図1はカードコネクタの外観を示す斜視図、図2は蓋体を外したカードコネクタを示す斜視図、図3は蓋体を外したカードコネクタを示す平面図である。図4と図5は、第1のカードが装着される過程をカードコネクタの蓋体を外して示す平面図である。図6は第1のカードが前後逆向きに挿入された状態をカードコネクタの蓋体を外して示す平面図である。図7と図8は、第2のカードが装着される過程をカードコネクタの蓋体を外して示す平面図である。図9(A)は、カードコネクタに設けられたスライダの左側部を示す斜視図、図9(B)は前記スライダの左側部を斜め下側から示す斜視図である。
図10以下には、前記カードコネクタに装着されるカードが示されている。図10は第1のカードの平面図、図11は第1のカードの左側面図、図12は第1のカードを斜め下側から示す斜視図である。図13は、第2のカードの平面図、図14(A)は第2のカードの右側面図、図14(B)は第2のカードの左側面図である。図15は第2のカードを斜め下側から示す斜視図である。
図16と図17は、第1のカードと第2のカードを左側部と後端部を一致させて重ねて示すものであり、図16が平面的に重ねて示した平面図で、図17が三次元的に重ねて示した斜視図である。なお、図16と図17では、第1のカードが破線で示され、第2のカードが実線で示されている。
(第1のカードの形状)
図10ないし図12に示される第1のカードC1は、いわゆるマルチメディアカードなどのメモリデバイスとして使用されるものである。第1のカードC1は、プラスチック製のケース1を有しており、このケース1内に、フラッシュメモリなどのメモリチップや、メモリコントローラとして機能するICチップなどが収納されている。
図11に示すように、ケース1は、第1の面である表面1aと第2の面である裏面1bを有している。表面1aと裏面1bは互いに平行な平面であり、表面1aと裏面1bの間隔が第1のカードC1の厚さ寸法T1である。図12に示すように、裏面1bの前方には、複数個(13個)の外部接続部5が露出している。外部接続部5の表面はケース1の裏面1bとほぼ同一面である。
ここで、「表面」と「裏面」とは外部接続部5を有する面と有しない面を識別するための便宜上の名称であり、カードコネクタ20に対し、表面1aを上向きにして装着してもよいし、裏面1bを上向きにして装着してもよい。
図10ないし図12に示すように、ケース1は前端部1cと、後端部1dを有している。また右側部1eと左側部1fを有している。
図11に示すように、前端部1cは、表面1aと垂直な平面であり、表面1aと裏面1bとの角部には前方傾斜面2が形成されている。後端部1dは、表面1aおよび裏面1bに垂直な平面である。右側部1eと左側部1fは、表面1aおよび裏面1bと垂直な平面である。図10に示すように、前端部1cと右側部1eとの境界部および前端部1cと左側部1fとの境界部、すなわち前端部1cの左右両側部には、円筒面の一部である前方コーナー曲面3,3が形成されている。後端部1dと右側部1eとの境界部および後端部1dと左側部1fとの境界部、すなわち後端部1dの左右両側部にも、円筒面の一部である後方コーナー曲面4,4が形成されている。
図10に示すように、ケース11を表面1a側から見た平面図では、ケース1の形状は前後に延びる中心線O1−O1を介して左右に対称の形状である。
ケース1の前方部分では、右側部1eと左側部1fから中心線O1−O1に向けて窪む案内溝6,6が形成されている。案内溝6,6は、右側部1eおよび左側部1fと平行で且つ右側部1eおよび左側部1fから中心線O1−O1に向けて距離W1だけ内側に位置する内側面6a,6aと、裏面1bと平行な内底面6c,6cとを有している。そして、右側の案内溝6の後端部と右側部1eとの間、および左側の案内溝6の後端部と左側部1fとの間には、それぞれ傾斜部6b,6bが形成されている。
図11に示すように、案内溝6,6は、ケース1の表面1aから裏面1bに向けて窪んでいる。ケース1の表面1aから案内溝6の内底面6cまでの距離、すなわち案内溝6,6の表面1aから裏面1bに向けた深さ寸法t1は、第1のカードC1の全体の厚さ寸法T1のほぼ1/2である。また、前記案内溝6,6が表面1aから窪んで形成された結果、それよりも裏面側には、裏面1bと前記内底面6c,6cとで挟まれた部分である薄肉部7,7が形成されている。この薄肉部7,7の厚さ寸法t2も、第1のカードC1の全体の厚さ寸法T1のほぼ1/2である。
案内溝6,6は、前端部1cの左右両側部にて前方に開放されている。よって、図12に示すように、前端部1cの厚さ寸法は、その中央のほとんどの部分がT1であるが、両側部においては、厚さ寸法はt2である。
ケース1の右側部1eと左側部1fでは、案内溝6,6の後端部よりも後方に、掛止凹部8,8が形成されている。掛止凹部8,8は、右側部1eおよび左側部1fよりも中心線O1−O1側に位置し且つ右側部1eおよび左側部1fと平行な内側端8a,8aを有している。右側部1eから内側端8aまでの幅寸法ならびに左側部1fから前内端8bまでの幅寸法W2は、前記案内溝6,6の幅寸法W1とほぼ同じである。
掛止凹部8,8は、前内端8bと後内端8cを有している。後内端8cから第1のカードC1の後端部1dまでの距離はL1である。さらに、図11と図12に示すように、掛止凹部8,8は、裏面1bと平行な面である内底端8d,8dを有している。すなわち、右側部1eに設けられ掛止凹部8と左側部1fに設けられた掛止凹部8は、共に、第1のカードC1の表面1aから裏面1bに向けて貫通しておらず、掛止凹部8,8は、表面1aから裏面1bにかけて所定の深さ寸法t3を有している。この深さ寸法t3は、前記案内溝6の深さ寸法t1よりもやや大きい。
図10に示すように、ケース1の後端部1dよりも少し前方には、表面1aから窪む摘み凹部9が形成されている。図1に示すように、第1のカードC1がカードコネクタ20に装着されると、前記摘み凹部9を有する後端部分が、カードコネクタ20から突出する。この摘み凹部9に指の爪を掛けるなどして、第1のカードC1をカードコネクタ20から引き出すことができる。
第1のカードC1は、前記案内溝6,6と掛止凹部8,8ならびに摘み凹部9を除いた部分で、厚さ寸法T1が一定である。この厚さ寸法T1の部分が、第1のカードC1の厚肉部である。なお、第1のカードC1の前方部分では、前記前方傾斜面2が形成されているか否かにかかわらず、薄肉部7,7以外は厚肉部である。
(第2のカードの形状)
図13ないし図15に示される第2のカードC2もメモリデバイスとして使用されるものであり、プラスチック製のケース11の内部に、フラッシュメモリなどのメモリチップや、メモリコントローラとして機能するICチップなどが収納されている。
第1のカードC1と第2のカードC2とは、ケースの形状が相違しており、且つその機能も相違している。その機能の相違は、例えば、駆動電圧の違い、すなわち、電源用の外部接続部を介して内部の電子回路に供給すべき電圧の相違である。または、内部に収納されているメモリチップのメモリ容量の違いである。
図14(A)(B)に示すように、第2のカードC2のケース11は、第1の面である表面11aと第2の面である裏面11bを有している。また、図13に示すように、前端部11cと後端部11dおよび右側部11eと左側部11fを有している。図14(A)(B)に示すように、表面11aから裏面11bまでの厚さ寸法Taが、第2のカードC2の厚さ寸法である。ケース11は、後端部11dの高さ寸法Tbが、前記厚さ寸法Taよりもやや大きい。第2のカードC2の前記厚さ寸法Taは、第1のカードC1の厚さ寸法T1とほぼ同じである。
図16と図17に第1のカードC1と第2のカードC2の形状および寸法の違いが示されているが、図13に示す第2のカードC1の前端部11cから後端部11dまでの縦方向の長さ寸法Laは、図10に示す第1のカードC1の縦方向の長さ寸法L0より小さい。一方、第2のカードC2の右側部11eから左側部11fまでの幅寸法Waは、第1のカードC1の幅寸法W0よりも大きい。
図13と図14(A)(B)に示すように、第2のカードC2の両側部には、表面11aから裏面11bに向けて窪む案内溝16,16が形成されている。右側部11eと左側部11fの双方において、案内溝16,16は、第2のカードC2の前端部11cを起点として後方に向けて延びており、その後端16b,16bは、第2のカードC2の後端部11dの近傍に位置している。
それぞれの案内溝16,16は、第2のカードC2の表面11aよりも裏面11b側に寄った位置にあり且つ表面11aと平行な内底面16c,16cを有している。図14(A)に示すように、表面11aから前記内底面16cまでの距離が、案内溝16,16の深さ寸法taである。この深さ寸法taは、第2のカードC2の厚さ寸法T1のほぼ1/2である。またこの深さ寸法taは、図11に示す第1のカードC1の案内溝6,6の深さ寸法t1とほぼ同じである。
それぞれの案内溝16,16は、第2のカードC2の右側部11eと左側部11fのそれぞれよりも中心線O2−O2側に位置する内側面16a,16aを有している。内側面16a,16aは、右側部11eおよび左側部11fと平行な面である。右側部11eから内側面16aまでの距離、および左側部11fから内側面16aまでの距離が、それぞれ案内溝16,16の幅寸法Wbである。この幅寸法Wbは、図10に示す第1のカードC1の案内溝6,6の幅寸法W1とほぼ同じである。
図14(A)(B)に示すように、第2のカードC2の右側部11eと左側部11fでは、前記案内溝16,16が形成されていることによって、裏面11b側に薄肉部17,17が形成されている。第2のカードC2の前端部11cから薄肉部17,17の後端部までの縦方向での長さ寸法は、前記案内溝16,16の縦方向の長さ寸法と同じである。案内溝16,16の内底面16c,16cから第2のカードC2の裏面11bまでの高さ寸法が、薄肉部17,17の厚さ寸法tbである。この厚さ寸法tbは、第2のカードC2の厚さ寸法Taのほぼ1/2である。
図13および図14(A)に示すように、右側部11eには、薄肉部の一箇所が除去された掛止凹部18が形成されている。掛止凹部18の内側端18aは、前記案内溝16の内側面16aと同一面である。また、掛止凹部18は、前内端18bと後内端18cとを有している。図13に示すように、第2のカードC2の後端部11dから掛止凹部18の後内端18cまでの距離Lbが、図10に示す第1のカードC1の後端部1dから掛止凹部8の後内端8cまでの距離L1よりも長い。すなわち、図16および図17に示すように、第1のカードC1の後端部1dと第2のカードC2の後端部11dを同じ基準位置としたときに、第1のカードC1に形成された掛止凹部8と第2のカードC2に形成された掛止凹部18は重なる位置に存在しておらず、第2のカードC2の掛止凹部18が第1のカードC1の掛止凹部8よりも前方に位置している。
なお、第2のカードC2の両側部に設けられた薄肉部17,17のそれぞれには、前記掛止凹部18よりも後方に位置する後方凹部19,19が形成されている。
図14(A)(B)に示すように、第2のカードC2の表面11aの前端部には上側前方傾斜面12aが形成され、裏面11bの前端部にも下側前方傾斜面12bが形成されており、厚さ寸法が前方に向かうにしたがって徐々に薄くなっている。
第2のカードC2は、薄肉部17,17および厚さ寸法がTbの後端部11dを除いた厚さ寸法がTaの部分が厚肉部である。なお、前端部11cでは、前記上側前方傾斜面12aおよび下側前方傾斜面12bが形成されている部分であっても、薄肉部17,17を除いた部分を厚肉部とする。よって、図13に示すように、第2のカードC2の前端部11cと右側部11eとの境界部、および前端部11cと左側部11fとの境界部では、薄肉部17,17の前端部に薄肉前方コーナー曲面13b,13bが形成され、厚肉部の前端の両側部には、厚肉前方コーナー曲面13a,13aが形成されている。
なお、第2のカードC2の後端部11dの左右両側部には、後方コーナー曲面14,14が形成されている。
図15に示すように、第2のカードC2の裏面11bは、中央部分がやや窪んでいるが、この窪んでいる部分も前記厚肉部である。裏面11bの前方部分には、複数の外部接続部15が露出している。この外部接続部15は裏面11bと同一面であり、表面に金などの低抵抗材料がメッキされた金属端子である。それぞれの外部接続部15はケース11の内部に収納された回路と導通している。
図16および図17に示すように、第1のカードC1の後端部1dと第2のカードC2の後端部11dを同じ基準位置としたときに、第1のカードC1に設けられた前記外部接続部5は、第2のカードC2に設けられた外部接続部15よりも前方に位置している。
(第1のカードと第2のカードの形状の対比)
図16と図17では、第1のカードC1と第2のカードC2とが、後端部1dと後端部11dとを一致させ、左側部1fと左側部11fとを一致させ、且つ裏面1bと裏面11bとを一致させた状態で、三次元的に重ねて示されている。左側部1fと左側部11fとが一致するように重ねられているため、第1のカードC1の中心線O1−O1よりも第2のカードC2の中心線O2−O2が図示右側に位置している。
また、第1のカードC1の前端部1cは、第2のカードC2の前端部11cよりも寸法(L0−La)だけ前方に位置している。
第1のカードC1の薄肉部7の幅寸法W1は、第2のカードC2の薄肉部17の幅寸法Wbとほぼ同じであるため、図16に示すように、第1のカードC1の左側部1fと第2のカードC2の左側部11fとを一致させると、第1のカードの左側の薄肉部7と第2のカードC2の左側の薄肉部17がほぼ重なる。
図16に示すように、第2のカードC2の右側部11eは、第1のカードC1の右側部1eよりも寸法(Wa−W0)だけ右側へ突出している。つまり、第2のカードC2の右側の薄肉部17は、第1のカードC1の右側部1eよりも右側へ寸法(Wa−W0)だけ突出している。
第1のカードC1の薄肉部7の幅寸法W1と第2のカードC2の薄肉部17の幅寸法Wbとほぼ同じであるため、第2のカードC2の案内溝16の内側面16aは、第1のカードC1の案内溝6の内側面6aよりも右側へ寸法(Wa−W0)だけ突出している。また、第1のカードC1の右側部1eは、第2のカードC2の右側の案内溝16の内側面16aよりも寸法(Wb−(Wa−W0))だけ右側に突出している。
したがって、図16に示すように、第1のカードC1と第2のカードC2とが重ねられたときに、右前方では、前記寸法(Wb−(Wa−W0))の領域で、第1のカードC1の薄肉部7と第2のカードC2の薄肉部17とが部分的に重なっている。
(カードコネクタの構造)
次に、前記各種カードが装着されるカードコネクタ20の構造を説明する。
図1に示すように、カードコネクタ20は筐体21を有している。筐体21は、合成樹脂製の筐体本体22と、金属板で形成されて筐体本体22の上方に被せられた蓋体23とで構成されている。
図2と図3に示すように、筐体本体22は枠体形状である。筐体本体22は、前壁部24、後壁部25、右壁部26、左壁部27および底壁部28が一体に形成されている。前壁部24の上面24a、後壁部25の上面25a、右壁部26の上面26aならびに左壁部27の上面27aは、互いに同一面である。図1に示すように、蓋体23の天井板23aは、筐体本体22の前記各上面24a,25a,26a,27aに密着するように設置されている。蓋体23には、後側板23bと右側板23cおよび左側板23dが設けられ、これらは天井板23aから直角に折り曲げられている。後側板23bは、筐体本体22の後壁部25の外面に設置され、右側板23cと左側板23dは、それぞれ筐体本体22の右壁部26の外面と左壁部27の外面に設置されている。
筐体21の厚さ寸法は、筐体本体22の底壁部28の下面から、蓋体23の天井板23aの上面までの高さ寸法で決められている。筐体21の内部には、筐体本体22の底壁部28の上面と蓋体21の下面とで挟まれた空間が形成されている。この空間は、図示右側が後に説明するスライダ40の移動領域であり、それよりも左側が、前記第1のカードC1または第2のカードC2を選択的に挿入可能なカード収納領域である。カード収納領域の内部高さ寸法は、第1のカードC1の厚さ寸法T1(厚肉部の厚さ寸法)および第2のカードC2の厚さ寸法Ta(厚肉部の厚さ寸法)よりもわずかだけ大きい寸法である。
図2および図3に示すように、筐体本体22の左壁部27の内面が案内基準面27bであり、第1のカードC1の左側部1fと第2のカードC2の左側部11fは、共に前記案内基準面27bを摺動しながら、筐体21のカード収納領域内を挿入方向である奥側((a)側)へ向けて挿入される。筐体本体22の前壁部24の左端部には、前記案内基準面27bに対向する開口壁24bが形成されている。前記案内基準面27bと前記開口壁24bとで挟まれた開口部が挿入口29である。挿入口29の開口幅寸法W10、すなわち前記案内基準面27bと前記開口壁24bとの対向間隔W10は、第2のカードC2の幅寸法Waとほぼ同じであり、第2のカードC2が通過できる寸法である。
図2と図4に示すように、筐体本体22の左壁部27には、カード収納領域に向けて延びる上方案内部31が一体に設けられている。図4と図5に示すように、筐体21内のカード収納領域に、第1のカードC1が正常な向きで挿入されると、第1のカードC1の左側部1fの前方に設けられた薄肉部7が、底壁部28の上面と上方案内部31の下面との間に入り込む。また、図7と図8に示すように、カード収納領域に、第2のカードC2が正常な向きで挿入されたときも、第2のカードC2の左側部11fに形成されている薄肉部17が、底壁部28の上面と上方案内部31の下面との間に入り込む。
ただし、第1のカードC1の厚肉部と第2のカードC2の厚肉部は、上方案内部31の下側へ入り込むことはできない。
すなわち、上方案内部31の下面と底壁部28の上面との間の高さ寸法は、第1のカードC1の薄肉部7の厚さ寸法t2ならびに第2のカードC2の薄肉部17の厚さ寸法tbよりもわずかに大きく、且つ第1のカードC1の厚肉部の厚さ寸法T1ならびに第2のカードC2の厚肉部の厚さ寸法Taよりも小さい。また、図3に示す案内基準面27bからの上方案内部31の突出寸法W11は、第1のカードC1の薄肉部7の幅寸法W1ならびに第2のカードC2の薄肉部17の幅寸法Wbよりもわずかに小さい。
図2に示すように、筐体本体22の右側のスライダの移動領域では、底壁部28の上面に前後方向((a)−(b)方向)に延びるガイド部34が形成されている。このガイド部34は、前記底壁部28の上面から***形成されたレールである。筐体本体22の前記移動領域には合成樹脂製のスライダ40が設けられており、このスライダ40が、前記ガイド部34および右壁部26の内面に沿って、前後方向へ直線的に往復移動自在に支持されている。
スライダ40と筐体本体22との間には、コイルばねなどの付勢部材が設けられており、スライダ40は、前壁部24に向けて手前側((b)側)すなわちカードの排出方向へ向けて常に付勢されている。
スライダ40と筐体21との間には、スライダ40を奥側((a)側)でロックするためのロック機構35が設けられている。ロック機構35は、スライダ40の上面に形成された溝カム41と、筐体21に設けられたロックピン36とで構成されている。
ロックピン36は、基端部36aと先端部36bが直角に折り曲げられている。図3に示すように、ロックピン36の基端部36aは、筐体本体22の前壁部24の上部に形成された保持凹部24c内に回動自在に支持されている。ロックピン36の先端部36bは、溝カム41内に摺動自在に挿入されている。図1に示すように、金属板で形成された蓋体23の天井板23aには、右手前側にロック板ばね37が一体に形成されている。このロック板ばね37は、天井板23aの一部を切り抜いて形成された片持ち支持ばねである。前記ロックピン36はこのロック板ばね37によって押圧され、先端部36bが溝カム41の溝底部に押し付けられている。
図3に示すように、溝カム41は、奥側((a)側)の端部に位置するロック解除部41aと、このロック解除部41aよりも手前側((b)側)に位置するロック部41bとを有している。ロック解除部41aとロック部41bとの間には、左側に往路溝41cが形成され、右側に復路溝41dが形成されている。溝カム41の内部では、ロック解除部41a,往路溝41c,ロック部41b,復路溝41dの各部の境界部に段差が形成されており、ロックピン36の先端部36bは、ロック解除部41a→往路溝41c→ロック部41b→復路溝41d→ロック解除部41aの順でのみ摺動でき、その逆の行程を辿ることができない。
図3では、スライダ40が付勢部材によって手前側((b)側)へ移動させられて、スライダ40が筐体本体22の前壁部24に突き当てられている。このとき、ロックピン36の先端部36bは、溝カム41のロック解除部41a内に位置している。第1のカードC1または第2のカードC2が挿入口29から挿入され、カードと共にスライダ40が奥側((a)側)へ移動すると、ロックピン36の先端部36bが、溝カム41の往路溝41c内を通過して、図5に示すように、ロック部41bに至る。溝カム41はロック部41bにおいて奥側((a)側)へ向けて窪むV字形状であるため、ロックピン36の先端部36bがロック部41bに掛止されると、スライダ40は手前側((b)側)へ戻らないようにロックされる。
図5に示すように、スライダ40がロックされている状態から、さらにカードを押してスライダ40を短い距離だけ奥側((a)側)へ移動させると、ロックピン36の先端部36bが、溝カム41のロック部41bから抜け出て、復路溝41dに案内されて、スライダ40のロックが解除される。カードへの押し力を緩めると、前記付勢部材の力によってスライダ40が、図3に示す初期位置に復帰し、この間に、ロックピン36の先端部36bが、復路溝41dからロック解除部41aに戻る。
図9(A)(B)に詳しく示すように、スライダ40の奥側((a)側)の左側部には第1の当接部42が設けられている。図3などにも示すように、第1の当接部42は手前側((b)側)に向く平面である。図4と図5に示すように、筐体21内のカード収納領域に第1のカードC1が正常な向きで挿入されると、その前端部1cの右側部分が第1の当接部42に当接する。
図9(A)(B)に示すように、スライダ40の左側部には、前記第1の当接部42から手前側((b)側)に向けて連続して延びる第1の規制部43が設けられている。第1の規制部43は、第1の規制凹部43aと第1の規制凸部43bとを有している。第1の規制凹部43aはスライダ40の下側において右方向に向けて窪んでおり、第1の規制凸部43bは第1の規制凹部43aの上方に張り出している。図4と図5に示すように、筐体21内のカード収納領域内へ第1のカードC1が正常な向きで挿入されると、第1のカードC1の右側部1eの前方に形成されている薄肉部7が、第1の規制凹部43a内に入り込み、第1の規制凸部43bが第1のカードC1の案内溝6内に入り込む。また、第1のカードC1の右側部1eが、第1の規制凹部43aの内端面43cに最小の隙間で対向する。
筐体本体22の底壁部28の上面から第1の規制凸部43bの下面までの高さ寸法は、第1のカードC1の薄肉部7の厚さ寸法t2よりもわずかに大きく、第1のカードC1の厚肉部の厚さ寸法T1よりも小さい。よって、第1の規制凹部43a内に、第1のカードC1の厚肉部が入り込むことはない。
図3に示すように、筐体本体22の左壁部27の案内基準面27bと、第1の規制凹部43aの内端面43cとの間隔寸法W12は、第1のカードC1の幅寸法W0と同じかわずかに大きく設定されて、図4に示すように装着された第1のカードC1を、左右方向に位置決することができるようになっている。また、図3に示す第1の規制凹部43aの幅寸法W13、すなわち第1の規制凸部43bの突出端面43dと第1の規制凹部43aの前記内端面43cとの幅寸法W13は、第1のカードC1の案内溝6ならびに薄肉部7の幅寸法W1と同じかそれよりもわずかに小さく形成されている。ただし、前記幅寸法W13と前記幅寸法W1とをほぼ一致させることが好ましく、この場合に、第1の規制凸部43bの前記突出端面43dと第1のカードC1の案内溝6の内側面6aとの当接によって、第1のカードC1が幅方向に大きくがたつかないように規制する効果を発揮しやすくなる。
図9(A)(B)に示すように、スライダ40の左側部では、第1の規制部43よりも手前側((b)側)に第2の規制部45が設けられている。第2の規制部45は、第2の規制凹部45a、および第2の前方規制凸部45bと第2の後方規制凸部45cとを有している。第2の規制凹部45aは、右方向へ向けて窪んで形成されており、第2の前方規制凸部45bと第2の後方規制凸部45cは、第2の規制凹部45aの上に張り出している。
筐体本体22の底壁部28の上面から、第2の前方規制凸部45bおよび第2の後方規制凸部45cのそれぞれの下面までの高さ寸法は、第2のカードC2の薄肉部17の厚さ寸法tbよりもわずかに大きいが、第2のカードC2の厚肉部の厚さ寸法Taよりも小さい。よって、第2のカードC2の薄肉部17が第2の前方規制凸部45bと第2の後方規制凸部45bの下側に入り込むことができるが、第2のカードC2の厚肉部は、入り込むことができない。
第2の前方規制凸部45bは第1の規制凸部43bよりも右側に位置しており、第1の規制凸部43bと第2の前方規制凸部45bとの間に形成された段差部が第2の当接部44となっている。第2の当接部44は、第1の規制凸部43bと第2および前方規制凸部45bと同じ厚さ寸法で形成されており、その端面は凹曲面である。
図7と図8に示すように、筐体21内のカード収納領域内へ、第2のカードC2が正常な向きで挿入されると、第2のカードC2の右側部11eに形成されている薄肉部17が、第2の前方規制凸部45bおよび第2の後方規制凸部45cの下側に入り込む。また、第2のカードC2の厚肉部の右端前方に形成されている厚肉前方コーナー曲面13aが第2の当接部44に当接し、第2のカードC2とスライダ40とが前後方向へ位置決めされる。
図9(A)(B)に示すように、第2の前方規制凸部45bは第2の後方規制凸部45cよりも左方向への張り出し寸法が大きく、第2の前方規制凸部45bと第2の後方規制凸部45cとの間の段差部に、第3の当接部46が形成されている。第3の当接部46は、第2の前方規制凸部45bおよび第2の後方規制凸部45cと同じ厚さ寸法であり、その端面は凹曲面形状である。図6に示すように、カード収納領域内へ第1のカードC1が前後逆向きに挿入されると、第1のカードC1の後方コーナー曲面4が第3の当接部46に当たり、それ以上は第1のカードC1が挿入されないように規制される。
図9(B)に示すように、スライダ40の下部には可動部材50が設けられている。可動部材50は、第2の規制凹部45aの右側方に位置している。可動部材50は、スライダ40と同様に合成樹脂で形成されている。スライダ40には下方向に延びる支持軸51が一体に形成されており、可動部材50の奥側((a)側)の端部が、前記支持軸51に回動自在に支持されている。また、スライダ40の下部には付勢部材として板ばね52が固定されており、この板ばね52によって、可動部材50は、図3に示す平面図において、時計方向へ付勢されている。
可動部材50の左側部には対向側面53が形成され、それよりも奥側((a)側)の回動支点部には、対向側面53よりも左側へ突出する操作押圧部54が設けられている。この操作押圧部54から前記対向側面53にかけて、可動部材50の左側部は凹曲面形状となっている。また、可動部材50の手前側((b)側)に向けられている自由端部には、左方向へ突出する第1の仮止め凸部55が一体に形成されている。
図3に示すように、可動部材50に外力が作用していないとき、前記対向側面53は、前後方向に延びる平面であり、左壁部27に形成された案内基準面27bとほぼ平行である。可動部材50の前記対向側面53は、第2のカードC2の右側部11eに対向する案内面または規制面としても機能している。そして、前記対向側面53は、第2の規制凹部45aの内端面として機能している。図3に示す、案内基準面27bから前記対向側面53までの間隔寸法W14は、第2のカードC2の幅寸法Waと同じかそれよりもわずかに大きい程度である。
また、第2の前方規制凸部45bの突出端面45dから前記対向側面53までの幅寸法W15が、第2の規制凹部45aの右方向への奥行き寸法であり、前記幅寸法W15は、第2のカードC2の薄肉部17の幅寸法Wbと同じかそれよりもわずかに小さい。
図7と図8に示すように、カード収納領域へ、第2のカードC2が正常な向きで挿入され、右側部11eの薄肉部17が、第2の前方規制凸部45bおよび第2の後方規制凸部45cの下側に入り込んだときに、第2の前方規制凸部45bの突出端面45dと、第2のカードC2の案内溝16の内側面16aとが微小な隙間で対向するように、前記幅寸法W15が設定されていると、前記突出端面45dによって、第2のカードC2が右方向へ大きくがたつかないように規制される。
また、図7と図8に示すように、第2のカードC2の薄肉部17が、第2の規制凹部45a内に入り込んだときに、薄肉部17の前端部に形成されている薄肉前方コーナー曲面13bが、可動部材50の操作押圧部54に当接する。したがって、厚肉前方コーナー曲面13aが第2の当接部44に当たることで、第2のカードC2とスライダ40とが前後に位置決めされることに代えて、薄肉前方コーナー部13bが操作押圧部54に当たることによって、第2のカードC2とスライダ40とが前後方向に位置決めされてもよい。
図7と図8に示すように、第2のカードC2の右側の薄肉部17が、第2の規制凹部45a内に入り込むと、可動部材50に形成された第1の仮止め凸部55が、第2のカードC2の薄肉部17に形成されている掛止凹部18内に嵌合する。第2のカードC2が正常な向きで挿入されると、第2のカードC2の薄肉前方コーナー曲面13bが可動部材50の操作押圧部54に当たり、第2のカードC2を挿入するときの力によって、可動部材50に時計方向への回動力が作用する。よって、板ばね52による付勢力が前記回動力で補強されることになり、第1の仮止め凸部55が、掛止凹部18内に確実に嵌合する。
また、第2のカードC2が正常に挿入された際に、第1の仮止め凸部55が掛止凹部18に確実に嵌合できなかったとき、または幅寸法が第2のカードC2と同等であるが右側部に掛止凹部18が形成されていない本来は挿入すべきではないカードが挿入されたときは、第1の仮止め凸部55が、カードの右側部に当たって可動部材50が反時計方向へ回動したままとなる。このとき、挿入されているカードの右前方の端部が、可動部材50に形成されている操作押圧部54とうまく凹凸嵌合できなくなる。よって、カードは、その前端部が第2の当接部44に当たることなくそれよりも手前に位置するようになる。よって、そのままカードおよびスライダ40を奥側((a)側)へ押し込んでも、本来は装着されるべきでないカードが筐体21内に深く入り込むのを防止できる。
また、図7に示すように、第1の仮止め凸部55が掛止凹部18に嵌合している状態から、第2のカードC2を手前側((b)側)へ引き抜いたときは、掛止凹部18が手前側へ移動する移動力によって可動部材50が板ばね52の付勢力に対抗して反時計方向へ回動させられ、第1の仮止め凸部55が掛止凹部18から抜け出る。このときの抜け出しを容易にするために、第1の仮止め凸部55の左方向への突出量は、後方部分55bよりも前方部分55aの方が短くなっている。
図9(A)(B)に示すように、スライダ40の左側部には、第1の規制部43と第2の規制部45とが互いに組み合わされて三次元構造として形成されている。第1の規制凹部43aと第2の規制凹部45aは、第1の規制凸部43bと第2の前方規制凸部45bならびに第2の後方規制凸部45cの下方において、前後に連続する空間である。
第1のカードC1に形成された薄肉部7は、主に第1の規制凹部43a内に入り込み、第2のカードC2に形成された薄肉部17は、第1の規制凹部43aよりも後方に位置する第2の規制凹部45a内に入り込む。ただし、第2の前方規制凸部45bの下側に位置する第2の規制凹部45aでは、図4において、長さ寸法L20および幅寸法W20で示す部分が、第1のカードC1の薄肉部7と第2のカードC2の薄肉部17の双方が入り込むの領域である。
図2と図3および図9に示すように、スライダ40の手前側((b)側)の上面には、保持凹部48が形成されており、この保持凹部48内に、板ばね57が設けられている。板ばね57は、板ばね材料として機能する金属板で形成されており、U字状に曲げられて保持凹部48内に嵌着されている。板ばね57の自由端には、カード収納領域に向けて山折りとされた第2の仮止め部57aが形成されている。
図9(A)(B)に示すように、第2の仮止め凸部57aは、第2の後方規制凸部45cの後方に位置し、且つ第2の後方規制凸部45cと同じ高さに設けられている。図7に示すように、第2のカードC2が挿入されと、右側の薄肉部17は第2の仮止め凸部57aの下側を移動する。一方、図4に示すように、第1のカードC1が挿入されると、右前方の薄肉部7が第2の仮止め凸部57aの下を通過し、その後は、案内溝6の後方の傾斜部6bおよび右側部1eが第2の仮止め凸部57aと摺動する。そして第2の仮止め凸部57aは、第1のカードC1の右側部に形成された掛止凹部8に嵌合する。
図3に示すように、第2の仮止め凸部57aは、前記第1の仮止め凸部55よりも手前側((b)側)へ離れて位置しており、第1の仮止め凸部55と第2の仮止め凸部57aは、互いに重なっていない。また、図9(B)に示すように、第1の仮止め凸部55が下側に位置し、第2の仮止め凸部57aが上側に位置しており、互いに異なる高さ位置にある。
図3に示すように、筐体本体22の底部の奥側((a)側)には、第1の接続端子61が設けられている。第1の接続端子61は、図12に示された第1のカードC1の裏面1bに露出している外部接続部5と同じ数で且つ同じピッチで配列している。それぞれの第1の接続端子61には、第1の外部突出端子62が一対一で設けられている。個々の第1の接続端子61と第1の外部突出端子62は、個別に連結されており、表面に金などの低抵抗の貴金属材料がメッキされた導電性の金属板で形成されている。
第1の接続端子61は、正常な姿勢で正常な位置に装着された第1のカードC1の外部接続部5に個別に接触できる位置に配置され、第1の外部突出端子62は、筐体本体22の後壁部25よりもさらに後方へ突出している。
筐体本体22の底部では、前記第1の接続端子61よりも手前側((b)側)に、第2の接続端子63が設けられている。第2の接続端子63は、図15に示された第2のカードC2の裏面11bに露出している外部接続部15と同じ数で且つ同じピッチで配列している。それぞれの第2の接続端子63には、第2の外部突出端子64が一対一で設けられている。個々の第2の接続端子63と第2の外部突出端子64は、個別に連結されており、表面に金などの低抵抗の貴金属材料がメッキされた導電性の金属板で形成されている。
第2の接続端子63は、正常な姿勢で正常な位置に装着された第2のカードC2の外部接続部15に個別に接触できる位置に配置され、第2の外部突出端子64は、筐体本体22の底壁部の前方の切欠き部内に突出している。
(第1のカードの正常な装着動作)
図2および図4と図5は、第1のカードC1が筐体21内に正常な向きで装着されるときの動作を示している。
カードが装着されていない状態では、図3に示すように、スライダ40が挿入口29側((b)側)へ移動している。スライダ40に支持されている可動部材50は、板ばね52によって時計方向へ付勢されているが、図3に示す姿勢で時計方向への回動が規制されている。このとき、対向側面53が左側の案内基準面27bとほぼ平行に向けられている。
第1のカードC1は、その前端部1cが前方に向けられ、表面1aが上に向けられた姿勢で挿入口29から挿入される。第1のカードC1の左側部1fが、筐体本体22の左壁部27の内面である案内基準面27bを摺動するように挿入されると、第1のカードC1の右側部1eは、可動部材50に形成された第1の仮止め凸部55の先部に当たることなく通過する。また、挿入途中の第1のカードC1の右側部1eが第1の仮止め凸部55に当たって、可動部材50が反時計方向に回動したとしても、その後は板ばね52の付勢力によって、可動部材50は図3に示す姿勢に復帰できる。よって、第1のカードC1は、第1の仮止め凸部55に挿入を阻害されることなく、奥側((a)側)に向けて挿入される。
第1のカードC1が奥側((a)側)に挿入されると、その右側前方に形成されている薄肉部7が、第2の規制凹部45aの一部、すなわち図4に示す長さ寸法がL20で幅寸法がW20の領域を通過し、さらに、第1の規制凹部43a内に入る。そして、第1のカードC1の前端部1cの右側部が、スライダ40に形成された第1の当接部42に当接する。図4に示すように、第1のカードC1の前端部1cが第1の当接部42に当たると、薄肉部7の上に、スライダ40に形成された第1の規制凸部43bおよび第2の前方規制凸部45bの一部(長さ寸法がL20で幅寸法がW20の領域)が重なる状態となる。
また、図4に示すように、第1のカードC1の前端部1cが第1の当接部42に当たったときに、第1のカードC1の左前方に形成されている薄肉部7が、左壁部27と一体に形成されている上方案内部31の下側に入り込む。
また、第1のカードC1が挿入される際に、第1のカードC1のケース1の右側に形成された薄肉部7が、スライダ40の手前側に設けられている第2の仮止め凸部57aの下側を通過する。その後、案内溝6の後方の傾斜部6bによって、第2の仮止め凸部57aが右方向へ押され、板ばね57が変形して、第1のカードC1の右側部1eが第2の仮止め凸部57aを摺動する。そして、図4に示すように、第1のカードC1の前端部1cが第1の当接部42に当たると、板ばね57の弾性復帰力によって、第2の仮止め凸部57aが、第1のカードC1の右側部に位置している掛止凹部8に嵌合する。
このとき、第2の仮止め凸部57aが、案内溝6の後方に位置する傾斜部6bを摺動するため、第1のカードC1を軽い力で筐体21内に押し込むことで、板ばね57を変形させることができる。よって、その後は、第1のカードC1が筐体21内から不用意に抜け出るのを防止できる。
第1のカードC1の前端部1cが第1の当接部42に当接した後に、第1のカードC1を押し込むと、第1のカードC1とスライダ40とが一体となって奥側へ移動する。第1のカードC1が図5に示す装着完了位置に至ると、スライダ40に形成された溝カム41のロック部41bが、ロックピン36の先端部36bに係止されて、スライダ40がその位置でロックされる。
このとき、筐体本体22の奥側に設けられた第1の接続端子61のそれぞれが、第1のカードC1の裏面1bに露出する外部接続部5のそれぞれに弾圧して接続される。
第1のカードC1をカードコネクタ20から離脱させるときは、図5に示すように、第1のカードC1が装着されている状態で、第1のカードC1を奥側((a)側)へ押す。第1のカードC1と共にスライダ40が少しだけ奥側へ移動すると、ロックピン36の先端部36bが、溝カム41のロック部41bから外れ、スライダ40が付勢部材の力で手前側((b)側)へ戻される。そして、スライダ40が図4に示す初期位置に復帰し、第1の接続端子61と外部接続部5とが離れ、第1のカードC1は、その後端部が挿入口29から所定距離だけ突出した状態で停止する。
このとき、第2の仮止め凸部57aが、第1のカードC1の右側の掛止凹部8に嵌合しているため、第1のカードC1は、図4に示す状態で仮止めされ、不用意に筐体21から離脱することがない。そして、第1のカードC1を抜くと、第2の仮止め凸部57aと掛止凹部8との嵌合が解除され、第1のカードC1を挿入口29から取り出すことができる。
なお、第1のカードC1の正常な姿勢での装着が完了したか否かの確認は、制御部において第1の接続端子61のそれぞれが外部接続部5に接続されたか否かを監視することで行なわれる。例えば、第1のカードC1に設けられた複数の外部接続部5のいずれかがカードの内部回路において短絡されている場合には、短絡されている外部接続部5に対応する第1の接続端子61が導通するか否かを監視することで、第1のカードC1が正常な位置に装着されたか否かを確認できる。
(第1のカードが逆の向きで挿入されたときの装着動作)
図6は、第1のカードC1が後端部1dを奥側((a)側)に向けて挿入口29に挿入された状態を示している。
第1のカードC1の後端部1dの両側部には薄肉部7が形成されておらず、後端部1dはその幅寸法の全域にわたって厚さ寸法がT1である。よって、第1のカードC1の後端部1dの後方コーナー曲面4が、図9(B)に示すスライダ40の第3の当接部46に当接する。第1のカードC1を筐体21内に十分に挿入できないので、その時点で、使用者が誤った挿入動作であることを認識しやすい。また、図6の状態から、第1のカードC1を押し込むと、このカードC1と共にスライダ40が奥側に移動してロック状態になるが、そのときも第1のカードC1が筐体21の内部に十分に挿入されないため、使用者は、第1のカードC1の挿入が誤りであることを理解しやすい。
また、図6に示す姿勢で第1のカードC1が挿入されても、第1の接続端子61と、第1のカードC1の外部接続部5とが接触することはないため、制御部が、カードが装着されたと認識することはない。
図6に示すように、第1のカードC1が前後逆向きで挿入され、後方コーナー曲面4がスライダ40の第3の当接部46に当たった時点で、第2の仮止め凸部57aが第1のカードC1に形成されている掛止凹部8に嵌合する。そのため、第1のカードC1が誤って挿入され、そのまま押し込まれたとしても、この第1のカードC1を仮止めすることができ、誤った向きの第1のカードC1が筐体21から不用意に離脱するのを防止でき、第1のカードC1が損傷する確率を低くできる。
(第2のカードの正常な装着動作)
図7に示すように、第2のカードC2は、前端部11cが奥側((a)側)に向けられ、表面11aが上に向けられて挿入口29に挿入される。
第2のカードC2の右側部11eに形成されている薄肉部17は、スライダ40の第2の規制凹部45aの内部に入り込み、第2の前方規制凸部45bと第2の後方規制凸部45cが、薄肉部17の上の案内溝16に入り込む。そして、図13に示す第2のカードC2の右前方に形成されている厚肉前方コーナー曲面13aが、スライダ40に形成された第2の当接部44に当接し、その後に第2のカードC2が押されると、スライダ40が一緒に奥側((a)側)へ移動可能になる。
図9に示す第1の仮止め凸部55は、第2のカードC2の薄肉部17と同じ高さに位置しているため、第2のカードC2が挿入されると、最初に、右前方の薄肉前方コーナー曲面13bが第1の仮止め凸部55に当たり、可動部材50が板ばね52の付勢力に対抗して反時計方向へ回動する。さらに第2のカードC2が挿入されると、第2のカードC2の右側部11e、すなわち薄肉部の側端面が第1の仮止め凸部55を摺動する。そして、第2のカードC2の右前方の薄肉前方コーナー曲面13bが、可動部材50の(a)側の端部に形成された操作押圧部54に当たり、同時に第1の仮止め凸部55が掛止凹部18に嵌合する。
前述のように、第2のカードC2が挿入されると、右前方の厚肉前方コーナー曲面13aが、スライダ40の第2の当接部44に当接するが、この第2の当接部44が設けられておらず、操作押圧部54が実質的に第2の当接部として機能し、薄肉前方コーナー部13bが操作押圧部54に当たった後に、第2のカードC2とスライダ40とが一緒に(a)側へ移動できるようにしてもよい。
図7に示す状態から、第2のカードC2が押されると、第2のカードC2と共にスライダ40が奥側((a)側)へ移動する。このとき、第2のカードC2の右前方の薄肉前方コーナー曲面13bによって、可動部材50の操作押圧部54が押され、可動部材50に時計方向への回動力が作用し続けるので、可動部材50に形成されている第1の仮止め凸部55は掛止凹部18に嵌合した状態を維持できるようになる。
図9(A)(B)に示すように、第2の仮止め凸部57aは、第2のカードC2の右側の案内溝16と同じ高さに位置しているため、図7に示すように、第2のカードC2が挿入される間、案内溝16が第2の仮止め凸部57aを摺動し、第2の仮止め凸部57aに外力が作用しない。あるいは、案内溝16の内側面16aが第2の仮止め凸部57aに当たって摺動したとしても、そのときの挿入抵抗はわずかである。
図7に示す状態から、さらに第2のカードC2が押し込まれると、第2のカードC2とスライダ40とが一緒に(a)方向へ移動し、スライダ40が図8に示す位置に至ると、ロックピン36の先端部36bが、溝カム41のロック部41bに係合し、スライダ40がロックされる。
図8に示すスライダ40のロック位置は、図5に示すロック位置と同じである。ただし、スライダ40では、第2の当接部44が第1の当接部42よりも手前側((b)側)に位置しているため、第2のカードC2に設けられている外部接続部15は、筐体21内の第1の接続端子61に接続されることはなく、それよりも手前側((b)側)に位置している第2の接続端子63に接続される。
制御部において、例えば第2の接続端子63のうちのいずれかが短絡したか否かを検知するなどして、外部接続部15が第2の接続端子63に接続されたことを検知したときに、第2のカードC2が装着されたことを確認できる。
なお、図5と図8に示すように、第1のカードC1が正常に装着されたときの、その後端部1dは、第2のカードC2が正常に装着されたときの、その後端部11dの位置と同じである。
図16と図17は、第1のカードC1と第2のカードC2を三次元的に組み合わせたものであり、第1のカードC1と第2のカードC2の後端部1dと後端部11dとを一致させ、左側部1fと左側部11fを一致させて示している。
前記カードコネクタ20では、第1のカードC1の左側部1fと第2のカードC2の左側部11fが、共に筐体本体22の左壁部27の内側の案内基準面27bで位置決めされて案内される。そのため、図16と図17に示すように、第1のカードC1の形状と第2のカードC2の形状の違いは、右側部にのみ現れている。前記スライダ40に、それぞれのカードの右側部の形状の違いに応じて、第1の規制部43と第2の規制部45および第1の当接部42と第2の当接部44が形成されていることにより、右側の1個のスライダ40のみで、形状の相違する第1のカードC1と第2のカードC2をそれぞれ位置決めし、さらにそれぞれのカードを仮止めして、両カードをそれぞれ正確な位置に装着できるようにしている。
なお、第2のカードC2が前後逆向きで挿入口29へ挿入されようとしたときは、第2のカードC2の後端部11dが、図9(A)(B)に示す、スライダ40の手前側の端部に形成された後端規制凸部47に当たるために、筐体21の内部に挿入されることはない。
前記実施の形態のカードコネクタ20では、スライダ40に可動部材50が回動自在に支持され、この可動部材50に第1の仮止め凸部55が形成されているが、スライダ40に第1の仮止め凸部材55が左右方向へ直線移動して突出自在に設けられていてもよい。