JP4430638B2 - 高アルミニウム鋼の連続鋳造用モールドパウダー - Google Patents

高アルミニウム鋼の連続鋳造用モールドパウダー Download PDF

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Description

本発明は、高アルミニウム鋼、殊に溶存Al量が0.1質量%以上である鋼の連続鋳造に用いられるモールドパウダーに関するものである。
鋼の連続鋳造では、良好な表面品質の鋳片を製造するために、モールドパウダーが鋳型内の溶鋼表面上に添加される。これは、溶鋼からの熱で滓化溶融し、溶融スラグ層を形成し、順次鋳型と凝固シェルとの隙間に流入して、消費される。モールドパウダーは、主にCaOとSiO2とからなり、さらに溶融スラグの粘度や凝固温度を調整するためにAl23、MgO、Na2O、FやLi2Oなど、またスラグの溶融速度を調整するためにCなどが加えられている。このモールドパウダーの主な作用としては、(ア)鋳型および凝固シェル間の潤滑性を確保すること、および(イ)凝固シェルから鋳型への抜熱速度を抑えて緩冷却させることなどが挙げられる。
まず上記(ア)で挙げた鋳型および凝固シェル間の潤滑性を確保するためには、鋳型および凝固シェルの隙間にモールドパウダーから得られる溶融スラグが適正量流入するように、その粘度および凝固温度を適正に設定することが重要である。一般的に高速鋳造となるほど、溶融スラグの流入量を確保するため、低粘度のものが使用される。
また上記(イ)の緩冷却は、得られる鋳片の表面品質に直結するため重要である。亜包晶鋼のように鋳片表面割れの発生しやすい鋼種では、特に緩冷却が必要とされる。緩冷却のためには、モールドパウダーから得られるスラグフィルム中、特にその鋳型側表面に結晶を晶出させることが有効である。スラグフィルムの鋳型側表面に結晶が晶出すると、フィルムと鋳型との間に凹凸が形成され、この凹凸に含まれる空気層が断熱層として作用するからである。このための結晶として、カスピダイン(3CaO・2SiO2・CaF2)が、一般的に利用されている。
しかし溶存Al量が0.1%以上であるような高アルミニウム鋼の連続鋳造では、(ア)の潤滑性の確保、および(イ)の緩冷却が困難となる。なぜなら高アルミニウム鋼の連続鋳造では、下記式(2):
4Al+3SiO2 → 2Al23+3Si … (2)
で表される化学反応により、SiO2が消費されるからである。そのため溶融スラグ中において塩基度[CaO]/[SiO2]が上昇し、その結果、凝固温度が著しく上昇する。そして鋳型壁面にスラグベアが形成され、溶融スラグの流入が阻害される。そのため潤滑性が損なわれて、凝固シェルと鋳型とが焼き付き、ブレークアウトが発生してしまう。なおスラグベアは、一般に、溶融スラグが冷却され凝固して形成された部分と、溶融スラグないしモールドパウダーが焼結した層が団子状に固まって形成された部分とから構成される。
上記式(2)の化学反応により引き起こされる溶融スラグの組成変動は、鋳片の表面品質を悪化させ得る。そこで特許文献1は、連続鋳造用フラックス中において、あらかじめSiO2量を極力低下させ、Al23を適量に調整することより、上記式(2)の反応を抑制して、組成変動を防ぐことを提案している(特許請求の範囲、段落[0009])。しかしSiO2量が少ないと、カスピダインを生成させることが難しく、緩冷却の達成が困難となる。
また高アルミニウム鋼の連続鋳造では溶融スラグの組成が変動するため、カスピダインを安定して生成させることが困難である。高アルミニウム鋼の連続鋳造においてカスピダインの結晶を晶出させるために、特許文献2は、CaO、SiO2 、Li2O、F、Na2O、K2OおよびAl23含有率が所定の式を満たすような特定の組成を有するモールドパウダーを提案している(特許請求の範囲、段落[0011]および[0017])。
他方、特許文献3は、カスピダインとは異なる複合結晶を生じさせて緩冷却を達成するために、周期律表IA族に属する元素の酸化物を2種類以上含有するモールドパウダーを開示している(特許請求の範囲および段落[0013])。なお特許文献3の発明では、想定する複合結晶として、LiCa2FSiO4やNaCa2FSiO4などを開示しているが、実施例で用いられている周期律表IA族に属する元素の酸化物の中では、Na2O量が最も多いことから、メインの複合結晶としてNaCa2FSiO4を想定していると考えられる(段落[0020]および[0030])。また特許文献3の発明は、モールドパウダーの軟化温度を低減させることが目的であるため、周期律表IA族に属する元素の酸化物を2種類以上含有させることを特徴としている(段落[0024])。
特開平9−85404号公報(特許請求の範囲、段落[0009]) 特開2002−346708号公報(特許請求の範囲、段落[0011]および[0017]) 特開平10−216907号公報(特許請求の範囲、段落[0013]、[0020]、[0024]および[0030])
上記のように従来技術では、鋼(殊に高アルミニウム鋼)の連続鋳造で表面品質に優れた鋳片を製造するために、様々なモールドパウダーが提案されている。しかし技術分野では、さらなる改良が絶えず求められる。従って本発明の目的は、溶存Al量が0.1%以上である高アルミニウム鋼を連続鋳造する場合でも、鋳片表面の凹みや割れの発生を防止して、表面品質に優れた鋳片を製造できるモールドパウダーを提供することにある。
上記目的を達成し得た本発明のモールドパウダーとは、
T−CaO:35〜60%(質量%の意味、以下同じ)、
SiO2:5〜20%、
Al23:15〜30%、
MgO:0.2〜1.0%、
Li2O:7〜13%、
F:7.0〜13%、
C:10.5〜14%、
および不可避不純物からなり、
下記式(1):
2.5≦[T−CaO]/[SiO2]≦12.0 … (1)
〔式中、[T−CaO]および[SiO2]は、それぞれ、T−CaOおよびSiO2のモールドパウダー中の含有量(質量%)を表す。〕
を満たすことを特徴とする、溶存Al量が0.1%以上である鋼を連続鋳造するためのモールドパウダーである。
本発明のモールドパウダーを連続鋳造に用いると、鋳片表面の凹みや割れを防止して、表面品質に優れた高アルミニウム鋼を製造することができる。
亜包晶鋼のように鋳片表面割れの発生しやすい鋼種では、割れを抑制するために、抜熱速度を低下させて、緩冷却することが重要である。そのため従来では、一般的に、モールドパウダーから得られるスラグフィルム中にカスピダイン(3CaO・2SiO2・CaF2)を晶出させて、その鋳型側表面に凹凸(空気による断熱層)を形成させることで、緩冷却を達成していた。しかし高アルミニウム鋼の場合は、組成変動のために、カスピダインを安定して生成させることが困難である。そこで本発明者らは、スラグフィルム中に、カスピダインに代わる結晶を晶出させることを検討した。
しかし緩冷却のために、ダイカルシウムシリケート(2CaO・SiO2)、メイエナイト(12CaO・7Al23)およびゲーレナイト(2CaO・SiO2・Al23)といった結晶を晶出させると、鋳型銅板温度の変動が大きくなる問題があり、また鋳片の凹みや割れの防止にも有効ではない。これらは、粗大な結晶としてスラグフィルム中で不均一に晶出するため、鋳型側の表面に不均一な凹凸(空気層)を形成し、その結果、抜熱速度にバラツキが生ずる。そうすると凝固シェルの厚みが不均一になるため、変態収縮で、鋳片表面に凹みや割れが発生すると考えられる。
そこで鋭意検討した結果、カスピダインの代わりに、LiAlO2をスラグフィルム中に晶出させることで、鋳片の凹みや割れを有効に防止できることを見出した。LiAlO2を晶出させることにより、鋳片の凹みや割れを防止できる正確なメカニズムは不明であるが、次のように推定できる。
LiAlO2は、スラグフィルムの鋳型側表面に、微細な結晶として均一に晶出するため、均一な空気層が形成される。その結果、均一な抜熱が達成され、鋳型銅板温度の変動が小さく、また均一な緩冷却により均一な厚みの凝固シェルが形成されて、変態収縮による鋳片の凹凸や割れも抑制されると考えられる。但し、本発明はこのような推定メカニズムに限定されない。
本発明のモールドパウダーは、カスピダインの代わりにLiAlO2を晶出させるために、各成分量および塩基度[T−CaO]/[SiO2]が、適正範囲に調整されていることを特徴とする。さらに溶融スラグ(モールドパウダー)の凝固温度を適正範囲に調整して、潤滑性を確保するという観点から、各成分組成が適正範囲に調整されていることも、本発明のモールドパウダーの特徴である。以下、本発明のモールドパウダー中の各成分量、および塩基度[T−CaO]/[SiO2]を、それぞれ説明する。
〈T−CaO:35〜60%〉
本発明において「T−CaO」とは、モールドパウダー中に含まれる全てのCaを、CaOに換算した際のCaO量(質量%)を表す。モールドパウダー中のT−CaO量は、35%以上、好ましくは38%以上、より好ましくは40%以上であり、60%以下、好ましくは55%以下、より好ましくは50%以下である。T−CaO量が35%未満であると、相対的にSiO2量が増加し、LiAlO2よりもゲーレナイト(2CaO・SiO2・Al23)が生成しやすくなる。逆にT−CaO量が60%を超えると、相対的にLi2O量が低下してLiAlO2が生成しにくくなり、またメイエナイト(12CaO・7Al23)の粗大な結晶が優先的に晶出する。さらに溶融スラグの凝固温度が高くなりすぎるおそれがある。
〈SiO2:5〜20%〉
SiO2量は、5%以上、好ましくは6%以上、より好ましくは7%以上であり、20%以下、好ましくは17%以下、より好ましくは14%以下である。ガラス形成化合物であるSiO2量が少ないと、液相の溶融スラグから粗大な結晶が晶出しやすくなる。そしてLiAlO2は、一般に介在物の融点を低下させるLiO2から構成されることから、メイエナイト(12CaO・7Al23)などと比べて、その融点はかなり低いと推定される。そのためSiO2量が5質量%未満であると、LiAlO2よりも融点が高く、且つSiO2を含まないメイエナイトの粗大な結晶が優先的に生成し、その結果、スラグフィルムの鋳型側表面に不均一な凹凸が形成されると考えられる。また凝固温度も上昇し、潤滑性が損なわれて、スラグベアが生成しやすくなる。逆にSiO2量が20%を超えても、SiO2から構成されるゲーレナイト(2CaO・SiO2・Al23)やダイカルシウムシリケート(2CaO・SiO2)が多く生成する。
〈Al23:15〜30%〉
Al23量は、15%以上、好ましくは16%以上、より好ましくは17%以上であり、30%以下、好ましくは28%以下、より好ましくは26%以下である。Al23を15%以上という高濃度で含有させておくことにより、LiAlO2が形成されやすくなる。またモールドパウダー中のAl23量が15%以上であると、溶融スラグ中のAl23濃度は飽和状態に近くなり、上記式(2)の反応を抑制して、溶融スラグの組成、殊にSiO2量を適正範囲に維持することができる。なおAl23量が15%未満であると、Al23成分を含まないダイカルシウムシリケート(2CaO・SiO2)の粗大な結晶が形成されやすくなり、抜熱速度にバラツキが生じて、鋳片表面の品質に悪影響を及ぼすことがある。しかし逆にAl23量が30%を超えると、メイエナイト(12CaO・7Al23)が生成しやすくなり、また溶融スラグの凝固温度が上昇しすぎて、適正な潤滑性を確保することが困難になる。
〈MgO:0.2〜1.0%〉
MgO量は、0.2%以上、好ましくは0.3%以上、より好ましくは0.4%以上であり、1.0%以下、好ましくは0.9%以下、より好ましくは0.8%以下である。MgOは、スラグフィルム中で結晶が晶出するための核として作用する。そのためMgO量が1.0%を超えると、核が多くなりすぎて結晶の晶出を適切に制御できなくなり、殊にモールドパウダー組成によっては、ダイカルシウムシリケート(2CaO・SiO2)などが優先的に晶出する場合がある。一方、MgO量が0.2%未満であると、結晶の核が少なすぎるため、低温の平衡温度に達するまでは結晶が充分に晶出せず、殊に溶鋼が高温である鋳型メニスカス直下では、緩冷却が達成されにくくなる。また平衡温度に達すると、粗大な結晶が一度に晶出するため、抜熱速度にバラツキが生じる。
〈Li2O:7〜13%〉
Li2O量は、7%以上、好ましくは7.5%以上、より好ましくは8.0%以上であり、13%以下、好ましくは12%以下、より好ましくは11%以下である。Li2O量が7%未満であると、充分な量のLiAlO2を晶出させることが難しく、また溶融スラグの凝固温度および粘度が上昇して、充分な潤滑性を確保できない場合がある。逆にLi2O量が13%を超えても、LiAlO2が晶出する最適範囲から外れて、その晶出量が低下し、緩冷却が達成されない場合がある。さらに溶融スラグの粘度が大きく低下して、溶融スラグが局所的に過剰流入したり、脈動が生じて、連続鋳造の安定操業に悪影響を及ぼすことがある。
〈F:7.0〜13%〉
F量は、7.0%以上、好ましくは7.5%以上、より好ましくは8.0%以上であり、13%以下、好ましくは12%以下、より好ましくは11%以下である。F量が7%未満であると、溶融スラグの凝固温度および粘度が上昇し、潤滑性を確保できなくなる場合がある。一方、Fは結晶晶出を抑制する作用を有するため、F量が過剰であると、溶融スラグの鋳型側表面に充分な結晶を晶出させることができず、緩冷却を達成することが困難になる。殊にF量が13%を超えると、LiAlO2の晶出量が急激に低減する。
〈C:10.5〜14%〉
本発明で規定するC量は、モールドパウダー中に含まれる全てのC量を表す。即ち本発明のC量は、モールドパウダーの原料として添加されるような、単体の炭素量(遊離C量)と、例えばLi2O原料として添加されるLi2CO3などの化合物中の炭素量との合計を表す。モールドパウダー中のC量は、10.5%以上、好ましくは11.0%以上、より好ましくは11.5%以上であり、14%以下、好ましくは13.5%以下、より好ましくは13%以下である。C量が10.5%未満であると、モールドパウダーの溶融速度が大きくなりすぎて、流入過多となり、不均一流入が生ずる。その結果、鋳片の縦割れが発生しやすくなる。逆にC量が14%を超えると、溶融速度が小さくなりすぎて、充分なスラグフィルムの厚みが確保できなくなる。その結果、工業生産上で不可避的に発生する鋳型内の湯面変動の際に、スラグフィルムの膜切れを起こし、焼付きや、溶鋼が直接鋳型に接することによる急冷のために、鋳片の表面品質が劣化する。
本発明のモールドパウダーは、上記成分および不可避不純物からなる。なお一般的なモールドパウダーには、粘度や凝固温度を低減させるために、Na2OやK2Oが添加されているが、本発明のモールドパウダーは、これらを含有しないことも特徴とする。なぜなら高アルミニウム鋼の連続鋳造では、下記の反応式(3)および(4):
2Al+3Na2O → Al23+6Na … (3)
2Al+3K2O → 2Al23+6K … (4)
で示される化学反応が起こるため、Na2OやK2Oが消費されて、これらの作用が充分に発揮されず、逆に本発明が想定する以上のAl23が生成して、溶融スラグの凝固温度などに悪影響を及ぼすからである。またNa2OやK2Oを添加すると、モールドパウダーの軟化開始温度から溶融温度までの差が広がるため、溶融スラグないしモールドパウダーの焼結層が形成され易くなり、その結果、スラグベアの生成が助長される。さらにNa2Oが存在すると、Na−Al−O結晶が不均一に晶出して、スラグフィルムの凹凸(空気層)にバラツキが生ずることがある。
〈2.5≦[T−CaO]/[SiO2]≦12.0〉
塩基度[T−CaO]/[SiO2]は、2.5以上、好ましくは3.0以上、より好ましくは3.5以上であり、12.0以下、好ましくは11.0以下、より好ましくは10.0以下である。塩基度が2.5未満であると、相対的にSiO2量が増加し、LiAlO2よりもダイカルシウムシリケート(2CaO・SiO2)やゲーレナイト(2CaO・SiO2・Al23)が生成しやすくなる。逆に塩基度が12.0を超えても、相対的に、ガラス形成化合物であるSiO2量が減少し、LiAlO2よりも融点が高いと考えられるダイカルシウムシリケート(2CaO・SiO2)、メイエナイト(12CaO・7Al23)やゲーレナイト(2CaO・SiO2・Al23)の粗大な結晶が優先的に生成する。また塩基度が高すぎると、凝固温度が高くなって潤滑性に悪影響を及ぼし得る。
本発明のモールドパウダー(溶融スラグ)の凝固温度は、好ましくは1050〜1220℃、より好ましくは1050〜1190℃である。凝固温度が1050℃未満であると、結晶が晶出しにくくなり、緩冷却の効果を充分に発揮させることができないおそれがある。一方、凝固温度が1220℃を超えると、スラグベアが生成し、スラグベアによる不均一流入のために、ブレークアウトや鋳片表面の割れが生ずる場合がある。
連続鋳造する鋼の溶存Al量は、本発明のモールドパウダーの効果を充分に発揮させるために、0.1%以上、好ましくは0.3%以上、より好ましくは0.5%以上であり、2.5%以下、好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.7%以下である。ここで鋼の溶存Al量とは、連続鋳造に用いる溶鋼中に溶けているAlの量を表し、この量には、Al23等の化合物として存在しているAl量は含まれない。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
垂直曲げ型連続鋳造機を用いて、1ヒート240トンの溶鋼から、Cr−Mo添加鋼を鋳造した。この実施例では、以下の表1に示す組成のモールドパウダーと、C量が0.18%、Si量が0.04%、Mn量が2.1%、Cr、Mo、NiおよびP量が1%以下、溶存Al量が1.6%であり、残部がFeおよび不可避不純物からなる溶鋼とを用いた。連続鋳造におけるモールドサイズは240×1230mmであり、鋳造速度は1.4m/分である。
Figure 0004430638
モールドパウダーから得られるスラグフィルム中に存在するLiAlO2、カスピダイン(3CaO・2SiO2・CaF2)、ダイカルシウムシリケート(2CaO・SiO2)、メイエナイト(12CaO・7Al23)およびゲーレナイト(2CaO・SiO2・Al23)の量を調べるために、鋳造終了後に鋳型内からスラグフィルムを採取し、X線回折(Cu管球40kV、200mA)で、それぞれの結晶のX線回折強度を測定した。これらのX線回折強度の大小を、表2に示す。
Figure 0004430638
潤滑性の指針として、モールドパウダー(溶融スラグ)の凝固温度および消費量を算出した。凝固温度(℃)は、溶融スラグの粘度ηおよび温度Tから算出した。具体的には振動片法により、昇温しながら溶融スラグの粘度ηを連続的に測定し、粘度ηの対数logηを縦軸に、粘度の測定温度Tの逆数1/Tを横軸にとったグラフを作成し、このグラフの変曲点に対応する温度Tを凝固温度として求めた。消費量(kg/m2)は、長さ10mの鋳片が鋳造される毎に鋳型内に添加したモールドパウダー量を測定し、その添加量を鋳造された鋳片の表面積で割ることにより求めた。これらの結果を表3に示す。なお表3に示す消費量の値は、鋳造の最トップおよび最ボトム部の鋳造速度低下部分を除いた値の平均値である。
緩冷却の指針として、鋳型熱流束(MW/m2)を算出した。鋳型熱流束は、鋳型冷却水の流量と入口出口の温度差とから、鋳型での総抜熱量を求め、これを、鋳型銅板と鋳片との接触面積で割ることにより算出した。熱流束値が1.5MW/m2以上のものを「強冷却」、1.5MW/m2未満のものを「緩冷却」と判定した。この結果を表3に示す。
連続鋳造の安定操業の指針として、鋳型銅板に埋設した熱電対を用いて、一定速度で鋳造した一定区間における温度変動(℃)を測定した。この結果を表3に示す。なお連続鋳造では、温度変動が15℃を超えると、鋳造速度の減速措置、それでも変動が収まらない場合は鋳造停止措置を行う場合がある。
鋳片の表面品質の指針として、凹みおよび割れを評価した。鋳片表面の凹みは、定常状態で鋳造できた部位のスラブを1ヒートから2枚任意に抜き取りし、スラブ広面の表裏面を目視検査して、凹みが認められた部位について凹み深さを測定し、深さが2mm以上の凹みがあるものを、「凹み有り」と評価した。鋳片表面の割れは、鋳片の広面の表面および裏面を目視観察し、長さ100mm以上の割れが1つでも存在するものを、「割れ有り」と評価した。これらの結果を表3に示す。
Figure 0004430638
表1〜3の結果から明らかなように、本発明の要件を満たすモールドパウダーNo.1〜10は、そのスラグフィルム中にカスピダインが形成されなくとも、緩冷却を実現でき、凹みや割れの無い表面品質に優れた鋳片を製造することができる。No.1〜10での緩冷却は、スラグフィルム中のLiAlO2により達成されると考えられる。またNo.1〜10は、その凝固温度が適正範囲内にあり、適正な潤滑性を有していることが分かる。またこれらを用いた連続鋳造では、温度変動が少なく、安定に操業することができる。
これらに対して、本発明の要件を満たさないモールドパウダーNo.11〜25を用いた連続鋳造では、以下に記載する理由により、凹みや割れの有る鋳片しか得られなかった。
No.11は、SiO2量が少ないため、メイエナイトが優先的に晶出し、鋳片の割れが発生した。また凝固温度の上昇から、溶融スラグの潤滑性が損なわれて、温度変動も大きくなった。
No.12は、SiO2量が多いため、ゲーレナイトが多く晶出し、均一な緩冷却が達成できず、鋳片表面に凹みや割れが発生した。
No.13は、CaO量が少ないため、ゲーレナイトが多く晶出し、均一な緩冷却が達成できず、鋳片表面に凹みや割れが発生した。
No.14は、CaO量が多いため、メイエナイトが多く晶出し、鋳片の割れが発生した。また凝固温度の上昇から、溶融スラグの潤滑性が損なわれて、温度変動も大きくなった。
No.15は、Al23量が多くて、メイエナイトなどの粗大な結晶が多く形成されたため、抜熱速度にバラツキが生じ、鋳片表面に凹みや割れが発生した。
No.16は、Al23量が少なくて、ダイカルシウムシリケートの粗大な結晶が多く形成されたため、鋳片表面に凹みや割れが発生した。
No.17は、Li2Oが多いため、LiAlO2晶出の最適範囲から外れて充分な量のLiAlO2が晶出されなかったこと、および溶融スラグの粘度低下により、鋳片表面に凹みや割れが発生した。
No.18は、Li2O量が少ないため、LiAlO2が晶出せず、抜熱速度にバラツキが生じ、鋳片表面に凹みや割れが発生した。
No.19は、F量が多くて、充分な結晶が晶出されず緩冷却できなかったため、また粘度低下による過剰流入のため、鋳片表面に凹みや割れが発生した。
No.20は、F量が低いため、溶融スラグの凝固温度が上昇し、スラグベアが発生した。その結果、不均一流入により鋳片の縦割れが発生した。
No.21は、MgO量が少なくて粗大な結晶が晶出して、抜熱速度にバラツキが生じ、鋳片表面に凹みや割れが発生した。
No.22は、MgO量が多くて、ダイカルシウムシリケートの粗大な結晶が多く形成されたため、抜熱速度にバラツキが生じ、鋳片表面に凹みや割れが発生した。
No.23は、Na2OおよびK2Oが存在するため、溶融スラグないしモールドパウダーが焼結した層が多く生成し、その結果、スラグベアが生成した。またNa−Al−O結晶が不均一に晶出したため、抜熱速度のバラツキが生じ、鋳片表面に凹みや割れが生じた。
No.24は、C量が多くて、溶融速度が不充分であるため、スラグフィルムが充分に形成されない部分が生じ、その部分が急冷されて、鋳片表面に割れが発生した。
No.25は、C量が少なくて、溶融速度が増大したため、流入過多および不均一流入が生じ、鋳片表面に凹みや割れが発生した。

Claims (1)

  1. 鋼の連続鋳造に用いられるモールドパウダーであって、
    T−CaO:35〜60%(質量%の意味、以下同じ)、
    SiO2:5〜20%、
    Al23:15〜30%、
    MgO:0.2〜1.0%、
    Li2O:7〜13%、
    F:7.0〜13%、
    C:11.513%、
    および不可避不純物からなり、
    下記式(1):
    2.5≦[T−CaO]/[SiO2]≦12.0 … (1)
    〔式中、[T−CaO]および[SiO2]は、それぞれ、T−CaOおよびSiO2のモールドパウダー中の含有量(質量%)を表す。〕
    を満たし、且つ凝固温度が1050〜1190℃であることを特徴とする、溶存Al量が0.5%以上、1.7%以下である鋼を、熱流束が1.5MW/m 2 未満で連続鋳造するためのモールドパウダー。
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