JP4440287B2 - 建築用配管材およびこの建築用配管材の成形方法 - Google Patents

建築用配管材およびこの建築用配管材の成形方法 Download PDF

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Description

本発明は、特に、建築物の仕切り部に貫通施工される耐火性に優れた建築用配管材に関するものである。
建築物内に、配管(電線管、排水管、ダクト等)を設置する場合には、建築物の床、壁、間仕切り等の仕切り部に、配管等を貫通させる貫通孔(区画貫通部)を設け、この区画貫通部に配管を貫通させた後、前記区画貫通部と配管との間に隙間が生じないように、隙間をモルタルなどにより閉塞する防火措置工法が行われている。
配管材が、金属製である場合は、それ自体に耐熱性、不燃性を有するので、上記の防火措置工法を採用しても特に問題はないが、配管材が、合成樹脂製である場合は、金属製に比べ軽量で取り扱い性に優れるものの、耐熱性に劣る。したがって、火災時に、配管材が燃焼によって消失したり、熱変形して、区画貫通部と配管材との間に隙間が生じて、仕切り部の一方の側で発生した熱、火炎、煙等が他方側へ到達してしまう恐れがある。
そこで、例えば、合成樹脂製の配管材の外面に、アルミガラスクロスやモルタルなどの防耐火被覆層を積層した耐火管が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、このような耐火管は、異種材料を複合して形成したものであり、連続成形が困難で、生産性に劣るという問題点がある。さらに、外面をモルタルで被覆した耐火管は、管の重量が非常に重くなるため、運搬時や施工時の作業性に劣るという問題点もある。
一方、合成樹脂製の配管材の外面に、耐火膨張性を備えたシート状被覆材を巻きつける防火措置工法も採用されている。また、このようなシート状被覆材を構成する耐火性樹脂組成物としては、例えば、ゴムや熱可塑性エラストマーや液状ポリマーなどのベース樹脂に、無機系膨張剤として熱膨張性黒鉛を配合するとともに、形崩れ防止用樹脂としてポリカーボネート樹脂やポリフェニレンサルファイド樹脂などを配合したもの(例えば、特許文献2参照)、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂に、リン化合物、熱膨張性黒鉛、および無機充填剤を多量に含有させたもの(例えば、特許文献3参照)が提案されている。
しかし、このシート状被覆材を用いた防火措置工法の場合、一旦、合成樹脂製の配管材を仮配管して、シート状被覆材を巻きつける部位の位置決めを行った後に、シート状被覆材を配管材に巻きつけ、配管材の支持、固定を行ってから開口部をモルタルで埋め戻すようになっているため、作業工数が多く施工時間が長くかかる上、シート状被覆材を配管材に巻きつけた後は、配管の位置調整がやりにくいという問題がある。
そこで、耐火膨張性を有する樹脂組成物を用いて配管材を直接製造すれば、上記問題は解決されるのであるが、上記特許文献2の耐火性樹脂組成物の場合、ベース樹脂としてゴムや熱可塑性エラストマーや液状ポリマーなどが用いられているため、得られる配管材は、機械的強度に劣るという問題がある。
一方、上記特許文献3の耐火性樹脂組成物の場合、難燃性には優れているものの、無機充填剤、熱膨張性黒鉛、リン化合物などの比率が高いため、押出成形や射出成形等の成形性に劣るという問題があるとともに、ポリリン酸アンモニウム等のリン化合物が、押出成形や射出成形の際に分解して成形体の外観を損ねる恐れがある。リン化合物の分解を抑えるために低温で成形をした場合は、成形体の機械的強度や耐衝撃性が低下する恐れがある。
登録実用新案第3036449号公報 特許第3133683号公報 特開平10−95887号公報
本発明は、上記問題点に鑑みて提案されたものであって、配管材そのもので防火措置が可能な施工性に優れた建築用配管材、およびこの建築用配管材の成形方法を提供することを目的としている。
そして、配管材そのもので防火措置を可能とするためには、配管材に以下の機能を持たせることが必要である。
(1)配管材の燃焼速度を遅延させて、非加熱側に火炎を噴出させないこと。
燃焼速度を遅延させるには、配管材そのものの燃焼を防止するとともに、燃焼時に管壁を熱膨張させ、区画貫通部内への熱の流入をできるだけ防ぐようにすることが望ましい。すなわち、加熱側において、配管材を閉塞させて遮炎することが最良である。また、膨張後の残渣が脱落しないことがより好ましい。
(2)燃焼時に配管材とその外周のモルタルとのシールを保って、非加熱側へ発煙させないこと。
そこで、本願発明者らは、上記(1)(2)の機能を配管材に持たせることを考慮した上で、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、以下の発明に至ったのである。
すなわち、請求項1記載の発明の建築用配管材は、ポリ塩化ビニル系樹脂に熱膨張性黒鉛と無機充填剤とを含有させた耐火性樹脂組成物で構成されており、その配合比が、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、熱膨張性黒鉛が1〜10重量部、無機充填剤が1〜50重量部であることを特徴とする。
請求項1記載の発明において、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して熱膨張性黒鉛を1〜10重量部配合した理由としては、熱膨張性黒鉛が1重量部未満であると、燃焼時に、十分な熱膨張性が得られず、所望の耐火性が得られないし、10重量部を超えると、加熱により組織が熱膨張しすぎて、その形状を保持できずに残渣が脱落し、耐火性が低下してしまうからである。なお、熱膨張性黒鉛の配合比は、好ましくはポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して1〜8重量部であり、さらに好ましくはポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して2〜7重量部である。
また、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して無機充填剤を1〜50重量部配合した理由としては、無機充填剤が1重量部未満であると、燃焼時に、骨材的な働きがなされず、その形状を保持できずに残渣が脱落して、耐火性が低下してしまう恐れがあるし、50重量部を超えると、組成物全体に対するポリ塩化ビニル系樹脂の割合が低くなるため、引張強度が低下してしまう恐れがあるからである。
なお、無機充填剤の好ましい配合比は、請求項2に記載するように、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して2〜5重量部である。
請求項1または請求項2に記載の発明で用いられるポリ塩化ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル単独重合体;塩化ビニルモノマーと、該塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとの共重合体;塩化ビニル以外の(共)重合体に塩化ビニルをグラフト共重合したグラフト共重合体等が挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。又、必要に応じて上記ポリ塩化ビニル系樹脂を塩素化してもよい。
上記塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとしては、特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のα−オレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類などが挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記塩化ビニルをグラフト共重合する(共)重合体としては、塩化ビニルをグラフト(共)重合するものであれば、特に限定されず、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート−一酸化炭素共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなどが挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記ポリ塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、特に限定されるものではないが、小さくなると成形体の物性低下が起こり、大きくなると溶融粘度が高くなって成形が困難になるので、400〜1600が好ましく、600〜1400が、特に好ましい。尚、上記平均重合度とは、複合塩化ビニル系樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、濾過により不溶成分を除去した後、濾液中のTHFを乾燥除去して得た樹脂を試料とし、JIS K−6721「塩化ビニル樹脂試験方法」に準拠して測定した平均重合度を意味する。
上記ポリ塩化ビニル系樹脂の重合方法は、特に限定されず、従来公知の任意の重合方法が採用されてよく、例えば、塊状重合方法、溶液重合方法、乳化重合方法、懸濁重合方法等が挙げられる。
上記ポリ塩化ビニル系樹脂の塩素化方法としては、特に限定されず、従来公知の塩素化方法が採用されてよく、例えば、熱塩素化方法、光塩素化方法等が挙げられる。
上記ポリ塩化ビニル系樹脂はいずれも、樹脂組成物としての耐火性能を阻害しない範囲で、架橋、変性して用いてもよい。この場合、予め架橋、変性した樹脂を用いてもよく、添加剤等を配合する際に、同時に架橋、変性してもよいし、あるいは樹脂に前記成分を配合した後に架橋、変性してもよい。上記樹脂の架橋方法についても、特に限定はなく、ポリ塩化ビニル系樹脂の通常の架橋方法、例えば、各種架橋剤、過酸化物を使用する架橋、電子線照射による架橋、水架橋性材料を使用した方法等が挙げられる。
また、請求項1または請求項2に記載の発明で用いられる熱膨張性黒鉛は、従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理し、グラファイト層間化合物を生成させたもので、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物である
た、請求項1または請求項2に記載の発明で用いられる無機充填剤としては、特に限定されず、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーンナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム「MOS」、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が候補に挙げられる。
また、含水無機物は、加熱時に脱水し、吸熱する性質を有するため、耐火性を高めるうえで有利である。具体的には、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。これらは、単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の建築用配管材の成形方法であって、熱膨張性黒鉛の膨張温度T1と、成形時の樹脂温度T2とが、T1≦240℃、かつ、(T2+10℃)≦T1≦(T2+60℃)
の関係を満たしていることを特徴とするものである。
本発明において、熱膨張性黒鉛の膨張温度T1とは、熱膨張性黒鉛の熱重量分析において、熱膨張性黒鉛の重量が5%減少するときの温度である。
熱膨張性黒鉛の膨張は、黒鉛の層状構造の界面に注入された硫酸等が高温時に揮発して層間が広げられることに起因するため、熱重量分析によって、熱膨張性黒鉛の膨張開始温度を判断することができる。
しかしながら、熱膨張性黒鉛を加熱膨張させたときの各温度におけるガス発生量すなわち膨張量は、黒鉛の層間に処理する酸の種類などによって様々であるため、膨張開始温度から熱膨張性黒鉛の膨張特性は特定されにくい。
そこで、本願発明者らが実験を重ねて様々な熱膨張性黒鉛を分析し評価した結果、ポリ塩化ビニル系樹脂が溶融し分解(発泡)するまでの温度と、熱膨張性黒鉛が目に見えて膨張する温度との関係が重要であると判明したため、熱膨張性黒鉛を膨張開始温度ではなく、熱膨張性黒鉛の膨張がある程度目に見えて進行する温度で規定するのがよいとの結論に至ったのである。
そこで、本発明においては、熱膨張性黒鉛の膨張がある程度目に見えて進行する温度として、熱膨張性黒鉛の熱重量分析において、熱膨張性黒鉛の重量が5%減少するときの温度を熱膨張性黒鉛の膨張温度T1と規定したのである。
なお、熱重量分析は、熱重量分析装置を用いて、熱膨張性黒鉛の試料を白金パン開放容器に入れ、50ml/minの窒素フロー雰囲気の中、10℃/分の昇温速度で、30℃〜500℃まで昇温させて行った。
また、成形時の樹脂温度T2とは、樹脂の溶融時の最高温度をいうものとする。
請求項3に記載の発明は、熱膨張性黒鉛の膨張温度T1と、成形時の樹脂温度T2とが、T1≦240℃、かつ、(T2+10℃)≦T1≦(T2+60℃)の関係を満たしていなければならない。
その理由は、熱膨張性黒鉛の膨張温度T1が、成形時の樹脂温度T2よりも低い場合や、成形時の樹脂温度T2との差がほとんどない場合には、配管材を成形する過程において、熱膨張性黒鉛の膨張が開始してしまうため、耐火性を十分に発現できない恐れがあるからである。
一方、熱膨張性黒鉛の膨張温度T1が、押出成形時の樹脂温度T2よりも格段に高い場合には、配管材を成形する過程において、熱膨張性黒鉛の膨張が開始してしまう恐れはないものの、燃焼時には、ポリ塩化ビニル系樹脂が溶融して分解(発泡)が進行し、ポリ塩化ビニル系樹脂の柔軟性が低下した後に、熱膨張性黒鉛の膨張が起こるため、ポリ塩化ビニル系樹脂が熱膨張性黒鉛の膨張に耐えきれなくなり、バラバラに崩壊してしまうことがあるからである。
なお、熱膨張性黒鉛の膨張温度T1が低すぎると、成形時の樹脂温度T2も低くする必要があるが、成形時の樹脂温度T2が低いと、ポリ塩化ビニル系樹脂の混練状態が悪くなり、配管材としての物性が発現しにくくなってしまう。したがって、使用される熱膨張性黒鉛の膨張温度T1は、190℃以上であることが好ましい。
請求項4に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の建築用配管材の成形方法であって、熱膨張性黒鉛の1.3倍膨張温度T3が180℃〜240℃であり、成形時の樹脂温度T2が、熱膨張性黒鉛の1.3倍膨張温度T3よりも5℃以上低く、かつ、170℃〜210℃であることを特徴とする。
本発明において、熱膨張性黒鉛の1.3倍膨張温度T3とは、加熱炉内を一定温度にして、熱膨張性黒鉛の試料を30分加熱した後の熱膨張性黒鉛の膨張倍率が、1.3以上になる温度である。なお、膨張倍率=(加熱後の試料の体積/加熱前の試料の体積)である。
また、成形時の樹脂温度T2とは、樹脂の溶融時の最高温度をいうものとする。
請求項4に記載の発明は、熱膨張性黒鉛の1.3倍膨張温度T3が180℃〜240℃の範囲であり、成形時の樹脂温度T2が、1.3倍膨張温度T3よりも5℃以上低く、かつ、170℃〜210℃の範囲でなければならない。
その理由は、熱膨張性黒鉛の1.3倍膨張温度T3が、成形時の樹脂温度T2よりもかなり高い温度であると、成形時の安定性には優れているものの、燃焼時に必要な耐火性が得られず、管が崩落してしまうという問題が生じる恐れがあるからである。
一方、熱膨張性黒鉛の1.3倍膨張温度T3が、成形時の樹脂温度T2とほぼ同じ温度であると、成形中に熱膨張性黒鉛が膨張を開始してしまい、管の外観不良を引き起こす上、燃焼時の耐火性が低下してしまう恐れがあるからである。
なお、請求項1または請求項2に記載の発明にかかる建築用配管材には、その物性を損なわない範囲で、難燃剤、安定剤、滑剤、加工助剤、衝撃改質剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、可塑剤、熱可塑性エラストマーなどの添加剤が添加されていてもよい。
上記難燃剤としては、燃焼時の難燃性を高めるためのものであれば特に限定されず、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、ハイドロタルサイト、二酸化アンチモン、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等の酸化アンチモン、三酸化モリブデン、二硫化モリブデン、アンモニウムモリブデート等のモリブデン化合物、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロムエタン、テトラブロムエタン、テトラブロムエタン等の臭素系化合物、トリフェニルフォスフェート、アンモニウムポリフォスフェート等のリン系化合物、ホウ酸カルシウム、ホウ酸亜鉛などが挙げられるが、ポリ塩化ビニルの燃焼抑制効果としては、三酸化アンチモンが特に好ましい。アンチモン化合物は、ハロゲン系化合物の存在下では、高温条件のもとで、ハロゲン化アンチモン化合物を作り、燃焼サイクルを抑制させる効果が非常に強く、相乗効果が著しいからである。
難燃剤を併用することにより、燃焼時において、熱膨張性黒鉛の膨張による断熱効果と難燃剤による燃焼遅延効果が相乗効果を発揮して、より効率的に耐火性能を向上させることができる。難燃剤の添加部数は、特に限定されないが、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、1重量部以上20重量部以下、添加されていることが好ましい。難燃剤が1重量部未満であると、十分な相乗効果が得られにくいことがあるし、難燃剤が20重量部を超えて添加されると、成形性や物性が著しく低下してしまう恐れがあるからである。
上記安定剤としては特に限定されず、例えば、熱安定剤、熱安定化助剤などが挙げられる。上記熱安定剤としては特に限定されず、例えば、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジメチル錫メルカプト、ジブチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ラウレートポリマー等の有機錫系安定剤;ステアリン酸鉛、二塩基性亜りん酸鉛、三塩基性硫酸鉛等の鉛系安定剤;カルシウム−亜鉛系安定剤;バリウム−亜鉛系安定剤;バリウムーカドミウム系安定剤などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記熱安定化助剤としては特に限定されず、例えば、エポキシ化大豆油、りん酸エステル、ポリオール、ハイドロタルサイト、ゼオライト等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記滑剤としては、内部滑剤、外部滑剤が挙げられる。
内部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂の流動粘度を下げ、摩擦発熱を防止する目的で使用される。上記内部滑剤としては特に限定されず、例えば、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、エポキシ大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、ビスアミド等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記外部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂と金属面との滑り効果を上げる目的で使用される。外部滑剤としては特に限定されず、例えば、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、エステルワックス、モンタン酸ワックスなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記加工助剤としては特に限定されず、例えば重量平均分子量10万〜200万のアルキルアクリレート−アルキルメタクリレート共重合体等のアクリル系加工助剤などが挙げられる。上記アクリル系加工助剤としては特に限定されず、例えば、n−ブチルアクリレート−メチルメタクリレート共重合体、2−エチルヘキシルアクリレート−メチルメタクリレート−ブチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記衝撃改質剤としては特に限定されず、例えばメタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、塩素化ポリエチレン、アクリルゴムなどが挙げられる。
上記耐熱向上剤としては特に限定されず、例えばα−メチルスチレン系、N−フェニルマレイミド系樹脂等が挙げられる。
上記酸化防止剤としては特に限定されず、例えば、フェノール系抗酸化剤などが挙げられる。
上記光安定剤としては特に限定されず、例えば、ヒンダードアミン系等の光安定剤等が挙げられる。
上記紫外線吸収剤としては特に限定されず、例えば、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤などが挙げられる。
上記顔料としては特に限定されず、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系、染料レーキ系等の有機顔料;酸化物系、クロム酸モリブデン系、硫化物・セレン化物系、フェロシアニン化物系などの無機顔料などが挙げられる。
また、上記ポリ塩化ビニル系樹脂には可塑剤が添加されていてもよいが、成形品の耐熱性や耐火性を低下させることがあるため、多量に使用することはあまり好ましくない。上記可塑剤としては特に限定されず、例えば、ジブチルフタレート、ジー2―エチルヘキシルフタレート、ジー2―エチルヘキシルアジペート等が挙げられる。
上記熱可塑性エラストマーとしては特に限定されず、例えば、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体(EVACO)、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体や塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体等の塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらの熱可塑性エラストマーは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
上記添加剤を上記ポリ塩化ビニル系樹脂に混合する方法としては特に限定されず、例えば、ホットブレンドによる方法、コールドブレンドによる方法等が挙げられる。
本発明の建築用配管材としては、例えば、耐火管や耐火管継手が挙げられる。また、本発明の建築用配管材は、一般的に用いられる押出成形機や射出成形機によって成形される。成形機の種類やスクリュー形状などは、特に限定されず、引張強度や衝撃を考慮して、十分に混練できるものであればよいが、連続成形可能な押出成形機が好ましい。
請求項1記載の発明の建築用配管材は、ポリ塩化ビニル系樹脂に熱膨張性黒鉛と無機充填剤とを含有させた耐火性樹脂組成物で構成されており、その配合比が、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、熱膨張性黒鉛が1〜10重量部、無機充填剤が1〜50重量部であるので、成形性に優れており、例えば、射出成形や押出成形などによって、高い寸法精度で連続的に生産できる。
また、ポリ塩化ビニル系樹脂は、自己消火性があるので、燃焼速度の遅延が効果的に行われ、燃焼時の火炎の伝播速度を抑えることができる上、燃焼初期に発泡するので、熱膨張性黒鉛が膨張しやすいという利点もある。
また、熱膨張性黒鉛は、それ自体が燃えにくく、かつ熱により膨張して断熱効果が発現するので、燃焼速度の遅延がさらに効果的に行われる。
さらに、無機充填剤が、燃焼時に骨材的な働きをするため、燃焼時の管壁を強固に保つことができ、残渣が脱落しにくいため、燃焼速度の遅延がさらに効果的に行われる。
したがって、本発明の建築用配管材は、それ自体が優れた耐火膨張性を備えており、燃焼時には配管材自体が膨張するとともに、燃焼速度の遅延効果を発揮して、区画貫通部で仕切られた他の側に火炎や煙が回るのを阻止することができ、従来のように、配管材の周囲に他の耐火部材を設ける必要がない。また、施工時の仮配管時に、位置確認のためにマーキングするなどの作業が不要となり、単に、区画貫通部に前記建築用配管材を挿通させるだけでよいので、作業を大幅に軽減でき、現場施工性を飛躍的に向上させることができる。さらに、本発明の建築用配管材は、塩化ビニル樹脂製パイプの外周に繊維強化モルタルを被覆した、いわゆる耐火二層管に比べて、管外径が大きくならないので、貫通口を複数設ける場合に、各貫通口の間隔を小さく取れる上、床下に配管する場合に、勾配がとりやすくなるなど、画期的に施工性が向上する。
また、請求項2に記載の発明のように、請求項1に記載の発明において、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、無機充填剤が2〜5重量部の割合で配合されたものでは、成形性と耐火性の効果についてバランスの取れた配合範囲となり、請求項1に記載の発明の効果がより高く発現される。
請求項記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の建築用配管材の成形方法であって、熱膨張性黒鉛の膨張温度T1と、成形時の樹脂温度T2とが、T1≦240℃、かつ、(T2+10℃)≦T1≦(T2+60℃)の関係を満たしているので、成形された建築用配管材の燃焼時には、熱膨張性黒鉛が、ポリ塩化ビニル系樹脂が溶融し分解する温度とほぼ同じ温度で目に見えて膨張し、ポリ塩化ビニル系樹脂が分解発泡して生じた隙間を熱膨張性黒鉛によって埋めて、強固な炭化層を形成する。
また、建築用配管材の成形時に、熱膨張性黒鉛が膨張を開始してしまうのを効果的に抑制し、良好に成形できる。
すなわち、本発明の建築用配管材の成形方法によれば、配管材そのもので防火措置を行うことのできる耐火性に優れた建築用配管材を良好に成形することができる。
請求項に記載の発明の建築用配管材の成形方法は、請求項1または請求項2に記載の建築用配管材の成形方法であって、熱膨張性黒鉛の1.3倍膨張温度T3が180℃〜240℃であり、成形時の樹脂温度T2が、熱膨張性黒鉛の1.3倍膨張温度T3よりも5℃以上低く、かつ、170℃〜210℃であるので、成形された建築用配管材が燃焼する時には、まず、ポリ塩化ビニル系樹脂が軟化し、その状態で、熱膨張性黒鉛が膨張を開始する。つまり、ポリ塩化ビニル系樹脂が伸びながら熱膨張性黒鉛が膨張していく。そして、さらに加熱が続くと、ポリ塩化ビニル系樹脂の炭化が進み、ポリ塩化ビニル系樹脂と熱膨張性黒鉛とが強固に絡み合った炭化物が形成される。この炭化物は、燃焼側に落下することなく、その形状を保持するため、配管材の加熱側端部を確実に閉塞することができ、その結果、熱気が区画貫通部内に流入しにくく、優れた遮炎効果を発現できる。
また、建築用配管材の成形時に、熱膨張性黒鉛が膨張を開始してしまうのを効果的に抑制し、良好に成形できる。
すなわち、本発明の建築用配管材の成形方法によれば、配管材そのもので防火措置を行うことのできる耐火性に優れた建築用配管材を良好に成形することができる。
その上、熱膨張性黒鉛の1.3倍膨張温度T3と成形時の樹脂温度T2とをごく狭い温度範囲に限定して成形することにより、ポリ塩化ビニル系樹脂と熱膨張性黒鉛以外の物質、例えば、無機充填剤や難燃剤、成形助剤等の配合量を抑えることができ、配管材としての物性も良好となるという利点もある。
本実施形態の建築用配管材Pは、図1に示すように、単層管であり、長さ1200mm、外径114mm、厚さ6.6mm、呼び径100Aに作製されている。
以下、実施例を挙げて詳細に説明する。
(実施例1)〜(実施例14)については、塩化ビニル樹脂(大洋塩ビ社製、品番TH1000)100重量部に、熱膨張性黒鉛(東ソー社製、品番GREP-EG)と、無機充填剤としての炭酸カルシウム(白石カルシウム社製、品番ホワイトンSB)とを、(表1)〜(表3)に示した割合で配合し、内容積200リットルのヘンシェルミキサー(川田工業社製)で攪拌混合し、耐火性樹脂組成物を得た。
いずれの配合においても、押出成形するために、安定剤(堺化学株式会社製 商品名SL-1000)2部と滑剤(三井化学株式会社製 商品名ハイワックス4202E)0.5部を加えた。
そして、得られた樹脂組成物を一般的に用いられる押出成形機によって押出成形して、耐火性評価に用いる建築用配管材Pを作製した。また、この建築用配管材Pから性能評価に用いる試験片を作製した。試験片は、前記建築用配管材Pの管壁の一部を切り出した後、荷重200kgf、190℃で3分間プレス成形して得られた厚さ3mmのプレス板より作製した。
(比較例1)〜(比較例8)については、塩化ビニル樹脂(大洋塩ビ社製、品番TH1000)100重量部に、熱膨張性黒鉛(東ソー社製、品番GREP-EG)と、無機充填剤としての炭酸カルシウム(白石カルシウム社製、品番ホワイトンSB)とを、(表1)〜(表3)に示した割合で配合し、溶融混練して得られた樹脂組成物で構成した。
いずれの配合においても、押出成形するために、安定剤(堺化学株式会社製 商品名SL-1000)2部と滑剤(三井化学株式会社製 商品名ハイワックス4202E)0.5部を加えた。
そして、上記実施例と同様に、得られた樹脂組成物から建築用配管材Pと試験片とを作製した。
(耐火性評価)
図2に示す耐火試験炉Xにより、耐火試験(平成12年6月1日に施行された改正建築基準法の耐火性能試験の評価方法 ISO834-1に従う)を実施した。
床材Yは、100mm厚さのPC(プレキャストコンクリート)パネルを用いた。建築用配管材Pは、床材Yに設けられた区画貫通部Rに貫通させ、加熱室Z内に300mm露出させ、床材Yの外部に800mm露出させた。
なお、加熱室Zの側壁にはバーナーV,Vが設置されている。また、建築用配管材Pの先端部近傍に温度測定用の熱電対Qが設置されている。
加熱開始後、区画貫通部Rと建築用配管材Pとの隙間から煙が出るまでの時間(発煙時間)を測定した。消防法の令8区画の判定基準に従って、発煙時間が130分以上の場合を◎(優秀)、120分以上の場合を○(合格)、120分未満の場合を×(不合格)とした。
(性能評価)
得られた試験片について、JISK7113に規定される引張試験(評価温度23℃)を行った。なお、管としての実用的な性能を満たしているかを判定するため、23℃で引張強度が45(MPa)以上のものを◎(優秀)、30(MPa)以上のものを○(合格)、30(MPa)未満のものを×(不合格)とした。
また、成形性については、押出成形ができ、かつ、目視による外観観察においてパイプ外観が良好であったものを○(合格)とし、押出成形できないものや、パイプ外観に異変が見られたものを×(不合格)とした。
Figure 0004440287
Figure 0004440287
Figure 0004440287
(実験結果)
(表1)に示すように、(比較例1)(比較例3)は、熱膨張性黒鉛を配合しなかったため、発煙時間が早く、(耐火性評価)は不合格であった。また、(比較例2)は、熱膨張性黒鉛の配合割合が大きすぎたため、発煙時間が早く、(耐火性評価)は不合格であった。
また、(表2)に示すように、(比較例4)は、無機充填剤を配合しなかったため、発煙時間が120分未満であり、(耐火性評価)が不合格であった。(比較例5)(比較例6)は、無機充填剤の配合割合が大きすぎたため、引張強度が30MPa未満であり、(性能評価)が不合格であった。さらに、(比較例6)については、配管材を押出成形できなかった。
また、(表3)に示すように、(比較例7)(比較例8)は、熱膨張性黒鉛の配合割合が不適当であったため、発煙時間が120分未満であり、(耐火性評価)が不合格であった。
したがって、(耐火性評価)、(性能評価)および(成形性)のすべてを満足する建築用配管材を得るためには、塩化ビニル樹脂100重量部に対して、熱膨張性黒鉛1〜10重量部、および無機充填剤1〜50重量部の範囲で含有させる必要があることがよくわかった。
さらに、(表2)の(実施例4)(実施例5)は、耐火性と引張強度の点で、(実施例3)(実施例6)〜(実施例10)よりもさらに優れている。したがって、塩化ビニル樹脂100重量部に対して、無機充填剤2〜5重量部の範囲で含有させたとき、より一層、耐火性、引張強度、成形性のいずれの点においてもバランスの取れた管が得られることがわかった。
なお、熱膨張性黒鉛が10重量部を超えると、図3に示すように、加熱により組織が熱膨張しすぎて、その形状を保持できずに残渣2が脱落してしまった。
(実施例15)〜(実施例18)については、塩化ビニル樹脂(大洋塩ビ社製、品番TH1000)100重量部に、(表4)に示す膨張温度T1の熱膨張性黒鉛を(表4)に示した割合で配合し、内容積200リットルのヘンシェルミキサー(川田工業社製)で攪拌混合し、耐火性樹脂組成物を得た後、一般的に用いられる押出成形機によって押出成形して、耐火性評価に用いる建築用配管材Pを作製した。また、この建築用配管材Pから性能評価に用いる試験片を作製した。試験片は、前記建築用配管材Pの管壁の一部を切り出した後、荷重200kgf、190℃で3分間プレス成形して得られた厚さ3mmのプレス板より作製した。
(比較例9)〜(比較例13)については、塩化ビニル樹脂(大洋塩ビ社製、品番TH1000)100重量部に、(表4)に示す膨張温度T1の熱膨張性黒鉛を(表4)に示した割合で配合し、溶融混練して得られた樹脂組成物で構成した。そして、上記実施例と同様に、得られた樹脂組成物から建築用配管材Pと試験片とを作製した。
なお、実施例、比較例とも、押出成形するために、安定剤(堺化学株式会社製 商品名SL-1000)2部と滑剤(三井化学株式会社製 商品名ハイワックス4202E)0.5部を加えた。
また、実施例、比較例とも、成形時の樹脂温度T2は、180℃であった。
また、熱膨張性黒鉛の膨張温度T1の測定には、セイコーインスツル株式会社製の熱重量分析装置「TG/DTA 320」を使用した。
(耐火性評価)
図2に示す耐火試験炉Xにより、耐火試験(平成12年6月1日に施行された改正建築基準法の耐火性能試験の評価方法 ISO834-1に従う)を実施した。
床材Yは、100mm厚さのPC(プレキャストコンクリート)パネルを用いた。建築用配管材Pは、床材Yに設けられた区画貫通部Rに貫通させ、加熱室Z内に300mm露出させ、床材Yの外部に800mm露出させた。
なお、加熱室Zの側壁にはバーナーV,Vが設置されている。また、建築用配管材Pの先端部近傍に温度測定用の熱電対Qが設置されている。
加熱開始後、区画貫通部Rと建築用配管材Pとの隙間から煙が出るまでの時間(発煙時間)を測定し、消防法の令8区画の判定基準に従って、発煙時間が130分以上の場合を◎(優秀)120分以上の場合を○(合格)、120分未満の場合を×(不合格)とした。
(性能評価)
得られた試験片について、JISK7113に規定される引張試験(評価温度23℃)を行った。なお、管としての実用的な性能を満たしているかを判定するため、23℃で引張強度が45(MPa)以上のものを◎(優秀)、30(MPa)以上のものを○(合格)、30(MPa)未満のものを×(不合格)とした。
また、成形性については、押出成形ができ、かつ、目視による外観観察においてパイプ外観が良好であったものを○(合格)とし、押出成形できないものや、パイプ外観に異変が見られたものを×(不合格)とした。
Figure 0004440287
(実験結果)
(表4)に示すように、(実施例17)は、熱膨張性黒鉛の膨張温度T1が190℃で、成形時の樹脂温度T2よりも10℃高い場合であり、すべての評価項目で良好であった。
これに比べて、(比較例11)は、熱膨張性黒鉛の膨張温度T1が180℃で、膨張温度T1と押出成形時の樹脂温度T2とが同じ温度の場合であり、成形時に、ポリ塩化ビニルの分解による管表面の発泡が見られたため、成形性の面で不合格であった。
また、(実施例18)は、熱膨張性黒鉛の膨張温度T1が240℃で、成形時の樹脂温度T2よりも60℃高い場合であり、すべての評価項目で良好であった。これに比べて、(比較例12)は、熱膨張性黒鉛の膨張温度T1が250℃で、成形時の樹脂温度T2よりも70℃高い場合であり、(耐火性評価)が不合格であった。また、(比較例13)は、熱膨張性黒鉛の膨張温度T1が300℃であり、(耐火性評価)が不合格であった。
したがって、熱膨張性黒鉛の膨張温度T1と成形時の樹脂温度T2とが、T1≦240℃、かつ、(T2+10℃)≦T1≦(T2+60℃)である必要があることがよくわかった。
(実施例19)〜(実施例23)については、塩化ビニル樹脂(大洋塩ビ社製、品番TH1000)100重量部に、(表5)に示す1.3倍膨張温度T3の熱膨張性黒鉛を(表5)に示した割合で配合し、内容積200リットルのヘンシェルミキサー(川田工業社製)で攪拌混合し、耐火性樹脂組成物を得た。
そして、得られた樹脂組成物を一般的に用いられる押出成形機によって、(表5)に示す成形時の樹脂温度T2で押出成形して、耐火性評価に用いる建築用配管材Pを作製した。また、この建築用配管材Pから性能評価に用いる試験片を作製した。試験片は、前記建築用配管材Pの管壁の一部を切り出した後、荷重200kgf、190℃で3分間プレス成形して得られた厚さ3mmのプレス板より作製した。
(比較例14)〜(比較例17)については、塩化ビニル樹脂(大洋塩ビ社製、品番TH1000)100重量部に、(表5)に示す1.3倍膨張温度T3の熱膨張性黒鉛を(表5)に示した割合で配合し、溶融混練して得られた樹脂組成物で構成した。
そして、上記実施例と同様に、得られた樹脂組成物を(表5)に示す成形時の樹脂温度T2で押出成形して、建築用配管材Pと試験片とを作製した。
なお、実施例、比較例とも、押出成形するために、安定剤(堺化学株式会社製 商品名SL-1000)2部と滑剤(三井化学株式会社製 商品名ハイワックス4202E)0.5部を加えた。
(耐火性評価)
図2に示す耐火試験炉Xにより、耐火試験(平成12年6月1日に施行された改正建築基準法の耐火性能試験の評価方法 ISO834-1に従う)を実施した。
床材Yは、100mm厚さのPC(プレキャストコンクリート)パネルを用いた。建築用配管材Pは、床材Yに設けられた区画貫通部Rに貫通させ、加熱室Z内に300mm露出させ、床材Yの外部に800mm露出させた。
なお、加熱室Zの側壁にはバーナーV,Vが設置されている。また、建築用配管材Pの先端部近傍に温度測定用の熱電対Qが設置されている。
加熱開始後、区画貫通部Rと建築用配管材Pとの隙間から煙が出るまでの時間(発煙時間)を測定し、消防法の令8区画の判定基準に従って、発煙時間が130分以上の場合を◎(優秀)120分以上の場合を○(合格)、120分未満の場合を×(不合格)とした。
(性能評価)
得られた試験片について、JISK7113に規定される引張試験(評価温度23℃)を行った。なお、管としての実用的な性能を満たしているかを判定するため、23℃で引張強度が45(MPa)以上のものを◎(優秀)、30(MPa)以上のものを○(合格)、30(MPa)未満のものを×(不合格)とした。
また、成形性については、押出成形ができ、かつ、目視による外観観察においてパイプ外観が良好であったものを○(合格)とし、押出成形できないものや、パイプ外観に異変が見られたものを×(不合格)とした。
Figure 0004440287
(実験結果)
(比較例16)は、押出成形時の樹脂温度T2が、熱膨張性黒鉛の1.3倍膨張温度T3よりも10℃高く、成形途中で熱膨張性黒鉛が膨張してしまったため、全ての項目で不合格であった。なお、(比較例16)と(実施例21)とを比較してみると、成形時の樹脂温度T2に問題がないことが分かる。
また、(比較例17)は、熱膨張性黒鉛の1.3倍膨張温度T3が高すぎて、燃焼中に区画貫通部内の樹脂が膨張に耐え切れずに崩落してしまったため、(耐火性評価)が不合格であった。すなわち、(比較例17)は、加熱によって、塩化ビニル樹脂の分解反応が起こり、発泡と炭化が進んだ後に、熱膨張性黒鉛が膨張したことにより、組織が膨張に耐え切れずに崩壊してしまった。その結果、区画貫通部内の樹脂が崩落して、配管材の加熱側端部を閉塞できなくなり、燃焼室内の熱気が、区画貫通部内に流入してしまったのである。
したがって、熱膨張性黒鉛の1.3倍膨張温度T3は、180℃〜240℃であることが必要であり、成形時の樹脂温度T2は、熱膨張性黒鉛の1.3倍膨張温度T3よりも5℃以上低く、かつ、170℃〜210℃である必要があることがよくわかった。
(結論)
以上、実施例を提示して詳述したとおり、本実施形態の建築用配管材Pは、成形性、管としての機械的強度、耐火性のいずれの面においても優れており、燃焼時には、耐火性樹脂組成物で構成された層が膨張して、図4に示すように、建築用配管材Pと区画貫通部Rとの隙間を残渣2で閉塞することができ、床材Yで仕切られた他の側に火炎や煙が回るのを阻止することができる。
また、従来の耐火膨張性のシート状被覆材で区画貫通部にだけ耐火処置した配管構造と違って、本発明では、配管全体に耐火性を付与することができる。
今回の耐火性評価は、耐火炉内に配管材の一端部を300mm突出させた状態で加熱する代用評価法によって耐火性を比較したが、本発明の配管材を建物内の各階のスラブ間あるいは建物内の各フロアの仕切壁間を貫通させて配管させる実施工状態で火災になった場合には、さらに耐火性の差が顕著になるものと思われる。
すなわち、本発明の配管材は、燃焼時には、区画貫通部を迅速かつ確実に閉塞する上、管全体が長時間の燃焼に耐えることができる。万一、燃焼中に配管材の一部が脱落しても、配管材の開口部分が速やかに閉塞し、その形状を保持するため、燃焼室外に炎や煙が回りにくく、類焼を効果的に阻止できると思われる。
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではない。例えば、上記の実施例では、建築用配管材Pの呼び径は100Aであったが、他の径であってももちろん構わない。
本発明の一実施形態にかかる建築用配管材Pの断面図である。 耐火性試験に使用する耐火試験炉Xの構造を簡単に示す説明図である。 建築用配管材Pが加熱により熱膨張した後、その形状を保持できずに残渣が脱落する様子を示す説明図である。 図1に示す建築用配管材Pにおいて、加熱により熱膨張した後、その形状を保持して耐火性を維持している様子を示す説明図である。
P 建築用配管材

Claims (4)

  1. ポリ塩化ビニル系樹脂に熱膨張性黒鉛と無機充填剤とを含有させた耐火性樹脂組成物で構成されており、
    その配合比が、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、熱膨張性黒鉛が1〜10重量部、無機充填剤が1〜50重量部であることを特徴とする建築用配管材。
  2. ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、無機充填剤が2〜5重量部の割合で配合されていることを特徴とする請求項1に記載の建築用配管材。
  3. 熱膨張性黒鉛の膨張温度T1と成形時の樹脂温度T2とが、
    T1≦240℃ かつ
    (T2+10℃)≦T1≦(T2+60℃)
    であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の建築用配管材の成形方法。
  4. 熱膨張性黒鉛の1.3倍膨張温度T3が180℃〜240℃であり、成形時の樹脂温度T2が、熱膨張性黒鉛の1.3倍膨張温度T3よりも5℃以上低く、かつ、170℃〜210℃であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の建築用配管材の成形方法。
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