録商標)の商標で販売されている。
【0024】
Surelease(登録商標)は、エチルセルロース(20cP、USNF)、可塑剤セバシン酸ジブチル及びオレイン酸安定化剤の均一溶融物を形成し、その溶融物をアンモニア処理水中に分散させて25%w/wの固体を含む分散液を得ることによって調製する。セバシン酸ジブチルの代わりに、又はそれに加えて、水素化ヤシ油を可塑剤として用いることもできる。可塑剤(セバシン酸ジブチル及び/又は水素化ヤシ油)は、一般には、エチルセルロースポリマーの重量を基準にして20ないし24%、好ましくは21ないし22重量%を構成する総量で存在する。水中に分散させる前に可塑剤を膜形成ポリマーに添加するプロセスは予備可塑化(pre−plasticisation)として知られており、したがって「予備可塑化ポリマー」という用語は理解されるはずである。可塑化は、可塑剤を不溶性ポリマーの水性分散液に添加することによっても達成することができる。
【0025】
Aquacoat(登録商標)は、エチルセルロース(10cPS、プレミアグレード)を水に非混和性の溶媒に溶解し;アニオン性界面活性剤及び安定化剤の存在下において水中で乳化し;その粗製エマルジョンを均質化して有機溶媒を除去し、30%w/wの固体を含む水性シュードラテックス分散液を得ることによって製造する。商業的に入手可能なAquacoat(登録商標)分散液は可塑剤を含まない。
【0026】
アミロース−アルコール複合体の水性分散液の形成は公知であり、US5,294,448に、及びMilojericらによってJ.Controlled Release,38(1996) 75−84にも記載されており、アミロースの溶液からアミロース−アルコール複合体の形成によって沈殿させることを必要とする。あらゆるC3−6アルコールをアミロースの沈殿に用いることができる。ブタン−1−オールを溶液からのアミロースの沈殿に用いることが特に好ましい。
【0027】
本発明の第1の局面に従って調製される剤形は、5ないし40℃、好ましくは20ないし40℃、特には33ないし37℃の温度で、0ないし2時間、好ましくは1/2ないし1時間、特には1/2ないし3/4時間にわたって乾燥させる。剤形を乾燥させる温度は、部分的には、コーティングを実施する温度に依存し、好ましくはそのコーティング温度を上回ることがない。剤形を乾燥させる時間は、その膜形成組成物の初期濃度及び選択された乾燥温度のような因子に依存する。長時間の乾燥時間は、それらが最終的な膜の内に結晶領域を生じる可能性があるため、回避するべきである。短時間の乾燥時間は、アミロースが最終形態において非晶質形態、好ましくはガラス形態に保持されることを保証する。
【0028】
膜形成組成物は、適切には、1ないし12%w/wのアミロース−アルコール複合体、7ないし30%w/wの不溶性ポリマー及び不溶性ポリマーの重量を基準にして20ないし40%の可塑剤を含む。膜形成組成物は、アミロース−アルコール複合体の水性分散液を不溶性ポリマー及び可塑剤の水性分散液と混合することによって都合よく調製される。典型的には、不溶性ポリマーの水性分散液を可塑剤の水性分散液と迅速剪断混合することによって予備可塑化する。不溶性ポリマーの予備可塑化を促進するため、Tween80(登録商標)のような界面活性剤を分散液の重量を基準にして約0.1%の量添加することができる。その代わりに、分散前に、可塑剤をエチルセルロースポリマーと直接混合することができる。
【0029】
コーティング工程に用いられる膜形成ポリマーの実際の濃度は、一般には、用いられるコーティング法に依存する。一般には、流延法にはより高い濃度が必要であり、これに対して噴霧法にはより低い濃度が必要である。流延に用いられる組成物は最終組成物の重量を基準にして22ないし80%の固体を含むことができ、これに対して噴霧に用いられる組成物は重量基準で15ないし25%の固体、好ましくは16ないし22%w/wを含むことができる。
【0030】
アミロース−アルコール複合体の水性分散液は、好ましくは、アミロース−ブタノール複合体の分散液である。分散液中のアミロース−ブタノール複合体の濃度は最終分散液の重量を基準にして3ないし12%の範囲、好ましくは4ないし8重量%、より好ましくは5ないし7重量%、特には6%w/wであり得る。
【0031】
不溶性ポリマーの水性分散液の濃度は最終分散液の重量を基準にして15ないし30%の範囲、好ましくは17ないし28%、より好ましくは20ないし25%w/w、特には25%w/wであり得る。これらの範囲外の濃度を有する分散液を用いることができる。本発明の方法においては商業的に入手可能なエチルセルロース分散液Surelease(登録商標)及びAquacoat(登録商標)を用いることが好ましい。
【0032】
膜形成組成物の成分を混合する相対比は最終的な膜における不溶性ポリマー対アミロースの望ましい比に依存する。一般には、膜形成組成物における不溶性ポリマー対アミロースの比は形成される最終的な膜又は外被におけるものと同じにするものと理解される。不溶性ポリマー対アミロースの比は1:1ないし7:1の範囲、好ましくは1:1ないし5:1の範囲、特には3:2ないし2:1の範囲であることが好ましい。特定の環境においては、この範囲外の不溶性ポリマー対アミロース比、例えば10:1を有する膜形成組成物の使用を予想することができる。特に良好な結果が、5:2及び3:2の不溶性ポリマー対アミロース比を有する膜形成組成物を用いてそれぞれ達成されている。
【0033】
本発明において用いられる膜形成組成物中のアミロースの濃度は、そのアミロースが形成される膜においてガラス形態であるのに十分なものであることが好ましい。
【0034】
そのガラス状態において、ポリマーの構造は一般には剛性である;ゴム状態においてはポリマー鎖の移動及びポリマーの弾性が高められた領域が見出される。アミロースはガラス転移温度(Tg)未満でガラス状態として存在する。この温度を通過して昇温すると、アミロースの熱容量が0.5±0.15Jg−1K− 1(ジュール毎グラム毎ケルビン度)急激に増加する。この熱容量の増分はTgの同定を可能にするもので、示差走査熱量測定によって測定することができる。Tg値を得るための手順及びそのようなより初期の手順の参考文献の例はOrfordらによってJ.Biol.Macromol.1989,11,91に示されている。
【0035】
本発明の膜形成組成物から形成される所定の膜又は外被におけるアミロースの特定のTgはその純度及び他の特性に依存する。したがって、例えば、純粋な乾燥アミロースの理論的Tgは210℃と予想されるが、水の存在がこの数字を低下させる:10%w/wの水でTgは80℃であり、20%w/wの水で7℃である。α−デンプン分解酵素がガラス状アミロースを容易に分解することはないことが見出されており、この効果はTgを20℃まで上回っても依然として明らかである。このような材料は水性媒体中で1−9のpH範囲にわたって37℃で、胃又は腸における分解に耐性であるのに十分なだけ不溶性であることが見出されている。しかしながら、これらは大腸に存在する糞便微生物によって産生される酵素で分解される。示されるように、必要とされる遅放性をもたらすガラス状アミロースの能力はそのガラス状アミロースがTgを通過して直ちに失われることはなく、したがって、Tg未満の温度でガラス状態で生成されたアミロースはTg未満の温度に加えてTg又はTgを僅かに上回る温度で、そのガラス性を保持しながら、利用することができる。しかしながら、本発明において好ましく用いられるガラス状アミロースは、その組成物の使用が想定される温度、すなわち37℃の体温を20℃を超えて下回ることのないTgを有する。したがって、アミロースのTgは、形成される膜又は外被において、17℃以上であることが好都合であり、好ましくは少なくとも30℃、より好ましくは少なくとも約40℃である。Tgはそれに含まれる水の量を制御することによって予め決定することができる。これは、冷却又は噴霧するアミロース溶液の濃度を変化させることにより、及び生じたゲルを乾燥させることにより達成することができる。
【0036】
あらゆる所定の条件下における特定のアミロース試料の適合性の最終試験は、水性条件下、特には1−9のpH及び37℃の温度での加水分解性の分解に耐え、都合よくは、胃及び小腸において通常生じるもののような消化性酵素の存在下での酵素性分解に耐え、しかしながら大腸に通常存在する微生物叢によってもたらされるもののようなアミロース開裂性酵素の存在下において酵素性分解を受けるその能力である。
【0037】
したがって、形成される膜又は外被中のアミロースは実質的に遊離であり、すなわち、20重量%以下、好ましくは10重量%又は5重量%以下しか、胃又は小腸における分解に感受性である物質を含まないことが好ましい。特には、ガラス状アミロースは、好ましくは10重量%又は5重量%以下、例えば1又は2%以下しかアミロペクチンを含まず、更に都合よくはアミロペクチンにおいて見出される型のグルコシド結合を含むあらゆる物質をも、好ましくは10重量%又は5重量%以下しか含まない。アミロースと混合された他の物質の存在が胃及び小腸と大腸との間でのこの物質の分解の選択性を低下させることは理解されるであろう。
【0038】
形成される膜又は外被におけるアミロースの純度についての都合のよい試験は、Banksら,Starke,1971,23,118に記載されるもののような標準検定手順におけるそのヨウ素結合能力によって提供される。例えば、純粋な非誘導体化アミロースはヨウ素と約19.5w/wのレベル(すなわち、19.5±0.5%w/w)で結合し、これに対して他の主要デンプン多糖、アミロペクチンは2.0w/w未満が結合し、アミロースの誘導体化もこの結合能力を低下させる。したがって、都合よくは、本発明において用いられるアミロースはヨウ素と15.0%±0.5%w/w以上のレベルまで、好ましくは18.0%±0.5%w/w以上のレベルまで、特には19.5±0.5%w/wのレベルまで結合する。
【0039】
本発明において用いられるアミロースの分子量は少なくとも20000g/モル(ダルトン)であることが好ましく、100000ないし500000g/モルの範囲の重量が特に好ましい。コーティング組成物において用いられるアミロースの重量が特定の要件及び環境に依存し、上述の重量範囲より下又は上のいずれかの分子量を有するアミロースも有利に用いられることがあることに言及できることは理解されるであろう。
【0040】
本発明の方法から形成される剤形の放出特性は膜形成組成物及びコーティング条件の性質を変化させることによって制御することができる。剤形からの活性物質の放出は、限定されることなく、外被における不溶性ポリマー対アミロースの比、用いられる可塑剤の量、用いられる外被の厚み及びコートされる活性物質の溶解度特性に依存することが見出されている。
【0041】
10:1ないし7:1のような高い不溶性ポリマー対アミロース比を有する組成物は活性物質の放出を有意に遅らせる膜を生じることが見出されている。1:1の低い不溶性ポリマー対アミロース比を有する組成物は薬物(活性物質)の放出を有意の程度まで遅らせる能力に劣る膜を形成することが見出されている。5:2ないし3:2の不溶性ポリマー対アミロース比を有する組成物は、その剤形が胃及び小腸に存在する期間は実質的に薬物の放出を阻害することが可能であるが、続いて薬物の溶解又は放出を許容する膜を形成することが見出されている。
【0042】
剤形からの活性物質の放出速度は形成される外被又は膜の厚みに依存し、より厚い膜では活性物質の溶解がより高程度に遅れることが見出されている。膜の厚みは、その剤形が胃及び小腸を通過する間は活性成分の放出を妨げるが、大腸においてはそれらの放出を可能にするように適切に選択される。実際には、選択される外被の厚みは、膜形成組成物の性質に加えてコートすることが望まれる活性物質の溶解度にも依存する。不溶性ポリマー対アミロースの比が低い場合又は活性物質の溶解度が高い場合にはより厚い外被を用いることが好ましい。不溶性ポリマー対アミロースの比が高い場合及び活性物質の溶解度が低い場合にはより薄い外被が好ましい。
【0043】
膜形成組成物において用いられる可塑剤は、その組成物の膜形成特性を抑制しない場合には親水性可塑剤を用いることもできるが、好ましくは本質的に疎水性である。不溶性ポリマーの分散液に添加される可塑剤の量は、その不溶性ポリマーが予備可塑化されているかどうか、すなわち、分散液を形成する前に可塑剤がその不溶性ポリマーに添加されているかどうかによる。不溶性ポリマーが予備可塑化されていない場合、不溶性ポリマーの重量を基準にして20ないし40%、好ましくは24ないし36重量%の可塑剤を不溶性ポリマーの分散液に、それを膜形成組成物に組み込む前に添加することができる。不溶性ポリマーが予備可塑化されている場合、予備可塑化された不溶性ポリマーの重量を基準にして5ないし15%の可塑剤を不溶性ポリマーの分散液に、それを膜形成組成物に組み込む前に添加することができる。予備可塑化された不溶性ポリマーに添加される追加可塑剤の実際の量はその不溶性ポリマーが予備可塑化されている程度に依存し、分散液中に存在する可塑剤の総量(予備可塑化ポリマー中に存在する可塑剤の量+あらゆる追加可塑剤)は不溶性ポリマーの重量を基準にして40%を超えないことが好ましい。存在する可塑剤が不十分である場合(20%未満)、その膜は断片の存在を特徴とし、脆く、かつ強度が不十分である。多すぎる可塑剤が存在する場合(40%超)、その膜はしわの寄った外見を呈し、そのポリマーは半固体状態である。前と同様に、このような膜は剤形がGI管を通過する間に受ける機械的な力に耐えるのには不十分な強度のものである。不溶性ポリマーの重量を基準にして24ないし36%の可塑剤を含む膜形成組成物は滑らかで、透明で連続的な膜をもたらし、この膜は良好な機械強度を有するもので、かつそれらを活性物質の大腸送達における使用に適するものとする溶解プロフィールを伴う。
【0044】
膜中に存在する可塑剤の量は活性物質の溶解プロフィールをもたらすことも見出されている。高濃度の可塑剤は剤形からの活性物質のより遅い放出速度に結びつく。したがって、膜形成組成物中に含まれる可塑剤の量は、部分的には、形成される外被の厚みの他に膜中に存在する不溶性ポリマー及びアミロースの相対量に依存することが理解されるであろう。不溶性ポリマー対アミロースの比が大きい場合には必要とされる可塑剤はより少ない。外被の厚みが大きい場合にも必要とされる可塑剤は少ない。
【0045】
本発明において用いられる膜形成組成物で用いることができる可塑剤の例には、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリエチル、トリアセチン、クエン酸アセチルトリブチル、水素化ヤシ油及びクエン酸トリブチルが含まれる。選択される不溶性ポリマーがSurelease(登録商標)である場合、好ましい可塑剤はセバシン酸ジブチル、クエン酸アセチルトリブチル、水素化ヤシ油及びクエン酸トリブチルであり、特にはセバシン酸ジブチルである。Aquacoatが不溶性ポリマー分散液として用いられる場合、好ましい可塑剤はセバシン酸ジブチル、クエン酸トリエチル、トリアセチン、クエン酸アセチルトリブチル及びクエン酸トリブチルである。Aquacoat(登録商標)が用いられる場合にはセバシン酸ジブチル及びクエン酸トリブチルが特に好ましい。
【0046】
本発明の第1の局面による方法が熱不安定性活性成分を含む剤形の調製に特に適することは理解されるであろう。したがって、本発明の第2の局面は熱不安定性活性成分を含む剤形を提供し、この剤形は本発明の第1の局面による方法に従ってコートされる。その活性成分はあらゆる適切な担体もしくは賦形剤又はあらゆる他の活性成分との混合された状態で存在していてもよい。「熱不安定性」という用語によっては、その活性物質が不安定であり、60℃、好ましくは50℃、特には40℃を上回る温度で分解する傾向を有することが理解される。
【0047】
本発明の第1の局面による方法において用いられる疎水性可塑剤を含む膜形成組成物はそれ自体が新規であるものと信じられる。本発明の第3の局面は、アミロース−アルコール分散液、不溶性膜形成ポリマー及び疎水性可塑剤からなる水性分散液を含む組成物を提供する。この組成物の成分の性質及び相対量は上で論じられている。
【0048】
前に示されるように、本発明の第1の局面に従って調製される剤形には大腸の疾患及び状態における使用、特にその治療管理が大腸経由で最良に行われる治療での使用において、特定の用途が見出される。したがって、本発明は、治療において使用するための本発明の第2の局面による剤形の使用を提供する。
【0049】
また、本発明は治療方法をも提供し、この方法は本発明の第1の局面に従って調製した剤形を患者に投与することを包含する。
【0050】
ここで以下の非限定的な例を参照して本発明を説明する。本発明の範囲内にあるこれらの例の変形は当業者には理解されるであろう。
【0051】
実施例1
37℃未満で形成したエチルセルロース膜の研究
(a) エチルセルロース分散液Surelease(登録商標)EA7100及びAquacoat(登録商標)ECD30の最小膜形成温度(MFFT)に対する可塑剤の量、組み込み技術及び型の影響を評価するのに用いられる方法
Surelease(登録商標)EA7100及びAquacoat(登録商標)ECD30のMFFTに対する可塑剤の型、量及び組み込み技術の影響を評価するのに2つの異なる方法を用いた。最小膜形成温度(MFFT)は膜形成組成物が固化して膜を形成する最低温度である。
【0052】
(i)視認評価
第1のものは分散液をガラスペトリ皿に注ぐことによるものである。これらの分散液をクラス2のクリーンルーム環境において周囲温度(15−25℃)で乾燥させ、視認検査した。全ての視覚的な観察を、表1に示される数値格付けシステムを用いて格付けした。これらは20±5℃で膜を形成するのに必要な可塑剤の水準を示す。同じ数値格付けシステムを用いて実施例2ないし4の混合膜を評価した。
【0053】
【表1】
【0054】
(ii)MFFTバーを用いる評価
第2の方法では各々の配合物に特有のMFFTを決定した。MFFTバーを用いた。MFFTバーの一端の熱水浴を46±1℃に設定し、他端の冷水浴を3±1℃に設定した。これにより展開表面に32.5±1.0℃から12±1.0℃の温度勾配が形成された。このMFFTバーを横切る温度勾配を使用前に少なくとも2時間平衡化させた。各々の実験の開始時及び終了時にJenway3070デジタル表示温度計を用いて温度を測定した。装置は調節可能な支持体及びアルコール水準器を用いて水平にした。可塑化した分散液配合物をその表面全体に展開した。一旦展開すると、膜は室湿で形成された。膜が乾燥した後、その膜が依然として連続しているバー上の最低温度をMFFTとして採用した。2つの温度サンプリング点の間で膜が不連続になった場合には、その2つのサンプル抽出した温度のうちの高いほうをMFFTとして採用した。全ての実験を2回行った。報告されたMFFTは2回の実験の各々の開始時及び終了時に採用された4つの温度の平均であった。
【0055】
(b) Surelease(登録商標)EA7100及びAquacoat(登録商標)ECD30のMFFTに対する可塑剤の量、組み込み技術及び型の影響の研究
添加した可塑剤の量をそのエチルセルロース分散液の固体含量の%w/wで表した。この研究において、このパーセンテージは以下の通りに定義した:
可塑剤の%w/w=(添加した可塑剤の含量)/(エチルセルロース分散液
の固体含量)×100
【0056】
Surelease(登録商標)EA7100は25%w/wの固体分散液と理解された;Aquacoat(登録商標)ECD30は30%w/wの固体分散液と理解された。この定義に基づくと、全てのSurelease(登録商標)配合物における可塑剤の%w/wは単に添加された可塑剤を反映するものであり、存在する本当の量を反映するものではなかった。追加の可塑剤がなくとも、Surelease(登録商標)は既に24%w/wのセバシン酸ジブチル可塑剤を含んでいた。したがって、Surelease(登録商標)分散液に添加される可塑剤の量は、しばしば、Aquacoat(登録商標)分散液に添加される量よりもかなり少ないものであった。
【0057】
4種類の異なる可塑剤組み込み技術を評価した。
【0058】
第1のものは、マグネチック・スターラーを用いて可塑剤を水性エチルセルロース分散液と直接混合するものであった。可塑剤を1/2時間、24時間及び72時間混合した。30パーセントw/wのセバシン酸ジブチルをAquacoat(登録商標)に添加し、6%w/wのセバシン酸ジブチルをSurelease(登録商標)に添加した。これらの可塑化した分散液をガラスペトリ皿に2回流延した。
【0059】
第2の技術はTween80、界面活性剤の添加を含んでいた。可塑剤及びTween80(登録商標)をマグネチック・スターラーで5分間混合した。次に、エチルセルロース分散液を添加し、マグネチック・スターラーでさらに30分間撹拌した。30分後、水を添加した。次いで、その最終配合物を手動ホモジナイザーに通した。最終配合物をガラスペトリ皿に2回流延し、上述の条件下で乾燥させた。1%のTween80(登録商標)及び10ないし50%の追加可塑剤を含む組成物を調べた。Aquacoat(登録商標)ECD30はセバシン酸ジブチル、クエン酸トリエチル及びトリアセチンで可塑化した。
【0060】
第3の技術においては、必要とされる量の可塑剤、Tween80(登録商標)及びシュードラテックスを高速Silversonホモジナイザー混合機で3分間混合した。Surelease(登録商標)を含む組成物の追加可塑剤含有率はエチルセルロース固体の重量を基準にして0ないし12%である。Aquacoat(登録商標)を含む組成物については、エチルセルロース固体の重量を基準にして18ないし30%の可塑剤含有率を調べた。全ての場合において、Tween80(登録商標)は分散液の重量を基準にして0.01%存在していた。これらの配合物を密封容器内に一晩放置した。一晩の保存の後にも泡立ったままである配合物はそれ以上調べなかった。そうでなければ、配合物をMFFT装置で評価した。用いた可塑剤はセバシン酸ジブチル、クエン酸トリエチル、トリアセチン、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリブチル、ポリプロピレングリコール、グリセロール及びポリエチレングリコール400であった。
【0061】
最後の技術においては、Tween80、可塑剤及び水を予備混合して粗製エマルジョンとした後、エチルセルロース・コーティング分散液を添加した。可塑剤エマルジョンは、Silversonホモジナイザー混合機を用いて可塑剤及び水の一部を0.1%のTween80(登録商標)と混合することにより形成した。次に、この新たに混合した可塑剤エマルジョンを、マグネチック・スターラーで撹拌しているエチルセルロース・コーティング分散液に30分間かけて添加した。予備研究により30分の混合時間で十分であることが示唆されていた。Aquacoat(登録商標)ECD30配合物のみを調べた。Aquacoat(登録商標)ECD30をセバシン酸ジブチル、クエン酸トリエチル、トリアセチン、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリブチル、ポリプロピレングリコール、グリセロール及びポリエチレングリコール400で可塑化した。基本配合物は分散液中の固体の重量を基準にして18ないし36%の可塑剤及び0.1%w/wのTween80を含む。
【0062】
結果
マグネチック・スターラーを用いてエチルセルロース分散液を可塑剤と混合することによって形成された配合物からは矛盾する結果が得られた。これらの配合物の特性は速度を増加させて成分を混合することによって改善された。これは、マグネチック・スターラーを高剪断混合機に置き換えることによって達成された。この混合機の高剪断作用は可塑剤とポリマーとのより緊密な混合を可能にした。エネルギーを多く投入することもこの研究における可塑剤の溶媒和速度を高める。Silverson混合機を代わりに用いた。その混合作用は多量の空気を分散液中に引き込んだ。最終混合物は一晩放置して気泡を分散させた。
【0063】
高剪断混合手順を用いて得られる可塑化エチルセルロース膜は再現可能であった。油状パッチ又は小気泡構造は見られず、良好な可塑剤の性能が達成されていることが示唆された。MFFTは疎水性可塑剤、例えば、セバシン酸ジブチル、クエン酸アセチルトリブチル及びクエン酸トリブチルのみで低下した;親水性可塑剤はSurelease(登録商標)のTFFTに対してはほとんど、ないし全く効果がなかった。この技術はSurelease(登録商標)への可塑剤の組み込みにおいては成功した。試験した全ての疎水性可塑剤、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリブチル及びクエン酸アセチルトリブチルは、Surelease(登録商標)のMFFTの低下において有効であることが示されている可塑剤であった。
【0064】
第4の可塑剤組み込み技術はAquacoat(登録商標)配合物のために開発された。これは、分散液に添加する前に、50%の水を含む可塑剤エマルジョンを形成することを包含する。追加の水があることによってその分散液は希釈され、かつ噴霧コーティング時間が増加するため、この技術は前の技術が適切ではない場合にのみ用いた。
【0065】
この技術を用いて、形成されるAquacoat(登録商標)膜は再現可能であることが見出され、良好な可塑剤の性能が達成された。前の知見とは反対に、Aquacoat(登録商標)のMFFTは選択される疎水性及び親水性可塑剤によって影響を受けた。MFFTの低下における親水性可塑剤、例えば、クエン酸トリエチル及びトリアセチンの成功は、Aquacoat(登録商標)中に存在する安定化剤及び消泡剤のような他の賦形剤の影響によるものである可能性がある。
【0066】
可塑化Surelease(登録商標)配合物のMFFTを可塑化Aquacoat(登録商標)配合物のMFFTと比較した場合、幾つかの共通する特徴が見られた。いずれの場合においても、セバシン酸ジブチル、クエン酸アセチルトリブチル及びクエン酸トリブチルはMFFTの低下に成功した。他方、グリセロール、ポリエチレングリコール400及びポリプロピレングリコールは失敗した。セバシン酸ジブチル、クエン酸アセチルトリブチル及びクエン酸トリブチルによるSurelease(登録商標)のMFFTの低下並びにセバシン酸ジブチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル及びトリアセチンによるAquacoat(登録商標)のMFFTの低下は、全て添加した可塑剤の濃度に直接比例するものと考えられる。
【0067】
実施例2
37℃未満の温度で形成されるアミロース/エチレン組み合わせ膜の研究
本発明の膜形成組成物の調製において用いられるアミロース−ブタノール分散液をエンドウ豆デンプン粉末から調製した。アミロース画分を、窒素雰囲気下でのエンドウ豆デンプン粉末の連続浸出によって単離した。膨潤ゼラチン化デンプン顆粒(主としてアミロペクチン)を穏やかな遠心(2000G)及びガラス焼結フィルター(空隙率2)を通す濾過によって除去した。その濾液にブタン−1−オールを添加することによりアミロースをそのアミロース−ブタノール複合体として沈殿させた。+1℃で24時間貯蔵した後、ブタン−1−オール複合体を遠心によって集めた。この複合体を、膜形成組成物に組み込む前に、水中に分散させた。
【0068】
(a) ポリマー配合物のMFFTの研究
まず、エチルセルロース分散液を必要量の可塑剤で可塑化した。Aquacoat(登録商標)及びSurelease(登録商標)を実施例1に示される異なる可塑化技術を用いて可塑化した。次に、可塑化したエチルセルロース分散液を水性アミロースアルコール分散液と、マグネチック・スターラーで5分間撹拌することによって混合した。以下の配合物の全てにおいて、エチルセルロース対アミロースの比は分散液中に存在するエチルセルロース及びアミロースの固体の重量を基準とするものである。次いで、最終分散混合物をMFFTバーの表面に展開した。
【0069】
様々な温度勾配をMFFTバーの表面全体に設定した。このような変化はMFFTがMFFTバーのいずれかの末端に近すぎることを回避するのに必要であるものと判断された。セバシン酸ジブチル可塑剤を含む配合物のみを調べた。全ての実験は2回行った。1:0、7:1、5:1及び3:1のエチルセルロース(Aquacoat(登録商標)又はSurelease(登録商標)のいずれか)対アミロース重量比を有する配合物を調べた。Aquacoat(登録商標)をエチルセルロース分散液として用いた場合には、エチルセルロースの固体の重量あたり24、30及び36%の可塑剤を添加する効果を調べた。Surelease(登録商標)をエチルセルロース分散液として用いた場合には、エチルセルロースの固体の重量あたり0、4、8及び12%の可塑剤を添加する効果を調べた。実施例1に示されるように、商業的に入手可能なSurelease(登録商標)はエチルセルロースの固体の重量を基準にして24%のセバシン酸ジブチルを既に含んでいる。
【0070】
(b) 混合ポリマー・フリー膜の流延
混合ポリマー配合物を上記(a)に記述される通りに調製した。それらをPTFEペトリ皿に注ぎ、ファン支援オーブン(Pickstoneオーブン、連続番号16254)において35℃で乾燥させた。その後、乾燥させた膜を、さらに試験する前に、少なくとも24時間温度及び湿度制御環境に保存した。飽和炭酸カリウム塩溶液を用いて、20℃で保存されたデシケータ内を44%RHに維持した。
【0071】
これらの混合ポリマー配合物は35℃の乾燥温度で膜を形成した。しかしながら、形成された膜の幾つかはフリー膜として扱うには脆すぎたり、軟らかすぎたりすることがある。様々なポリマー比の、Surelease(登録商標)/アミロース+4%w/wセバシン酸ジブチル(DBS)及びAquacoat(登録商標)/アミロース+36%DBSを含む膜が、フリー膜として扱うのが最も容易であるものと考えられた。これらの配合物をさらなる膜の研究に用いた。
【0072】
結果
(a)ポリマー配合物の最小膜形成温度(MFFT)の研究
ポリマー配合物のMFFTを表2に示す。
【0073】
【表2】
【0074】
これらの結果から、アミロース−ブタノール複合体の水性分散液をエチルセルロース分散液に添加することで、最終混合ポリマー分散液のMFFTがそのエチルセルロース分散液それ自体のものに対して低下することがわかる。全ての混合配合物が37℃より少なくとも10℃低いMFFTを有することが示され、これは、試験した全ての組成物が37℃での固形剤形への噴霧コーティングに潜在的に適していたことを意味する。MFFTが低下する程度は試料中に存在するアミロースの量に依存することが見出された。より多量のアミロースを含む組成物は多量の不溶性ポリマーを含む組成物よりも低いMFFTを有することが見出された。加えて、組成物中に存在する可塑剤の量を高めることによってもMFFTが低下することも明らかである。
【0075】
実施例3
模擬大腸媒体における混合ポリマー膜の消化の研究
エチルセルロース、アミロース及び可塑剤を含む流延及び噴霧混合ポリマー・フリー膜をイン・ビトロ発酵モデルにおける消化について試験した。流延膜は上記実施例2(b)に記載される方法によって形成した。膜の厚みは、各々の場合において予め決定された乾燥固体重量に等しい混合ポリマー分散液を流延することによってできるだけ均一に維持した。
【0076】
噴霧膜は、35℃に設定した温度制御チャンバ内で、分散液配合物を大きなスズ箔片上に繰り返し噴霧することによって形成した。卓上扇風機をこのチャンバ内に収容して分散液の乾燥速度を高めた。分散液は、加圧エアロゾル缶に取り付けたスプレーガンを用いて噴霧した。噴霧での損失のため、非常に薄い膜を形成するのにも比較的多量のコーティング分散液が必要であった。このため、噴霧膜を用いる研究は限定された。
【0077】
全ての膜を20℃及び44%RHで7日間保存した後、約(3×1)cm2の細片に切断した。これらの膜の細片をSartorious 2001 MP2天秤を用いて正確に秤量した後、紐をかけたナイロンメッシュのバッグに入れた。このバッグのサイズは(2×8)cm2であり、メッシュサイズ=(1×0.4)cm2であった。対照はリン酸バッファ中でインキュベートし、試験は糞便スラリー中でインキュベートした。
【0078】
この研究において用いた模擬大腸媒体は(10−15)%w/wの新たに***された人間の糞便を含み、以下のバッファ溶液を用いて作製した。
【0079】
【0080】
このバッファを少なくとも15分間煮沸し、塩の溶解を助けることに加えて酸素を除去した。次に、このバッファ溶液を水浴において37℃に冷却した。この冷却プロセスを通して、このバッファ溶液中で窒素を絶えず泡立てた。このバッファ溶液の半分を対照溶液として用いた。他方の半分には糞便を接種した。必要量の糞便を秤量し、バッファ溶液に添加した。バッファ中の糞便の均一化はstomacher器機(stomacher 3500、Colworth)を用いて行った。この糞便スラリーを500μmのふるいを通して濾過し、均質化されなかった繊維状物質を除去した。その後、このスラリー100mlを各々の試験瓶に充填した。ナイロンメッシュ・バッグ内の膜を加え、それらの瓶を窒素陽圧の下でゴムストッパー及び金属クリンプを用いて密封した。その後、それらの瓶を37℃のインキュベーター内で撹拌せずに放置した。
【0081】
インキュベーションの6時間又は24時間後、ナイロンメッシュ・バッグ内の膜を回収した。膜の細片を注意深く集め、蒸留水で洗浄して濾紙の間で乾燥させた後、20℃、44%RHで7日間保存した。7日後、それらの膜をSartorious 2001 MP2天秤で再秤量した。全ての膜断片を注意深く洗浄して集めた。(0.2×0.2)cm2ほどの小さい断片はナイロンメッシュに付着していたためそのままにした。消化について試験した混合ポリマー膜の配合が消化後に残留する膜の重量%と共に表3に示されている。
【0082】
結果
混合ポリマー膜の消化性の研究
この発酵実験における3種類の膜の全ては実験の開始時に異なる重量を有していた。比較を行うため、膜の消化性を消化後に残留する膜のパーセンテージとして表した。表3に示される、残留する膜の重量パーセンテージは以下の通りに算出した:
残留膜の%=(最終的な膜の重量/初期の膜の重量)×100
【0083】
噴霧又は流延によって形成されたアミロース膜は匹敵する消化性プロフィールを有していた。したがって、流延膜が最終的に噴霧コートされた膜の消化性を試験するのに妥当なモデルと考えられた。
【0084】
消化された膜のパーセンテージと混合Surelease(登録商標)/アミロース膜中に存在するアミロースの量とは関連するように思われた。膜のアミロース含量が増加するに従って重量損失の程度も増加した。これは、膜中の消化性画分がおそらくはアミロースであることを示唆していた。これはヨウ素試験によってさらに確認された。発酵試験において24時間のインキュベーションから回収した膜をヨウ素で染色して光学顕微鏡の下で見た場合、Surelease(登録商標):アミロース(1:1)+4%DBSの膜中に濃い青に変色した領域はなく、膜中のアミロース画分が消化されて除かれたことが示された。これは、この膜中の増加した疎水性可塑剤の存在がアミロースの消化を阻止しなかったことを示していた。
【0085】
【表3】
連続的なAvebe膜は生成せず、透明な膜断片のみであった。連続的なAquacoat(登録商標)混合膜が生成したものの、それらはPTFEプレートから取り除くには脆すぎた。これらの連続膜は容易に亀裂が生じ、試験するのに十分に大きい膜の断片を得ることができなかった。
【0086】
しかしながら、24時間の消化を受けたSurelease(登録商標):アミロース(3:1)及び(5:1)膜を染色するのにヨウ素を用いた場合、この膜の幾つかの領域は、そのような領域が消化を受けなかったものと比較して少ないと思われるものの、依然としてヨウ素で濃い青色に変色した。これは、アミロースが可塑化したエチルセルロースと混合したときも依然として消化性ではあるものの、その消化速度が異なることを示していた。この消化速度の変化は以下の理由の1つ以上によるものである可能性があった。
【0087】
エチルセルロースの存在の増加により、アミロースドメインがもはやその膜の断面を通して連続ではなくなり、アミロースが酵素の攻撃を受けにくくなっていることがあり得る。この攻撃の受けにくさは、膜中のエチルセルロース対アミロースの比が最も高いときに最高である。
【0088】
可塑剤の存在もアミロースの消化速度に影響を与えることがあり得る。大部分の細菌酵素は脂肪及び油を消化することができず、非基質表面に自然に引き寄せられることはない。セバシン酸ジブチルの存在がエチルセルロースの存在に直接比例するため、アミロースの消化速度はエチルセルロース対アミロース比が増加するに従って減少する。
【0089】
第3に、アミロースの消化速度はエチルセルロースによるアミロースの膨潤を抑制することによって影響を受ける可能性がある。他のポリマーの消化が、それらの最大膨潤能力が低下したときに影響を受けることが示されていた(Rubinstein及びGliko−Kabir、1995)。
【0090】
この研究の間の他の重要な観察は、Avebeによって供給されるアミロース−ブタノール複合体分散液が連続する膜を形成することができないことであった。Avebeアミロースはジャガイモデンプンから誘導されるアミロペクチンの加水分解によって調製された。この連続膜構造の欠如はその低分子量画分に原因があった。Avebeからのアミロースにはこの研究において用いた他のアミロースよりも低い分子量画分が存在していた。これは、ポリマーの分子量とその膜形成特性とが直接相関することを示す。より良好な膜形成特性はより大きい分子量のポリマーにおいて見出すことができた。
【0091】
Aquacoat(登録商標)/アミロース混合膜中のアミロースの消化は噴霧膜を用いてのみ評価することが可能であった。噴霧膜は、流延膜とは異なり、大きな実験誤差を示した。これらは、対照実験においてさえ、それらのスズ箔裏層から剥離する傾向にあり、これは損失を示す。加えて、スズ箔裏層のために、膜の一方の側のみからしか消化が行なわれないことによって消化速度を低下させもする。それにも関わらず、膜の損失はリン酸バッファ中でインキュベートしたものと比較して糞便スラリー中でインキュベートしたAquacoat(登録商標)/アミロース膜の方がより大きいものであった。これは、高度に可塑化したAquacoat(登録商標)膜中のアミロースが消化性であることを示唆していた。その消化速度はSurelease(登録商標):アミロース(5:1)+4%DBS噴霧膜に匹敵するものでもあった。
【0092】
結論として、37℃未満の温度で形成された混合膜中のアミロース画分は消化性である。しかしながら、このアミロース画分の消化速度はエチルセルロース対アミロースの比が増加したときには低下する。これは、これらの混合組成物から形成される外被又は膜が大腸への活性成分の送達に適することを示唆する。
【0093】
実施例4
溶解試験
これらは5−アミノサリチル酸(5−ASA)(30%)、グルコース(30%)及びAvicel(登録商標)(40%)からなるペレット形態を用いて実施した。これらのペレットはAGIペレットと呼ばれた。
【0094】
5−ASAは過敏性腸症候群(IBS)のような状態の治療に用途が見出されることから用いた。リン酸バッファ、模擬胃液及び模擬大腸液のそれぞれにおける一連のコート及び非コートペレットの溶解プロフィールを決定した。
【0095】
ペレットは、様々な配合変数の影響を研究するように指定されたものに類似する一連のコーティング配合物で噴霧コートした。Surelease(登録商標)/アミロース系は二元分散解析を用いて研究した。その2つの変数は外被の厚み及びSurelease(登録商標)対アミロース比であった。追加の可塑剤は含めなかった。
【0096】
Aquacoat(登録商標)/アミロース系は三元分散解析を用いて研究した。その3つの変数は外被の厚み、Aquacoat(登録商標)対アミロース比及び可塑剤の量であった。
【0097】
以下の成分をコーティング配合物の調製に用いた:
(a)作製して6%w/wに濃縮したアミロース−ブタノール複合体の水性分散液:
(b)Colorcon、USAからのSurelease(登録商標)EA7100、バッチNo.600041−1。
(c)FMC Corporation、USAからのAquacoat(登録商標)ECD30、バッチNo.J3202。
(d)Merck、UKからの工業級のTween80、バッチNo.3139220。
【0098】
コートしたペレットを以下のもので作製された媒体を用いた模擬胃及び小腸条件において試験した:
(a)5N塩酸、AnalaR級、Merck、UK、バッチNo.50065821
(b)オルトリン酸二水素カリウム、AnalaR級、Merck、UK、バッチNo.A890225
(c)水酸化ナトリウムペレット、AnalaR級、Merck、UK、バッチNo.050594H225S
(d)Sigma、UKからのペプシン、力価1:2500、バッチNo.45H0867
(e)Sigma、UKからのパンクレアチン、USP仕様に等しい力価、バッチNo.100H0124
(f)クエン酸、一般目的等級、Merck、UK、バッチNo.3863580M
(g)リン酸二ナトリウム、一般目的等級、Merck、UK、バッチNo.5029200M。
【0099】
コートしたペレットを、実施例3において述べられる製法に従ってMerck、UKからの以下の化学薬品を用いて作製した媒体を用いた模擬大腸条件において、試験した:
(a)リン酸水素二カリウム、AnalaR級、バッチNo.302A604476
(b)リン酸二水素カリウム、AnalaR級、バッチNo.A890225551
(c)塩化ナトリウム、GPR級、バッチNo.L20603432
(d)塩化マグネシウム、MgCl2・6H2O、GPR級、バッチNo.TA576032
(e)硫酸第1鉄、FeSO4・7H2O、GPR級、バッチNo.A843740522
(f)塩化カルシウム、CaCl2・2H2O、GPR級、バッチNo.TA69532 445。
【0100】
(a) 水性コーティング配合物の調製
エチルセルロースコーティング分散液をアミロースと混合する前に可塑化した。
【0101】
Surelease(登録商標)を追加の可塑剤と共に、又はそれなしで用いた。Surelease(登録商標)を追加の可塑剤と混合する場合には、必要量のセバシン酸ジブチル(DBS)をSurelease(登録商標)に添加し、Silverson混合機を用いて3分間、高剪断混合で混合した。その混合物に覆いをかけ、一晩放置して混合の間に形成された泡を除去した。次に、必要量の可塑化Surelease(登録商標)分散液を室温でアミロース−ブタノール複合体分散液と、低速マグネチック・スターラーを用いて混合した。コーティングを行なっている間中、撹拌を維持した。
【0102】
Aquacoat(登録商標)は必要量の可塑剤で直接可塑化することができず、代わりに可塑化剤分散液で可塑化した。DBS可塑化剤を50%のDBS、0.1%のTween80(登録商標)及び49.9%の水で作製した(Rohm Pharma、1993)。得られた混合物をSilverson混合物と混合して粗製エマルジョンを得た。これは新たに調製しなければならなかった。
【0103】
したがって、アミロース−ブタノール複合体分散液を添加する前に、マグネチック・スターラーによって30分間、Aquacoat(登録商標)を可塑剤分散液と混合した。撹拌はコーティングを行なっている間中、維持した。Aquacoat(登録商標)の可塑化処理は室温で行った。
【0104】
調製したコーティング配合物中に存在する各成分の割合に関する全ての計算は乾燥固体の重量を基準とするものであった。これらの実験におけるDBSの全てのパーセンテージは、系の総ポリマー重量ではなく、エチルセルロース乾燥ポリマーの重量のパーセンテージとして表した。DBSがエチルセルロース可塑剤であり、それがアミロースの添加に先立って組み込まれたことからこのアプローチを採用した。各々の配合物系からの算出の例は以下の通りである:
7:1及び3:1エチルセルロース−アミロース配合物を、同様の方法で調製した。
【0105】
(b) 流動床コーティング
ペレットを底部噴霧流動化床において以下の条件下でコートした:
バッチサイズ 40g
外被重量 4g
導入口温度 36℃
排出口温度 32℃
噴霧空気圧 0.1バール
噴霧速度 0.6−0.7ml/分
流動化空気 13単位
乾燥時間 30分
【0106】
外被の厚みは、以下の通りに定義される理論的な重量増加、TWGの観点から表した:
TWG=(外被重量)/(ペレットの重量+外被重量)×100
TWGは試験したペレットについてこれらの条件下で9.1%であった。それらを、溶解試験に先立って、相対湿度45%で少なくとも48時間保存した。
【0107】
(c) イン・ビトロ溶解研究
コートしたペレットをパドル撹拌溶解試験装置、PharmaTest Mode PTWS(Apparatebau、ドイツ)を用いて試験した。500mgの非コートペレットに相当する量のペレットを37℃に維持した溶解媒体900mlに入れた。この媒体を100rpmで絶え間なく撹拌した。最初の3時間は、0.1N HCl(pH1.5)を溶解媒体として用いた。これに続く9時間は、pH7.2のリン酸バッファを用いた。指定された間隔で3mlの試料を自動サンプラー(PharmaTest、Apparatebau、Type PTFC1、ドイツ)によって採取した。次に、これらの試料をUV−Vis分光光度計(Perkin−Elmer554)を用いて、0.1N HClについては302nmで、リン酸バッファについては332nmで吸光度を測定した。
【0108】
最も許容し得るコーティング配合物からの5−ASAのイン・ビトロ放出を模擬胃腸条件下でさらに評価した。最初の3時間は新たに調製した模擬胃液(0.32%w/vのペプシンを含む0.1N HCl)900mlを溶解媒体として用い、次に、さらに9時間を新たに調製した模擬腸液(1%w/vのパンクレアチンを含む0.2Mリン酸バッファ)900mlに置き換えた。吸光度を測定する前に、これらの試料を遠心して0.2μmフィルターを通して濾過した。
【0109】
5−ASAは酸中及びリン酸バッファ中の両者において線形に吸光することが従来示されている。コートしたペレットから放出される5−ASAの濃度をこれらの較正調査から算出した。
【0110】
グルコースの放出
グルコースのイン・ビトロ放出を酸/リン酸バッファ混合溶液及び5−ASAについて上に記載される手順を用いて評価した。グルコースの濃度はGlucose−GOD PERID(登録商標)診断キット(Boehringer Manheim)を用いて測定した。
【0111】
(d) 模擬大腸媒体を用いるイン・ビトロ発酵研究
この発酵試験システムは、フリー膜の消化性を試験するのに前に用いられたバッチ培養試験システムであった。このシステムを試験して振盪及び非振盪試験条件における非コートペレットの放出性能を比較した。発酵媒体の容積及びペレットの量も変化させてこの媒体内での5−ASAについての最適試験条件を調べた。全ての実験は2回行った。
【0112】
大腸におけるコートしたペレットからの5−ASAの放出を研究する前に、糞便スラリーにおける5−ASAの安定性を調べる研究を行った。この研究においては、既知量の5−ASA粉末を嫌気的に密封した瓶内の糞便スラリー及びリン酸バッファの各々100mlに添加し、その瓶を以下に述べられる試験手順と同じ条件下で振盪した。試料を周期的に採り、試験試料と同じ方法で処理した。これらの試料中の5−ASAの含量を高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。
【0113】
試験に先立って既知量のペレットを100mlの0.1N HClに最大で30分浸漬した後、嫌気的に密封した瓶内の模擬大腸媒体に移した。これらの瓶を窒素の陽圧下で密封し、この実験を通してのローター・アームの速度が100rpmである、37℃のインキュベーター振盪器内に水平に寝かせた。指定された時間に、2.0mlの試料をこれらの瓶から採取した。これらの試料を1300rpmで5分間遠心した。透明な上清を除去し、2回目の遠心を13000rpmで5分間行った。最後に、上清を0.2μmのフィルターを通して濾過し、HPLCを用いて分析した。
【0114】
この「酸」予備処置は、形成される外被を、それらが模擬大腸媒体に露出される前に強化する効果を有するように思われた。
【0115】
溶解試験の結果
(1)酸/リン酸バッファ混合溶液中の5−ASAの溶解プロフィールに対する外被の厚みの効果
(a)Surelease(登録商標)/アミロース系
外被の厚みの違いによる効果を2.5:1;5:1;7:1及び10:1のSurelease(登録商標)対アミロース比について調べた。溶解プロフィールに対する厚みの効果が5:1より上のSurelease(登録商標):アミロース比では小さかったため、結果を2.5:1及び5:1の比についてのみ図1及び2に示す。外被の厚みが5%TWGから15%TWGに増加するに従い、溶解試験において放出される5−ASAの量は減少した。厚みの効果はSurelease(登録商標)対アミロース比が最低(2.5:1)であるときに最も顕著であった。
【0116】
(b)Aquacoat(登録商標)/アミロース系
これらの結果はSurelease(登録商標)/アミロース系について得られたものに類似していた。外被の厚みが5%TWGから15%TWGに増加するに従い、溶解研究において放出される5−ASAの量は減少した。
【0117】
(2)酸/リン酸バッファ混合溶液中の5−ASAの溶解プロフィールに対する不溶性ポリマー対アミロースの比の効果
(a)Surelease(登録商標)/アミロース系
Surelease(登録商標)対アミロースの比を2.5:1から10:1に変化させる効果を5%TWGの一定の外被厚について調べた。Surelease(登録商標)対アミロースの比が増加するに従い、溶解は遅延し、放出される5−ASAの量は減少した。これらの結果を5%TWGの外被厚について図3に示す。溶解は5:1を上回るSurelease(登録商標):アミロース比で大きく遅延した。同様の結果が、TWG10%及び15%のコーティング厚を用いる実験を繰り返すことによって得られた。得られた結果により、外被厚を増加させることによって5−ASAの放出も遅延するという上記の知見が確認された。
【0118】
(b)Aquacoat(登録商標)/アミロース系
これらの結果はSurelease(登録商標)/アミロース系について得られたものに類似する。不溶性ポリマー(Aquacoat(登録商標))の割合が増加するに従い、溶解試験において放出される5−ASAの量は減少した。
【0119】
(3)酸/リン酸バッファ混合溶液中の5−ASAの溶解プロフィールに対する可塑剤の割合の効果
(a)Aquacoat(登録商標)/アミロース系
商業的に入手可能なAquacoat(登録商標)は追加の可塑剤を含んでいない。したがって、5%、10%及び15%TWGの外被厚及び5:1、7:1及び10:1の不溶性ポリマー対アミロース比を有するコーティングへの24%ないし36%w/wのセバシン酸ジブチル可塑剤の添加を調べた。それらの結果を、TWG10%及び5:1のAquacoat(登録商標):アミロース比について図4に示す。同様の結果が調べた他のコーティング配合物について得られた。これらの結果から、セバシン酸ジブチル(DBS)可塑剤の量が24%w/wから36%w/w(Aquacoat(登録商標)固体を基準に算出)に増加するに従って放出される薬物の量が減少したことが明らかである。
【0120】
(b)Surelease(登録商標)/アミロース系
Aquacoat(登録商標)/アミロース系について記載されるものに類似する結果が得られた。この場合、商業的に入手可能なSurelease(登録商標)は既に24%の可塑剤を含んでいるため、エチルセルロースポリマーの重量を基準にして0ないし12%の可塑剤を添加した。
【0121】
(4)イン・ビトロ発酵システムにおけるコートしたペレットからの5−ASAの比放出に対する不溶性ポリマー対アミロースの比の効果
(a)Surelease(登録商標)/アミロース系
1:1、1.5:1、2:1、3:1及び4:1のSurelease(登録商標):アミロース比及び5%、10%及び15%TWGの外被厚を有するコーティング配合物を調べた。図5には、1.5:1のSurelease(登録商標):アミロース比及び10%TWGを有するコーティングの比放出(specific release)が示されている。同様の結果が他のコーティング配合物から得られた。一般には、5−ASAの放出速度は配合物中のSurelease(登録商標)の割合が増加するに従って抑制された。
【0122】
Surelease(登録商標):アミロース(1.5:1)+4%DBS、TWG=10%でコートしたペレットは、リン酸対照と比較して、糞便試験化合物中で非常に早い放出を示した。2:1未満のSurelease(登録商標):アミロース比を有する組成物は試験の最初の5時間以内に幾らかの放出を示すことが観察された。
【0123】
(b)Aquacoat(登録商標)/アミロース系
この系の結果はSurelease(登録商標)/アミロース系のものに広く類似する。Aquacoat(登録商標):アミロース(2:1)+36%DBS、TWG=10%でコートしたペレットは上部胃腸管における最小早期薬物放出と大腸における十分に大きい薬物放出との最適バランスを示した。
【0124】
両者の系で、早期の放出に関して大きく妥協することなく容易な消化を可能にするのに十分な比のアミロースを有するコーティングについて最適条件が見出された。これらの条件は、1.5:1及び2:1のSurelease(登録商標):アミロース比のそれぞれで、及びAquacoat(登録商標):アミロース(2:1)+36%DBS、TWG=10%で満たされるものと考えられる。
【0125】
(5)グルコースの放出
Surelease(登録商標):アミロース(1.5:1)+4%DBS、TWG=10%でコートしたペレットからのグルコースの放出は同じ条件下での5−ASAの放出よりもかなり大きいことが観察された(図6)。同様の結果がAquacoat(登録商標):アミロース(2:1)+36%DBS、TWG=10%でコートしたペレットについて得られた。グルコースは5−ASAよりも可溶性である。これは、このコーティング組成物が可溶性に劣る物質の放出を制御するのにより適することを示唆する。中程度から高度に水溶性の活性成分を含む経口投与可能な配合物の大腸送達は、厚い外被の形成、もしくはより高い不溶性ポリマー対アミロース比を有する膜形成組成物の使用のいずれか、又は両者の組み合わせを必要とする。
【0126】
実施例5
安定性の研究
安定性の研究を、制御された相対湿度の条件において、Merck、UKからの化学薬品を用いて行った。
【0127】
(a)シリカゲル、工業級、Merck、U.K.、バッチNo.7019980N
(b)炭酸カリウム、一般目的試薬級、Merck、U.K.、バッチNo.K21928435530
(c)硝酸ナトリウム、AnalaR級、Merck、U.K.、バッチNo.C216466502
5:1、7:1及び10:1のAquacoat(登録商標)対アミロース比;5、10及び15%TWGの外被厚並びにその水性分散液中に用いられるエチルセルロース固体の重量を基準にして24、30及び36%の可塑剤を有するコーティングを含む配合物を、20℃で、0%相対湿度(RH)、44%RH及び78%RHでの保存に対するそれらの安定性について調べた。
【0128】
結果
所定の配合物の外被厚を変化させることにより、最も薄い外被、5%が20℃、0%及び44%RHでの1ヶ月保存に関しては不安定であるが、20℃、78%RHでは安定であることが示された。他方、10%及び15%の外被厚は調べた保存条件の全てで安定であることが示された。外被厚は外被の安定性に影響を及ぼしていた。より厚い外被を有する配合物は保存に関してより安定であることが見出された。
【0129】
所定の配合物中の可塑剤の量を変化させることにより、この変数も外被の安定性に影響を及ぼすことが示された。可塑剤の影響は低湿度で最も顕著であり、配合物は高相対湿度の条件下で保存したときにより安定であった。
【0130】
エチルセルロース対アミロースの比を5:1から10:1に変化させた場合、外被は44%以上の相対湿度で保存したときにのみ安定であった。
【0131】
5−ASAを活性成分として含む剤形を、様々な量の追加DBS、0%、4%、8%及び12%を含有する、Surelease(登録商標)を含む膜形成組成物で5−ASAペレット核をコーティングすることによって形成した。コーティング直後の溶解の結果は、薬物放出の観点からは、この4種類の配合物から形成された外被の間にほとんど相違がないことを示した。しかしながら、周囲温度及び湿度で1ヶ月保存したときには、追加の可塑剤を含む配合物のみが安定であることが見出された。僅かに4%の追加可塑剤で十分であることが示された。Aquacoat(登録商標)/アミロース系を用いた場合と同様に、配合物を44%RH以上の条件下で保存したときにより高い安定性が観察された。
【図面の簡単な説明】
【図1】 Surelease EA7100:アミロース(2.5:1)を用いて35℃でコートしたAG1ペレットの溶解の結果に対する外被厚の効果を表す図である。
【図2】 Surelease EA7100:アミロース(5:1)を用いて35℃でコートしたAG1ペレットの溶解の結果に対する外被厚の効果を表す図である。
【図3】 35℃で5%TWGまでコートしたAG1ペレットの溶解の結果に対するSurelease EA7100:アミロース比の変化の効果を表す図である。
【図4】 10%TWG厚までコートしたAG1ペレットの溶解に対する、Aquacoat ECD30:アミロース比(5:1)における可塑化剤含量の変化の効果を表す図である。
【図5】 AG1ペレットからの薬物放出のイン・ビトロ消化性研究の結果を表す図である。
【図6】 Surelease EA7100:アミロース(1.5:1)を用いて35℃でTWG=10%までコートしたAG1ペレットからのグルコースの溶解の結果を表す図である。
Claims (16)
- 活性物質をコーティングし、それによって剤形を調製する方法であって、活性物質を、アミロース−アルコール複合体、不溶性膜形成ポリマー及び可塑剤からなる水性分散液を含む膜形成組成物と60℃未満の温度で接触させることを包含し、前記膜形成ポリマーの水溶解度が室温で10%w/v未満で、pH1の水性酸性媒体中では1%w/v未満、およびpH7.2の水性アルカリ性媒体中では1%w/v未満である方法。
- コーティング工程を5ないし50℃で行う請求項1に記載の方法。
- コーティング工程を30ないし40℃で行う請求項2に記載の方法。
- 膜形成組成物が7ないし30重量%の不溶性膜形成ポリマーを含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- 不溶性膜形成ポリマーがセルロース系ポリマー、アクリル系ポリマー又はセラックである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
- 膜形成組成物が1ないし12重量%のアミロース−アルコール複合体を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
- アミロース−アルコール複合体がアミロースとC 3−6 アルコールの複合体である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
- アミロース−アルコール複合体がアミロース−ブタン−1−オール複合体である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
- アミロースが少なくとも20,000ダルトンの分子量を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
- 膜形成組成物が不溶性膜形成ポリマーの重量を基準にして20ないし40%の可塑剤を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
- 可塑剤がセバシン酸ジブチル、クエン酸トリエチル、トリアセチン、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリブチル及び水素化ヤシ油からなる群より選択される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
- 膜形成組成物中の不溶性膜形成ポリマー対アミロース−アルコール複合体の比が7:1ないし1:1である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
- 前記比が1:1から5:1である、請求項12に記載の方法。
- 活性物質が薬学的に活性な薬剤である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
- 請求項14に記載の方法によって調製される、治療において用いるための剤形。
- 大腸の障害又はその治療が大腸経由で最良になされる障害を有する患者の治療に使用される、請求項15に記載の剤形。
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