JP4434904B2 - 省スペースで高出力な多段ガス発生器 - Google Patents

Description

本発明は、衝撃から乗員を保護するためのエアバッグシステムに用いられる多段ガス発生器に関する。

車等の乗り物内におけるエアバッグ用途は、乗員の頭部、胸、腰、膝、側部窓のカーテン状バッグなど多岐にわたっている。ところが、乗り物内にはスペースの制限があるので、用途毎にガス発生器をインストールできない場合が多々あり、限られた場所で多岐にわたる用途向けのバッグを有効に展開させるためには、ガス発生器を小さくすることが、重要な課題となっている。

また、近年、側面衝突用途では、従来に比べて大きなエアバッグが用いられており、このようなエアバッグを要求された時間内に展開させるには、大きな出力のガス発生器が必要となる。

このような２つの要求に応えるためには、従来のガス発生器の基本構造を変えないまま大きくするか、単に複数組み合わせることが考えられる。しかし、これらの方法では、上記の省スペース化の要求には応えられない。

特許文献１には、ステアリングホイール内にガス発生器を並行に複数個設置することが開示されている。特許文献２には、円筒状のインフレーターを２本並列することが開示されている。特許文献３には、フィルタを内蔵しないインフレーターの外部にフィルタを設置したモジュールが開示されている。特許文献４には、２つの燃焼室、フィルタ室が互いに独立に設けられたインフレーターが開示されている。
特開１１−１３９２４１ ＵＳＰ５，６５８，０１０ 特開１０−１８１５１７ 特開０３−１７５２９８

本発明は、様々なタイプのエアバッグ用ガス発生器に適用できる、小型かつ軽量で、大出力のエアバッグ用の多段ガス発生器を提供することを課題とする。

本発明は、課題の解決手段として、
フィルタを内蔵していない、それぞれが第１ガス排出口を有する複数のガス発生器と、外付けのフィルタとを組み合わせてなるエアバッグ用の多段ガス発生器であり、
複数のガス発生器のそれぞれが有する複数の第１ガス排出口とフィルタとを含む空間が、第２ガス排出口を有するハウジングで包囲されており、
複数のガス発生器の第１ガス排出口から排出されたガスがフィルタを通った後、第２ガス排出口から排出されエアバッグを膨張させる、エアバッグ用の多段ガス発生器を提供する。

複数のガス発生器を組み合わせることにより、全体として大出力にすることができ、複数のガス発生器で１つのフィルタを共用することで、全体として小型にすることができる。その結果、車内の狭いスペースに設置するが、大出力が求められるようなエアバッグ用途（側面衝突用のエアバッグ等）に適用できるようになる。

本発明のエアバッグ用の多段ガス発生器においては、
フィルタを内蔵していない、それぞれが第１ガス排出口を有する２つの筒状のガス発生器と、外付けのフィルタとを組み合わせてなるエアバッグ用の多段ガス発生器であり、
２つの筒状のガス発生器が、それぞれの周面において軸方向に複数の第１ガス排出口を有し、それぞれの第１ガス排出口が対向するように並列配置されており、
２つのガス発生器の間には、幅方向の断面が略Ｖ字状で、かつ少なくとも前記複数の第１ガス排出口の軸方向長さ以上の長さを有するフィルタが配置されており、
２つのガス発生器の複数の第１ガス排出口とフィルタ全体を包囲するようにして、第２ガス排出口を有するハウジングが設けられているものにすることができる。

この多段ガス発生器は、幅よりも長さが大きな形状であり、上記発明と同様に、複数のガス発生器で１つのフィルタを共用することで、大出力にすることができ、出力に比べて全体を小型軽量化することができる。

本発明のエアバッグ用の多段ガス発生器においては、
フィルタを内蔵していない、それぞれが第１ガス排出口を有する２つのディスク状のガス発生器と、外付けのフィルタとを組み合わせてなるエアバッグ用の多段ガス発生器であり、
２つのディスクのガス発生器が、それぞれの周面において周方向に複数の第１ガス排出口を有し、それぞれの第１ガス排出口が対向するように並列配置されており、
２つのガス発生器の間には円筒状のフィルタが配置されており、
２つのガス発生器の複数の第１ガス排出口とフィルタ全体を包囲するようにして、第２ガス排出口を有するハウジングが設けられているものにすることができる。

本発明で「ディスク状」とは、厚みのない円盤の意味ではなく、ある程度厚みのある、高さの低い円柱形状であることを意味する。

この多段ガス発生器は、高さよりも幅が大きな形状であり、上記発明と同様に、複数のガス発生器で１つのフィルタを共用することで、大出力にすることができ、出力に比べて全体を小型軽量化することができる。

本発明のエアバッグ用の多段ガス発生器においては、エアバッグの膨張手段が、ガス発生剤の燃焼ガスのみを使用するもの（いわゆる、パイロインフレータ）、高圧充填したガス（アルゴン、ヘリウム、窒素ガス等）のみを使用するもの（いわゆる、ハイブリッドインフレータ）、又は前記燃焼ガスと前記高圧充填したガスを併用するものにすることができる。

ガス発生剤及びガスは周知のものを用いることができる。また、いずれのタイプの膨張手段を使用するインフレータ（ガス発生器）であっても、ガス発生剤の着火手段として、又は高圧ガスを密封充填している破裂板を破壊するための電気式の点火器（着火薬を有する）を備えている。

本発明の多段ガス発生器は、出力の大きさとの対比からは小型でかつ軽量であるため、車内の狭いスペースに設置して、大出力が求められるようなエアバッグ用途（側面衝突用のエアバッグ等）に好適である。

（１）第１の実施の形態
図１により説明する。図１（ａ）は、多段ガス発生器の概略平面図であり、二点鎖線は想像線であり、破線は見えない部分を表示している。図１（ｂ）は、多段ガス発生器の正面図であり、破線は見えない部分を表示しており、フィルタ３０とハウジング３５のみ断面図で表示している。

なお、ガス排出口は、図１（ｂ）に示すように、壁に孔が開けられた状態のものであるが、図１（ａ）では作図の都合上及び形成位置が明確になるように、少し変形して示している。

多段ガス発生器１０は、第１ガス発生器１１と第２ガス発生器２１を有している。第１ガス発生器１１と第２ガス発生器２１自体は、所望のエアバッグ膨張手段を内蔵した公知のものであり、外殻容器は（通常は、ハウジング、シェル等と称される）エアバッグ膨張手段に応じて選択されるもので、金属製（アルミニウム製、ステンレス製、鋼鉄製等）のものである。

第１ガス発生器１１は、その周面の軸方向に、均等間隔で配置された複数の第１ａガス排出口１２（１２ａ等）を有しており、一端面には電気式の第１点火器１３が取り付けられている。第２ガス発生器２１は、その周面の軸方向に、均等間隔で配置された複数の第１ｂガス排出口２２（２２ａ等）を有しており、一端面には電気式の第２点火器２３が取り付けられている。第１ａガス排出口１２及び第１ｂガス排出口２２は、アルミニウムやステンレス製のテープでシールされていてもよい。

第１ガス発生器１１と第２ガス発生器２１は、互いの第１ａガス排出口１２と第１ｂガス排出口２２が正対するようにして、かつ軸方向におけるガス排出口の長さ範囲が一致するようにして（第１ａガス排出口１２ａと第１ｂガス排出口２２ａが正対し、第１ａガス排出口１２ｄと第１ｂガス排出口２２ｄが正対するようにして）並列配置されている。

２つのガス発生器１１、２１の間には、フィルタ３０が配置されている。フィルタ３０は公知のものを使用することができ、パイロインフレータの場合には、燃焼ガスの冷却と濾過機能を有するクーラント・フィルタとして機能し、ハイブリッドインフレータの場合には、破壊された破裂板の破片を捕捉する。

フィルタ３０は、幅方向の断面が略Ｖ字状で、かつ少なくとも前記複数の第１ガス排出口１２、２２の軸方向長さ（第１ａガス排出口１２ａから１２ｄまでの長さ、又は第１ａガス排出口２２ａから２２ｄまでの長さ）以上の長さを有している。

２つのガス発生器１１、２１の複数の第１ａガス排出口１２及び第１ｂガス排出口２２とフィルタ３０全体を包囲するようにしてハウジング３５が設けられている。ハウジング３５内は、外部雰囲気とは連通していない。

ハウジング３５は、複数の第２ガス排出口３６を有している。第２ガス排出口３６は、アルミニウムやステンレス製のテープでシールされていてもよい。エアバッグは、少なくとも第２ガス排出口３６を覆うようにして取り付けられる。

ハウジング３５と２つのガス発生器１１、２１は、それぞれの接触面において溶接固定されており、フィルタ３０は、ハウジング３５で上下方向から挟み付けられるようにして保持されている。

フィルタ３０とハウジング３５との接触部には、前記接触部からガスが漏れて、フィルタ３０を経由しないでガスが第２ガス排出口３６から排出される「ショートパス」を防止するための部材（ショートパス防止部材）を配置することができる。ショートパス防止部材自体は、公知のインフレータでも汎用されているものである。

次に、多段ガス発生器の動作を説明する。２つの点火器１３、２３は、同時に作動する場合、時間差をおいて作動する場合、一方のみが作動する場合（但し、ガス発生器の解体作業時の安全性を確保する観点から、エアバッグの膨張に関与しない程度の時間差をおいて、他方の点火器も作動する）があるが、以下においては、時間差をおいて作動する場合について説明する。

まず、第１点火器１３の作動により、第１ガス発生器１１の第１ａガス排出口１２からエアバッグの膨張媒体となるガスが排出される。ガスはフィルタ３０を通過して、空間３１に流入した後、第２ガス排出口３６から排出され、エアバッグを膨張させる。空間３１の存在により、フィルタ３０が第２ガス排出口３６に接触しておらず、一旦空間３１にガスが流入した後に排出されるので、複数の第２ガス排出口３６から均等に排出される。

僅かに遅れた第２点火器２３の作動により、第２ガス発生器２１の第１ｂガス排出口２２からエアバッグの膨張媒体となるガスが排出される。ガスはフィルタ３０を通過して、空間３１に流入した後、第２ガス排出口３６から排出され、エアバッグを更に膨張させる。

このように多段ガス発生器１０は、２つのガス発生器１１、２１を備えていることにより、出力を大幅に増加させることができると共に、２つのガス発生器１１、２１が１つのフィルタ３０を共用しているため、全体を小型軽量化することができる。

（２）第２の実施の形態
図２により説明する。図２（ａ）は、多段ガス発生器の概略平面図であり、二点鎖線は想像線である。図２（ｂ）は、多段ガス発生器の正面図であり、破線は見えない部分を表示している。

なお、ガス排出口は、上記した図１（ｂ）に示すように、壁に孔が開けられた状態のものであるが、図２（ａ）、（ｂ）では作図の都合上及び形成位置が明確になるように、少し変形して示している。

多段ガス発生器５０は、第１ガス発生器５１と第２ガス発生器６１を有している。第１ガス発生器５１と第２ガス発生器６１自体は、所望のエアバッグ膨張手段を内蔵した公知のものであり、外殻容器は（通常は、ハウジング、シェル等と称される）エアバッグ膨張手段に応じて選択されるもので、金属製（アルミニウム製、ステンレス製、鋼鉄製等）のものである。

第１ガス発生器５１は、その周面の周方向に複数の第１ａガス排出口５２（５２ａ等）を有しており、底面側には電気式の第１点火器（５３は点火器に接続したコネクタ）が取り付けられている。第２ガス発生器６１は、その周面の周方向に複数の第１ｂガス排出口６２（６２ａ等）を有しており、底面側には電気式の第２点火器が（６３は点火器に接続したコネクタ）取り付けられている。第１ａガス排出口５２及び第１ｂガス排出口６２は、アルミニウムやステンレス製のテープでシールされていてもよい。

第１ガス発生器５１と第２ガス発生器６１は、互いの第１ａガス排出口５２と第１ｂガス排出口６２が対向するようにして、かつ周方向におけるガス排出口の長さ範囲が一致するようにして（第１ａガス排出口５２ａと第１ｂガス排出口６２ａが対向し、第１ａガス排出口５２ｆと第１ｂガス排出口６２ｆが対向するようにして）並列配置されている。

２つのガス発生器５１、６１の間には、円筒状のフィルタ７０が配置されている。フィルタ７０は公知のものを使用することができ、パイロインフレータの場合には、燃焼ガスの冷却と濾過機能を有するクーラント・フィルタとして機能し、ハイブリッドインフレータの場合には、破壊された破裂板の破片を捕捉する。

２つのガス発生器５１、６１の複数の第１ａガス排出口５２及び第１ｂガス排出口６２とフィルタ７０全体を包囲するようにしてハウジング７５が設けられている。ハウジング７５内は、外部雰囲気とは連通していない。

ハウジング７５は、第２ガス排出口７６を有している。第２ガス排出口７６は、ハウジング７５の円筒状のフィルタ７０の中空部に正対する位置に設けられており、１つでもよいし、複数設けることもできる。第２ガス排出口７６は、アルミニウムやステンレス製のテープでシールされていてもよい。エアバッグは、少なくとも第２ガス排出口７６を覆うようにして取り付けられる。

ハウジング７５と２つのガス発生器５１、６１は、それぞれの接触面において溶接固定されており、フィルタ７０は、ハウジング７５で上下方向から挟み付けられるようにして保持されている。

フィルタ７０とハウジング７５との接触部には、前記接触部からガスが漏れて、フィルタ７０を経由しないでガスが第２ガス排出口７６から排出される「ショートパス」を防止するための部材（ショートパス防止部材）を配置することができる。ショートパス防止部材自体は、公知のインフレータでも汎用されているものである。

次に、第１の実施の形態と同様に、２つの点火器が時間差をおいて作動する場合について説明する。

まず、第１点火器の作動により、第１ガス発生器５１の第１ａガス排出口５２からエアバッグの膨張媒体となるガスが排出される。ガスはフィルタ７０を通過して、空間（フィルタ７０の中空部）７１に流入した後、第２ガス排出口７６から排出され、エアバッグを膨張させる。空間７１の存在により、フィルタ７０が第２ガス排出口７６に接触しておらず、一旦空間７１にガスが流入した後に排出されるので、複数の第２ガス排出口７６から均等に排出される。

僅かに遅れた第２点火器の作動により、第２ガス発生器６１の第１ｂガス排出口６２からエアバッグの膨張媒体となるガスが排出される。ガスはフィルタ７０を通過して、空間７１に流入した後、第２ガス排出口７６から排出され、エアバッグを更に膨張させる。

このように多段ガス発生器５０は、２つのガス発生器５１、６１を備えていることにより、出力を大幅に増加させることができると共に、２つのガス発生器５１、６１が１つのフィルタ７０を共用しているため、全体を小型軽量化することができる。

（ａ）は多段ガス発生器の概略平面図、（ｂ）は（ａ）の正面図。 （ａ）は多段ガス発生器の平面図、（ｂ）は（ａ）の正面図。

符号の説明

１０、５０ ガス発生器（インフレータ）
１１、５１ 第１ガス発生器
１２、６２ 第２ガス発生器
１２ａ、５１ａ 第１ａガス排出口
２２ａ、５２ａ 第１ｂガス排出口
３０、７０ フィルタ
３５、７５ ハウジング
３６、７６ 第２ガス排出口

Claims (2)

1. フィルタを内蔵していない、それぞれが第１ガス排出口を有する２つの筒状のガス発生器と、外付けのフィルタとを組み合わせてなるエアバッグ用の多段ガス発生器であり、
   ２つの筒状のガス発生器が、それぞれの周面において軸方向に複数の第１ガス排出口を有し、それぞれの第１ガス排出口が対向するように並列配置されており、
   ２つのガス発生器の間には、幅方向の断面が略Ｖ字状で、かつ少なくとも前記複数の第１ガス排出口の軸方向長さ以上の長さを有するフィルタが配置されており、
   ２つのガス発生器の複数の第１ガス排出口とフィルタ全体を包囲するようにして、第２ガス排出口を有するハウジングが設けられており、
   ２つの筒状のガス発生器の第１ガス排出口から排出されたガスがフィルタを通った後、第２ガス排出口から排出されエアバッグを膨張させる、エアバッグ用の多段ガス発生器。
2. エアバッグの膨張手段が、ガス発生剤の燃焼ガスのみを使用するもの、高圧充填したガスのみを使用するもの、又は前記燃焼ガスと前記高圧充填したガスを併用するものである、請求項１記載のエアバッグ用の多段ガス発生器。

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