JP4432316B2 - 接着シート並びに半導体装置及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、接着シート並びにそれを使用した半導体装置及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材の接合には、銀ペーストが主に使用されていた。しかし、近年の半導体素子の小型化・高性能化に伴い、使用される支持部材にも小型化、細密化が要求されるようになってきている。こうした要求に対して、銀ペーストでは、はみ出しや半導体素子の傾きに起因するワイヤボンディング時における不具合の発生、接着剤層の膜厚の制御困難性、及び接着剤層のボイド発生などにより、前記要求に対処しきれなくなってきている。そのため、前記要求に対処するべく、近年、フィルム状の接着剤が使用されるようになってきた(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
このフィルム状接着剤は、個片貼付け方式あるいはウェハ裏面貼付方式において使用されている。前者の個片貼付け方式のフィルム状接着剤を用いて半導体装置を製造する場合、リール状のフィルム状接着剤をカッティングあるいはパンチングによって個片に切り出した後、支持部材に接着し、前記フィルム状接着剤付き支持部材に、ダイシング工程によって個片化された半導体素子を接合して半導体素子付き支持部材を作製し、その後、ワイヤボンド工程、封止工程などを経ることによって半導体装置が得られることとなる(例えば、特許文献3参照)。しかし、前記個片貼付け方式のフィルム状接着剤を用いるためには、フィルム状接着剤を切り出して支持部材に接着する専用の組立装置が必要であることから、銀ペーストを使用する方法に比べて製造コストが高くなるという問題があった。
【0003】
一方、ウェハ裏面貼付け方式のフィルム状接着剤を用いて半導体装置を製造する場合、まず半導体ウェハの裏面にフィルム状接着剤を貼付け、さらにフィルム状接着剤の他面にダイシングテープを貼り合わせ、その後、前記ウェハからダイシングによって半導体素子を個片化し、個片化したフィルム状接着剤付き半導体素子をピックアップし、それを支持部材に接合し、その後の加熱、硬化、ワイヤボンドなどの工程を経ることにより、半導体装置が得られることとなる。このウェハ裏面貼付け方式のフィルム状接着剤は、フィルム状接着剤付き半導体素子を支持部材に接合するため、フィルム状接着剤を個片化する装置を必要とせず、従来の銀ペースト用の組立装置をそのままあるいは熱盤を付加するなどの装置の一部を改良することにより使用できる。そのため、フィルム状接着剤を用いた組立方法の中で製造コストが比較的安く抑えられる方法として注目されている(例えば、特許文献4参照)。
【0004】
このウェハ裏面貼付け方式のフィルム状接着剤と共に用いられるダイシングテープは、感圧型とUV型に大別される。前者の感圧型ダイシングテープは、通常、ポリ塩化ビニル系やポリオレフィン系のベースフィルムに粘着剤を塗布したものである。このダイシングテープは、ダイシング工程における切断時には、ダイシングソウによる回転で各素子が飛散しないような十分な粘着力が求められ、ピックアップ時には、各素子に接着剤が付着することなく、また素子を傷つけないようにするためにピックアップできる程度の低い粘着力が求められる。ところが、前記のような相反する2つの性能を充分併せ持つ感圧型ダイシングテープがなかったことにより、各工程毎にダイシングテープを切替える作業が行われていた。また、素子のサイズや加工条件にあった各種の粘着力を有する多種多様のダイシングテープが必要になることから接着シートの在庫管理が複雑化していた。さらに、近年、特にCPUやメモリの大容量化が進んだ結果、半導体素子が大型化する傾向にあり、また、ICカードあるいはメモリーカードなどの製品にあっては、使用されるメモリの薄型化が進んでいる。これらの半導体素子の大型化や薄型化に伴い、前記感圧型ダイシングテープでは、ダイシング時の固定力(高粘着力)とピックアップ時の剥離力(低粘着力)という相反する要求を満足できなくなりつつある。
【0005】
一方、後者のUV型ダイシングテープはダイシング時には高粘着力を有するものの、ピックアップする前に紫外線(UV)を照射することにより、低粘着力になる。そのため、前記感圧型ダイシングテープが有する課題が改善されることにより、ダイシングテープとして広く採用されるに至っている。ところが、UV型ダイシングテープを用いることにより、前記感圧型ダイシングテープの課題は改善されるものの、ウェハ裏面貼付け方式のフィルム状接着剤にはさらに改善すべき課題が残されていた。すなわち、ウェハ裏面貼付け方式のフィルム状接着剤を用いる方法にあっては、ダイシング工程までに、フィルム状接着剤とダイシングテープを貼付するといった2つの貼付工程が必要であったことから、作業工程の簡略化が求められていた。
【0006】
【特許文献1】
特開平3−192178
【特許文献2】
特開平4−234472
【特許文献3】
特開平9−17810
【特許文献4】
特開平4−196246
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した従来技術の問題に鑑み、ウェハ裏面貼付け方式のフィルム状接着剤を用いる方法にあって、フィルム状接着剤とUV型ダイシングテープを貼りあわせた接着シートを提供することにより、上述のダイシング工程までの貼付工程を簡略化することを目的とする。
また、本発明は、ウェハ裏面に前記接着シートを貼り付ける(以下、ラミネートという)際に、フィルム状接着剤が溶融する温度まで加熱するが、この加熱温度を上記のUV型ダイシングテープの軟化温度よりも低くすることができるフィルム状接着剤を提供することを目的とする。これによって、作業性の改善のみならず、大径化薄膜化するウェハの反りといった問題を解決することを目的とする。
本発明は、さらに、半導体素子搭載用支持部材に熱膨張係数の差が大きい半導体素子を実装する場合に要求される耐熱性及び耐湿性を有し、かつ作業性に優れる接着シートを提供することを目的とする。本発明は、さらに、半導体装置の製造工程を簡略化できる製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、貼りあわせるダイシングテープの軟化温度よりも低い温度でウェハ裏面にラミネートでき、かつ熱応力を低減でき、さらに耐熱性及び耐湿信頼性に優れるダイ接着用フィルム状接着剤の開発及び半導体装置の製造工程を簡略化できる製造方法を鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の接着シート並びに半導体装置及びその製造方法を提供するものである。
1.(A)基材層、(B)放射線硬化型粘着剤層、並びに(C)Tgが−10〜80℃、重量平均分子量が10,000〜200,000のポリイミド樹脂及び熱硬化性樹脂を含む接着剤層がこの順に形成されており、
前記ポリイミド樹脂が、下記一般式(II)で表されるテトラカルボン酸二無水物の含量が全テトラカルボン酸二無水物の含量に対し30モル%以上であるテトラカルボン酸二無水物と、
【化9】
下記式(IV)、(V)及び(VI)で表されるジアミンを全ジアミンの含量に対して50モル%以上含むジアミンと、を反応させて得られるポリイミド樹脂であり、
【化10】
(式中、Q1及びQ2は各々独立に炭素数1〜5のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基を示し、Q3、Q4、Q5、及びQ6は各々独立に炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基を示し、mは1〜50の整数を示す)
【化11】
(式中、Q7、Q8及びQ9は炭素数1〜10のアルキレン基を示しpは2〜80の整数を示す)
【化12】
(式中、rは1〜20の整数を示す)
前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤からなる接着シート。
2.前記(C)接着剤層が、ポリイミド樹脂100重量部に対し、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤を0.1〜200重量部含有する前記1記載の接着シート。
3.前記接着シートにおいて、(B)粘着剤層と(C)接着剤層との界面の接着強度が、放射線照射前の接着強度が放射線照射後の接着強度より大きい前記1又は2記載の接着シート。
4.前記接着シートにおいて、放射線照射前後の(B)粘着剤層/(C)接着剤層界面の接着強度差(放射線照射前の接着強度−放射線照射後の接着強度)が100mN/cm以上である前記1〜3のいずれか記載の接着シート。
5.前記接着シートにおいて、放射線照射前後の(B)粘着剤層/(C)接着剤層界面の接着強度比(放射線照射後の接着強度/放射線照射前の接着強度)が0.5以下である前記1〜4のいずれか記載の接着シート。
6.前記接着シートにおいて、(B)粘着剤層と(C)接着剤層との界面における放射線照射前の接着強度が200mN/cm以上であり、放射線照射後の前記接着強度が100mN/cm以下である前記1〜5のいずれか記載の接着シート。
7.前記1〜6いずれか記載の(C)接着剤層を介して、半導体素子と半導体搭載用支持部材とを接着した半導体装置。
8.(1)前記1〜6のいずれか記載の(A)基材層、(B)粘着剤層及び(C)接着剤層を備える接着シートを、前記(C)接着剤層を挟んで半導体ウェハ上に設けることにより接着シート付き半導体ウェハを得る工程と、
(2)半導体ウェハのダイシング前又はダイシング後のいずれかにおいて、前記接着シートに放射線を照射して、前記(B)粘着剤層を硬化させ、前記(C)接着剤層に対する前記(B)粘着剤層の粘着力を低減し、かつ前記(B)粘着剤層を剥離して、(C)接着剤層付き半導体素子を得る工程と、
(4)前記(C)接着剤層付き半導体素子と半導体素子搭載用の支持部材とを、前記(C)接着剤層を介して接着する工程とを含む半導体装置の製造方法。
9.(1)前記1〜6のいずれか記載の(A)基材層、(B)粘着剤層及び(C)接着剤層を備える接着シートを、前記(C)接着剤層を挟んで半導体ウェハ上に設けることにより接着シート付き半導体ウェハを得る工程と、
(2)(A)基材層を剥離した前記接着シート付き半導体ウェハをダイシングして、接着シート付き半導体素子を得る工程と、
(3)前記接着シートに放射線を照射して、前記(B)粘着剤層を硬化させ、前記(C)接着剤層に対する前記(B)粘着剤層の粘着力を低減し、かつ前記(B)粘着剤層を剥離して、(C)接着剤層付き半導体素子を得る工程と、
(4)前記(C)接着剤層付き半導体素子と半導体素子搭載用の支持部材とを、前記(C)接着剤層を介して接着する工程とを含む半導体装置の製造方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の接着シートは、ダイシング時には半導体素子が飛散しない充分な粘着力を有し、その後放射線を照射して、前記粘着剤層と接着剤層との間の接着力を制御することにより、ピックアップ時には各素子を傷つけることがないような低い粘着力を有する、という相反する要求を満足するものであり、さらに耐熱性、耐湿性に優れるダイ接着用接着剤層を有するものである。
【0010】
本発明では、(A)基材層、(B)放射線硬化型粘着剤層、及び(C)ポリイミド樹脂及び熱硬化性樹脂を含む接着剤層とがこの順に形成されてなることを特徴とする接着シートに関する。本発明の前記ポリイミド樹脂は、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを公知の方法で縮合反応させて得ることができる。すなわち、有機溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを等モル又はほぼ等モル用い(各成分の添加順序は任意)、反応温度80℃以下、好ましくは0〜60℃で付加反応させる。反応が進行するにつれ反応液の粘度が徐々に上昇し、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が生成する。
上記ポリアミド酸は、50〜80℃の温度で加熱して解重合させることによって、その分子量を調整することもできる。
ポリイミド樹脂は、上記反応物(ポリアミド酸)を脱水閉環させて得ることができる。脱水閉環は、加熱処理する熱閉環法と、脱水剤を使用する化学閉環法で行うことができる。
【0011】
ポリイミド樹脂の原料として用いられるテトラカルボン酸二無水物としては特に制限は無く、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェルテトラカルボン酸二無水物、2,2′,3,3′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3′,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2′,3′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3,3′,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,3′,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3′,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2′,3′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリテート無水物)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタン−2,3−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ−〔2,2,2〕−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル〕プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4′−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、1,3−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、下記一般式(I)
【化13】
(式中、nは2〜20の整数を示す)
で表されるテトラカルボン酸二無水物、下記式(II)
【化14】
で表されるテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、中でも、本発明の接着シートを構成する接着剤層に低応力及び低温接着性を付与できる点で上記一般式(I)で表されるテトラカルボン酸二無水物が好ましく、また接着剤層に優れた耐湿信頼性を付与できる点で上記式(II)で表されるテトラカルボン酸二無水物が好ましい。これらテトラカルボン酸二無水物は単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0012】
また、上記一般式(I)で表されるテトラカルボン酸二無水物の含量は、全テトラカルボン酸二無水物に対して30モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましく、70モル%以上が極めて好ましい。30モル%未満であると、上記一般式(I)で表されるテトラカルボン酸二無水物を使用したことによる接着剤層の低応力性及び低温接着性を充分に達成できない。
【0013】
上記一般式(I)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、例えば、無水トリメリット酸モノクロライド及び対応するジオールから合成することができ、具体的には1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,3−(トリメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,4−(テトラメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,5−(ペンタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,6−(ヘキサメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,7−(ヘプタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,8−(オクタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,9−(ノナメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,12−(ドデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,16−(ヘキサデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,18−(オクタデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)等が挙げられ、これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0014】
また、一般式(I)又は上記式(II)で表されるテトラカルボン酸二無水物の含量は、全テトラカルボン酸二無水物に対して30モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましく、70モル%以上が極めて好ましい。30モル%未満であると、一般式(I)又は上記式(II)で表されるテトラカルボン酸二無水物を使用したことによる接着剤層の耐湿信頼性を充分に達成できない。
【0015】
上記ポリイミド樹脂の原料として用いられるジアミンとしてはo−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3′−ジアミノジフェニルエーテル、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジアミノジフェニルメタン、3,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジイソプロピルフェニル)メタン、3,3′−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,4′−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、4,4′−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,3′−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4′−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4′−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′−ジアミノジフェニルケトン、3,4′−ジアミノジフェニルケトン、4,4′−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3′−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、3,4′−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、4,4′−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、3,5−ジアミノ安息香酸等の芳香族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、サン テクノケミカル(株)製 ジェファーミン D−230、D−400、D−2000、D−4000、ED−600、ED−900、ED−2001、EDR−148、BASF製ポリエーテルアミンD−230、D−400、D−2000等のポリオキシアルキレンジアミン等の脂肪族ジアミン、下記式(III)
【化15】
で表されるジアミン、下記一般式(IV)
【化16】
(式中、Q1及びQ2は各々独立に炭素数1〜5のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基を示し、Q3、Q4、Q5、及びQ6は各々独立に炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基を示し、mは1〜50の整数を示す)
で表されるシロキサンジアミン、下記一般式(V)
【化17】
(式中、Q7、Q8及びQ9は炭素数1〜10のアルキレン基を示しpは2〜80の整数を示す)
で表される脂肪族エーテルジアミン、下記一般式(VI)
【化18】
(式中、rは1〜20の整数を示す)
で表される脂肪族ジアミン等が挙げられ、中でも、重合性が良くポリイミド樹脂の分子量を制御し易いという点で上記式(III)で表されるジアミンが好ましく、本発明の接着シートを構成する接着剤層に低応力性及び低温接着性を付与できる点で上記一般式(IV)、(V)、又は(VI)で表されるジアミンが好ましい。これらのジアミンは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0016】
また、上記式(III)で表される2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパンは、全ジアミンに対して好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは30モル%以上含まれるようにする。10モル%未満では、得られるポリイミド樹脂の分子量が上がりにくくなる傾向がある。
【0017】
また、上記一般式(IV)で表されるシロキサンジアミンとしては、例えば、前記式(IV)のシロキサンジアミンとしては、mが1のとき、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェノキシ−1,3−ビス(4−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノブチル)ジシロキサン、1,3−ジメチル−1,3−ジメトキシ−1,3−ビス(4−アミノブチル)ジシロキサン等があり、mが2のとき、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(4−アミノフェニル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(2−アミノエチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサプロピル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン等があり、mが3〜50のとき、
【化19】
【化20】
【化21】
等があり、これらは2種以上を併用してもよい。式(IV)のシロキサンジアミンは、全ジアミンに対して3モル%以上、好ましくは5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上含まれるようにする。3モル%未満では、低応力性、低温接着性、低吸湿性の特性を発揮できない傾向がある。
【0018】
また、上記一般式(V)で表される脂肪族エーテルジアミンの具体例としては、
【化22】
等があり、2種類以上を混合して用いてもよい。式(V)の脂肪族エーテルジアミンは、全ジアミンに対して3モル%以上、好ましくは5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上含まれるようにする。3モル%未満では、低応力性、低温接着性、低吸湿性の特性を発揮できない傾向がある。また、上記式(V)で表されるジアミンの重量平均分子量の範囲としては、100以上であることが好ましく、200以上であることがより好ましく、300以上であることが特に好ましい。また上限は3,000とすることが好ましい。
【0019】
また、上記一般式(VI)で表される脂肪族ジアミンとしては、例えば、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン等が挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。式(VI)で表される脂肪族ジアミンは、全ジアミンに対して3モル%以上、好ましくは5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上含まれるようにする。3モル%未満では、低応力性、低温接着性、低吸湿性の特性を発揮できない傾向がある。
上記ポリイミド樹脂は単独又は必要に応じて2種以上を混合(ブレンド)してもよい。
前記一般式(III)〜(VI)で表されるジアミンを併用した際のそれらの全重量は特に制限はないが、全ジアミンの含量に対して50モル%以上が好ましく、70モル%以上がさらに好ましい。
【0020】
本発明の接着シートのラミネート温度は、放射線硬化型粘着剤層の熱分解開始温度あるいは軟化温度以下であることが好ましく、また半導体ウェハの反りを抑えるという観点からも200℃以下が好ましく、さらに好ましくは150℃以下、さらにより好ましくは100℃以下である。上記ラミネート温度を達成するためには、前記ポリイミド樹脂のTgは150℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましい。好ましいTgは−10〜80℃である。前記Tgが200℃を超えると、上記ラミネート温度が高くなりすぎて好ましくない。また、前記ポリイミド樹脂の重量平均分子量は10,000〜200,000の範囲内で制御されていることが好ましく、20,000〜150,000がより好ましく、30,000〜80,000が極めて好ましい。前記重量平均分子量が10,000より小さいと、フィルム形成性が悪くなる傾向があり、200,000を超えると、熱時の流動性が悪くなり、上記ラミネート温度の上昇をもたらすため、好ましくない。前記ポリイミドのTg及び重量平均分子量を上記の範囲内とすることにより、ラミネート温度を低く抑えることができるだけでなく、半導体素子を半導体素子搭載用支持部材に接着固定する際の加熱温度(ダイボンディング温度)も低くすることができ、チップの反りを抑えることができるという効果も得られる。
【0021】
本発明の接着剤層に含有される熱硬化性樹脂は、熱により架橋反応を起こす反応性化合物である。このような化合物としては、例えば、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、レゾルシノールホルムアルデヒド樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、ケトン樹脂、トリアリルシアヌレート樹脂、ポリイソシアネート樹脂、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラートを含有する樹脂、トリアリルトリメリタートを含有する樹脂、シクロペンタジエンから合成された樹脂、芳香族ジシアナミドの三量化による熱硬化性樹脂等が挙げられる。中でも、高温において優れた接着力を持たせることができる点で、エポキシ樹脂、シアネート樹脂及びビスマレイミド樹脂が好ましく、エポキシ樹脂がより好ましい。なお、これら熱硬化性樹脂は単独で又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
好ましい熱硬化性樹脂の一つである、上記エポキシ樹脂としては、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を含むものがより好ましく、硬化性や硬化物特性の点からフェノールのグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂が極めて好ましい。このような樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型(又はAD型、S型、F型)のグリシジルエーテル、水添加ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、エチレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、プロピレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ナフタレン樹脂のグリシジルエーテル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のグリシジルエーテル、ダイマー酸のグリシジルエステル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルアミン、ナフタレン樹脂のグリシジルアミン等が挙げられる。ラミネート温度を下げるという観点では、上記エポキシ樹脂のうち、常温で液状のエポキシ樹脂が好ましい。また、熱時の接着強度を向上させるという観点では、上記エポキシ樹脂のうち、多官能型エポキシ樹脂が好ましい。また、パッケージ組み立て加熱時のアウトガスを低減するという観点では、数平均分子量が400〜1500の2官能高分子量エポキシ樹脂、又は多官能型エポキシ樹脂が好ましい。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
上記エポキシ樹脂の硬化剤としては、例えば、フェノール系化合物、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、脂肪族酸無水物、脂環族酸無水物、芳香族酸無水物、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド、三フッ化ホウ素アミン錯体、イミダゾール類、第3級アミン等が挙げられ、中でもフェノール系化合物が好ましく、分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物がより好ましい。
【0024】
上記分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、t−ブチルフェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンクレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック樹脂、キシリレン変性フェノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、トリスフェノールノボラック樹脂、テトラキスフェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ポリ−p−ビニルフェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂等が挙げられる。
【0025】
上記エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤の含量は、ポリイミド樹脂100重量部に対して0.1〜200重量部であることが好ましく、1〜100重量部がより好ましく、5〜60重量部がさらに好ましい。前記エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤が0.1重量部未満であると、エポキシ樹脂の硬化による熱時の接着強度向上の効果が得られず、また200重量部を超えると、フィルム形成性が悪くなる傾向がある。
【0026】
また、本発明の接着シートを形成する接着剤層には、硬化促進剤を添加することもできる。硬化促進剤には、特に制限が無く、イミダゾール類、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾールテトラフェニルボレート、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7−テトラフェニルボレート等を用いることができる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
硬化促進剤の添加量は、エポキシ樹脂100重量部に対して0.01〜20重量部が好ましく、0.1〜10重量部がより好ましい。添加量が0.01重量部未満であるとると硬化性が劣る傾向があり、20重量部を超えると保存安定性が低下する傾向がある。
【0027】
本発明の接着シートを形成する接着剤層には、可とう性や耐リフロークラック性を向上させる目的で、エポキシ樹脂と相溶性がある高分子量樹脂を添加することができる。このような高分子量樹脂としては、特に限定されず、たとえばフェノキシ樹脂、高分子量エポキシ樹脂、超高分子量エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
エポキシ樹脂と相溶性がある高分子量樹脂の使用量は、接着剤層の流動性を維持するという観点で、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤100重量部に対して、0.1〜40重量部とすることが好ましい。
【0028】
また、本発明の接着シートを形成する接着剤層には、その取り扱い性向上、熱伝導性向上、溶融粘度の調整及びチキソトロピック性付与などを目的として、無機フィラーを添加することもできる。無機フィラーとしては、特に制限はなく、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ほう酸アルミウイスカ、窒化ほう素、結晶性シリカ、非晶性シリカ等が挙げられ、フィラーの形状は特に制限されるものではない。これらのフィラーは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
中でも、熱伝導性向上のためには、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ほう素、結晶性シリカ、非晶性シリカ等が好ましい。また、溶融粘度の調整やチキソトロピック性の付与の目的には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、結晶性シリカ、非晶性シリカなどが好ましい。
無機フィラーの使用量は、接着剤層を形成するポリイミド樹脂100重量部に対して1〜8,000重量部が好ましい。1重量部未満だと添加効果が得られない傾向があり、8,000重量部を超えると、粘着剤層あるいは接着剤層の貯蔵弾性率の上昇、粘接着性の低下、ボイド残存による電気特性の低下等の問題を起こす傾向がある。
【0029】
また、本発明の接着シートを形成する接着剤層には、異種材料間の界面結合を良くするために、各種カップリング剤を添加することもできる。カップリング剤としては、例えば、シラン系、チタン系、アルミニウム系等が挙げられ、中でも効果が高い点でシラン系カップリング剤が好ましい。
上記シラン系カップリング剤としては、特に制限はなく、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピル−トリス(2−メトキシ−エトキシ−エトキシ)シラン、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、トリアミノプロピルトリメトキシシラン、3−(4,5−ジヒドロイミダゾール)−1−イル−プロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピル−トリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルジメトキシシラン、3−シアノプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリクロロシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、アミルトリクロロシラン、オクチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリ(メタクリロイルオキエトキシ)シラン、メチルトリ(グリシジルオキシ)シラン、N−β(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、オクタデシルジメチル〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕アンモニウムクロライド、γ−クロロプロピルメチルジクロロシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、トリメチルシリルイソシアネート、ジメチルシリルイソシアネート、メチルシリルトリイソシアネート、ビニルシリルトリイソシアネート、フェニルシリルトリイソシアネート、テトライソシアネートシラン、エトキシシランイソシアネートなどを使用することができ、単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
また、チタン系カップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリス(n−アミノエチル)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンエチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート、テトラメチルオルソチタネート、テトラエチルオルソチタネート、テタラプロピルオルソチタネート、テトライソブチルオルソチタネート、ステアリルチタネート、クレシルチタネートモノマー、クレシルチタネートポリマー、ジイソプロポキシ−ビス(2,4−ペンタジオネート)チタニウム(IV)、ジイソプロピル−ビス−トリエタノールアミノチタネート、オクチレングリコールチタネート、テトラ−n−ブトキシチタンポリマー、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレートポリマー、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレートなどを使用することができ、単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
アルミニウム系カップリング剤としては、例えば、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセテートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウム=モノイソプロポキシモノオレオキシエチルアセトアセテート、アルミニウム−ジ−n−ブトキシドモノエチルアセトアセテート、アルミニウム−ジ−iso−プロポキシド−モノエチルアセトアセテート等のアルミニウムキレート化合物、アルミニウムイソプロピレート、モノ−sec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウム−sec−ブチレート、アルミニウムエチレート等のアルミニウムアルコレートなどを使用することができ、単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。上記カップリング剤の使用量は、その効果や耐熱性及びコストの面から、接着剤層を構成するポリイミド樹脂100重量部に対して、0.01〜20重量部とするのが好ましい。
【0032】
本発明の接着シートを形成する接着剤層には、イオン性不純物を吸着して、吸湿時の絶縁信頼性をよくするために、さらにイオン捕捉剤を添加することもできる。このようなイオン捕捉剤としては、特に制限はなく、例えば、トリアジンチオール化合物、ビスフェノール系還元剤等の、銅がイオン化して溶け出すのを防止するため銅害防止剤として知られる化合物、ジルコニウム系、アンチモンビスマス系マグネシウムアルミニウム化合物等の無機イオン吸着剤などが挙げられる。
上記イオン捕捉剤の使用量は、添加による効果や耐熱性、コスト等の点から、ポリイミド樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましい。
【0033】
本発明の接着シートを構成する放射線硬化型粘着剤層とは、放射線照射により重合あるいは硬化するものであれば特に限定しない。具体的には、UV硬化型ダイシングテープ等が挙げられる。
本発明の接着シートは、ダイシング工程終了後、放射線を接着シートに照射し、放射線硬化あるいは重合性を有する粘着剤層を重合硬化せしめ、粘着剤層と接着剤層界面の接着力を低下させて半導体素子のピックアップを可能にするものである。
本発明の接着シートを構成する粘着剤層及び接着剤層は、粘着剤層及び接着剤層を形成する組成物を溶剤に溶解あるいは分散してワニスとし、基材フィルム上に塗布、加熱し溶剤を除去することによって得ることができる。
【0034】
粘着剤層あるいは接着剤層を得るために用いる基材フィルムとしては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルムなどや、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ酢酸ビニルフィルム等のポリオレフィン系などのプラスチックフィルム等が挙げられ、これらのフィルムは2種以上を積層してもよい。
【0035】
本発明の接着シートを構成する粘着剤層及び接着剤層は、上記別々に作製した粘着剤層と接着剤層を貼り合せて製造することができるが、粘着剤層あるいは接着剤層の組成物を溶剤に溶解あるいは分散してワニスとし、基材フィルム上に塗布、加熱し溶剤を除去してフィルム状にした後、そのフィルムの粘着剤層あるいは接着剤層上に、それぞれ接着剤層あるいは粘着剤層を形成する組成物を溶剤に溶解あるいは分散してワニスとしたものを塗布、加熱して溶剤を除去することによって得ることもできる。
【0036】
また、上記のワニス化するための溶剤としては、特に限定されないが、フィルム作製時の揮発性などを考慮すると、たとえば、メタノール、エタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレンなどの比較的低沸点の溶媒を使用するのが好ましい。また、塗膜性を向上させるなどの目的で、たとえば、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、シクロヘキサノンなどの比較的高沸点の溶媒を使用することもできる。これらの溶媒は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
無機フィラーを添加した際のワニスの製造には、無機フィラーの分散性を考慮して、らいかい機、3本ロール、ボールミル及びビーズミルなどを使用するのが好ましく、また、これらを組み合わせて使用することもできる。また、無機フィラーと低分子量の原料をあらかじめ混合した後、高分子量の原料を配合することによって、混合する時間を短縮することもできる。また、ワニスとした後、真空脱気等によってワニス中の気泡を除去することもできる。
基材フィルムへのワニスの塗布方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、ナイフコート法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、カーテンコート法等が挙げられる。
【0038】
接着シートの厚みは、特に制限はないが、接着剤層、基材層ともに5〜250μmが好ましい。5μmより薄いと応力緩和効果が乏しくなる傾向があり、250μmより厚いと経済的でなくなる上に、半導体装置の小型化の要求に応えられない。
また、本発明の接着シートは、所望のシート厚を得るために、さらに1若しくは2以上の粘着剤層又は接着剤層を半導体ウェハと接着剤層あるいは粘着剤層と接着剤層の間に挟むように設けてもよい。この場合、前記所望により設けられる粘着剤層又は接着剤層として、前記の方法によって調製されたものの他に、従来公知の方法によって調製されたものを用いることができる。前記所望により設けられる粘着剤層又は接着剤層として、商業的に入手可能な接着シート、例えば、ポリイミド系、シリコンオリゴマー系、ゴム−エポキシ系、エポキシ系接着剤を用いることができる。但し、粘着剤層あるいは接着剤層同士、又は粘着剤層と接着剤層の剥離が発生しないような貼り合わせ条件を従来公知の技術に基づいて考慮する必要がある。
【0039】
以上説明したような構成の接着シートに放射線照射すると、放射線照射後には粘着剤層と接着剤層の界面の粘着力は大きく低下し、容易に半導体素子に接着剤層を保持したまま該接着シートの粘着剤層からピックアップすることができる。本発明の接着シートの粘着剤層は、放射線照射のみで基材の接着力を低下させる方法以外に放射線照射と同時あるいは放射線照射後に硬化反応を促進する目的で加熱を併用しても良い。加熱を併用することにより、より低温短時間での接着力低下が可能となる。加熱温度は、粘着剤層の分解点以下であれば特に制限は受けないが、50〜170℃の温度が好ましい。
【0040】
本発明の接着シートにおいて、放射線照射前後の粘着剤層/接着剤層界面の90°ピール剥離力による接着強度差(放射線照射前の接着強度−放射線照射後の接着強度)があるものが好ましく、この差が100mN/cm以上であることがより好ましい。150mN/cm以上であることがさらに好ましく、200mN/cm以上であることが特に好ましい。この値が100mN/cm未満だと、ピックアップ時に各素子を傷つける傾向がある。なお、前記の90°ピール剥離力による接着強度とは、ダイシングすべき半導体ウェハに上記接着シートを室温又は加熱しながら圧着して貼り付けた後、基材層のみを、引張り角度:90°、引張り速度:50mm/minで引張った時のピール剥離力である。
また、本発明では、放射線照射前後の粘着剤層/接着剤層界面の90°ピール剥離力による接着強度比(放射線照射後の接着強度/放射線照射前の接着強度)が0.5以下であることが好ましい。前記接着強度比は、0.4以下であることがより好ましく、0.3以下であることがさらに好ましい。この値が0.5よりも大きいと、ピックアップ時に各素子を傷つける傾向がある。一方、前記接着強度比(照射後接着強度/照射前接着強度)の下限は特に制限されるものではないが、例えば作業性の観点からは、0.0001以上であることが好ましい。
また、本発明では、前記接着シートにおいて、粘着剤層と接着剤層との界面における放射線照射前の接着強度が200mN/cm以上であり、250mN/cm以上であることがより好ましく、300mN/cm以上であることがさらに好ましい。この値が200mN/cmに満たないと、ダイシング時に半導体素子が飛散する可能性がある。一方、放射線照射後の前記接着強度は100mN/cm以下であることが好ましい。この値が100mN/cmよりも大きいと、ピックアップ時に各素子を傷つける傾向がある。
【0041】
次に、本発明に係る接着シートの使用方法の一例について説明する。基材フィルム1及び4上にそれぞれ別個に粘着剤及び接着剤を塗布し、基材フィルムを備えた粘着剤層2(図1)及び基材フィルムを備えた接着剤層3(図2)を作製した後、上記2層を積層して接着シート(図3)を得る方法を使用することもできるし、基材フィルム1を備えた粘着剤層2(図1)上に接着剤層のワニスを塗布する方法及び基材フィルム4を備えた接着剤層3(図2)上に粘着剤層のワニスを塗布する方法を使用することもできる。上記基材フィルム1を備えた粘着剤層2(図1)及び基材フィルム4を備えた接着剤層3(図2)を作製した後、上記2層を積層して接着シート(図3)を得る方法を選択した場合、その後半導体ウェハを貼着する工程において、基材フィルム4を剥離するので、基材フィルム1/粘着剤層2界面、粘着剤層2/接着剤層3界面に比べ、基材フィルム4/接着剤層3界面の粘着性が最も小さくなるように基材フィルムを選択することが重要になる。図4に示すようにして、この接着剤層3の上面にダイシング加工すべき半導体ウェハAを貼着した後、この貼着状態で半導体ウェハAに図5のようにダイシング、洗浄、乾燥の工程が加えられる。この際、粘着剤層2及び接着剤層3により半導体ウェハAは接着シートに充分に粘着保持されているので、上記各工程の間に半導体ウェハAが脱落することはない。
【0042】
次に、図6に示すように、放射線Bを接着シートの粘着剤層2に照射し、放射線重合性を有する粘着剤層2の一部又は大部分を重合硬化せしめる。この際、放射線照射と同時あるいは放射線照射後に硬化反応を促進する目的で加熱を併用しても良い。加熱を併用することにより、より低温短時間での接着力低下が可能となる。加熱温度は、粘着剤層2の熱分解温度以下であれば特に制限は受けないが、50〜170℃の温度が好ましい。
接着シートへの放射線照射は、基材フィルム1の粘着剤層2が設けられていない面から行う。したがって前述のように、放射線としてUVを用いる場合には基材フィルム1は光透過性であることが必要であるが、放射線としてEBを用いる場合には基材フィルム2は必ずしも光透過性である必要はない。
放射線照射後、ピックアップすべき半導体素子A1、A2、A3を例えば吸引コレット5によりピックアップする。この際、ピックアップすべき半導体素子A1、A2、A3を基材フィルム1の下面から、例えば針扞等により突き上げることもできる。半導体素子A1と接着剤層3との間の粘着力は、粘着剤層2と基材フィルム1との間及び粘着剤層2と接着剤層3との間の粘着力よりも大きいため、半導体素子A1のピックアップを行うと、接着剤層3は半導体素子A1の下面に付着した状態で剥離する(図8参照)。次いで、半導体素子を接着剤層3を介して半導体素子搭載用支持部材6に載置し加熱する。加熱により接着剤層3は接着力が発現し、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材との接着が完了する(図9参照)。
【0043】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
実施例1
温度計、攪拌機及び塩化カルシウム管を備えた500mlフラスコに、1,12−ジアミノドデカン5.41g(0.045モル)、エーテルジアミン(BASF製、ポリエーテルジアミン2000(分子量:1923、式(V)のQ7:−CH(CH3)CH2−、Q8:−CH(CH3)CH2−、Q9:−CH2CH(CH3)−、p:30.9)11.54g(0.01モル)、ポリシロキサンジアミン(信越シリコーン製、KF−8010(分子量:900、式(IV)のQ1:−(CH2)3−、Q2:−(CH2)3−、Q3:−CH3、Q4:−CH3、Q5:−CH3、Q6:−CH3、m:8.9)24.3g(0.045モル)及びN−メチル−2−ピロリドン169gを仕込み攪拌した。ジアミンの溶解後、フラスコを氷浴中で冷却しながら、4,4′−(4,4′−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸二無水物)31.23g(0.1モル)を少量ずつ添加した。室温で8時間反応させたのち、キシレン112.7gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃で加熱し、水と共にキシレンを共沸除去し、ポリイミド溶液を得た(Tg:25℃、重量平均分子量:35,000、樹脂分:33重量%)。
次に、樹脂分50g分の前記ポリイミド溶液に、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(固体状、日本化薬(株)製、商品名:ESCN−195)13g、フェノールノボラック樹脂(明和化成(株)製、商品名:H−1)6.9g、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボラート(北興化学(株)製、商品名:TPPK)0.13gを、溶剤であるN−メチル−2−ピロリドン100g中に加えて溶解させる。さらに窒化ホウ素フィラー(水島合金鉄(株)製、商品名:HP−P1)を10.0g加え、これらを良く攪拌し、均一に分散させて接着剤ワニスを得た。この接着剤ワニスを、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(帝人デュポンフィルム(株)製、テイジンテトロンフィルム:G2−50)上に塗布し、150℃で30分間加熱乾燥して、基材(ポリエチレンテレフタレートフィルム)を備えた膜厚が50μmのフィルム状接着剤層1(基材を除いた接着シートの厚みが50μm)を得た。
【0044】
得られたフィルム状接着剤層1を、粘着剤層として古河電工(株)製UV型ダイシングテープ(商品名:UC−334EP、厚さ5μmアクリル系粘着剤層と厚さ80μmポリオレフィン基材層からなるもの)と貼り合わせ、フィルム状接着剤層とUV型ダイシングテープ及び前記ダイシングテープの基材とがこの順で積層された接着シート1を得た。
得られた接着シート1を厚さ150μmのシリコンウェハ上に接着剤層側がシリコンウェハと接するようにして120℃で貼付け、接着シート付きシリコンウェハをダイシング装置上に載置した。次いで、半導体ウェハをダイシング装置上に固定して100mm/secの速度で5mm×5mmにダイシングした後、(株)オーク製作所製UV−330 HQP−2型露光機を使用して、500mJ/cm2の露光量で接着シートの粘着剤層側から露光し、ピックアップ装置にてダイシングしたチップをピックアップし、ダイシング時のチップ飛び及びピックアップ性を評価した。
さらに、上記接着シート付きシリコンウェハに500mJ/cm2の露光量で接着シートの粘着剤層側から露光し、露光前後の接着シート/基材界面の接着強度を、90°ピール強度で測定した(引張り速度 50m/min)。
一方、フィルム状接着剤層1を用いて、半導体チップと厚み25μmのポリイミドフィルムを基材に用いた配線基板を貼り合せた半導体装置サンプル(片面にはんだボールを形成、半導体チップと接着剤層、ポリイミドフィルムを基材に用いた配線基板と接着剤層が接するように貼り合せ)を作製し、耐熱性及び耐湿性を調べた。耐熱性の評価方法には、耐リフロークラック性と温度サイクル試験を適用した。耐リフロークラック性の評価は、サンプル表面の最高温度が240℃でこの温度を20秒間保持するように温度設定したIRリフロー炉にサンプルを通し、室温で放置することにより冷却する処理を2回繰り返したサンプル中のクラックを目視と超音波顕微鏡で視察した。クラックの発生していないものを○とし、発生していたものを×とした。耐温度サイクル性は、サンプルを−55℃雰囲気に30分間放置し、その後125℃の雰囲気に30分間放置する工程を1サイクルとして、1000サイクル後において超音波顕微鏡を用いて剥離やクラック等の破壊が発生していないものを○、発生したものを×とした。また、耐湿性評価は、温度121℃、湿度100%、2.03×105Paの雰囲気(プレッシャークッカーテスト:PCT処理)で72時間処理後に剥離を観察することにより行った。剥離の認められなかったものを○とし、剥離のあったものを×とした。
これらの評価結果をまとめて表1に示す。
【0045】
参考例
攪拌装置、窒素導入管、乾燥管を備えた1リットルの四つ口のフラスコに、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン20.5g(0.05モル)及び下記式H2N−(CH3)3−O−(CH2)4−O−(CH2)3−NH2で表される脂肪族エーテルジアミン10.2g(0.05モル)を入れ、窒素気流下、N−メチル−2−ピロリドン250gを加えて溶液とした。フラスコを水浴上に移し、激しく攪拌しながら1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート二無水物)52.2g(0.10モル)を少量ずつ加えた。酸二無水物がほぼ溶解したら、ゆっくりと攪拌しながら6時間反応させ、ポリアミド酸溶液を得た。次に、前記のポリアミド酸溶液が入った四つ口フラスコに蒸留装置を装着し、キシレン220gを加えた。窒素気流下、180℃の油浴上で、激しく攪拌しながら、イミド化により生成する縮合水をキシレンと共に共沸留去した。その反応液を水中に注ぎ、沈殿したポリマーを濾別、乾燥してポリイミド樹脂(Tg:70℃、重量平均分子量:65,000)を得た。
次に、上記ポリイミド樹脂50gに、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(液状、大日本インキ化学(株)製、商品名:N−730)12.4g、フェノールノボラック樹脂(明和化成(株)製、商品名:H−1)7.5g、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボラート(北興化学(株)製、商品名:TPPK)0.12gを、溶剤であるN−メチル−2−ピロリドン100g中に加えて溶解させる。これを良く攪拌し、均一に分散させて接着剤ワニスを得た。この接着剤ワニスを、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(帝人デュポンフィルム(株)製、テイジンテトロンフィルム:G2−50)上に塗布し、150℃で30分間加熱乾燥して、基材(ポリエチレンテレフタレートフィルム)を備えた膜厚が50μmのフィルム状接着剤層2(基材を除いた接着シートの厚みが50μm)を得た。得られたフィルム状接着剤層2を用いて、実施例1と同様にして粘着剤層を設け、接着シート2を得て、同様の条件で評価した結果を表1に示す。
【0046】
比較例1
攪拌装置、窒素導入管、乾燥管を備えた1リットルの四つ口のフラスコに、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン41.0g(0.10モル)を入れ、窒素気流下、N−メチル−2−ピロリドン250gを加えて溶液とした。フラスコを水浴上に移し、激しく攪拌しながら1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート二無水物)41.0g(0.10モル)を少量ずつ加えた。酸二無水物がほぼ溶解したら、ゆっくりと攪拌しながら6時間反応させ、ポリアミド酸溶液を得た。次に、前記のポリアミド酸溶液が入った四つ口フラスコに蒸留装置を装着し、キシレン220gを加えた。窒素気流下、180℃の油浴上で、激しく攪拌しながら、イミド化により生成する縮合水をキシレンと共に共沸留去した。その反応液を水中に注ぎ、沈殿したポリマーを濾別、乾燥してポリイミド樹脂C(Tg:180℃,重量平均分子量:160,000)を得た。上記ポリイミド樹脂50gに、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、商品名:ESCN−195)26g、フェノールノボラック樹脂(明和化成(株)製、商品名:H−1)13.8g、テトラフェニルホシホニウムテトラフェニルボラート(北興化学(株)製、商品名:TPPK)0.26gを、溶剤であるN−メチル−2−ピロリドン100g中に加えて溶解させる。これを良く攪拌し、均一に分散させて接着剤ワニスを得た。この接着剤ワニスを、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(帝人デュポンフィルム(株)製、テイジンテトロンフィルム:G2−50)上に塗布し、150℃で30分間加熱乾燥して、基材(ポリエチレンテレフタレートフィルム)を備えた膜厚が50μmのフィルム状接着剤層3(基材を除いた接着シートの厚みが50μm)を得た。得られたフィルム状接着剤層3を用いて、実施例1と同様にして粘着剤層を設け、接着シート3を得て、同様の条件で評価した結果を表1に示す。
【0047】
比較例2
YDCN−703(東都化成(株)製商品名、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量210)42.3重量部、プライオーフェンLF2882(大日本インキ化学工業(株)製商品名、ビスフェノールAノボラック樹脂)23.9重量部、HTR−860P−3(帝国化学産業(株)製商品名、エポキシ基含有アクリルゴム、分子量80万、Tg−7℃)44.1重量部、キュアゾール2PZ−CN(四国化成工業(株)製商品名、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール)0.4重量部、NUC A−187(日本ユニカー(株)製商品名、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)0.7重量部、4G(新中村化学(株)製商品名、テトラエチレングリコールジメタクリレート)22.05重量部及び1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.5重量部からなる組成物に、メチルエチルケトンを加えて攪拌混合し、真空脱気した。この接着剤ワニスを、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(帝人デュポンフィルム(株)製、テイジンテトロンフィルムG2−50)上に塗布し、140℃で5分間加熱乾燥して、基材を備えた膜厚が50μmのフィルム状接着剤層4(基材を除いた粘着剤層の厚みが50μm)を得た。得られたフィルム状接着剤層4を用いて、実施例1と同様にして粘着剤層を設け、接着シート4を得て、同様の条件で評価した結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
表1から、本発明の接着シートは耐熱性及び耐湿性に優れ、ダイシング時のチップ飛びも無く、ピックアップ性も良好である。さらに、露光前後の接着強度差が大きいため、作業条件の許容度が大きいため、作業条件の許容度が大きく、作業性に優れるものであることが分かった。
【0050】
【発明の効果】
本発明の接着シートは、ダイシング工程ではダイシングテープとして、半導体素子と支持部材の接合工程では接続信頼性に優れる接着剤として使用することができ、また、半導体搭載用支持部材に熱膨張係数の差が大きい半導体素子を実装する場合に必要な耐熱性、耐湿性を有し、かつ作業性に優れるものである。また、本発明の接着シートを使用した半導体装置の製造方法は、製造工程を簡略化でき、しかも製造した半導体装置は、半導体搭載用支持部材に熱膨張係数の差が大きい半導体素子を実装する場合に必要な耐熱性、耐湿性及び作業性を兼ね備えるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る接着シートの基材フィルムを備えた粘着剤層の一例の断面図である。
【図2】本発明に係る接着シートの基材フィルムを備えた接着剤層の一例の断面図である。
【図3】本発明の接着シートの一例の断面図である。
【図4】本発明に係る接着シートに半導体ウェハを貼着した状態を示す断面図である。
【図5】本発明に係る接着シートを半導体ウェハのダイシング工程に用いた場合の断面図である。
【図6】図5に示す工程の後、接着シートに、裏面から放射線を照射した状態を示す断面図である。
【図7】図6に示す工程の後、半導体素子をピックアップする工程を示す断面図である。
【図8】ピックアップされた半導体素子と接着剤層を示す断面図である。
【図9】半導体素子を半導体素子搭載用支持部材に熱圧着した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 基材フィルム
2 粘着剤層
3 接着剤層
4 基材フィルム
5 吸引コレット
6 半導体素子搭載用支持部材
A 半導体ウェハ
A1 半導体素子
A2 半導体素子
A3 半導体素子
B 放射線
Claims (9)
- (A)基材層、(B)放射線硬化型粘着剤層、並びに(C)Tgが−10〜80℃、重量平均分子量が10,000〜200,000のポリイミド樹脂及び熱硬化性樹脂を含む接着剤層がこの順に形成されており、
前記ポリイミド樹脂が、下記一般式(II)で表されるテトラカルボン酸二無水物の含量が全テトラカルボン酸二無水物の含量に対し30モル%以上であるテトラカルボン酸二無水物と、
前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤からなる接着シート。 - 前記(C)接着剤層が、ポリイミド樹脂100重量部に対し、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤を0.1〜200重量部含有する請求項1記載の接着シート。
- 前記接着シートにおいて、(B)粘着剤層と(C)接着剤層との界面の接着強度が、放射線照射前の接着強度が放射線照射後の接着強度より大きい請求項1又は2記載の接着シート。
- 前記接着シートにおいて、放射線照射前後の(B)粘着剤層/(C)接着剤層界面の接着強度差(放射線照射前の接着強度−放射線照射後の接着強度)が100mN/cm以上である請求項1〜3のいずれか1項記載の接着シート。
- 前記接着シートにおいて、放射線照射前後の(B)粘着剤層/(C)接着剤層界面の接着強度比(放射線照射後の接着強度/放射線照射前の接着強度)が0.5以下である請求項1〜4のいずれか1項記載の接着シート。
- 前記接着シートにおいて、(B)粘着剤層と(C)接着剤層との界面における放射線照射前の接着強度が200mN/cm以上であり、放射線照射後の前記接着強度が100mN/cm以下である請求項1〜5のいずれか1項記載の接着シート。
- 請求項1〜6いずれか1項記載の(C)接着剤層を介して、半導体素子と半導体搭載用支持部材とを接着した半導体装置。
- (1)請求項1〜6のいずれか1項記載の(A)基材層、(B)粘着剤層及び(C)接着剤層を備える接着シートを、前記(C)接着剤層を挟んで半導体ウェハ上に設けることにより接着シート付き半導体ウェハを得る工程と、
(2)半導体ウェハのダイシング前又はダイシング後のいずれかにおいて、前記接着シートに放射線を照射して、前記(B)粘着剤層を硬化させ、前記(C)接着剤層に対する前記(B)粘着剤層の粘着力を低減し、かつ前記(B)粘着剤層を剥離して、(C)接着剤層付き半導体素子を得る工程と、
(4)前記(C)接着剤層付き半導体素子と半導体素子搭載用の支持部材とを、前記(C)接着剤層を介して接着する工程とを含む半導体装置の製造方法。 - (1)請求項1〜6のいずれか1項記載の(A)基材層、(B)粘着剤層及び(C)接着剤層を備える接着シートを、前記(C)接着剤層を挟んで半導体ウェハ上に設けることにより接着シート付き半導体ウェハを得る工程と、
(2)(A)基材層を剥離した前記接着シート付き半導体ウェハをダイシングして、接着シート付き半導体素子を得る工程と、
(3)前記接着シートに放射線を照射して、前記(B)粘着剤層を硬化させ、前記(C)接着剤層に対する前記(B)粘着剤層の粘着力を低減し、かつ前記(B)粘着剤層を剥離して、(C)接着剤層付き半導体素子を得る工程と、
(4)前記(C)接着剤層付き半導体素子と半導体素子搭載用の支持部材とを、前記(C)接着剤層を介して接着する工程とを含む半導体装置の製造方法。
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