JP4424892B2 - 絶縁性薄膜製造用塗布組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、低い比誘電率と高い強度を有すると同時に、膜質の均一性が極めて高い半導体等の配線構造体に用いる絶縁性薄膜とその原料である塗布組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体集積回路をはじめとする半導体素子の多層配線構造体用の絶縁薄膜には、従来から緻密なシリカ膜が一般的に用いられてきた。しかし近年、半導体集積回路の配線密度は微細化の一途をたどっており、これに伴って基板上の隣接する配線間の距離が狭まっている。配線間の距離が狭まると従来の緻密なシリカ膜であっても静電容量が増大し、配線を通じて伝達される電気信号の遅延、いわゆる配線遅延が顕著となる問題が生じている。
このような問題を解決するため、配線材料に電気抵抗の低い銅を用いる方法も提案されているが配線遅延を充分解消してはいない。
【0003】
そこで、従来緻密とされていたシリカ薄膜を多孔質にする方法が提案されている。例えば、特開平5−85762号公報や国際公開(WO)第99/03926号パンフレットには一般的なアルコキシシランと有機ポリマーの混合系から、誘電率が極めて低く、均一細孔および細孔分布を持った多孔性のシリカを得ようとする方法が開示されている。また特開平4−285081号公報には、アルコキシシランのゾル−ゲル反応を特定の有機ポリマーを共存させて行い、均一な孔径を有する多孔性のシリカを得ようとする方法が開示されている。
【0004】
さらに、特開2001−49184号公報には、2官能性、3官能性、4官能性のアルコキシシランの仕込み量を分子内に2個の珪素原子を有する4、5、6官能性のアルコキシシランの仕込み量より多くし、有機ポリマーにブロックコポリマーを用いることで、誘電率特性、吸水性に優れ、かつ空隙サイズが小さい低密度膜を形成する方法が開示されている。
しかしながら、上記の方法は、薄膜の製膜過程で用いられるスピンコート塗布の際にストリエーションと呼ばれる薄膜表面に不均質な模様が発生し、製品の品質を損ない易いなど、成膜時の安定性が必ずしも良くない為、比誘電率の低下とある程度の機械的強度を達成することは出来るが、薄膜表面の均一性を確保することが困難となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
即ち本発明は、上記問題を解決し、高い機械強度と低い比誘電率そして表面の均一性を同時に達成する絶縁性薄膜を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の問題点を解決すべく、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、シリカ前駆体と一般式
R8 (CH3 )C(OR9 )−C≡C−C(OR9')(CH3 )R8'
(式中、R8 とR8'は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素または炭素数1〜10のアルキル基、R9 とR9'は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素、炭素数1〜10のアルキル基、(CH2 CH2 O)x H(xは20以下の整数)で表される置換基のいずれかを示す。)
で表される有機化合物を、塗布液の全量に対し0.01wt%以上2wt%以下含有する塗布組成物が上記課題を解決することを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明により得られる塗布組成物は塗布時の安定性(流延性,ストリエーションの発生がないこと)に優れ、さらにこのことによって、比誘電率が著しく低く、膜質の安定性の高い均質な構造の絶縁性薄膜が得られる。
【0007】
本発明の上記およびその他の諸目的、諸特性ならびに諸利益は、以下に述べる詳細な説明および請求範囲の記載から明らかになる。
すなわち、本発明は、以下のとおりのものである。
1.少なくとも下記一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される1〜6官能性のアルコキシシランおよびその加水分解物、重縮合物から選ばれる少なくとも1種以上の化合物を含有するシリカ前駆体であって、アルコキシシランおよびその加水分解物、重縮合物に由来する珪素原子の合計に対する1〜3官能性のアルコキシシランおよびその加水分解物、重縮合物に由来する珪素原子の合計の割合が5mol%〜80mol%であるシリカ前駆体(A)と、下記一般式(3)で表される有機化合物(B)と水(C)とを含有することを特徴とする絶縁性薄膜製造用塗布組成物。
【0008】
R1 n (Si)(OR2 )4-n (1)
(式中、R1 、R2 は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素または1価の有機基を表し、nは0〜3の整数である)
R3 m (R4 O)3-m Si−(R7 )p −Si(OR5 )3-q R6 q (2)
(式中、R3 、R4 、R5 およびR6 は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素または1価の有機基を示し、mおよびqは、同一でも異なっていてもよく、0〜2の数を示し、R7 は酸素原子または(CH2 )r で表される基を示し、rは1〜6を、pは0または1を示す。)
R8 (CH3 )C(OR9 )−C≡C−C(OR9')(CH3 )R8' (3)
(式中、R8 とR8'は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素または炭素数1〜10のアルキル基、R9 とR9'は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素、炭素数1〜10のアルキル基、(CH2 CH2 O)x H(xは20以下の整数)で表される置換基のいずれかを示す。)
【0009】
2.塗布組成物がシリカ前駆体(A)を塗布組成物全重量に対し2wt%以上30wt%以下、有機化合物(B)を塗布組成物の全量に対し0.01wt%以上2wt%以下、水(C)を塗布組成物の全量に対し10wt%以上70wt%以下、さらに、有機ポリマー(D)をシリカ前駆体に対し0.01wt%以上10wt%以下含み、かつ、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒およびエステル系溶媒の群から選ばれた少なくとも1種を有機溶媒(E)として含有することを特徴とする1に記載の絶縁性薄膜製造用塗布組成物。
3.有機ポリマー(D)が直鎖状または分岐状の2元以上のポリエーテルブロックコポリマーを含み、かつ、その含有量が、塗布組成物中に含有する全有機ポリマーに対して10重量%以上含まれることを特徴とする2に記載の絶縁性薄膜製造用塗布組成物。
4.2または3に記載の絶縁性薄膜製造用塗布組成物を基板上に塗布した後に、シリカ前駆体をゲル化することにより得られるシリカ/有機ポリマー複合薄膜から有機ポリマーを除去してなることを特徴とする多孔性のシリカからなる絶縁性薄膜。
5.4に記載の薄膜を絶縁物として用いることを特徴とする配線構造体。
6.5に記載の配線構造体を包含してなる半導体素子。
【0010】
尚、本発明でいう多孔性のシリカとは下記の式(4)で表されたものを主成分とした多孔質のものであることを特徴としている。
Rx Hy SiOz (4)
(式中、Rは炭素数1〜8の直鎖状、分岐上および環状のアルキル基、アリール基を表し、0≦x<2、0≦y<2、0≦(x+y)<2、1<z≦2である)
また、本発明において先記した一般式(1)で表されるアルコキシシランにおいて、Si(OR2 )4 を4官能性のアルコキシシランと言い、一般式(1)でnが1の場合、即ちR1 (Si)(OR2 )3 を3官能性のアルコキシシラン、nが2の場合、即ちR1 2(Si)(OR2 )2 を2官能性のアルコキシシラン、nが3の場合、即ちR1 3(Si)(OR2 )を1官能性のアルコキシシランとする。
【0011】
さらに、一般式(2)で表されるアルコキシシランにおいて、たとえばm=q=1でR3 (R4 O)2 Si−(R7 )p −Si(OR5 )2 R6 の化合物を4官能性のアルコキシシラン、m=0、q=1またはm=1、q=0で、(R4 O)3 Si−(R7 )p −Si(OR5 )2 R6 の化合物を5官能性のアルコキシシラン、m=q=0で(R4 O)3 Si−(R7 )p −Si(OR5 )3 の化合物を6官能性のアルコキシシランとし、一般式(2)でm=q=2、すなわちR3 2(R4 O)Si−(R7 )p −Si(OR5 )R6 2を2 官能性のアルコキシシラン、m=2、q=1またはm=1、q=2で、R3 2(R4 O)Si−(R7 )p −Si(OR5 )2 R6 の化合物を3官能性のアルコキシシランとする。
そしてアルコキシシランが加水分解、重縮合してその縮合率が90%を越えるものを本発明ではシリカという。
【0012】
以下に本発明に用いる絶縁性薄膜製造用の塗布組成物(以下、塗布組成物と称する)について説明する。
先ず本発明における必須成分の一つであるシリカ前駆体(A)について説明する。
本発明において用いることができるシリカ前駆体に含まれる一般式(1)で表されるアルコキシシランおよびその加水分解物、重縮合物はその出発原料であるアルコキシシランが4、3、2および1官能性のものである。アルコキシシランおよびその加水分解物、重縮合物を以下、アルコキシシラン等と称する。
一般式(1)で表される4官能性のアルコキシシランの具体的な例として、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−i−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシランなどが挙げられる。
【0013】
一般式(1)で表される3官能性のアルコキシシランの具体的な例として、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリールトリメトキシシラン、アリールトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−iso−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−i−ブトキシシラン、メチルトリ−sec−ブトキシシラン、メチルトリ−tert−ブトキシシラン、
【0014】
エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリ−iso−プロポキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリ−i−ブトキシシラン、エチルトリ−sec−ブトキシシラン、エチルトリ−tert−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、n−プロピルトリ−iso−プロポキシシラン、n−プロピルトリ−n−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−i−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−sec−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−tert−ブトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、i−プロピルトリ−iso−プロポキシシラン、i−プロピルトリ−n−ブトキシシラン、i−プロピルトリ−sec−ブトキシシラン、i−プロピルトリ−tert−ブトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、n−ブチルトリ−iso−プロポキシシラン、n−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−sec−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、n−ブチルトリフェノキシシラン、sec−ブチルトリメトキシシラン、sec−ブチル−トリ−n−プロポキシシラン、sec−ブチル−トリ−iso−プロポキシシラン、
【0015】
sec−ブチル−トリ−n−ブトキシシラン、sec−ブチル−トリ−sec−ブトキシシラン、sec−ブチル−トリ−tert−ブトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、t−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、t−ブチルトリ−iso−プロポキシシラン、t−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、t−ブチルトリ−sec−ブトキシシラン、t−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、フェニルトリ−n−プロポキシシラン、フェニルトリ−iso−プロポキシシラン、フェニルトリ−n−ブトキシシラン、フェニルトリ−sec−ブトキシシラン、フェニルトリ−tert−ブトキシシランなどが挙げられる。
【0016】
アルコキシシラン類の部分加水分解物を原料としてもよい。
これら4官能性および3官能性のアルコキシシランの中でも特に好ましいのがテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランである。
また、ケイ素原子上にビニル基が結合した3官能性のアルキルシランなども好適である。具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−プロポキシシラン、ビニルトリ−i−プロポキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルトリ−sec−ブトキシシラン、ビニルトリ−tert−ブトキシシラン、などが挙げられる。
【0017】
一般式(1)で表される2官能性のアルコキシシランの具体的な例として、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−プロポキシシラン、ジメチルジ−i−プロポキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジメチルジ−sec−ブトキシシラン、ジメチルジ−tert−ブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジ−n−プロポキシシラン、ジエチルジ−i−プロポキシシラン、ジエチルジ−n−ブトキシシラン、ジエチルジ−sec−ブトキシシラン、ジエチルジ−tert−ブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジ−n−プロポキシシラン、ジフェニルジ−i−プロポキシシラン、ジフェニルジ−n−ブトキシシラン、ジフェニルジ−sec−ブトキシシラン、ジフェニルジ−tert−ブトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、メチルエチルジ−n−プロポキシシラン、メチルエチルジ−i−プロポキシシラン、メチルエチルジ−n−ブトキシシラン、
【0018】
メチルエチルジ−sec−ブトキシシラン、メチルエチルジ−tert−ブトキシシラン、メチルプロピルジメトキシシラン、メチルプロピルジエトキシシラン、メチルプロピジ−n−プロポキシシラン、メチルプロピルジ−i−プロポキシシラン、メチルプロピルジ−n−ブトキシシラン、メチルプロピルジ−sec−ブトキシシラン、メチルプロピルジ−tert−ブトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジ−n−プロポキシシラン、メチルフェニルジ−i−プロポキシシラン、メチルフェニルジ−n−ブトキシシラン、メチルフェニルジ−sec−ブトキシシラン、メチルフェイルジ−tert−ブトキシシラン、エチルフェニルジメトキシシラン、エチルフェニルジエトキシシラン、エチルフェニルジ−n−プロポキシシラン、エチルフェニルジ−i−プロポキシシラン、エチルフェニルジ−n−ブトキシシラン、エチルフェニルジ−sec−ブトキシシラン、エチルフェニルジ−tert−ブトキシシラン、などのケイ素原子上に2個のアルキル基またはアリール基が結合したアルキルシランなどが挙げられる。
【0019】
また、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、メチルビニルジ−n−プロポキシシラン、メチルビニルジ−i−プロポキシシラン、メチルビニルジ−n−ブトキシシラン、メチルビニルジ−sec−ブトキシシラン、メチルビニルジ−tert−ブトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、ジビニルジ−n−プロポキシシラン、ジビニルジ−i−プロポキシシラン、ジビニルジ−n−ブトキシシラン、ジビニルジ−sec−ブトキシシラン、ジビニルジ−tert−ブトキシシラン、などケイ素原子上に1 ないし2個のビニル基が結合したアルキルシランなども好適である。
【0020】
一般式(1)で表される1官能性のアルコキシシランの具体例として、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチル−n−プロポキシシラン、トリメチル−i−プロポキシシラン、トリメチル−n−ブトキシシラン、トリメチル−sec−ブトキシシラン、トリメチル−tert−ブトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリエチル−n−プロポキシシラン、トリエチル−i−プロポキシシラン、トリエチル−n−ブトキシシラン、トリエチル−sec−ブトキシシラン、トリエチル−tert−ブトキシシラン、トリプロピルメトキシシラン、トリプロピルエトキシシラン、トリプロピル−n−プロポキシシラン、トリプロピル−i−プロポキシシラン、トリプロピル−n−ブトキシシラン、トリプロピル−sec−ブトキシシラン、トリプロピル−tert−ブトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、
【0021】
トリフェニルエトキシシラン、トリフェニル−n−プロポキシシラン、トリフェニル−i−プロポキシシラン、トリフェニル−n−ブトキシシラン、トリフェニル−sec−ブトキシシラン、トリフェニル−tert−ブトキシシラン、メチルジエチルメトキシシラン、メチルジエチルエトキシシラン、メチルジエチル−n−プロポキシシラン、メチルジエチル−i−プロポキシシラン、メチルジエチル−n−ブトキシシラン、メチルジエチル−sec−ブトキシシラン、メチルジエチル−tert−ブトキシシラン、メチルジプロピルメトキシシラン、メチルジプロピルエトキシシラン、メチルジプロピル−n−プロポキシシラン、メチルジプロピル−i−プロポキシシラン、メチルジプロピル−n−ブトキシシラン、メチルジプロピル−sec−ブトキシシラン、メチルジプロピル−tert−ブトキシシラン、メチルジフェニルメトキシシラン、メチルジフェニルエトキシシラン、メチルジフェニル−n−プロポキシシラン、メチルジフェニル−i−プロポキシシラン、メチルジフェニル−n−ブトキシシラン、メチルジフェニル−sec−ブトキシシラン、メチルジフェニル−tert−ブトキシシラン、エチルジメチルメトキシシラン、エチルジメチルエトキシシラン、エチルジメチル−n−プロポキシシラン、エチルジメチル−i−プロポキシシラン、エチルジメチル−n−ブトキシシラン、エチルジメチル−sec−ブトキシシラン、エチルジメチル−tert−ブトキシシラン、エチルジプロピルメトキシシラン、エチルジプロピルエトキシシラン、エチルジプロピル−n−プロポキシシラン、エチルジプロピル−i−プロポキシシラン、エチルジプロピル−n−ブトキシシラン、
【0022】
エチルジプロピル−sec−ブトキシシラン、エチルジプロピル−tert−ブトキシシラン、エチルジフェニルメトキシシラン、エチルジフェニルエトキシシラン、エチルジフェニル−n−プロポキシシラン、エチルジフェニル−i−プロポキシシラン、エチルジフェニル−n−ブトキシシラン、エチルジフェニル−sec−ブトキシシラン、エチルジフェニル−tert−ブトキシシラン、プロピルジメチルメトキシシラン、プロピルジメチルエトキシシラン、プロピルジメチル−n−プロポキシシラン、プロピルジメチル−i−プロポキシシラン、プロピルジメチル−n−ブトキシシラン、プロピルジメチル−sec−ブトキシシラン、プロピルジメチル−tert−ブトキシシラン、プロピルジエチルメトキシシラン、プロピルジエチルエトキシシラン、プロピルジエチル−n−プロポキシシラン、プロピルジエチル−i−プロポキシシラン、プロピルジエチル−n−ブトキシシラン、プロピルジエチル−sec−ブトキシシラン、プロピルジエチル−tert−ブトキシシラン、プロピルジフェニルメトキシシラン、プロピルジフェニルエトキシシラン、プロピルジフェニル−n−プロポキシシラン、
【0023】
プロピルジフェニル−i−プロポキシシラン、プロピルジフェニル−n−ブトキシシラン、プロピルジフェニル−sec−ブトキシシラン、プロピルジフェニル−tert−ブトキシシランフェニルジメチルメトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、フェニルジメチル−n−プロポキシシラン、フェニルジメチル−i−プロポキシシラン、フェニルジメチル−n−ブトキシシラン、フェニルジメチル−sec−ブトキシシラン、フェニルジメチル−tert−ブトキシシラン、フェニルジエチルメトキシシラン、フェニルジエチルエトキシシラン、フェニルジエチル−n−プロポキシシラン、フェニルジエチル−i−プロポキシシラン、フェニルジエチル−n−ブトキシシラン、フェニルジエチル−sec−ブトキシシラン、フェニルジエチル−tert−ブトキシシラン、フェニルジプロピルメトキシシラン、フェニルジプロピルエトキシシラン、フェニルジプロピル−n−プロポキシシラン、フェニルジプロピル−i−プロポキシシラン、フェニルジプロピル−n−ブトキシシラン、フェニルジプロピル−sec−ブトキシシラン、フェニルジプロピル−tert−ブトキシシランなどが挙げられる。
【0024】
また、ケイ素原子上に1〜3個のビニル基が結合したアルキルシランなども好適である。具体的には、トリビニルメトキシシラン、トリビニルエトキシシラン、トリビニル−n−プロポキシシラン、トリビニル−i−プロポキシシラン、トリビニル−n−ブトキシシラン、トリビニル−sec−ブトキシシラン、トリビニル−tert−ブトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルジメチル−n−プロポキシシラン、ビニルジメチル−i−プロポキシシラン、ビニルジメチル−n−ブトキシシラン、ビニルジメチル−sec−ブトキシシラン、ビニルジメチル−tert−ブトキシシラン、ビニルジエチルメトキシシラン、ビニルジエチルエトキシシラン、ビニルジエチル−n−プロポキシシラン、ビニルジエチル−i−プロポキシシラン、ビニルジエチル−n−ブトキシシラン、ビニルジエチル−sec−ブトキシシラン、ビニルジエチル−tert−ブトキシシラン、ビニルジプロピルメトキシシラン、ビニルジプロピルエトキシシラン、ビニルジプロピル−n−プロポキシシラン、ビニルジプロピル−i−プロポキシシラン、ビニルジプロピル−n−ブトキシシラン、ビニルジプロピル−sec−ブトキシシラン、ビニルジプロピル−tert−ブトキシシランなどが挙げられる。
【0025】
本発明の1官能性および2官能性のアルコキシシランとして、先述したようなアルコキシシランが用いられるが、その中でより好ましいのが、トリメチルメトキシシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリプロピルメトキシシラン、トリプロピルメトキシシラン、トリプロピルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、ジフェニルメチルメトキシシラン、ジフェニルメチルエトキシシランなどのアルキルシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、エチルフェニルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、エチルフェニルジメトキシシランなどのが挙げられる。
また、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、エチルジメトキシシラン、エチルジエトキシシラン、プロピルジメトキシシラン、プロピルジエトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、フェニルジエトキシシランなどのケイ素原子に直接水素原子が結合したものも用いることもできる。
【0026】
次に本発明において用いることができる一般式(2)で表されるアルコキシシラン等は、その出発原料であるアルコキシシランが6、5、4、3および2官能性のものである。
一般式(2)で表されるアルコキシシランのうち、R7 が−(CH2 )n −の化合物で6、5、4、3および2官能性のアルコキシシランの具体例として、まず6官能性のアルコキシランの例として、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリフェノキシシリル)メタン、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリフェノキシシリル)エタン、1,3−ビス(トリメトキシシリル)プロパン、1,3−ビス(トリエトキシシリル)プロパン、1,3−ビス(トリフェノキシシリル)プロパン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼンなどが挙げられる。
【0027】
5官能性のアルコキシシランとして、1−(ジメトキシメチルシリル)−1−(トリメトキシシリル)メタン、1−(ジエトキシメチルシリル)−1−(トリエトキシシリル)メタン、1−(ジ−n−プロポキシメチルシリル)−1−(トリ−n−プロポキシシリル)メタン、1−(ジ−i−プロポキシメチルシリル)−1−(トリ−i−プロポキシシリル)メタン、1−(ジ−n−ブトキシメチルシリル)−1−(トリ−n−ブトキシシリル)メタン、1−(ジ−sec−ブトキシメチルシリル)−1−(トリ−sec−ブトキシシリル)メタン、1−(ジ−t−ブトキシメチルシリル)−1−(トリ−t−ブトキシシリル)メタン、1−(ジメトキシメチルシリル)−2−(トリメトキシシリル)エタン、1−(ジエトキシメチルシリル)−2−(トリエトキシシリル)エタン、1−(ジ−n−プロポキシメチルシリル)−2−(トリ−n−プロポキシシリル)エタン、1−(ジ−i−プロポキシメチルシリル)−2−(トリ−i−プロポキシシリル)エタン、1−(ジ−n−ブトキシメチルシリル)−2−(トリ−n−ブトキシシリル)エタン、1−(ジ−sec−ブトキシメチルシリル)−2−(トリ−sec−ブトキシシリル)エタン、1−(ジ−t−ブトキシメチルシリル)−2−(トリ−t−ブトキシシリル)エタンなどが挙げられる。
【0028】
4官能性のアルコキシシランの例として、ビス(ジメトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジエトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジメトキシフェニルシリル)メタン、ビス(ジエトキシフェニルシリル)メタン、ビス(ジメトキシメチルシリル)エタン、ビス(ジエトキシメチルシリル)エタン、ビス(ジメトキシフェニルシリル)エタン、ビス(ジエトキシフェニルシリル)エタン、1,3−ビス(ジメトキシメチルシリル)プロパン、1,3−ビス(ジエトキシメチルシリル)プロパン、1,3−ビス(ジメトキシフェニルシリル)プロパン、1,3−ビス(ジエトキシフェニルシリル)プロパンなどが挙げられる。
【0029】
3官能性のアルコキシシランとして、1−(ジメトキシメチルシリル)−1−(メトキシジメチルシリル)メタン、1−(ジエトキシメチルシリル)−1−(エトキシジメチルシリル)メタン、1−(ジ−n−プロポキシメチルシリル)−1−(n−プロポキジメチルシリル)メタン、1−(ジ−i−プロポキシメチルシリル)−1−(i−プロポキシジメチルシリル)メタン、1−(ジ−n−ブトキシメチルシリル)−1−(n−ブトキシジメチルシリル)メタン、1−(ジ−sec−ブトキシメチルシリル)−1−(sec−ブトキシジメチルシリル)メタン、1−(ジ−t−ブトキシメチルシリル)−1−(t−ブトキシジメチルシリル)メタン、1−(ジメトキシメチルシリル)−2−(メトキシジメチルシリル)エタン、1−(ジエトキシメチルシリル)−2−(エトキシジメチルシリル)エタン、1−(ジ−n−プロポキシメチルシリル)−2−(n−プロポキシジメチルシリル)エタン、1−(ジ−i−プロポキシメチルシリル)−2−(i−プロポキシジメチルシリル)エタン、1−(ジ−n−ブトキシメチルシリル)−2−(n−ブトキシジメチルシリル)エタン、1−(ジ−sec−ブトキシメチルシリル)−2−(sec−ブトキシジメチルシリル)エタン、1−(ジ−t−ブトキシメチルシリル)−2−(t−ブトキシジメチルシリル)エタンなどが挙げられる。
【0030】
2官能性のアルコキシシランの具体例として、ビス(メトキシジメチルシリル)メタン、ビス(エトキシジメチルシリル)メタン、ビス(メトキシジフェニルシリル)メタン、ビス(エトキシジフェニルシリル)メタン、ビス(メトキシジメチルシリル)エタン、ビス(エトキシジメチルシリル)エタン、ビス(メトキシジフェニルシリル)エタン、ビス(エトキシジフェニルシリル)エタン、1,3−ビス(メトキシジメチルシリル)プロパン、1,3−ビス(エトキシジメチルシリル)プロパン、1,3−ビス(メトキシジフェニルシリル)プロパン、1,3−ビス(エトキシジフェニルシリル)プロパンなどが挙げられる。
【0031】
一般式(2)でR7 が酸素原子の化合物で6官能性のアルコキシシランとしては、ヘキサメトキシジシロキサン、ヘキサエトキシジシロキサン、ヘキサフェノキシジシロキサン、1,1,1,3,3−ペンタメトキシ−3−メチルジシロキサン、5官能性のアルコキシシランとして1,1,1,3,3−ペンタエトキシ−3−メチルジシロキサン、1,1,1,3,3−ペンタメトキシ−3−フェニルジシロキサン、1,1,1,3,3−ペンタエトキシ−3−フェニルジシロキサン、4官能性のアルコキシシランとして1,1,3,3−テトラメトキシ−1,3−ジメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラエトキシ−1,3−ジメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメトキシ−1,3 -ジフェニルジシロキサン、1,1,3,3−テトラエトキシ−1,3−ジフェニルジシロキサン、3官能性のアルコキシシランとして1,1,3 -トリメトキシ−1,3,3−トリメチルジシロキサン、1,1,3−トリエトキシ−1,3,3−トリメチルジシロキサン、1,1,3−トリメトキシ−1,3,3−トリフェニルジシロキサン、1,1,3−トリエトキシ−1,3,3−トリフェニルジシロキサン、
【0032】
2官能性のアルコキシシランとして1,3−ジメトキシ−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジエトキシ−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジメトキシ−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、1,3−ジエトキシ−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、3−ジメトキシ−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジエトキシ−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジメトキシ−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、1,3−ジエトキシ−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサンなどを挙げることができる。
【0033】
一般式(2)で、pが0の化合物で6、5、4、3および2官能性のアルコキシシランの具体例として、6官能性のアルコキシシランの具体例としてヘキサメトキシジシラン、ヘキサエトキシジシラン、ヘキサフェニキシジシラン、5官能性のアルコキシシランの具体例として1,1,1,2,2−ペンタメトキシ−2−メチルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタエトキシ−2−メチルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタメトキシ−2−フェニルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタエトキシ−2−フェニルジシラン、4官能性のアルコキシシランの具体例として1,1,2,2−テトラメトキシ−1,2−ジメチルジシラン、1,1,2,2−テトラエトキシ−1,2−ジメチルジシラン、1,1,2,2−テトラメトキシ−1,2−ジフェニルジシラン、1,1,2,2−テトラエトキシ−1,2−ジフェニルジシラン、3官能性のアルコキシシランの具体例として1,1,2−トリメトキシ−1,2,2 -トリメチルジシラン、1,1,2−トリエトキシ- 1,2,2−トリメチルジシラン、1,1,2−トリメトキシ−1,2,2−トリフェニルジシラン、1,1,2−トリエトキシ−1,2,2−トリフェニルジシラン、2官能性のアルコキシシランの具体例として1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラメチルジシラン、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラメチルジシラン、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルジシラン、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルジシランなどを挙げることができる。
【0034】
尚、本発明の1、2、3官能性のアルコキシシランとして、先述したようなアルコキシシランが用いられるが、その中でより好ましいのが、トリメチルエトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリプロピルエトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、ジフェニルメチルエトキシシランなどのケイ素原子に直接3個のアルキル基またはアリール基が結合したアルキルシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、エチルフェニルジエトキシシランなどのケイ素原子に直接2個のアルキル基またはアリール基が結合したアルキルシラン、さらに、前述したケイ素原子に直接1個のアルキル基またはアリール基が結合したアルコキシシランが挙げられる。
【0035】
また、メチルジエトキシシラン、ジメチルビニルメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシランなどのケイ素原子に直接水素原子が結合したものも用いることもできる。
さらに、ビス(エトキシジメチルシリル)メタン、ビス(エトキシジフェニルシリル)メタン、ビス(エトキシジメチルシリル)エタン、ビス(エトキシジフェニルシリル)エタン、1,3−ビス(エトキシジメチルシリル)プロパン、1,3−ビス(エトキシジフェニルシリル)プロパン、3−ジエトキシ−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジエトキシ -1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラメチルジシラン、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルジシランなどを好適に用いることができる。
【0036】
これらの中で特に好ましいアルコキシシランとして、トリメチルエトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリプロピルエトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、ジフェニルメチルエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、エチルフェニルジエトキシシランが挙げられる。
本発明のシリカ前駆体には上記のアルコキシシランおよびその加水分解、重縮合したもののうち少なくともいずれか1種以上含んでいる。
【0037】
加水分解物には部分加水分解物も含まれる。例えば、シリカ前駆体(A)に用いられる4官能性のアルコキシシランの場合、4つのアルコキシのすべてが加水分解されている必要はなく、例えば1個だけが加水分解されているもの、2個以上が加水分解されているもの、あるいはこれらの混合物が存在していてもかまわない。
また、本発明におけるシリカ前駆体(A)に含有される重縮合物とは、シリカ前駆体(A)の加水分解物のシラノール基が縮合してSi−O−Si結合を形成したものであるが、シラノール基がすべて縮合している必要はなく、一部のシラノール基が縮合したもの、縮合の程度が異なっているものの混合物などを表す。
【0038】
本発明の塗布組成物に含まれるシリカ前駆体は上記一般式(1)、一般式(2)で表されるアルコキシシラン等のうち、1〜3官能性アルコキシシラン等に由来する珪素原子の合計は全体の1〜6官能性アルコキシシランに由来する珪素原子に対して5モル%〜80モル%包含されることが特徴である。好ましくは10モル%〜70モル%、より好ましくは20モル%〜60モル%である。1〜3官能性アルコキシシランに由来する珪素原子が5モル%未満では薄膜の比誘電率が低下しないし、一方80モル%を超えると薄膜の機械強度が低下してしまうので好ましくない。
本発明の塗布組成物中のシリカ前駆体(仕込みのアルコキシシランの全量が加水分解および縮合反応して得られるシロキサン)の含有量は全固形分濃度として表すことができる。全固形分濃度は目的とする絶縁性薄膜の膜厚にもよるが、2〜30重量%が好ましく、保存安定性にも優れる。
【0039】
次に本発明の塗布組成物には、次の一般式で表される有機化合物(B)が塗布組成物の全量に対し、0.01wt%以上2wt%以下含まれている必要がある。
R8 (CH3 )C(OR9 )−C≡C−C(OR9')(CH3 )R8'
式中、R8 とR8'は同一でも異なっていてもよく、それぞれHまたは炭素数1〜10のアルキル基、R9 とR9'は同一でも異なっていてもよく、それぞれHまたは(OCH2 CH2 )x H(xは20以下の整数)で表される置換基を示す。
【0040】
該成分は、本発明の塗布組成物において組成物としての安定性を著しく向上させ、スピンコートなどの塗布時に、ストリエーションを起こさない、極めて均一性の高い塗膜の形成を可能にする。その理由は明確ではないが、該化合物の有するノニオン性の界面活性剤としての作用が関係しているものと推定される。当然、その他の成分の種類や組成にも依存するが、塗布組成物の全量に対する(B)成分の含有量は、好ましくは0.02wt%以上1wt%以下、より好ましくは0.03wt%以上0.1wt%以下の範囲にあると、塗布時の安定性がより高い、すなわち凝集物やストリエーションの発生がより抑えられた本発明の塗布組成物を得ることができる。特に(B)成分の含有量が0.01wt%未満の場合には、本発明の効果が得られ難くなり、また2wt%を超えると塗布時の凝集物の発生等によって膜質が大幅に低下するため望ましくない。
【0041】
次に、(B)成分の構造について詳細に記載する。
R8 とR8'はそれぞれ水素または炭素数1〜10のアルキル基であるが、アルキル基は、より具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基等、炭素数が1から10までで不飽和結合を含まないすべての炭化水素基を含む。R8 とR8'は同一であっても異なっていてもよい。
また、R9 とR9'はそれぞれ水素、炭素数1〜10のアルキル基、(CH2 CH2 O)x OH(xは20以下の整数)で表される置換基のいずれかを示す。炭素数1〜10のアルキル基は、R8 、R8'の場合と同様、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基等、炭素数が1から10までで不飽和結合を含まないすべての炭化水素基を含む。R9 とR9'はさらに(CH2 CH2 O)x H(xは20以下の整数)で表されるオキシエチレン鎖であってもよい。R9 とR9'は同一であっても異なっていてもよい。以上の条件を満たす化合物を(B)成分として使用すると、本発明における上述したいくつかの効果が発現する。
【0042】
(B)成分の具体例として、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン-3−ジオール、2,5,8,11−テトラメチル-6−ドデシン−5,8−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、3-メチル−1−ブチン−3−ジオール、3−メチル-1−ペンチン−3−ジオール、及びこれらのエチレンオキサイド付加物が挙げられる。これらの内で特に好ましいものは、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5,8,11−テトラメチル-6−ドデシン−5,8−ジオール及びそれらのエチレンオキサイド付加物である。
【0043】
本発明の塗布組成物においては、これら(A)成分、(B)成分の他に水(C)含まれていることが必要である。本発明において水が必要な理由は、シリカ前駆体の生成反応がアルコキシシランの加水分解反応であるためである。通常、水(C)は、加水分解の反応剤としてだけでなく溶媒としても作用するので、塗布組成物中に含まれる水の量は塗布組成物全重量に対して10wt%から70wt%、好ましくは20wt%から60wt%であることが必要である。10wt%より少ないと機械的強度が発現されず、70wt%より多いと塗布組成物において、シリカ前駆体が析出しやすくなるので望ましくない。
本発明の塗布組成物は、以上のように、(A)成分および(B)成分と水から成る塗布組成物であるが、これに有機ポリマー(D)と有機溶媒(E)を混合することによって、さらに好適な本発明の塗布組成物を得ることができる。
【0044】
次に本発明において特に好ましい有機ポリマー(D)について説明する。
(D)成分である有機ポリマーは、(A)成分が硬化する過程または硬化後に、熱により揮発もしくはガスを発生し、好ましくは系外に揮散することにより、絶縁薄膜中に空孔を形成し、該絶縁膜の比誘電率を低下させる作用をする成分である。該(D)成分が揮発もしくはガスを発生する温度は、大気圧下、0〜500℃の範囲であり、好ましくは25〜400℃の範囲である。
さらに有機ポリマーは、本発明によって得られる塗布組成物において安定に溶解していることが必要であるが、上述した条件を満たすものとして、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカーボネート、脂肪族ポリアンハイドライドなどを主なる構成成分とするポリマーを用いることができる。これらの中でも脂肪族ポリエーテル鎖を骨格構造にもつものが特に好ましい。有機ポリマーは単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良いし、また有機ポリマーの主鎖は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の任意の繰り返し単位を有するポリマー鎖を含んでいてもよい。
【0045】
具体的な脂肪族ポリエーテルの例を示すと、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリイソブチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリペンタメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリジオキソラン、ポリジオキセパンが挙げられる。この他にも上述したポリエーテル鎖から成る直鎖状の2元ブロックコポリマー、直鎖状の3元ブロックコポリマー、さらには分岐状の2元以上のポリエーテルブロックコポリマーなどを挙げることができる。
本発明では、これらの中でも特に、直鎖状または分岐状の2元以上のポリエーテルブロックコポリマーを用いるとより好適な本発明の塗布組成物を得ることができる。
【0046】
具体的な直鎖状2元ブロックコポリマーとしては、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールポリブチレングリコールを、直鎖状の3元ブロックコポリマーとしては、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールポリエチレングリコールポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールポリブチレングリコールポリエチレングリコールなどが挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
さらに、分岐状のブロックコポリマーとして、グリセロール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ペンチトール、ペントース、ヘキシトール、ヘキソース、ヘプトースなどに代表される糖鎖に含まれるヒドロキシル基のうちの少なくとも3つとポリマー鎖が結合した構造、及び/又はヒドロキシル酸に含まれるヒドロキシル基とカルボキシル基のうち少なくとも3つがブロックコポリマー鎖が結合した構造が挙げられる。
【0047】
上記の分岐状のブロックコポリマーを得るために用いられる糖鎖以外でも例えば、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、スレイトール、マルチトール、アラビトール、ラクチトール、アドニトール、セロビトール、グルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース、マンノース、ガラクトース、エリスロース、キシルロース、アルロース、リボース、ソルボース、キシロース、アラビノース、イソマルトース、デキストロース、グルコヘプトースを分岐骨格として含む分岐状のブロックコポリマーを使用することもできる。また、分岐骨格としてのヒドロキシル酸の具体的な例としてはクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルコヘプトン酸、グルコオクタン酸、スレオニン酸、サッカリン酸、ガラクトン酸、ガラクタル酸、ガラクツロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシコハク酸などが挙げられる。こうした分岐ポリマーの具体例としてグリセロールポリエチレングリコールポリプロピレングリコール、エリスリトールポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリエチレングリコールなどを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0048】
次に本発明の塗布組成物に添加し得る脂肪族ポリエーテル以外のポリマーである、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカーボネート、脂肪族ポリアンハイドライドやその他のポリマーについて具体的に例示する。
脂肪族ポリエステルとして挙げられるのは、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリピバロラクトン等のヒドロキシカルボン酸の重縮合物やラクトンの開環重合物、およびポリエチレンオキサレート、ポリエチレンスクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンセバケート、ポリプロピレンアジペート、ポリオキシジエチレンアジペート等のジカルボン酸とアルキレングリコールとの重縮合物、ならびにエポキシドと酸無水物との開環共重合物である。
【0049】
脂肪族ポリカーボネートの例としては、主鎖部分としてポリエチレンカーボネート、ポリプロピレンカーボネート、ポリペンタメチレンカーボネート、ポリヘキサメチレンカーボネート等のポリカーボネートを挙げることができる。
脂肪族ポリアンハイドライドの例としては、主鎖部分としてポリマロニルオキシド、ポリアジポイルオキシド、ポリピメロイルオキシド、ポリスベロイルオキシド、ポリアゼラオイルオキシド、ポリセバコイルオキシド等のジカルボン酸の重縮合物を挙げることができる。
さらに本発明では、分子内に少なくとも一つの重合可能な官能基を有する有機ポリマーも用いることができる。このようなポリマーを用いると、理由は定かではないが、多孔性シリカ薄膜の強度が向上する。
【0050】
重合可能な官能基としては、ビニル基、ビニリデン基、ビニレン基、グリシジル基、アリル基、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、アミノ基、イミノ基、ハロゲン基などが挙げられる。これらの官能基はポリマーの主鎖中にあっても末端にあっても側鎖にあってもよい。またポリマー鎖に直接結合していてもよいし、アルキレン基やエーテル基などのスペーサーを介して結合していてもよい。同一のポリマー分子が1種類の官能基を有していても、2種類以上の官能基を有していてもよい。上に挙げた官能基の中でも、ビニル基、ビニリデン基、ビニレン基、グリシジル基、アリル基、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基が好適に用いられる。
重合可能な官能基を有するポリマーの基本骨格としては、前述したポリマーの例と同様、熱分解温度の低い脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカーボネート、脂肪族ポリアンハイドライドを主なる構成要素とするものを用いるのが特に好ましい。
【0051】
本発明で用いることができる重合性官能基を有する有機ポリマーの基本骨格を更に具体的に示す。
なお、以下アルキレンとはメチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、イソプロピリデン、1,2−ジメチルエチレン、2,2−ジメチルトリメチレンなどを指し、ここでのアルキルとは炭素数1〜8のアルキル基およびフェニル基、トリル基、アニシル基などのアリル基も含み、−メタ−アクリレートとはアクリレートとメタクリレートの両方を指し、ジカルボン酸とは蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの有機酸を指す。
【0052】
脂肪族ポリエーテルの例としては、ポリアルキレングリコール−メタ−アクリレート、ポリアルキレングリコールジ−メタ−アクリレート、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル−メタ−アクリレート、ポリアルキレングリコールビニルエーテル、ポリアルキレングリコールジビニルエーテル、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルビニルエーテル、ポリアルキレングリコールグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルグリシジルエーテルなどに代表される、末端にアクリレート基、メタクリレート基、ビニル基、グリシジル基などの重合可能な官能基をもつ脂肪族ポリエーテルが挙げられる。当然、前述した2元以上の直鎖または分岐状のポリエーテルブロックコポリマーをこれらの官能基で修飾したポリマーも含まれる。
【0053】
脂肪族ポリエステルの例としては、ポリカプロラクトン−メタ−アクリレート、ポリカプロラクトンビニルエーテル、ポリカプロラクトングリシジルエーテル、ポリカプロラクトンビニルエステル、ポリカプロラクトングリシジルエステル、ポリカプロラクトンビニルエステル−メタ−アクリレート、ポリカプロラクトングリシジルエステル−メタ−アクリレート、ポリカプロラクトンビニルエステルビニルエーテル、ポリカプロラクトングリシジルエステルビニルエーテル、ポリカプロラクトンビニルエステルグリシジルエーテル、ポリカプロラクトングリシジルエステルグリシジルエーテル、さらに、ポリカプロラクトントリオールの−メタ−アクリレート、ジ−メタ−アクリレート、トリ−メタ−アクリレート、ビニルエーテル、ジビニルエーテル、トリビニルエーテル、グリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、トリグリシジルエーテルの各末端修飾ポリマーなどに代表される、片末端あるいは両末端にアクリレート基、メタクリレート基、ビニル基、グリシジル基等の重合可能な官能基をもつポリカプロラクトンやジカルボン酸とアルキレングリコールとの重合体であり、片末端あるいは両末端にアクリレート基、メタクリレート基、ビニル基、グリシジル基などの重合可能な官能基をもつ脂肪族ポリエステルを挙げることができる。
【0054】
片末端あるいは両末端にアクリレート基、メタクリレート基、ビニル基、グリシジル基等の重合可能な官能基をもつ脂肪族ポリアルキレンカーボネートや、ジカルボン酸無水物の重合体であり、末端にアクリレート基、メタクリレート基、ビニル基、グリシジル基等の重合可能な官能基をもつ脂肪族ポリアンハイドライドも本発明で使用する有機ポリマーとして有効である。
これらの他に、ポリグリシジル−メタ−アクリレート、ポリアリル−メタ−アクリレート、ポリビニル−メタ−アクリレート等、側鎖にビニル基、グリシジル基、アリル基等の官能基を有するポリアクリル酸エステルやポリメタクリル酸エステルや、ポリケイ皮酸ビニル、ポリビニルアジドベンザル、エポキシ樹脂等の添加も場合によっては有効である。ただし、これらの例示によって本発明で使用される有機ポリマーが限定されるものではない。
【0055】
また、本発明で用いられる有機ポリマーの末端基は特に限定されないが水酸基はじめ、炭素数1〜8の直鎖状、分岐状および環状のアルキルエーテル基、アルキルエステル基、アルキルアミド基、アルキルカーボネート基、ウレタン基およびトリアルキルシリル基変性したものを用いることができる。以下に、その具体的一例として、脂肪族ポリエーテルの末端基を変性した例を記載する。
すなわち、上記アルキレングリコール類の少なくとも一つの末端をアルキルエーテル化した例として、例えばメチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、グリシジルエーテルなどでエーテル化したものが挙げられ、具体的には例えば、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリプロピレングリコールジメチルエーテル、ポリイソブチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールジブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレンポリプロピレングリコールジメチルエーテル、グリセリンポリエチレングリコールトリメチルエーテル、ペンタエリスリトールポリエチレングリールテトラメチルエーテル、ペンチトールポリエチレングリコールペンタメチルエーテル、ソルビトールポリエチレングリコールヘキサメチルエーテルなどが特に好ましく用いられる。
【0056】
末端にエステル基を持つ脂肪族ポリエーテル類としては、上記アルキレングリコール類の少なくとも一つの末端を例えば、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、安息香酸エステルとしたものなどが挙げられる。また、アルキレングリコール類の末端をカルボキシメチルエーテル化し、この末端のカルボキシル基をアルキルエステル化したものも好適に用いられる。具体的には例えば、ポリエチレングリコールモノ酢酸エステル、ポリエチレングリコールジ酢酸エステル、ポリプロピレングリコールモノ酢酸エステル、ポリプロピレングリコールジ酢酸エステル、ポリエチレングリコールジ安息香酸エステル、ポリエチレングリコールジアクリル酸エステル、ポリエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、ポリエチレングリコールジメタクリル酸エステル、ポリエチレングリコールビスカルボキシメチルエーテルジメチルエステル、ポリプロピレングリコールビスカルボキシメチルエーテルジメチルエステル、グリセリンポリエチレングリコールトリ酢酸エステル、ペンタエリスリトールポリエチレングリコールテトラ酢酸エステル、ペンチトールポリエチレングリコールペンタ酢酸エステル、ソルビトールポリエチレングリコールヘキサ酢酸エステルなどが好ましい例として挙げられる。
【0057】
末端にアミド基を持つ脂肪族ポリエーテル類としては、上記のアルキレングリコール類の少なくとも一つの末端をカルボキシメチルエーテル化し、そのあとでアミド化する方法、ヒドロキシ末端をアミノ基変性したあとにアミド化する方法、などが挙げられ、具体的には、ポリエチレングリコールビス(カルボキシメチルエーテルジメチルアミド)、ポリプロピレングリコールビス(カルボキシメチルエーテルジメチルアミド)、ポリエチレングリコールビス(カルボキシメチルエーテルジエチルアミド)、グリセリンポリエチレングリコールトリカルボキシメチルエーテルジメチルアミド、ペンタエリスリトールポリエチレングリコールテトラカルボキシメチルエーテルジメチルアミド、ペンチトールポリエチレングリコールペンタカルボキシメチルエーテルジメチルアミド、ソルビトールポリエチレングリコールヘキサカルボキシメチルエーテルジメチルアミドなどが好適に用いられる。
【0058】
末端にアルキルカーボネート基を持つ脂肪族ポリエーテル類としては、例えば上記アルキレングリコール類の少なくとも一つの末端に、ホルミルエステル基をつける方法が挙げられ、具体的には、ビスメトキシカルボニルオキシポリエチレングリコール、ビスエトキシカルボニルオキシポリエチレングリコール、ビスエトキシカルボニルオキシポリプロピレングリコール、ビスtert−ブトキシカルボニルオキシポリエチレングリコールなどが挙げられる。
さらに末端にウレタン基やトリアルキルシリル基で変性した脂肪族ポリエーテル類も使用することができる。トリアルキルシリル変性ではトリメチルシリル変性が特に好ましく、これはトリメチルクロロシランやトリメチルクロロシリルアセトアミドまたはヘキサメチルジシラザンなどによって変性できる
さらに本発明に用いられる有機ポリマーは部分的または全体が環状であるポリマーを用いても良く、環状ポリエーテル、環状ポリエステルなどを用いることができる。
【0059】
以上、本発明に用いることのできる有機ポリマーについて説明したが、有機ポリマーの分子量は数平均で100〜100万、好ましくは100〜30万、より好ましくは200〜5万である。
分子量が100以下であると、有機ポリマーがシリカ/有機ポリマー複合体から除去されるのが速すぎて、所望するような空孔率を持った多孔性シリカ薄膜が得られないし、ポリマー分子量が100万を越えると、今度はポリマーが除去される速度が遅すぎて、ポリマーが残存するので好ましくない。特に、より好ましいポリマーの分子量は200〜5万であり、この場合には、低温でかつ短時間に所望するような高い空孔率を持った多孔性シリカ薄膜がきわめて容易に得られる。
【0060】
ここで注目すべきことは、多孔性シリカの空孔の大きさは、ポリマーの分子量にあまり依存せずに、きわめて小さくかつ均一なことである。
特に有機ポリマーとして前述したような直鎖状または分岐状の2元以上のポリエーテルブロックコポリマーを使用する場合には、該ブロックコポリマーの各ブロックの分子量は100〜10万、好ましくは100〜5万、より好ましくは200〜2万である。分子量が100以下でも10万以上でも、シリカ前駆体とポリマー間で適度な相溶性が得らないので、多孔性シリカ薄膜の機械強度が発現されない。
【0061】
本発明における有機ポリマーの添加量は、出発原料であるアルコキシシランの仕込み全量が加水分解および縮合反応したと仮定して得られるシロキサン1重量部に対し0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部、さらに好ましくは0.5〜3重量部である。有機ポリマーの添加量が0.01重量部より少ないと十分な空孔を有する多孔体が得られず、また10重量部より多くても、十分な機械強度を有する多孔性シリカが得られず、実用性に乏しい。
尚、アルコキシシランの仕込み全量が加水分解および縮合反応したと仮定して得られるシロキサンとは一般式(1)、(2)のSiOR2 基、SiOR4 基やSiOR5 基が100%加水分解されてSiOHになり、さらに100%縮合してシロキサン構造になったものを言う。
【0062】
さらに本発明では特に、(D)成分である有機ポリマーが、上述した直鎖状または分岐状の2元以上のポリエーテルブロックコポリマーを含み、さらにその含有量が、塗布組成物中に含有する全有機ポリマーに対して10重量%以上、好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上であれば、より好適に絶縁薄膜製造用の塗布組成物を得ることができる。
本発明において、直鎖または分岐状の2元以上のブロックコポリマーが特に(D)成分として相応しいのは、後述するような加熱焼成によって塗膜が多孔薄膜に変換する場合に、熱分解温度が低く、かつシリカ前駆体およびシリカとの相溶性が適度に良好であるためである。直鎖状または分岐状の2元以上のブロックコポリマーで、ブロック部が炭素数1〜8の直鎖状および環状のオキシアルキレン基を繰り返し単位とする有機ポリマーであり、該ブロックコポリマー単位を1本のポリマー鎖中に60重量%以上含むものである。
【0063】
ここで、相溶性が適度に良好であるとは、本発明で使用するブロックコポリマーが、シリカ前駆体およびシリカとの親和性が良好なもののことを言う。両者の親和性が適度に良好であると、シリカ前駆体とポリマー間での相分離状態が制御され、その後の工程でブロックコポリマーがシリカから抜き去られて多孔体が形成される場合に極端に大きなまたは小さな孔径を持つ孔がなく、孔径が均一になるので、得られた薄膜の表面平滑性がさらに向上するし、また機械強度も高くなる。また、本発明の有機ポリマー中に占める直鎖状または分岐状の2元以上のポリエーテルブロックコポリマーの含有率が10重量%未満であると、比誘電率が十分に下がらないので望ましくない。
また本発明では、ポリマーの代わりに、重合性有機モノマーを出発原料として用いることもできる。このとき、有機モノマーの中に重合可能な官能基が2つ以上含まれている場合や、前述したように重合可能な官能基を有する有機ポリマーが該モノマーと共存しているような場合には、本発明の塗布液に熱処理等の処理を施すことによって、得られる複合体の中の有機ポリマーは3次元網目及び/又はグラフト状の構造となる。
【0064】
このような例として好適に用いることができるものは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、エチレンビスアクリレート、エチレンビスメタクリレート、α−シアノアクリル酸、α−シアノアクリル酸エステルなどのアクリル酸およびメタクリル酸誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、クロトン酸ビニル、安息香酸ビニル、クロロギ酸ビニルなどの酸ビニルエステル類、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドなどのアミド類、スチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、ジフェニルエチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、5−ビニル−2−ノルボルネンなどのビニル基含有炭化水素類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのアクリロニトリル誘導体、N−ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルイミダゾールなどのビニルアミン類、ビニルアルキルエーテル、ビニルアルキルケトン、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エポキシ樹脂などである。これらの重合性有機モノマーは、単独で用いても2種以上を併用しても構わない。
【0065】
次に本発明の塗布組成物に用いることのできる有機溶媒(E)について説明する。
(E)成分は本発明の塗布組成物に有機ポリマーを使用する場合に、該組成物中でのポリマーの分散状態を制御する成分として重要である。
有機溶媒は、上述した(A)、(B)、(C)、(D)成分の塗布組成物中での安定な溶解あるいは分散を阻害しないものであれば特に限定されないが、その中でも、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒およびエステル系溶媒の群から選ばれた少なくとも1種の有機溶媒を使用することが好ましい。
【0066】
ここで、アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、ヘプタノール−3、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチルヘプタノール−4、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコールなどのモノアルコール系溶媒、およびエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ペンタンジオール−2,4、2−メチルペンタンジオール−2,4、ヘキサンジオール−2,5、ヘプタンジオール- 2,4、2−エチルヘキサンジオール−1,3、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコールなどの多価アルコール系溶媒、
【0067】
およびエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルなどの多価アルコール部分エーテル系溶媒などを挙げることができる。これらのアルコール系溶媒は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0068】
これらアルコールのうち、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどが好ましい。
【0069】
ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル- n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−i- ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、2−ヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン、フェンチョンなどのほか、アセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、3,5 -ヘプタンジオン、2,4−オクタンジオン、3,5- オクタンジオン、2,4−ノナンジオン、3,5−ノナンジオン、5−メチル−2,4−ヘキサンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ヘプタンジオンなどのβ−ジケトン類などが挙げられる。これらのケトン系溶媒は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0070】
アミド系溶媒としては、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン、N−ホルミルモルホリン、N−ホルミルピペリジン、N−ホルミルピロリジン、N−アセチルモルホリン、N−アセチルピペリジン、N−アセチルピロリジンなどが挙げられる。これらアミド系溶媒は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0071】
エステル系溶媒としては、ジエチルカーボネート、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジエチル、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ- n−ブチルエーテル、
【0072】
酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチルなどが挙げられる。これらエステル系溶媒は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
なお、有機溶媒(E)として、アルコール系溶媒及び/又はエステル系溶媒を用いると、塗布性が良好で、かつ貯蔵安定性に優れた組成物が得られる点で好ましい。
【0073】
本発明の塗布組成物は、上記の有機溶媒(E)を含有するが、(A)成分として用いるシリカ前駆体を加水分解及び/又は縮合する際に、同様の溶媒を追加添加することができる。
さらに、本発明ではシリカ前駆体(A)の加水分解及び/又は脱水縮合の速度を制御する目的で酸性化合物、塩基性化合物、金属キレート化合物のうち少なくとも一つの成分を添加物として添加することによっても、好適な半導体絶縁被膜前駆組成物を得る。該成分はシラノール基の縮合反応(重合)の触媒として作用する。これらのうち、特に以下に具体的に記載する酸化合物は、反応液に対する溶解性が良好であるので有効である。
【0074】
本発明で用いることができる酸性化合物の具体例としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、フッ酸、トリポリリン酸、ホスフィン酸、ホスフォン酸などの無機酸を挙げることができる。有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、アジピン酸、セバシン酸、没食子酸、酪酸、メリット酸、アラキドン酸、シキミ酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、イソニコチン酸などを挙げることができる。これらの酸性化合物は1種あるいは2種以上を同時に使用しても良い。
【0075】
また、塩基性化合物の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、ピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ペンチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアミン、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、シクロヘキシルアミン、トリメチルイミジン、1−アミノ−3−メチルブタン、ジメチルグリシン、3−アミノ−3−アミノメチルブタンなどを挙げることができ、より好ましくは有機アミンであり、アンモニア、アルキルアミンおよびテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドがシリカ系膜の基板への密着性の点から特に好ましい。これらの塩基性化合物は1種あるいは2種以上を同時に使用しても良い。
【0076】
さらに金属キレート化合物の例としては、トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−i−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−t−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−t−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−i−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、
【0077】
モノ−sec−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−t−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、テトラキス(アセチルアセトナート)チタン、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−i−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−t−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−t−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、
【0078】
モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−i−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−t−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、テトラキス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)チタン、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)チタンなどのチタンキレート化合物;
【0079】
トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−i−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−t−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−t−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−n−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、
【0080】
モノ−i−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−n−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−sec−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−t−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−i−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−t−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、
【0081】
ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−t−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−n−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−i−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−sec−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−t−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、
【0082】
テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどのジルコニウムキレート化合物;トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどのアルミニウムキレート化合物;などを挙げることができ、好ましくはチタンまたはアルミニウムのキレート化合物、特に好ましくはチタンのキレート化合物を挙げることができる。これらの金属キレート化合物は、1種あるいは2種以上を同時に使用しても良い。
【0083】
また、本発明の触媒群の化合物には、本発明の塗布溶液を基板上に塗布した後でシリカ前駆体(A)の加水分解及び/又は脱水縮合の速度を制御するように機能する酸・塩基・金属キレートの前駆体化合物も含まれる。このような化合物の例として芳香族スルホン酸エステルやカルボン酸エステルのような、加熱または光により分解して酸を発生する化合物が挙げられる。
さらに酸性化合物と金属キレート、塩基性化合物と金属キレートの組み合わせで併用することも可能である。
これら触媒成分を添加する場合には、その添加量は、出発原料として仕込まれる加水分解性シランにおけるアルコキシシラン基の全モル数に対して5モル%以下、好ましくは1モル%以下、さらに好ましくは0.5モル%以下が適当である。5モル%より多いと沈殿物が生成し、均質な多孔質のケイ素酸化物からなる塗膜が得られ難くなったり、比誘電率の低い塗膜が得られない場合がある。
その他、所望であれば、たとえばコロイド状シリカや、イオン性、非イオン性の界面活性剤などの成分を添加してもよいし、感光性付与のための光触媒発生剤、基板との密着性を高めるための密着性向上剤、長期保存のための安定剤など任意の添加物を、本発明の趣旨を損なわない範囲で本発明の塗布組成物に添加することも可能である。
【0084】
次に本発明の塗布組成物の製造方法について説明する。
本発明の塗布組成物の製造方法としては、アルコキシシランを出発原料として仕込んだ後、水を添加して加水分解、縮合反応を行った後で、有機ポリマーまたは溶媒を加えても良いし、アルコキシシランにあらかじめ、有機ポリマーまたは溶媒を添加しておいてから、加水分解、重縮合反応を行ってもよい。
本発明において、アルコキシシランの加水分解には前述したように水が必要である。アルコキシシランに対する水の添加は液体のまま、あるいはアルコールや水溶液として加えるのが一般的であるが、水蒸気の形で加えても構わない。水の添加を急激に行うと、アルコキシシランの種類によっては加水分解と縮合が速すぎて沈殿を生じる場合があるため、水の添加に充分な時間をかける、均一化させるためにアルコールなどの溶媒を共存させる、50℃以下の温度で添加するなどの手法が単独または組み合わせて用いられるのが好ましい。
【0085】
添加された水は一旦アルコキシシランの加水分解のために消費されるが、その後の縮合反応時に副生成物として精製してくるので、本発明の塗布組成物中には適当量存在する。水は加水分解、重縮合反応中に全量または断続的に加えてもよい。また、重縮合反応終了後に上記の含有量になるように追加して添加しても構わない。
アルコキシシランは水の存在下、加水分解してシラノールになり、次にシラノール基間の縮合反応によりシロキサン結合を有するオリゴマー状のシリカ前駆体へと生長する。
本発明の塗布組成物では予めアルコキシシランをオリゴマー状にしておくほうが、(l)塗布液粘度が適度に上がるので、塗膜の保形性が確保でき膜厚を均一にできる、(2)さらにシリカ前駆体がゲル化する場合に、シリカ骨格の形成がマイルドに起こるので、膜収縮が起こり難く、より好ましい。
【0086】
本発明において、アルコキシシランを加水分解するときの温度は通常0〜150℃、好ましくは0〜100℃、より好ましくは0℃〜50℃である。0℃よりも低いと加水分解の進行が十分でないし、逆に150℃を超えると反応が急激に進行しすぎて、溶液のゲル化が起こる場合があり好ましくない。
本発明の塗布組成物に含有されるシリカ前駆体の縮合率は10〜90%、好ましくは20〜85%、より好ましくは30〜85%である。縮合率が10%よりも低いと、上記の(1)および(2)が達成されないので、好ましくない。縮合率が90%を超えると塗布組成物全体がゲル化してしまう。
尚、シリカ前駆体の縮合率は後述するシリカ組成比を求める場合と同様の測定法により算出される。
【0087】
本発明における酸等の触媒成分やその他の添加物の添加は、アルコシシランの加水分解、縮合反応時に全量添加しても良いし、その前後に段階的に添加しても良い。また、触媒成分以外の添加物については塗布組成物の塗布する直前に添加しても良い。
本発明における有機化合物(B)、有機ポリマー(D)及び有機溶媒(E)の添加は、アルコシシランの加水分解、縮合反応時に全量添加しても良いし、その前後に段階的に添加しても良い。また、塗布組成物の塗布する直前に添加しても良い。
また、塗布組成物中のナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属および鉄の含量が、15ppb以下、特に10ppb以下であることが絶縁性塗膜の低リーク電流の観点から好ましい。アルカリ金属および鉄は、使用する原料から混入する場合があるため、すべての原材料成分は蒸留や再沈殿などにより高純度に精製したものを用いることが好ましい。
【0088】
次に本発明の塗布組成物を塗布して薄膜を製造する方法、および薄膜をゲル化させて複合体薄膜とする方法、さらに複合体薄膜から有機ポリマーを除去させる方法について詳細に説明する。
本発明における塗布組成物の固形分濃度は、2〜30重量%が好ましいが、使用目的に応じて適宜調整される。塗布組成物の固形分濃度が2〜30重量%であると、塗膜の膜厚が適当な範囲となり、保存安定性もより優れるものである。なお、この固形分濃度の調整は、必要であれば、濃縮または上記有機溶媒(E)による希釈によって行われる。
固形分濃度は既知量の塗布組成物に対するアルコキシシランの全量が加水分解さらに縮合反応して得られるシロキサン化合物の重量として求められる。
【0089】
本発明において、薄膜の形成は基板上に本発明の塗布組成物を塗布することによって行う。塗布方法としては流延、浸漬、スピンコートなどの周知の方法で行うことができるが、半導体素子の多層配線構造体用の絶縁層の製造に用いるにはスピンコートが好適である。薄膜の厚さは塗布組成物の粘度や回転速度を変えることによって0.1μm〜100μmの範囲で制御できる。100μmより厚いとクラックが発生する場合がある。半導体素子の多層配線構造体用の絶縁層としては、通常0.1μm〜5μmの範囲で用いられる。
スピンコートをなどによって本発明の塗布組成物を塗布する際に、溶媒の乾燥に伴い薄膜の表面均一性が低下する場合が見られる。特にスピンコートの場合にはストリエーションと呼ばれる放射状のムラの発現を抑制することが重要な課題であり、そのために溶媒の種類、濃度、温度、湿度などの塗布環境を経験的に制御する必要が生じる。この際、成分(B)が本発明の塗布組成物中に含有することにより、理由は定かではないがストリエーションの発現が極めて良好に抑制され、均一な塗布薄膜が得られやすくなる。
塗布組成物中の溶媒を除去する方法として、先述したようなスピンコート法に加えて、加熱すると効果がより顕著になるので好ましい。加熱条件、たとえば加熱温度や加熱時間については、溶媒の除去量が上記範囲に制御されるならば、特に限定されない。
【0090】
基板としては、シリコン、ゲルマニウム等の半導体基板、ガリウム−ヒ素、インジウム−アンチモン等の化合物半導体基板等を用いこともできるし、これらの表面に他の物質の薄膜を形成したうえで用いることも可能である。この場合、薄膜としてはアルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、銀、タンタル、タングステン、オスミウム、白金、金などの金属の他に、二酸化ケイ素、フッ素化ガラス、リンガラス、ホウ素−リンガラス、ホウケイ酸ガラス、多結晶シリコン、アルミナ、チタニア、ジルコニア、窒化シリコン、窒化チタン、窒化タンタル、窒化ホウ素、水素化シルセスキオキサン等の無機化合物、メチルシルセスキオキサン、アモルファスカーボン、フッ素化アモルファスカーボン、ポリイミド、その他任意のブロックコポリマーからなる薄膜を用いることができる。
【0091】
薄膜の形成に先立ち、上記基板の表面を、あらかじめ密着向上剤で処理してもよい。この場合の密着向上剤としてはいわゆるシランカップリング剤として用いられるものやアルミニウムキレート化合物などを使用することができる。特に好適に用いられるものとして、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジクロロシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノアセチルアセトネート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)などが挙げられる。これらの密着向上剤を塗布するにあたっては必要に応じて他の添加物を加えたり、溶媒で希釈して用いてもよい。密着向上剤による処理は公知の方法で行う。
【0092】
以上のように、本発明の塗布組成物を2回塗布して得られた塗膜を、引き続き硬化(ゲル化)する場合の温度は特に限定されないが、通常は100〜300℃、好ましくは150〜300℃、ゲル化反応に要する時間は熱処理温度、触媒添加量や溶媒種および量によっても異なるが、通常数秒間から10時間の範囲である。好ましくは30秒〜5時間、より好ましくは1分〜2時間である。この操作により、塗布組成物中のシリカ前駆体のゲル化反応が十分に進行しシリカとなる。シリカの縮合率として100%近くまで達する場合がある。通常は約90%である。この場合の縮合率は、29Si−NMR析で求めることができる。温度が100℃よりも低いと、後工程であるポリマー除去工程において、ゲル化が十分に進行する前にポリマーが除去され始めるので、その結果、塗膜の高密度化が起こってしまう。また300℃よりも高いと、巨大なボイドが生成しやすく、後述するシリカ/有機ポリマー複合体薄膜の均質性が低下する。
【0093】
このようにして得られたシリカ/有機ポリマー複合体薄膜は、誘電率も低く、膜質の均一性が極めて高いので、このままで配線の絶縁部分として用いることもできるし、薄膜以外の用途、たとえば光学的膜や構造材料、フィルム、コーティング材などとして使用することも可能である。しかし、LSI多層配線の絶縁物としてさらに誘電率の低い材料を得ることを目的として、高絶縁性の多孔性シリカ薄膜に変換して使用することが最も好ましい。
シリカ/有機ポリマー複合体薄膜から絶縁性の多孔性シリカ薄膜へは、シリカ/有機ポリマー複合体薄膜からポリマーを除去することによって行う。この時に、シリカ前駆体のゲル化反応が十分に進行していれば、シリカ/有機ポリマー複合体薄膜中の有機ポリマーが占有していた領域が、多孔性シリカ薄膜中の空孔としてつぶれずに残る。その結果、空隙率が高く、誘電率の低い多孔性シリカ薄膜を得ることができる。
【0094】
有機ポリマーを除去する方法としては、加熱、プラズマ処理、溶媒抽出などが挙げられるが、現行の半導体素子製造プロセスにおいて容易に実施可能であるという観点からは、加熱がもっとも好ましい。この場合、加熱温度は用いる有機ポリマーの種類に依存し、薄膜状態下で単に蒸散除去されるもの、有機ポリマーの分解を伴って焼成除去されるもの、およびその混合した場合があるが、通常の加熱温度は300〜450℃、好ましくは350〜400℃の範囲である。300℃よりも低いと有機ポリマーの除去が不充分で、有機物の不純物が残るため、誘電率の低い多孔性シリカ薄膜が得られない危険がある。また汚染ガス発生量も多い。逆に450℃よりも高い温度で処理することは、有機ポリマーの除去の点では好ましいが、半導体製造プロセスで用いるのは極めて困難である。
【0095】
加熱時間は10秒〜24時間の範囲で行うことが好ましい。好ましくは10秒〜5時間、特に好ましくは1分〜2時間である。10秒より短いと有機ポリマーの蒸散や分解が十分進行しないので、得られる多孔性シリカ薄膜に不純物として有機物が残存し、誘電率が低くならない。また通常熱分解や蒸散は24時間以内に終了するので、これ以上長時間の加熱はあまり意味をなさない。加熱は窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性雰囲気下で行うのが好ましい。空気または酸素ガスを混入させたりといった酸化性雰囲気下で行うことも可能であるが、この場合には該酸化性ガスの濃度を、シリカ前駆体がゲル化する前に有機ポリマーが実質的に分解しないような濃度に制御することが好ましい。また雰囲気中にアンモニア、水素などを存在させ、シリカ中に残存しているシラノール基を失活させることによって多孔性シリカ薄膜の吸湿性を低減させ、誘電率の上昇を抑制することもできる。
【0096】
以上の加熱条件下で本発明の有機ポリマーを除去した後の多孔性シリカ薄膜中の残渣ポリマー量は著しく低減されるので、先述したような有機ポリマーの分解ガスによる上層膜の接着力の低下や剥離などの現象がおこらない。尚、本発明の塗布組成物中の有機ポリマーが前述したポリエーテルブロックコポリマーを含有するような場合には、さらにその効果が顕著になる。
本発明は、シリカ/有機ポリマー複合体薄膜を形成するステップを経た後ポリマーを除去するステップを上記条件下で行うものであれば、そのステップの前後に任意の温度や雰囲気によるステップを経ても問題はない。
本発明において加熱は、半導体素子製造プロセス中で通常使用される枚葉型縦型炉あるいはホットプレート型の焼成システムを使用することができる。もちろん、本発明の製造工程を満足すれば、これらに限定されるものではない。
【0097】
以上、本発明の多孔性シリカ薄膜を用いることにより、機械強度が高く、かつ誘電率が充分に低いLSI用の多層配線用絶縁膜が成膜できる。
本発明の多孔性シリカ薄膜の比誘電率は、本発明の製造法により2.8〜1.2を達成できる。この比誘電率は本発明の塗布組成物中の有機ポリマー成分(D)の含有量により調節することができる。
また、本発明の多孔性薄膜中には、BJH法による細孔分布測定において、20nm以上の空孔は実質上認められず、層間絶縁膜として好適である。
本発明により得られる多孔性シリカ薄膜は、薄膜以外のバルク状の多孔性シリカ体、たとえば反射防止膜や光導波路のような光学的膜や触媒担体はじめ断熱材、吸収剤、カラム充填材、ケーキング防止剤、増粘剤、顔料、不透明化剤、セラミック、防煙剤、研磨剤、歯磨剤などとして使用することも可能である。
【0098】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例および比較例をもって具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例などにより何ら限定されるものではない。
多孔性シリカ薄膜製造用の塗布組成物および薄膜の評価は下記の方法により行った。
(1)シリカ組成比
本発明では塗布組成物中に含まれる官能性基数の異なるアルコキシシラン等に由来する珪素原子を各々29Si−NMRによるシグナルの面積から算出した数値で表し、それらを対比することで塗布組成物中に含まれるアルコキシシラン等の組成比としている。また、その塗布組成物を用いて製造される絶縁性薄膜中のアルコキシシラン等から得られるシリカの組成比も同様の測定方法で得ている。
【0099】
一例として、アルコキシシランとしてテトラエトキシシラン(TEOS)、ジメチルジエトキシシラン(DMDES)及びビス(トリエトキシシリル)エタン(BSE)を用いた場合の薄膜中のDMDES起因のSi原子のモル%(シリカ組成比)の算出法を説明する。
装置:JEOL−ラムダ400
測定モード:NNE
試料管:外径10mm、内径3mm
(塗布組成物、薄膜ともD化エタノール、TMSを少量添加)
積算回数:1300回
PD(パルスディレー):250秒
BF(ブロードニングファクター):30Hz
【0100】
以上の測定装置および測定条件から得られた数値を用いて以下に示す計算式より算出する。
DMDESのモル%=100×(D0+D1+D2)/
{(T0+T1+T2+T3+T4)+(D0+D1+D2)+2(B0+B1+B2+B3)}
(式中、T0、D0及びB0はそれぞれ上記の装置で原料のTEOS、DMDES及びBSE中のエトキシ基が少なくとも一部加水分解されて水酸基となった化合物に帰属されるシグナル積分強度を表し、T1、D1及びB1はTEOS、DMDES及びBSE中の各Siの一箇所が隣接のSi原子と酸素原子を介して結合して形成される基に帰属されるシグナルの積分強度を表し、T2、D2及びB2はTEOS、DMDES、及びBSE中の各Siの二箇所が隣接のSi原子と酸素原子を介して結合して形成される基に帰属されるシグナルの積分強度を表し、T3及びB3はTEOS及びBSE中のSiの三箇所が隣接のSi原子と酸素原子を介して結合して形成される基に帰属されるシグナルの積分強度を表し、T4はTEOS中のSiの四箇所が隣接のSi原子と酸素原子を介して結合して形成される基に帰属されるシグナルの積分強度を表す)。
【0101】
(2)比誘電率
ソリッドステートメジャーメント社製SSM495型自動水銀CV測定装置を用いて測定した。
(3)比誘電率の安定性
本発明の多孔性シリカ薄膜を23℃で相対湿度が60%の雰囲気下に1週間放置した前後の薄膜の比誘電率の変化割合が10%未満の場合は○、10%以上の場合を×と評価した。
(4)膜厚測定
理学電機製RINT 2500を用いて測定した。測定条件は、発散スリット:1/6°、散乱スリット:1/6°、受光スリット:0.15mmで検出器(シンチレーションカウンタ)の前にグラファイトモノクロメータをセットした。管電圧と管電流は、それぞれ40kVと50mAで測定したが、必要に応じて変えることができる。また、ゴニオメータの走査法は2θ/θ走査法で、走査ステップは0.02°とした。
【0102】
(5)ヤングモジュラス
MTS Systems Corporation社製ナノインデンターDCMで測定した。測定方法は、バーコビッチ型のダイヤモンド製圧子を試料に押し込み、一定荷重に達するまで負荷したのちそれを除き、変位をモニターすることにより荷重−変位曲線を求めた。表面はコンタクトスティフネスが200N/mになる条件で認識した。硬度の算出は、以下の式による。
H=P/A
ここで、Pは印加した荷重であり、接触面積Aは接触深さhcの関数で次式により、実験的に求めた。
A=24.56hc2
この接触深さは圧子の変位hと次の関係にある。
hc =h−εP/S
ここでεは0.75、Sは除荷曲線の初期勾配である。
ヤングモジュラスの算出はスネドンの式によって求めた。
Er=(√π・S)/2 √A
ここで、複合弾性率Erは次式で表される。
Er =[(1−νs2)/Es + (1−νi2)/Ei ]-1
ここで、νはポアソン比、添字Sはサンプル、iは圧子を表す。本発明ではνi =0.07、Ei =1141GPa、また本材料のポアッソン比は未知であるがνs =0.18としてサンプルのヤングモジュラスEs を算出した。尚、本発明におけるヤングモジュラスは、0.8μ〜1.2μmの膜厚で測定した。
【0103】
(6)薄膜の表面平滑性
まず、基板の円周方向に約5mm間隔に切り込みを入れ、その切り込みに対して垂直な方向に、米国、Sloan社製DEKTAK3型表面粗さ測定装置を用いて7000μm走査し、シリコンウエハー表面に対して水平あわせを行う(測定速度:35秒)。走査した中の3000μmの範囲をとり、その部分における表面粗度(Ra)を以下の数式(1)より算出した。
【数1】
【0104】
【実施例1】
テトラエトキシシラン12.5g、ビス(トリエトキシシリル)エタン12.8g、メチルトリエトキシシラン9.6g、エタノール57.1g、水40.8g、ポリエチレングリコール−ポリ(α−ブチレン)グリコール−ポリエチレングリコールジメチルエーテル(数平均分子量2000、ポリ(α−ブチレン)グリコール部分の数平均分子量は1000)4.8g、ポリエチレングリコールジメチルエーテル(数平均分子量600)1.2g、0.9%しゅう酸水溶液0.06gを混合し、50℃にて6時間攪拌し反応させた。該一次反応溶液を、50℃、50mmHgにて溶媒を留去し、39.8gまで濃縮した。
【0105】
得られた濃縮液に水20g、プロピレングリコールモノメチルエーテル10gを加え、塗布原液を得た。33gの該塗布原液を取り、水6.7g、エタノール0.22g、プロピレングリコールモノメチルエーテル7.0g、0.2%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液0.48g、10%酢酸水溶液0.48g、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール(日信科学工業株式会社製、商品名オルフィンAK−02)を加え、撹拌した後、本発明の塗布溶液を得た。該溶液中の3官能性アルコキシシラン由来のSi原子は30モル%であった。また、該溶液中ポリエーテルブロックコポリマーが全有機ポリマーに対して80重量%であった。当溶液を6インチシリコンウェハー上に3ml滴下し、1400rpmにて60秒間回転塗布した。その後空気中120℃にて1分間、窒素雰囲気下200℃にて1時間、続いて窒素雰囲気下400℃にて1時間加熱焼成して、膜厚が1.03μmの多孔性シリカ薄膜を得た。得られた薄膜の1MHzにおける比誘電率は2.28でその安定性は○、ヤングモジュラスは8.16GPaであった。また表面粗度は7A と極めて表面平滑性が良好であった。
【0106】
【実施例2】
テトラエトキシシラン8.3g、メチルトリエトキシシラン12.8gで置き換えた以外には実施例1と同一の操作を行い、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールの代わりに2,5,8,11−テトラメチル−6−ドデシン−5,8−ジオール(日信科学工業株式会社製、商品名サーフィノールDF−110)を加え、撹拌した後、本発明の塗布溶液を得、該溶液中の3官能性アルコキシシラン由来のSi原子は40モル%であった。膜厚が1.05μmの多孔性シリカ薄膜を得た。得られた薄膜の1MHzにおける比誘電率は2.26でその安定性は○、ヤングモジュラスは6.71GPaであった。また表面粗度は9A と極めて表面平滑性が良好であった。
【0107】
【実施例3】
ポリエチレングリコール−ポリ(α−ブチレン)グリコール−ポリエチレングリコールジメチルエーテル(数平均分子量2000、ポリ(α−ブチレン)グリコール部分の数平均分子量は1000)7.2gで置き換えた以外に実施例2と同一の操作を行った。膜厚が1.01μmの多孔性シリカ薄膜を得た。得られた薄膜の1MHzにおける比誘電率は2.15でその安定性は○、ヤングモジュラスは4.33GPaであった。また表面粗度は10A と極めて表面平滑性が良好であった。
【0108】
【比較例1】
実施例1において、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールを使用せずに、塗布組成物を調製した以外には実施例1と同一の操作を行い、膜厚が1.03μmの多孔性シリカ薄膜を得た。得られた薄膜の1MHzにおける比誘電率は2.38、ヤングモジュラスは8.12GPaであり、実施例1と比較して機械強度は同程度であるが、比誘電率はやや高め、また表面粗度は35A と表面平滑性が低下した。
【0109】
【比較例2】
実施例3において、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールジメチルエーテル(数平均分子量6400)7.2gで置き換え、2,5,8,11−テトラメチル−6−ドデシン−5,8−ジオールを添加しない以外には実施例3と同一操作を行い、膜厚が1.07μmの多孔性シリカ薄膜を得た。得られた薄膜の1MHzにおける比誘電率は2.21、ヤングモジュラスは4.58GPaであり、実施例3と比較してモジュラスは同程度であるにもかかわらず、比誘電率は実施例3に比べて相対的に高く、表面粗度は41A と表面平滑性と劣る結果となった。
【0110】
【発明の効果】
本発明の絶縁性薄膜製造用の塗布組成物を使用することにより、塗布時の流延性に優れると同時にストリエーションがほとんど起こらない。これによって、低い比誘電率を有し膜質の均一性に優れた絶縁性薄膜を得ることができるため、LSI多層配線用基板や半導体素子の絶縁薄膜として最適である。
Claims (6)
- 少なくとも下記一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される1〜6官能性のアルコキシシランおよびその加水分解物、重縮合物から選ばれる少なくとも1種以上の化合物を含有するシリカ前駆体であって、アルコキシシランおよびその加水分解物、重縮合物に由来する珪素原子の合計に対する1〜3官能性のアルコキシシランおよびその加水分解物、重縮合物に由来する珪素原子の合計の割合が5mol%〜80mol%であるシリカ前駆体(A)と、下記一般式(3)で表される有機化合物(B)と水(C)とを含有することを特徴とする絶縁性薄膜製造用塗布組成物。
R1 n (Si)(OR2 )4−n (1)
(式中、R1 、R2 は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素または1価の有機基を表し、nは0〜3の整数である)
R3 m (R4 O)3−m Si−(R7 )p −Si(OR5 )3−q R6 q (2)
(式中、R3 、R4 、R5 およびR6 は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素または1価の有機基を示し、mおよびqは、同一でも異なっていてもよく、0〜2の数を示し、R7 は酸素原子または(CH2 )r で表される基を示し、rは1〜6を、pは0または1を示す。)
R8 (CH3 )C(OR9 )−C≡C−C(OR9’)(CH3 )R8’ (3)
(式中、R8 とR8’は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素または炭素数1〜10のアルキル基、R9 とR9’は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素、炭素数1〜10のアルキル基、(CH2 CH2 O)x H(xは20以下の整数)で表される置換基のいずれかを示す。) - 塗布組成物がシリカ前駆体(A)を塗布組成物全重量に対し2wt%以上30wt%以下、有機化合物(B)を塗布組成物の全量に対し0.01wt%以上2wt%以下、水(C)を塗布組成物の全量に対し10wt%以上70wt%以下、さらに、有機ポリマー(D)をシリカ前駆体に対し0.01wt%以上10wt%以下含み、かつ、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒およびエステル系溶媒の群から選ばれた少なくとも1種を有機溶媒(E)として含有することを特徴とする請求項1に記載の絶縁性薄膜製造用塗布組成物。
- 有機ポリマー(D)が直鎖状または分岐状の2元以上のポリエーテルブロックコポリマーを含み、かつ、その含有量が、塗布組成物中に含有する全有機ポリマーに対して10重量%以上含まれることを特徴とする請求項2に記載の絶縁性薄膜製造用塗布組成物。
- 請求項2または3に記載の絶縁性薄膜製造用塗布組成物を基板上に塗布した後に、シリカ前駆体をゲル化することにより得られるシリカ/有機ポリマー複合薄膜から有機ポリマーを除去してなることを特徴とする多孔性のシリカからなることを特徴とする絶縁性薄膜。
- 請求項4に記載の薄膜を絶縁物として用いることを特徴とする配線構造体。
- 請求項5に記載の配線構造体を包含してなる半導体素子。
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